戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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今回は、嵐ちゃん達“ニワトリさんチーム”が“カメさんチーム”に連れられてガルパンおじさんなら御馴染みの“ある御店”へ行きますが…さあ、何処でしょう?
ノーヒントですので御店の名前が気になる方は、是非本編を御読み下さい。
其れでは、どうぞ。
※尚、今回は“実在の国内自動車・バイクメーカーと其の関連会社”が複数登場しますが規約違反にならない様、社名は伏せておりますので如何かご了承下さい。
何故そんな事になっているのかは…読めば分かる(迫真)。



第59話「会長さん、ゴチになります!!」

 

 

 

『ああ…今日は、やり過ぎちゃった』

 

 

 

「嵐…練習中()()()()()()()()、流石に鷹代さんも怒るわよ」

 

 

 

『瑞希…正直、今回は反省してる』

 

 

 

此処は、大洗女子学園・戦車格納庫。

 

私達“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”は、此の日の午後に行った“対アンツィオ高校戦前・最後の練習”を終えて帰り支度をしているのだが…実を言うと、私達は練習中“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”・“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”と共に“或る事件”を起こした結果、先程迄大洗女子学園戦車道チーム・臨時講師を務める大叔母の鷹代さんから説教を受けていた為、他のチームよりも帰りが遅くなったのだ。

 

其の“事件”とは、“アヒルさんチーム”と“カメさんチーム”が練習の一環として行った“模擬戦”に熱中し過ぎて仲間達が砲撃訓練中の射撃場を横切ると言う“重大な危険行為”を犯した為、私達“ニワトリさんチーム”と“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”が彼女達の“模擬戦”を止めに向かったのだが…私達の説得をロクに聞かなかった “カメさんチーム”車長兼砲手の河嶋先輩が私達の説得を聞き入れて停車した“アヒルさんチーム”目掛けて発砲したのだ。

 

処が砲手としては“()()()()()”の河嶋先輩が撃った“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”の37㎜砲弾は、狙った()の“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”を大きく外して…何と私が車長を務める“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の砲塔正面に命中。

 

聖グロとの練習試合に続いて起きた河嶋先輩による“友軍相撃(フレンドリー・ファイア)に激怒した私は弁明しようとする先輩に向かって……

 

 

 

『問答無用!今から地の果て迄追い詰めて、()()()()にして差し上げます!』

 

 

 

と啖呵を切った上で、演習場内を逃げ回る“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”をイージーエイト(M4A3E8)で追い掛け回したのだ。

 

其の結果、事態を知った鷹代さんが西住隊長率いる“あんこうチーム(Ⅳ号戦車D型)”を連れて止めに入ると、私を含む“()()”の関係者全員を戦車格納庫に集めて()問した後、其々の“過ち”を具体的に指摘した上で「御前達、二度と同じ事を繰り返すんじゃないよ!」と叱ったのだった。

 

 

 

そんな事を私が思い出していると、隣に居た菫が「御免ね…私も“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”を追い掛けるのに夢中になっちゃった」と謝罪した後、舞も「嵐ちゃん、ドンマイだよ♪」と元気付けてくれた。

 

更に、良恵ちゃんと瑞希が頷き乍らこう語る。

 

 

 

「そうですよ。元はと言えば、河嶋先輩が又“友軍相撃(フレンドリー・ファイア)”をやったのが原因なんですから…実際、鷹代さんも『河嶋が一番悪い!』と怒鳴っていたじゃないですか?」

 

 

 

「良恵の言う通りよ。其れに、角谷会長も叱られていたじゃない。『リーダーとして、河嶋をちゃんと指導しなかった角谷さんも同じ位悪い!』って」

 

 

 

其処へ菫も「そうそう、あの時会長さんが見せた“()()()()()”は見物だったよね♪」と語るが、私は如何しても納得出来ず『でも…模擬戦で暴走した先輩達(磯辺&河嶋)を止めようとして()()()しちゃったのは私だし』と俯き加減で呟いた時だった。

 

 

 

「ああ、原園ちゃん達♪」

 

 

 

「「『はいっ!?』」」

 

 

 

何と、角谷会長が私達に声を掛けて来たのだ。

 

其れに驚く私達を余所に、会長は済まなそうな声で謝罪する。

 

 

 

「今日は御免ね。私達が模擬戦をやる場所を確かめなかったから原園ちゃん達だけで無く皆にも迷惑を掛けちゃって」

 

 

 

