戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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前回投稿後、通算UAが50.000を突破しました。
何時もご覧になっておられる皆様のおかげです。
誠に有難う御座います。
ここ最近は公私共に厳しい状況ですが、今後も頑張りますので宜しくお願いします。

追伸・遂に地元のTV局でも「水曜どうでしょう」最新作放送開始だぜ…って先日、偶々YouTube見ていると、どうでしょうD陣がWoTやっているので仰天して居たら、どうでしょう祭り2019にWoT出展していたんだな(歓喜)。



第33話「実録!突撃!!サンダース大付属高校・舞台裏スペシャルです!(笑)」

 

 

 

これは、今朝の出来事である……

 

 

 

『あの…秋山先輩?』

 

 

 

「何でしょうか、原園殿?」

 

 

 

『今、私達が乗り込んだコンテナ船は、陸の港と学園艦を結んでいるコンビニの定期便ですよね?』

 

 

 

「そうですよ」

 

 

 

『で、私達もコンビニの制服を着ていますけど?』

 

 

 

「それが如何かしましたか?」

 

 

 

『あの…若しかして、今からこのコンテナ船に乗って密航……』

 

 

 

「密航じゃありません。“潜入”です!」

 

 

 

『はあ?』

 

 

 

「だから昨日、“西住殿とチームの皆の勝利の為にも、明日は対戦相手であるサンダース大学付属高校に関する()()()()()()()と話したではありませんか?」

 

 

 

『確かに、そうですが…まさか!?』

 

 

 

「そうです。今から、これに乗ってサンダース大付属へ潜り込むのです♪」

 

 

 

『いや、こら拉致だよ!誘拐だよ!帰してよ!』

 

 

 

「落ち着いて下さい、原園殿!?」

 

 

 

次の瞬間、秋山先輩は話を聞かされて仰天した私の口を塞ぐと小声で、「今の声が聞こえたら、折角の作戦が台無しです。気を付けて下さい」と忠告したので、私も黙って頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

全ての始まりは、昨日の夕方の事だった。

 

戦車道全国高校生大会・組み合わせ抽選会からの帰りに乗った連絡船の甲板上で、生徒会から「絶対に勝て!」とのプレッシャーを受けた西住先輩が、全国大会初戦のサンダース大付属との対戦へ向けて作戦を考えている様子を目の当たりにした私は、その場に居合わせた秋山先輩に誘われて連絡船内の一室へ連れて来られた。

 

そこで秋山先輩から「西住殿やチームの皆を助ける為、明日は学校へ行かずに、()()()()()()()()()()()()()()()()を行おうと思うのです」と告げられると同時に、「原園殿にも是非、私の助手として同行して頂きたいのです」と頼まれたのだ。

 

私が『成程……』と頷くと、秋山先輩は話を続ける。

 

 

 

「特に原園殿は、今日喫茶店で野々坂殿から伺いましたが、この春の高校入試ではサンダース大付属も受験されたとか?」

 

 

 

『はい…母から“大洗へ行くなら、()()()()として絶対に受けろ”って言われて、嫌々でしたが入試は向こうの学園艦まで行って受けました。それに……』

 

 

 

「それに?」

 

 

 

『実を言うと、その試験は()()()()()()()()()()()だったのです。母が勝手に手続きをして…その関係で私は入試の後、当時の次期隊長と次期副隊長に呼ばれて、そこの戦車道チームへオリエンテーションに行ったのです』

 

 

 

「おおっ…本当ですか!?」

 

 

 

『はい…ですから、サンダースの事ならある程度までは分かります』

 

 

 

「それは心強い!是非一緒にお願いします!」

 

 

 

と言う訳で、秋山先輩からの頼みを引き受けた私は、帰宅すると大叔母さんの鷹代さんへ「明日は、こう言う事情で学校をズル休みしてしまうのだけど……」と恐る恐る告白したが、てっきり怒ると思っていた鷹代さんは、()()()人の悪い笑みを浮かべると、「そうかい…学校には、私が適当に理由を作って伝えて置くから、くれぐれも事故には気を付けるんだよ」と語り、呆気無く許してくれた。

 

今にして思えば…戦車道に詳しい鷹代さんは、私の話から秋山先輩の企みを見抜いていたのかも知れない。

 

何故なら、戦車道では“試合前の偵察・スパイ行為はルール上承認されている”のだ…だからこそ、何時もは“学校をズル休みするなんて以ての外”と考えている鷹代さんが珍しく許してくれたのだろう。

 

何故、秋山先輩から話を聞いた段階で気付かなかったのよ、私の馬鹿!

