戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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前回「主人公の名前を誤記する」と言う大ボケをかました作者です。
其の節は、大変失礼を致しました。
そして本編50回目を迎える今回、遂に主人公の口から“戦車道から逃げ出した真相”が語られます。

そう…真実とは、常に残酷だ。

其れでは、どうぞ。

※今回も本文中に不可解な表現となっている個所が有りましたので、訂正致しました。
詳しくは後書きをご覧下さい。
(2021年5月19日記)


第50話「真相です!!(中編)」

 

 

 

『西住先輩…そして皆さん。私も去年の戦車道全国高校生大会決勝戦を()()()観戦していたんです』

 

 

 

みほ達が気付いた時、嵐は語り始めていた。

 

“自分が戦車道から逃げ出した()()()()を。

 

 

 

 

 

 

私は、あの試合で西住先輩が()()()()()()よりも()()()()()()()()を選んで行動する姿を目の当たりにする迄“戦車道を続けるべきか否か”を真剣に悩んでいました。

 

私は五歳の夏に、土浦の陸上自衛隊武器学校に置いて在るM4A3E8(イージーエイト)の前で両親に『戦車道をやる』と誓ってから暫く経った後の秋の日に、父を戦車道の事故で亡くしてから“何の為に戦車道をやりたいと思ったのか?”が思い出せ無くなってしまったんです。

 

今思い返すと、私は“父が、()()()()()()戦車道の事故で死んだ”意味を“子供なりに”考えたかったのだけど、母はそんな私に耳を貸さずに戦車道を教え込もうとしました。

 

其の頃の母は、私を“立派な戦車乗りに育て上げる”と言って聞かなかったのです。

 

だから、気持ちの整理が付か無かった私は反発していたのだけど…小学校入学を控えた冬の或る日、母が瑞希を連れて来て「此れから二人一緒に戦車道を教える」と告げた事で、徐々に戦車道から逃げ出せなくなって行きました。

 

 

 

 

 

 

其の時、皆の視線が嵐の隣に居る瑞希に集中すると、彼女は遣り切れない口調で嵐が語った話の内容を認めた。

 

 

 

「うん。私、嵐とは保育園で出会った時から色々と張り合っていたから、嵐が戦車道をやるか否かで明美さんと言い争っていると知った時“一度でいいから、嵐の前を歩いてみたい”と思う様になって…そして気が付いたら両親を説得した後、明美さんに“嵐と一緒に戦車道をやりたい”って御願いをしていたわ。今思えば、私も酷い事をしたわね」

 

 

 

瑞希からの“告白”を聞いた皆が遣り切れない表情を浮かべる中、嵐は辛そうな表情を浮かべている瑞希の姿を見てから、再び語り始めた。

 

 

 

 

 

 

其れから二年後、小学三年生に進級した春に「群馬みなかみタンカーズ」が結成されると、私も否応無く入団させられて瑞希や私達と同じ町に住んで居た菫、高崎市から家族と一緒に引っ越して来た舞に佐世保からやって来た時雨と共に、去年の戦車道全国中学生大会でみなかみタンカーズが準優勝する迄戦車道漬けの日々を送って来ました。

 

だけど、如何しても“何の為に戦車道をやりたいと思ったのか?”が思い出せない儘月日が流れて…去年の中学生大会が終わった頃には“もう、如何にでもなれ!”って思っていました。

 

でも、そんな時タンカーズの恒例行事として毎年行っている“戦車道全国高校生大会決勝戦・現地観戦旅行”に、私もチームの全員と一緒に行きました。

 

其処で私は、()()()()()での西住先輩の行動を見て“自分が何の為に戦車道をやりたいと思ったのか?”を思い出したんです。

 

 

 

 

 

 

「思い出した?」

 

 

 

此処でみほが戸惑い気味の声で嵐に問い掛けると、彼女は少し元気を取り戻したらしく、明るい声で語り始めた。

 

