戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

13 / 115

お待たせしました。

約2ヶ月ぶりの本編、これよりリスタートです。




第9話「最初の授業は、戦車探しです!!」

 

 

 

学園の片隅にある、煉瓦造りの建物を5つ繋げた様な建造物。

 

かつては戦車道で使う戦車の格納庫として使われていた、この建物の前に少女達が集おうとしている。

 

今日は、大洗女子学園で復活した戦車道の授業初日である。

 

 

 

 

 

 

「思ったほど集まりませんでしたね…」

 

 

 

この授業を主導する生徒会トリオの片割れで、広報担当の河嶋 桃が、不安気な口調で呟く。

 

 

 

「全部で18人です。私達を入れて21人…」

 

 

 

副会長の小山 柚子が、これまた不安気な表情で、傍らにいる生徒会長・角谷 杏に戦車道履修者の数を報告すると、彼女は柚子を励ます様にこう訂正した。

 

 

 

「小山、原園ちゃん達4人を入れたら25人になるよ。そして西住ちゃんも入れると経験者が5人いるから、結果オーライだけど何とかなるでしょ♪」

 

 

 

ちょうどその時、原園 嵐を始めとする1年生4人、元「群馬みなかみタンカーズ」メンバーが、戦車道履修者の集合場所である煉瓦造りの建物の前に遅れてやって来た。

 

 

 

 

 

 

『良かった、ギリギリ時間に間に合った!!』

 

 

 

 

 

 

私、原園 嵐を含めた、みなかみタンカーズの元メンバーは、駆け足でようやく集合場所である煉瓦造りの倉庫前へやって来た。

 

すると瑞希が息を弾ませながら、舞に文句を言う。

 

 

 

「舞、アンタが来るのが遅くなったから…」

 

 

 

「ゴメン…私、みんなで落ち合う場所がよく分からなかったの」

 

 

 

涙目になって瑞希に謝る舞を見かねた菫が、こう告げる。

 

 

 

「仕方が無いよ、ののっち。私達、皆クラスが別々だから集まるのに一苦労だもの」

 

 

 

『あっ…もう皆、集まっているみたいだよ』

 

 

 

その時、目の前には戦車道を共に履修する事になった先輩方や同学年の娘達が集合していた。

 

 

 

まず、西住先輩達、普通Ⅰ科2年A組の3人…あれ?

 

離れた場所にもう1人、癖毛の強いナチュラルボブヘアの人がいる。

 

様子を見ると、西住先輩を眺めながら顔を朱に染めているけれど…もしかしたら西住先輩のファンなのかな?

 

 

 

次に、私の親友で、先日の生徒会長室での一件が切っ掛けで戦車道を履修する事になった、澤 梓達1年生6人。

 

 

 

その隣には、歴史上の偉人のコスプレをしているらしい集団が4人いる。

 

特にその中の1人は、明らかに第二次大戦中のドイツ陸軍装甲部隊の名将、エルヴィン・ロンメル元帥のコスプレをやっているけれど…一体、何者かな?

 

 

 

そして部員不足で廃部になったと言う、バレー部のメンバーが4人。

 

 

 

この時、4人の中で一番身長の高い人が私を見かけると「おーい、嵐!!」と声を掛けて来たので、私も手を振って答えた。

 

 

 

『あっ、忍さん。バレー部も戦車道やるのですか?』

 

 

 

「うん、なかなか部員が集まらないから、これを機会に部を宣伝しようと磯辺部長が思い付いてね」

 

 

 

こう話すのは、隣のクラスの河西 忍さんだ。

 

彼女は身長170㎝の長身を生かして、バレー部ではアタッカーを務めているのだが、部は今年度、肝心の部員が4人となってしまい、あえなく廃部になってしまっていた。

 

それでも部員達は、バレーの試合が出来る最低限の人数である6人まで部員を揃えるべく、あちこちで新入部員の勧誘をしており、実は私にも勧誘の声が来ていたのだ。

 

何故なら、忍さんが「隣のクラスに割と背が高い子がいる」のに気付いて声を掛けた所…それが、身長166㎝と標準の女子より高めの背丈を持つ私だったのだ。

 

私自身はと言うと、その時は戦車道を早く忘れたかったし、高校3年間をバレーに打ち込むのも悪くないと思っていたので、即答こそ避けたもののバレー部に入ってみようと思っていたのだが…その翌日、生徒会が私に戦車道を履修させようと迫ってきたので、入部届を出せないまま今日を迎えてしまったと言う訳だ。

