戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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お待たせしました、今回はお風呂回です。
エロはありませんが、ちょっとした女性同士によるセクハラはあります。
さて…どうなるか?

それでは、どうぞ。



第19話「試合が終わって、皆とお風呂です!!」

 

 

 

ここは、学園艦内にある大浴場。

 

公開試合終了後、学園内の戦車格納庫前に集合した戦車道履修生達は、講評を行った蝶野教官から「みんなグッジョブ、ベリー・ナイス!! 初めてでこれだけガンガン動かせれば上出来よ!!」と褒められた後、生徒会の計らいでこの大浴場へ向かった。

 

そして今、本日2度目の入浴をして試合の汗を流そうとしている。

 

実を言うと彼女達は、午前の練習が中断した後、昼休み中に1度入浴していたのだが、戦車に乗れば必ず汗だくになる。

 

だから女の子としては、その都度入浴しなければ色々とマズイのは言うまでもない。

 

更に昼休み中の入浴では、その後で昼食も摂る必要があり、結果として時間に限りがあったので各チーム間の交流を深められなかった。

 

そこで今回は、午後の公開試合には参加しなかったA・Fチーム以外のメンバーも再び入浴して、互いの親睦を深める事になった。

 

 

 

 

 

 

皆が大浴場へ入ると早速、角谷会長が西住先輩と私達に向かって、母がしでかした「練習試合を全校生徒に公開した件」について謝罪した。

 

 

 

「いや~ゴメンね、西住ちゃんに原園ちゃん達。初めての練習試合が、まさかこんな事になっちゃうとは思ってもいなかったよ」

 

 

 

その姿を見た私は、会長からの謝罪を受け入れて頷きながらも、一言指摘して置いた。

 

 

 

『会長も分かったでしょう。ウチの母親は、あんな事を平気でやる人ですから油断しないで下さいね?』

 

 

 

「うん、原園ちゃん。明美さんがあんなにノリの良い人だとは想像してなかったよ」

 

 

 

「でも明美さん、会長と性格が似ていて初めて会った時から気が合うなって思っていたけれど、まさかあそこまで会長に似ているとは思わなかったわ」

 

 

 

会長が笑顔を見せながらも済まなそうな口調で私の母の事を語ると、小山先輩も苦笑いを浮かべながら会長と我が母親の共通点について話してくれた。

 

 

 

「小山~、幾ら私でも明美さんのノリには負けるよ。実際、練習試合を公開するのには反対だったけど、一発で論破されちゃうんだもの、参ったよ」

 

 

 

『会長、ウチの母に論争仕掛けても大抵負けますよ。母は戦車道が絡むとどんな手を使ってでも他人を巻き込んだり丸め込んだりするんです。次からは、母から何を言われても問答無用で断って下さいね?』

 

 

 

「参ったなぁ…一応、明美さんはウチの戦車道のスポンサーだし」

 

 

 

小山先輩から指摘を受けて、顔は笑っているが反省しているらしい会長に向かって、私は「母の取り扱い方」について説明した。

 

それに対して会長は困った顔をしていたが、次の瞬間、自分に向けられている話題を強引に変えたかったのか、西住先輩に向けて気になる事を言い出した。

 

 

 

「それより西住ちゃん。原園ちゃん達に勝ったのに、Ⅳ号からイージーエイトに乗り換えなくて本当に良いの? ウチで一番強い戦車だって明美さんも言ってたから、試合に勝った西住ちゃん達が乗るのが良いと思うけどなぁ」

 

 

 

実は、今日の公開試合の際の約束で私達Fチームに勝った西住先輩達Aチームは、私達が乗っていたM4A3E8“シャーマン・イージーエイト”を獲得する権利を得たのだが、試合後に西住先輩は会長と母の前で、その権利を放棄すると宣言していたのだ。

 

それに関する会長からの質問を受けて西住先輩は、少し考えてから理由を話し始めた。

 

 

 

「ええ…でも皆がⅣ号に慣れて来たのに、いきなり戦車を乗り換えるとなると練習を一からやり直さないといけないですし、それに……」

 

 

 

「あれが原園ちゃんとお父様の思い出の戦車だからかな? それは明美さんも気にしなくていいって言っていたけど?」

 

 

 

話の途中で、会長が口を挟んで来たが、西住先輩は首を横に振ると、先程よりハッキリとした口調で答えた。

 

 

 

