戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない 作:瀬戸の住人
コロナウイルス緊急事態宣言で上映延期となっていた『T-34 レジェンド・オブ・ウォー ダイナミック完全版』IMAXバージョン、遂に近所の映画館へ見に行ったぜ!
ハッキリ言って「男だらけ(一人だけ美女含む)の実写版ガールズ&パンツァー」でした、有難う御座います(本音)。
でも“コウモリを食べたことはある?”は、時節柄ヤバ過ぎて思わず吹きましたわ(爆)。
それでは、どうぞ。
「第63回戦車道全国高校生大会1回戦の第4試合『長崎県代表サンダース大付属高校対茨城県代表大洗女子学園』は、サンダース大付属副隊長でチームのフラッグ車の戦車長でもあるアリサ選手が相手の無線通信を傍受すると言う“戦車道のマナー違反”を犯した事もあり、序盤はサンダース大付属が試合を有利に進めていました」
今、試合会場の観客席前に在る大型モニターと連動しているスピーカーや全国のテレビから、この試合の実況を担当する首都テレビのベテランアナウンサー・加登川 幸太の声が響いて来る。
「しかし、サンダース大付属の包囲網を果敢な突撃で突破した大洗女子は、相手チームによる“通信傍受”の事実を察知すると、其れを逆手に取って偽通信を流し、サンダース大付属に“相手フラッグ車の位置を摑んだ”と思い込ませた後、自分達が待ち伏せていた窪地へ誘い込んだ結果、大洗女子がサンダース大付属のM4中戦車2輌を撃破して先制!現在試合は大洗女子学園のペースで進んでいます」
此処で加登川アナウンサーは一旦言葉を切ると、隣の席に居る解説者に話し掛ける。
「解説の斎森 伸之さん。“サンダースが快勝する”と言う戦前の予想とは異なり大洗女子が奮闘していますが、此処からの展開は如何なるでしょうか?」
「そうですね。戦車の数は大洗が6輌に対してサンダースは8輌となりましたが…只、サンダースは未だ充分に逆転出来ますから、この先も見逃せないと思います」
「有難う御座います…試合は此処から新たな展開へと続いて行きます。さあ、次に動くのは何方でしょうか?」
戦史研究家兼戦車道解説者の斎森 伸之が冷静な口調で両校の形勢を簡潔に述べると、加登川アナウンサーは礼を述べた上で、試合が新たな展開を迎えつつある事を試合会場の観客や全国の視聴者に告げた。
その声は“低音の効いた独特の声”であり、長年スポーツ実況で全国の視聴者に親しまれて来た彼の特徴でもある。
一方、試合会場の観客や首都テレビによる地上波TV生中継を見ていた視聴者の多くは、予想外の試合展開に驚きと興奮を隠せなかった。
一方、私達大洗女子学園戦車道チームはこの時、待ち伏せ地点だった窪地の坂の上から移動を始めていた。
「嵐ちゃん、西住先輩達やったね!」
「まさかチームの撃破第一号が西住隊長やカバさんチーム達だったなんて!」
『ふふっ…皆が先輩方や梓達の特訓を指導した成果だと思うよ?』
菫と舞が其々の言葉で仲間達の快挙を褒め称えている中、私はあの戦車喫茶でのトラブルを発端に、瑞希が仲間達に向かって檄を飛ばした事から始まった“大会直前の特訓”を事実上指導した“みなかみタンカーズ組”の頑張りを褒めてあげていると、その“特訓”の発案者である瑞希が、頷きながら車内無線で皆に話し掛ける。
「そうね…皆、経験者の私達が驚く位に成長しているし、私達もボヤボヤしていられないわ」
「「『うん!』」」
瑞希の一言に私達も同意する中、“ニワトリさんチーム唯一の戦車道未経験者”・良恵ちゃんが少し不安そうな声で、私に向けて話し掛ける。
「でも原園さん…この大会は、フラッグ車を撃破しないと勝ちにならないんでしょ?」
『うん。だから、何としても相手のフラッグ車を見付け出さないと……』
良恵ちゃんの指摘通り、この勢いをフラッグ車撃破に繋げないと何の意味も無い…だから、私もこの後如何すべきか考えようとしていた時。
「“あんこう”です。此れから、皆さんに
