戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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2021年最後の投稿になります。
早速ですが、どうぞ御覧下さい。

…さあ皆、今年のクリスマスはガルパン最終章第3話の発売日だ。
貯金は充分か?(迫真)



第57話「此れから、カバさんチームを訪問します!!」

 

 

 

此処は、大洗女子学園・学園艦の艦橋近くに在る住宅街。

 

此の日は学校が休みで、更に梅雨の合間の快晴だった為、日差しの眩しさと暑さを感じる中、私は西住 みほ先輩と野々坂 瑞希と共に住宅街の路地を歩いていた。

 

今、私達は明日に迫った“戦車道全国高校生大会第二回戦”の対戦相手であるアンツィオ高校の“秘密兵器・P40重戦車”の情報を収集する為、第二次世界大戦中のイタリア軍に関する資料を持っている“カバさんチーム”の車長・エルヴィン先輩がチームメイトの歴女達と共に住んで居るシェアハウスを目指している。

 

此れは、角谷生徒会長によれば「最近、学園の生徒数が減少している影響で学園艦の住民の数も減って空き家が増えているから“学園生徒3人以上が一組になって学園長に願い出れば、学園艦内の空き家を『シェアハウス』として()()()()()()()に居住する事が出来る”って規定を作ったんだよ。そうする事で学園艦内の空き家を減らせるからね♪」との事で、“カバさんチーム”のメンバー四人も此のルールを利用して空き家になった民家で共同生活をしているのだ。

 

すると突然、住宅街から()()()()()()が連続して響き渡る。

 

 

 

「えっ…あれっ!?」

 

 

 

其の時“カバさんチームのシェアハウス”の場所が書かれた地図を見乍ら路地を歩いていた西住先輩は、()()()()()に驚いて不安気な声を上げつつ周囲をキョロキョロし乍ら見回していたが、其処へ瑞希が穏やかな声で話し掛ける。

 

 

 

「先輩、あれは()()()()()の音ですよ。懐かしいな~♪」

 

 

 

「野々坂さん…()()()()()って、何なの?」

 

 

 

瑞希の言葉に対して西住先輩が首を傾げ乍ら問い掛けると、瑞希は詳しい説明を始めた。

 

 

 

「“群馬みなかみタンカーズ”が出来た頃、当時のチームは御金も戦車も無かったし、明美さんの方針で“一年目はメンバーの体力作りと戦車の基礎的知識や技術の習得に専念し、戦車に乗るのは二年目から”と決まっていたので、入団したばかりの私達の為に明美さんやコーチ達が手作りで“戦車乗員の動作を練習出来る機械”を作ってくれて、私達は其れを使って一年間基礎練習をしたんです。()()()()()()()()()()()()で、戦車砲の砲弾装填作業の動作を練習する為の機械なんです」

 

 

 

すると西住先輩が「其れって、“シミュレータ”とかじゃ無くて?」と瑞希に問うと、彼女はこう答えた。

 

 

 

「一般的な“シミュレータ”とは少し違っていて、コンピューターとかビデオ動画とかは一切無い()()()()()()()ですよ。でも明美さんは今でも“此の練習法が大事なの”と言って、此れ等の練習用機械をタンカーズで使い続けています」

 

 

 

そして瑞希は、“戦車道初心者の小学生達に()()()()()()()()()()()使()()()()について「此れは明美さんが常に言っている事なんですけどね」と前置きしてから話し始めた。

 

 

 

小さい頃からコンピューターを使わせたら、本人もコンピューターみたいに感情が乏しくなり、“他人の心や物を大事にしない人間”に育つわ。だから戦車道も最初は()()()()()()()()()()()()()()を使って練習した方が他人の心や物を大事にする()に育って行くの…其れに()()()()使()()()()()()()()()()()()()()の代表格だしね。

 

 

 

すると瑞希が語った“我が母親(明美)の言葉”に感動した西住先輩が明るい声でこう語る。

 

 

 

「凄いね、明美さん…あっ、じゃあ“此の音”の先に、“カバさんチーム”のシェアハウスが?」

 

 

 

「はい!実は此の間、カエサル先輩に“今の話”をしたら『ウチも()()()()()が欲しい!』と言って来たので、先日私と舞の二人で組み立てに行ったんです。そうしたらカエサル先輩は毎日欠かさず練習しているそうですよ」

 

 

 