其処へ私の隣に居た瑞希が「勿論、()()()()も反省していますよね?」と問い質すと……

 

 

 

「あの…原園、そして皆、()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 

河嶋先輩が会長の隣に控えて居る小山先輩と名取 佐智子ちゃんの後方に隠れつつ、ブルブル震え乍ら謝罪していた…河嶋先輩、殴ったりはしませんから安心して下さい。

 

其れは兎も角、私達“ニワトリさんチーム”メンバー全員が生暖かい視線を河嶋先輩に向けていると角谷会長がこう告げた。

 

 

 

「其れでね。今日は御詫びとして、原園ちゃん達に()()()()()()()んだけど…良いかな?」

 

 

 

すると私の仲間達が一斉に「「「えっ、本当ですか!?」」」と歓喜の声を上げたのを聞いた私は済まなそうな声で角谷会長に質問をする。

 

 

 

『あの…其れなら、他のチームも誘った方が良くないですか?』

 

 

 

すると小山先輩が小さく頷き乍ら()()を説明してくれた。

 

 

 

「実はね、他のチームにも話をしたんだけど…西住さん達“あんこうチーム”は『今晩学生寮の武部さんの部屋でイタリア料理を作る』って言っていたし、他のチームも其々“戦車道の勉強会”や“明日の試合に向けての作戦会議”とか、後は“()()()()()()()()()”が有るから来れないって」

 

 

 

其の説明を聞き乍ら、私は心の中で『“アヒルさんチーム(バレー部の面々)”は夜でもバレーの練習をするのか…磯辺先輩達、本当に体力が保つのかな?』と“心配”をして居たのだが、此処で角谷会長が説明を続ける。

 

 

 

「と言う訳で、最初は学食を借り切って皆に夕食を奢ろうかなと考えていたんだけど…其れならアタシ達()()()()()()()()()()が在るから、其処へ招待しようかなと思ってね」

 

 

 

すると瑞希・菫・舞の三人が元気良く「「「本当ですか、ゴチになりまーす!」」」と返事をする声を聞いた良恵ちゃんが「原園さん、野々坂(瑞希)さん達は何時も元気が良いですね?」と話し掛けた為、私は憮然とした声でこう答えた。

 

 

 

『全く…あの三人、こう言う事になると“何時も()()”なんだから』

 

 

 

 

 

 

こうして私達は学園を出た後、“生徒会四人組(杏&桃&柚子&佐智子)”の案内で暫く学園艦の甲板を歩いていると、舷側沿いの海が見える道端に建つ一軒の御店に辿り着いた。

 

 

 

「此処だよ♪」

 

 

 

先頭を歩いていた角谷会長が目的地に着いた事を告げると其の御店の正面には「とんかつRestaurant “Cook Fan”」と書かれた看板が掲げられていた。

 

 

 

其れを見た私が『とんかつ専門のレストランですか?』と呟くと瑞希が笑顔で「みなかみ町にも精肉店が営んでいるレストランが在って其処でも美味しいとんかつを食べられるけど、とんかつ専門店は無いから興味が湧きますね♪」と角谷会長に話し掛けたので、私も頷く。

 

すると御店の前を見た菫と舞が語り合っている。

 

 

 

「あっ、御店の前にミニ・クーパーが停まってる。可愛くて素敵だね♪」

 

 

 

「御店も可愛い雰囲気だね♪」

 

 

 

うむ…舞は兎も角、車好きの菫は停まっている車(ミニ・クーパー)の方に興味が湧くのかと思っていると、良恵ちゃんが佐智子ちゃんに何やら問い掛けていた。

 

 

 

「あれ?佐智子、此の御店は何処かで見た事が!?」

 

 

 

「そうだよ。此処のメニューには、良恵の実家で採れた御米や私の実家で採れたキャベツ等の野菜が使われているんだ*1

 

 

 

其の話を聞いた私が“へえ…流石は、実家が農家で従姉妹同士の二人だな”と思っていると、小山先輩も「そうなんだ♪」と二人に話し掛ける中、角谷会長を先頭に皆が店内へ入ると……

 

 

 

「いらっしゃい!」

 

 

 

店内のカウンターに居た壮年の男性が挨拶したので、角谷会長も挨拶すると皆に向かって此の人を紹介してくれた。

 

 

 

()()()()()()()()で、学園艦街の商工会議所の相談役でもあるんだ」

 

 

 