 

そこへ、バレー部々長で2年生の磯辺典子先輩が話に入って来た。

 

 

 

「ああ河西、原園さんと話していたんだ?」

 

 

 

「はい部長。それでね嵐、バレー部の件だけど、どうする?」

 

 

 

『それが…生徒会から戦車道を履修しろって言われてしまって、抵抗したのだけど…』

 

 

 

そこへ、瑞希が口を挟む。

 

 

 

「あれ? 生徒会長に土下座して『戦車道を履修させて下さい』って言ったのは誰だっけ?」

 

 

 

『…ののっち!!』

 

 

 

と瑞希に言い返した私の様子を見た、忍さんは驚いた表情でこう言って来る。

 

 

 

「あれ…嵐って、戦車道経験者だったの?」

 

 

 

すると、今度は菫が笑顔で忍さんと磯辺部長へこう語った。

 

 

 

「そうですよ。私達、小学校から地元のユースクラブで戦車道をずっとやって来たんです」

 

 

 

そして、舞が止めを刺す様にこう喋る。

 

 

 

「私、菫ちゃんやののっちと嵐ちゃんとは7年間戦車道やって来た仲間だよ!!」

 

 

 

そんな私達の様子を見た、忍さんと磯辺部長は、残念そうだが納得した表情で、私にこう告げた。

 

 

 

「ああ、バレーよりも戦車道を取っちゃったか…まあ小学校からずっとやっている仲間同士じゃあ、仕方ないね」

 

 

 

「残念だけど、さすがにバレー部々長としても戦車道とバレーを両方やれとは言えないな…事前に調べたのだけど、戦車道ってかなり体力を使うらしいから」

 

 

 

『磯辺部長に忍さん…本当に申し訳ないです。生徒会がここまで強引に戦車道に勧誘するとは思わなくて』

 

 

 

私は、両手を合わせて磯辺部長と忍さんに謝ったのだが、そこへ空気を読まない舞がいきなりこんな事を言い出した。

 

 

 

「でも、私バレー部に入ってみたい♪」

 

 

 

その一言に、忍さんが歓喜の声を挙げる。

 

 

 

「えっ…思わぬ所に希望者が!?」

 

 

 

だが、舞の身長が156㎝と低い事に気付いた磯辺部長が残念そうに呟く。

 

 

 

「あー、でも彼女身長が低いからなぁ…」

 

 

 

すると舞は「えーっ!!」と泣きそうな顔で嘆いたが、今度はその様子を見ていた、バレー部の残り2人、近藤妙子さんと佐々木あけびさんが、相次いで磯辺部長へ反論した。

 

 

 

「でも部長、今はそんな贅沢言っていられませんよ!!」

 

 

 

「そうです!! いっその事、原園さんも巻き込んで一気にバレー部復活です!!」

 

 

 

『あ…あの…私は戦車道の方へ…』

 

 

 

また、私のバレー部入部を巡る件が蒸し返されそうなので、私は戦車道を優先せざるを得なくなった事を再び話そうとしたが、バレー部は聞く耳を持たずに舞を入部させるべきか否かで議論を始めてしまった。

 

その様子をジト目で眺めていた瑞希は、不意に私へこう語り掛けた。

 

 

 

「嵐…何だかバレー部って、元気だけはありそうな人達ね」

 

 

 

『…』

 

 

 

 

 

 

そんな時だった。

 

戦車道の授業を主導する生徒会トリオが煉瓦造りの倉庫前に並ぶと、河嶋先輩がこう宣言した。

 

 

 

「これより戦車道の授業を開始する」

 

 

 

これで、バレー部を含めた戦車道履修者全員は私語を止めて、授業を聞く態度に変わっていた…こう言う時は、河嶋先輩も役に立つな。

 

そこへ、先程まで西住先輩の後ろにいた癖毛の強い少女が興奮気味に質問する。

 

 

 

「あの、戦車はティーガーですか? それとも…」

 

 

 

だが、この質問に対して角谷会長はこう惚けるだけだった。

 

 

 

「えーと、何だったけな?」

 

 

 

やれやれ…会長、学校にある戦車の名前すら把握していないのかと私が思ったその矢先、煉瓦造りの倉庫の扉が重々しく開かれた。

 

だが、目の前には履帯が外れた状態の古びた戦車が1輌。

 

そして、様々なゴミやゴミの様な物が置かれているだけだった。

 

