戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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皆様、2020年最初の投稿となります。
旧年中はお世話になりました。
何が起きるか分からない世の中ですが、皆様に楽しんで頂ける様に頑張りたいと思います。
それでは、どうぞ。



第32話「秋山先輩と一緒に…です!!」

 

 

 

「嵐ちゃん、高校はサンダース大付属へ行かないの?」

 

 

 

『御免ね…でも私、やっぱり戦車道を辞めたいんだ』

 

 

 

「如何して…ずっと一緒にやって来たじゃない?受験で“向こう”の学園艦へ行った時も次期隊長のケイさん達から『こっちにおいでよ♪』って、言われたでしょ?」

 

 

 

『うん…でも私は、お父さんの故郷にある大洗女子へ進学したいんだ』

 

 

 

「あっ…御免ね、嵐ちゃん」

 

 

 

『ううん、私こそ…()とは、“みなかみタンカーズ”が出来た時から、ずっと一緒だったもの。此処で、お別れしたくないのは分かるよ』

 

 

 

「うん…でも、本当に戦車道を辞めちゃって、いいの?」

 

 

 

『後悔はしていない…去年の戦車道全国高校生大会の決勝戦、()()()()()()()()でしょ?』

 

 

 

「うん……」

 

 

 

()()()()が罷り通るのが戦車道よ…仲間の命を助けた人が誹謗中傷されて“犠牲者を出してでも試合に勝つのが良し”とされているのが戦車道。でも、それはハッキリ言って “人殺し”じゃない!』

 

 

 

「!」

 

 

 

『御免ね。キツイ事を言って…でも私、絶対にそんな人間にはなりたくないんだ。特に、()()()()()()()西()()()()()()みたいな人間にはね』

 

 

 

「嵐ちゃん、気持ちは分かったよ…でも、一つだけ約束をしてもいいかな?」

 

 

 

『何?』

 

 

 

「来年の戦車道全国高校生大会、もしも()()サンダース大付属からレギュラーで出場出来たら…応援してくれる?」

 

 

 

『うん、いいよ』

 

 

 

「本当に!?」

 

 

 

『だって、戦車道をやりたくないのは私だけだからね。()の試合なら、何時だって応援に行ってあげるよ』

 

 

 

「有難う!それじゃあ、サンダース大付属に入ったらレギュラー目指して頑張るぞ!」

 

 

 

『サンダース大付属はレギュラー争いが激しいから、大変だぞ?』

 

 

 

「えへへ♪でも、()()の学校だから頑張るよ!」

 

 

 

『ふふ…私の分まで、頑張ってね』

 

 

 

「有難う!」

 

 

 

 

 

 

私は、今春にみなかみ町の中学校を卒業した日の出来事を思い出していた。

 

中学校からの帰り道、みなかみタンカーズが出来た時からの数少ない“戦車道で出来た親友”と、桜の花びらが舞う公園の広場で、桜の木を一緒に眺めながら交わした会話。

 

あの日、確かに私は『二度と戦車道はやらない』と心に誓っていた……

 

 

 

 

 

 

此処は、夕焼けが迫る太平洋上。

 

全国大会の組み合わせ抽選会を終えた私達は、120年以上前の日清戦争で活躍した旧・日本海軍の防護巡洋艦「松島」を模した連絡船に乗って、大洗女子学園・学園艦への帰路に就いていた。

 

私は連絡船の左舷側甲板に置かれた黄色い椅子に座り、夕闇迫る太平洋を眺めながら、卒業式の日に親友と交わした会話と共に、何時も子犬の様な表情を浮かべながら私に付いて来ていた親友の姿を思い出す。

 

 

 

『“あの娘”…私が戦車道へ戻って来た事を知ったら、絶対怒るだろうな…如何しよう?』

 

 

 

そう…今日、戦車喫茶「ルクレール」で瑞希が語った通り、“あの娘”は戦車道全国高校生大会の1回戦で私達と戦う、長崎県の「サンダース大学付属高校」に()()()()()()()として進学しているのだ。

 

サンダース大付属の戦車道チームは、M4“シャーマン”系列の中戦車だけでも常時50輌以上が稼働しており、戦車道履修者も500人以上いて一軍から三軍まであるから、“特待生”として進学したと言っても、未だ入学したばかりの彼女が一軍のレギュラーに定着しているとは限らないのだが…でも、例え試合に出場していなくても、試合会場の応援席で彼女とバッタリ出会ったとしたら?

