戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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劇場版「もっとらぶらぶ作戦です!」第1幕を見ましたが、個人的には原作で一番好きな“アンツィオ高の捕虜になった桃ちゃん”の話の再現度が最高でした…あの時の大洗女子の連中、アンツィオ学園艦へ潜入した目的は桃ちゃん救出じゃ無くてアンツィオ高の制服が着たかったからだろうと言う長年の疑惑が確信に変わった(爆笑)。
其れと劇場特典映像の「新家元登場です!」に登場の玉田流家元・玉田タマ江(タマタマ)さん、本作世界だと絶対に明美さんと仲良くなっているわ…当然、しぽりんとちよきちの胃痛は原作の倍に(笑)。

と言う訳で白熱する決勝戦ですが、今回はある意味、明美さん無双(迫真)。
其れと言うのも彼女の視点から“大洗女子の強さの理由”を語って貰うのと、彼女経由で張っていた“伏線回収”をやるからでして。
結果は如何なるか分かりませんが、是非御覧下さいませ。



第103話「此れが大洗女子の戦い方です!!」

 

 

 

此処は、黒森峰のヤークトティーガーが転落している用水路沿いの道路で横倒しになって白旗を掲げている大洗女子学園戦車道チームの“ウサギさんチーム”が乗っていた M3中戦車リーの周辺。

 

既に両チームの乗員救助や状況確認の為、試合運営に協力している陸上自衛隊や試合の実況中継を行っている首都テレビの取材用車輌が集まっており、白旗を掲げたM3中戦車リーの回収作業も進んでいる此の場所で、日本戦車道連盟審判員・高島レミが“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”リーダー・澤 梓に御礼を告げていた。

 

 

 

「澤さん、有難う。御陰で負傷したヤークトティーガーの装填手、無事にヘリに乗せて搬送する事が出来たわ」

 

 

 

其れに対して梓は「いえ、選手として当然の事をした迄です」と答えた後、こう語った。

 

 

 

「実は、偶々現場を目撃した嵐…いえ、原園さんから“ヤークトティーガーの乗員が心配だから見に行って欲しい”と頼まれていたので……」

 

 

 

実際、梓は“嵐からの頼み”を聞いた後、用水路の壁に備え付けの梯子を慎重に降りてからヤークトティーガーの乗員へ向けて「黒森峰の皆さん、大丈夫ですか!?」と呼び掛けた処、ヤークトティーガーの車長が彼女の前に来て……

 

 

 

「丁度良かった!今、装填手が車内から出られないんだ。もしかすると用水路に転落した時に左腕を骨折しているかも知れない!」

 

 

 

と切迫した声で告げられた為、梓は直ちに「分かりました!戦車道連盟の審判団へ無線連絡の後、御手伝いします!」と答えた後、自分のチームの無線手・宇津木 優季へ指示を出し、審判団へ緊急の無線連絡を送ったのだ。

 

其の結果、審判団から無線で「了解しました!此の無線は暫くの間、其の儘にしてスイッチを切らないで下さい!」との返信が届いた後、大会本部からの要請で仮設ヘリポートから離陸した陸上自衛隊・第12ヘリコプター隊*1所属のUH-60JAヘリコプターが現場に到着。

 

着陸場所が無い為、ホバリングするUH-60JAからラぺリング降下*2して来た衛生科の医官や看護官*3と“ウサギさんチーム”メンバーの協力で負傷したヤークトティーガーの装填手は救助された。

 

此の後、医官の診断で装填手は“左腕は骨折か骨にヒビが入っているだけなのかが不明なので、精密検査をする必要が有る”と判断された為、彼女は其の場で担架に乗せられた後、現場上空をホバリング中だったUH-60JAへ担架ごと吊り上げられて機内へ収容されてから会場近くに在る自衛隊富士病院へ緊急搬送された。

 

尚、装填手は入院後の精密検査の結果“左腕の骨に小さなヒビが入っているが、骨折はしていない”と診断され、其の儘病院で治療を受ける事が出来た。

 

 

 

 

 

 

一方、レミは必死になって当時の事を回想する梓の様子を見て、微笑み乍ら懐かし気な声で……

 

 

 

「嵐…原園 嵐さんね」

 

 

 

と答えた後、こう語った。

 