西住先輩からの問い掛けに、瑞希が笑顔で答えると先輩が「良かった!じゃあ野々坂さん、道案内を御願いします」と答えたので、瑞希は「はいっ!」と元気一杯な声で返事をすると私達の先頭に立って歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

「此処も“ソウルネーム(魂の名前)”なんだ……」

 

 

 

此れが“カバさんチーム”のシェアハウスに辿り着いた時の西住先輩の第一声だった。

 

私達の目の前には、二階建てで風情有る和風建築の民家が建っており、其の門には“カバさんチーム”メンバーの表札が有るのだが、どの表札も其々の“ソウルネーム(魂の名前)”で表記されているのだ。

 

そんなシェアハウスの前では、今だに“大きな金属音”が連続して響いている為、カエサル先輩による“装填練習機を使った砲弾の装填練習”は続いているらしい。

 

そうしている内に、私達は玄関前に進んでから西住先輩が「御免下さーい!誰か居ませんかー!?」と呼び掛けると……

 

 

 

「「「いらっしゃい」」」

 

 

 

玄関が開いて“カバさんチーム”メンバーの内の三人…エルヴィン・左衛門佐・おりょう先輩が挨拶してくれた。

 

 

 

 

 

 

「御茶、入ったよ」

 

 

 

「「『有難う御座います』」」

 

 

 

挨拶の後、居間へ通された私達三人は畳の上に敷かれた座布団に座って左衛門佐・おりょう先輩と他愛無い話をしていると、遅れてやって来たカエサル先輩が冷たい御茶を持って来てくれたので西住先輩と私達は御礼を述べる。

 

其処へ、エルヴィン先輩が“第二次世界大戦中のイタリア軍に関する資料”を持って居間へ入って来た。

 

 

 

「P40の資料は余り無いけど……」

 

 

 

資料の内容について済まなそうに語るエルヴィン先輩だが、西住先輩は机に置かれた資料の数を見て「こんなに沢山!」と感嘆する。

 

すると西住先輩の隣に座って居る瑞希が「あっ、私も少しですが日本語の書籍を持って来て居ますので、比較して見て下さい」と、自分のリュックサックから取り出したイタリア軍関係の書籍を並べて見せた処、左衛門佐先輩が「気が利くね、“ののっち(瑞希)”」と褒めたので、瑞希は笑顔で「はい!」と答えた。

 

其処へ、エルヴィン先輩が持ち出した資料を見たおりょう先輩が「英語じゃ無いぜよ!?」と驚きの声を上げると、西住先輩も不思議そうに資料の表紙を眺め乍ら「イタリア…語?」と呟いた時。

 

 

 

Le Forze armate italiane(レ・フォルツェ・アルマーテ・イタリアーネ)(イタリアの軍隊) 」

 

 

 

何と、カエサル先輩がエルヴィン先輩が持って来た資料のタイトルを流暢に喋って見せたのだ。

 

 

 

「「「「『えっ!?』」」」」

 

 

 

カエサル先輩の“意外な特技”に、其の場に居た全員が驚愕する。

 

更に、左衛門佐先輩が「イタリア語、読めたんだ!?」と驚きの声を上げ、おりょう先輩も「ビックリぜよ!?」と叫んだ処、当のカエサル先輩は驚いている私達に対して少々呆れ顔を浮かべつつ、こう言ったのだ。

 

 

 

「イタリア語・ラテン語は読めて常識だろ?」

 

 

 

此れには左衛門佐先輩が「常識じゃ無い!」と叫ぶと、瑞希も呆れ顔で「其れはもう“()()じゃ無くて()()()の領域”ですよ!?」とツッコんだ為、カエサル先輩は困惑してしまった。

 

 

 

 

 

 

…そんな事があった、約三十分後。

 

 

 

「図面やスペック(性能)は分かるから、コンビニコピーにしよう。キリが無いけどこんな所かな?」

 

 

 

「イタリア語・ラテン語は読めて常識」騒動が落ち着いた後、カエサル先輩はエルヴィン先輩が持ち込んだ資料の中からP40重戦車に関するデータの主な内容を翻訳した上でメモ書きした後、其れを西住先輩に手渡した。

 

其れに対して、西住先輩が「如何も有難う」と御礼を言った後、私と瑞希も「『有難う御座いました』」と御礼を言った時、カエサル先輩は右手で頬杖を突き乍らこんな事を言ったのだった。

 

 

 

