戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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そう言えば、2021年のクリスマス・イブにBD&DVDが発売予定の最終章第3話、収録されるOVA「ダイコン・ウォー」が農業科の話だそうで。
本作で良恵&佐智子の大洗農業科コンビをオリジナルで書いた身としては感無量ですが…いや、大洗とは限らないよね。
知波単?
其れ共、まさかの継続?

其れは兎も角、今回もどうぞ。



第54話「再びの戦車探しと、其の結果です!!」

 

 

 

其れは、私達“ニワトリさんチーム”メンバーが、“あんこうチーム”の先輩方と共に、“戦車講座”を行った翌日の夕方の事だった。

 

私達・大洗女子学園戦車道チームは、生徒会からの指示で行った“二回目の戦車探し”を終え、戦車格納庫の前で秋山 優花里先輩と一緒に“今回の捜索で得られた()()()”を眺めていた。

 

此処に居るのは“カバさん”・“アヒルさん”・“カメさん”チームの全員と、“あんこうチーム”の内、武部 沙織先輩を除く全員。

 

そして、私達“ニワトリさんチーム”の内、装填手の二階堂 舞を除く全員である。

 

 

 

“ルノーB1bis重戦車”に、“43口径75㎜戦車砲KwK40”か…探して見た価値は有ったなあ』

 

 

 

「そうですね原園殿。此れで新しいチームが作れるし、私達“あんこうチーム”のⅣ号もパワーアップ出来ます♪」

 

 

 

『ええ…でも秋山先輩、本当に嬉しそうですね?』

 

 

 

「はい♪愛しの戦車が増えて、私は幸せですぅ~♪」

 

 

 

『あ…そうですね』

 

 

 

今回の捜索で得られた()()()()()()を前に、私は秋山先輩と会話し乍ら先輩の“()()()”に圧倒されつつも、今日の“戦車探しの時に起きた出来事”を思い出していた。

 

 

 

 

 

あれは確か、生徒会の指示で“戦車探し”をスタートした時の事。

 

私は、西住先輩と一緒のグループに入りたかったのだが、其処へ野々坂 瑞希が立ちはだかるとこんな事を言い出したのだ。

 

 

 

「嵐、アンタは最近西住隊長と()()()()して居る事が多いから、秋山先輩が()()しているわよ?だから、今日は秋山先輩と一緒に居なさい」

 

 

 

親友の言葉に『えっ!?』と驚き乍ら後ろを振り向くと…何と秋山先輩が“()()()()()()”を浮かべ乍ら私を見詰めているでは無いか!?

 

其の瞬間、私はこんな事を口走ってしまった。

 

 

 

『あっ、秋山先輩!? 私は()()()みたいな事は致しません!西住先輩と秋山先輩は()()()()の…ああっ!?』

 

 

 

此の結果、私は西住・秋山両先輩を含む周囲の仲間達から()()()()()で見られたのだが、此の原因を作った瑞希だけは人の悪い(腹黒い)笑みを浮かべていた…瑞希、アンタ何時か仕返ししてやるからね!(迫真)

 

斯くして、私は秋山先輩&“カバさんチーム(歴女先輩四人組)”と組んで学園艦の甲板上を捜索する事になったのだが…此の時、“カバさんチームの()()()()()()()”が()()()()()()()()で“戦車探し”を始めたのだ。

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

先ず“カバさんチーム”のリーダー・カエサル先輩が気合を入れて“妙なデザインをした八角形の板”の上に、指で立てていた棒を倒すと……

 

 

 

「“東が吉”と出たぜよ」

 

 

 

おりょう先輩が“占い”の結果を告げた処、驚いた秋山先輩が「此れで分かるんですか!?」と、“カバさんチーム”の先輩方に問い掛ける。

 

そして私も、半ば呆れ乍らこう問い掛けた。

 

 

 

『“()()()()()()()()()()()()()”の“()”ですか?』

 

 

 

そう。カエサル先輩がやったのは、古代中国伝来の占い“()”である。

 

すると、エルヴィン先輩が答える。

 

 

 

「こう見えても、カエサルの占いは結構当たるんだ。馬鹿にならないんだぞ」

 

 

 

其の答えを聞いた秋山先輩が半信半疑な口調で「本当ですか?」とエルヴィン先輩に再度質問するが、此の時私は自分のスマホに入れてある“()()()()()”で検索した結果を見て“まさか!?”と思いつつ、こう告げた。

 

 

 

『でも秋山先輩、スマホアプリの“学園艦地図”に由れば、此処から東へ行くと“沼地”が在るんですが、此処は以前小山副会長が、“ゴミの不法投棄が後を絶たない”と言って困っていたのを聞いた事が有ります』