続いて、皆が自己紹介を行っていると瑞希が「店長さんの御名前、“旧日本海軍の装甲巡洋艦(浅間型二番艦)”や“海上自衛隊の補給艦(AOE-423)”と一緒じゃないですか!私は模型好きの父の影響で船が好きなので親近感が湧いちゃいます♪」と喜びの声を上げた為、店長さんは頭を掻き乍ら「そんな事を言われるのは初めてだよ~」と答え乍ら笑っていたが、其処で彼は私に視線を向けると“意外な事”を語り出す。

 

 

 

「でも驚いたな…まさか直之の娘さん()が戦車道大会に出場して、隊長の西住さん達を守り抜いてサンダース大付属に勝つなんてさ」

 

 

 

『えっ…私の御父さん(直之)の事を知っているのですか!?』

 

 

 

店長さんの一言に私が驚きの声を上げると、彼は更に意外な事を話してくれた。

 

 

 

「直之はね、俺の小・中学校の後輩なんだ」

 

 

 

「「「『本当ですか!?』」」」

 

 

 

店長さんの話に皆が驚くと、彼は当時の事を語り始めた。

 

 

 

「うん。直之はね、小学校四年生の頃迄は体が細くて学校も休みがち、其れに両親も小さい頃に亡くしていたからクラスメートによく虐められていてさ…でも大洗女子の戦車道チームの御姉さん達と友達になってから体を鍛え出して勉強も頑張る様になったから、中学卒業の頃には“文武両道のカッコイイ奴”になっていたよ」

 

 

 

そして店長さんは、部屋の奥に置いて有る写真立てを持ち出すと其れを私達に見せた。

 

 

 

「此れ、直之が学園艦内の中学を卒業した時に俺が撮った“直之の記念写真”だよ」

 

 

 

「「「おおっ!?カッコイイ!」」」

 

 

 

店長さんが見せた写真に写っている中学時代の御父さん(直之)の学生服姿を見て興奮する仲間達…まあ、御父さん(直之)は昔からカッコ良かったから♪

 

すると店長さんが再び当時の話を語ってくれた。

 

 

 

「直之は、中学を卒業する少し前から『大洗女子の戦車道チームの皆に恩返しをする為に、戦車の整備士を目指す』って決めていて其処から戦車の整備工場迄作ったんだよな…そんなアイツが亡くなってもう直ぐ十一年。嵐ちゃん、若しかしたら君は御父さん(直之)に導かれて此の大洗へ来たのかも知れないね」

 

 

 

『あっ…そうかも知れませんね』

 

 

 

店長さんの言葉に、不意を突かれた私が戸惑い乍ら答えると其の様子を眺めていた角谷会長が声を掛ける。

 

 

 

「店長さん。其れより注文聞かないと閉店迄話が終わりませんよ?」

 

 

 

すると店長さんも気を取り直して返事をした。

 

 

 

「御免、つい直之の話で懐かしくなってたよ!じゃあ皆さん、御注文を御願いします!」

 

 

 

 

 

 

こうして、店長さんに注文の品を伝えた私達が店内の御座敷に移動してから暫く経つと店員さんが注文した料理を持って来てくれた。

 

そして皆が夕食を食べ始める中、私は角谷会長と河嶋先輩・瑞希と一緒の御座敷に座り、御店で一番人気と言う“カツカレー”を食べ始めたが、ふと『今日の練習で“カメさんチーム( 河嶋 桃 )”を追い掛け回した事』を思い出すと向かい側に座る会長と河嶋先輩に向けて謝罪した。

 

 

 

『御免なさい。今日は練習で先輩方を追い掛け回してしまって……』

 

 

 

すると河嶋先輩が慌てた声で「いや、原園は悪く無いぞ。元はと言えば、私達(カメさん&アヒルさんチーム)が戦車で射撃場を横切ったのが悪かったんだから」と釈明したが、隣に居た角谷会長が河嶋先輩を制すると「如何したの原園ちゃん?何だか元気が無さそうだけど?」と訊いて来た為、私は“今の心境”を告白する。

 

 

 

『はい…私、店長さんから御父さん(直之)の話を聞いた時、今日先輩方を追い掛け回した事と一緒に“群馬みなかみタンカーズでの日々”を思い出して辛くなってしまったんです』

 

 

 

すると私達の隣の御座敷に座って居る小山先輩が「みなかみタンカーズでの日々?」と問い掛けたので、私はこう答えた。

 

 

 