「本当は、()()()()()()がアンツィオ高に居るから訊いてみる方が早いんだけどな」

 

 

 

すると左衛門佐先輩が「そんなの居たのか!?」と驚きの声を上げ、おりょう先輩も「初耳ぜよ!?」と言った時、瑞希も驚愕の表情でこう叫んだのだ。

 

 

 

()()()()だけじゃ無かったんだ!?」

 

 

 

「「「えっ!?」」」

 

 

 

()()()()()に、エルヴィン・左衛門佐・おりょう先輩が驚愕の叫びを発するとカエサル先輩も「あれ?若しかして野々坂や原園も()()()()がアンツィオ高に居るのか?」と訊いて来た…そう。“カバさんチーム”のメンバーは、先日生徒会室で行われた「全国大会・対アンツィオ高校戦対策会議」に出席して居ない為、其の時私や瑞希達が語った“姫ちゃん”こと“元・群馬みなかみタンカーズ隊長・大姫 鳳姫(おおひめ ほうき)”の話を知らないのだ。

 

 

 

『えーと、実は……』

 

 

 

と言う訳で私は、カエサル先輩の質問に答える形で、嘗てはみなかみタンカーズ時代の仲間であり、今はアンツィオ高に居る鳳姫について一通り説明したのだった。

 

 

 

「へえ…みなかみタンカーズで原園や野々坂達を率いて、去年の戦車道全国中学生大会でチームを準優勝に導いた()なんだ」

 

 

 

私の説明を聞いたカエサル先輩が感心した表情で答えると、私はみなかみタンカーズ時代の“姫ちゃん(鳳姫)”の姿を思い出しつつ『はい…彼女はどっちかと言うと、“チーム全員の力を合わせて勝つ”って考え方だったかな?』と語ったが、其処へ瑞希が“腹黒い笑み”を浮かべ乍らこんな事を言い出す。

 

 

 

「其れに対して嵐は“一匹狼”だったから、“姫ちゃん(鳳姫)”とは何時もぶつかって居たよね?」

 

 

 

『いや…まあ、確かに』

 

 

 

瑞希からのツッコミを受けた私は、当惑し乍ら当時を振り返っていると、エルヴィン先輩が意外そうな声で、私に話し掛けて来る。

 

 

 

“一匹狼”…私が知ってる原園のイメージとは一寸違うな?」

 

 

 

『はい……』

 

 

 

エルヴィン先輩から“私のイメージ”の()()について指摘された事で、私は関東中の戦車道乙女から“みなかみの狂犬”と呼ばれていた当時の事を思い出して沈んだ気持ちになっていると、其れに気付いた瑞希が「まあ、此の()も色々と苦労しましたから」と語った後、西住先輩に目配せをして話題を変える様に御願いしてくれた。

 

そして、今度は話題を振られた形になった西住先輩がカエサル先輩に質問をする。

 

 

 

「其れでカエサルさんの御友達は、どんな方なんですか?」

 

 

 

「原園や野々坂の友達(鳳姫)と同じだよ。小学校の同級生で、ずっと戦車道やってる()だ」と語った上で、「実は丁度西住さん達が来た時、其の友達からSNSで“明日の試合前に、会いに行くからね”って連絡が来たんだ」

 

 

 

西住先輩からの質問に、カエサル先輩が笑顔で答えていると、エルヴィン先輩が少し不満気な表情で「そんな情報源が有るなら、最初から訊けば良かったのに~」とカエサル先輩に問い掛けたが、其れに対して彼女は“情報収集に友達を使わなかった理由”を述べた。

 

 

 

「いや、()()()()()()()()()正々堂々と情報を集めたいな、私は」

 

 

 

すると、其の言葉を聞いたおりょう先輩が感心した表情で「成程。“友情は友情、試合は試合”ぜよ」と語ると、西住先輩も笑顔で「“ライバル”ですか…羨ましいです!」とカエサル先輩に答えた途端、おりょう先輩がこんな“返し”をして来た。

 

 

 

「じゃあ、“坂本龍馬と武市半平太”!」

 

 

 

其れに続いて、エルヴィン先輩が「“ロンメルとモントゴメリー”!」と返すと、左衛門佐先輩は「“武田信玄と上杉謙信”!」と返して来る。

 

