戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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皆様、お待たせ致しました…今回は“大洗名物のアレ”が登場しますよ♪(ゲス顔)
更に、その“アレ”に絡んである方が恐ろしい事を……(顔面蒼白)
それと共に、今回は北海道の某ローカル局の“旅番組”ネタが増えています(苦笑)。

それでは、どうぞ。



第27話「これにて親善試合、終了です!!」

 

 

 

「あ~あ、負けちゃったね」

 

 

 

「うん……」

 

 

 

「まあ、ラストで西住隊長がマチルダⅡを3輌撃破して隊長車のチャーチルと1on1の勝負にまで持ち込んだから、初陣としては悪い結果ではなかったわ」

 

 

 

「Ⅳ号の75㎜成形炸薬弾ではチャーチルの砲塔を撃ち抜けなかったけど…でも皆、頑張ったよね」

 

 

 

激戦(?)だった聖グロリアーナ女学院との親善試合が終わった後。

 

私達Fチームのメンバーは、茨城港大洗港区にあるコンテナトレーラー用駐車場内を歩きながら試合を振り返っていた。

 

舞がションボリしながら試合に負けた事を呟いて、良恵ちゃんも泣きそうな顔で頷いている中、瑞希と菫が2人を慰める様に話し掛けている。

 

だが、私は今日の試合で起きた「最大の事件」を振り返りつつ、瑞希と菫の話に釘を刺した。

 

 

 

『あの“ダメ人間”が、あそこで()()()()をしなければね!』

 

 

 

そう…“ダメ人間”こと河嶋先輩が、私の提案した一時休戦に応じようとした聖グロのダージリン隊長が乗るチャーチル歩兵戦車を狙って発砲した所、その左後方にいた私達Fチームのイージーエイトを味方撃ち(フレンドリー・ファイア)すると言う「暴挙」をしなければ、例え負けたとしてもまだ納得が出来たのに!

 

 

 

だが、此処で菫が真面目な口調で反論する。

 

 

 

「嵐ちゃん、幾ら何でも河嶋先輩を“北海道の某・芸能事務所会長兼タレント”みたいに言うのは止めようよ」

 

 

 

けれども、私は自分の考えを否定された事もあって、苛付きながらこう言い返した。

 

 

 

『ふん…()()()()をされる位なら、サイコロで6の目を出して新宿から“キング・オブ・深夜バス”で博多まで連れて行かれる方がよっぽどマシよ!』

 

 

 

「「「「うわっ…!」」」」

 

 

 

その瞬間、私の文句を聞いたチーム一同は、河嶋先輩に対する私の恨みが深い事に気付かされたのか、真っ青な顔になっていた。

 

丁度その時、目の前を聖グロ所有の英国製戦車回収車“スキャメル・パイオニア”2輌が大洗女子学園戦車道チームの戦車3輌ずつをトレーラーに乗せた状態で通過すると、その先に西住隊長達Aチームの5人が並んでいるのが見える。

 

そこで私は、“河嶋先輩に対する恨み節”は脇に置いて、西住隊長へ駆け寄ると深々と頭を下げてから謝罪した。

 

 

 

『西住隊長、申し訳ありませんでした。私があんな事をせずに直ぐチャーチルを撃破していれば、こんな事には…ん?』

 

 

 

だがその時、後ろから気配を感じたので会話を打ち切って振り返ると、対戦相手だった聖グロのダージリン隊長が2人の生徒(後で知ったが、この2人はダージリンさんの戦車の乗員で、3年のアッサムさんと1年のオレンジペコさんだった)を伴って、此方までやって来ていた。

 

そしてダージリンさんは、西住隊長の前まで歩み寄ると声を掛ける。

 

 

 

「貴女が隊長の西住 みほさんですわね?」

 

 

 

「あっ、はい…でも何故、私の事を?」

 

 

 

声を掛けられた西住隊長が、何故自分の名前を知っているのかと問うた所、ダージリンさんは“私にとってトンデモない答え”を寄越して来た。

 

 

 

「実は、原園 明美さんの秘書の方から、試合前にそちらのチームの資料を頂いていたの」

 

 

 

あの母親、余計な事を!