「いえ、それだけではないんです。原園さん達は凄くM4を乗りこなしていました…私達、あの試合の最後に起きた一瞬の隙を見逃していたら、負けていました」

 

 

 

「ふ~ん。つまり西住ちゃんは、イージーエイトは原園ちゃん達が扱った方が一番力を発揮出来るって考えているんだね」

 

 

 

先輩の話を聞いた会長が尋ねると、西住先輩は小さく頷いてから「はい」と答えてくれた。

 

そこへ秋山先輩も会話に加わって、西住先輩の考えを支持する。

 

 

 

「そうです。私達も原園殿のドリフトで振り切られた後、私達のⅣ号の至近距離にまで迫られた時は、間違いなく負けると思っていました」

 

 

 

すると五十鈴先輩や武部先輩も秋山先輩と同じ意見を述べた。

 

 

 

「秋山さんの言う通りです。私も原園さん達がドリフトした時は、余りに速過ぎて主砲の照準が付けられないまま、何も出来なくて……」

 

 

 

「私もだよ…目の前で原園さんの戦車が見えなくなった後、皆真っ青な顔をしていたから、負けちゃうのかと思ってた!!」

 

 

 

仲間達の意見を聞いた西住先輩が「うん」とはっきりした口調で同意すると、私も西住先輩達に向かって励ます様に話し掛けた。

 

 

 

『先輩達、胸を張って良いですよ。公開試合が終わった後の講評でも蝶野教官が西住先輩達のチームを一番褒めていたんですから』

 

 

 

ここで私の話を聞いた会長も「ああ、そうだったねぇ」と思い出す様に語った時、私の隣で入浴している瑞希が相槌を打った。

 

 

 

「そうですよ。私達が最後に犯したミスだって、大抵の相手だったら見過してしまって、そのまま撃破されるまで何も出来ない事が多いんですから」

 

 

 

続いて舞も瑞希に向かって、Aチームとの試合の感想を述べる。

 

 

 

「うん。だからⅣ号から離れた時にⅣ号の主砲がこっちを狙っていると分かった瞬間、皆仰天したもんね」

 

 

 

その時、舞の隣にいる菫が少し悔しそうな声を上げた。

 

 

 

「それより……Ⅳ号の操縦手、凄過ぎます。私、小学4年から戦車だけでなく自動車の運転も極めて来たのに、自分と同じ位のドライビングテクニックを持つ先輩がいたんだもの!!あの操縦手の先輩は、誰なのかなぁ?」

 

 

 

すると、私達の向かい側で眠そうな顔をしながら入浴していた冷泉先輩が、右手を小さく上げて答えた。

 

 

 

「ああ…それは私だ」

 

 

 

「ええっ!?冷泉先輩、どうやって運転技術を学んだんですか!?」

 

 

 

冷泉先輩がAチームの操縦手だと知った菫が驚いて質問すると、冷泉先輩はもっと驚く内容の答えを寄越して来た。

 

 

 

「ああ、実はⅣ号に乗り込んだ時、車内に操縦マニュアルがあったから、それを全部読んだ。それだけだ」

 

 

 

「そ…操縦マニュアルを読んだだけで、あの動きが!? 私が6年間、戦車と自動車の運転技術を極めて来た経験って、一体……」

 

 

 

「「「「えっ!?」」」」

 

 

 

冷泉先輩からの回答を聞いた菫が茫然として肩を落とすと、彼女の話を冷泉先輩の隣で聞いていたAチームの残り4人が一斉に驚きの声を上げたので、菫は慌てて「何故自分が戦車だけでなく自動車の運転が出来るのか」についての説明を始めた。

 

 

 

「あっ、実は私、実家がラリーチームを運営していて、そこで使い古したラリー用の車に乗って小学4年生から中学卒業するまで、実家の裏山でずっとドライビングテクニックを磨いて来たんです。特にダートトライアルやジムカーナとかは毎日…」

 

 

 

と、そこで西住先輩が驚いた表情で菫に質問して来る。

 

 

 

「いえ、そうじゃなくて…菫さん、小学4年生から戦車の運転をしていたって言ったよね?」

 

 

 

「みほ、女子高生が車を運転出来る事に驚いてるんじゃないんだ……」

 

 

 

西住先輩の質問を聞いていた武部先輩が、西住先輩の驚いているポイントが自分と違う点にツッコミを入れていたが、菫はその事には触れず、西住先輩に対して小さく頷いてから質問に答える。