 

 

 

すると、左衛門佐先輩が笑顔で「其れなら、戦車も捨てられているかもな♪」と答えたので、カエサル先輩が「よしっ、行くぞ!」と元気良く号令を掛けると、“カバさんチーム”のメンバー四人は意気揚々と東の方に在る“沼地”へ向かう。

 

そんな先輩達の後を追い掛け乍ら、私と秋山先輩は共に“大丈夫かな?”と心配していたのだが…結果的には私達の心配は杞憂に終わった。

 

 

 

 

 

「見付かりました!“ルノーB1bis”です!」

 

 

 

『本当に戦車が在った!?』

 

 

 

何とカエサル先輩の占い通り、ゴミだらけの“沼地”の端にフランス軍の重戦車“ルノーB1bis”が、半ば沼に沈んで居る姿で発見されたのだ。

 

秋山先輩が喜び乍ら見付けた戦車の名前を呼ぶと、私も“カエサル先輩の占い”の腕前が()()だと知って驚きの声を上げた時、カエサル先輩が秋山先輩に向かってこう呼び掛けた。

 

 

 

「流石は“モントゴメリー”」

 

 

 

しかし、そう呼ばれた秋山先輩は嫌そうな表情で「あのー、其れは一寸……」と抗議した為、私も加勢する。

 

 

 

『幾ら何でも“第二次大戦の米英軍一の愚将(モントゴメリー)の名前を“ソウルネーム(魂の名前)”にするのは…第一、彼が立てた“マーケット・ガーデン作戦”が失敗した所為(せい)で、米英軍は其の後“バルジの戦い”に直面してベルリンを占領出来ず、ソ連(スターリン)に因る東西ドイツ分断と其の後半世紀近く続いた冷戦を招いたんですよ?*1

 

 

 

英陸軍のバーナード・ロー・モントゴメリー元帥に関しては様々な評価が有るだろうけれど、私は“【マーケット・ガーデン作戦】の失敗が第二次大戦の欧州戦線の結末と戦後の東西冷戦に与えた影響”を考えると“愚将”と言わざるを得ないと思っているので自論を述べた処、左衛門佐先輩とおりょう先輩が揃って「「其れだ!」」と叫ぶ中、エルヴィン先輩がこんな提案をして来た。

 

 

 

「其れなら“グデーリアン”では如何かな?」

 

 

 

「はいっ!」

 

 

 

“ドイツ装甲部隊の生みの親”ハインツ・グデーリアン上級大将を“ソウルネーム(魂の名前)”にして貰って喜ぶ秋山先輩。

 

でも私は『グデーリアンも実は“極端な極右主義者”で、第一次大戦終結直後の混乱期に自分が参謀として所属していた義勇兵部隊“鉄師団”を脱走させて内戦中のソ連へ渡り、ロシア白軍に合流して赤軍と戦おうと企んだ事がドイツ軍上層部にバレて左遷された過去*2が有るからなあ……』と思ったけれど、其れを言うと秋山・エルヴィン両先輩に怒られそうなので、此処は黙って置いた。

 

すると、カエサル先輩が「原園、済まなかったな」と私に呼び掛けると、こんな事を言って来た。

 

 

 

「そうだ…原園はどんな“ソウルネーム(魂の名前)”が良い?」

 

 

 

『えっ!?』

 

 

 

自分も“ソウルネーム(魂の名前)”を付けられると聞かされて驚いた私だったが、少し考えてからこう答える。

 

 

 

『私ですか…なら、“ヴィリィ・ラングカイト”*3で御願いします』

 

 

 

其の答えを聞いたカエサル・左衛門佐・おりょう先輩が首を傾げる中、秋山先輩が笑顔で答える。

 

 

 

「おっ、ドイツ陸軍のエリート装甲部隊だった“グロースドイッチュラント装甲擲弾兵(パンツァー・グレネイド)師団”*4の戦車連隊長だった方ですね!原園殿ってやはり“通”じゃないですか!?」

 

 

 

其処へ、第二次大戦に詳しいエルヴィン先輩も納得した表情で私に問い掛けて来た。

 

 

 

「ほう…ラングカイト少将とは中々渋いな。だが、あの人は“田舎の学校の教頭先生”みたいな “冴え無い雰囲気のオジサン”*5だが、何処が好みなのだ?」

 

 

 

其の問いに対して、私は一瞬顔を赤らめ乍ら、こう答えたのだった。

 

 

 

『私…実は、“オジサン好き”なんです』

 

 

 

 

 

あの時、私の“告白”を聞いた秋山先輩と“カバさんチーム”の先輩方が驚いていたのを思い出していると、何時の間にかやって来た瑞希が私に向かって話し掛けて来た。

 