 

私は勿論、“あの娘”も非常に気不味い思いをする事だろう…如何したら良いのかな?

 

そんな感じで、私が深く悩んでいた時。

 

自分が座っている席から前方の甲板に、沈んで行く夕日を眺めている人が目に入る。

 

 

 

『西住先輩!』

 

 

 

先輩の横顔に気付いた私は“そうだ、悩んでいるのは私だけじゃない!”と思い直す。

 

今日は、西住先輩もお姉さんとの事や“あの副隊長”の事とかで、色々と悩んでいたではないか。

 

そう考えた私は、自分の悩みは取り敢えず横に置いて、左舷甲板の手摺の方にいる西住先輩の所へ行って話をしようとした時。

 

 

 

「寒くないですか?」

 

 

 

「ああ、うん、大丈夫」

 

 

 

私よりも先に、西住先輩に声を掛けて来た人がいた。

 

 

 

『秋山先輩……』

 

 

 

西住先輩を誰よりも敬愛する秋山先輩の姿を見て、私は羨ましくなる…やっぱり、私なんかよりも秋山先輩の方が西住先輩には、お似合いだと思うんだよね。

 

きっと結婚式には、()()()()()()()()()()を…って、()()()()()()()()()()()()()!?

 

急に“トンデモない妄想”を思い浮かべた私は、頭を抱えながら必死になってその妄想を振り払っていたのだが、その最中に秋山先輩が西住先輩に語り掛ける声が聞こえて来た。

 

 

 

「全国大会…出場できるだけで、私は嬉しいです」

 

 

 

その一言に、先程まで思い浮かべていた“妄想”が全部吹き飛んだ私は、更に語り続ける秋山先輩の声に耳を傾けた。

 

 

 

「他の学校の試合も見られるし、大切なのは“ベストを尽くす事”です。例え負けたとしても……」

 

 

 

その様子を聞きながら、秋山先輩の大会に対する純粋な思いに触れた私は、胸が熱くなった。

 

この大会、優勝しなければ母校が廃校になると言う事実とは()()()()“先輩達の力になりたい!”と言う強い思いが、私の心に生まれる。

 

だが、その時。

 

 

 

「それじゃ困るんだよねー♪」

 

 

 

「絶対に勝て!」

 

 

 

私が気付かない内に、何時の間にか生徒会トリオがやって来たかと思うと、角谷会長と河嶋先輩が西住先輩と秋山先輩に、()()()プレッシャーを掛けて来た。

 

事実、秋山先輩は会長達の方を振り向くと、驚いた顔で「えっ!?」と当惑した声を上げているが、河嶋先輩はそんな事はお構いなしに、更なるプレッシャーを掛ける。

 

 

 

「我々は、“()()()()()勝たなくてはいけない”んだ!」

 

 

 

ところが此処で、副会長の小山先輩が思わぬ()()をしてしまった。

 

 

 

「そうなんです。だって負けたら……」

 

 

 

「シーッ!」

 

 

 

「はっ!?」

 

 

 

慌てて会長が小山先輩の発言を遮ったので、その場は収まったが…この先輩達、本当に大丈夫だろうか?

 

「全国大会で優勝出来なかったら、母校が廃校になる」と言う()()()()()()()()()身としては、“何時か何処かで、この秘密がバレてしまうのでは?”と言う予感がして、心配でならない…と思っていたら、再び会長が西住先輩へ()()()プレッシャーを掛けて来た。

 

 

 

「まっ、兎に角、全ては西住ちゃんの肩に掛かっているんだから。今度負けたら何やって貰おうか~考えとくね♪」

 

 

 

こうして会長は言うだけ言うと、河嶋先輩と「あはは……」と呟きながら多少呆れている様子の小山先輩を引き連れて、私達の前から姿を消してしまった。

 