 

 

 

「あっ…はい、西住先輩。みなかみタンカーズは、小学3年生から入れるけれど体が小さ過ぎて戦車に乗るにはまだ早いから、小3で入団した時は最初の1年間、戦車には乗らずに座学やシミュレーター訓練をしたり、体力作りをメインにしたカリキュラムを受けるんです。そして小4になってから戦車に乗って本格的な戦車道の訓練を受けるんです」

 

 

 

そこへ菫の隣にいる舞が一言付け加える。

 

 

 

「私も菫ちゃんと一緒の訓練を受けたから、戦車には6年間ずっと乗って来たんだ」

 

 

 

すると、私達から少し離れた所で話を聞いていた、Bチームの近藤 妙子さんが舞へ念を押す様な質問をした。

 

 

 

「舞ちゃん、それって…戦車道を6年間やって来たって事?」

 

 

 

「うん!!」

 

 

 

「近藤さん、その通りです。正確には小3の1年間だけ、さっき言った理由で戦車には乗らないけれど、戦車道の他のカリキュラムはきっちり受けるから、私達はみなかみタンカーズでの7年間、戦車道漬けの生活を送って来たの…但し、嵐と瑞希はもっと前から戦車道をやっているけどね」

 

 

 

近藤さんの質問に舞が元気良く返事すると、菫が詳しい事情を説明してから、瑞希が更に補足説明をする。

 

 

 

「ちなみに、嵐は5歳の秋から明美さんとマンツーマンで戦車道の指導を受けて来て、私も小学校入学直前の冬から嵐と一緒に明美さんから直接指導を受けて来たのです」

 

 

 

「そして私達が小3になった春に、みなかみタンカーズが創設されてね。その時に私は隣町から戦車道をやる為にみなかみ町へやって来て、地元に住んでいた嵐ちゃんと瑞希ちゃんや菫ちゃんと一緒に入団したから、嵐ちゃんはもう10年近く戦車道をやっているんだよ」

 

 

 

最後に、舞が私達Fチームメンバーの戦車道の経歴に関する説明を締め括った時、西住先輩は心底驚いた顔で、浴場にいる皆へ衝撃的な告白をした。

 

 

 

「えっ…私、戦車道を始めたのは小学5年生の夏休みが終わってからだよ!!」

 

 

 

「「「『はいっ!?』」」」

 

 

 

西住先輩からの告白を聞いた私達Fチームメンバーは、一斉に驚きの声を上げる。

 

 

 

「と言う事は…嵐や私はおろか、菫や舞の方が西住先輩よりも戦車道の経験が長い!?」

 

 

 

「じゃあ、私達…先輩とは言え、戦車道では『後輩』に当たる人が戦車長で、他の乗員は今日初めて戦車乗った方のチームと試合をして負けた事になる訳で……」

 

 

 

瑞希が戦車道では自分達の方が西住先輩よりも「先輩」だったと言う事実に驚愕し、菫はお風呂でのぼせている訳では無いのに目をグルグル回して、信じられないと言う調子で独り言を呟いている。

 

そこへ舞が目を輝かせて、西住先輩達に話し掛けて来た。

 

 

 

「凄いです、先輩方…全員尊敬します!!」

 

 

 

「あっ…舞ちゃん、私達ってそんなに凄くないよ」

 

 

 

「本当に凄いです!! 嵐ちゃんのチームは、公式の戦車道でも野試合のタンカスロンでも1対1なら殆ど負けた事が無くて、特に去年は一度も撃破された事が無かったんですよ!!」

 

 

 

「特に、高校受験前にあったタンカスロンの昨シーズン最終戦では、そのシーズンのチャンピオンになった高校生チームのエース相手に決闘して勝ったんです!! あの時戦車長をやった嵐と砲手だったののっち、カッコ良かったなぁ~♪」

 

 

 

「「「な…何だってー!?」」」

 

 

 

舞からの賛嘆に対して、西住先輩は謙遜する様に答えたが、逆に舞は私達Fチームの過去の戦歴を簡潔に説明した上、更に菫があのタンカスロンシーズン最終戦での「ヤイカさんとの決闘」の話をしたので、大浴場でその話を聞いていた戦車道チーム全員は一斉に驚愕の叫びを上げていた、その時。

 