西住隊長からのスマホメールで、私達に“ある任務”が下されようとしていた。
その頃…サンダース大付属のフラッグ車・M4A1(76㎜砲型)中戦車は、試合会場内のとある竹林に在る竹材置き場の中に身を隠していた。
「いい気になるなよ!」
フラッグ車の戦車長でもある副隊長・アリサは、大洗女子の鮮やかな攻撃に対して毒吐きながらも未だに“通信傍受が相手側にバレている”事を知らないまま、備え付けの無線機を操作して大洗女子側の通信を探っていた。
その時、無線機から相手側の隊長の声が雑音交じりの状態で聞こえて来る。
「全車、128高地に集合して下さい」
その声に、思わず無線周波数を調整する為のつまみを操作するアリサの指の動きが速くなる…そして。
「“ファイアフライ”が居る限り、此方に勝ち目は有りません。危険ではありますが128高地に陣取って、上から一気に“ファイアフライ”を叩きます」
勿論…それは、大洗女子の西住 みほ隊長による“偽通信”なのだが、そうとは気付かないアリサは通信を聞き終えた瞬間、周囲に居たフラッグ車の乗員が仰天する程の大声で高笑いを始めた。
「ふふふ…アーハッハッハ!捨て身の作戦に出たわね!でも丘に上がったら、いい
まさか、その“捨て身の作戦”が“罠”だとも知らず、味方の勝利を確信し切っているアリサは興奮を抑えつつ、隊長のケイへ新たな指示を出す。
「128高地に向かって下さい」
「如何言う事?」
アリサから“確信に満ちた指示”を聞いて思わず問い掛けるケイ隊長に対して、アリサはキッパリとした口調で「敵の全車輌が集まる模様です」と報告したが、此処で“
「一寸アリサ、其れ本当?如何して分かっちゃう訳?」
しかしアリサは、またしても確信に満ちた口調でこう答えるだけだった。
「私の情報は確実です」
するとケイは、意表を突かれたのか驚きの表情を浮かべると「あっ…OK!」とアリサへ返信した後、改めてチームの全車へ“命令”を出すのだった。
「全車、
一方この時、大洗女子は“アヒルさんチーム”の八九式中戦車甲型を先頭に、
此れから、サンダースのフラッグ車を捜索するのである。
「恐らくフラッグ車は、此処か此処…其れかこの辺りの筈」
隊長車・“あんこうチーム”のⅣ号戦車D型の車内では、隊長のみほが手元の地図を指差しながら“フラッグ車が居そうな場所”を確認しているが…その場所は全て“推測”に過ぎない為、果たして相手フラッグ車を見付けられるかどうか確信が持てない状況だ。
事実、Ⅳ号の砲塔側面右側のハッチから身を乗り出して双眼鏡で周囲を窺っていた装填手の優花里から「未だ視認出来ません」との報告が入って来る。
すると、みほは心配そうな表情を浮かべながら、こんな事を呟いた。
「囮は出しているけれど、
そして、同じ頃。
「何も無いよ~!」
アリサの指示通り“128高地”に到着したサンダース大付属本隊だったが、周囲には大洗女子の戦車処か鼠一匹居ない事に気付いた隊長のケイが、無線でアリサに向かって絶叫していた。
だが…この時、ケイが率いるサンダース大付属本隊
此処に居る自分達の戦車の数が、
「そんな筈有りません!…まさか嵌められた?」
一方、確信を持って伝えた筈の情報が“間違っている”と隊長から知らされて初めて、“通信傍受が相手にバレている”可能性に思い当たったアリサは、此処でふと“或る疑問”に思い当たる。
「じゃあ、大洗の車輌は何処に?」
若しかすると…“最悪の可能性”を考えたアリサが、不安気な表情でM4A1の車長用キューポラ上から周囲の竹林を見張りつつ、考えを巡らせていた時。
彼女の背後からエンジン音が響いて来る…アリサは其れに気付いた瞬間、音がした方向へ視線を向けた。
すると、M4中戦車よりも一回り小さくて古めかしいスタイルをした1輌の戦車が、アリサのM4A1が隠れている竹材置き場の側面に在る竹柵を壊しながら姿を現した。
その戦車には周囲を見張る為だろうか、戦車長と思われる人物が
「『?』」