 

 

「うええ…」

 

 

 

倉庫の中の余りの汚さに、梓達が呻き声を挙げる。

 

 

 

「何これ?」

 

 

 

と、当惑しているのは、優季だ。

 

桂利奈ちゃんは目の前の戦車を見て、一言。

 

 

 

「ボロボロ」

 

 

 

その隣では、あゆみが文句を言っている。

 

 

 

「ありえなーい」

 

 

 

一方、五十鈴先輩は本気か天然なのか、分かりかねる発言をする。

 

 

 

「侘び寂びでよろしいんじゃ」

 

 

 

「これはただの鉄錆」

 

 

 

そんな五十鈴先輩の言葉にツッコんでいるのは、武部先輩だ。

 

 

 

 

 

 

皆、一様にアテが外れた様な感想を抱いている中で、私は目前にある戦車の正体を見極めようと、瑞希に話し掛けてみた。

 

 

 

『ねぇ瑞希、これ…ドイツのⅣ号戦車、それも短砲身の初期型かな?』

 

 

 

すると、瑞希も小さく頷きながらこう語る。

 

 

 

「そうね…でも、レストアしないとマトモに使えそうに無いけれど?」

 

 

 

実の所…私もこの時は「この学園は、この程度の戦車しか置いていないのか」と失望を隠せなかった。

 

だが、その時。

 

西住先輩が1人、目の前に置かれているⅣ号戦車の初期型(これは後でD型だと分かった)へ近づくと周囲を見渡し、静かに手を戦車のフェンダーへ触れる。

 

そして、何か確信を持った口調で、こう呟いたのだ。

 

 

 

「装甲も転輪も大丈夫そう…これで行けるかも」

 

 

 

『えっ…!?』

 

 

 

この瞬間私は、自分の目を疑った。

 

まさか西住先輩…本気で戦車道へ戻る気なんだ!?

 

だから、ボロボロの状態の戦車でもちゃんと修理をすれば使えるのかどうか、自分の手で確かめていたのだ。

 

それと同時に、私は「この学園は、この程度の戦車しか置いていないのか」と思っていた事を心の底から恥じていたが、そう感じたのは私だけでは無い様だった。

 

 

 

「おおお…」

 

 

 

梓達や先輩方だけでなく、瑞希や菫、舞までも西住先輩の一言で、どよめいている。

 

特に、私と同様に西住先輩を慕っているらしい癖毛の強い少女は「あはっ」と、感極まった表情で、西住先輩の後姿を眺めている。

 

そして…西住先輩がゆっくりと顔を私達の方へ向けた瞬間…西住先輩は優しそうな表情で私達を見つめていた。

 

今振り返れば…その時、私達大洗女子学園・戦車道チームの歩む道は定まっていたのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

しかしこの時、肝心の戦車は目の前にあるボロボロのⅣ号戦車1輌しかないのも事実。

 

 

 

 

 

 

皆もその事に気付いて、それぞれに今後の不安を語り合っていた。

 

呆れた事に、それは生徒会も同様だったらしく、小山先輩と河嶋先輩が皆の前でこんな事を話す。

 

 

 

「えっと…この人数だったら…?」

 

 

 

「全部で6輌は必要です」

 

 

 

その会話を聞いた、瑞希がまさかと言う表情でこう問い掛けた。

 

 

 

「角谷会長、まさか…これから『みんなで戦車を探そっか?』って言うつもりですか?」

 

 

 

すると、会長は予想通りの回答を寄越してきた。

 

 

 

「ん~、鋭いねぇ野々坂ちゃん。座布団1枚♪」

 

 

 

「「「「「「「「えーっ!?」」」」」」」」

 

 

 

「探すって…」

 

 

 

「どういう事ですか?」

 

 

 

余りにもあんまりな角谷会長からの回答を聞いた皆が、一斉に当惑していると、今度は河嶋先輩が事情説明を始める。

 

 

 

「我が校においては、何年も前に戦車道は廃止になっている。だが、当時使用していた戦車がどこかにある筈だ。いや、必ずある」

 

 

 

すると、菫が唖然とした表情で、私に向かって小声で話し掛けて来た。

 

 

 

「嵐ちゃん…それって『戦車はどこにあるのか分からない』って事じゃない?」

 

 

 

そこで、私は菫と瑞希、舞にだけ聞こえる声で、逆に問い掛ける。

 

 

 

『アンタ達こそ、母さんから戦車の事で何か言われなかった?「必要な戦車は用意する」とかって?』

 

