戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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此処最近、中々執筆が進まないので弱っています…鎮守府の妖精さん、助けて!(オイw)
其れでは、どうぞ。



第56話「此れが、アンツィオ高校です!!(後編)」

 

 

 

只今、大洗女子学園・生徒会長室では一本の動画がプロジェクターで流されており、其れを“カメさんチーム(生徒会四人組)”と“あんこう&ニワトリさん”両チームのメンバーが見ている。

 

其の動画のタイトルは……

 

 

 

「秋山優花里のアンツィオ高校潜入大作戦」

 

 

 

之は、秋山先輩が生徒会からの依頼で行ったものであり、其れに“巻き込まれた”私・原園 嵐も()()()()()として秋山先輩と共にアンツィオ高校へ潜入した結果…無事情報を入手して帰還する事が出来た。

 

更に、帰還途中秋山先輩がノートパソコンで編集して完成した動画は、丁度アンツィオ高校の学園艦*1をバックにしたタイトル場面が終わり、イタリア・ローマ市内の名所をモデルにして建設された“アンツィオ高校の広場”の映像に切り替わると、いよいよ本編が始まる。

 

 

 

 

 

 

「はい、秋山優花里です。今日はアンツィオ高校に来ています。ワンパターンで済みませんが、今回もコンビニ船を使って上手く潜入する事が出来ました」

 

 

 

『そして、今回も潜入に付き合わされた、カメラマンの原園 嵐です』

 

 

 

“潜入動画”と言うよりは、まるで()()()()()()()()T()V()()()()()(())()()』”を彷彿とさせる様な広場の映像に、アンツィオ高校の制服を着た秋山先輩がチラリと映り乍ら自己紹介をすると、私も映像には出ていないが声だけで自己紹介を済ませる。

 

ところが……

 

 

 

「因みに、今映像で御覧頂いていると思いますが、原園殿は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”ので、其の腹いせにコンビニ船内で着替えをした時、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()~♪*2

 

 

 

其の言葉通り、秋山先輩の説明と共に“潜入に使ったコンビニ船”と“私が()()した秋山先輩の着替映像”が一瞬だけ流れると、場面が切り替わって……

 

 

 

『御免なさーい!もう二度としませ-ん!』

 

 

 

頭に大きなたん瘤を作った私が目の幅一杯の涙を流し乍ら、秋山先輩に謝罪している姿が映って居た…秋山先輩、本当に御免なさい!

 

但し、映像での私は“自分の赤毛”を隠す為に栗毛のウィッグをしているのだけど、其処からでもたん瘤が見えるのだから、秋山先輩の腕力は凄い。

 

先輩が“あんこうチーム”の装填手になってから、毎日筋トレを欠かさないのは私も知っているけれど、先輩の拳骨は想像以上に痛かったです…いや、今語るべきはそっちじゃない。

 

今、映像はアンツィオ高校の敷地内に在る“戦車道訓練場兼運動場兼舞台兼お祭り広場”…つまり「多目的広場」として使われている“コロッセオ”入口前の通りに切り替わっているが、秋山先輩が不思議そうな声でこう語る。

 

 

 

「其れにしても、平日なのに屋台が沢山出ていますが、学園祭か何かなのでしょうか?」

 

 

 

確かに、此の日は平日の“御昼休み”時間中だが、広場は沢山の屋台で大盛況だ…屋台で調理をしている“店員”も“御客さん”も皆“アンツィオ高校の制服を着た生徒”だと言う点を除けば。

 

其処で、“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”私は秋山先輩に声を掛けようとしたのだが、其れより先に先輩が近くに在る「ミラノ風ジェラート・200円」と書かれた露店の前で買い食いをしていた二人のアンツィオ高校生徒*3に話し掛けていた。

 

 

 

「あのー、私転校して来たばっかりで良く分からないんですけど、今日って何かのイベントでしたっけ?」

 

 

 

すると二人の“本物の生徒”の内、おかっぱ風の茶髪をした()がぶっきら棒な声で答える。

 

 

 

「は?何時もの日だよ」

 

 

 

其れを聞いた秋山先輩が「随分と出店多いですね?」と更に問い掛けると、黒髪ショートヘアの“もう一人の本物の生徒”が“屋台街の実情”を教えてくれた。

 