此処で、私はふと『あれ…此れって“ライバル”をテーマに、“先輩達の得意分野”に沿った内容で言い合っている?』と心の中で思っていると、瑞希迄が「なら私は、“乃木希典とアナトーリイ・ミハーイロヴィチ・ステッセル”!」と返して来た。

 

そんな彼女達の掛け合いを聞き乍ら、私は呆れ顔を浮かべつつ『やれやれ…幕末の土佐藩の志士と第二次世界大戦時の北アフリカ戦線、戦国時代の川中島合戦に日露戦争の旅順攻防戦か』と小声で呟いて居ると……

 

 

 

「“ミハエル・ヴィットマンとジョー・エイキンス”!」

 

 

 

『はあっ!?』

 

 

 

何と、西住先輩が参戦して来たのには驚いた…しかも“第二次世界大戦の戦車兵ネタ”で。

 

 

 

おまけに、其の一言でカエサル・左衛門佐・おりょう先輩は一斉に西住先輩を指差して「「それだ!」」と叫ぶわ、此の()()の意味を知っている第二次世界大戦ファンのエルヴィン先輩は腕組みし乍ら「うんうん」と頷くわ、瑞希に至っては感心した表情で拍手をしていた…但し、此処で“西住先輩の()()の意味が分からない”事に気付いたおりょう先輩が、困り顔で呟く。

 

 

 

「…()()()()()って、誰?」

 

 

 

と言う訳で、私が“おりょう先輩からの問い”に答える事にした。

 

 

 

『第二次大戦後半、ノルマンディー上陸作戦後の西部戦線でドイツ武装SSの戦車エースだったヴィットマン大尉の乗ったティーガーⅠ重戦車を仕留めたとされる英陸軍のシャーマン・ファイアフライに乗っていた砲手がエイキンスですね*1

 

 

 

おりょう先輩の問いに答えると、彼女は「成程」と納得した表情で頷く一方、瑞希も其の事を思い出したのか、こんな事を言い出した。

 

 

 

「そうだった。西住先輩、実は“秋山先輩並みの()()()()()だったんだ…先輩、御免なさい」

 

 

 

瑞希が西住先輩が出した“ライバルネタ”から、()()()()()()()()を言ってしまったので先輩に詫びた処、彼女が笑顔で「大丈夫だよ。気にしてないから」と答えた直後、瑞希は私の姿を見て心配気な表情で話し掛けて来た。

 

 

 

「如何したの嵐、急にブルブル震え出しちゃって?」

 

 

 

そう…実は私、西住先輩が出した“ライバルネタ”の説明をした直後、“或る事”に気付いて恐くなってしまったのだ。

 

其の事を知らない皆が、心配気な表情で見詰める中、私は“震え出した理由”を静かな声で告げた。

 

 

 

『御免なさい、カエサル先輩。私も“正々堂々”とやる心算が、秋山先輩と一緒にアンツィオ高へ潜入する破目に……』

 

 

 

しかし、私の告白を聞いたカエサル先輩はキョトンとした表情で「何だ、そんな事で震えていたのか?」と話し掛けると、西住先輩も「大丈夫だよ原園さん、戦車道では対戦相手をスパイする事自体は問題無いし」と言ってくれたので、呆気に取られた私は目を点にした儘固まってしまった。

 

そして、ふと気付くと私以外の全員が固まっている私の姿を見て、込み上げてくる笑いを必死になって堪えているのに気付いた……

 

 

 

 

 

 

こうして、私の“取り越し苦労”が原因で起きた()()が落ち着いた後、今度は瑞希がイタリア語で書かれた“イタリア軍の書籍”を読み乍ら、こんな事を語り出した。

 

 

 

「でもエルヴィン先輩が持って来られたイタリア軍の資料、充実していますけど…()()()()()()について書いた物は見当たらないなぁ」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

瑞希からの指摘に、イタリア軍の資料の持ち主であるエルヴィン先輩が当惑しているのを見た私は、瑞希が言った()()()()()()の事を思い出すと、瑞希に向かってこう問い掛ける。

 

 

 

『“ののっち(瑞希)”、其れは若しかして…“レオネッサ”?』

 

 

 

「うん。“姫ちゃん(鳳姫)”…じゃ無くて、大姫さんが一番好きだった話」

 

 

 

瑞希は私からの問い掛けに答えた後、自分のリュックサックから日本語で書かれた一冊の“同人誌”を取り出すとエルヴィン先輩に渡す。

 

同人誌のタイトルは、「イタリア軍最強・幻の機甲師団“レオネッサ”」である。

 

