戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない 作:瀬戸の住人
色々有りまして、中々書き進められなかったのですが、漸く仕上がりました。
遂に全国大会も決勝戦が終わり、表彰式へ。
そして今回は、冒頭から物語のラストのネタバレを小出しで仕掛けるスタイル。
果たして完結出来るか如何かも分からないから、物語のオチは小出しにするしか無いのが本音(オイ)。
そんな不安は兎も角…其れでは、どうぞ。
あの“第63回戦車道全国高校生大会・決勝戦”のクライマックス…西住ちゃん(西住 みほ隊長)と御姉さんのまほさんの一騎討ちの時の事だけどさ。
あの時、私は“負けたら全責任を取る”覚悟でずっと2人の一騎討ちを見守っていたよ。
だって勝つ為とは言え、西住ちゃん(西住 みほ)や原園ちゃん(原園 嵐)を半ば脅す形で戦車道へ引き戻したのは私だからね。
そうである以上、負けたとしても彼女達には何の責任も無いし、其の時は私1人が全ての責任を負う為にも、此処から逃げる訳には行かないと覚悟を決めていたよ。
実際、其の時迄に撃破されて観客席近くの集合場所に集まっていた各チームの皆も不安気な表情で試合を見守っていたし、特に
其の上、私の隣に居たかーしま(河嶋 桃副隊長)はあからさまに怯えていて、小山(小山 柚子)や名取ちゃん(名取 佐智子)も涙ぐんでいたから、私だけは目を背けずに全てを見届けようと思い、ずっと観客席前の超大型モニターを見詰めて居たのだけど…あの時、観客席から上がった歌声には勇気付けられたなあ。
確か、あの曲は当時中等部に居た五十鈴(五十鈴 華)さんの
ああ…“翼をください”だ。
そうだ。
今思い出したのだけど、西住ちゃんはね、優勝した後で……
「あの歌が最後の戦いの時、微かに聞こえたから、私達は応援団の皆から勇気を貰って戦い抜けました
って、私に話してくれた事があったんだ。
だから、今思い返すとあの試合で優勝出来たのは私達の力だけじゃない。
あの試合に来てくれた御客さんやTVの実況を見てくれていた人達に背中を押される様に、皆が一歩前へと進んで行った結果じゃ無かったかなと思っているよ。
そんな西住ちゃんも、今じゃあドイツのプロリーグで“欧州一強いプロ戦車道チーム”って言われているトップチームの隊長さんだもんな。
で、原園ちゃんも西住ちゃんを追い掛ける様に、今では同じリーグのライバルチームのエース戦車長。
此の儘行くと、何れはドイツのプロリーグ…あっ、正式には“
でね、今後は其のリーグの優勝争いだけで無く“欧州戦車道チャンピオンズカップ”の決勝戦で西住ちゃんと原園ちゃんが戦う可能性も有るから、本当に私達の世代は幸せ者だなって思うよ。
因みに、私は大学卒業後“自分は戦車道の選手より、戦車道チームの運営者になる方が向いているな”と感じて、今はプロ戦車道チーム“大洗オーシャンシャークス”の社長秘書として働いていますけどね。
まあ、目標は…目指せ、プロ戦車道チームのGMか、其れ共社長かな?(笑)
※北條 青葉/著、首都新聞社/刊『高校戦車道チーム卒業生・西住&原園世代の物語』より、角谷 杏へのインタビューから抜粋。
本書は戦車道日本代表チームが戦車道世界大会2連覇を果たした翌年に出版された書籍だが、其の特徴は「高校又は大学卒業後に戦車道選手から引退して新たな道を歩んだ人々を対象に、主に高校戦車道時代の思い出を語って貰ったインタビュー集」である事。
其の上で、所謂「西住 まほとみほ、原園 嵐の世代(此れを世間一般には「日本戦車道黄金世代」と言う)」の人々に高校戦車道時代の思い出を語って貰う形式で12人の人々にインタビューを行っているが、其の中には本書の出版後、プロ戦車道チーム監督やGM等のプロ戦車道チーム上層部の役職に出世したり、日本戦車道連盟の幹部になったりした人達が複数居り、此処で紹介した角谷 杏も後に自らの発言通り、地元のプロ戦車道チーム“大洗オーシャンシャークス”のGMや社長を歴任、在任中にはチームの戦力補強やスポンサー集め等で辣腕を振るった結果、戦車道国内プロリーグ(通称「TJリーグ」)3連覇やプロ戦車道クラブ世界大会優勝等を果たし、大洗オーシャンシャークスを世界的に知られるプロ戦車道チームへ導く立役者の1人となった。
戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない
第106話「優勝・大洗女子学園です!!」
「黒森峰フラッグ車走行不能、よって…大洗女子学園の勝利!」
此のアナウンスが試合会場内に流れた直後、観客達は感情を爆発させた。
「やった!」
「勝った!優勝だ!」
「廃校撤回だ!大洗女子万歳!」
大洗女子の応援席だけで無く、観客席に居る観客のほぼ全員に加えて、実況中継のゲストとして実況席に居たアイドルグループ“トライアドプリムス”メンバーの渋谷 凛・神谷 奈緒・北条 加蓮迄もが大歓声を上げる中、此の様子を観客席の外れに在る“撃破された両チームのメンバー集合場所”で眺めて居た大洗女子学園戦車道チームメンバーの大半は、信じられない思いで其の光景を見詰めて居た。
そんな彼女達の思いを代弁するかの様に、副隊長の河嶋 桃が驚愕の表情で……
「勝った…のか?」
と呟くと、親友の小山 柚子が目に涙を浮かべつつ……
「そうだよ、桃ちゃん!」
と言い聞かせる様に叫ぶと、彼女達の間で仁王立ちになっていた角谷 杏生徒会長がにこやかな声で「優勝だ!」と答え、続けて彼女達の後輩である農業科1年生・名取 佐智子も泣き笑いの表情で……
「はいっ!此れで大洗女子の廃校は撤回です!」
と叫んだ結果、彼女達の言葉を聞いた桃は白目を剥いて、其の場で立った儘気絶してしまったのである。
一方、大洗女子の勝利に興奮していたのは、試合会場に居る観客達だけでは無かった。
当然、首都テレビの実況を全国各地で見守っていた視聴者達も大騒ぎになったし、本来なら冷静に試合の生中継を行う立場である筈の首都テレビの関係者も例外では無かった。
例えば、東京・JR上野駅近くに在る首都テレビ本社では試合を見守っていた実況スタッフや社員達が大歓声を上げる中、報道部長の駿河 洋平が「おい皆、仕事を忘れるなよ!」と部下達へ向けて注意しつつも電話で首都新聞の関係者と“首都新聞・号外の発行や此の後放送する首都テレビの戦車道大会特番の打ち合わせ”を早口で進めていた。
更に、試合会場内で生中継を担当する首都テレビ・スタッフ達も笑顔で抱き合う中、観客席近くに在る首都新聞の物販ブースでは複数の女性スタッフが御客さんと一緒に嬉し泣きをする光景が展開されていた。
そして実況の編集や生放送を担当する首都テレビ・実況中継部隊の中枢部である「中継指揮車」の中でもスタッフ達が半ば仕事を放り出すかの様に歓声を上げたり席から立ち上がったりした為、生中継の総合プロデューサー・八坂 信夫が“何処かのヤクザの若頭”にしか見えない様な険しい表情を浮かべつつ……
「御前達!実況は未だ続いているんだ、視聴者の為にも最後迄自分達の仕事を忘れるな!」
と怒鳴り声を上げる破目になった…但し、そんな彼も怒鳴った後は笑顔を浮かべていたのだが。
そんな中、八坂達実況スタッフの耳に今回の決勝戦の実況を担当する加登川 幸太アナウンサーの声が聞こえて来た。
今…私は大変感動しています。
実は私事ですが、かつて私は
当時は、直向きに白球を追い掛けていた球児の姿に感動して“此の感動を全国へ御伝えしたい”と思い乍ら実況をしていましたが、時が流れるにつれて自分の環境や立場も変わった事で、其の時の感動をすっかり忘れてしまっていました。
しかし、縁有って今大会の実況を担当する中、此れ迄決してメジャーな競技では無いとされて来た戦車道に撃ち込む少女たちの姿が、長年忘れていた感動を思い出させてくれました。
特に無名校と言うだけで無く、文科省から“優勝出来なかったら母校が廃校になる”と宣告された上での出場と言う非常に厳しい状況下でも決して希望を失わずに戦い抜いた大洗女子学園・戦車道チームの姿が、私達に“勇気と感動”と言う在り来たりな言葉だけでは収まり切れない程の熱い想いを抱かせてくれた事は、生涯忘れないと思います。
そして最後に、県立大洗女子学園の皆さん、本当に優勝おめでとう!