 

 

ウチ(アンツィオ)は何時もこんなモンだって。色々な部や委員会が片っ端から店出してんの…ウチの学校()()だから、少しでも予算の足しにしないとね」

 

 

 

「そうでしたか、如何もであります!」

 

 

 

質問を終えた秋山先輩が“本物のアンツィオ高生徒二人”に御礼を言って其の場を離れた後、屋台街の周りを見回してから楽し気な声で「何と、此れは賑やかで楽しそうですね~」と私が操作しているデジカメの前で語ったので、私は“アンツィオ高の生徒が屋台を出している理由”について詳しい説明をした。

 

 

 

『実は此の学校、今の学園艦を建造した時に観光客目当てにイタリア各地の名所を再現したまでは良かったんですけど、其れに建造費を掛け過ぎた所為で莫大な借金を抱えてしまって…今も貧乏なんですよ』

 

 

 

すると、秋山先輩が「じゃあ、其れで生徒達が部や委員会の予算を稼ぐ為に屋台を?」と問い掛けたので、私はこう答えた。

 

 

 

『ええ。食材は学園艦内の各種プラントや農場で育てられますし、人件費も“生徒の自主活動”だから無償(タダ)ですから、校外でもアンツィオ高を知っている人達の間では“此処の屋台は安くて美味くてボリュームが有る”って事で有名ですよ。一部では“関東や中部地方に在るイタリアンの御店で働いている女性従業員の大半はアンツィオ高の屋台出身じゃないか?”って言う“都市伝説”が囁かれている程です』

 

 

 

「其れは凄いですね…あっ、()()を飾っている御店が在ります!」

 

 

 

私の回答を聞いた秋山先輩が“アンツィオ高の屋台の凄さ”に感嘆していた時、ふと目に入った“セモヴェンテ()()()の形をした屋根を持つ屋台”を見ると嬉しそうな声を上げ乍ら其の店に向かって行った…あれ?

 

 

 

『私、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!だとしたら“()()()()()()()”は確か!?』

 

 

 

秋山先輩を追って、其の屋台へ来た私が()()()()()を思い出した時、屋台の主人が大声で呼び込みをした!

 

 

 

「アンツィオ名物・鉄板ナポリタンだよ~!美味しいパスタだよ~!」

 

 

 

あっ…やっぱり!

 

此の屋台の主人にして、“アンツィオ高校戦車道チーム・副隊長”のペパロニさんだ!

 

()()()()()()()()()()だけど、姉御肌で後輩の面倒見が良い人”で学内では有名…と言うか、私は過去に二回程彼女に会った事があるけれど『ざっくばらんで、初めて会った人でも親しく話し掛ける性格の方だったなあ』等と“出会った当時”を思い出していると、当人が自分の屋台にやって来た秋山先輩と私を見付けた途端……

 

 

 

「あっ、其処の()()食べて来な♪」

 

 

 

と、まるで“女子に声を掛ける()()()()()()()()()”みたいな口調で秋山先輩と私に声を掛けて来た。

 

しかも声掛けの途中で()()()()迄している…其の姿は、まるで女子を口説こうとする“ののっち(瑞希)”みたい(苦笑)。

 

其れは兎も角、ペパロニさんは秋山先輩と私を呼び込むと、目の前で“アンツィオ名物・鉄板ナポリタン”の調理の実演を始めた。

 

 

 

「先ず、オリーブオイルはケチケチしなーい。具は肉から火を通す。今朝採れた卵をトロトロになる位。ソースはアンツィオ高秘伝・トマトペースト♪」

 

 

 

調理法を解説し乍ら、素早い手付きでフライパンと杓文字を使って調理するペパロニさん。

 

其のテクニックは、調理が素人の私から見ても直感で“上手い”と分かる程だ。

 

 

 

『ああ、アンツィオの学園祭の時、一緒に来ていた時雨があの鉄板ナポリタンを美味しそうに食べていたなあ…()()()()()()()は、あの某・北海道ローカルTV局の『移動()番組』に出て来る“髭のチーフディレクター”の出身地・()()()()()()()()()()

 

 

 

そんな事を私が思い出していると、ペパロニさんが調理する“鉄板ナポリタン”も仕上げの段階だ。

 