 

 

「ねえ嵐、聞いてよ!まさかKwK40戦車砲が部室棟の片隅で物干し竿代わりに使われていたなんて…此れじゃあまるで“日清戦争前に来日した時の清国・北洋水師の戦艦『定遠』『鎮遠』”みたいじゃない!*6

 

 

 

「“ののっち(瑞希)”、落ち着いて。嵐ちゃんが戸惑っているよ?」

 

 

 

其処へ私達“ニワトリさんチーム”の操縦手・萩岡 菫が瑞希を宥めると、私達に事情説明を始めた。

 

菫によると、彼女と瑞希は“アヒルさんチーム”のメンバー四人と西住・麻子両先輩のグループに入り、今は使われていない旧・部室棟の捜索を行ったのだが、此れと言った手掛かりが見付からず諦め掛けていた時、麻子先輩が部室の窓を開けて外を見たら……

 

 

 

「何処の部だ、こんな所に洗濯物を干したのは!?」

 

 

 

此の時、麻子先輩の隣に居た菫が窓の外の庭に在った“物干し竿”を見た時、其の正体がⅣ号戦車F2型(或いは初期G型)が装備していた事で知られる“43口径75㎜戦車砲KwK40”だと気付いて……

 

 

 

「あっ、此れは…西住先輩、“ののっち(瑞希)”~!」

 

 

 

…と言う訳で、旧・部室棟を捜索した西住先輩達のグループは“あんこうチーム”のⅣ号戦車D型の“パワーアップパーツ”を見付けたのである。

 

 

 

 

 

そんな頃、五十鈴先輩が心配そうな表情で“あんこうチーム”の皆に話し掛けていた。

 

 

 

「戻って来ませんね…沙織さんと“ウサギさん(一年生)チーム”に舞さんのグループ」

 

 

 

其れに対して西住先輩も「うん……」と答えていると、突然“ニャー、ニャー”と猫の声が…此れは麻子先輩のスマホの着信音だ。

 

早速、麻子先輩がスマホを操作すると……

 

 

 

「遭難…したそうだ」

 

 

 

「『えっ!』」

 

 

 

麻子先輩からの“悪い知らせ”に、西住先輩達“あんこうチーム”の皆と共に私や瑞希・菫も驚いていると、ワンテンポ遅れて私達の傍に来ていた長沢 良恵ちゃんがキョトンとした表情で一言……

 

 

 

()()()()()()()…って、ええっ!?」

 

 

 

「良恵、そんな時に()()()を言っちゃ駄目よ!?」

 

 

 

無意識の内に“トンだ大ボケ”をかましてから驚いている良恵ちゃんを従妹の名取 佐智子ちゃんが叱ると、秋山先輩が麻子先輩に向かって「何処でですか!?」と問い掛ける。

 

其れに対して麻子先輩は少し困り顔で「船の底だが…何処に居るのか分からない、と」と答えた処、話を聞いて居た河嶋先輩が右手で後頭部を掻き乍ら指示を出した。

 

 

 

「何か“表示”が在る筈だ。其れを探して伝えろ、と言え」

 

 

 

其れに対して麻子先輩が「うん」と答えてからスマホを操作していると、何時の間にか西住先輩の隣迄来ていた角谷会長が「はい」と声を掛けると、丸めた古い紙を差し出す。

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

其れに対して西住先輩が戸惑うと、会長はこんな事を言った。

 

 

 

「此れ、船の地図ね。捜索隊、行って来て~♪」

 

 

 

「ええっ!?」

 

 

 

会長からの“無茶振り”に呆然としている西住先輩を見た私は、すかさず会長に向かって意見を述べた。

 

 

 

『あの会長、御言葉ですが…私のスマホには“学園艦地図”と言うアプリを入れてあるので、多分其の地図と同じ内容の地図でルート検索とか色々出来ますよ?』

 

 

 

「えっ、そうなの?」

 

 

 

私の意見に、意表を突かれたらしい会長がキョトンとしていると、小山先輩が真顔で「原園さんの言う通りです」と口添えをする。

 

其処へ話を聞いて居た瑞希も会長に向かって、こう述べた。

 

 

 

「其れに、学園艦内部に居る筈の武部先輩達のスマホが通じたと言う事は、多分Wi-Fiが通じてますよ。学園艦内部の各所には艦内でもスマホや携帯電話が通じる様に携帯電話会社が設置したWi-Fiスポットが在る筈ですから」

 

 

 