 

 

 

 

 

あの時、仲間を助ける為に増水した川へ飛び込んだ西住先輩の姿が、()()()戦車に轢かれそうになった子供を助ける為に命を投げ出した()()姿()()()()()()のです。

 

勿論、父と先輩が同じと言う心算はありませんが、私の心の中で“()()姿()”が重なった時、あの土浦での夏の日に『御父さん、私…大きくなったら、此の戦車(イージーエイト)に乗って戦車道をやる!』と言った理由を思い出したんです。

 

其れは、何時も父さんが言っていた“口癖”でした。

 

 

 

“戦車道はね、試合に勝つ為にやるんじゃ無くて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

私、幼い頃に父から此の言葉を聞いた時が()()()()()()()()()()()()()()()()()だったんです。

 

更に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を聞かされて“何時か、私も其の時の御姉さん達の様になりたい。だから戦車道を始めて友達を一杯作ろう!”と思い、其処から“戦車道をやりたい”って父さんに言った時の事迄を思い出したんです。

 

そして、決勝戦での西住先輩の姿を見て『こんな自分でも戦車道を続けて良いんだ。もう一度初心に帰って、戦車道を続けよう!』と思ったのです。

 

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 

嵐の話を聞いたみほは、先日刈谷 藤兵衛から聞かされた“嵐の父・原園 直之の逸話”の内容と()()()()()が有る事に気付いて驚く。

 

同時に、みほは“戦車道は、試合に勝つ為にやるのでは無く、戦車に関わる事で皆が仲良くなる為にやるんだ”と言う、直之の言葉に共感する。

 

 

 

「原園さんの御父さん、本当に立派な人だったんだ」

 

 

 

みほがそう思った時、北條 青葉が目に涙を滲ませながら嵐に語り掛ける。

 

 

 

「原園さん…戦車道にも()()()()()()()が有る事を知ったのね?」

 

 

 

『はい…御恥ずかしい話ですが、其の時迄私は此の事を全く忘れていました。其れを思い出させてくれたのが、西住先輩なんです』

 

 

 

青葉からの語り掛けに、嵐は頷きながら答えると皆に向かってこう語った。

 

 

 

『でも夏休みが終わって、中学三年生の二学期を迎えた或る秋の日に……』

 

 

 

だが、此処で瑞希が嵐に向かって叫ぶ。

 

 

 

「嵐、あの話は!」

 

 

 

しかし、嵐は瑞希に向かって首を横に振ると静かな声でこう語った。

 

 

 

『良いんだよ、瑞希。どの道、皆には話さなければならない事だったんだ。特に西()()()()()()()()……』

 

 

 

其の時、みほと梓が同時に「「えっ?」」と不安気な声を上げると、嵐は真剣な表情でこう語るのだった。

 

 

 

『御免、梓。以前、梓達“ウサギさんチーム”の皆には、私が戦車道から逃げ出した理由を話した事が有るけど、実はあの時、“話していなかった理由”が有ったんだ』

 

 

 

そして嵐の“告白”は、“自身が戦車道を辞めようとした()()へと移って行くのだった

 

 

 

 

 

 

あれは、中学三年生の二学期が始まったばかりの秋の日の夕方。

 

父の十一回忌が近付いていた頃でした。

 

みなかみ町の中学校から自宅へ下校する途中の私に、瑞希が話し掛けて来たんです。

 

 

 

「嵐、今日は進路指導の先生に進路相談をする日だったけど、嵐は卒業後の進路決めた?」

 

 

 

『そう言う“ののっち(瑞希)”は決めたの?』

 

 

 

「そりゃあもう、高校は“黒森峰女学園の機甲科”一択よ。今日進路指導の先生に其の事を告げたら『野々坂さんの成績なら全く問題無いわ』って、太鼓判押して貰っちゃった!」

 

 

 

『へえ…じゃあ、私も気合入れないとね』

 