そして西住先輩は、「あっ…」と声を漏らした後、立ち去って行く会長達を見送る事しか出来なかった…流石に、秋山先輩が心配そうに声を掛けて来る。

 

 

 

「あっ、大丈夫ですよ、頑張りましょう!」

 

 

 

此処で私も声を掛けようと思い、私の存在に気付いた秋山先輩に目配せをしてから、西住先輩の近くへ駆け寄った。

 

けれど西住先輩は、()()()()()()私の顔には一切気付いていない様子で、独り言を呟いている……

 

 

 

「初戦だから、ファイアフライは出て来ないと思う…せめてチームの編成が分かれば、戦い様もあるんだけど……」

 

 

 

目の前にいる私の存在に()()()()()()()まま、試合の作戦を立てようとしている西住先輩の表情に、私は衝撃を受けた。

 

何だか、“私なんて何の役にも立たない”と思われている様で、凄く悲しい思いが私の心に湧き上がる。

 

遣り切れない気持ちで、隣にいる秋山先輩に視線を移したその時。

 

私はハッとなる…私と同じ様な顔で、西住先輩を見守っていた秋山先輩が私と目を合わせると、何か“決意した表情”を浮かべつつ、私に向かって頷いて見せたのだ。

 

それは、無言ではあるが「これから一緒に、西住殿を助けませんか?」と言いた気な表情だった。

 

勿論…私も無言で、秋山先輩へ向かって頷いて見せた。

 

 

 

 

 

 

その翌日の午後。

 

此処は、放課後を迎えた大洗女子学園。

 

西住 みほ達“あんこうチーム”メンバーの内、秋山 優花里を除く四人は、今日学校に来なかった優花里の事を心配しながら下校していた。

 

 

 

「秋山さん、結局練習に来ませんでしたね」

 

 

 

「メールは、返って来た?」

 

 

 

「全然…電話掛けても圏外だし」

 

 

 

華が今日戦車道の練習に来なかった優花里の事を心配していると、みほが沙織へ優花里と連絡が取れたかと問い掛けたが、沙織は困惑した表情で“全く連絡が取れない”と告げる。

 

 

 

「如何したんでしょう?」

 

 

 

その会話を聞いた華が、更に心配そうにしていた時。

 

麻子が、“今日、戦車道の練習に来なかった娘”が()()()()()()のを思い出す。

 

 

 

「そう言えば…今日、秋山さんだけじゃなくて、原園さんも練習に来なかったな。如何したのだろう?」

 

 

 

その言葉を聞いたみほが頷きながら「そうだね。まさか……」と、何か考え込んでいた時。

 

嵐と同じニワトリさんチームの砲手・野々坂 瑞希が息を弾ませながら、駆け寄って来た。

 

 

 

「ああ、丁度良かった…秋山先輩、未だ帰って来ていないみたいですね?」

 

 

 

「あっ、“ののっち”。何かあったの?」

 

 

 

みほ達の前で、荒く息を吐きながら呼吸を整えている瑞希に向かって、沙織が心配そうな表情で問い掛けると、瑞希は深呼吸をしてから思わぬ事を言い出した。

 

 

 

「何かあった処じゃないですよ。実は……」

 

 

 

「「「「ええっ!?」」」」

 

 

 

瑞希からの話を聞いたみほ達は、一斉に驚く事となった。

 

 

 

この時の瑞希の話を総合すると、以下の通りである。

 

実は、嵐も今日学校に姿を見せていないのである。

 

そこで先程、瑞希がニワトリさんチームのメンバーを代表して、嵐が下宿している鷹代の家へ電話(スマートフォン)を掛けて鷹代から事情を訊いた所、「今朝早く嵐が家を出た時、()()()玄関に秋山 優花里が待ち合わせており、二人は一緒に登校した筈だ」と聞かされたのだ。

 

 

 

「ですから秋山先輩は、恐らく今朝から“嵐を連れて何処かへ行っている可能性が高い”と思われるのです」

 

 

 

みほ達が驚きの声を上げ終わったタイミングで、漸く落ち着いた表情に戻った瑞希が説明を締め括ると、みほが瑞希に“ある質問”をした。

 

 

 

「それで、鷹代さんは?」

 

 

 