 

と言う訳で、単純にも“対戦相手の()()()()”だと思い込んでいた私は、秋山先輩に騙されて(?)、一緒に大手コンビニチェーンが学園艦に有る各店舗への物資輸送用に定期運航している“配送用大型コンテナ船”に乗り込むと、サンダース大付属の学園艦へ()()…いや“潜入作戦”を決行する事になったのだ。

 

 

 

 

 

 

それから数時間後、私達は無事にサンダース大付属の学園艦へ辿り着いた。

 

この学園艦は、現在日本に存在する学園艦の中では、最大且つ最新鋭である事で知られており、学園艦に詳しい人達の間では「この艦は建造計画が立てられた当時、横須賀を事実上の母港としていた米海軍の原子力空母『ジョージ・ワシントン』をモデルに設計された」と伝えられている。

 

そんな学園艦へ足を踏み入れた私と秋山先輩は、徒歩でサンダース大付属の正門へやって来た。

 

 

 

「私達は今、サンダース大学付属高校へ来ています…では、潜入します」

 

 

 

艦内に入ってからは、私が秋山先輩から託されたハンディカメラで周囲の撮影を担当し、秋山先輩は都度都度、私に撮影ポイントの指示をしながらナレーションを吹き込んでいる。

 

その様子を見た私は、撮影の合間に呆れ顔でこんな質問をした。

 

 

 

『潜入作戦をやる以上、撮影をするのは分かりますが…こんなに手の込んだナレーションまでやって如何するのですか?』

 

 

 

「帰りに編集して、西住殿やチームの皆さんに見て貰うのですよ」

 

 

 

『はあ……』

 

 

 

そんな秋山先輩の徹底ぶりには、呆れる他ない。

 

まるで“髭面と甘い物好き”として知られる()()()()()()()T()V()()()()()()()()()()みたいだ…私を騙してサンダース大付属の学園艦へ連れ込む悪どさまで、そっくり(苦笑)。

 

等と思っている内に、私達は校内のトイレに入ると、潜入作戦を遂行するべく、コンビニの制服からサンダース大付属の制服へ着替えようとしていた。

 

そんな中、秋山先輩は未だナレーションを続けている。

 

 

 

「では、無事潜入出来ましたので、サンダースの制服に着替えたいと思い……」

 

 

 

でも私は、北海道ローカルTV局の名物旅番組に出て来る“騙され易いローカルタレント(もじゃもじゃ頭)と違って、遣られっ放しでは済まさない性格なんだよね。

 

 

 

『騙されて連れて来られた腹いせに、秋山先輩の着替えを盗撮してやる!』

 

 

 

着替え中の秋山先輩は、私のハンディカメラが回り続けている事に気付いていない。

 

それを良い事に()()()()を思い付いた私は、柄にも無く邪悪な笑みを浮かべると、壁越しにハンディカメラで隣のトイレで着替えていた秋山先輩を撮影し続けたのだが……

 

 

 

「…ハッ!」

 

 

 

はい、あっさり気付かれました。

 

 

 

パコン☆

 

 

 

「これで、何処から見てもサンダース校の生徒です…駄目ですよ、原園殿。盗撮なんかしちゃあ?」

 

 

 

トイレから廊下へ出た後、妙に明るいテンションで話し掛けて来る秋山先輩。

 

そして……

 

 

 

『ゴ…ゴメンなさ~い(涙)』

 

 

 

こうして着替えの盗撮がバレた私は、頭に大きな瘤を作ると、心の底から秋山先輩へ謝罪しました…頭の瘤は誰が作ったのかは、言わなくても分かりますよね?