そして、エルヴィン先輩は同人誌を受け取るとパラパラとページを捲って内容を確かめた時、()()()()()に気付く。

 

 

 

「此の本に写って居る戦車はⅣ号戦車G後期型だけど、“乗員が着て居る軍服”がドイツ軍の物じゃ無い!?」

 

 

 

するとエルヴィン先輩に続いて、瑞希が持ち込んだ同人誌を読んだカエサル先輩も考え込み乍らこう答える。

 

 

 

「如何やらドイツ製戦車を装備したイタリア軍・機甲部隊の本みたいだが…本当にこんな“部隊”が有ったのか?」

 

 

 

すると、瑞希が小さく頷いてから皆に向かってエルヴィン・カエサル先輩が抱いた疑問の答えを説明した。

 

 

 

「本当に有ったんですよ。第二次世界大戦の後半、イタリアが降伏する直前のイタリア軍に短期間だけ存在した()()()()()()()()()()()()()()()()()が…其の機甲師団は“レオネッサ”と呼ばれていました」

 

 

 

「「「「な…何だって!?」」」」

 

 

 

“ドイツ製戦車を装備したイタリアの精鋭機甲師団”と言う話に、“カバさんチーム”の先輩方が驚いている中、西住先輩も「私もそんな話を聞くのは初めて」と瑞希に問い掛けると、彼女は皆に向かってこう告げたのだった。

 

 

 

「じゃあ、此れから“レオネッサ”がどんな部隊だったのか、其の歴史を“群馬みなかみタンカーズ”のコーチが当時小学生だった私達に話したのと同じやり方で話しますね」

 

 

 

そして瑞希は、“()()()()()()()()()()()()()”の様な語り口で“ドイツ製戦車を装備したイタリア軍機甲師団・レオネッサ”の歴史を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

1943年5月13日。

 

1941年2月のドイツ・アフリカ軍団の登場から2年以上に渡り、北アフリカ戦線で連合軍と戦い続けて来た北アフリカ方面のドイツ・イタリア枢軸軍はチュニジアのボン岬で降伏し、其れと共にイタリア陸軍の“虎の子部隊”として北アフリカで戦った「チェンタウロ」「アリエテ」「リットリオ」の三個機甲師団は壊滅しました。

 

其の少し前から、“北アフリカの次は、連合軍によるシチリア島・そしてイタリア本土上陸作戦が行われる”事が確実視される中、戦争継続を決めた統帥・ムッソリーニ率いるイタリア政府は、迫り来る“本土決戦”に備えた防衛体制の再建を急いでいました。

 

特に、北アフリカ戦線で失った機甲師団の再建は“敵上陸部隊を水際で叩き、首都ローマを始めとする本土防衛を担う”為にも急務とされていましたが…当時のイタリア軍には、必要な人員と戦車を始めとする装備が不足していたのです。

 

其処で、ムッソリーニを始めとするイタリア政府・軍上層部は“新たな陸軍機甲師団編成までの繋ぎ”として、当時の世間に広まる厭戦気分に反して依然高い士気とファシズム体制への強い忠誠心を維持していた“第四の軍隊”・ファシスト国防義勇軍(以下、MVSNと表記)・通称“黒シャツ部隊”から人員を集めて“新たな機甲師団”を編成する事にしました。

 

彼等“黒シャツ部隊”は正規軍では無いものの、対空砲部隊や予備兵力としてイタリア陸軍の各師団に一個連隊が配属されており、既に北アフリカやロシア戦線で実戦経験を積んで居た為、新たな機甲部隊の人員を集めるのに打って付けだったのです。

 

 

 

しかし“黒シャツ部隊”は、此れ迄戦車処か装甲車の運用経験すら無く、更に当時のイタリアの乏しい国力では、機甲師団創設に必要な戦車等の装備を調達する事すら儘成りません。

 

其処でムッソリーニは、ファシスト党書記長カルロ・スコルツァを秘密裏にドイツに派遣し、親衛隊(SS)長官ハインリヒ・ヒムラーと会談し、彼の指揮下にある“武装親衛隊(SS)”所属の武装SS装甲師団から“機甲師団創設に必要な装備と訓練を指導する人員”を借りる約束を取り付ける事にしたのです。

 

之に対して、ドイツ側は“或る思惑”から此の申し出を受ける事にしました。

 