此の実況が流れた直後、観客席の観客達から再び歓喜の絶叫が響き渡る中、首都テレビの「中継指揮車」内ではモニター越しに観客達の熱狂を見詰めて居る八坂と彼の右腕で此の実況中継ではチーフディレクターを務める首都テレビのベテランディレクター・大滝 秀次が満足気な微笑を浮かべていた。
斯くして、此の時の加登川アナウンサーの実況は、後年“戦車道全国高校生大会・伝説の実況”として長く語り継がれて行く事になる。
一方、私・原園 嵐を始めとする“ニ
すると、私の目の前で秋山 優花里先輩が……
「此の戦車でティーガーを……」
と呟き、続けて五十鈴 華先輩が「ええ」と答えた後で、武部 沙織先輩がⅣ号へ向けて……
「御疲れさまでした」
と労いの言葉を掛けたタイミングで、私は先輩方へ声を掛けた。
「先輩方、只今戻りました!」
すると秋山先輩が「原園殿~!」と嬉しそうな声を上げて私に抱き着いて来たので、私も抱き着き返し乍ら『秋山先輩も大活躍でしたね!』と答えた処、先輩も……
「原園殿も逸見殿のティーガーⅡ相手に大金星だったじゃないですか!やっぱり凄いです!」
と褒めてくれたので、私も笑顔を見せ乍ら……
『でも、先輩方や西住隊長なら絶対に黒森峰のフラッグ車を倒してくれると信じていたからこそ、あそこ迄戦えたんです!』
と返した処、西住隊長が私達の前にやって来て……
「原園さん、有難う!私達も原園さんや皆の事を信じていたから、最後迄頑張れたよ」
『はいっ!』
と会話した直後、此方へ歩み寄って来た西住隊長が突然ふらついたので、慌てた私は秋山先輩と一緒になって隊長を支えると、隊長が……
「私…さっきから体の震えが止まらなくて、戦車から降りる時も倒れそうになったんだ。今も心臓がドキドキしている」
と答えたのを聞いた直後……
『わ…私も今になって体が震えて来た!』
そう、私も“自分が決勝戦でやった事”を思い出し、急に体が震え出してしまったから、西住隊長と一緒に其の場で倒れずに立って居るのが精一杯の状態になってしまったのだ。
其の光景を見た武部先輩が……
「うわっ…みぽりんだけで無く、らんらん迄震えだすなんて!」
と驚きの声を上げると、近くに居た私のチームメンバーで装填手の二階堂 舞が苦笑いを浮かべつつ……
「黒森峰の皆、本当に強かったからね」
と指摘する中、同じくチームの操縦手・萩岡 菫がやって来て……
「西住先輩も嵐ちゃんも、此れを飲んで落ち着こう。大洗町の
と告げ乍ら御茶の入った魔法瓶を取り出すと、何時の間にか秋山先輩が西住隊長と私の分のコップを用意してくれていたので、私と隊長は奥久慈茶をじっくり味わう事で漸く落ち着く事が出来たのだった。
すると、其処へ河嶋先輩がやって来て「西住!」と呼び掛けた後、西住隊長へ向けて落ち着いた声で……
「西住。此度の活躍、感謝の念に堪えない。本当に……」
と話している中、私は河嶋先輩の周囲を見て……
(会長が居て、柚子が涙ぐんでいる…あっ、佐智子ちゃんも目が赤くなっているから、さっき迄泣いて居たのかな?)
と思っていた矢先、河嶋先輩の話が途中から……
「本当に、ありが……」
と口調がたどたどしくなったと思った途端!