『私…みなかみタンカーズでは毎日勝手な事ばかりやっていたんです。練習は真面目にやって居たけど試合では隊長や副隊長の言う事は()()聞かなかった。何時も“一匹狼”を気取っていて、試合中はチームの作戦は全て無視して()()()()()を頼りに戦っていたし、仲間が狙っていた相手チームの戦車を横合いから撃破する、なんて事も平気でやっていました』

 

 

 

すると河嶋先輩が「えっ!?原園、確かに私は御前の事を“生意気だ”と思った事は有るが西住隊長の指示を無視した事は無いだろう!?」と驚きの声を上げ、同じく小山先輩も「そうだよ原園さん、如何したの!?」と戸惑っている中、角谷会長が珍しく真面目な声で「原園ちゃん、其れ本当なんだろうね?」と問い掛けた処、瑞希が私の代わりに答えた。

 

 

 

「嵐の言う通りです。彼女はタンカーズでは“チームのエース”であると同時に“誰にも縛られない一匹狼(女王様)でした。当時のチームメイトである私達が証人です」

 

 

 

そして瑞希・菫・舞が頷くと佐智子ちゃんが不安気な声で「えっ…原園さん、如何してそんな事をしていたんですか?」と問い掛けたので、私は沈んだ声で答える。

 

 

 

『私が戦車道を始めようと思ったのは戦車道が好きだった御父さん(直之)の影響なのだけど、5歳の夏、両親に“戦車道をやる”って告げた直後に御父さん(直之)が戦車に轢かれて亡くなって…其の上母さん(明美)に無理矢理戦車道を教え込まれた所為(せい)で“()()()()戦車道をやりたいと思ったのか?”が分からなくなったんだ』

 

 

 

私の答えに“生徒会四人組(杏&桃&柚子&佐智子)”が真剣な表情で聞き入っているのを見詰め乍ら、私は更に答え続けた。

 

 

 

『だから“みなかみタンカーズ”に入ってからは()()()()()()()()()()()()()()()()()!”って気持ちが強くて…だから隊長や副隊長の言う事は全然聞かなかった。何故なら私は“みなかみタンカーズ”に入る前から母さん(明美)に戦車道の事を徹底的に教え込まれた結果、試合ではチームの作戦よりも“()()()()()”を信じて戦った方が上手く行くのを体験的に知っていたから』

 

 

 

其の時、河嶋先輩が驚愕の表情で「チームの作戦よりも()()()()()に頼った方が勝てるだと?」と呟くのを聞いた私は、小さく頷くとこう答えた。

 

 

 

『だから…()()()()()()()()()。去年の“戦車道全国中学生大会・決勝戦”で黒森峰女学園・中等部に』

 

 

 

すると小山先輩が心配気な声で「一体、何が起きたの?」と問い掛けた為、私は更に語り続けた。

 

 

 

『あの試合中、私が何時もの様に“直感”で黒森峰(中等部)の側面を奇襲した時、()()()()()()()()()()()が私では無く私達の隊長・大姫 鳳姫(“姫ちゃん”)さんが乗るフラッグ車目掛けて突っ込んで来て“隊長兼フラッグ車同士の戦い”になって…其れで私達の隊長兼フラッグ( 大姫 鳳姫 )車が撃破されてみなかみタンカーズが負けた。私がチームの作戦を無視して勝手に動いたから、大姫さん(“姫ちゃん”)を孤立させてしまったんだ』

 

 

 

其処へ良恵ちゃんが「其の()()()()()()()()()って、此の間戦車喫茶“ルクレール”で会った()() ()()さんですね?」と問い掛けると、私は彼女に向かって頷いてからこう答えた。

 

 

 

『うん…あの時、私は初めて“()()()()()”が通用しない相手に出会った。そして、隊長の大姫(“姫ちゃん”)さんが何時も言っていた“チームプレイ”の意味を漸く知ったんだ』

 

 

 

すると、瑞希が当時を思い出して「そう言えば“姫ちゃん(鳳姫)”は、何時も試合中勝手な事をする嵐を根気良く叱って居たわね」と語ると、菫もこう語る。

 

 

 

「“姫ちゃん(鳳姫)”は、何時もチームの皆に『試合に勝つ為には“チーム一丸となって戦うのが大事だ”』って言って居たもんね」

 

 

 

其処へ瑞希が「其処は、一寸だけ西住先輩に似ているかな?」と私に向かって呟くと、御座敷の外れに座って居る舞が「だから“姫ちゃん(鳳姫)”はアンチョビさんの心意気に惚れて、複数の強豪校から来たスカウトを蹴ってアンツィオ高へ進学したんだよね」と話した処、瑞希が頷き乍らこう語った。