 

この分だと、母さんは去年の戦車道大会の事も…いや、それはダージリンさんも知っているか、彼女3年生なのだし。

 

でも去年の大会の事が話題になると西住隊長が心配だ…と私が思っていた時、ダージリンさんは西住隊長へ“意外な事”を語り掛けた。

 

 

 

「でも貴女は、姉の“まほさん”とは随分違うのね」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

意表を突かれたのか、西住隊長も答えに詰まっている様子で居ると、ダージリンさんは何と、私に向かって話し掛けて来た。

 

 

 

「そして、貴女が原園 嵐さんね?」

 

 

 

『えっ…はい。何でしょうか?』

 

 

 

「貴女の事も色々と聞いていたけれど、噂とは随分違っていたわね。以前は“みなかみの狂犬”と言われていたそうだけれど、今は“大洗の騎士”と呼んだ方が相応しいわ」

 

 

 

『えっ!?』

 

 

 

正直、ダージリンさんが私の過去を知っていたのも衝撃だった(恐らく母が言い触らしたのだろう)が、他人から“騎士”と呼ばれたのも初めてだったので、私も西住隊長と同様に返事が出来ないまま突っ立っていると、ダージリンさんは御付の生徒2人と共にその場から立ち去ってしまった。

 

 

 

その姿を、私達は西住先輩達と共に呆然としながら見送っていたが、そこへ“聞き覚えのある呑気な声”が聞こえて来る。

 

 

 

「いや~負けちゃったね、ドンマイ♪」

 

 

 

我等が生徒会長、角谷 杏がやって来たのだった。

 

その隣には、副会長である小山 柚子先輩や生徒会と同じEチームで38(t)軽戦車の装填手に任命された名取 佐智子ちゃんもいる。

 

だが私達の視線は…会長の後ろに隠れて怯えている“片眼鏡の先輩”に向けられていた。

 

 

 

「ああっ!?」

 

 

 

その先輩…生徒会広報の河嶋 桃は、私達と目線を合わせた瞬間、怯える表情で呻き声を上げるのが精一杯だった。

 

本来なら西住先輩や私達へ「約束通りやってもらおうか、罰ゲームの“あんこう踊り”を」とでも宣告するつもりだったのだろうが…その当人が敗戦の直接原因である味方撃ち(フレンドリー・ファイア)をやらかしたのである。

 

今や立場逆転、周囲からの冷たい視線を浴びて俎板(まないた)(こい)も同然となった河嶋先輩は、目に涙を溜めながら震えていたのだが、そこへ意外にも瑞希が声を掛けて来た。

 

 

 

「あの…河嶋先輩?」

 

 

 

「ギクッ!?」

 

 

 

恐らく“味方撃ちの件で罵倒される”と思ったのだろう。

 

瑞希の声を聞いた河嶋先輩はあからさまに震え上がったが、瑞希は特に怒る訳でも無く、彼女へ“あるお願い”を告げたのだった。

 

 

 

「約束の罰ゲームの件ですが…河嶋先輩、西住隊長と私達に“あんこう踊り”の踊り方を教えて下さい」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

予想外の展開だったのか、怯えていた河嶋先輩が呆気に取られていると、瑞希が畳み掛ける様に話を続ける。

 

 

 

「えっ、じゃないですよ?西住隊長や私達は“あんこう踊り”を踊った事が無いし、しかも()()()()()()なのですから…勿論、皆に味方撃ちの件を謝罪してからですが。ちゃんと踊りを教えてくれたら、味方撃ちの件は許してあげますよ」

 

 

 

すると瑞希は「嵐もそう思うよね?」と語り掛けた直後、私にしか聞こえない位の小声で忠告して来た。

 

 

 