 

 

だが、その問い掛けに対して3人は何も答えない。

 

なるほど。

 

母はアレで、結構なケチだからね…戦車の手配まではやっていないか。

 

菫達もそこまでは母から知らされていなかったのかと思うと、少しだけ意地悪な笑みが浮かびそうになったが、さすがに表情に出すのは我慢した。

 

そんな会話をしている間にも、河嶋先輩の説明は続いている。

 

 

 

「明後日、戦車道の教官がお見えになるので、それまでに残り5輌の戦車を見つけ出す事」

 

 

 

その説明が終わった直後、歴史上の偉人のコスプレ集団のリーダー格らしい、赤いマフラーを羽織っているショートカットの人が質問して来た。

 

 

 

「して、一体どこに?」

 

 

 

だが、その質問に対して角谷会長がお手上げのポーズで語った答えは無責任過ぎるものだった。

 

 

 

「いや~それが分かんないから探すの」

 

 

 

それを聞かされた梓が、唖然とした表情で問い掛ける。

 

 

 

「何にも手掛かり無いんですか?」

 

 

 

これに対して、会長は真っ平らな胸を張って「ない!!」と言い張るだけだった。

 

会長、私も胸は平甲板ですけれど、胸を張って何にも無いって言うなんて、無責任もいい加減にして下さい……

 

しかし、そんな私達の不安と不満はこれ以上聞かないと言わんばかりの表情で、河嶋先輩が号令を下した。

 

 

 

「では、捜索開始!!」

 

 

 

かくして、私達戦車道履修者は、否応なく戦車探しに出掛ける事となった。

 

私も会長の話を聞いて呆然としている瑞希達と一緒に、戦車探しをするべく倉庫から出ようとした時、武部先輩が不機嫌そうに愚痴をこぼしているのが聞こえて来た。

 

 

 

「聞いてたのと何か話が違う…戦車道やってるとモテるんじゃあ?」

 

 

 

すると、角谷会長が武部先輩の前にやって来て、こう励ます。

 

 

 

「明後日カッコいい教官が来るから」

 

 

 

「ホントですかぁ!?」

 

 

 

急に表情が明るくなった武部先輩からの問い掛けに、会長はこう付け加える。

 

 

 

「ホントホント、紹介すっから」

 

 

 

「行ってきま~す♪」

 

 

 

アッという間に上機嫌になった武部先輩は、ハイテンションで倉庫から駆け出して行ったが…その姿を見た瑞希は、呆れた表情で私に問い掛けた。

 

 

 

 

 

 

「ねえ嵐…戦車道に男の教官、いたっけ?」

 

 

 

『いない、わね』

 

 

 

 

 

一方、そんな会話を交わしながら倉庫から出て行く嵐達の後姿を見つめる生徒会トリオだったが、柚子が心配そうな表情で杏に話し掛けた。

 

 

 

「会長…原園さん達の戦車は既に明美さんが…」

 

 

 

だが、それを聞いていた桃が、心配無用と言う表情で柚子を制する。

 

 

 

「柚子、それをここで言ってはダメだ。それに、あの戦車は原園達の物になると決まった訳ではない。明美さんからもそう言われている」

 

 

 

すると、杏が我が意を得たりと言う表情で、桃と柚子に語り掛ける。

 

 

 

「河嶋の言う通りだよ。経験者だからと言って、原園ちゃん達が特別扱いされていると皆が思ったら、チームがまとまらなくなる」

 

 

 

その一言に、柚子は頭を下げて謝る。

 

 

 

「会長…済みませんでした」

 

 

 

それに対して会長は、微笑を浮かべながら頷くと、こう呟くのだった。

 

 

 

「それにね、こう言うのはみんなで一緒にやるのが、一番楽しいんだよ♪」

 

 

 

 

 

 

Ⅳ号戦車D型が置いてある倉庫を出てから、およそ1時間後。

 

私達のチームは、梓達と一緒に、学園の図書館にいた。

 

生徒会から戦車探しを命じられて倉庫を出た時、梓から「経験者の嵐から、戦車道の事を色々と教えて欲しい」と頼まれたのだ。

 

それを聞いた瑞希、菫、舞も梓達が私の友人である事に興味を持ち、逆に梓達も瑞希達がみなかみ時代の私の友人である事に関心を抱いた事からお互い意気投合して、一緒に戦車探しもやる事になった。

 