 

 

「パスタの茹で上がりとタイミングを合わせて…はい、3()0()0()()()()

 

 

 

料理を仕上げたペパロニさんからの“()()”に、秋山先輩が「えーっ、()()()為替レートですか!?」と驚きのツッコミをすると、私も思わずこうツッコんだ。

 

 

 

『と言うか、()()()()()()()()()()()()()()()()()*4()()()()()()()()()()()()?』

 

 

 

すると、ペパロニさんは“()()()()()()()()()”と言いた気な表情で「いや…300円」と私達に向けてボソッと呟いた…でもペパロニさん、其の()()()()は充分通じていましたよ。

 

 

 

 

 

 

「では、早速…美味しいです♪」

 

 

 

出来立ての“鉄板ナポリタン”を食べて、其の美味しさに喜ぶ秋山先輩を見たペパロニさんが「だろ!」と“ドヤ顔”で答えると、一緒に食べていた私も頷き乍らこう語る。

 

 

 

『秋山先輩、若しも此れと同じ物を東京で食べようとしたら、4~5倍位の料金が掛かるそうですよ』

 

 

 

其の話に、秋山先輩が「其れは凄い!」と答えると、ペパロニさんも嬉しそうな声で「おっ、君も良く知ってるね~♪」と私に向かって話し掛けて来たので、私は自分の正体がバレない様に気を付け乍ら、こう答えた。

 

 

 

『いえ、()が此処の事に詳しくて、よく聞かされていましたから』

 

 

 

…実を言うと、()()()()()()()()()()()()()()()()()私の(明美)()()()()()()()()()である。

 

其れに対して、ペパロニさんがウンウンと頷き乍ら私の話に聞き入っていた時、秋山先輩が彼女に向かって……

 

 

 

「処で、戦車って言えば新型が入ったって聞いたんですけど?」

 

 

 

余りにも“ストレート過ぎる”質問に対して、ペパロニさんの表情が一変する!

 

 

 

「何!?何処で聞いた!?」

 

 

 

さっき迄の嬉しそうな表情とは全く異なる鋭い視線で、秋山先輩と私を睨むペパロニさん…ああっ、秋山先輩!

 

先輩が()()()()()()()()をするからですよ!?

 

此の時、私は心の中で『嗚呼…此れで私達、此の場で身柄を拘束されて試合が終わる迄母校へ帰れない!』と覚悟していると、秋山先輩が沈んだ声で……

 

 

 

「ハッ…済みません」

 

 

 

と謝罪したのだが、私は心の中で「もう遅いですよ、先輩の馬鹿ぁ!」と思っていた時、何と……

 

 

 

おめえ(優花里)、“()”だねぇ~♪ ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 聞いて驚け、え~と、イタリアの…何だっけ?」

 

 

 

ペパロニさんが先程迄の表情とは打って変わった“笑顔”で、“母校の戦車道チームの秘密”を呆気無くバラしてしまったのだった。

 

まあ、私も秋山先輩もアンツィオ高の生徒に変装していたので“大洗女子からのスパイ”だとは思わなかったのだろうけど、仲間達の秘密をこうも呆気無くバラすのは不味いと思うんだけどなあ……(大汗)

 

そんなペパロニさんのあっけらかんとした表情を見乍ら、私が心中複雑な思いを抱いていると、ペパロニさんがド忘れした“自分達のチームが手に入れた()()()の名称を秋山先輩が当てて見せた。

 

 

 

()()()()()()()()と言えば“P40”ですか?」

 

 

 

すると、ペパロニさんがオーバーアクションをし乍ら、今日一番の笑顔で秋山先輩の肩を叩くと、「そう、其れ其れ!P40をそりゃもう気も遠くなる位昔から貯金しまくって、アタシ達の代で漸く買えたんだ♪」と答えつつ、更に先輩の肩を叩きながら話を続ける。

 

 

 

「アンチョビ姐さん…いや、ウチ(アンツィオ)の隊長なんだけどもう喜んじゃって、毎日コロッセオの辺り走り回ってるよ。燃料も余り無えのに♪」

 

 

 