すると、会長は済まなそうな表情を浮かべ乍ら「御免、じゃあ原園ちゃん達も捜索隊に入ってくれる?」と頼んで来たので、私も頷き乍ら『はい』と答えた処、瑞希も右手を挙げて「私も行きます!」と声を上げた。

 

 

 

『如何したの、“ののっち(瑞希)”?急に張り切っちゃって』

 

 

 

私は、瑞希が捜索隊に加わりたがっている理由を図りかねていると、菫が私に“こんな事”を告げる。

 

 

 

「ほら、()()()()()()()()も遭難しているから

 

 

 

其処へ、すかさず瑞希が「当然よ、此処で助けに行かなきゃ男…いや、()()の名が廃る!」と断言して腕組みしたのを見た私は、呆れた表情でこう呟いた。

 

 

 

『はいはい……』

 

 

 

こうして、私と瑞希は遭難している武部先輩を除いた“あんこうチーム”の四人と共に、学園艦の船底部を探索する事になった。

 

 

 

 

 

「何か、お化け屋敷みたいですね……」

 

 

 

照明が殆ど無く暗闇が支配する艦内を歩く為に、“サーチライト付きの軍用ヘルメット”を被った秋山先輩が怯えた表情で語り掛けて来たので、私はスマホに表示している“学園艦アプリ”収載の地図をチェックし乍ら答えた。

 

 

 

『此の辺りは、余り人が立ち入らないらしいですから』

 

 

 

其の時、突然の物音が!?

 

 

 

「「きゃああ!」」

 

 

 

“何か”が床に落下して生じたと思われる音が響いた瞬間、恐怖に耐えかねた西住・秋山両先輩が叫び乍ら抱き合っている中、其の横を五十鈴先輩が「大丈夫ですよ」と呟くと、平然とした表情で其の場を通過する。

 

そして、私も同じく……

 

 

 

『何かが落ちただけですね』

 

 

 

と呟くと、私の隣に居た瑞希も「うん」と頷き乍ら其の場を通り過ぎたので、秋山先輩が私達三人に向かってこう言った。

 

 

 

「五十鈴殿に、原園殿と野々坂殿も本当に肝が据わってますよね?」

 

 

 

其の言葉に、西住先輩も複雑な表情を浮かべ乍ら「うん」と答えてから、後ろを振り向くと……

 

 

 

「あれ?麻子さん、大丈夫?」

 

 

 

其の視線の先には、思い切り怯えている麻子先輩の姿…そして彼女の口からは、こんな言葉が。

 

 

 

「お…お化けは、早起き以上に無理!」

 

 

 

真っ青な顔で怯える麻子先輩を見た私は、彼女を励まそうと声を掛けた。

 

 

 

『大丈夫ですよ、麻子先輩。私は毎年“みなかみタンカーズ”の夏祭りでやっていた“肝試し大会”で慣れていますから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!』

 

 

 

「「えっ!?」」

 

 

 

其の時、私の一言に西住・秋山・五十鈴先輩の三人が驚きの声を上げたのを見た瑞希が苦笑いを浮かべ乍ら“私の発言の意味”を説明した。

 

 

 

「ああ、思い出した。嵐は一昨年の“肝試し大会”で、お化け役をしていた町の青年会議所の御兄さんを()()()()()()()()K()O()しちゃった事が有るんですよ

 

 

 

『なっ!?』

 

 

 

思わぬ所で()()()()()()を暴かれた私は、瑞希に向かって一言叫ぶと、慌てて今の彼女の発言について弁解する。

 

 

 

『一寸止めてよ、“ののっち(瑞希)”!? アレは私と一緒に居た娘が“お化け”に手を触られた瞬間“痴漢”だと勘違いして騒いだから、つい本気を出して……』

 

 

 

「でも、其の御兄さんは()()()()()を持っていたのに、嵐は難無くやっつけたじゃない?

 

 

 

すると、私の弁解に対する瑞希の反論を聞いた西住先輩達四人全員が「「ええっ!?」」と驚愕の叫び声を上げたので、観念した私は()()()()()()()()()()()()()を説明する破目に陥った。

 

 

 

『いえ…実を言うと私、喧嘩は“母親(明美)以外の相手には負けた事が無い”んです』

 

 

 

私からの“告白”に西住先輩達が驚いていると、私の隣に居た瑞希が人の悪い(腹黒い)笑みを浮かべ乍ら“トドメのエピソード”を披露した。

 

 

 

「そうだったね…で、“肝試し大会”のラストは毎年“お化けの大ボス役”の明美さんと嵐の一対一(タイマン)によるプロレス大会で、必ず()()()()()()()()()()()のが“御約束”だったわね♪

 

 

 

『ぐっ……』

 

 

 

