戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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今回の投稿準備中に『ガルパン最終章第3話・2021年春上映決定!』を知って狂喜乱舞している作者で御座います…ティザービジュアルの西住殿と西殿の表情が“昭和の刑事ドラマ”みたいで良いよね!(来月で48歳の作者語る・笑)

さて話数的には縁起が悪いのですが(苦笑)、全国大会・一回戦は今回で終わりです。
今回は前回の後書きで触れた通り試合後の各校の様子、そして嵐と時雨の関係にも決着が着きます。
そして原作をご覧になった方ならピンと来るでしょうが、“ある事件”が起きますが更に……
それでは、今回は長い話になりますがどうぞ。



第42話「一回戦、決着です!!」

 

 

 

「ああっ…負けちゃった」

 

 

 

第63回戦車道全国高校生大会一回戦「サンダース大学付属高校対大洗女子学園」の終了直後、サンダース大学付属高校戦車道チームの“イージー(E)”チーム戦車長“代理”・白露 一美が涙を零し乍ら呟くと、元々の一美のポジション・砲手席に着いて居る“本来の戦車長”・原 時雨が、俯いた儘涙声で車内の仲間達に詫びる。

 

 

 

「御免、皆。私のミスで……」

 

 

 

此の試合で、時雨は対戦相手である大洗女子学園の隊長車・Ⅳ号戦車D型を狙っていた味方の副隊長・ナオミが駆る“シャーマン・ファイアフライVC”の護衛役として、同じく大洗のⅣ号を護衛していた嘗ての親友・原園 嵐が戦車長を務める“シャーマン・イージーエイト(M4A3E8)”を仕留めるべく、自身の判断で戦車長から砲手にポジションチェンジをしてまで嵐のM4A3E8を撃破しようとした。

 

だが、嵐は時雨からの砲撃を間一髪で躱すと、ナオミのファイアフライ目掛けて突き進み、最後はファイアフライの射線を遮って()()()()()()()形で大洗の隊長車を守り抜いた…その結果、大洗の隊長車であるⅣ号戦車D型からの砲撃で、自チームのフラッグ車だったM4A1“シャーマン(アリサ車)”(76㎜砲型)が撃破され、現在に至る。

 

しかし時雨の仲間達は皆、自分達の戦車長を慰める様に優しく声を掛けていた。

 

 

 

「時雨、そんな事無い!相手の“イージーエイト(M4A3E8)”の動きが“凄過ぎた()()”だから!」

 

 

 

「うん、アレは“化け物”みたいな動きだったよ!」

 

 

 

「でも……」

 

 

 

装填手と操縦手が互いに声を掛け合い、副操縦手も涙を浮かべつつ時雨に向かって頷いて見せるが、“敗戦の責任は自分に在る”と信じて疑わない時雨は、仲間達の声に戸惑った儘だ。

 

しかし此処で、“或る事”に気付いた一美が声を掛ける。

 

 

 

「だけど時雨、あの“イージーエイト(M4A3E8)”凄かったね…私はてっきり、ナオミさんのファイアフライ目掛けて体当たりするのかと思っていたら、“自分のチームの隊長車を庇う”なんて……」

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

自分の言葉に鋭く反応した時雨の声を聞いた一美は驚きながら「如何したの?」と問い掛けるが、時雨は「あっ、何でも無い」と取り繕う様に返事をすると黙り込んでしまった…だが、時雨は一美からの一言で“或る事”に気付くと、心の中で自問自答する。

 

 

 

「そうだ…嵐は今迄、試合の時は兎に角“相手の戦車を()()()()()()()()”に集中していて、相手や味方を思い遣る事はしない()だったから、てっきりあの時もナオミさんのファイアフライに()()()()()()と思っていたのに、まさか隊長さんを庇うなんて…あっ!」

 

 

 

その瞬間“ハッ”となった時雨は、去年“嵐の身に起きた出来事”を思い出す。

 

 

 

「そうだ!嵐は去年の“全国高校生大会の決勝戦”を現地で見た時、()()()()()()()()()()()()()()()を見てから、“戦車道の戦い方”が急激に変わって行ったんだったっけ…そうか、()()()()()()()()()って!」

 

 

 

そして、時雨は涙を拭うと砲手席の照準器から、撃破されて横倒しになった大洗女子のM4A3E8の姿を見詰める。

 

其処には、試合を決めた隊長車のⅣ号戦車D型から降りた一人の少女が、M4A3E8へ向かって必死に駆け寄って行く姿が見えた。

 

 

 

「そうだ…試合の終礼が終わったら、嵐と()()()に挨拶をしなきゃあ!」

 

 

 