其の話を聞いた私は、思わず『隊長のアンチョビさんも重戦車が手に入って、本当に嬉しいんですね』と語ると、ペパロニさんも「うん、是非一度見てやってくれよ!“ドゥーチェ(統帥)”も喜ぶと思うよ!」と発破を掛けて来たので、“鉄板ナポリタン”を完食した秋山先輩と私は声を揃えて「『はいっ!』」と答えてからペパロニさんの屋台を離れる事にした。

 

 

 

 

 

 

Arrivederci!(アリヴェデールチ)(じゃあ、またね!)」

 

 

 

イタリア語で“別れの挨拶”をしたペパロニさんに見送られ乍ら、「『御馳走様でした!』」と返事をして屋台を離れた私達は、“コロッセオ”を目指して歩く。

 

其の時、“コロッセオ”前の通りを一輌のCV33豆戦車が通過して行くのを見た秋山先輩が私の持つデジカメに向かってナレーションを始める。

 

 

 

「何か凄い街でありますね。あっ、カルロ・ベローチェ( CV33 )です!箱乗りしてますよ!まるで小さい“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”みたいであります♪」

 

 

 

『乗っている()の一人が、何か赤い幟を持っていますね…私にはアレが“()()()()()アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”に見えます♪』

 

 

 

秋山先輩のナレーションに、私も思わず声を掛けると先輩は「そうですね。で、“コロッセオの入口”は此の儘真っすぐですか?」と尋ねて来たので、私は『そうです、私が案内しますから安心して下さい』と声を掛けた。

 

此処へ来るのは去年の学園祭の時以来だけど、其の時とは全く違う緊張感を感じ乍ら私達は“コロッセオ”入口の階段を昇って場内中央部に在るアリーナへ入ると……

 

 

 

「うわ~、コロッセオの中広いですね!」

 

 

 

秋山先輩が“コロッセオ”の広さに驚嘆して居たので、私は『戦車道の練習にも使っているから、かなり広いですよ』と説明した時、“本物”のアンツィオ高校生徒が取り囲んで居るアリーナのド真ん中に一輌の“()()()”が停車しており、其の砲塔上部に“アンツィオの戦車道チーム隊長用パンツァージャケット”を着た一人の少女がノリノリで演説を始めた。

 

 

 

「此れが我々の()()()()だ!」

 

 

 

之こそ“アンツィオ高校戦車道チーム隊長・アンチョビ”と、彼女達が長年貯金を続けて遂に入手した“()()()()P()4()0()()()()”の姿だった。

 

 

 

其れを見た秋山先輩が興奮して「おおっ、P40の本物初めて見ました!」と叫ぶ中、“本物”のアンツィオ高校生徒達はアンチョビさんに向かって黄色い声を上げ乍らP40重戦車とアンチョビさんの“勇姿”をデジカメやスマホで撮影している。

 

個人的には『良いのかな…校内とは言え“秘密兵器”を皆に見せびらかしちゃって?』と思ってしまうのだが、アンツィオ高の生徒達は嬉しそうに撮影をしているし、アンチョビさんもP40の砲塔上で指揮用の鞭を振り乍ら「Hi!」と掛け声を上げてポーズを決めている。

 

そんな彼女達の姿を見ると、“此処の戦車道チームは、母校の生徒達に愛されているんだな”と思って、一寸羨ましくなった。

 

何せ、私達の戦車道チームが先の全国大会一回戦でサンダース大付属と対戦した時、ウチの学園(大洗女子)の生徒で応援に来た()は中等部の華恋・詩織・由良・光の四人しか居なかったのだから。

 

そんな事を思っていた時、アンチョビさんが生徒達に向かって自信に満ちた宣言をした。

 

 

 

「まあ、此れさえ有れば大洗なぞ軽く一捻りだ!」

 

 

 

其の時、私はアンチョビさんを鋭い目で見詰め乍ら、皆に聞こえない程の小声で呟いた。

 

 

 

『へえ…其れは大きく出ましたね、アンチョビさん?』

 

 

 

そう…第二次大戦に於けるイタリア軍最強の重戦車・P40が加わったアンツィオ高校なら、()()()()()()が多い私達・大洗女子学園に対して“互角以上の戦いが出来る!”と考えても不思議は無いだろう。

 

私達“ニワトリさんチーム”のM4A3E8(イージーエイト)の存在を除けば、だが。

 