 

 

 

「アンチョビさん…あの人も結構な苦労人だから、“姫ちゃん(鳳姫)”も惚れ込んだんだろうな」

 

 

 

すると、角谷会長が私達に向かって問い掛ける。

 

 

 

「そう言えば、此の間対アンツィオ戦の作戦会議をやった時に野々坂ちゃん達から()()()()の事を聞こうと思っていたんだけど、つい忘れていたから此処で話して貰おうかな?」

 

 

 

此の時、私は角谷会長の言葉の意味が分からず『()()()()?』と問い返した処、会長は「ああ御免。アンツィオ高の隊長さんの事だよ…アンチョビだから“()()()()”♪」と答えたので私は呆気に取られたが、隣に座って居る瑞希は微笑み乍ら「そうでした♪」と呟くと、皆に向かって“アンツィオ高戦車道チーム隊長・アンチョビ”の話を始めた。

 

 

 

「“アンチョビ”と言うのは、アンツィオ高進学後に後輩から付けられたソウルネーム(魂の名前)で、本名は“安斎(あんざい) 千代美(ちよみ)”。()()()()()()出身で小学生から戦車道を始め、小・中学生の全国大会でも活躍して将来を嘱望されていた頃、当時衰退していた戦車道チームの再建に着手したアンツィオ高からスカウトされたのです」

 

 

 

其処へ舞が右手を挙げると、瑞希の話の続きを語った。

 

 

 

「でも、アンチョビさんが入学した当時のアンツィオ高の戦車道は学校が財政難と言う事もあって履修生が数人しか居なくて、翌年戦車道に入って来た後輩もたったの二人(ペパロニと金髪の少女)しか居なかったんだ」

 

 

 

此処で話を聞いて居た角谷会長が「何で?」と問うと、瑞希が其の理由を語った。

 

 

 

「一つは、舞が言った通り“学校が財政難だから充分な数の戦車や燃料等が買えない”からですが、実はもう一つ()()()()()が有って…此れについては菫が詳しいのですが」

 

 

 

『ああ…菫が大好きな“アレ”に(まつ)わる話ね』

 

 

 

「「「?」」」

 

 

 

瑞希の話に私が相槌を打った様子を見た生徒会四人組(杏&柚子&桃&佐智子)と良恵ちゃんが首を傾げていると、瑞希から話を振られた菫が“アンツィオ高戦車道低迷の()()()()()について説明を始めた。

 

 

 

「アンツィオ高の本籍地・栃木県は私達の出身地である群馬と同じく“海無し県”だから、学園艦の母港は静岡県の清水港なのです。だからアンツィオ高には地元の栃木県だけで無く静岡県や其の隣県である愛知県出身の生徒も数多く居るんですが…此れが“()()”だったんです

 

 

 

此処で話を聞いて居た河嶋先輩が「其れが如何したんだ?」と菫に問い質すと、彼女は小さく頷いてから説明を続ける。

 

 

 

「先ず、生徒の主な出身地が三県に跨るから、其々の県民性の違いで“生徒達が一丸となって(まと)まり難い”と言う欠点が有るんです」

 

 

 

其の説明に皆が頷く中、菫は「更に……」と前置きしてから()()()()()を語り始めた。

 

 

 

「アンツィオ高の本籍地・栃木県は“()()()()()”で、県内には自動車メーカーや関連部品メーカー各社の工場や研究所が幾つも在ります。しかも県内には“大手自動車兼バイクメーカー*2が運営する国際サーキット*3”迄在るんです」

 

 

 

此処で、舞が菫に目配せをしてから“話の続き”を簡潔に語る。

 

 

 

「つまり、アンツィオ高の生徒の中には“ライバル関係にある自動車メーカーや関連会社の従業員の子供達”が結構居るんだよ」

 

 

 

二人の言葉に、生徒会四人組(杏&柚子&桃&佐智子)と良恵ちゃんが呆気に取られる中、菫が“更なる話の続き”を語り出した。

 

 

 

「オマケに、アンツィオ学園艦の母港・清水港が在る静岡県と言えば、磐田市に“国内第二位のオートバイメーカー*4”の本社が在り、浜松市には“軽自動車とオートバイで有名なメーカー*5”の本社が在ります。そして愛知県と言えば“()()()に本社が在る日本最大の自動車メーカー*6”の地元で、更に此の会社はさっき言った磐田市と浜松市に本社が在る二つのメーカーとは親密な関係にあるから……」

 