「それが不思議な事に、“今朝の出来事”を話した後は意味有り気に惚けるだけで、何も教えてくれないのです。如何やら、何か知っている様なのですが……」

 

 

 

瑞希は、みほの質問に対して困惑気味に答えると、今度は華が問い掛けて来た。

 

 

 

「それで、チームの他の皆さんは?」

 

 

 

「現状では、これ以上探し様が無いので、取り敢えず私の判断でチームの皆を学園の寮へ帰らせてから、皆さんに相談しようと思っていたのです」

 

 

 

華からの質問に、瑞希がみほ達に縋る様な口調で答えると、みほがこう話し掛ける。

 

 

 

「それなら、今から私達、秋山さんの家へ行こうと思っているのだけど、一緒に行く?」

 

 

 

「そう言えば、秋山先輩の家はこの学園艦にあるのでしたね…はい、お願いします」

 

 

 

みほからの誘いを受けた瑞希はそう答えると、安堵の表情を浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

それから暫く後。

 

みほ達“あんこうチーム”の四人と瑞希は、学園艦の甲板に設置された住宅街の一角に在る「秋山理髪店」と書かれた家へやって来た。

 

 

 

「あれっ…秋山さん家、床屋さんだったんだ」

 

 

 

「年季が入っていますね…丁度良いから、此処で髪を切っておこうかな?」

 

 

 

玄関を見て、初めて優花里の実家が床屋であると知った沙織が驚いている中、瑞希は自分の髪を弄りながら、散髪を此処でやろうかと思案している内に、みほ達が店の中へ入って行く。

 

すると客のいない店内では、暇を持て余している夫婦らしい男女がいた…如何やら、この二人が優花里の両親であり、この店を切り盛りしている様だ。

 

 

 

「あっ」

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 

 

散髪用の椅子に座って新聞を読んでいたパンチパーマの中年男性がみほ達に気付くと、その隣で座っていた妻らしい女性が声を掛けて来た。

 

 

 

「済みませーん。あの、優花里さんはいますか?」

 

 

 

店に入ったみほが話し掛けると、パンチパーマの中年男性は「あんた達は?」と問うたので、沙織が「友達です」と答える。

 

すると……

 

 

 

「友達…と、友達!?」

 

 

 

中年男性は、“自分の娘の友達がやって来た”と知らされた瞬間、慌てて椅子から立ち上がったので、その妻らしい女性が「お父さん、落ち着いて」と声を掛けたが、中年男性は慌て顔で反論する。

 

 

 

「だって、お前…“優花里の友達”だぞ!?」

 

 

 

しかし妻…優花里の母親は冷静さを保ったまま、夫…つまり優花里の父親へ「分かってますよ」と語り掛けた後、みほ達に向かって丁寧な挨拶をした。

 

 

 

「何時も優花里がお世話になってます」

 

 

 

そこへ優花里の父親が慌てた表情のまま、土下座をしてみほ達へ挨拶をする。

 

 

 

「お…お世話になっております!」

 

 

 

「あ…あの」

 

 

 

父親の慌てぶりを目の当たりにしたみほ達が呆気に取られている中、辛うじてみほが声を掛けた所、優花里の母親がみほ達に向けて、こう答えた。

 

 

 

「優花里、朝早く家を出て、未だ学校から帰ってないんですよ…どうぞ、二階へ」

 

 

 

こうしてみほ達は優花里の母親の案内で、秋山家の二階にある優花里の部屋へ通された。

 

部屋には、第二次世界大戦末期の東部戦線で戦ったドイツ陸軍戦車中隊を舞台にした大ヒット劇画の主人公のポスターが貼られており、その左斜め上には、この作品の主人公を“女体化”した事で有名なある同人作家が描いたキャラクターのサイン入りポスターまで貼られている。

 

更に部屋の周囲には、戦車や自走砲を始めとする戦闘車輌のプラモデルの完成品や未組み立てのキットが多数置かれているだけでなく、本棚は戦車関係の資料で一杯。

 

おまけにジェリカンやら実物と思われる砲弾や対戦車地雷に軍服類、そして弾薬箱に年代物の無線機まであって、それを見たみほ達は「あーっ……」と、声を上げて驚いている。

 