「うわ~ん!」
遂に河嶋先輩は大声を上げて泣き始めてしまったのだ。
其の為、小山先輩が彼女の傍らにやって来て「桃ちゃん、泣き過ぎ」と語り掛けて来たものだから、私は思わず苦笑いを浮かべていると……
「でも、河嶋先輩って豆腐メンタルな人だから、此処迄良く我慢したなって気がします」
と語り掛けて来た
『佐智子ちゃん、私も今、同じ事を思っていたよ』
と答えた後、私達は思わず笑いがこみ上げて来た為、互いにクスクス笑い乍ら頷き合っていたのだけど、此処で角谷会長が……
「西住ちゃん」
と呼び掛けて来た為、西住隊長が「はい?」と答えたのを見掛けた直後、会長は珍しく優し気な声で……
「此れで学校、廃校にならずに済むよ」
と語った為、西住隊長が「はい」と答えると会長は……
「私達の学校、守れたよ!」
と告げた後、西住隊長も嬉し気な声で「はいっ!」と答えた途端、会長が凄い勢いでジャンプすると、何と西住隊長に抱き着いてから彼女の耳元で……
「ありがとね」
と告げたのが私の耳にも聞こえて来た後、西住隊長も……
「いえ…私の方こそ、有難う御座いました」
と答えたのを聞いた私は胸に熱い物を感じ、佐智子ちゃんと一緒になって涙を堪えて居た。
そうしたら、私の隣で話を聞いて居た瑞希が……
「お~っ、此処でも新たなカップリングが!?」
と
『
と告げた処、当人は反省の色も無く“てへぺろ♪”と返して来た為、私は“養豚場の豚を見る様な目”で
「あ?」
と、冷泉先輩が何かに気付いて前方に視線を向けているのに気付いた私も釣られて視線を前方へ向けると、其処には風紀委員の園
そして彼女はタブレットを操作して画面内のデータを消去した後……
「貴女の遅刻データ、全部消したわよ」
と告げた処、冷泉先輩は感極まった声で……
「お~っ、有難うソド子~!」
と叫びながら
其処へ舞が御道化た声で……
「あっちはあっちで平常運転だね♪」
と語るのを聞いて居ると、其処から少し離れた場所では“
「次は頑張ろう!」
「頑張るから!」
「頑張るずら!」
と叫んで今後の戦車道の練習を頑張ろうと宣言している。
一方、西住隊長達の前では“
「今夜は徹夜して、戦車が自走出来る位には直すよ!」
と自動車部の仲間達に伝えるとチームの装填手・スズキ先輩が……
「OK!」
と答え、操縦手担当のツチヤ先輩が……
「そう来なくっちゃ!」
と返して、砲手担当のホシノ先輩も笑顔で頷くと、自動車部の新人部員でもある菫も……
「はいっ!私も御手伝いします!」
と答えて盛り上がっている中、“
「勝どきでござる!」
先ず、左衛門佐先輩が第一声を上げるとメンバー全員が「「エイエイオー!」」と叫んで、すっかり盛り上がっていた。
斯くして、皆で一通り勝利の余韻を味わった後、会場内の係員から表彰式の案内が来たので、会長が……
「よしっ、じゃあ行くよ!」
と皆へ指示を出す中、未だ河嶋先輩は泣いて居て小山先輩に慰められているのを見た私は……
「何だかなあ……」
と思って苦笑いを浮かべていたのだけど、其処へ西住隊長が会長へ向けて……
「あっ、一寸だけ…済みません」
と告げて歩き始めたので、私も其の姿を目で追っていたら、其の視線の先には既に準優勝の表彰式を終えた後、移動の為に用意された軍用トラックに乗る準備を整えている黒森峰女学園・戦車道チームのメンバー達が集っており…其処には隊長の御姉さんで黒森峰の隊長・西住 まほの姿が在った。
「西住殿……」
御姉さんに会いに行く西住隊長の姿を見て、心配気な声で呟く秋山先輩と同じく心配気な表情を浮かべた“
『大丈夫ですよ、先輩方。多分ですけど、西住先輩は御姉さんと話がしたいだけで、何処にも行かないです』
と告げた処、武部先輩が“図星を突かれた”様な表情を浮かべつつ……
「
と返して来た為、私は静かな声で……
『そりゃ、もう…先輩方の顔に“此の儘、西住先輩は黒森峰へ戻っちゃうのかな”って出ていましたから。でも、其れは有り得無いですよ』
と答えたので“あんこうチーム”の先輩方が揃って私の方へ視線を向けたのを見た私は確信を持って“西住隊長が黒森峰へ戻らない理由”を告げたのだった。