 

 

 

そんな事をしている内に、“本物”のサンダース大付属の生徒達が私達の目の前までやって来た。

 

すると、機先を制して秋山先輩が手を振りながら“サンダース流”の挨拶をする。

 

 

 

「ハーイ!」

 

 

 

「「ハーイ!」」

 

 

 

堂々とした態度の秋山先輩を見た“本物”の生徒達は、私達の正体に気付かないまま手を振って答えていた。

 

 

 

「皆フレンドリーです、バレてません♪」

 

 

 

『わ…私のウィッグ(カツラ)もですか?』

 

 

 

「勿論です♪」

 

 

 

何時正体がバレるのかと、不安で堪らない私に向かって、笑顔で安心する様にと答える秋山先輩。

 

因みに私と秋山先輩は、この時点でサンダース大付属の制服に着替えているが、私は更に“金髪で毛先がカールしたセミロングのウィッグ”を被っていた。

 

何故なら、私の地毛である癖の強い赤毛は遠くから見ても目立つ為、この様な潜入作戦では隠さないと不味いと思っていたし、もう一つ隠さないといけない理由があった。

 

 

 

『良かった…私は入試の時、此処の隊長達に顔を覚えられている上に“みなかみタンカーズ”時代の親友も進学しているから、何時バレるのかと不安で……』

 

 

 

「この分なら大丈夫ですよ、堂々としていましょう…それで戦車道チームが使う戦車の格納庫は、この先で間違いありませんね?」

 

 

 

『はい、此の儘真っすぐです』

 

 

 

私は、地毛を隠している“もう一つの理由”を秋山先輩へ小声で語ったが、秋山先輩は心配要らないとばかりに私を励ましながら、戦車道チームの戦車が置かれている格納庫への道順を確認していた。

 

 

 

 

 

 

こうして私達は、戦車道チームの戦車格納庫の中へ入って行った。

 

此処は、私が推薦入試を受けた後に当時の次期隊長…今は正式な隊長である“ケイ”さんの案内で訪問した事がある為、場所を知っている私が秋山先輩を案内したのだ。

 

すると、格納庫の中を見た秋山先輩が、興奮しながら格納庫内に駐車している、M4“シャーマン”中戦車の各形式について説明した。

 

 

 

「凄いです、シャーマンがズラリ…あれはM4A1型、あっちはM4無印、ああっ、僅か75輌しか造られなかったA6があります!」

 

 

 

その様子を目の当たりにした私は、呆れ顔を浮かべながら小声で秋山先輩へ向けて囁く。

 

 

 

『秋山先輩、M4の細かいバリエーションの違いまで分かるのですか…私、M4の形式は搭載砲が75㎜と76.2㎜と105㎜のいずれかと、サスペンションがVVSS*1とHVSS*2のどっちかの組み合わせでしか区別しないのですが?』

 

 

 

「それはいけませんねぇ、原園殿。今度その違いを細かく…あっ!」

 

 

 

この時、私にM4“シャーマン”各型の見分け方で説教しようとした秋山先輩だったが、次の瞬間格納庫に並んでいるM4A6を点検しているらしいサンダース大付属の生徒三人と目が合ったので、直ぐ様彼女達へ声援を送る。

 

 

 

「あのっ、1回戦頑張って下さーい!」

 

 

 

すると、三人の生徒が秋山先輩へ向かって笑顔で“サムズアップ(親指を立てる)”サインを決めていた時、戦車格納庫内に放送が響き渡る。

 

 

 

「戦車道履修生へ告ぐ。これより戦車道全国大会1回戦のブリーフィングを行う。戦車道履修生は全員、ブリーフィングルームへ集合せよ」

 

 

 

その放送を聞いた秋山先輩が「原園殿、早速ですがブリーフィングルームまで案内して頂けますか?」と私に問うて来たので私も頷くと、“本物”の生徒達と一緒にブリーフィングルームへ向かう事にした。

 

 

 

私達がブリーフィングルームに着いた頃には、ちょっとした講堂と同じ位の広さがあるブリーフィングルームは、既にサンダース大付属の戦車道履修生で一杯だった。

 

 

 

「全体ブリーフィングが始まる様です」

 

 

 

席に着くと、私がカメラを隠し撮りする準備を手早く済ませたタイミングで、秋山先輩がナレーションを入れて来る…ホントに先輩、肝が据わっているなあ。

 

すると、ブリーフィングルームの壇上に三人の生徒が登壇する。

 

あれは隊長の“ケイ”さんと、副隊長でチーム№2の“ナオミ”さん、同じく副隊長でチーム№3の“アリサ”さんだ。

 