ハッキリ言うと、アンツィオ高校手持ちの豆戦車であるCV33は勿論の事、セモヴェンテM41突撃砲やP40重戦車でさえ、正面から戦う限り“イージーエイト”と“群馬みなかみタンカーズ”で戦車道の腕を磨いて来た私や瑞希・菫・舞、そして最近迄戦車道未経験者だったが私達の指導で着実に腕を上げている良恵ちゃんで組んだ“ニワトリさんチーム”の敵では無い。

 

だから私は、“何なら私達のイージーエイトだけでアンツィオ高の十輌を相手にしたって構わない”とさえ思っていたが…其処でふと、“或る疑問”が浮かぶ。

 

 

 

『あれ…アンチョビさんも私や瑞希・菫・舞が“群馬みなかみタンカーズ”出身だって言うのは知っている筈なのに?』

 

 

 

何故なら、アンツィオ高校の本籍地は群馬の隣の栃木県に在るので、アンチョビさんの耳にも私達の情報は色々と入って来る筈。

 

其れに、私達“群馬みなかみタンカーズ”のメンバーは毎年行われるアンツィオ高の学園祭によく行っていたし、私自身去年の学園祭に行った時に、アンチョビさんや副隊長のペパロニさんと()()()()()()()()から「卒業したらウチのチームに来ないか?」ってスカウトされていたので、アンチョビさん達も私の顔を知っている筈。

 

其れに、今年のアンツィオ高校には“みなかみタンカーズ時代の仲間”の一人が進学して戦車道チームに居るし…あれ?

 

そう言えば、“みなかみタンカーズ時代の仲間”が、()()()()()()()()()()のは何故だろう?

 

だが、其処迄考えを巡らせていた時……

 

 

 

「「ドゥーチェ(統帥)~♪」」

 

 

 

“必勝宣言”をしたアンチョビさんに向けて、“本物”のアンツィオ高生徒からの大声援が飛び交い始めたので、私は考えるのを止めてしまった。

 

更に、生徒達からの声援に対してアンチョビさんが“ピース”サインを送って応える中、秋山先輩も「現場は大変な盛り上がりです」と、私が構えているデジカメに向かって笑顔で解説する中、私達が居る“コロッセオ”のアリーナでは……

 

 

 

「「ドゥーチェ(統帥)ドゥーチェ(統帥)♪」」

 

 

 

“本物”の生徒達からの“ドゥーチェ(統帥)”コールが響く中、アンチョビさんと生徒達がノリノリで手を振り上げている。

 

そんな中、「以上、秋山 優花里がお送りしました♪」と、秋山先輩が締めのナレーションを終えると、最後に……

 

 

 

出演・編集・題字 秋山 優花里

 

 

 

出演・撮影 原園 嵐

 

 

 

後援 大洗女子学園 生徒会

 

 

 

協力

 

 みんなのコンビニ・ファミリーサンクル

 

 アンツィオ高校

 

 

 

協賛 秋山理髪店

 

 

 

制作・協力者や団体のテロップが流れて、動画「秋山優花里のアンツィオ高校潜入大作戦」は終了した。

 

 

 

 

 

 

「一寸…強そうですね?」

 

 

 

動画を見終わった後、先ず五十鈴先輩が “率直な感想”を述べた処、河嶋先輩が「一寸じゃ無いだろ!?」と危機感を露わにし乍ら言い返す。

 

すると西住先輩も「私、P40初めて見ました……」と、自信無さ気な表情で皆に語り掛けて来た。

 

其の姿を見た私が、“大丈夫ですよ先輩、P40は私達『ニワトリさんチーム』がやっつけますから!”と話し掛けようとした時、皆の一番前で動画を見ていた角谷会長が“何時ものざっくばらんな口調”で語り掛ける。

 

 

 

「こりゃ、もう少しガッツリ考えないと駄目だね♪」

 

 

 

其の言葉に、私も思わず『はい』と答えた時だった。

 

 

 

「一寸待って、嵐!」

 

 

 

突然、瑞希が右手を挙げて私に問い掛けて来る。

 

其の姿を見た私は『何?』と問い返すと、瑞希はこう言ったのだ。

 

 

 

「今見た映像の中に、()()()()の姿が全く映って居なかったんだけど?」

 