「私達が試合に負けたのは事実だし、この辺りで許してあげないと河嶋先輩、きっと“大声で泣き出して収拾が付かなくなる”わよ?」

 

 

 

まあ…今回の味方撃ちの件は兎も角「河嶋先輩は根が小心者」だと言う第一印象は、これまでの行動を見て確信に変わっていたし、余り追い詰めると後々困った事になるのは目に見えていたので、私も止むを得ず瑞希の考えに同意した。

 

 

 

『うん、分かった…河嶋先輩、瑞希の言う通りにしてくれたら試合の件は許してあげます』

 

 

 

「野々坂、原園…本当に済まない!」

 

 

 

私と瑞希の話を聞いた河嶋先輩は、直ちに私達の前に出ると“土下座”をして謝罪したが、それを見た私は、先輩へ一言釘を刺して置いた。

 

 

 

『先輩…謝罪するならまず、西住隊長が先ですよ?』

 

 

 

「そ…そうだったな。西住、そして皆も今日は、本当に済まなかった!」

 

 

 

そして河嶋先輩は、その場で“土下座”をしたまま涙声で皆へ謝罪してくれた…まあ、少なくともあの味方撃ちには“悪気が無い”事が分かったから、私も味方撃ちの件はこれ以上追及しないと心に決めた。

 

ところが、此処で会長が思わぬ事を口にする。

 

 

 

「まあまあ、でもこう言うのは()()()()だから……」

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

「会長、まさか!?」

 

 

 

突然“連帯責任”と聞かされて仰天する河嶋先輩と小山先輩。

 

それを余所に当人は「うん♪」と嬉しそうに公言したが、次の瞬間生徒会トリオの後ろで憮然とした表情で話を聞いていた佐智子ちゃんが、恨めしそうな声で会長へ詰問した。

 

 

 

「会長…やっぱり、自分が一番“あんこう踊り”を踊りたいのでしょう!?」

 

 

 

「あっ、名取ちゃん…バレてた?」

 

 

 

その途端、本心を見抜かれた会長はバツの悪い表情を浮かべつつ返事をしたが、佐智子ちゃんは顔を真っ赤にしながら、会長目掛けてこう叫ぶのだった。

 

 

 

「バレバレです!」

 

 

 

 

 

 

それから数十分後。

 

騒々しい祭囃子に乗って、大洗町の商店街に陸上自衛隊の重装輪回収車をベースにした国産トラックとドイツMAN社製のRMMV HX 8×8戦術トラック*1の2輌がやって来た。

 

罰ゲームの“大洗名物・あんこう踊り”がスタートしたのである。

 

先頭の国産トラックには、Cチームの左衛門佐とおりょうが法被姿で太鼓を叩く中、西住隊長以下Aチームの全員とEチームの角谷会長に小山 柚子、そして名取 佐智子が鮟鱇(あんこう)を模したと言うピンク色のタイツ姿で踊っており、続くドイツ製トラックにも、法被を着たエルヴィンとカエサルが太鼓を叩いている隣で、Fチームの面々が河嶋 桃の踊りに合わせて、全員タイツ姿で“あんこう踊り”を踊っている。

 

 

 

「何、この踊り…想像以上にハードなのですけれど!?」

 

 

 

「野々坂に原園…しっかり踊らないと、“()()()恥ずかしくなる”ぞ!」

 

 

 

地元伝統の踊りにしては、妙にハイテンポな踊り方に瑞希が戸惑っていると、それを見た桃が瑞希だけでなく嵐に対しても厳しく指導する。

 

 

 

「『は、はいっ!』」

 

 

 

瑞希と嵐(前方の国産トラックで踊っている西住 みほもそうだが)にとっては、これがぶっつけ本番の“あんこう踊り”であるが、“味方撃ち(フレンドリー・ファイア)”の謝罪も兼ねて振り付けを教える役になった桃の指示に逆らう訳にも行かず、2人共大声で返事をしながら一生懸命に踊っていた。

 

一方、その隣で踊っている舞と菫に良恵の3人はと言うと……

 