しかし余りにも突然な遭遇だった為、アリサも相手の戦車長らしき人物も呆気に取られたまま、互いの顔を見詰めるのが精一杯だった。
そんな二人が次の行動に移ったのは、其れから約20秒後。
アリサの目の前にいる“小さな戦車”の砲塔部にしがみ付いている少女…サンダース大付属のフラッグ車を捜索していた大洗女子“アヒルさんチーム”の八九式中戦車甲型の戦車長・磯辺 典子が砲塔上部を軽く叩いて、車内の仲間達に合図を送った後発した一言が切っ掛けだった。
「右に転換、急げ!」
「蹂躙してやりなさい!」
典子の一言で急発進する八九式を逃すまいと、アリサが自らの
「敵フラッグ車、0765地点にて発見しました!でも、此方も見付かりました!」
「!」
一方、サンダース大付属のフラッグ車からの攻撃を躱した“アヒルさんチーム”から敵フラッグ車発見の吉報と同時に“敵に発見された”との凶報も受け取ったみほは、相手チームに自分達の位置を把握された事に衝撃を受けつつも直ぐに立ち直り、チームの全戦車長へ次の指示を送った。
「0765地点ですね。“アヒルさん”は逃げ回って敵を惹き付けて下さい!“
そして、地図上にペンで印を付けて位置を確認する…“アヒルさんチーム”が相手フラッグ車の追跡を受けている以上、余り時間の余裕は無い。
其処でみほは、この状況を逆手に取り“アヒルさんチーム”に相手フラッグ車を0615地点まで誘き寄せて貰い、其処で“あんこう”“カバさん”“ウサギさん”“カメさん”の
サンダース本隊が自チームのフラッグ車を救援に向かう前に、フラッグ車を倒す決断をしたのである。
「武部さん、メールをお願いします!」
「分かった!」
次なる作戦を指示するべく、通信手の沙織へメール発信を依頼するみほ。
するとみほは、沙織にもう一言だけ指示を付け加える。
「それと武部さん、“ニワトリさんチーム”には別の指示をメールで送って下さい。内容は……」
その
「“あんこう”より“ニワトリ”へ、そろそろ始めて下さい。1輌撃破したら、直ぐその場を離脱して構いませんので、兎に角相手を混乱させて下さい」
『OK、良恵ちゃん。武部先輩には一言「了解」とだけ送ってね』
「はい」
『じゃあ皆、そろそろ始めるよ』
今回“無線では無くスマホのメールで通信する”作戦の為、臨時の通信手を務めている良恵ちゃんへ返信の指示を出すと、私は改めて皆へ戦闘準備を命じる。
すると瑞希が、不敵な笑みを浮かべながらこんな事を呟いた。
「うふふ…まさか、
そんな瑞希の呟きに、舞が何時もの笑顔で反応している。
「そうだね~さっきケイさんが『何も無いよ~!』って叫んでいたもん♪」
そう…今、私達が居るのは“128高地”。
西住隊長の偽通信でサンダース大付属本隊が誘き出された正に
しかし、何故敵部隊が居る場所に私達が紛れ込んでいるのだろうか?
その答えは、最初の待ち伏せが成功した後、次の作戦の為に移動しようとした私達へ、西住隊長からメールによる命令が届いた時にまで遡る。
「“あんこう”です。此れから、皆さんに大事な事をお願いします。此れから“ニワトリさんチーム”は128高地に移動して下さい。其方へサンダースの本隊を誘き寄せますので、囮になって欲しいのです。無理なお願いをして御免なさい」
そのメールを読んだ私は、思わず武者震いをした。
これから、私達はサンダースのフラッグ車を探し出さないといけないが、それにはサンダースの
これを放っておけば、当然フラッグ車を発見する前に彼女達によって返り討ちに遭ってしまう。
其処で、チームの中で一番戦車道の経験豊富な私達が、囮となってサンダース本隊を食い止めて欲しい、と言う訳だ。
勿論
だが私は、西住隊長を安心させるべく良恵ちゃんへこう告げた。
『良恵ちゃん。一寸長いけれど、西住隊長へこう返信して。「了解です。こう言う1対多数の戦いは
「はい…でも、大丈夫なんですか?」
私が自信満々で隊長への返信文を読み上げた後、良恵ちゃんが不安気な表情で問い掛けたので、私は笑みを浮かべながらこう語る。
『うん、実は私にちょっとした策があるんだ♪』