すると時雨は、“試合に負けた”とは思えない程の明るい表情で、嵐が戦車長を務めたM4A3E8へ駆け寄る少女…西()() ()()の姿を照準器越しに見詰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない

 

第42話「一回戦、決着です!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一同、礼!」

 

 

 

「「「有難う御座いました!」」」

 

 

 

第63回戦車道全国高校生大会一回戦「サンダース大学付属高校対大洗女子学園」の終了を告げる“終礼”が、審判長・高島 レミの号令で試合に参加した選手達によって行われた瞬間、試合会場の観客席からは凄まじい歓声が上がった。

 

 

 

「大洗女子の皆、有難う!」

 

 

 

「サンダースも最後頑張ったね!」

 

 

 

「大洗やったね!最高!」

 

 

 

「次の試合も見に行くよ!」

 

 

 

“弱小校”の大洗女子が“高校戦車道四強の一角”・サンダース大付属を倒したと言う“番狂わせ”も在ってか、観客席のボルテージも試合中以上の盛り上がりを見せている。

 

 

 

「凄い拍手!」

 

 

 

「勝ったー!」

 

 

 

「シャーマン相手に勝てるなんて!」

 

 

 

五十鈴先輩が観客席からの拍手を聞いて感嘆し、武部先輩は両手を挙げてストレートに勝利を喜び、その隣では秋山先輩が涙を浮かべながら九州・佐世保のシャーマン戦車軍団(サンダース大付属)に勝った喜びを嚙み締めている中、私・原園 嵐は他の仲間達と一緒に自然な笑顔を浮かべている西住隊長の姿を見詰めながら少し前の出来事を思い出していた。

 

実は試合終了直後、私達“ニワトリさんチーム”は横倒しになったイージーエイト(M4A3E8)の車中で勝利を喜んでいた所、西住隊長が泣きそうな顔で車内へ入って来たかと思うと「皆さん無事ですか!?」と呼び掛けて来たので、私も含めたチーム全員が驚きながらも「無事でーす!」と返事をしてから外に出た所、西住隊長が私達を心配していた()()が分かった。

 

何故なら、M4A3E8が横倒しになって停車した場所から100m程先の場所に崖が在り、若しも“あんこうチーム(Ⅳ号戦車D型)”の真後ろを通過した時にナオミさんの“シャーマン・ファイアフライVC”に()()()()()()()()()、其の儘崖から転落していたに違い無かったからだ。

 

その事を知ったチームの仲間達が真っ青になる中、私は恐縮した表情で「あ…西住隊長、危ない事をして済みませんでした」と頭を下げた所、西住隊長はホッとした表情で頷いた直後、各チームの皆が西住隊長の周りに集まって来て勝利を喜んだ。

 

そして今、私達は西住隊長達と一緒に試合会場の観客席前で対戦相手のサンダース大付属の選手達と共に試合の終礼を終えた所である。

 

 

 

そんな感じで私が物思いに耽っていた時、突然西住先輩に向かって“聞き覚えの有る声”が飛び込んで来た。

 

 

 

「貴女がキャプテン(隊長)?」

 

 

 

その声に“あんこうチーム”の先輩方が「?」と戸惑っている中、私はその声を掛けた人が誰か直ぐ分かった。

 

 

 

『あっ…サンダース大付属のケイ隊長!』

 

 

 

つい先程迄全力で戦っていた対戦相手の隊長が私達の前に現れたので、西住隊長も緊張した面持ちで「あっ、はい」と答えると…ケイさんは突然“ニヤリ”と笑った次の瞬間、興奮気味に叫びながら西住隊長へ抱き着いて来た!

 

 

 

Exciting(エキサイティング)!こんな試合が出来るとは思わなかったわ!」

 

 

 

あの…ケイさん、西住隊長は“そう言う趣味(百合)が有りませんから固まってしまっていますけど。

 

オマケに“色々と誤解されそうな光景”を目の当たりにした“あんこうチーム”の先輩方も驚いている中、その様子に気付いたケイさんが西住隊長の肩を叩いて落ち着かせると、西住隊長は戸惑い気味の表情でケイさんに問い掛けた。

 

 

 

「あの……」

 

 

 

「何?」

 

 

 

4()()…いえ、()()()()()()()()()()5()()しか来なかったのは?」

 

 

 

「貴女達と()()()()()だけ使ったの!」

 

 

 

試合の後半で、私達と同じ数の戦車しか使わなかった事を明言したケイさんに対して、西住隊長は「如何して?」とケイさんの判断について疑問を呈すると、彼女は笑顔でこう答えたのだ。

 

 

 

That's(ザッツ)戦車道!これは()()じゃない。道を外れたら戦車が泣くでしょ?」

 

 