 

 

「菫ちゃんに良恵ちゃん、これってまるで北海道ローカル局の旅番組でやっていた『トリオ・ザ・タイツ』みたいだね!」

 

 

 

「お願いだから、それを言うのは止めて~!」

 

 

 

「その話を聞くと普通に踊るよりも遥かに恥ずかしいよ!」

 

 

 

何を勘違いしたのか、北海道の某ローカル局の“人気旅番組”が西表島で激闘を繰り広げた回の前枠・後枠で有名な“あるシーン”を思い出しつつ、嬉しそうに踊りながら話し掛けて来る舞に対して、菫と良恵は其々顔を真っ赤にしながら悲鳴を上げていた。

 

そして…国産トラックの上で杏や柚子と一緒に踊っている佐智子は、心の中でこう絶叫していた。

 

 

 

「やっぱり会長は、ノリノリで踊ってる…この()()()~!」

 

 

 

 

 

 

かくして、彼女達が必死になって“あんこう踊り”を踊っている最中、商店街の一角では数人の女性がその光景を眺めていた。

 

周防 長門と明美の秘書である淀川 清恵に、首都新聞社の契約ライター・北條 青葉が呆れ顔でその様子を眺めている横では、原園 鷹代が天を仰ぎながら“何とも言えない表情”で突っ立っており、その隣では原園 明美が、何とデジタルビデオカメラで、みほや娘の嵐達が踊っている姿を撮影している。

 

更に、その傍らには聖グロのダージリン隊長とアッサムにオレンジペコまでおり、3人共呆然とした表情でその光景を見ていた。

 

実を言うとダージリン達は、みほと嵐達から別れた後、真っ直ぐ自分達の学園艦へ帰る途中で出会った明美から「これから凄く面白いモノが見られるわよ♪」と誘われて此処までやって来たのだが…対戦相手の恥ずかしい姿を見せられた彼女達は正直“来るのではなかった”と後悔しつつあった。

 

その時ダージリンは、試合前に“紅茶の園”で、先輩にして母校のOG会幹事でもある清恵から聞かされていた話を思い出すと、震え声で明美に問い掛ける。

 

 

 

「あ…あの、明美さん。これってもしかして?」

 

 

 

「ああ、淀川さんから『負けたら()()()()をプレゼントするわね』って聞いていたでしょ?“その正体”がこれよ♪」

 

 

 

「「えっ!?」」

 

 

 

その瞬間、2人の会話を聞いていたアッサムとオレンジペコが驚愕する中、自身が抱いていた()()()()()が的中したダージリンも、対戦相手だったみほと嵐達を哀れみながら明美へ向けて率直な感想を述べた。

 

 

 

「これは、余りにも残酷過ぎる罰ゲームですわ……」

 

 

 

だが、明美は笑顔で動画撮影を続けながら、ダージリンへこんな返答をする。

 

 

 

「そうかな?大洗では、結構昔からこの踊りを踊っているみたいよ。鷹代さんも、若い頃は毎年の様に踊っていたそうだし、私も主人と結婚した頃にあの恰好で踊った事があるし」

 

 

 

「明美さん…貴女が此処で、()()()()で初めて“あんこう踊り”を踊った時、結婚したばかりの直之は道端で『そこまでしなくても良いのに……』と言って泣いていたよ…まあ、私も直之が小学生の頃までは、同じ様に踊っていたけどね」

 

 

 

明美の返答を聞いていた義叔母の鷹代が、亡き兄の息子である直之が生前嘆いていた時の事や自分が踊っていた頃の話を明美に語ると、2人の会話を聞いていたアッサムが、ふと明美の行動に疑問を抱いて質問をした。

 

 

 

「それで原園さん。お伺いしたいのですが、何故動画撮影を?」

 

 

 

「ああこれ?撮影したら直ぐ、自分が持っている動画サイトのアカウントから投稿するのよ」

 

 

 

「「「はあ!?」」」

 

 

 

次の瞬間、聖グロの3人は“明美の行動の意図”が読めずに仰天する。

 

何故彼女は、“自らが支援している戦車道チームメンバーの()()()()()()()”をネットで公開すると言う“トンデモない行動”に出たのだろうか?