実は、当時ヒトラーは敗戦に向かうイタリアが裏切る可能性を懸念しており、水面下で“ドイツ軍によるイタリア占領作戦”を計画して居たのです。

 

其の為、ドイツ側にとってムッソリーニの提案は“渡りに船”だっただけで無く“枢軸軍が共同して連合軍を迎え撃つプロパガンダ部隊”としても理想的な存在でした。

 

こうして独伊双方の思惑が一致した結果、ロシア(東部)戦線で大損害を受けてイタリア本国に帰還後再編成中だったMVSNの“レオネッサ”大隊集団が『新たな機甲師団の基幹部隊候補』に選ばれます。

 

早速“レオネッサ”やファシスト青年団からの志願兵を元に、ドイツ軍の装甲師団を参考にした新たな機甲師団の編成が始まり、やがてドイツから戦車や突撃砲等の装備が教官と共に届けられました。

 

そして編成を完了した新たな機甲師団は、“M”(ムッソリーニの略)第一黒シャツ機甲師団「レオネッサ」と命名されて訓練が開始されました。

 

 

 

こうして誕生した機甲師団「レオネッサ」の編成表には、Ⅳ号戦車G後期型12輌を持つ第一戦車中隊、Ⅲ号戦車N型12輌を持つ第二戦車中隊、Ⅲ号突撃砲G型12輌を持つ第三自走砲中隊と、何れもドイツ製戦車と突撃砲で編成された部隊から成る“M”「レオネッサ」戦車集団が有り、此れが師団の中核部隊でした。

 

之に加えて、2個機械化歩兵大隊と1個砲兵大隊で編成された“M”「モンテベッロ」と“M”「タリアメント」大隊集団、2個集団編成で対戦車戦闘にも有効なドイツ製のFlak37型88㎜高射砲を24門装備した“M”「ヴァッレ・スクリヴィア」砲兵団や爆破工兵大隊・混成工兵部隊・支援部隊等が指揮下に置かれていました。

 

此れ等機甲師団「レオネッサ」が装備するドイツ製戦車は、Ⅳ号戦車G後期型とⅢ号突撃砲G型が長砲身の48口径75㎜砲、Ⅲ号戦車N型が短砲身の24口径75㎜砲を搭載しており、今だに実戦配備が進まないイタリア国産の重戦車・P40に匹敵するか其れを上回る火力と装甲を備えている事から、機甲師団「レオネッサ」は事実上“イタリア最強の機甲師団”としての実力を持っていました。

 

実際には、厳しい戦局からドイツ製戦車は編成表に有る定数通り揃っていなかったとも言われていますが、其れでも部隊の士気は旺盛でドイツ人教官の指導の下、迫り来る本土決戦に備えて激しい訓練を続けていました。

 

 

 

しかし…彼等機甲師団“レオネッサ”のドイツ製戦車部隊に、(つい)に出撃の時は訪れませんでした。

 

 

 

1943年7月10日に始まった連合軍によるシチリア島上陸作戦と、其の後の枢軸軍の敗北が決定的な情勢となっていた7月27日の事です。

 

ファシズム大評議会の席上、突然起きた“事実上のクーデター”により統帥・ムッソリーニは罷免され、翌日逮捕されてしまいました。

 

此れに対してヒトラーは、水面下で計画していた“ドイツ軍によるイタリア占領作戦”を発動しましたが、政権を奪取したイタリアのバドリオ将軍は、当初戦争継続を宣言していた為、機甲師団「レオネッサ」はMVSNから陸軍へ所属を変更した上でイタリア陸軍第136機甲師団「チェンタウロⅡ」と改名し、イタリア製の装備を保有する別の戦車・装甲車・自走砲部隊を指揮下に加えて訓練を続けました。

 

しかし9月8日、バドリオ政権は休戦を宣言。

 

首都・ローマはドイツ軍に包囲されます。

 

此れにより、「チェンタウロⅡ」と名称を改めていた「レオネッサ」の将兵はローマ防衛戦には参加せず、進駐して来たドイツ空軍第2降下猟兵師団に装備を引き渡して9月16日に解散・復員しました。

 

こうして、ドイツ製戦車・突撃砲を装備した“イタリア最強の機甲師団”・「レオネッサ」は短い歴史を閉じたのです。

 

 

 