瑞希に“トドメを刺された”私は、西住先輩達からの“生暖かい視線”を浴びるのを実感すると、ガックリと肩を落とし乍ら学園艦内部を捜索する先輩達と瑞希の後に()いて行くのだった……

 

 

 

 

 

一方、此方は学園艦内部の奥深く。

 

学園艦の艦内配置図で“第17予備倉庫”の近くに当たる場所に、少女達の一団が座り込んで居た。

 

“あんこうチーム”通信手・武部 沙織と“ウサギさん(一年生)チーム”メンバー六人、そして“ニワトリさんチーム”装填手・二階堂 舞である…但し、此の中で一人だけ座らず、“立った儘天井の辺りを見つめ続けている()()”が居るが、其れはさて措き。

 

何故、彼女達が此処に居るのかと言うと…“道に迷って帰れなくなった”のである。

 

彼女達は“戦車捜索”の為に、学園艦の甲板から下…つまり艦内を探索していたのだが、手掛かりが無かった事も有り、途中で出会った船舶科の生徒二人に沙織が「あのー、戦車知りませんか?」と尋ねた処、思わぬ回答が得られたのである。

 

 

 

「戦車か如何かは分からないけど…何か、其れっぽい物を何処かで見た事有るよね。何処だっけ?」

 

 

 

「もっと奥の方だったかな?」

 

 

 

船舶科の生徒からの“有力な証言”を得て、元気付けられた沙織達は学園艦内部の奥深くへ足を踏み入れた…其の結果、途中で道が分からなくなってしまい、彼方此方を歩き回った末、此の場所に辿り着いて現在に至るのである。

 

そんな中、“ウサギさん(一年生)チーム”37㎜砲々手・大野 あやが寂しそうな声で呟いた。

 

 

 

「御腹…空いたね」

 

 

 

すると、隣に居るチームメイトで操縦手の阪口桂利奈も「うん……」と答える。

 

だが、何時もは元気が取り柄の彼女も今は元気が無い。

 

其処へ、チームリーダー兼戦車長の澤 梓も悲し気な声で皆に向かって語り掛けた。

 

 

 

「今晩は、此処で過ごすのかな?」

 

 

 

すると、梓の隣に座って居たチームの通信手兼75㎜砲装填手・宇津木 優季が涙を零し乍ら呟く。

 

 

 

「グスッ…“ののっち(瑞希)”~!」

 

 

 

“新しく出来たばかりの彼氏(瑞希)”の名を出して助けが来る事を願う優季の涙声に、“ウサギさん(一年生)チーム”のメンバー達が啜り泣きを始める中、チームでは37㎜砲装填手を務める丸山 紗季だけは立った儘天井方向の一点を見詰め続けている…()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんな彼女達の様子を見た沙織が、彼女達を励まそうと話し掛けた。

 

 

 

「だ、大丈夫だよ…あっそうだ。私、チョコ持ってるから皆で食べよう?」

 

 

 

すると、其の様子を見ていた舞が「武部先輩、私も持っていますよ!」と声を掛けると、背負っていたリュックサックからチョコレートやキャンディーを取り出して来た。

 

 

 

「“まいまい()”、そんなに御菓子を沢山持って来たの?」

 

 

 

舞が取り出した御菓子の数を見て驚いた沙織は、自ら考え付いた“渾名(まいまい)”で呼ぶと、彼女は笑顔で“御菓子を持って来た理由”を説明した。

 

 

 

「沙織先輩、“探検”するなら()()()準備は必要じゃないですか…其れに、私は一度()()した事が有りますから

 

 

 

「「えっ!?」」

 

 

 

舞の“告白”に、沙織と“ウサギさん(一年生)チーム”の面々が驚く中、舞は“当時のエピソード”を語るのだった。

 

 

 

「私が小学三年になった春、“群馬みなかみタンカーズ”に入って直ぐの頃、タンカーズのオリエンテーションでみなかみ町が作った戦車道練習場近くの山へハイキングに行った時、山道で足を滑らせて、傾斜のきつい坂を滑って行った先の林の中へ落ちちゃったんです」

 

 

 

舞の話に沙織達が聞き入っている中、舞は当時の話を続けて行く。

 

 

 

「其の時、私は足を挫いてしまったから其の場で動けなくなってしまって…でも直ぐに、嵐ちゃんと瑞希ちゃんが気付いてくれて、引率に来ていた大人達を連れて助けに来てくれたんだ」

 

 

 

此処で舞の話を聞いて居た優季が目を輝かせ乍ら「本当?」と問い掛けると、舞は笑顔でこう答えた。

 

 

 