 

 

「えっ…若しかして、嵐()黒森峰!?」

 

 

 

『ピンポーン!進路指導の先生からは『数学の成績が一寸だけ厳しいけれど、其れ以外の教科は問題無いわ。今から数学を集中的に勉強すれば十分間に合うから頑張りなさい』って言われたんだ』

 

 

 

「何と!嵐は戦車道が嫌いだから、まさか黒森峰とは予想外だったわ。でも何故……って、若しかして?」

 

 

 

『えへへ。実は、今年の全国高校生大会の決勝戦を、タンカーズの皆と一緒に“現地で見た時から”ね♪』

 

 

 

「やっぱりか!母校の十連覇を捨てて、川に落ちたⅢ号戦車の乗員を救出した副隊長の西住 みほさん!」

 

 

 

『あれから、西住先輩の事で頭が一杯になっちゃって』

 

 

 

「ハイハイ…あの決勝戦から暫くの間、皆に“西住先輩と一緒なら、本気で戦車道をやりたい!”って公言して居たもんね。でも西住さんは、あの時()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って聞いたけど?」

 

 

 

『うん、知ってる…でも私、高校へ進学したら西住先輩と一緒に戦車道がしたい。“勝つ事だけが戦車道じゃ無い”って言っていた御父さんと()()()をした先輩となら、本気で戦車道をやれると信じているんだ。其れに……』

 

 

 

「其れに?」

 

 

 

『黒森峰の機甲科に進学したら、絶対戦車道チームのレギュラーになる!そして来年の戦車道全国大会で優勝して、今度こそ西住先輩を胴上げしたいんだ!』

 

 

 

「ほ~っ、其処迄西住さんに()()()()だったとはね。でも、私も黒森峰を目指すから其の夢は厳しいと思うよ?」

 

 

 

『何で?』

 

 

 

「何故なら、私も西住先輩を胴上げする心算だから♪」

 

 

 

『言ったな、“ののっち(瑞希)”!』

 

 

 

「えへへ♪じゃあ今日は、嵐の家で数学の勉強会しよっか?」

 

 

 

『うん!』

 

 

 

 

 

 

「「!」」

 

 

 

其の時、嵐の話を聞いて居たみほと優花里は目を見開いて驚いていたが、此処で梓が不思議な表情を浮かべ乍ら嵐に問い掛けて来た。

 

 

 

「あれ…其れじゃあ、嵐は最初黒森峰に入る心算だったの?」

 

 

 

続けて沙織と華が嵐に向かって疑問をぶつける。

 

 

 

「ねえ“らんらん()”。だとしたら、少し話がおかしくない?」

 

 

 

「ええ…其処から何故“戦車道から逃げ出そうとした”のか、話が繋がらないのですが?」

 

 

 

すると嵐は小さく頷いた後、重苦しい声で話の続きを語り出した。

 

 

 

でも其の時は、まさか家に帰った時に、()()とって“絶望的な事実”を“()()()”から突き付けられるとは思いも寄らなかったんです。

 

 

 

其の一言に、話を聞いて居た全員は“此れから、如何なるのか?”と思いつつ戸惑う。

 

特に、みほは思わず「()()()?」と口に出し乍ら嵐の顔を見たが、其の時彼女はみほに向かって泣きそうな顔をしながら“告白の核心”を語り始めたのである。

 

 

 

 

 

 

『只今、母さん。今日は…あれ?』

 

 

 

瑞希を連れて帰宅した私が玄関に入ると、“何時もとは違う雰囲気”を感じ取りました。

 

其の“理由”を教えてくれたのは、瑞希の一言でした。

 

 

 

「見た事の無い靴が有る…誰か、来ているわね?」

 

 

 

瑞希の視線の先、玄関前の土間には一足の靴が置いて有ったけれど、其れは(明美)や私が何時も履いている物とは全く異なるデザインでした。

 

 

 