 

 

「私、彼女の事を小学校時代から戦車道の試合を通じて良く知っているけれど、彼女も以前とは大きく変わったわね」

 

 

 

其れに対して、梓は吃驚(びっくり)した声で……

 

 

 

「えっ!? じゃあ、やっぱり大洗へ来る前の嵐って“乱暴な女の子”だったのですか!?」

 

 

 

と問い掛けた後「あっ…でも、今の嵐は違いますよ!?」と必死になって弁解したのだが、其の姿を見たレミは微笑み乍ら……

 

 

 

「う~ん、乱暴と言うよりは“自分の事だけしか考えていない一匹狼”みたいな雰囲気が強かったな。だから、今みたいに澤さん達チームメイトの事を考えて行動する原園さんの姿、凄く新鮮に見えるわね」

 

 

 

と答えたのを聞いた梓は笑顔で……

 

 

 

「はい。今の嵐は、西住隊長やチームの皆の為に頑張ってくれています」

 

 

 

と語った直後、2人の目の前で現場取材を行っている首都テレビスタッフの車輌(スバル・フォレスター)に設置されたディスプレイから試合の実況を担当する加登川 幸太アナウンサーの声が流れて来た。

 

 

 

「今、大洗女子と黒森峰両チームの隊長を務める“西住流姉妹”の対決が始まりました!」

 

 

 

其の一言を聞いた梓は表情を引き締め乍ら、こう呟いた。

 

 

 

「始まった…最後の戦いが!」

 

 

 

 

 

 

戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない

 

 

 

第103話「此れが大洗女子の戦い方です!!」

 

 

 

 

 

 

一方、此方は観客席の外れで試合を観戦して居る原園 明美と西住 しほ達。

 

先ず、自分の娘達(まほとみほ)が夫々のチームの優勝を賭けた“戦車による決闘”を始めたのを確かめたしほが……

 

 

 

「明美。“みほの得意技”とは、一体何を意味するのだ?」

 

 

 

と問うた処、明美はキッパリとした声で……

 

 

 

「はっきり言うと大洗女子・そして隊長のみほさんが此の戦車道高校生全国大会で勝ち上がって来た理由は“たった一つの得意技”を上手く使い熟した結果なのよ」

 

 

 

と答えた為、しほは驚きの声で「何だと?」と問い掛けた処、明美は「其れはね……」と前置きした後、こう断言した。

 

 

 

「試合の最終局面で“相手フラッグ車と1対1(タイマンを張る)の局面”を作り出す事」

 

 

 

其の一言で漸く“みほの戦い方”を理解したしほが“ハッ”とした表情を明美に向けると彼女は口元に薄っすらとした笑みを浮かべつつ、こう語る。

 

 

 

「要するに、みほさんが繰り出してくる変幻自在且つ奇想天外な作戦も大洗女子のメンバーが創意工夫で考え出した戦い方も、全ては“相手フラッグ車との1対1の局面”を作り出す為に存在する」

 

 

 

すると話を聞いて居た明美としほの親友・周防 長門が「確かに」と呟いた後、こんな例え話をした。

 

 

 

「例えば、サッカーでも得点のチャンスが一番大きいのは“自軍ストライカーが相手ゴール前でボールを持った状態で、相手ゴールキーパーと1対1になった場面”だと言われているな」

 

 

 

「……」

 

 

 

彼女の指摘によってしほは“期待していなかった次女・みほの成長”に気付きつつも、未だ其の現実を受け入れられない状態の儘、唇を噛み締めて居た処、再び明美が……

 

 

 

しぽりん(しほ)は未だ頭がフリーズしているみたいだから、もう少し詳しく説明しようか」と告げた後“みほの戦い方の具体例”を語り始めた。

 

 

 

「先ず、本大会1回戦の終盤はサンダース大付属のフラッグ車(アリサのM4A1)をみほさん率いる“あんこうチーム(Ⅳ号戦車D型)”が1対1で仕留めに行く展開だった」

 

 

 

と語った後、明美は周囲に居る人達…しほや長門に加えて、アンツィオ高校OGで高校時代からのライバル兼友人で有る大姫 龍江や原園 嵐の大叔母・鷹代と冷泉 麻子の祖母・久子の姿を一瞥した後、説明を続ける。