 

「わあ…!」

 

 

 

『!』

 

 

 

最後まで勝利に拘り過ぎず、“フェアプレイ”に徹したケイさんとサンダースの“戦車道の神髄”に触れて感動する西住隊長の横で、私も衝撃を受けつつケイさんの事を再認識させられた。

 

 

 

『ケイさん、試合の勝利だけに拘らない人だったんだ。この人の事をもっと良く知っていれば、入試後のオリエンテーリングでサンダースへの入学を断っただろうか…あの時は、本当に失礼な事をしてしまった』

 

 

 

心の中でそんな事を考えていると、ケイさんが西住隊長へ“試合中のマナー違反”を詫びている。

 

 

 

「“盗み聞き”なんて()()()()()()して、悪かったわね」

 

 

 

其れに対して、西住隊長は“試合中のマナー違反”については一切非難をせず、代わりに「いえ、全車輌来られたら負けてました」と、率直に胸の内を語った。

 

その一言に“あんこうチーム”の先輩方や私達は頷くが、ケイさんは落ち着いた口調でこう言い切る。

 

 

 

「でも勝ったのは貴女達!」

 

 

 

そして、静かに右手を差し出すケイさん。

 

すると西住隊長は、意を決したかの表情でケイさんの右手を両手で握ると……

 

 

 

「あ、有難う御座います!」

 

 

 

と、勇気を振り絞る様な声でケイさんにお礼を述べたのだった。

 

その姿を見て私もつい……

 

 

 

『ケイさん、有難う御座いました!』

 

 

 

と、ケイさんに声を掛けていた…すると。

 

 

 

「あっ、嵐!実は貴女と話がしたい娘達が居るのよ!」

 

 

 

『えっ?』

 

 

 

ケイさんからの声で私が動揺していると、突然ナオミさんが私に呼び掛けて来る。

 

 

 

「おい、嵐!」

 

 

 

『あっ…はいっ!』

 

 

 

ナオミさんからの呼び掛けに対して、当惑気味に返答する私。

 

するとナオミさんは、勢い良く駆け寄ると私を抱き締めて来た。

 

 

 

「こいつ~!自分達の隊長の為に()()()()なんて、凄くCool(クール)Crazy(クレージー)だったぞ!」

 

 

 

『そ…其れは如何も』

 

 

 

西住隊長と同じく“そう言う趣味(百合)が無い私も固まり掛けながら返事をすると、ナオミさんがニヤリと笑いながら語り掛けて来た。

 

 

 

「フフ…でも時雨は気が気で無かったみたいだけどな。其れで一つ、聞きたい事が有るんだけど?」

 

 

 

『はい?』

 

 

 

「最後に隊長を庇った時、時雨はてっきり私のファイアフライへ体当たりをするんじゃないかと思ったんだけど、そうしなかったよな。何故だい?」

 

 

 

『其れは…体当たりしちゃったら、私達だけで無くナオミさん達()“怪我をしちゃう”じゃないですか。だから、“危ない目に遭う”のは私達だけで充分だ、と思ったのです』

 

 

 

「成程、私達の事も考えていた訳か…こりゃ、自分達の勝利しか考えていなかったアタシ達の負けだな。納得したよ

 

 

 

『いえ……』

 

 

 

私は、ナオミさんからの質問に答えつつ物思いに耽っていた。

 

 

 

『そうだ…私の戦車道は、去年の“全国高校生大会の決勝戦”を()()()目の当たりにする迄は、相手の事を考えず兎に角“相手戦車をやっつける事”だけを考えていた。あの時、黒森峰の副隊長だった西住先輩の“()()姿()”を此の目に焼き付ける迄は』

 

 

 

だがその思いは、ナオミさんの次の一言で中断する事になる。

 

 

 

「そうだ、時雨からも言いたい事が有るらしいよ!」

 

 

 

『!?』

 

 

 

ナオミさんからの思わぬ一言に私は驚いて周りを見ると、ナオミさんの後ろから時雨が優しい表情を浮かべつつ私の前へやって来る。

 

そして、私に謝罪の言葉を紡ぎ始めた。

 

 

 

「嵐ちゃん御免ね…“裏切り者”だなんて言っちゃって。本当は“嵐ちゃんと一緒に戦車道が出来る()達”を見て、つい嫉妬しちゃったんだ。本当に御免ね」

 

 

 

その瞬間、私も自然に“自分と一緒に戦車道を続けたかった”と言う時雨の心を裏切った事に対して、心の底から謝罪を口にした。

 

 

 

『ううん…私も御免。“二度と戦車道には戻らない”って言っていたのに、嘘を吐いてしまって』

 

 

 