ふと瑞希が小山先輩の胸元を見て、羨ましそうな表情を浮かべると両手を合わせて小山先輩を拝みながら、妙なお願いをした。

 

 

 

「あの、小山先輩…今日から先輩を『乳神様』として崇めさせて下さい」

 

 

 

「ええっ!?」

 

 

 

『ちょっと、ののっち!?』

 

 

 

瑞希からの奇妙なお願いに小山先輩が驚きの声を上げたので、私は思わず瑞希を叱ったが、今度は舞が瑞希と同じ様に小山先輩を拝みながら、こんな悩みを打ち明けた。

 

 

 

「小山先輩…実は、私と“ののっち”と嵐ちゃんは、()()()()()の体形だから、タンカーズで『みなかみヒンヌー同盟』なんて渾名を付けられた事があって……」

 

 

 

『舞、私を巻き込むな』

 

 

 

「でも、嵐も言われたでしょ?」

 

 

 

『まあ…それは確かに』

 

 

 

舞からの告白に巻き込まれる形になった私は文句を言ったが、すぐさま瑞希からツッコミを入れられて、それを認めざるを得なかった時、今度は菫が私達の渾名についてのエピソードを語った。

 

 

 

「みなかみタンカーズで、嵐達3人の事をそう呼んでいた失礼な後輩達がいたんだよね。でも瑞希や舞も、わざわざそれを言う?」

 

 

 

すると瑞希は、右手で拳を握りしめて軽く突き上げると、目に涙を溜めながらこう宣言した。

 

 

 

「私だって…せめて小山先輩の半分位の胸は欲しいもの!!」

 

 

 

それに続いて、舞も涙目で小山先輩へ訴える。

 

 

 

「そうだよ、私もこの真っ平な胸のまま大人になるのは嫌だよ!!」

 

 

 

「あ…そうだね」

 

 

 

瑞希と舞からの訴えを聞かされた小山先輩は、笑うに笑えない表情で相槌を打つのが精一杯だったが、そこへ冷泉先輩と角谷会長が2人へ励ます様に話し掛けて来る。

 

 

 

「心配するな…貧乳は“ステータス”だ、希少価値だ。だから諦める必要は無いぞ」

 

 

 

「それに、小山から聞いているけど胸が大きいと色々と困る事もあるしねぇ」

 

 

 

すると、瑞希が両目を潤ませながら会長と冷泉先輩に向かって妙な事を言い出した。

 

 

 

「会長に冷泉先輩…なら、私達の同盟に入りませんか!?」

 

 

 

「「……」」

 

 

 

『ちょっとののっち、それはやり過ぎだって』

 

 

 

瑞希から変な勧誘を受けた会長と冷泉先輩は、目を点にしていたので、私が瑞希を嗜める事になった。

 

 

 

 

 

 

丁度、そんな感じで皆、楽しそうな語らいのひと時を過ごしていた頃。

 

今度は、私達の目の前に2人の女子がやって来た。

 

戦車道の授業見学に来ていた農業科1年生の長沢 良恵さんと名取 佐智子さんだ。

 

すると長沢さんが勇気を振り絞る様な表情で、深呼吸をしてから大声で私に話し掛けて来た。

 

 

 

「あ…あの原園さん、お願いがあります。私、皆さんと一緒に戦車道がやりたいです!!」

 

 

 

続けて、名取さんも長沢さんに負けない位の大声で話し掛けて来る。

 

 

 

「お願いします、私も戦車道がやりたいです!!」

 

 

 

私が呆気に取られて2人の顔を見詰めていると、長沢さんが真剣な表情で決意表明を始めた。

 

 

 

「私…今日、西住先輩と原園さんの試合を見て感動しました。どちらも一生懸命に頑張っていて、凛々しくて…だから私も皆と一緒に戦車道で輝きたいです!!」

 

 

 

続いて、名取さんも自らの決意を述べる。

 

 

 

「私、実は体育館であったオリエンテーションを見た時から戦車道には興味があって、長沢さんからも誘われたけれど、その時は戦車道がどんなものか分からなかったので、選択する勇気が出なかったんです…でも先日、澤さんと原園さん達が戦車を探しに私達の農業科へ来た時に戦車道の事を思い出したんです」

 

 

 

そこで名取さんは、一旦言葉を区切ってから息を吸って気持ちを落ち着けると、再び語り始めた。

 

 

 