そこでまず、互いの自己紹介を終えた後、梓からの提案で学園内にあると思われる戦車の手掛かりを得るべく、図書館で学園の戦車道の歴史に関する資料漁りをする事になったのだが……

 

 

 

 

 

 

「使っていた戦車の記録、見付かった?」

 

 

 

「戦車のセの字も無いよ」

 

 

 

梓からの質問に、あやがガッカリした表情で答えている。

 

そこへ桂利奈が「ウチの学校が戦車道止めた時期からさっぱり」と告げると、舞が不審そうな表情で、みんなへこう話す。

 

 

 

「って言うか、記録が全然残ってないって、おかしいよ? 戦車道に使う戦車って、手放しても犯罪に使われた時とかに警察が調べる必要があるから、文科省や警察庁からの通達で、【必ず全ての記録を残す様になっている】って、明美さんやみなかみタンカーズのコーチも言っていたのに」

 

 

 

確かに、舞の言う通りだ。

 

それに、この学園の図書館、地上の学校にある図書室とは比べ物にならない位に大きくて、蔵書や資料も大量にあるのに、学園の戦車道に関する資料だけが戦車道を止めた時期から全く残っていないと言うのは不自然過ぎる。

 

そう思っていると、優季が皆へこんな質問をした。

 

 

 

「でも、何で突然、戦車道止めちゃったのかなー?」

 

 

 

それに対して、あゆみがこう答える。

 

 

 

「やっぱ、人気無くなったからでしょ? 昔っぽいから」

 

 

 

「そっかー」

 

 

 

と、答える優季。

 

だが、そこへ瑞希が口を挟んだ。

 

 

 

「そうでも無いみたいよ。戦車道を止めるまでの記録を読む限り、余りにも止めるのが突然だし、ここが戦車道止めた当時は、戦車道の人気も今よりは高かったしね。もしかしたら、記録に残したくない程の不祥事をやらかしたんじゃないかしら?」

 

 

 

すると、続いて菫もこう話す。

 

 

 

「うん。舞も言っているけれど、そんな事でもない限り、記録が全く残っていない、と言うのはおかしいよ」

 

 

 

そこへ瑞希と菫の推理を聞いた梓が、何故と言う口調で質問する。

 

 

 

「不祥事、って?」

 

 

 

それに対して瑞希はこう答えた。

 

 

 

「想像するしかないけれど、履修者の間でいじめや暴力事件があったとか、戦車道の予算を誰かが不正に使用したとか、かな? 逆に、試合や練習中の事故が原因なら、まず全国紙に記事が載って、そこで記録が残るから、このケースは有り得ないわね」

 

 

 

瑞希の推理を聞いた皆は「う~ん」と唸りながら、首を捻っている。

 

まあ、現状ではそう想像するしか無いけれど、それで戦車が見付かる訳でもない。

 

だから私は、この状況をどう打開しようかと悩んでいた。

 

その時、本を読んでいる紗希の姿が目に入る。

 

 

 

「あれっ紗希、何を読んでいるの?」

 

 

 

すると、紗希は読んでいる本の表紙を見せてくれた。

 

それは、パンツァージャケット姿の少女が戦車をバックにしているイラストである。

 

 

 

「ああ『萌え萌え戦車道!!』か。それ、見た目はともかく戦車や戦車道に関する内容はマトモだから、初心者にはお勧めだよ…って、えっ?」

 

 

 

その瞬間、紗希の表情の僅かな変化を読み取った私は、ビックリして問い掛ける。

 

 

 

「何…紗希、それ本当なの!?」

 

 

 

私の問い掛けを聞いた紗希は、ゆっくり頷いた。

 

まさか…そんな事って!?

 

 

 

「どうしたの嵐、紗希!?」

 

 

 

その様子を見た梓が驚きながら問い掛けて来たので、私は紗希から『萌え萌え戦車道!!』を渡してもらうと、ある頁を皆へ見せながら、こう告げた。

 

 

 

「それが…紗希がね、最近見たって言うの。この頁に載っている戦車を校内で見たって!!」

 

 

 

 

 

 

「「「えええっっっ!?」」」

 

 

 

 

 

 

紗希の記憶を頼りに、図書館を出た私達が向かったのは、校内で飼育されている動物小屋の鍵を管理している、農業科の一室だった。

 

紗希は先日、ある動物の飼育当番をやった時に戦車らしき物が、その動物小屋に入っているのを見たと言うのだ…いや、実際は紗希がそう語ったのではなく、私が紗希の仕草からそう読み取ったのだが。