すると、時雨は目に涙を浮かべながら感動した表情でこんな事を私に告げた。

 

 

 

「でも…さっきナオミ先輩からの質問の答えを聞いて、ハッキリ分かったよ」

 

 

 

『えっ?』

 

 

 

「嵐ちゃんは、戦車道で初めて()()()()()()()()()()()()()()()()に巡り会えたんだね」

 

 

 

『あっ…うん!』

 

 

 

時雨の一言に私は心の底から笑顔を見せて答えると、時雨は涙を零しながらも嬉しそうな表情を浮かべてから、西住隊長に向き合うと隊長へ声を掛ける。

 

 

 

「と言う訳で、西住さん!」

 

 

 

「は、はい!」

 

 

 

突然時雨から声を掛けられた西住先輩が緊張気味に答えると、時雨は笑顔でこんな事を言い出した。

 

 

 

「嵐はちょっと乱暴で試合ではスタンドプレーばかりするけれど、凄く頼りになる娘だから仲良くしてあげて下さいね…それに嵐は隊長さんに“ラブラブ”みたいですから!

 

 

 

『ちょっと待って時雨!余計な事を言わないでよ!』

 

 

 

時雨からトンでも無い(隊長にラブラブな)事”を言われた私は顔を真っ赤にして反論するが、当人は不思議そうな表情で追い討ちを掛ける様な事を言い出す。

 

 

 

「あれ~?さっきから“隊長さんが大好き”って、顔に出ていた気がするけどな?」

 

 

 

『で…出てない!そんな事無いって!』

 

 

 

時雨からのツッコミを必死になって否定する私…だが時雨は“今イチ納得出来ない”と言わんばかりの表情で“群馬みなかみタンカーズ”時代の仲間三人に話を振って来る。

 

 

 

「ののっちに菫と舞…本人はそう言っているけど、本当は如何なの?」

 

 

 

その瞬間三人は、揃って()()な笑みを浮かべると“余計な事”を言い出した!

 

 

 

「「「勿論…“ラブラブ”に決まってるじゃん!」」」

 

 

 

三人からの“爆弾発言”が出た途端「ふええっ!」と驚いてしまう西住先輩の姿を見て「「「おーっ!」」」と歓声を上げる“あんこうチーム”の武部・五十鈴・冷泉先輩方や他チームの仲間達、そして「何ですと!?」と()()()()寸前の表情で叫ぶ秋山先輩を余所に、私は必死になって仲間の発言を否定する。

 

 

 

『こらー!アンタ達、嘘を言うんじゃない!』

 

 

 

でも私の反論に対して、時雨やののっち達“みなかみタンカーズ”時代からの仲間四人は一斉に「「「アハハ!」」」と笑い出すと、他の仲間達も釣られて笑顔を浮かべる有様だった。

 

嗚呼…私、完全に誤解されちゃったみたいです。

 

 

 

 

 

 

その頃、聖グロリアーナ女学院のダージリン隊長達は、試合会場の一角で試合終了後の大洗女子とサンダース大付属の交流を眺めていた。

 

 

 

「わあ♪」

 

 

 

「ふふっ」

 

 

 

オレンジペコとダージリンが其々の言葉で試合が終わった両校選手の交流を感動しつつ見詰めていると、一緒に試合観戦をしていた母校OG・淀川 清恵が頷きながら一言声を掛ける。

 

 

 

「例え、どんな結果になっても試合が終われば互いを称え合うのが戦車道の醍醐味よね♪」

 

 

 

先輩からの一言に、ダージリンやオレンジペコだけでなく、紅茶を用意して来たアッサムも笑顔で頷いていた。

 

 

 

一方、此方は観戦終了後の後片付けを終えて帰り支度をしている黒森峰女学園のメンバー達。

 

ダージリン達と同様に試合後の選手の交流を見ていた副隊長の逸見 エリカが、呆れた表情でみほやケイ達の発言を批判していた。

 

 

 

「甘っちょろい事言って……」

 

 

 

しかし、此処で彼女の言葉を聞いた副隊長補佐の百代が副隊長を諫める。

 

 

 

「でも“最後の一発”を決めたのは大洗の()達です。其れが無ければ彼女達は勝てませんでした」

 

 

 

その発言の裏には「この試合は副隊長が言う様な“甘い試合”では無かった」と言う指摘が含まれていたのだが、その意味を逸早く察したのは母校OG・原園 明美である。

 

 

 

「その通り。どんなに苦しんでも諦めずに勝負を捨てなかった大洗の娘達が勝者よ♪」

 

 

 

その言葉に隊長のまほも「はい、明美さん」と母校の偉大な先輩に向けて語りながら小さく頷いた為、流石のエリカも「えっ…あっ、はい」と戸惑いながらも相槌を打つ事しか出来なかった。