「そしてウサギ小屋で戦車を見つけて喜んでいる姿や翌日戦車を楽しそうに洗車しているのを長沢さんと一緒に格納庫の影で見ていたら、角谷会長から勧誘されて皆さんの授業を見学している内に『私もやってみたい』って心に決めたんです!!」

 

 

 

2人の決意表明を聞いた私は、なるほどと思った。

 

これは、長沢さんも名取さんも本気で戦車道をやる気になったみたいだな…しかも私達の姿を見てその気になったと言う事は、こちらも真剣に答える必要がある。

 

私は、小さく頷くと落ち着いた口調で2人に尋ねた。

 

 

 

『うん、それで私に声を掛けて来たのは、何か理由があるのかな?』

 

 

 

すると長沢さんがハキハキした口調で、こう答える。

 

 

 

「私、あの公開試合を見て、AかFチームに入りたいと思ったんです。でも西住先輩達のAチームは全員埋まっているみたいで、頼めるのは原園さんしか……」

 

 

 

続いて、名取さんも自らの言葉で語り出した。

 

 

 

「私はどのチームでも良いのですが、良恵ちゃんは公開試合を見た後『西住先輩か原園さんのチームに絶対入りたい!!』って言い出しちゃって」

 

 

 

2人の真剣な表情を見た私は、即座にこう答えた。

 

 

 

『あ…いいよ。丁度私達のイージーエイト、乗員に1人分空きがあるから長沢さん、どうかな?』

 

 

 

「本当ですか!?やったぁー!!」

 

 

 

「その代わり、ウチの自主練はキツイから覚悟してね~♪」

 

 

 

希望のチームに参加出来ると分かって喜ぶ長沢さんに、瑞希がちょっと軽口を叩いていると、名取さんが不安そうに尋ねて来た。

 

 

 

「あの…私は?」

 

 

 

そこで、私は彼女を安心させる為にゆったりとした口調で答える。

 

 

 

『大丈夫だよ、名取さん。実はもう一つ乗員に空きがあるチームがあるのだけど、そこへお願いしてみる?』

 

 

 

「どこですか?」

 

 

 

名取さんがそう尋ねて来た次の瞬間、私と瑞希は互いに頷くと、あるチームのメンバー3人組へ向けて指を指した。

 

その指の先を見た彼女は、驚いた表情で私達に話し掛ける。

 

 

 

「あの…生徒会の皆さんと一緒に?」

 

 

 

私が『うん』と話してから頷くと、瑞希がその理由を名取さんへ説明した。

 

 

 

「生徒会が使っている38(t)軽戦車は元々3人乗りだけど、もう1人追加で装填手が乗り込める様に改良されているから、大丈夫よ」

 

 

 

生徒会トリオで構成されたEチームが乗る38(t)軽戦車は、元々チェコスロバキアで開発されたが、開発当時はLTvz.38と言う名称だった。

 

しかし、生産開始直後の1939年3月15日、チェコがドイツに併合(スロバキアは分割の上でドイツの保護国にされる)された為、ドイツ軍が製造工場ごと接収して自軍向けに生産したのであるが、この戦車、チェコスロバキアで開発されていた当時は操縦手、通信兼機銃手、砲手兼戦車長の3人乗りだった。

 

だがこれを接収したドイツ陸軍は、3人乗りだと乗員不足だと判断。

 

砲塔内部を、追加で装填手が乗り込める様に設計変更してから採用したのだ。

 

なのでEチームは、あと1人乗員を受け入れる余裕があった。

 

 

 

「えっ…私、会長さん達と一緒で大丈夫かな?」

 

 

 

生徒会三役と一緒にチームを組んでやって行けるのか、不安な表情を浮かべた名取さんだったが、すかさず角谷会長が笑顔を浮かべながら誘って来た。

 

 

 

「大丈夫だよ名取ちゃん、別に獲って食べたりしないから♪」

 

 

 

会長に続いて、小山先輩と河嶋先輩も笑顔で名取さんを勧誘する。

 

 

 

「うん、私達もメンバーが増えると助かるわ」

 

 

 

「私も大歓迎だ」

 

 

 

生徒会トリオから励まされた名取さんは、不安そうだった表情を一変させると、生徒会の3人に負けない位の笑顔を見せて、Eチームへの加入を承諾した。

 

 

 

「はい、先輩方!! よろしくお願いします!!」

 

 

 