『うん。女物の高そうな靴…普段の母さんはスニーカー派だし、誰だろ?』

 

 

 

其の靴が私や母の物では無い事を確かめた私は“母に来客が来ているのかな?”と思ったのだけど、次の瞬間“母の怒鳴り声”が私達の居る土間に迄聞こえて来たのです。

 

 

 

「ちょっと()()()!其れ本当なの?」

 

 

 

「嘘では無い」

 

 

 

町でも“怒鳴ると恐い”事で有名な母に対して、女性と思われる相手は冷静と言うよりも冷徹な口調でキッパリと答えていました。

 

怒鳴っている母に対してそんな受け答えが出来る人は、私の知る限り殆ど居ないので“若しかして、()()()()()()()()()()かな?”と思い乍ら、声がすると思われる家の応接間へ足を踏み入れた時、母が“思いも寄らぬ話”を始めたのです。

 

 

 

「幾ら戦車道高校生大会()()()()()()()()()()()()()だからって、()()()()()()()()()()だなんて酷過ぎるんじゃないの?其れじゃあ、まるで()()()()()()()じゃない!」

 

 

 

()()がそう言ったのだ」

 

 

 

『!?』

 

 

 

“西住先輩が黒森峰から転校する!”と言う“衝撃的な話”に私がショックを受ける間も無く、母は相手の女性に向かって更なる怒りの声を上げました。

 

 

 

「みほさんが“そう言った”んじゃなくて、アンタが“そう言う様にみほさんを仕向けた”んでしょ?オマケに、みほさんが助けたⅢ号戦車の乗員が()()()()()()()()()()って如何言う事よ!?しかも、其の娘達は“全国大会の事故の件で虐められていた”って、“ながもん(周防 長門)”から聞いたわよ!」

 

 

 

でも相手の女性は母の怒鳴り声にも一切動じず、逆に厳しい視線で母を睨み返し乍らこう断言しました。

 

 

 

「イジメは無かった。黒森峰は規律が行き届いているから誰も()()()()()()()()()()

 

 

 

だけど次の瞬間、相手の態度と言葉に対してブチ切れた母が、もっと衝撃的な話をしたのです。

 

 

 

「嘘を吐くんじゃない!周囲が“陰口や悪口に暴言、それに無視やシカト、仲間外れ”をするのも()()()()()()()よ!オマケに、Ⅲ号戦車の乗員達をイジメていた奴等の中には、ネットやSNSで()()()()誹謗中傷を垂れ流した奴迄居たって、“ながもん(周防 長門)”から聞いて居るわよ!」

 

 

 

『母さん、西住さん達に何が有ったの!?』

 

 

 

「嵐、帰って居たの!? 此れは()()の話だから貴女は聞かなくても良いの……」

 

 

 

母の話に居ても立っても居られなくなった私は、同じくショックで棒立ちになっている瑞希を余所に、母に向かって問い掛けたのだけど、私が帰宅した事に気付いた母は其の場から私を引き離そうとしたので、私は咄嗟に母の()()()()に向かって叫びました。

 

 

 

『西住先輩とⅢ号戦車の乗員達が転校って、如何言う事ですか!?貴女、何か知っているんですか!?』

 

 

 

今思い返すと、此の時の私は非常に無礼な物言いをしてしまったのだけど、そんな私からの問い掛けに対して、相手は表情こそ険しいけれど私に向かって静かな声で話し掛けて来たのです。

 

 

 

「君は…若しかして、明美の娘の嵐か?だとしたら初めて会うな」

 

 

 

『はい。私が原園 嵐、原園 明美の娘です…今、無礼な事を言って済みませんでした。失礼ですが貴女は?』

 

 

 

私も相手に合わせる様に、先程彼女に向かって叫んだ事を詫びつつ相手の名前を問うと、彼女は私にとって“()()()()()”を告げました。

 

 

 

 

 

 

そして次の瞬間、嵐から告げられた()()()()を聞いた西住 みほは、ショックの余り「えっ!」と叫んだ。

 

 

 

 

 

 

西住 しほ…君の(明美)とは、黒森峰女学園高等部・機甲科時代の同級生同士だ」

 

 

 

『えっ…じゃあ貴女は、西()()()()西()()()()!?