 

一方、その様子を眺めていた明美は心の中でこんな事を考えていた。

 

 

 

「しかし今迄、勝つ為なら体当たりも平気でやっていた嵐が攻撃では無く仲間を庇うなんて…()()()()()()()()()()()()()()()()これは嵐の戦車道…そして私が求める戦車道にとっても幸運だわ♪」

 

 

 

 

 

 

同じ頃、試合が終わって観戦客が帰りつつある観客席では大洗女子学園中等部四人組と秋山夫妻や“大洗のアイドル・磯前 那珂ちゃん”も帰り支度を始めていた。

 

その時突然、一緒に応援していた一般客から中等部四人組に向かって声が飛んで来る。

 

 

 

「大洗女子の皆、二回戦でも会おうね!」

 

 

 

「次の試合の相手はマジノ対アンツィオの勝者だけど、どっちが来ても負けないでね!」

 

 

 

「また、一緒に応援しような!」

 

 

 

「「「はい!」」」

 

 

 

大洗の小さな応援団(中等部四人組)は、観客からの温かい言葉に“次の試合も応援を頑張ろう!”と心に誓い、その隣にいる秋山夫妻や那珂ちゃんも笑顔で中等部四人組を見詰めていた。

 

“母校の先輩達を応援してくれる人がこんなに居るんだ”と言う希望を胸に抱いて。

 

 

 

 

 

 

一方、此方は試合後の対戦相手(大洗女子)との交流を終えて仲間達の所へ戻りつつあるサンダース大付属・戦車道チーム隊長のケイと副隊長のナオミ、そして時雨である。

 

 

 

「“シーズー(時雨)”、今日の試合の感想、後でちゃんとレポートに纏めてね」

 

 

 

「はい。明日迄にレポートを仕上げますが、その前に()()()でも報告します」

 

 

 

ケイが歩きながら時雨に次の要件を告げると、時雨も小さく頷きながら答える。

 

其れを聞いたケイは「OK!」と笑顔で返事をし、ナオミも「次は勝てる様にしっかり対策を考えて置けよ!」と時雨に発破を掛けたので、時雨も「はい!」と元気良く答えた。

 

そして三人は仲間達の所へ辿り着くと、目に涙を浮かべながら反省している様子の“もう一人の副隊長”アリサにケイが軽く肩を叩きながら彼女を慰めたかと思うと……

 

 

 

「反省会、するから」

 

 

 

「ひえっ!」

 

 

 

優し気な顔から毅然とした表情へ一変したケイからの“宣告”に、真っ青になったアリサに向かって時雨が「当然じゃないですか、アリサ先輩……」と呆れ顔でツッコミを入れる中、ナオミはアリサの頭を優しく撫でて慰めていた。

 

 

 

 

 

 

こうして、気付いたら時刻も夕方となり日も沈み始めていた頃。

 

 

 

「さあ、こっちも引き上げるよー♪お祝いに特大パフェでも食べに行く?」

 

 

 

学園艦へ帰って行くサンダース大付属の車列を皆で眺めていると、武部先輩が“此れから初戦突破のお祝いに行こう”と皆を誘った所、冷泉先輩が真っ先に「行く♪」と返事をした時だった。

 

 

 

“ニャー、ニャー”

 

 

 

「「『?』」」

 

 

 

突然の猫の鳴き声に皆が驚く中、沙織先輩が冷泉先輩に向かって「麻子、鳴ってるよ。スマホ」と告げている。

 

冷泉先輩って猫好きなのか…私も猫が好きだから、今度一緒に話をしたいなと思った時、武部先輩が「誰?」と冷泉先輩に掛かって来た着信の相手を問い掛けると……

 

 

 

「原園のおばあだ」

 

 

 

冷泉先輩とは以前から顔見知りである大叔母の鷹代さんからの着信だと知った私は、此処で皆に説明をする。

 

 

 

『そう言えば大叔母さん、今日は冷泉先輩のお婆さんと一緒にこの試合の生中継をTVで見るって言ってたっけ』

 

 

 

その説明に皆が納得する中、冷泉先輩がスマホを操作して鷹代さんとの通話を始めたのだが。

 

 

 

「はい。えっ?…分かった」

 

 

 

冷泉先輩は一言喋った途端、表情が一変すると俯いてしまった。

 

 

 

「如何したの?」

 

 

 

冷泉先輩の只ならぬ様子に武部先輩が問い掛けるが、冷泉先輩は「いや…何でも無い」と答えるだけだ。

 

だけどスマホを持つ冷泉先輩の手は震えていて、先輩は間も無くスマホを落としてしまった。

 