 

 

 

「2回戦でも大洗女子は、アンツィオ高のフラッグ車を“あんこうチーム(Ⅳ号戦車D型)”が待ち伏せる場所迄誘導して、最後は相手フラッグ車のP40重戦車と1対1での撃ち合いで勝利」

 

 

 

其れを聞いた龍江も頷きつつ「せやな…確かに“最後の勝ち方”が同じや」と答える中、明美はこう語る。

 

 

 

「更に準決勝では、プラウダ高校のフラッグ車(T-34/76)に対して雪の中に隠れて待ち伏せていた“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”が1対1の局面を作って勝利」

 

 

 

其の説明に対して、元・陸上自衛隊の機甲部隊指揮官だった鷹代が微笑み乍ら「其の通りだよ。みほちゃんは“どんなに戦局が不利でもフラッグ車さえ倒せば勝てる”と言う高校生大会のルールを上手く利用した戦い方を一貫してやって来たんだ」と語る姿を見た明美は……

 

 

 

「うん、鷹代さんの言う通り」

 

 

 

と答えた後……

 

 

 

「そして余り知られていない事だけど、大会前に大洗町で行われたエキシビジョンマッチで大洗女子が聖グロリアーナ女学院と戦った時も最後は火力の差で負けたとは言え、みほさんはダージリン隊長の駆るチャーチルと1対1の局面を作り出した」

 

 

 

と指摘した処、其の意味に気付いた龍江が笑顔を浮かべつつ「成程な!」と答える。

 

続いて久子も納得した声で「明美さんの説明で、西住さんの戦い方が良く分かったよ。今迄の奇想天外な戦い方も、実は相手フラッグ車との1対1の戦いに持ち込む為に必要だったと言う訳だね」と答えた処、明美は久子に向けて頷き乍ら……

 

 

 

「みほさんが大洗女子の隊長として立てた作戦はシンプルだけど、其れ故にみほさん本人と嵐達を除けば素人揃いの集団に過ぎない大洗女子のメンバーにとっては非常に分かり易い内容だった。だからこそ大洗女子は皆が心を一つにして戦い抜く事が出来たし、此処迄勝ち上がって来れたのよ」

 

 

 

と語り終えた処、長門が真剣な声でこう問い掛ける。

 

 

 

「だが明美。此の決勝の相手は黒森峰…幾らみほちゃん達が“自分達の得意技”をフルに駆使したとしても、勝算は決して高く無いと思うが?」

 

 

 

すると、明美も普段とは真逆の真剣な声でこう答えたのだ。

 

 

 

「そうね…今の黒森峰相手では、西住さん達が“自分達の得意技”を使っても最大で50%の勝算しか見込めないわね」

 

 

 

其の答えを聞いた龍江・鷹代・久子の表情に緊張が走る中、明美は冷静な声で、こう指摘する。

 

 

 

「だって、みほさんが戦う相手は姉にして西住流の後継者でも有る黒森峰の隊長・まほさんよ?」

 

 

 

すると、意外な事にしほが呆気に取られた声で「明美!?」と問うて来た為、明美は笑顔を浮かべつつ……

 

 

 

しぽりん(しほ)、貴女は西住流の後継者として育て上げて来たまほさんの実力を信じていないの?」

 

 

 

と返して来た為、しほは目を丸くしているのを見た長門が……

 

 

 

「しほ、明美は此の試合の状況をちゃんと見ているぞ。確かにまほなら、みほちゃんの“隊長兼フラッグ車同士の1対1で戦え”と言う企みを見抜いた上で、勝つ術を考え出していても不思議じゃない」

 

 

 

と指摘した処、しほも“ハッ”とした表情を浮かべつつ「あ…確かに其の通りね」と生返事をした後、漸く落ち着きを取り戻した声で……

 

 

 

「まほは西住流の後継者。故に誰の挑戦であろうと“逃げる”事は絶対に許されない……」

 

 

 

と語った時点で“或る違和感”を感じた彼女は、一旦話を止めてから……

 

 

 

「一寸待て、明美!」

 

 

 

と問い掛けた後、明美が御道化た声で「な~に?」と返事をしたのに合わせて、こう告げた。

 

 

 