 

すると明美が人の悪い笑みを浮かべながら、その意図を彼女達へ説明した。

 

 

 

「あら知らない?“動画サイトへ自分が撮ったオリジナル動画を投稿すると()()()()が得られるサービス”があるでしょ?それで得られた収益を、全額大洗女子学園へ“戦車道の運営費”として寄付するつもりなの」

 

 

 

「まさか!?」

 

 

 

罰ゲームの“あんこう踊り”を動画撮影している理由を知らされたダージリンは心底驚愕しているが、明美はそれに構わず説明を続ける。

 

 

 

「戦車は、“維持する()()”でもお金が掛かるからね~♪聖グロみたいに、OGが積極的にお金を出してくれる所では想像も付かないでしょうけれど、世の中そんなに裕福な卒業生を抱えている学校は少ないからね…だから、“運営費を確保する為”には正直、“手段を()()()いられない”わ

 

 

 

「そ、そうですか……」

 

 

 

話の内容が余りにも“斜め上”だった為、呆れ果てたアッサムが辛うじて相槌を打ったが、次の瞬間明美は、更なる“驚愕の事実”を明かした。

 

 

 

「それに私のアカウント、実は日本語以外に英語とドイツ語、あとフランス語とイタリア語とロシア語版があってね…ドイツのプロリーグ時代からのファン達が翻訳してくれているから、事実上“世界中の人達”が見る様になっているのよ。だから広告収入もそこそこ期待できるのよね」

 

 

 

「「「!」」」

 

 

 

その瞬間…聖グロのメンバー3人は明美が本物の“悪党”だと言う事を思い知らされて、心の底から大洗女子学園のメンバーに同情した。

 

幾ら“戦車道の運営費調達の為”とは言え、彼女達が日本中処か()()()()()()()にされると言う事実は、彼女達の想像を遥かに超えていたからである。

 

一方、その様子を頭を抱えながら見ている長門や鷹代、そして苦笑いを浮かべている清恵と共に眺めていた北條 青葉は……

 

 

 

「こ、これは…絶対記事には出来ないよ!」

 

 

 

明日の関東版の朝刊に乗せる予定の親善試合の記事には、“到底掲載出来ない事実”を見せられて、心底困惑していた。

 

 

 

 

 

 

余りにも恥ずかしかった“あんこう踊り”が終わった後。

 

私達Fチームのメンバーは大洗シーサイドステーションの一角に集まり、この後何処でお昼ご飯を食べようかと相談するつもりだったのだが…そこへ、我が校の制服を来た4人の少女達がやって来ると、先頭にいるスタイルの良さそうなツインテールの黒髪の少女が、私へ向けて元気な声で話し掛けて来た。

 

 

 

「あの~初めまして。高等部・戦車道Fチームの原園 嵐先輩ですか?」

 

 

 

何処となく、五十鈴先輩に似ている様な印象がするのは気のせいだろうか、と思いながら、私は彼女へ問い掛ける。

 

 

 

『そうだけど…もしかして貴女達、中等部かな?』

 

 

 

「あっ、はい!私、中等部3年の五十鈴 華恋(いすず かれん)と言います!」

 

 

 

すると、彼女を見た瑞希が不思議そうな声で質問する。

 

 

 

「あれ…ひょっとして貴女は、五十鈴 華先輩の?」

 

 

 

「はい、五十鈴 華は私の従姉です。だから私は従姉の事を何時も華姉(はなね)ぇ”って呼んでいます!」

 

 

 

華恋ちゃんからの答えを聞いた私達は、一斉に「「「「『ほぉ~』」」」」と感心した様に呟いた。

 

道理で、中学生にしては五十鈴先輩に劣らぬスタイルの良い娘だと思った…本当に羨ましいです(涙)。

 