其れを見た武部先輩が「何でも無い訳無いでしょ!」と冷泉先輩を詰問すると……

 

 

 

「おばあが倒れて、病院に!」

 

 

 

「「『えっ!』」」

 

 

 

皆が冷泉先輩からの告白に動揺する中、武部先輩が「麻子、大丈夫!?」と呼び掛けていると、我が母親(明美)が私達の前に飛び込んで来た。

 

 

 

「皆、居るわね!?」

 

 

 

『母さん!冷泉先輩の御婆様が倒れたって本当?』

 

 

 

突然やって来た母に私が説明を求めると、母は厳しい表情で説明を始める。

 

 

 

「じゃあ、冷泉さん達もスマホで鷹代さんから連絡を受けたのね…実は、ついさっき私の所にも鷹代さんから連絡が有ったの」

 

 

 

此処で母は一旦言葉を区切ると、早口で一気に状況説明をした。

 

 

 

「今日、冷泉さんの御婆さんは学園艦にある自宅で鷹代さんと一緒に貴女達の試合を見ていたのだけど、試合が終わった直後に突然胸を押さえて…鷹代さんが直ぐ応急処置をしてから救急車を呼んだのだけど、学園艦内の病院では手に負えないって言われて海上保安庁のヘリ*1で学園艦から設備の整った陸上の病院へ緊急搬送されたのよ!」

 

 

 

「「『えっ!』」」

 

 

 

想像以上に深刻な病状を聞かされて一斉に驚く私達。

 

その中で五十鈴先輩が「早く病院へ!」と冷泉先輩へ声を掛けるが、それを聞いた武部先輩は「でも大洗まで如何やって?」と告げる。

 

そう、今日の試合会場は大洗からかなり離れた南の海上に浮かぶ島なのだ。

 

其れを知っている西住先輩は「学園艦に寄港して貰うしか……」と率直に状況を語り、秋山先輩も「撤収迄時間が掛かります」と告げたので、私は苛立ちながら母に問い掛けた。

 

 

 

『母さん、今日はヘリに乗って来なかったの?』

 

 

 

「流石にヘリは運賃が掛かるから今日は乗って来ていないわよ。秋山さんのご家族や中等部の娘達と一緒に連絡船で来たから……」

 

 

 

『もう、肝心な時に役に立たないんだから!』

 

 

 

母からの答えに、理不尽と思い乍らも文句を言うしか無い私。

 

其れに対して瑞希が「嵐、幾ら何でもお母様に文句を言うのは筋違いよ」と私に注意する中、突然冷泉先輩が「えいっ!」と叫んだかと思うと靴を脱ぎ始めた。

 

 

 

「麻子さん!?」

 

 

 

「何やってるのよ!?麻子!」

 

 

 

その様子を見た西住先輩と武部先輩が驚く中、冷泉先輩はトンデモない事を言い出した。

 

 

 

「泳いで行く!」

 

 

 

「「『ええっ!』」」

 

 

 

突然の冷泉先輩の宣言に五十鈴先輩が「待って下さい冷泉さん!」と叫んで止めに入るが、冷泉先輩は構わずに靴下を脱ぐと制服迄脱ごうとするので、慌てた私も五十鈴先輩と一緒に止めに入りながらこう叫ぶ破目になった。

 

 

 

『冷泉先輩、この島から大洗まで何海里あると思っているのですか!?』

 

 

 

ところが丁度その時、“思わぬ人”から声が掛かった。

 

 

 

「私達が乗って来たヘリを使って!」

 

 

 

予想外の申し出をしたのは、黒森峰女学園戦車道チーム隊長・西住 まほさんだった。

 

 

 

「「『?』」」

 

 

 

私達が驚く中、西住先輩も「えっ!?」と呟き乍ら実姉の申し出に戸惑っていると、まほさんは毅然とした表情を崩さずに「急いで!」と私達に呼び掛ける。

 

 

 

「隊長!こんな娘達にヘリを貸すなんて!」

 

 

 

其処へ副隊長の逸見 エリカが厳しい表情で隊長の判断を批判したが、まほさんは表情を崩さないままエリカを諭す。

 

 

 

「此れも“戦車道”よ」

 

 

 

更に、エリカの隣に立っていた後輩の五代 百代も「其れに“緊急事態”ですよ、副隊長!」と先輩に諫言した結果、彼女は黙り込んでしまった。

 

 

 

「お姉ちゃん……」

 

 

 

こうして、西住先輩が実姉からの申し出を意外そうな表情で聞いている中、まほさん達が乗って来た黒森峰女学園所有のヘリコプター“フォッケ・アハゲリス Fa 223”が私達の居る試合会場外れの広場にやって来た。