「まさか、みほは“西住流に()()()()()()()()()()と言う西住流の教えを逆手に取り、まほと1対1で戦う局面を意図的に作り出して、まほが乗るフラッグ車を逃がさない様にしたと言うのか!?」

 

 

 

すると明美は悪びれない声で「正解~♪」と答えた後……

 

 

 

「でもね、言う迄も無く此の手は『倒すべき相手(まほ)から返り討ちを喰らうリスク』を背負っているのよ…でも、そうしなければ大洗女子が勝つチャンスは無いわ」

 

 

 

と語った処、しほは漸く落ち着いた声で……

 

 

 

「そう言う事だったのね…確かに、みほが立てた作戦を封じる最善の方法は『フラッグ車が1対1の状況になったら其の場から逃げ出す』事だけど、西住流の教えではそんな事は許されない。だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()*4

 

 

 

と答えた処、明美も頷き乍ら……

 

 

 

「でも裏を返せば、みほさん達が此処迄諦めずに作戦を立てて戦って来たからこそ、黒森峰相手でも勝率を50%に迄高める事が出来たと言えるわ。そして……」

 

 

 

と語った処で、一旦言葉を切った後、真剣な声でこう締め括ったのだ。

 

 

 

「最後は、みほさん達“あんこうチーム(Ⅳ号戦車H型仕様)”の技量とチームワークに全てが懸かっているわ。此の戦いは、そう言う戦いなのよ」

 

 

 

こうして明美が“大洗女子が此処迄戦い抜く事が出来た理由と決勝戦の勝算”について語り終えた直後、目の前の超大型モニターに大洗女子のⅣ号戦車H型と黒森峰女学園のティーガーⅠ重戦車による接近戦の模様が映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

其の時、大洗女子の隊長(西住 みほ)兼フラッグ車・Ⅳ号戦車H型(あんこうチーム)を追う黒森峰の隊長(西住 まほ)兼フラッグ車・ティーガーⅠ重戦車の車内では操縦手が悲鳴を上げていた。

 

 

 

「大洗のⅣ号、妙にすばしっこい!」

 

 

 

すると砲手も……

 

 

 

「確かにあのフラッグ車、Ⅳ号戦車にしては不自然な位に加減速が素早いので、照準が合わせられません!」

 

 

 

と叫んだのを聞いた車長兼黒森峰女学園戦車道チーム隊長・西住 まほは冷静な声で……

 

 

 

「エンジンパワーでは此方が有利だから追い付いて行けているが、此のⅣ号の加減速の鋭さ、そして交響楽の様なエンジン音は間違い無く……」

 

 

 

と呟いたのを聞いた乗員達は揃って“()()()()()()”に気付いて驚愕する中、装填手が驚きの声で……

 

 

 

「あの“原園チューン”のエンジンが大洗のⅣ号に積まれていると言うのですか!?」

 

 

 

と叫んだ処、まほは無言で小さく頷いた後、悔し気な気持ちを押し殺しつつ心の中で……

 

 

 

「そうか、明美さんはみほを選んだのか!」

 

 

 

と“自分が明美のチューンしたエンジンの遣い手に選ばれなかった”事実を噛み締めていると、相棒の無線手が……

 

 

 

「如何します!? 此処は逸見副隊長達が来る迄待った方が!?」

 

 

 

と叫んだ為、まほは直ぐに気持ちを切り替えると……

 

 

 

「其れはもう無理だ。最早、此の対決を制する以外に勝利の道は無い!」

 

 

 

と告げて乗員達を戒めた後、心の中でこう叫んだ。

 

 

 

「みほ、今回ばかりは逃がさない!」

 

 

 

其れは西住流後継者としての意地であると同時に、明美がチューンしたエンジンを託される立場となった妹・みほに対する嫉妬の発露でもあった。

 

 

 

 

 

 

一方、旧・小学校の校庭から再び街中へ入った大洗女子の“ニワトリさんチーム”リーダー兼車長・原園 嵐が駆るM4A3E8“イージーエイト”を追跡中の黒森峰女学園戦車道チーム・副隊長補佐の五代 百代が駆るパンター中戦車G後期型の車内では、車長の百代が“異変”に気付いていた。

 

 

 

「不味い…市街地の角を曲がる度、イージーエイト(M4A3E8)との距離が離れて行く!路上での速度は此のパンターの方が速い筈なのに!*5

 