 

 

 

其の瞬間、相手の正体を知った私は、驚きの余り大声を上げました。

 

彼女が母の高校(黒森峰)時代の同級生だと言う事は、母から“知識”として知らされていたけれど、流石に西住流の次期家元にして西住先輩(みほ)や先輩の御姉様であるまほさんの御母様が此の場に居るとは予想外でした。

 

そして彼女は鋭い視線を私に向けた儘、話し掛けて来ました。

 

 

 

「私の名を覚えているとは光栄だ。それで、みほの事で何か聞きたい事がある様だが?」

 

 

 

其れに対して私は、胸が詰まりそうな思いで必死になり乍ら彼女に質問しました。

 

 

 

『では西住師範、教えて下さい。“西住 みほさんが黒森峰から転校”って如何言う事ですか?其れと、今年の戦車道全国高校生大会決勝戦で事故に遭ったⅢ号戦車の乗員達が“イジメられて転校”って……一体、何が有ったんですか!?』

 

 

 

すると、彼女は私に向かって厳しい表情を崩さない儘、こう答えたのです。

 

 

 

「みほは大会十連覇を逃した責任を取って、戦車道を辞めて転校すると言いました。あの時川へ落ちたⅢ号戦車の乗員達も同じです」

 

 

 

『そんな!幾ら大事な試合に負けたからって、みほ先輩は川に転落して死ぬかも知れなかった仲間達を命懸けで助けたのに!Ⅲ号戦車の乗員達だって、プラウダからの砲撃であんな目に遭ったのに……』

 

 

 

彼女から“冷酷な答え”を聞かされた私は、先輩やⅢ号戦車の乗員達を弁護しようとした時、母が鋭い声で彼女を糾弾したのです。

 

 

 

「一寸待て“しぽりん(西住 しほ)”!私の娘()に迄()()()()()()()()()!」

 

 

 

『母さん!如何言う事?』

 

 

 

母の声に驚いた私が問い掛けると、母は真っ赤な顔で“しぽりん(西住 しほ)”に向かってこう言いました。

 

 

 

「今年の全国大会で母校(黒森峰)が負けたのは、“西住流の教義に拘り過ぎて、隊員達が創造的な発想と咄嗟の判断力を養っていなかったからだ”って、嵐が来る前にも言ったでしょ? そうでなければ、みほさんが降りた後のフラッグ車(ティーガーⅠ)が撃たれる迄其の場から動かない筈が無いでしょ?」

 

 

 

『!』

 

 

 

其の時、私も“母の話”の意味が分かりました。

 

あの決勝戦の時、確かに先輩のフラッグ車(ティーガーⅠ)は先輩が降りた後、プラウダの待ち伏せ部隊に撃たれる迄、其の場から一歩も離れなかった。

 

あの時、フラッグ車の護衛に就いていたもう1輌のⅢ号戦車は、プラウダの更なる攻撃からフラッグ車(ティーガーⅠ)を守る為にフラッグ車(ティーガーⅠ)の前へ出ようとしていたのに。

 

若しも先輩のフラッグ車(ティーガーⅠ)の乗員達に“咄嗟の判断力”が身に付いて居れば、プラウダからの攻撃を避ける為に其の場から離れていた筈。

 

なのに、何故西住先輩や川に落ちたⅢ号戦車の乗員達だけが責められるのか?