 

 

 

「操縦頼んだわね」

 

 

 

「はい」

 

 

 

まほさんが既にFa223の操縦席に座っているエリカと手短に打ち合わせた後「早く乗って!」と冷泉先輩に呼び掛ける中、クリップボードを手にした五代 百代が西住先輩達へ大声で呼び掛ける。

 

 

 

「大洗女子の皆さん、あと一人だけなら付添の方をお乗せ出来ますが、誰かいらっしゃいますか!?」

 

 

 

その呼び掛けに「はい、私が行きます!」と応じて百代の所へ駆け寄るのは武部先輩。

 

 

 

「畏まりました。ではこの欄に住所氏名と連絡先を記入して下さい」

 

 

 

すると百代は、手にしていたクリップボードに挟んだ書類にサインを求めたので、武部先輩は「分かりました」と答えてから即座にサインをすると、百代は武部先輩をヘリの機内へ乗り込ませる…そんな中、まほさんがFa223から離れるとゆっくりと西住先輩の方へ向かって歩いて来た。

 

 

 

「有難う……」

 

 

 

通り過ぎる瞬間、西住先輩が実姉にぎこちない口調で御礼を言ったが、まほさんは何も答えずにその場を去ってしまう。

 

その姿を見た私は“幾ら()()()()があると言っても、返事さえしないなんて”と思い、悲しい気持ちになっていたその時。

 

 

 

「あの、()()()()。お久しぶりです」

 

 

 

離陸して行くFa223をバックに、五代 百代が少し朗らかな表情で西住先輩に挨拶をしたのだ。

 

 

 

「あっ…五代さん」

 

 

 

『!』

 

 

 

その姿を見て西住先輩が驚くと共に、私も先日戦車喫茶で見た時には見せなかった百代の表情を見てショックを受ける…“あの娘もこんな笑顔を見せる事が有るのか”と思いながら。

 

そんな中、百代は西住先輩へ穏やかな口調で話し掛けて来た。

 

 

 

「先日の戦車喫茶では挨拶だけしか出来なくて、申し訳有りませんでした。あの時先輩に“お伝え出来なかった事”が有ったので、此処でお話しします」

 

 

 

「えっ、何?」と、嘗ての後輩からの話に戸惑う西住先輩を余所に、百代はこう告げる。

 

 

 

「去年の全国高校生大会決勝戦の事です」

 

 

 

「『!』」

 

 

 

その内容にショックを受ける西住先輩と私だが、百代はゆったりした口調で言葉を続けた。

 

 

 

「私はあの時、みほ先輩が行った行為を非難するつもりは有りません」

 

 

 

「『……』」

 

 

 

てっきり“あの決勝戦の時の出来事を批判するのか?”と思っていた私は、予想外の発言に戸惑ったが、それは西住先輩も同じだったらしく百代の言葉に返事をしない。

 

そして百代は更に話を続ける。

 

 

 

「あの時、みほ先輩が行かなければ、黒森峰は()()()()()()()()()()()を招いたと思います。ですから、“先輩の行為自体”は責められるべきでは無いと思います。只……」

 

 

 

「只?」

 

 

 

此処で西住先輩が思わず問い掛けると、百代はキッパリとした口調に変え乍ら西住先輩に問い掛けた。

 

 

 

「あの試合中に先輩が戦車から離れた際、“同じ戦車に乗っていた仲間達には()()()()()()()()()()()()”よね?」

 

 

 

「…うん」

 

 

 

自らの問い掛けに西住先輩が自信無さげに答えた次の瞬間、百代が鋭い口調で()()()()をした。

 

 

 

「あの時何故、仲間に()()()()()()()儘行ってしまわれたのですか?」

 

 

 

「!」

 

 

 

西住先輩はその指摘が意外だったらしく、思わず目を見開いた表情で百代を見ると彼女は“指摘”の続きを語る。

 

 

 

「せめて、一言でも良いから『後の事は頼みます』とでも皆に告げていれば“あんな事”にはならなかったと思いますし、例え試合に敗れて十連覇を逃したとしても、あんなに責められる事は無かったと思います…私は、今でもその事が残念で仕方が無いのです」

 

 

 

「五代さん……」

 

 

 

“指摘”を終えた百代の真剣な表情を見た西住先輩は、居た堪れない様子で辛うじて百代に呼び掛けると、彼女は表情を変えないまま話を締め括った。

 

 

 

「いえ、私は“その事”だけでもみほ先輩にお伝えしたかったのです。其れでは失礼します」

 

 

 

そして西住先輩へ一礼すると、百代はその場を離れようとしたが…その時、私は百代からの指摘を聞かされて悲し気に俯いている西住先輩を見ていた事もあり、つい百代に憎まれ口を叩いてしまった。

 

 

 

『百代…貴女、如何言うつもりで此処へ来たの?』

 

 

 

だが百代は表情を皮肉気な感じに変えると、私に向かってこう言った。

 

 

 

「あら原園さん。若しかして、大洗の()達に“去年の全国大会決勝戦で起きた事”を未だ話していないのかしら?