「うん。こう言う時、嵐ちゃんと瑞希ちゃんは頼りになるんだ…二人は幼稚園からの()()()()だから。其れに西()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”から、絶対助けに来てくれる。だから皆も諦めちゃ駄目だよ」

 

 

 

“助けは必ず来るから、希望を捨ててはいけない”と言う舞の話に、先程迄泣いていた“ウサギさん(一年生)チーム”のメンバー達は涙を拭うと、沙織と舞に向かって「「うん」」と答えた後、二人が出した御菓子を皆で分け合ってから食べ始めた。

 

其の時、沙織は舞に向かって“他の人には聞こえない小声”で問い掛ける。

 

 

 

「“まいまい()”、若しかして貴女は去年の“みぽりん(みほ)”の事…?」

 

 

 

「去年の戦車道全国高校生大会・決勝戦の事なら、私も現地で試合を見ていたから知っています…只、此の話は今、他の皆には聞かせたく無いので、救助された後で改めて話をしませんか?」

 

 

 

沙織の問い掛けに、舞も沙織以外には聞こえない小声で答えると、沙織も「うん、分かった。今は此の事は御互い言わない様にしようね」と話題を切り上げると、二人は御菓子を食べ始めた……

 

 

 

 

 

其の頃、私達のグループは、学園艦内部の奥深くを進んでいた。

 

 

 

「第17予備倉庫近くだったら、此の辺りだと思うんだけど……」

 

 

 

西住先輩が、私のスマホを見て呟き乍ら現在地を確認していると、“突然の轟音”が響く。

 

 

 

“ドーン、ドーン”

 

 

 

「ひえっ!」

 

 

 

辺りに砲声が轟いたかと思うと、麻子先輩が“お化けが出た”と思ったのか、真っ青な顔で叫ぶと其の儘固まってしまった…しかし。

 

 

 

「あっ、カエサル殿だ…はい!」

 

 

 

秋山先輩が一言呟くと、スマホを操作して着信を確認している…如何やら“砲声の正体”は、彼女のスマホからの“人騒がせな着信音”だった様だ。

 

其の様子を見た麻子先輩が胸を押さえ乍ら深呼吸をしているのを余所に、秋山先輩がスマホからの音声を聞いて居ると、其の声が私にも聞こえて来た。

 

 

 

「西を探せ、“グデーリアン(優花里)”」

 

 

 

「“西部戦線”ですね、了解です!」

 

 

 

カエサル先輩からの“アドバイス”に、秋山先輩が()()()()()な表現で返事をすると、漸く落ち着いた麻子先輩が秋山先輩に問い掛ける。

 

 

 

「誰だ、其れは?」

 

 

 

「“魂の名前(ソウルネーム)”を付けて頂いたんです」

 

 

 

麻子先輩の質問に、秋山先輩が下手をすると“中二病”と思われかねない返事を元気良く返していると、五十鈴先輩が辺りを見回し乍ら「西と言っても……」と呟いて方位が分からない事を悩んでいると……

 

 

 

「大丈夫です。コンパス(方位磁石)持ってます」

 

 

 

秋山先輩が軍用の本格的なコンパス(方位磁石)を取り出して皆に見せたのだが、私は其処で“或る問題点”に気付いたので、秋山先輩に問い掛ける。

 

 

 

『あの…艦内だと金属だらけだから、コンパス(方位磁石)が正確な方位を示さないと思いますが?』

 

 

 

「あっ!?」

 

 

 

しかし、秋山先輩が叫んだ処へ素早く瑞希がフォローに入る。

 

 

 

「幸い、スマホアプリの“学園艦地図”に現在位置が表示されているから、其れに従った方が良いですね…学園艦内部ならWi-Fiが使えるから助かったわ」

 

 

 

瑞希のフォローの御蔭で、秋山先輩は「野々坂殿、助かりました~♪」と呟くと、私達は方位をスマホで確認してから再び歩き始めた。

 

そんな時……

 

 

 

「でも、何で西なんだ?」

 

 

 

「“()”だそうです」

 

 

 

麻子先輩からの問い掛けに秋山先輩が答えると、西住先輩が「えっ!?」と驚きの声を上げる中、五十鈴先輩が……

 

 

 

「“()()()()()()()()()()()()()”ですね」

 

 

 

奇しくも、カエサル先輩が卦を行っていた時に()()()()()()()()()()()を呟いていた。

 

其処で、私は“実際にカエサル先輩の()の結果を見た”時の話をする。

 

 

 

『いえ、五十鈴先輩。実はカエサル先輩の“()”で“ルノーB1bis”重戦車が見付かったんです』

 

 

 