 

此処迄思い出していた私は()()()()()に思い当たり、呻く様な声で母に向かって叫んだのです。

 

 

 

『其れって…まさか、西住先輩達は()()()()()()()()()()()()()()()()()んじゃあ!?』

 

 

 

すると、母は私に向かって苦い表情を浮かべ乍ら、こんな事を言ったのです。

 

 

 

「そうよ…嵐。今年の全国大会で()()()()()()()()()()()()は、()()()()()()()()()()()()()()()()()のをプラウダ高校に突かれたからであって、決してみほさん達が悪い訳じゃ無かった。でもみほさんと彼女が助け出したⅢ号戦車の乗員達は、十連覇の悲願を阻まれただけで無く『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』事に激昂した母校の同窓OG会、そして校内の生徒や教師達の批判を躱す為の“敗戦の贖罪の生贄(スケープゴート)にされたのよ」

 

 

 

『酷い!』

 

 

 

こうして母から“西住先輩と其の仲間達が転校させられる理由”を知った私は、其の理不尽さに憤り乍ら西住師範に向けて抗議しました。

 

 

 

『西住師範!“十連覇を逃して、其の上遭難しそうになった”からと言う理由で()()()()()()()()なんて酷過ぎませんか!?』

 

 

 

しかし、相手はそんな私と母を冷たい視線で睨み乍ら、更に信じ難い言葉を放ったのです。

 

 

 

「愚問ですね」

 

 

 

『愚問!?貴女は何を言っているんですか!?』

 

 

 

西住師範の言葉に憤った私が叫ぶと、彼女は冷たい表情を変えない儘、こんな事を言いました。

 

 

 

「みほは“西住流の名を継ぐ者”なのよ? 西住流は“何が有っても前へ進む”流派。強き事、勝つ事を尊ぶのが伝統」

 

 

 

其の言葉を聞いて“或る事”に思い当たった私は、怒りを腹に収め乍ら彼女に向かって問い掛けました。

 

 

 

『つまり、西住流は“戦車道をやるのは勝つ為だ”と言いたい訳ですね?』

 

 

 

「其の通りです」

 

 

 

私の問い掛けに冷たい声で答えた西住師範に対して、私は“父との思い出”を思い出し乍ら、こう言い返しました。

 

 

 

『でも、其れは間違いだと思います! 父はそんな事を一言も言っていない!』

 

 

 

「何!?」

 

 

 

『私の父・原園 直之は、何時も“戦車道は、試合に勝つ為にやるんじゃ無くて、戦車に関わる事で皆が仲良くなる為にやるんだ”って言っていました!』

 

 

 

其の言葉を西住師範は黙って聞いて居たので、私は話を続けました。

 

 

 

『確かに、みほさんは母校の十連覇を捨てたのかも知れません。だけどあの時、みほさんは仲間達の命を助ける為に命懸けで川へ飛び込んだんですよ!幾ら試合で勝つ事が重要でも仲間の命の方が遥かに大事じゃないですか!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?』

 

 

 

しかし其の時、西住師範は私を睨み付けると、こう言いました。

 

 

 

「貴女は()()()()()()()()()()を分かっていないわね?」

 

 

 

其の言葉に怒りを覚えた私が『何ですって!』と叫んだ次の瞬間…彼女は私に向かって()()()()()()()()()()()を放ったのです。

 

 

 

()()無くして、大きな勝利を得る事は出来ないのです!」

 

 

 

『そんな!?』

 

 

 

「しほ!もう止めて!私の娘に何て事を……」

 

 

 

“仲間の命よりも試合での勝利が重要だ”と聞かされて頭に来た私が怒りの声を上げた瞬間、母が私と彼女の間に割って入りましたが、怒りに震える私は母の手を振り払って西住師範の前に立つと、こう叫びました。

 

 

 

『貴女は、あの決勝戦でみほさんの仲間達は()()()()()()()()()()()()()()()()と言いたいのですか!?信じられない!』

 

 

 

しかし、西住師範は私の糾弾に対して黙った儘、何も言いませんでした。

 