すると華恋ちゃんは、私達へ向けて再び話し掛ける。

 

 

 

「それで、此処にいる3人は私の友達です…自己紹介しても宜しいでしょうか?」

 

 

 

それに対して私は『うん、いいよ』と答えると、華恋ちゃんと一緒に来た3人が次々に自己紹介を始めた。

 

 

 

最初に、ツインテールと言うには御団子や輪っかが付いていて、かなり複雑な髪形をした茶髪の少女が自己紹介をする。

 

 

 

「私は、中等部3年の武部 詩織(たけべ しおり)です。私も姉の沙織が其方のチームで隊長車の通信手をしています!」

 

 

 

その瞬間、彼女が武部先輩の妹だと知った私達は思わず「「「「『おぉ~』」」」」とどよめいた…言われてみれば、彼女の茶髪は武部先輩の栗毛に近い色だと言えなくもない。

 

 

 

続いて、薄い桃色の髪をポニーテールにしているが、テール部分をリボンでぐるぐる巻きにしていると言う珍しい髪型をした少女だ。

 

 

 

「2人のクラスメートの若狭 由良(わかさ ゆら)と言います」

 

 

 

最後に、鈍い赤色のボブヘアー姿で勝気な印象のある娘が元気な声で話し掛けて来た。

 

 

 

「同じく鬼怒沢 光(きぬさわ ひかる)、宜しくお願いします」

 

 

 

彼女達の自己紹介が終わった後、私達も自己紹介を行って和やかな雰囲気になった時、華恋ちゃんが今日の親善試合を見に来た理由を語り始めた。

 

 

 

「今日は、私の従姉の華姉ぇと詩織の姉の沙織さんが、戦車道を始めてから最初の試合だと聞いていたので、友達の由良と光を誘って試合を見に来たのだけど……」

 

 

 

すると詩織ちゃんがこう説明する。

 

 

 

「そうしたら、華さんと沙織お姉ちゃんが乗った隊長車のⅣ号のピンチに駆け付けて来た皆さんのM4がカッコ良くて……」

 

 

 

其処へ、今度は由良ちゃんが2人の会話に加わって来た。

 

 

 

「しかも聖グロの隊長車を敢えて見逃して、もう一度試合を仕切り直そうって言ったから、皆原園さんに“一目惚れ”しちゃったんだよね!」

 

 

 

次の瞬間、話をしていた中学生3人はうっとりした表情で「「「うんうん♪」」」と頷きながら私へ熱い視線を送って来た…その視線を浴びた私は百合の趣味が無いので、一瞬『あ、はい……』と呟きながらたじろいたが、瑞希はニヤニヤしながら「流石嵐、モテる女は辛いね~♪」とツッコんで来る。

 

だが、其処へ光ちゃんがざっくばらんな口調で思わぬ事を語り出した。

 

 

 

「でも、あの金ピカの38(t)の砲手は最悪だったよな!」

 

 

 

その瞬間、私を含むFチームの全員が「「「「『あっ!?』」」」」と口走ったが、光ちゃんはそれに構わず話を続ける。

 

 

 

「折角、良い雰囲気で試合が仕切り直しになると思った時に乱入した上、味方撃ち(フレンドリー・ファイア)だろ…あの砲手の顔が是非見たいもんだよ!」

 

 

 

「光ちゃん、その話は止めようよ……」

 

 

 

流石にそれは不味いと思ったのか、華恋ちゃんが光ちゃんに口を挟んだが、当人は不機嫌そうな顔で言い返す。

 

 

 

「華恋、そいつのせいでお姉ちゃんや原園先輩達は試合に負けた様なもんじゃないか。そいつを庇うのか?」

 

 

 

その姿を見た私は、思わず鬼怒沢ちゃんへ話し掛けていた。

 

 

 

『あっ…河嶋先輩の事は許してあげて。あの人、今日は頑張ろうとして一寸失敗しただけだから…あっ!?』

 