特に瑞希は呆れた表情で、「此処まで“ガチ”の戦車マニアは、みなかみタンカーズにも居なかったですね……」と呟いていた。

 

すると、部屋の入り口から優花里の母親がお菓子を持ってやって来て「どうぞ、食べて頂戴」と声を掛けて来たが、そこへ優花里の父親が散髪用の鋏と櫛を持って現れると、こんな事を言い出す。

 

 

 

「あの~良かったら、待ってる間に散髪しましょうか?」

 

 

 

「お父さんは、いいから!」

 

 

 

優花里の父親による、お節介な発言を聞いた母親がすかさず叱ると、父親は「あっ……はい」と呟いて、トボトボと退出して行くが…その時、瑞希が苦笑いを浮かべながら、優花里の父親へ話し掛けた。

 

 

 

「あの…私、今度散髪しようと思うので、帰る時に予約しますね」

 

 

 

「あ…有難う!」

 

 

 

次の瞬間、優花里の父親は嬉し涙を浮かべると、瑞希に感謝しながら部屋から退出して行ったが、その様子を見た優花里の母親は、苦笑しながらみほ達へ謝った。

 

 

 

「済みません。()()()()()()()()()()()()のなんて、初めてなもんで…何しろずっと戦車、戦車で、気の合うお友達が中々出来なかったみたいで。戦車道のお友達が出来て、随分喜んでいたんですよ」

 

 

 

すると優花里の母親の話を聞いていた、みほと沙織が顔を向けあって喜ぶ。

 

その姿を見た瑞希も頷きながら微笑んでいると、優花里の母親が「じゃあ、ごゆっくり♪」と告げてから、部屋を出て行った。

 

 

 

「良いご両親ですね」

 

 

 

優花里の母親が部屋を出るのを見送った華がみほ達に告げると、瑞希が「そうですね」と答えてから、視線を麻子の方へ向ける。

 

すると麻子は、部屋の棚にあるIV号突撃戦車“ブルムベア”の模型の隣にある写真を見詰めていた…その写真は優花里が大洗女子学園に入学した時に、両親と一緒に撮影された物の様だ。

 

 

 

「……」

 

 

 

「冷泉先輩?」

 

 

 

その時瑞希は、優花里と両親の写真を見ていた麻子が、一瞬“辛そうな表情”になったのに気付いて心配そうに声を掛けるが、麻子は「いや…何でも無い」と、ぶっきら棒に答えただけだった。

 

その次の瞬間である。

 

突然、二階にある部屋の側面の窓が開いたと思ったら、そこから優花里が「よいっしょ……」と声を上げながら、部屋へ入って来た。

 

 

 

「あっ!」

 

 

 

「“ゆかりん”!?」

 

 

 

その様子を目撃したみほと沙織が仰天しながら優花里へ声を掛けると、某コンビニチェーンの制服姿の当人はキョトンした表情で、「あれっ、皆さんどうしたんですか?」と、みほ達へ問い掛けて来る。

 

だが…そこへもう一人、優花里と同じ制服姿の少女が、続けて同じ窓から入って来た。

 

 

 

『ああ、死ぬかと思った…って、先輩方!?』

 

 

 

「秋山さん…それに原園さんまで!?」

 

 

 

その少女…原園 嵐の姿と声を目の当たりにしたみほは、信じられない表情で彼女を見詰めながら、驚愕の声を上げたのである。

 

 

 

 

 

 

漸く“帰って来た”と思いつつ、秋山先輩宅の二階の窓から先輩の部屋へ入った私は、目の前に西住先輩達が座っているのを見て、思いっ切り驚いた。

 

勿論、西住先輩も秋山先輩と私がコンビニの制服姿でやって来たのを見て驚いていたし、更に五十鈴先輩が「連絡が無いので、心配して……」と問い掛けて来たので、まず秋山先輩から“連絡が出来なかった理由”を答える。

 

 

 

「済みません、電源を切ってました」

 

 

 

『と言うか、秋山先輩から“隠密行動だから、スマホ使用禁止”と言われていました……』

 

 

 