 

 

其の言葉に、不意を衝かれた私が答えに詰まると、菫と舞が更なる問い掛けをした。

 

 

 

()()()()、映って居ない筈は無いんだけどな?」

 

 

 

「うん。嵐ちゃん、()()()()には会ったの?」

 

 

 

“群馬みなかみタンカーズ”時代からの仲間の問い掛けに、“カメさん(生徒会)”・“あんこう”両チームメンバーに加えて、チームメイトである良恵ちゃんも当惑し乍ら私達の会話を聞いて居る中、私は首を横に振り乍らこう答えた。

 

 

 

『会って無い…アンツィオへ行けば絶対()()()()に出会すと思っていたから、ウィッグも茶髪の物を用意して正体がバレ無い様に変装したんだけど、結局彼女は何処にも居なかった』

 

 

 

すると、河嶋先輩が()()()()?御前達、()の事を言っているのだ?」と、私・瑞希・菫・舞の四人に向けて詰問すると、瑞希が彼女の質問に答えた。

 

 

 

「実は、アンツィオ高校には“群馬みなかみタンカーズ”時代の()()()が進学して居るんです」

 

 

 

其れに続いて、菫がこう付け加える。

 

 

 

「しかも、()()()()()()()()()()()()()()が」

 

 

 

「「えっ!?」」

 

 

 

菫の発言に、先輩方や良恵&佐智子ちゃんが動揺する中、小山先輩が不安気な声で問い掛ける。

 

 

 

「其れって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って事!?」

 

 

 

「はい」

 

 

 

其れに対して、何時もの天真爛漫さとは全く異なる真剣な声で答えたのは、舞だ。

 

此の直後、佐智子ちゃんがショックを隠し切れない表情で「其の娘、何者なんですか!?」と問い掛けて来たので、私は()()()()()を説明する事にした。

 

 

 

『其の()の名前は、大姫(おおひめ) 鳳姫(ほうき)。出身は栃木県宇都宮市で、姓と名の両方に()の字が入っていたから、皆から()()()()の渾名で呼ばれていたんだ』

 

 

 

すると、瑞希が私に目配せをしてから“説明の続き”を始める。

 

 

 

「実は彼女の御両親、地元では結構な有名人で…先ず、御父様の俊家さんは宇都宮の本店の他に埼玉や茨城にも支店を出している“Torta(トルタ)大姫”のオーナー兼パティシエなの」

 

 

 

其処へ今度は、菫が笑顔でこう話す。

 

 

 

「其のケーキ屋さん、イチゴショートケーキが凄く美味しくて、TVの情報番組で何度も紹介された事が有る“名店”なんだよね」

 

 

 

其の瞬間、応接間のソファーの上で寝ていた麻子先輩が跳ね起きると、大声でこう叫んだ。

 

 

 

「其の店の水戸店なら知ってるぞ!あのイチゴショートケーキは絶品だ!」

 

 

 

「麻子…そう言う時は直ぐ目が覚めるんだ」

 

 

 

何時も“暇が有れば寝ている”麻子先輩の性格を熟知している武部先輩が呆れ顔で麻子先輩に語り掛けると、舞が嬉しそうな声で「栃木って、イチゴの生産が日本一の“イチゴ王国”だからね♪」と話した処、五十鈴先輩も「そうですね。私の母も普段は和菓子贔屓なんですけど、“彼処のイチゴショートケーキは、洋菓子の中では唯一美味しい”と言っている位の大ファンですから」と答えたので、此処迄不安気な表情で“私達の嘗ての仲間(鳳姫)”の話を聞いて居た皆も表情を和らげていた。

 

其の姿を見た私は、“皆、御菓子の話は好きなんだなあ”と思ったが、ふと“或る事”を思い出すと、此の事について詳しい菫に問い掛ける。

 

 

 

『菫、確か“()()()()”の御母さんも凄い人だよね?』

 

 

 

「うん。御母様の龍江さんは、“Auto 大姫”と言うイタリア車専門の販売店兼チューニングショップを経営していて、関東のイタリア車好きの間では有名人なの」

 

 

 

其の言葉に皆が「「へぇ~」」と感心していると、舞が菫の説明を補足する。

 

 

 