 

 

しまった。

 

つい、河嶋先輩の名前を…と思った時には、時既に遅し。

 

 

 

「へぇ~河嶋先輩って、生徒会広報の人だよね?」

 

 

 

味方撃ちの犯人の名前を聞いてしまった鬼怒沢ちゃんは人の悪い笑みを浮かべていたが、直ぐ優し気な表情に変わると納得した様な口調で、こう語った。

 

 

 

「まあ、“あの人らしい”ね。河嶋先輩は見た目の割にポンコツだ、って噂は私達中等部の間でも有名だから、ああなったのは仕方が無いか」

 

 

 

ホッとした私は、中学生達に向けてこう語る。

 

 

 

『そうなんだよね…正直、戦車道を始めてから余り時間が経っていないのに、あそこまでやれるとは私も思っていなかったから、次は勝ちたいって思っているよ』

 

 

 

「じゃあ、次の試合も見に行きますね!」

 

 

 

すると詩織ちゃんが元気な声で答えてくれたのに続いて、華恋ちゃんが「折角、こうしてお話が出来たので、もし宜しければこれから一緒に昼食を食べに行きませんか? 地元の美味しいお店を知っていますよ」と誘って来たので、話を聞いた舞と瑞希が嬉しそうに返事をした。

 

 

 

「わーい、私行くー♪」

 

 

 

「いいわね、それ♪」

 

 

 

良恵ちゃんも笑顔を浮かべながら「これだけ人数がいれば楽しそうだし、私も行きますよ」と華恋ちゃんからのお誘いに同意する。

 

こうして皆で「何処のお店へ行こうか?」と盛り上がっていたその時、菫のスマホに着信音が鳴り響いた。

 

 

 

「はい…あっ、ナカジマ先輩ですか?」

 

 

 

菫がスマホに出ると、どこかで聞いた様な先輩の名前を出した直後、嬉しそうな口調で会話を続ける。

 

 

 

「えっ、本当ですか!? じゃあ、お昼御飯が終わってから学園艦に戻りますので、後1時間半位で其方へお伺いします…それでは点検整備をお願いしますね」

 

 

 

そして菫は、形通りに「では先輩、失礼します」と会話を締め括ってスマホを切ると、私達へ済まなそうな表情で会話の内容を説明した。

 

 

 

「今、自動車部のナカジマ先輩から連絡があって『菫ちゃんのお父さんが送って来た車を大洗港で受け取って自動車部の部室へ持って来たから、これから取りに来て』って連絡があったの」

 

 

 

『一寸待って菫。実家の裏山じゃないのに、一体何処で走らせるのよ?』

 

 

 

小4から“実家の裏山”で車に乗って運転技術を磨いていたとは言え、女子高生だから“無免許運転”には違いないと思った私は、何故車を学園に持ち込んだのか疑問に思って菫に問い掛けると、彼女は“こんな答え”を寄越して来た。

 

 

 

「学園艦だと“生徒専用の免許証”が取れるから、この間学園艦の交付センターで手続きをして免許証を貰って来たよ」

 

 

 

思わぬ回答に、私が『そ、そうなの……』と“学園艦の自主独立性”に驚愕する一方で、華恋ちゃん達中学生組は「「「「凄い、菫先輩は車を運転出来るんだ!」」」」と感心してしまっていた…いや、それ処の騒ぎじゃないと思うけれど。

 

すると今度は、瑞希が菫に気になる質問をした。

 

 

 

「菫、練習用の車って…一体何を持って来たの?」

 

 

 

「2004年型のインプレッサWRX STI spec C、皆から“涙目”って呼ばれている子だよ。高校入学に合わせて新調したんだ、中古車だけど」

 

 

 

そこへ、今の会話を聞いていた良恵ちゃんが「何ですか、その車?」と菫が持ち込んだ車について質問すると、菫は笑顔でこんな事を言い出した。

 

 

 

「“お目目が可愛い国産車”だよ。良恵ちゃんもきっと気に入ると思う」

 