私は入試の時、あの三人に案内されてこのチームの見学をしているので三人の顔を知っているが、同時に私の顔も彼女達に知られている。

 

そこで私は、赤毛を隠す為に金髪のウィッグを被っているが、更に顔を俯き加減にして向こうから自分の表情が分かり難い様にした。

 

丁度その時、“アリサ”さんが落ち着いた口調で、全体ブリーフィングを開始する。

 

 

 

「では、1回戦出場車輌を発表する」

 

 

 

続いて“アリサ”さんの口から、私達との試合で出場する戦車の形式と数が告げられた。

 

 

 

「ファイアフライ1輌、シャーマンA1・76.2㎜砲搭載型1輌、75㎜砲搭載型8輌」

 

 

 

“アリサ”さんの説明に合わせて、壇上にある巨大モニターに出場する戦車(全てM4“シャーマン”のバリエーションだけど)の画像が映し出されると同時に、秋山先輩が「容赦無い様です」と、的確なナレーションを入れる。

 

事実、昨日西住先輩は、「初戦だから、ファイアフライは出て来ないと思う」と予想していたので、これを覆す情報を入手出来たのは、こちら側としては非常に大きい。

 

すると今度は、隊長の“ケイ”さんが気合の入った声で、ある“重要な議題”を発表した。

 

 

 

「じゃあ次は、フラッグ車を決めるよ!OK!?」

 

 

 

「「「Yeaaaah!」」」

 

 

 

“ケイ”さんの掛け声に、履修生全員がノリノリで返事をする様子を見た秋山先輩がすかさず、「随分とノリが良いですね。こんな所までアメリカ式です」と、ナレーションを入れたその時。

 

 

 

「Waaaaa!」

 

 

 

履修生全員が再び歓声を上げる。

 

その姿を見た秋山先輩が、「あっ、フラッグ車が決まった様です」とナレーションを入れて来たので、私も壇上の巨大モニターを見た所、M4A1・76.2㎜砲搭載型がフラッグ車に決まったらしいと直感した次の瞬間。

 

 

 

「何か、質問は?」

 

 

 

「あっ、はい!小隊編成は如何しますか?」

 

 

 

何と“アリサ”さんからの“質問タイム”に、秋山先輩が真っ先に手を上げたのだ。

 

私は「下手をしたら正体がバレる!」と思い、気が気でなかったが、秋山先輩が堂々と質問した所為か、壇上にいる“ケイ”隊長は、私達が“スパイ”である事に気付かないまま質問に答え始めた。

 

 

 

「Oh!良い質問ね♪今回は()()()2個小隊は組めないから、3輌で1小隊の1個中隊にするわ」

 

 

 

秋山先輩の質問に対して、ハキハキした口調で答える“ケイ”隊長の説明を聞きながら、私は「成程……」と思った。

 

フラッグ車を“中隊長車”扱いにして、残り9輌で3個小隊を組む…これは、現在のロシア陸軍の戦車中隊と同じ編制だね。

 

因みに、“ケイ”隊長が「完全な2個小隊は組めない」と言ったのも理由がある。

 

これは、第2次世界大戦中の米陸軍戦車中隊が5輌で1小隊の3個小隊と中隊本部に2輌の合計17輌で編制されていた事に由来する。

 

今回の試合の場合、出場出来る戦車の最大数は10輌だが、此処で“5輌で1小隊”の2個小隊編成にすると、フラッグ車を()()()()()()()に配属しなければならなくなる。

 

だがサンダースとしては、フラッグ車は小隊に配属せず、独立して動かしたいのだろう。

 

勿論、そうした方が相手からフラッグ車を狙われた時、直ぐに逃げられると言うのもあるだろう…兎に角、全国大会では“フラッグ車を撃破されると負け”なのだ。

 

と言う訳でサンダースは、“フラッグ車の独立行動が可能な部隊編成”にしたと考えられる。

 

 

 

続いて秋山先輩は、“ケイ”隊長に「フラッグ車のディフェンスは?」と、具体的な作戦に関する質問をぶつける…私、正直何時バレるか心配で堪りません。

 