『もう、先輩の戦車道は
事実、暫く経った後で私が直接西住先輩から聞いた処によると、まほさんは先輩へ向けて「優勝おめでとう。完敗だな」と告げた後、爽やかな声で……
「みほらしい戦いだったな。西住流とはまるで違うな」
と先輩の戦車道を評したそうである。
勿論、此の時の私達はやや離れた場所に居る西住隊長とまほさんの会話を聞き取る事が出来なかったので、様子を見る事しか出来なかったのだが、やがて西住隊長が心配気に見ている仲間達の姿を見た後、まほさんに何事か話し掛けてから大声でこう語ったのは、今でも鮮明に覚えている。
「御姉ちゃん…やっと見つけたよ、私の戦車道!」
其れに対して、まほさんが笑顔で頷いたのを見届けた私は思わず“やっと、先輩とまほさんが和解出来た!”と思い、涙を浮かべ乍ら2人を見詰めて居たのだが、其処へ黒森峰側から……
「次は負けないわよ!」
と呼び掛ける声がした。
其処で西住隊長は其の声の相手で、黒森峰の副隊長・逸見 エリカへ「はいっ!」と答えた直後、今度は……
「嵐!貴女も次は覚悟しなさいよ!」
何と、逸見先輩の補佐役である黒森峰の1年生エース・五代 百代が私へ向けて叫ぶと、今度は黒森峰のメンバー全員が……
「「次は必ず、私達全員で貴女を狙い撃ちにするから!」」
と呼び掛けて来た為、私も直ぐ大声で……
『はいっ!でも、簡単にはやられないですから!』
と返事をすると、軍用トラックに乗った黒森峰のメンバー達が私達へ向けて大きく手を振っており、其の儘彼女達を乗せた軍用トラックは走り去って行った。
其の後、西住先輩が私へ向けて……
「原園さん、すっかりエリカさん達に名前を覚えられちゃったね」
と話し掛けて来たので、私も笑顔で……
『そうですね…私も次の試合に備えて頑張らないと、黒森峰の皆に狙われちゃいますから♪』
と返してから後ろを振り返ると、其処に居た“あんこうチーム”の先輩達は皆苦笑いを浮かべており、特に秋山先輩は……
「うわっ…黒森峰の皆さんが狙っていると言われたのに、笑顔で“頑張る”って答えられる原園殿は肝が据わっています!」
と言い出したから、私は苦笑いを浮かべつつ……
『いえ、今迄戦車道やタンカスロンで色々な修羅場を経験したから……』
と語り乍ら、ふと視線を愛車“
『お…御父さん?』
愛車の上に立っているのは、私の父・原園 直之…の幻影。
少なく共、私には其の様に見えた。
だから…私は其の時、父さんの幻影に向けて、笑顔で大きく右手を振った。
すると父の幻影は背中を向けると右手を軽く振って“さようなら”の挨拶をし乍ら、夕日の中に消えて行った様に見えた。
多分、父は私達を見守る役目を終えて、永遠の眠りに着くのだろう…と思った時、何と西住先輩が私に向けて“信じられない者を見た”様な表情でこう問い掛けて来た。
「原園さん、今、“
其処で、私は西住先輩を安心させる為に小さく頷くと、正面に停車している“
『御父さん、私だけじゃ無く最後迄皆を見守ってくれて有難う』
すると不安気な表情を見せていた西住隊長は笑顔を取り戻すと……
「そうか…きっと、原園さんの言う通りだよね」
と答えた後、私と同じく“
「本当に、有難う御座いました」
と御礼を述べたのだった…尤も、其の様子を眺めて居た秋山・武部・五十鈴先輩は揃って驚愕の表情を浮かべていたし、幽霊が嫌いな冷泉先輩に至っては顔が真っ青になった儘……
「あ、あれは
と呟き乍ら立ち尽くしていたけれど、先輩方は其れ以上詮索する事はしなかった。
そして迎えた、表彰式。
「優勝・大洗女子学園!」
場内アナウンスが一際大きく会場内に響き渡ると観客達の大歓声をバックに、西住 みほ隊長へ優勝旗が手渡される。
みほは優勝旗を受け取った処、其の重さもあって少しよろけたが、隣に居た沙織が直ちに彼女の体を支え、其処へ優花里や嵐も加わった事で大事には至らず、観客達が多少どよめき声を上げるだけで済んだ。
一方、大洗女子の他のメンバー達の多くは、みほ達と一緒に表彰台の上から観客達の様子を眺めつつ、未だ優勝した事が信じられない様子だったが、其れとは対照的に野々坂 瑞希や萩岡 菫・二階堂 舞の“群馬みなかみタンカーズ”組は観客席へ向けて大きく手を振ってアピールしていたから観客達も大歓声で答えており、会場内のボルテージは更に高まっていた。