こうして、授業見学をした2人の農業科1年生も戦車道を履修する事が決まり、大浴場は和やかな雰囲気に包まれていた。

 

すると、その様子を見守っていた武部先輩が今日一番の笑顔を浮かべたかと思うと、西住先輩達や長沢さんと名取さんに向かって、こんな事を言い出した。

 

 

 

「ふふっ…じゃあ、やっぱあそこ行かなきゃ!!」

 

 

 

『あそこ?』

 

 

 

私は、武部先輩が皆を誘って一体どこへ行くのか気になったので、問い掛けようとしたのだが…その時、西住先輩と武部先輩にはトンデモない危機が迫っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

「みほちゃ~ん、久しぶりだから一緒にアレやろ♪」

 

 

 

 

 

 

唐突に長門さんがバスタオルを巻いた姿でやって来たかと思うと、機嫌良さそうな声でニヤニヤしながら西住先輩に向かって話し掛けて来た。

 

 

 

「えっ…長門さん、まさか“アレ”ですか!? ここじゃダメです!!」

 

 

 

「みほ…“アレ”って、何!?」

 

 

 

長門さんからの「アレ」を聞いた途端、西住先輩が顔を真っ赤にして嫌がる様な仕草をしたので、武部先輩が「アレ」とは一体何なのか問い掛けて来た次の瞬間。

 

長門さんは、余りにも怪しげな表情を浮かべながら「アレ」の内容について喋ったのだった……

 

 

 

「そう…ち・ち・く・ら・べ~♪」

 

 

 

乳比べ、である。

 

要はこの人、西住先輩と武部先輩の胸を触って大きさを比べようとする「セクハラ」行為を仕掛けようとしていたのだ!!

 

恐らく、武部先輩が巻き込まれたのは単に西住先輩の隣にいただけではなく、胸部装甲が西住先輩よりも格段に分厚いからだろう…と言うのは、さて置き。

 

 

 

「「「な…何だって~!!」」」

 

 

 

大浴場に響く長門さんの卑猥そうな声を聞いた戦車道チーム全員が驚愕する中、西住&武部先輩に迫る長門さんの魔の手!!

 

 

 

「ふええ~っ!!」

 

 

 

「ひ…ひえ~っ!!」

 

 

 

そして、長門さんによる、まさかのセクハラ攻撃に思いっ切り怯える西住先輩と武部先輩。

 

 

 

だが、次の瞬間。

 

背後から忍び寄った私と秋山先輩から風呂桶でドツかれた長門さんは、頭に大きなタンコブを作り、まるで水死体の様にうつ伏せになってプカプカと浮かぶのであった……

 

 

 

『まさか、西住先輩相手にそんな事を……』

 

 

 

「全く…本当に“怪しい変態”じゃないですか」

 

 

 

普段の長門さんからは想像も出来ない醜態を見た私と、初対面から長門さんを「西住先輩に近付くストーカー」だと見做しているらしい秋山先輩は、互いの顔を見ながら溜め息を吐いた。

 

この直後、浴場の別の場所で入浴していた母と淀川さんが騒ぎを聞き付けたらしく、バスタオル姿でやって来ると無言のまま浮かんでいる長門さんを引き揚げて、その場から立ち去って行った……

 

 

 

だがこの時、私は武部先輩が、放課後どこへ行くつもりなのか聞けなかった事を、翌朝後悔する事になる。

 

 

 

(第19話、終わり)

 

 

 

 





と言う訳で、今回はお風呂回でした。
今回、長門さんが「実はかわいい娘好きの変態」である事が発覚しましたが(笑)、これはモデル準拠です。
ビッグ7は伊達じゃない(爆笑)。
なお西住殿と武部殿にセクハラ攻撃しようとした挙句、風呂桶でどつかれた長門さんの姿は「けいおん!」アニメ版第10話「また合宿!」のさわちゃん先生を元ネタにしています。
まあ脚本家がガルパン原作と同一人物ですから(爆)。

あと西住殿が「戦車道を始めたのは小学5年生の夏休みが終わってから」と語っていますが、これは公式コミカライズ「リトルアーミー」第1巻から引用しています。
リトルアーミー、実は原作最終話と深くリンクしている場面があるので、侮れない作品なんですよね。

そして次回ですが、お待たせしました。
あの「痛戦車」騒動です。
そして聖グロとの練習試合を巡って、何かが起こる!?
それでは、次回をお楽しみに。
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