だが“ケイ”隊長は、未だ私達の正体に気付かないらしく、自信たっぷりに右手で“L”の字を作って前方へ突き出すと、こう言い放った。

 

 

 

「Nothing!」

 

 

 

その答えを聞いた秋山先輩も驚いて「敵には、Ⅲ突とイージーエイトがいると思うんですけど?」と問い掛けたが、“ケイ”隊長は胸を張ると、こう豪語する。

 

 

 

「大丈夫!1輌でも全滅させられるわ!」

 

 

 

「「「Oh!」」」

 

 

 

周囲から、隊長の発言を聞いた仲間達のどよめき声が上がる。

 

そんな中、私は一人『へぇ…大した自信じゃないですか?』と心の中で呟きながら、顔は俯いたままだけど、不敵な表情を浮かべた。

 

流石の“ケイ”さん達も、私が対戦相手の大洗女子に居るとは夢にも思っていないだろうから当然か…と思っていたその時!

 

 

 

「見慣れない顔ね!?」

 

 

 

壇上から、隊長と秋山先輩の会話を聞いていた副隊長の“ナオミ”さんが、秋山先輩の顔を見て“自分達の仲間では無い”と勘付いたのだ!

 

 

 

「へっ!?」

 

 

 

『!?』

 

 

 

思わず驚きの声を上げる秋山先輩と、声には出さないが心中穏やかではない私。

 

そして次の瞬間!

 

 

 

「一寸、そこの貴女…貴女も見た事の無い顔だけど!?」

 

 

 

私の隣の席から、秋山先輩の左隣に座っていた私を怪しむ声がした!

 

 

 

『え…えっ!?』

 

 

 

次の瞬間、弁解しようとして声がした方へ振り返った私は、()()()()()()()()()()を受けた。

 

其処に座っている少女は…セミロングの黒髪を後ろで一つ三つ編みにして、更にその先を赤いリボンで括っている。

 

更に、前髪の一部は左右に広がり気味でこれが子犬の様な“可愛い”印象を与えているのだが、今は金髪のウィッグ姿の私を睨んでいる。

 

その姿は、まるで自分の飼い主の家の玄関に知らない人が来たので、今にも吠えようとしている子犬の様だ。

 

実は、その少女こそ…群馬みなかみタンカーズ時代の私の数少ない“親友”だったのだ!

 

 

 

『え~と、あの、その……』

 

 

 

「直ぐに答えられないだなんて怪しいね…誰!?」

 

 

 

思わず、この場を取り繕うつもりで言葉を選んでいる私と、私に対して男の子っぽい口調で追求を続ける彼女の様子を見て、ブリーフィングルームに集まっていた履修生達もざわつきながら、私達へ疑惑の視線を向ける。

 

そこへ壇上の“ナオミ”さんが、止めとばかりに私達を詰問して来る。

 

 

 

「所属と階級は?」

 

 

 

その瞬間、秋山先輩は立ち上がると、大声で素早く回答した……

 

 

 

「えっ、あのー、第6機甲師団()()()()()()3()()()()であります!」

 

 

 

な…何だってー!

 

余りにもバレバレな“偽名”を聞かされて、仰天する私。

 

そして……

 

 

 

「あっ!」

 

 

 

「偽物だー!」

 

 

 

“アリサ”さんが驚き、“ナオミ”さんが大声で叫ぶ中(但し“ケイ”さんは秋山先輩の()()がツボに嵌まったのか、口を押えて笑っていたが)、秋山先輩が「わぁー!」と叫びながら、『あわわ…!』と口走りつつパニックに陥っていた私の手を引くと、脱兎の如き勢いでブリーフィングルームから逃げ出した。

 

 

 

「一寸待ちなさい…追え!」

 

 

 

直ぐ様、壇上から“ナオミ”さんが履修生達へ“私達を捕まえる様に”と指示を出すが、当然私達も黙って捕まるつもりは無く、必死になってブリーフィングルームの出口を目指して走り出す。

 

だが其処へ、私の隣の席に居た少女が「待てっ!」と叫んだ直後、猛烈なダッシュで私の直ぐ後ろまで迫ると、いきなり私の“髪の毛”を摑んだ!