 

 

すると百代車の無線手で逸見 エリカ副隊長の同級生・(ろう) レイラ*6が、百代の呟きを聞いて……

 

 

 

「此の儘だと、次の角辺りでイージーエイト(M4A3E8)を見失うかも!」

 

 

 

と指摘した為、百代は「分かってはいるけれど……」と答えていた矢先、目前の光景を見て……

 

 

 

「「えっ!?」」

 

 

 

其の時、百代とレイラ・そして操縦手の目前で、嵐が駆るM4A3E8(イージーエイト)が十字路の角を左に曲がり乍ら見事な“慣性ドリフト”を披露しつつ車体をガードレールに“カチーン!”と火花を散らし乍らフレンチキス(軽い接触)をした後、猛烈な勢いで百代のパンター中戦車G後期型を引き離しに掛かっていた。

 

其の姿を目撃した百代が「馬鹿な、速過ぎる!」と驚愕する中、M4A3E8(イージーエイト)の動きを細かく見ていた操縦手も……

 

 

 

「此れって…まるで、()()()()()()で見た“豆腐屋のパンダトレノ(AE86)”みたいな動きじゃない!?」

 

 

 

と叫んだのを聞いたレイラが「其れって、原園さんのM4A3E8(イージーエイト)の操縦手も只者じゃ無いって事だと思うんだけど……」と呟いた処、百代は「そう言えば……」と答えつつ、自分の記憶を確かめた結果“()()()()”を思い出すと痛恨の一言を叫ぶ事になる。

 

 

 

「しまった! 私達、肝心な事を忘れていたわ!」

 

 

 

此の時、百代は重大な事実に漸く気付いた。

 

“ニワトリさんチー(M4A3E8)ム”に居る“天才”は、車長の原園 嵐や砲手の野々坂 瑞希だけでは無いと言う事を。

 

 

 

 

 

 

「大洗女子のイージーエイト(M4A3E8)のドライビングテクニックが尋常じゃありません!最高速度は黒森峰の五代選手が駆るパンターが勝っているにも関わらず、其の差を広げつつパンターの追撃を振り切ろうとしています!」

 

 

 

首都テレビ・実況席で実況担当の加登川 幸太アナウンサーが珍しく興奮気味に“ニワトリさんチー(M4A3E8)ム”の爆走を伝える中、応援席の外れに集まっていた原園 明美達の輪の中に1人の女性が入って来ると「当たり前だよ……」と呟いた後、こう語り出した。

 

 

 

「大洗女子の“ニワトリさんチー(M4A3E8)ム”操縦手・萩岡 菫さんは去年のレーシングカート全日本選手権・FS125クラス王者(チャンピオン)。しかも王座獲得後F1グランプリに参戦している自動車メーカーからの誘いを断り、原園さんと一緒に戦車道を続ける為に大洗へやって来た()だもの」

 

 

 

其の言葉にしほが絶句する中、明美が明るい声で「あっ、青葉さんも来てくれたのね♪」と返事をすると、近くに居た龍江が仰天した声で……

 

 

 

「何やて…北條ちゃん、菫ちゃんは()()自動車メーカーが主催するF1ドライバーへのステップアッププログラムの参加を断ったんかいな!?」

 

 

 

と問うと、相手の女性…首都新聞社の戦車道担当専属契約ライター・北條 青葉は小さく頷いてから「だから、モータースポーツファンの間では一寸した騒ぎになったんですよ」と答えた処、話を聞いて居た明美が……

 

 

 

「しかも、大洗には菫ちゃんも尊敬する程の操縦技術を持つ()が居たんだもの。私だって(たぎ)るわよ♪」

 

 

 

と話題を振った為、青葉も明るい声で「“あんこうチーム(Ⅳ号戦車H型仕様)”の冷泉 麻子さんですね!」と答えた後……

 

 

 

「しかも、音を聞いて居るとエンジンは明美さんがチューンした物みたいだし…其れに準決勝終了後からの極短期間で“原園チューンのエンジン”を使い熟している冷泉さんも凄いじゃ無いですか!」

 

 

 