「「「「えっ?」」」」
その瞬間、良恵ちゃんだけでなく瑞希や菫に舞までが一斉に戸惑いの声を上げたので、私は人差し指を上に立てつつ、にこやかな声でこれから始まる“作戦名”を告げた。
『私達もサンダースの戦車も、同じM4でしょ?だからその名も…“ソックリさん作戦”!』
「「「あっ!」」」
「そうか!形は少々違っているけど、これも立派な“シャーマン”だもんね♪」
その瞬間、私の作戦の意味を知った皆が驚愕する中、その意味を真っ先に理解した菫が嬉しそうな声を上げる。
そんな皆の様子を一瞥した私は、此処で威勢の良い声で皆へ命令を出した。
『ピンポーン♪じゃ、先ずはサンダース本隊を探しに、128高地手前の道路へ進出するよ!』
いよいよ“ソックリさん作戦”のスタートだ。
先ず私達は、128高地に通じる最も大きな道路…と言っても平凡な田舎道にしか見えない未舗装路だが…兎に角、其処へ進出する。
其れから近くの茂みに“
「前方にエンジン音多数…いた!」
私の隣、砲塔上の装填手用ハッチから顔を出して双眼鏡で周囲を見張っていた舞が、高地目指して進撃するサンダース本隊の姿を確認したので、私は操縦手の菫へ指示を出す。
『菫、隊列の最後尾に付けて。舞、備え付けのクラッシュ
「チェ!“転校”かぁ…サンダースの食事はカロリーばかり多くて、直ぐ太っちゃうんだよ!」
私が舞へ指示を出した瞬間、彼女は思い切り頬を膨らませながら、“サンダースに
『ブーブー言わないの。前から見れば“
こうして、今私達は128高地に居るサンダース大付属本隊の最後尾に紛れ込んでいる。
勿論気付かれるリスクは有ったが、結果的に茂みから出る際、極力静かに動き出したのが良かったのか、其れとも舞が私の指示通りだらしない感じでクラッシュ
『よし…じゃあ皆、これから攻撃を始めるよ。先ず、前方の隊長車を撃破して相手を混乱させてから、可能ならばファイアフライも狙う』
「そうね。本当はファイアフライを狙いたいけれど、此処からだと他のM4の陰に隠れているから直接狙えないものね」
西住隊長からは「1輌撃破したら直ぐその場を離脱して構わない」との指示を受けてはいるが、私としてはチームにとって最大の脅威である“シャーマン・ファイアフライ”も重要目標として撃破すべきと意識した上で、皆に指示を出していた。
其処へ砲撃準備を始めた瑞希が頷きながら現在の状況を語ったので、私は『うん…皆、準備出来た?』と最後の確認をする。
「「「「OKだよ」」」」
こうして皆の戦闘準備が整った事を確認した私は、相手チームの本隊を混乱に陥れるべく、ケイさんが乗っている隊長車のM4を攻撃しようとした。
だが……
この時、サンダース大付属のケイ隊長は“128高地”に大洗の戦車が居ない事が判明した為、副隊長兼フラッグ車々長のアリサを叱責した後、事実上孤立しているフラッグ車と合流するべくフラッグ車が隠れている“0765地点”へ移動しようと決断し、無線で全車に向けてこう指示した。
「皆、若しかしたらさっきの待ち伏せと同様に謀られたのかも知れない…取り敢えず、全車でアリサを救援に行くわよ」
「隊長、待って下さい!」
ところが此処で、ケイの決断に異論を唱える者が現れた。
「
いきなりの異論に、ケイが英語で“何?”と聞き返した所、時雨は冷静な口調でこう語る。
「今、気付いたのですが…現在、私達の残存戦車数は
「ええ。
時雨の話を聞いたケイは、その内容が“当たり前な事”だったので、訝し気に思いつつ時雨へ問い掛けた所、彼女は或る“重大な事実”をケイに告げた。
「此処には“シャーマン”が
「!」
“
と言う事は…と、此処まで考えを巡らせていた彼女は、更なる“重大な事実”を思い出して、思わず大声で無線に向かって叫んだ。
「しまった…確か、大洗にも“
悔やんでも悔やみ切れない事実。
待ち伏せを喰らって先制を許しただけでなく、相手チームに“自分達と同じ形式の戦車”が居り、其れが味方の戦車を装って本隊に忍び込んでいた事に気付かなかったとは!