すると、私の言葉に五十鈴先輩が「まあ、凄いですね」と感嘆し、西住先輩は「原園さん、本当なの!?」と驚いていると、秋山先輩が「私も原園殿と一緒に見ました」と、私の話が事実である事を証言してくれた…そんな会話を続け乍ら艦内を歩いて居た時である。

 

 

 

「「あっ!?」」

 

 

 

みぽりん(みほ)!」

 

 

 

前方を見ていた西住先輩と瑞希が声を上げると、向こう側から武部先輩の声が聞こえた…遂に、彼女達を見付けたのだ。

 

すかさず私が大声で『皆、お待たせ!』と呼び掛けると、続けて瑞希が「御免優季、待たせたわね」と“下手な男よりもカッコ良い声”で呼び掛けると……

 

 

 

「“ののっち(瑞希)”~!」

 

 

 

「救助隊だ!」

 

 

 

「助かった!」

 

 

 

瑞希の声を聞いた優季が立ち上がると駆け寄って来た瑞希に抱き着き、あやとあゆみが喜ぶ中、舞がニッコリ笑って「来てくれると信じてたよ」と私と瑞希に向かって優しく声を掛けてくれた。

 

そして、瑞希に優しく抱き締められて泣いている優季以外の“ウサギさん(一年生)チーム”の仲間達も泣き乍ら武部先輩の周りに集まると、先輩は「もう大丈夫だよ」と後輩達に声を掛けている。

 

そんな武部先輩と瑞希の姿を見た秋山先輩は、「武部殿に野々坂殿、モテモテです♪」と呟き、其れを聞いた五十鈴先輩も「ホントね」と相槌を打っている。

 

其処へ、麻子先輩が一言指摘をした。

 

 

 

「瑞希は兎も角、沙織は希望していたモテ方と違う様だが?」

 

 

 

『何を勘違いしているんですか、先輩方……』

 

 

 

私は、先輩方の話を聞いて“皆さん、一寸論点がズレている様な気がするのですが?(大汗)”と思って呆れ乍らも、武部先輩達のグループの中で唯一、立った儘天井方向の“或る一点”を見詰め続けている紗季の傍に行くと彼女へ呼び掛けた。

 

 

 

『紗季。助けに来たからもう帰るよ…って、何を見ているの?』

 

 

 

「……」

 

 

 

だが、声を掛けても反応しない紗季の顔を見た処、私は彼女の表情から“思わぬ事実”を読み取ったのだ…勿論紗季は一言も言っておらず、私に向けた表情だけで私は“彼女が伝えたい事”を読み取ったのだが。

 

 

 

『“あの先に何か在る”って…ええっ!?』

 

 

 

紗季からの“伝えたい事”の内容を読み取って、彼女の視線の先を見た私が大声を上げた為、西住先輩が慌てた声で「如何したの、原園さん!?」と私に呼び掛ける。

 

其処で私は、皆に向かって大声でこう叫んだのだ。

 

 

 

『皆、紗季が見ている方向に…“()()()()()()()()()*7が在る!』 

 

 

 

「「ええっ!?」」

 

 

 

 

 

「皆、遅く迄御苦労だった。次の試合には間に合わないが、此れで先を勝ち抜く希望が見えて来た。次のアンツィオ戦もやるぞ!」

 

 

 

此処は、学園艦内の大浴場。

 

“二度目の戦車捜索作戦”を終えた私達・戦車道履修生全員は、此処で今日一日の汗を流していた。

 

皆で背中を流し合ったり、今日の“戦車捜索”についての思い出を語り合ったりしたのが一段落した処で、河嶋先輩が“今日の戦車捜索の総括”と“次の試合への意気込み”を語った後、西住先輩に向かって一言。

 

 

 

「西住…やれ」

 

 

 

河嶋先輩から話を振られて「えっ!?」と戸惑う西住先輩を余所に、「締めろ」と指示する河嶋先輩。

 

其の指示に、西住先輩はおずおずと立ち上がると、大浴場に入って居る仲間達の姿を見て「あ…ううっ」と圧倒されていたが、意を決すると大声で皆に呼び掛けた。

 

 

 

「み…皆さん、次も頑張りましょう!」

 

 

 

「「『おおっ!』」」

 

 

 

西住先輩の“檄”で私達全員が一斉に腕を突き上げて鬨の声を上げると、河嶋先輩が「よしっ、此の後は夕食の時間迄自由行動だ!」と皆に伝えて“今日の戦車捜索”が終わった…と思った、其の時である。

 

 

 

「処で、原園殿♪」

 

 

 

『秋山先輩?』

 

 

 

何時の間にやら私の隣にやって来た秋山先輩が、微笑み乍ら話し掛けて来たのだ。

 

 

 

「実は、原園殿に“御願い”が有るのですが……」

 