 

 

 

『!』

 

 

 

西住先輩だけでなく私にとっても“触れたくない過去”を言われてショックを受けた私を余所に、百代は視線を秋山先輩に向けながら更に私の心を抉って来る。

 

 

 

「少なくとも貴女と“オッドボール(秋山 優花里)三等軍曹”は知っているみたいだけど?」

 

 

 

「『!』」

 

 

 

その言葉に今度は私だけでなく“サンダース大付属に潜入した時に使った偽名”で呼ばれた秋山先輩も衝撃を受ける中、百代はその場にいた西住先輩や私の仲間達に向かってこんな事を言い出した。

 

 

 

「大洗の皆さん。丁度良い機会だから貴女達に一言忠告して置くわね」

 

 

 

そう前置きすると、百代は話を聞いていた仲間達に向かって思いも寄らぬ事を語る。

 

 

 

「貴女達の隊長…西住 みほさんは、戦車道を戦う上で()()()()“致命的な弱点”を抱えているわ」

 

 

 

「「「!」」」

 

 

 

その言葉に動揺する西住先輩や仲間達を余所に、百代は更に話を続ける。

 

 

 

「その“弱点”を克服しない限り、貴女達はこの先勝つ事は出来ないわ」

 

 

 

「!」

 

 

 

自分達の隊長(西住 みほ)ではこの先勝ち進む事は出来ない”と宣告されて衝撃を受けた仲間達の心を見透かした様に、百代は私と秋山先輩に向けてこう言い放った。

 

 

 

「みほさんの“弱点”が何か知りたいなら、去年の全国大会決勝戦で何が起きたのかを其処に居る二人に聞いてみると良いわ」

 

 

 

「!」

 

 

 

百代の言葉に、一瞬怯える表情を見せる西住先輩と衝撃を受ける仲間達。

 

あの女、“あの事”で先輩だけじゃなく私達大洗女子のチームワークにヒビを入れるつもりなのか!?

 

 

 

『百代…アンタ!』

 

 

 

仲間達に動揺を誘う発言をされた苛立ちをぶつけるしか無い私に対して、百代は冷笑を浮かべながら「じゃあね、忠告はして置いたわよ」と語り掛けると、其の儘私達の前から立ち去った…その時にはもう、冷泉・武部両先輩を乗せた黒森峰女学園所有の“フォッケ・アハゲリス Fa 223”は夕焼け空の向こう側へ消えていた。

 

 

 

 

 

 

その後、百代は隊長であるまほの所までやって来た。

 

 

 

「五代、話は済んだか?」

 

 

 

百代の毅然とした態度を見詰めながら、淡々と問い掛けるまほに対して百代は落ち着いた声でキッパリと返答する。

 

 

 

「はい、隊長…これで、みほ先輩に対して“一切()()()をせずに戦えます”

 

 

 

自分の胸の内をハッキリと語った百代の顔を見たまほは、無表情ながらもしっかりと頷いて見せるのだった。

 

 

 

(第42話、終わり)

 

*1
学園艦が洋上を航行中の為、茨城県のドクターヘリでは無く付近を航行していた海保の大型巡視船搭載のヘリで搬送されたらしい。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第42話をお送りしました。

試合が終わって対戦した両校が交流する中、嵐ちゃんと時雨も仲直りが出来ました。
しかしその後、麻子の祖母が倒れたとの連絡が。
如何やって麻子の祖母が入院した本土の病院へ向かうか困惑していた西住殿達の前に、まほ達黒森峰側からヘリコプター使用の申し出と言う助け舟が出されて事態は解決したものの、其処へ今度は百代が登場。
西住殿とあんこう&ニワトリさんチームの娘達を前に「西住 みほが隊長である限り、大洗はこの先勝ち進む事は出来ない」と宣告!

様々な思惑と感情が渦巻く中、大洗女子は一体何処へ向かうのか?

そして次回ですが、ちょっとした番外編として大洗側は生徒会メンバーのみ登場して貰います。
実は今回のサンダース戦で、彼女達にちょっとした事件がありまして…そして一回戦の他の試合の内、二試合の模様を少しだけご覧頂きます。
実は今後の展開の伏線も有るので見逃さないで下さい。

それでは今回は長くなりましたが、次回もお楽しみ下さい。

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