 

だが…それは、私が被っていた金髪のウィッグだった。

 

当然、彼女が摑んだウィッグは外れて、私の赤い地毛が露になる。

 

 

 

『ああっ!』

 

 

 

「えっ…嵐、君なの!?」

 

 

 

正体がバレて悲鳴を上げる私を見た“彼女”は、一瞬目を大きく見開いて驚愕の表情を浮かべたが、直ぐに怒りの表情へ変わると、犬が吠える様な勢いで叫びながら、私達を追い続ける。

 

 

 

「嵐、何でアンタが此処に居るんだよ!?待ちなさい!」

 

 

 

『ああ…御免なさい!』

 

 

 

追って来る“彼女”へ詫びを入れながら、秋山先輩の先導で逃げる私は、ブリーフィングルームの出口から艦内通路へ飛び出すと、秋山先輩の後ろから必死になって艦内通路を走り抜けた。

 

追って来た“彼女”も私に続いて艦内通路へ駆け出したが、何故か直ぐに追跡を諦めた…いや。

 

彼女は恐らく、艦内通路の各所にある隔壁扉の段差に躓いて転倒すると自分が大怪我をする危険があるのに気付いて、追跡を断念したのだろう。

 

 

 

「嵐!この裏切り者ー!」

 

 

 

逃げる私達の後ろから、“彼女”が腹の底からの金切り声で私を責めるのが聞こえた……

 

 

 

一方、その声を聞いた私も、逃げながら秋山先輩へさっきの“偽名”について文句を言う。

 

 

 

『秋山先輩、何が悲しくて「2()4()()()()()()()()()()()()()()()()()*3がやった役を偽名にしたのですか!?』

 

 

 

「えっ、そうなのですか?」

 

 

 

『もう!戦車の事は詳しいのに、そう言う事は全然ですか…信じられない!』

 

 

 

私のツッコミが今一つ理解出来なかったらしい秋山先輩の返答に呆れた私は、先輩へ文句を言ったが当人はそれに答えず、代わりにカメラマン役である私に走りながら指示を出した。

 

 

 

「まあ、それは兎も角、カメラを此方へお願いします」

 

 

 

『!?』

 

 

 

先輩からの指示に呆れながら、私は走りながらカメラを先輩の方へ向けると…秋山先輩も逃げながら、カメラに向かってこんなナレーションをやったのだ。

 

 

 

「有力な情報を入手しました。これでレポートを終わります!」

 

 

 

『先輩!この後捕まったら、一体如何するのですか!?もうやだぁ!』

 

 

 

余りにも現実離れした秋山先輩の行動を目にした私は、今日一番の悲鳴を上げながら、秋山先輩と共に“死にそうな思い”でサンダース大付属の学園艦から脱出したのだった……

 

 

 

(第33話、終わり)

 

 

*1
水平渦巻スプリング・サスペンションの略。M4中戦車の多くのモデルが採用していた懸架装置の形式。古い貨車の台車の様な印象の外観が特徴。

*2
垂直渦巻スプリング・サスペンションの略。1944年9月以降に生産されたM4中戦車の一部形式で採用された、改良型の懸架装置の形式。外観はVVSSよりも近代的で、トラックのトレーラーの車台の様にも見える。因みに“ニワトリさんチーム”のM4A3E8は、この懸架装置を採用している。

*3
これ、実話である。この人もアカデミー栄誉賞、ハリウッド殿堂入りを果たしている名俳優。




ここまで読んで下さり、有難う御座います。
第33話をお送りしました。

と言う訳で、今回は原作第5話の目玉(笑)「実録!突撃!!サンダース大付属高校」の模様を舞台裏込みでお届けしました。
原作では、秋山殿1人で“潜入”をやった訳ですが、本作でも同じでは芸が無い!(迫真)
と思いまして、本作では秋山殿が嵐ちゃんを“拉致”(爆)する形にして、2人で作戦を決行する事となりました。
おかげで、嵐ちゃんは酷い目に遭った訳ですが、主役だからちかたないね(笑)。
一方、今回姿は見せたものの名前は明かされなかった嵐の“親友”ですが、彼女の正体は次々回明かされる予定ですので、もう暫くお待ち下さい。

そして、次回はサンダース大付属の学園艦から秋山殿と嵐ちゃんが帰って来た後の大洗女子の様子を綴って行きますので、楽しみにして下さい。

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