 

 

「私、どっちかと言うと鉄道車輌の方が…でも可愛い車なら見たいな」

 

 

 

私は、嬉しそうに自分が学園艦で乗る予定の「可愛い車」の事を聞いて胸をときめかせている良恵ちゃんの姿を見て、何とも言えない気分になった。

 

彼女は知らないだろうが…インプレッサWRX STI spec Cとは、()()ハイパワー車で知られるインプレッサWRX STIに、ラリー等のモータースポーツで勝つ為に必要な軽量化等を施した“メーカー純正の改造車”と言うべき“ガチのスポーツセダン”。

 

ハッキリ言って、女子高生以前に()()()()()()じゃありません。

 

でも菫は「280馬力ある4WD車なのに重量がR34GT-Rより200㎏近くも軽いし、コーナーでは独楽鼠みたいにクルクル回ってくれるから、()()()()()()()」と言うのだから、世の中恐ろしい…勿論、“そんな車”を自在に操る菫が。

 

だが私がそんな事を思っている最中、良恵ちゃんがそれよりも気になる事を皆に問い掛けた。

 

 

 

「そうなると…これから、如何する?」

 

 

 

すると華恋ちゃんが「あっ」と言う表情を浮かべながら、こう呟いた。

 

 

 

「あっ…私と詩織は、元々華姉ぇと沙織さんを探しに此処へ来ていたから…どうしよう?」

 

 

 

『五十鈴先輩と武部先輩なら、多分隊長の西住先輩と一緒にいると思うけれど…皆、どうする?』

 

 

 

その会話を切っ掛けに皆が3分程考えた結果…私達一行は、二手に分かれる事になった。

 

菫達は由良ちゃんや光ちゃんと一緒に昼食を摂ってから、菫の愛車を見る為に学園艦へ戻り、私は華恋ちゃんや詩織ちゃんと共に3人で、五十鈴先輩と武部先輩と一緒にいるであろう西住先輩を探しに行く事になった。

 

 

 

(第27話、終わり)

 

 

*1
陸上自衛隊が2019年度から調達を開始した“装輪155㎜榴弾砲”の車体部分に使われている実在の軍用車輌。本車はドイツ車だが、日本と同じ左側通行の英国やオーストラリア・ニュージーランド向けに既に右ハンドル仕様が製造されており、陸自の“装輪155㎜榴弾砲”の車体やこのシーンに使われている車輌もこの仕様である。





ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
第27話をお送りしました。

今回は親善試合終了後の話ですが、桃ちゃんによる“味方撃ち”の謝罪の件については、瑞希が助け船を出す形にしました。
桃ちゃんはプライドが高い割に小心者のイメージがあるので、“こうなるときっと怯えてマトモな謝罪が出来ないだろう”と思った瑞希が、桃ちゃんが進んで謝罪出来る様にお膳立てをした結果です。
実は瑞希ちゃん、結構気配りが出来る良い娘なのですよ。

そして遂に明美さん、一線を越えてしまった…(白目)
戦車道の運営費を稼ぐ為とは言え、あの踊りを全世界へ発信するとは…この後、大洗女子の面々にこの事がバレたら如何なるかについては、ご想像にお任せします(ゲス顔)。

と同時に、この話を書いていて気付いた事ですが。
あの「あんこう踊り」のコスチューム、よく考えたら某・北海道ローカルTV局の旅番組(笑)の企画「激闘!西表島」の前枠・後枠で出演タレントがやっていた「青タイツ・茶タイツ・黄タイツ」の衣装に似ているのですね、マジで。
ちなみにその企画の初回放送は2005年10月で、ガルパンは2012年の製作…まさか、これがあんこう踊りの元ネタなのか!?(大げさ)

それは兎も角(苦笑)、次回はファンの方ならお察しの通り、華さんの話がメインになりますが本作オリジナルの展開を仕込んでおりますので、ご注目頂ければ幸いです。

それでは、次回をお楽しみに。

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