ケイは無線では聴き取れない程の小声で「ホント、私もアリサの事をどうこう言えないわね……」と自嘲すると、時雨に向けて礼を述べた。
「有難う、“シーズー”。直ちに皆へ警告を……」
だが時雨は、切迫した声でケイが仲間達へ警告を発しようとするのを止める。
「駄目です、隊長。皆に告げたらパニックになって、収拾が付かなくなります!」
「
時雨の言葉に、思わず悪態を吐くケイ…だが彼女は、時雨の進言が正しい事に気付いている。
若しもこの事を仲間達に告げたら、混乱した彼女達は何処に居るか分からない“同じM4に乗っている敵”目掛けて“
自分達の置かれている状況が、想像を遥かに超える難局である事を悟ったケイは「何て事!これじゃあ、アリサを救援に行く処じゃないわ……」と珍しく弱気になっていたが、此処で時雨が静かな声で話し掛けて来た。
「隊長、落ち着いて下さい…多分、これは嵐の作戦だと思います。でも彼女の戦車は“
「あっ、そうか…でも如何やって見分けるの?」
時雨の進言で“大洗のM4A3E8”と “自分達のM4”を見分ける事は可能だ、と気付かされたケイは胸を撫で下ろしながらも、具体的な対策について問い掛ける。
すると時雨は、落ち着いた声で自ら立てた作戦を説明した。
「大丈夫です。隊長は、取り敢えず“何も気付いていない振り”をして皆へ前進を命じて下さい。嵐の“
その作戦を聞いて自信を取り戻したケイは、直ちに決断すると時雨へこう命じた。
「
「
時雨が力強く返答すると同時に、サンダースはこの危機を乗り越えるべく行動を開始した。
其れは、私達“ニワトリさんチーム”がケイさんが乗っているサンダース大付属隊長車のM4を攻撃しようとした時に起きた。
突然、“128高地”に集結していたサンダース本隊が動き始めると、傘型隊形になって道路から外れた後、草原をゆっくりとしたペースで前進を始めたのだ。
『皆、攻撃は中止。取り敢えず車列の最後尾に尾ける』
攻撃直前に肩透かしを喰らった形になったが、私は冷静さを保ちつつサンダース本隊の後を尾ける…某ステルスゲームで有名になった“ストーキング”と言う奴だ。
だが次の瞬間、私は草原の右側を見て驚愕する。
何故なら、其処にサンダースのM4“シャーマン”が何故か1輌だけ、車列に加わらずに停車していたのだ。
そして…このM4と横に並んだ時。
その車長用キューポラ上に、“猛犬の様な恐い顔”で私を睨んでいる“みなかみタンカーズ時代の親友・時雨”の姿が見えた!
『はっ…“イージーエイト”とサンダースの“シャーマン”は、サスペンションの形状が違う!』
次の瞬間、私は“ソックリさん作戦”が時雨に見破られたのだと悟り、戦慄した。
実はM4“シャーマン”中戦車シリーズは、第二次大戦中の1942年から45年の約3年間に5万輌近くが製造されただけ在って、部品工場の生産能力の都合や製造中の改良等で様々なバリエーションが存在し、各サブモデル間でも細かい違いが存在する。
その中でも、特に大きな違いの一つがサスペンションだ。
実は、サンダース大付属のM4とファイアフライ(ベースの車体はM4A4)のサスペンションはVVSS(垂直渦巻スプリング・サスペンション)と言って、大雑把に言えば“古い貨車の台車”の様な外観なのに対して、私達のM4A3E8のサスペンションはHVSS(水平渦巻スプリング・サスペンション)と言う新型サスでこれも大雑把に言うと“トラックのトレーラーの台車”の様な外観をしており、特に転輪はタイヤの様にも見える。
その為、サンダース側が自分達のM4やファイアフライと私達のM4A3E8を見分けようとする場合、真横から両車のサスペンションの形状を見比べれば、簡単且つ確実に見分けが付くのだ。
後から振り返れば長い話になるが、この時私は瞬時に“作戦失敗”を悟ると、操縦手の菫へこう叫んだ。
『菫、左旋回!サンダースの隊列から離れて!』
次の瞬間、「あっ、こら待てー!」と絶叫する時雨の叫び声を背に、私達の“イージーエイト”はサンダースの隊列から離れる。
だが此処で、サンダース本隊は一旦停止すると、私達が追い越して行くのを待ってから、再び前進を始めたのだ。
勿論、追跡を始めたサンダースのM4中戦車の中には、私達の“イージーエイト”を発見した時雨のM4の姿も在る。
「しまった、喰い付かれた!」
こうして私達は、サンダース本隊と時雨の乗るM4を相手に、“壮大な鬼ごっこ”を始める破目に陥ったのである。
(第38話、終わり)
此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第38話をお送りしました。
今回の話、実は原作アニメ第6話で西住殿が語った或る台詞がヒントになっています。
それは、サンダースのフラッグ車が居ると思われる“オボコリ窪”方面へ向かっていた時に呟いたこの台詞。
「あと1輌あれば、囮に出せるんだけど……」。
そう…本作の大洗女子はその“あと1輌=6輌目”である“ニワトリさんチーム”が自分達の戦車・M4A3E8の特徴を活かした“囮作戦”を実行しました。
しかし、その作戦は時雨の機転によって暴かれてしまい、嵐ちゃん達“ニワトリさんチーム”はサンダース本隊に追い立てられる破目に!
さあ、大ピンチに陥った嵐ちゃん達と大洗女子の運命はどっちだ!?
それでは、次回をお楽しみに。