其の後、監禁中ドイツ軍に救出された統帥・ムッソリーニが北イタリアで建国した「イタリア社会(R.S.I)共和国」に於いて、「レオネッサ」は再び機甲集団として編成されますが、其の装備は旧式のイタリア製M13・M14・M15中戦車やCV33・CV35型豆戦車、そしてAB41・AS43装輪装甲車が主力で、Ⅳ号戦車G後期型やⅢ号戦車N型・Ⅲ号突撃砲G型は一輌も無く、往時の戦力には到底及ばない物でした…こうして「レオネッサ」の歴史は第二次世界大戦の終結と共に終わりを告げたのです。

 

 

 

 

 

 

こうして、瑞希が「機甲師団・“レオネッサ”の歴史」を語り終えた時、“カバさんチーム”の歴女先輩達は、皆泣いていた。

 

先ずエルヴィン先輩が「一度も戦え無かったとは、さぞ無念だっただろう……」と泣き顔で呟くと、カエサル先輩も涙を浮かべ乍ら「まさか、こんなに悲しい話だったとは……」と呟いてから、二人共声を詰まらせる。

 

更に、左衛門佐先輩がハンカチで涙を拭き乍ら「一度も戦う事無く開城か……」と“戦国時代好き”らしい表現で感想を述べると、“幕末好き”のおりょう先輩がこんな事を言い出した。

 

 

 

「一度も戦う事も無い儘部隊が解散…或る意味白虎隊や二本松少年隊よりも惨いぜよ!?」

 

 

 

『あの…仮に戦ったとしても、段違いの戦力を持つ敵相手に壊滅するだけなのは共通ですから、“レオネッサ”は戦わずに済んだだけマシだったと思うんですが?』

 

 

 

私は、“流石に、おりょう先輩の言う事は一寸極端過ぎる”と思ったので、言葉を選び乍ら反論した処、歴女先輩達みたいに泣いては居なかったが悲し気な顔で瑞希の話を聞いて居た西住先輩も「うん…皆が戦いで死んじゃうよりは良かったと思う」と呟いたので、おりょう先輩も「…そうだな、一寸言い過ぎた」と反省していた。

 

其処へ瑞希が「まあ、大姫さんは御母様がアンツィオ高OGだし、学園祭の時に隊長のアンチョビさんに出会った時から彼女を慕っていますから、きっとカエサル先輩の御友達同様、私達相手でも本気で戦って来ると思うので、私達も締めて掛からないと不味い事になると思います」と告げた処、私を含めた全員が「『うん』」と呟き乍ら頷いた。

 

 

 

此の後、私達は午後から学園の戦車道演習場に集合し、試合前最後の戦車道の練習に臨む事になる…私達は「アンツィオ高と“姫ちゃん(鳳姫)”が仕掛けた罠」に今だ気付いていない。

 

 

 

(第57話、終わり)

 

 

*1
但し、近年の研究ではエイキンスでは無く、彼の近くに居たカナダ陸軍のラドリー・ウォルターズ少佐(車長)が乗っていたシャーマン・ファイアフライの方が射距離が近かった事を理由に、彼がヴィットマンの乗ったティーガーⅠを仕留めたとする研究者も居る。因みにヴォルターズ少佐は第二次大戦終結迄に18輌の敵戦車を撃破したとされる連合軍有数の戦車エースの一人。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第57話を御送りしました。

今回瑞希が語っていた「第二次世界大戦末期のイタリア軍に存在したドイツ製戦車・突撃砲を装備した機甲師団“レオネッサ”」の話ですが、此れは実話です。
今回、此の話を書くに当たって同人誌「写真集レオネッサ機甲師団/付録:P40型重戦車」(吉川 和篤/著、伊太利堂/発行、2017年)と「Benvenuti! 知られざるイタリア将兵録・上巻」(吉川 和篤/著、イカロス出版/刊、2018年)所収の「第二次世界大戦編4・幻の最強機甲部隊『レオネッサ』」を参照しています。
同人誌の方は現在ほぼ入手不可ですが、「Benvenuti! 知られざるイタリア将兵録・上巻」は割と最近の本ですので入手は比較的容易かと思います。
尚、機甲師団“レオネッサ”の記述内容は二冊ともほぼ同じです。

そして次回、嵐ちゃんと西住殿達・大洗女子学園戦車道チームの面々は対アンツィオ戦前最後の戦車道の練習に臨みますが…此処で大事件が発生!?
一体、何が起きたのか!?

其れでは、次回をお楽しみに。

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