と告げた処、明美は青葉へ向けて頷いてから「そろそろ試合も終盤へ向けてボルテージが上がって来るわよ!」と語った後、右手の指を観客席正面の超大型モニター目掛けて指を差す。

 

其処には“西住流姉妹による隊長兼フラッグ車同士の決闘”と“両チームの1年生エース・原園 嵐対五代 百代の対決”そして“大洗のポルシェティーガー(レオポンさんチーム)対黒森峰・エリカ副隊長の部隊の激闘”が3分割で随時映し出されており、観客達の興奮を煽り立てていた。

 

特に大洗女子学園側応援席では、両者の行き詰る対決の様子を見てボルテージを上げた一般客達が……

 

 

 

「大洗!大洗!」

 

 

 

「みほ隊長、御姉さん相手でも頑張れ!」

 

 

 

と声援を送る中、日の丸の鉢巻きを巻いた1人の男性が大声で……

 

 

 

「此処迄来たんだ!神様仏様、如何か大洗女子の娘達を優勝させてやってくれ!」

 

 

 

と絶叫したのに影響された他の観客達が大洗女子の選手達へ向けて大声援を送る中、同じく声援を送る大洗女子学園・中等部4人組の1人・五十鈴 華恋が……

 

 

 

「如何すれば……」

 

 

 

と独り言を呟いて居るのを聞いた武部 詩織が「華恋、如何したの?」と呼び掛けた処、彼女は小声で……

 

 

 

「今、相手と1対1で戦っている西住隊長と原園先輩に向かって、一体どんなエールを送れば良いのか、分からないんだ」

 

 

 

と答えた処、傍で一緒に居る鬼怒沢 光が「そんな事を考える暇が有るなら、声援を送った方が良いと思うぞ?」と“物事を難しく考えなくても良い”と言う彼女らしいアドバイスを送って来た。

 

更に、彼女の隣に居る若狭 由良も「うん。此処は声援のパワーで、黒森峰を圧倒しよう!」と“単純明快な答え”を寄こして来たが、華恋は如何しても納得が行かず、小声で「うん……」と生返事をするだけだ。

 

そんな彼女の姿を近くの席に居る“大洗のアイドル”磯前 那珂は、心配気な表情で見詰めて居た。

 

 

 

そして此の後、試合は大きな山場を迎える事となる。

 

 

 

(第103話、終わり)

*1
第12旅団(群馬県相馬原駐屯地に司令部が有る)隷下の部隊。

*2
懸垂下降とも言われ、ロープ等を使って高所から下降する方法。ホバリング中のヘリから降りる場合だけで無く、登山で急峻な斜面や岩壁から降りる場合や特殊部隊等による近接戦闘時に建物屋上から内部へ進入する際にも用いられる。

*3
医官は医師、看護官は看護師や准看護師に相当する自衛隊員。

*4
此れは原作アニメ内では明言されていないものの、スピンオフ漫画「リトルアーミー」「プラウダ戦記」で描写されている。

*5
実は路上での最高速度はM4A3E8が41.834㎞/hに対して、パンター中戦車G型は55㎞/h迄出せる為、本来ならパンターの方が速い筈。

*6
コミック版「フェイズエリカ」に登場するエリカの同級生。同作の第2巻(1年前の対継続高校との練習試合)の時点で彼女は選抜から外されているが、本作の裏設定では入学して来た百代が彼女を気に入ってレギュラーに抜擢した。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第103話をお送りしました。

今回、明美さんの口から“大洗女子の強さの秘密”について語ってみましたが、如何だったでしょうか?
原作アニメ版の描写を思い出しつつ考えて見ると、大洗女子は様々な作戦を展開している訳ですが、実は勝負が決まるのは作戦の成功そのものよりも、最後の決め手が“相手フラッグ車との1対1の局面で相手を撃破する”で一貫している点に有ると思うんですね。
つまり、最後の決め手がシンプルで目的がはっきりしているからこそ、チームの皆が「如何やれば、其処迄持って行けるのか?」と考えて行動出来るのが、実は大洗女子の強さの根源だったのではと言うのが、自分なりの結論です…勿論、異論は認める(苦笑)。
でも、以上の様な推論が出来るのもガルパンの良い点じゃ無いのかなとは思っています。

其れでは、次回をお楽しみに。
次回は、嵐対百代の戦いに決着が。


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