続けて、私も連絡が付かなかった理由を補足説明すると、武部先輩が怒った表情で「ってか、何で玄関から入って来ないのよ!?」と、私達へ向けてツッコんで来る。

 

すると秋山先輩は、「こんな格好だと、父が心配すると思って……」と弁解したので、皆は「「「「あー……」」」」と納得したが、更に私は自身の事情も説明した。

 

 

 

『流石に私は、前の晩鷹代さんに事情を説明したけれど…でないと、鷹代さん凄く怒るし』

 

 

 

「あー、だから鷹代さん、さっきの電話では意味有り気に『如何したんだろうね?』と惚けた振りをして、私達には黙っていたんだ」

 

 

 

すると、瑞希が“やれやれ”と言わんばかりにボヤいているのに気付いたので、私も「“ののっち”、アンタも居たの……」と、ボヤき返したその時。

 

秋山先輩が一本のメモリースティックを取り出すと、元気一杯な声で皆へこう告げた。

 

 

 

「でも、丁度良かったです…是非、“見て頂きたい物”があるんです!」

 

 

 

しかし此処で、瑞希が何故か胡散臭そうな表情を浮かべながら、私達に質問をする。

 

 

 

「あの…その前に、秋山先輩と嵐に伺いたい事があるのですけれど?」

 

 

 

「『はい?』」

 

 

 

「その分だと、秋山先輩は嵐を“拉致”して、“旅”に出ていたみたいですね。秋山先輩がチーフディレクターで、嵐がカメラ担当のディレクター。そして行先は…サンダース大付属の学園艦かな?」

 

 

 

突然の問い掛けに、戸惑っていた私達に向かって、瑞希が彼女なりの“推理”を披露すると、秋山先輩が驚いた表情で答える。

 

 

 

「おおっ…流石は野々坂殿、鋭いです!」

 

 

 

でも私は、此処で今日一日の“旅”の中で起きた出来事を思い出すと、疲れ切った表情を浮かべながら瑞希に向けて、一言愚痴を零した。

 

 

 

『そうなのよ、瑞希…私、秋山先輩に誘われて付いて行ったら、トンデモない目に……』

 

 

 

だが此処で、私からの愚痴を聞かされた秋山先輩から、不満そうな声が上がる。

 

 

 

「昨日話をしたら、“一緒に行きます”って言ったのは、原園殿ではないですか?」

 

 

 

『いや、それはそうですけれど……』

 

 

 

私も、思わず秋山先輩へ言い返そうとしたので、そこから先輩との間で口論が起こりそうになったが、此処で話を聞いていた冷泉先輩が、呆れた表情で一言私へツッコんで来た。

 

 

 

「原園さんは、まるで“北海道ローカルTV局の旅番組”で、“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”みたいだな?」

 

 

 

先輩からのツッコミを受けた私は、一瞬でそれが“()()()()()()()()”分かったので憮然となったが、直ぐ気を取り直すと、済まない気持ちのまま西住先輩達へ説明をした。

 

 

 

『それは兎も角、先輩方。秋山先輩が動画を用意していますので、これからそれを見ながら、今日一日先輩と私が“何をしていた”のかについて、説明をします』

 

 

 

「はい、是非ご覧下さい!」

 

 

 

私とは対照的に、秋山先輩は元気一杯な表情で、これから動画を見せる事を西住先輩達に告げた。

 

こうして、秋山先輩と私は“命懸け”で撮影して来た動画を西住先輩達に見せながら、今日一日、何をやっていたのかを説明する事になったのである。

 

 

 

(第32話、終わり)

 





今回も最後まで読んで下さり、有難う御座います。

2020年最初の回は、第32話をお送りしました。
今回は全国大会の抽選会が終わってから、次の展開へ繋げる話となった為、少々内容が薄いかも知れませんが、次へ繋げる伏線もありますので、色々と妄想して頂けると幸いです。
特に「サンダースに居る嵐ちゃんの親友」の正体…この親友のモデルは艦これを知っている人なら、察する事が出来るはずですが…一体誰なのでしょうね?(オイ)

それでは、次回「実録!突撃!!サンダース大付属高校・舞台裏スペシャルです!(笑)」をお楽しみに。

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