「で、龍江さんは大阪出身だけど、小学四年生の時に御父さんの転勤で宇都宮に来て以来ずっと其処に住んで居て、アンツィオ高校戦車道チームのOGでもあるんだよ」

 

 

 

すると、今度は瑞希が笑顔でこんな話を紹介した。

 

 

 

「更に、大姫さん御夫妻は揃って戦車道が大好きで、地元に“戦車博物館”を造っちゃったんだよね」

 

 

 

「あっ、其処は知ってます!其の博物館は小さいけれどイタリアの戦車を中心に十数輌有って、“其の全てが稼働状態で保存されている”んですよね!」

 

 

 

「流石は秋山先輩、御存知でいらっしゃる!」

 

 

 

すると瑞希の話に反応した秋山先輩が“()()()()”の両親が造った“戦車博物館”の概要を説明したので、瑞希も相槌を打つと菫&舞も二人の会話に加わる。

 

 

 

「其れで、大姫さん御夫妻は栃木県内に住んで居る戦車道をやっている()達の為に、博物館で保管している戦車を貸し出したり、様々な援助をしたりしている篤志家でもあるんだよ」

 

 

 

「そんな御両親の下で育ったから、“()()()()”も小さい頃から戦車道が大好きで、其の流れで“みなかみタンカーズ”へやって来たんだよ」

 

 

 

そして、再び瑞希が“何か”を思い出す様な表情でこう語る。

 

 

 

「確か、龍江さんは明美さんや長門さんと同い年で、高校時代に公式戦で何度も対戦した事が有って、御互いに親しいから明美さんに“()()()()”を預ける気になった、って御本人が言っていたわね」

 

 

 

其の時、話を聞いて居た武部・河嶋両先輩が不思議そうな表情で問い掛けて来た。

 

 

 

「でも、そんな()が何でアンツィオに進学したの?」

 

 

 

「其れに、其の()は隊長として“全国中学生大会準優勝”の実績が有るんだから、強豪校からスカウトが来たんじゃ無いのか?」

 

 

 

其処で、私は“当時の事”を思い出し乍ら、二人の質問に答える事にした。

 

 

 

『ああ…其れは、本人が“やっぱり高校は地元へ進学したい”って言うのともう一つ…“単純に()()()()()()()()()()()()()()()()()今度は弱いチームへ行って、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”と言って、他の強豪校からの推薦を蹴ってアンツィオへ進学する事にしたんだって。其れに……』

 

 

 

すると、私が一旦言葉を区切った処で菫が“話の続き”を喋り出した。

 

 

 

「“()()()()”、去年アンツィオの学園祭に行った時、隊長の“ドゥーチェ(統帥)”ことアンチョビさんに会って話をした後、彼女にゾッコンになったんだよね♪」

 

 

 

“話の続き”をいきなり喋られて唖然とする私を余所に、舞が天真爛漫な表情で「うんうん♪」と頷くと瑞希が当時の光景を懐かしむかのような表情で、こんな事を語る。

 

 

 

「アンチョビさん…あの人も結構な苦労人だから、彼女(鳳姫)()()()んだろうな」

 

 

 

そんな瑞希による“百合百合しい”話に、皆が一様に頬を赤く染め乍ら(但し、角谷会長だけはニヤニヤ笑っていた)、話の続きを聞こうとした時……

 

 

 

“キーン、コーン”

 

 

 

丁度此の時に下校時間を知らせるチャイムが鳴った。

 

そして、角谷会長が皆に向かって“何時もののんびりした口調”でこう述べた。

 

 

 

「あー、皆残念だけどチャイムが鳴ったから、今日は此処迄ね。アンツィオのアンチョビさんの事については、明日改めて野々坂ちゃん達から聞く心算だから、宜しく~♪」

 

 

 

会長さん以外の皆は“瑞希の話”の続きが聞けなくて残念そうだったが、もう夕方を迎えている事も有って皆口々に「じゃあ、さようならー」「また明日ねー」と挨拶をし乍ら生徒会長室を出たのだった。

 

 

 

 

 

 

…此処で、時間は秋山 優花里と原園 嵐がアンツィオ高校への潜入を終えて、アンツィオの学園艦を離れた直後に遡る。

 

此処は、アンツィオ高校・学園艦の某所に在る戦車道チーム用の戦車格納庫。

 