そんな中、観客席の裏手に集まっていた大人達の中で、表彰台に立つ次女・みほの姿を無愛想な表情でずっと見詰めて居たしほが張り詰めた表情を微かに緩め乍ら、みほ達大洗女子の選手へ向けて拍手を送ったのだが、其の姿を見た明美は御道化た声で……
「しぽりん、可愛くない~♪」
と呼び掛けた為、隣に居た周防 長門や原園 鷹代達・大人勢は皆一様に苦笑いを浮かべたのだった。
斯くして、第63回戦車道全国高校生大会は、茨城県代表・県立大洗女子学園の初優勝で幕を閉じたが、此の試合は多くの人々の中に強烈な記憶として残り続けた。
先ず、此の試合を直に見た観客達は勿論の事、首都テレビの実況中継を見た者達も皆、最後迄試合を見守った事を生涯の誇りに思った。
また理由は如何あれ、此の試合を見なかった一部の戦車道ファンやスポーツファン達は其の事を生涯恥じた。
其れと共に、此の試合を何らかの形で見た者達は皆、優勝を果たした大洗女子学園・戦車道チームの少女達の姿を見て、幸せな気持ちになった。
そして、此の試合を境に長年人気が低迷していた日本の戦車道は徐々に人気を回復して行っただけで無く、其の後の日本戦車道の歴史が大きな転換点を迎える切っ掛けになったと後世に記録される事となる。
そう、此の日から“日本戦車道・黄金時代”の幕が静かに上がったのである。
こうして、大会の表彰式は終わったのだが……
其れから暫く経って日も暮れようとする頃、試合会場付近の裏山では“此の日最後の事件”が起きていた。
「しまった!寝過ごした!」
試合前日の夜中に試合会場へ一番乗りしたのが災いし、前祝の宴会をやった後で超熟睡状態の儘、何と決勝戦を寝過ごしてしまったアンツィオ高校戦車道チームの面々。
其の
「
其の声に反応したアンチョビは目の前で仁王立ちになっている少女が、問題の“書置き”を書いた当人であると気付いて驚愕し乍ら……
「あっ!え~と、其の…マルゲリータ。実は……」
と、
「「あっ!」」
と叫んだが、其の相手であるチームの1年生エース候補・
「皆さん、戦車道全国大会の表彰式は終わりましたよ!もう日が暮れると言うのに、一体何時迄寝ていたのですか!」
此の一言で、アンツィオ高戦車道チームの面々は英語で表現すると“orz”のスペルみたいな
斯くして、アンツィオ高の面々の中で唯一朝の内に目覚めて試合会場で試合観戦をする事が出来た1年生の
(第106話、終わり)
此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第106話をお送りしました。
本当に遅くなりまして、申し訳御座いません。
今後も不定期投稿になると思いますので、如何か御了承頂ければと思います。
其れは兎も角、遂に優勝を果たして廃校問題に決着を着けた(?)大洗女子の皆さん。
ええ…“?”マークを付けた理由は言わずもがなですが(爆)。
因みに、ラスト近くでのオカルトじみた話の件ですが、此の時に嵐ちゃんと“あんこうチーム”メンバーだけは一瞬ですが直之さんの幻影を見ています。
只、其れは麻子が解釈した様に単なる幽霊では無く、むしろ嵐ちゃん達大洗女子の娘達を見守る守護霊の様な存在として現れたと解釈して頂ければ。
そして、此の大会最後のオチは寝落ちしたアンツィオ高校の面々を叱り飛ばすマルゲリータちゃん。
彼女、ラテン気質が強過ぎる(笑)アンツィオでは珍しい真面目枠なので、大抵こう言う役回りをさせられるのです…ちかた無いね(爆)。
と言う訳で、次回はいよいよ戦車道全国高校生大会篇の最終回。
当然、大洗女子の優勝パレードを想像する方々も居られるでしょうが、其の前に本作では未だ決着が着いていない“闇深い話の結末”を先に語る予定です。
そう、廃校問題を巡って大洗女子を食い物にしようとした“奴ら”は、決勝戦の後で如何なったのか?
ある意味、予想外のゲストも予定しておりますので、御期待下さい。
と言う訳で、次回もお楽しみに。