 

そのせいで瑞希から、「アンタ…いつの間にテレパシーが使える様になったの?」と、皮肉を言われてしまったが、今はそれどころでは無い。

 

更に、紗希はその戦車を見た場所までは覚えていなかったので、それを思い出してもらう為に農業科へ出向いたのだった。

 

すると、その部屋にはたまたま先生がおらず、代わりに農業科の生徒2人が動物小屋の鍵の貸し出しを担当しているとの事だったので、彼女達に事情を説明した所、長沢さんと言うサイドテールの黒髪に白いバンダナをしている人から思わぬ答えが返って来た。

 

 

 

「あっ…あなた、普通Ⅰ科1年の丸山さんじゃない? 確か丸山さん、先週ウサギの飼育当番だったよね?」

 

 

 

言われた紗希は一瞬、目を丸くするが、すぐに頷いた。

 

更に長沢さんと一緒にいた、名取さんと言う栗色のショートヘアにカチューシャを付けた生徒がこう証言したのだ。

 

 

 

「そう言えば、ウサギ小屋には以前からブルドーザーよりもデカそうな車両がウサギの家代わりに入っているよね。てっきり建設機械かと思ったのだけど、言われてみれば戦車に見えなくも無さそう…?」

 

 

 

その証言を聞いた私達は早速、鍵を用意した長沢さんと名取さんに付き添われて、ウサギ小屋へ向かった。

 

 

 

 

 

 

ウサギ小屋は普段から暗くて、中がどうなっているのか分かり辛い。

 

そこで、菫とあやが持って来た懐中電灯で周囲を照らしてみると、目の前にガッシリとした鋼鉄製の車輌…戦車がそこにあった。

 

車体の各所に巣を作っているウサギ達が私達を見つめている。

 

その姿を見た瑞希が、驚愕しながらも車種を確認する。

 

 

 

「マジであったわ…まさか、こんな所にM3中戦車が眠っていたなんて」

 

 

 

「と言う事は、“リー”かな?“グラント”かな?」

 

 

 

舞が型式について尋ねると、瑞希は上の方を眺めながら答えた。

 

 

 

「37㎜砲塔の上に機関銃塔があるから、“リー”ね」

 

 

 

すると、瑞希と舞の会話を聞いていた梓と優季が共に「やったぁ!!」と喜びながらハイタッチをした。

 

同時に、桂利奈もガッツポーズをして喜びを露わにする。

 

その姿を見た私は、思わずホッとした。

 

そして皆の様子を眺めながら、傍らに居る瑞希に向かってこう呟く。

 

 

 

「この戦車…紗希が見つけたから、梓達の物だね」

 

 

 

「そうね…あの紗希って娘、無口なのに結構やるじゃない」

 

 

 

瑞希はそう答えると、隅の方でM3中戦車リーを眺めている紗希をにこやかな表情で見つめる。

 

そして後ろでは、ウサギ小屋の鍵を用意してくれた農業科の2人が、何故か羨ましそうな表情で私達を見ていた。

 

 

 

 

 

 

だが、その時。

 

私達みなかみタンカーズ組は、自分達の戦車をまだ捜していないと言う事実に気付いていなかったのだ。

 

 

 

(第9話/終わり)

 

 





ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
2回の番外編を挟んで久しぶりの本編リスタートに当たる、第9話をお送りしました。

今回で、ようやく原作アニメ版第1話を過ぎて、第2話へと入って行きましたが、何とここに至るまで約8ヶ月と言う遅筆ぶり…真に申し訳ありません。

さて、今回戦車探しがありましたが、何と自分達の戦車をまだ探してすらいない、嵐ちゃん達みなかみタンカーズ組はこの後…一体どうなってしまうのか!?(このフレーズ知っている人、いるかなぁ…?)
と言う訳で次回、手前味噌ですが、ご期待頂ければと思います。

ちなみに今回、紗希ちゃんが読んでいた『萌え萌え戦車道!!』。
原作アニメ版では別のタイトルなので「あれ?」と思われた方もおられるでしょうが…あろう事か、元ネタになった本の出版社からリアルに出版されてしまいましたからねぇ(爆)。
一応、利用規約の禁止事項を確認した限りでは、書名をそのまま書いても問題があるとは書かれていない様でしたが、万一の為に、本作では書名を変更いたしました。
以上、どうかご了承願います。

それでは、次回をお楽しみに。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。