此処で、二人の少女が目の前に停車しているP40重戦車を見詰め乍ら()()をしていた。

 

 

 

「どうだった、“マルゲリータ”。()()()()()()()()は帰ったか?」

 

 

 

「はい、“ドゥーチェ(統帥)”。彼女達は先程、連絡船で此処(学園艦)を離れました」

 

 

 

「間違い無いな?」

 

 

 

「はい。嵐は栗毛のウィッグを付けて居たので直ぐには分かりませんでしたが、“オッドボール(秋山 優花里)三等軍曹”の隣に居ましたので、二人共正体を確認する事が出来ました…()()()()()()()()()()()()()()()()()()。事前に、サンダース大付属に居る“みなかみタンカーズ時代の仲間・原 時雨”から事情を聞いて置いて正解でした」

 

 

 

「よし、良くやった。これで、大洗は“アンツィオの秘密兵器はP40()()だ”と思い込むだろう…ああ、気にするな。私は()()()()()()()()()為なら“先輩達が長年貯金して漸く買えた重戦車(P40)”を()()()にしても一向に構わないと思っている」

 

 

 

「“ドゥーチェ(統帥)”!?」

 

 

 

「何水臭い事を言っているんだ。そもそも“大洗は先のサンダース戦と同様に、スパイを我が校へ送り込んで来る可能性が高い”と進言した上で、()()()()()()()()()()を提案したのは御前だろ?」

 

 

 

「はい……」

 

 

 

「そして私は、“此の作戦は勝つ為に必要だ”と判断して御前の提案を採用した。採用した以上、全ての責任は隊長(統帥)たる此の私が取る。だから“マルゲリータ”、後の事は気にせず大洗との試合に集中してくれ。其の為に御前の御母様に()()()()()()()()()を用意して貰ったんだからな」

 

 

 

「はい、“ドゥーチェ(統帥)”!」

 

 

 

次の試合に備え、対戦相手である大洗女子を“油断”させる為の()()が成功したの確かめた隊長・アンチョビは、其の作戦の提案者であり、其れが採用された事に責任を感じている“群馬みなかみタンカーズ”元隊長・大姫 鳳姫…今は、アンツィオ高・戦車道チームの流儀に従い“マルゲリータ”のソウルネームを名乗る少女の心を落ち着かせると、二人は揃って戦車格納庫の奥を見詰める。

 

其の視線の先には、P40重戦車の隣に停車している“アンツィオ高校・もう一つの秘密兵器”…P()4()0()()()()()()()()()()()7()5()()()を装備した戦車の姿が在った。

 

 

 

(第56話、終わり)

 

 

*1
第二次大戦時、イタリア海軍が貨客船・ローマを改造途中、休戦によって未完成に終わった航空母艦・アクィラをモデルにしている。

*2
前回、サンダース大付属へ潜入した際に、嵐が優花里の着替えを盗撮しようとした件については、第33話「実録!突撃!!サンダース大付属高校・舞台裏スペシャルです!(笑)」を参照の事。

*3
勿論本物である。

*4
イタリアの通貨がリラからユーロへ切り替わったのは2002年である。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第56話を御送りしました。

先ず、今回判明した“マルゲリータ”の本名・大姫 鳳姫の群馬みなかみタンカーズ時代の渾名が“姫ちゃん”となっている件について。
此の渾名、「リボンの武者」の主人公・鶴姫 しずかを相棒の松風 鈴が呼ぶ時の渾名である“姫”と被っていますが、これは鳳姫の名前を考えていた時に凄くしっくり来た渾名だった為、敢えて此の渾名にしてありますので、此の点については御了承頂けますと幸いです。

一方、秋山殿と嵐ちゃんの潜入作戦でアンツィオ高に関する情報を得た大洗女子の面々ですが…実は、アンツィオ高校の“秘密兵器”はP40重戦車だけでは無かった!?
しかもP40は大洗女子を油断させる為の“見せ金”!?
更に、“マルゲリータ”とアンチョビの会話の中に出て来た“もう一つの秘密兵器”の正体とは、一体!?
そして“マルゲリータ”が仕掛けた罠に掛かってしまった大洗女子の運命は!?

其れでは、次回をお楽しみに。

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