 

 

『何でしょう?』

 

 

 

其処から暫くの間、私は秋山先輩とヒソヒソ話をした…其の結果。

 

 

 

『また…()()ですか?』

 

 

 

「はいっ♪今度は二回戦の相手であるアンツィオ高校へ行きますから、時間を空けて置いて下さい。勿論潜入の準備は此方でちゃんとやって置きますので、心配しなくて良いですよ♪」

 

 

 

『はい……』

 

 

 

斯くして、私は再び“秋山先輩と一緒に、全国大会の次の対戦相手・アンツィオ高校学園艦へ潜入する”事になったのだ。

 

 

 

(第54話、終わり)

 

 

*1
此の嵐の台詞は、あくまで作者の見解です。後書きも参照の事。

*2
実話である。詳細は「戦車将軍グデーリアン」(角川新書/刊、大木毅/著、2020年)を参照の事。

*3
1907生-1969没。1944年2月にドイツ陸軍のエリート部隊“グロースドイッチュラント装甲擲弾兵(パンツァー・グレネイド)師団”・戦車連隊長(階級・装甲兵大佐)を務め、45年には紆余曲折を経て“クーアマルク装甲擲弾兵(パンツァー・グレネイド)師団”の師団長(装甲兵少将)を務め上げ、敗戦直前に米軍の捕虜になるが数年の捕虜生活の後、1951年6月に西独・連邦国境警備隊に奉職して准将迄進級してから退役している。実戦で功績を挙げた軍人の昇進が早い事で知られるWW2のドイツ陸軍(ヴェールマハト)でも珍しい“士官学校を経ずして、一兵卒からの実績と戦功のみで将軍(装甲兵少将)になった人物”でもある。尚、第二次大戦中に柏葉付き騎士十字章を授与された他、大戦末期には75回の戦車戦を記録して金色戦車戦章も授与されている。

*4
WW2のドイツ陸軍のエリート部隊の一つ。元々は歩兵連隊だったが1942年に自動車化歩兵師団に改編された後、1943年6月には装甲兵員輸送車やティーガーⅠ重戦車等の配備を受けて装甲擲弾兵(パンツァー・グレネイド)師団に改編された。其の戦力はドイツ陸軍の装甲師団処か武装SSの装甲師団よりも優れており、特に戦車連隊は通常の装甲師団が2個戦車大隊編成なのに対して3個戦車大隊で編成されており、しかも3番目の戦車大隊はティーガーⅠ重戦車で編成されていた。其の後、同師団は“ブランデンブルク装甲擲弾兵(パンツァー・グレネイド)師団”を加える形で軍団に改編されたが、敗戦直前にソ連軍との戦闘で壊滅している。

*5
本当である。後世に残るラングカイト少将の写真が正に其れなので、気になった方は是非ググって欲しい。

*6
日清戦争前の明治24(1891)年、清国・北洋水師(艦隊)は日本側を威圧する為に、親善訪問の名目で当時“東洋一の軍艦”と言われた戦艦「定遠」「鎮遠」を中心とする艦隊を日本に派遣した。ところが此の艦隊を見た、後の連合艦隊司令長官・東郷平八郎は清国軍艦の砲に洗濯物が下げられており、甲板が不潔極まりない状態なのに気付き、「恐るるに足らず」と直感したと言う。瑞希の台詞は此のエピソードが元ネタ。

*7
賢明なガルパンおじさんであれば、此の重戦車の正体は分かるでしょう(笑)。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第54話をお送りしました…漸く、アニメ本編の第7話迄の話が終わったぞ!
此処へ来る迄約4年!
本当に私の遅筆に御付き合い頂き、誠に有難う御座います。

と言うか、今回は次回への繋ぎの話になってしまいましたが、其の替わりとして今回は色々と話を盛ってみました。
只…果たして面白いのか如何、私も分からなくなっています(オイw)。

因みに、史実ではロンメル将軍のライバルとして知られるモントゴメリー元帥ですが、個人的にはロンメルと比較するのは如何かと思う位の“愚将”だと思っています。
ロンメルに関しても近年“其の能力が戦術面に偏っていて、戦略面での能力が不足している”等の批評がされる様になりましたが、モントゴメリーも大戦中米軍と散々衝突している(シシリー島上陸作戦で有名なパットンとの確執だけで無く、アイゼンハワーとも対立している)上、マーケット・ガーデン作戦の失敗が後世に与えた影響を考えると、到底名将とは評価出来ないですね。

そして、次回からアンツィオ戦が始まりますが、勿論出オチにはしません!
ガッツリやります!
どんな内容になるかは…次回をお楽しみに!(錯乱)

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