其の瞬間、私の頭の中で“何か”が音を立てて切れると同時に、彼女に向かってこう叫んでいました。

 

 

 

『此の…人殺し!()()()()()()()()だ!そんなの()()()()()()()()()()()()()!』

 

 

 

「嵐、落ち着きなさい!」

 

 

 

其の時母が私を摑み乍ら叫びましたが、私は構わずに『父を亡くしてから十年間胸に秘めていた()()()()』を西住師範にぶつけました。

 

 

 

『アンタの様な人が戦車道に居るから、私の父さんを…十年前に()()()()()()()んだ!』

 

 

 

其の言葉を聞いた西住師範が目を見開いた瞬間、私は畳み掛ける様にこう言い放ちました。

 

 

 

『戦車道は、そう言う人間達の集まりなのか!?此れじゃああんまりだ、父さんやみほ先輩や転校させられるⅢ号戦車の乗員達が可哀想だ!』

 

 

 

「嵐!」

 

 

 

私の心からの叫びに対して、母が慌てた表情で咎めましたが、西住師範は私を見詰めた儘何も言いません。

 

其の態度に怒りを覚えた私は、こう叫びました。

 

 

 

『帰れ!…父さんを戦車で轢いただけで無く、勝利の為に仲間の命を蔑ろにする“()()()は出て行けぇ!』

 

 

 

其の時私を摑んでいた母が「嵐、一寸待ちなさい!」と怒鳴りましたが…私は、母の手を振り解くとこう叫びました。

 

 

 

アンタ(母さん)だって、アイツ(西住師範)()()()()()じゃないの!?其の心算で私に戦車道を教え込んだんでしょ!?

 

 

 

其の言葉に衝撃を受けた母が棒立ちになるのを見た私は、更にこう宣言しました。

 

 

 

『もう…()()()()()()()()()()()()()!』

 

 

 

「!」

 

 

 

そして私は、茫然としている母と黙っている西住師範を残し、部屋の入り口で呆然と立っていた瑞希の手を引っ張ると、駆け足で家を出て行きました……

 

 

 

 

 

 

(第50話、終わり)

 

 





此処迄読んで下さり、有難う御座います。
今回は、物語のターニングポイントとなる第50話をお送りしました。

幼き日の嵐が戦車道を始めようとした原点は、「戦車道はね、試合に勝つ為にやるんじゃ無くて、戦車に関わる事で皆が仲良くなる為にやるんだよ」と言う父・直之の口癖でした。
此の直之の口癖は、ガルパンを見続けて来た自分なりの“作品に対する答え”でもありまして、今後の本作を書いて行く上でのキーワードになるだろうなと思っています。
しかし父が戦車道の事故で亡くなった後、母・明美は嵐に対して立ち直る暇を与えない儘戦車道を教え続けた結果、明美の考えに反発していた嵐は自暴自棄になり掛かる…そんな彼女を救ったのが、西住殿でした。
つまり本作では、第62回戦車道全国高校生大会決勝戦で西住殿はⅢ号戦車の乗員だけで無く、嵐の心も救った形になります。
そんな西住殿に“救い”を見出し、戦車道を続ける決意をした嵐は黒森峰を目指そうとしますが…其の直後に彼女の想いを打ち砕いただけで無くトラウマ迄植え付け、戦車道から逃避させる原因を作ったのが西住殿の母・しほだったのです。
其の事実を知ってショックを受ける西住殿。
そして次回、嵐の告白は完結を迎えます…果たして、嵐と西住殿達は如何なるのでしょうか?

其れでは…次回迄、待機せよ。

※追記(2021年5月19日)
今回、本文中で主人公・原園 嵐の父親である直之の年忌と死後の満年数を共に「九年」と書いてしまって居ましたので訂正しております。
正確には「没後満十年で、十一回忌」となります。
今回も誤った記述をしまして、大変失礼致しました。
又、此の件に関する御指摘をされた読者様に心から感謝申し上げます。

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