 

 

其処で、菫は一旦言葉を区切ると悲し気な声でこう語った。

 

 

 

「アンツィオ高では、其々の地元(愛知&静岡県対栃木県)に在る自動車・バイクメーカーに勤めている“生徒の保護者”間で“長年に亘る確執”が有ったんです」

 

 

 

其処へ、今度は瑞希が“此の問題に関する重要な証言”をする。

 

 

 

「要は、保護者の勤め先がライバル関係にある“同業者”だから、其の延長線上で“アンツィオ高のPTA”の間にも軋轢が在ったんです。其処へ豊田市出身のアンチョビさんが“学校からのスカウト”と言う形で入学した事で、栃木県出身の生徒の保護者の一部から()()()()をした者が現れたんです」

 

 

 

瑞希の証言に、生徒会四人組(杏&柚子&桃&佐智子)と良恵ちゃんが戸惑う中、再び菫が説明を始める。

 

 

 

「何故なら、アンチョビさんの御父さんは地元・豊田市に本社が在る“日本最大の自動車メーカー”のグループ企業である“国内最大手の自動車部品メーカー*7”の常務さんなんだよ」

 

 

 

其の発言に、佐智子ちゃんが「えっ!?じゃあアンチョビさんは“中々の御嬢様”じゃないですか!?」と驚きの声を上げると、瑞希が頷き乍ら“アンツィオ高にやって来たアンチョビさんの身に起きた事件”について説明した。

 

 

 

「だから栃木県出身の保護者で“日本最大の自動車メーカーのライバル会社”に勤めている人達が根拠も無いのに、“彼女は父親の親会社の手先で、アンツィオ高を乗っ取る気だ!”って陰口を叩いたらしくって…其の影響で罪の無いアンチョビさんが二年生になった時は後輩が二人しか来なかったんだって」

 

 

 

瑞希達の説明を聞いた生徒会四人組(杏&柚子&桃&佐智子)と良恵ちゃんが、皆遣り切れ無い表情を浮かべる中、小山先輩が「其れって…酷いね」と悲し気な声で呟いたので、私もこう答える。

 

 

 

『まあ、アンツィオ高のモデルになったイタリアも1861年に統一される迄は沢山の小国に分裂していたし、今でもイタリアの北部と南部の人達は経済格差を背景に仲が悪いって聞きますから…そう言う所も似てしまっている様なんです』

 

 

 

其処へ、菫が私の話に頷き乍ら“其の後の話”を語った。

 

 

 

「でも、アンチョビさんは諦めずにアンツィオ高の内外で戦車道の活動を続けた結果、保護者達の誤解も徐々に解けて戦車道を応援してくれる様になり、戦車道に対する生徒達の関心も高まって今年は40人の新入生が戦車道に入って来たんだって」

 

 

 

其れに対して、私も菫に向かって相槌を打つ。

 

 

 

『そう言えば“姫ちゃん(鳳姫)”も去年のアンツィオ高の学園祭に来た時、必死になって新入生の呼び込みをやっていたアンチョビさんの姿を見てから彼女と一緒に話し込んで居たよね』

 

 

 

其処へ瑞希が「そうそう…あの頃、“姫ちゃん(鳳姫)”は『みなかみタンカーズで全国の舞台を経験したから、高校戦車道は弱いチームへ入って“其処を何処迄強く出来るのか自分を試してみたい”』って言っていたわ」と当時を振り返っていると、舞も「そんな“姫ちゃん(鳳姫)”にとって消滅寸前だったアンツィオ高・戦車道チームを蘇らせたアンチョビさんは“憧れの存在”なんだよね♪」と語っていた。

 

 

 

そんな二人の会話を聞いた菫は頷くと「実際、今のアンツィオ高・戦車道チームの主力は一年生だけど、皆アンチョビさんの事を“ドゥーチェ(統帥)”と呼んで慕っているんだよ」と語った処、今度は私達の話を聞いて居た河嶋先輩が、頷き乍らも私達に向けて“檄”を飛ばした。

 

 

 

「成程…彼女達が苦労して大会を勝ち上がって来た事は分かったが、だからと言って私達が負けてやる訳には行かないぞ!」

 

 

 

そんな彼女の言葉を聞いた私は笑顔を浮かべ乍ら『河嶋先輩、久しぶりに()()を言ってくれましたね♪』と答えた処、彼女は顔を真っ赤にして「久しぶりとは、何だ!?」と叫んだので、私はキョトンした表情でこう語る。

 

 

 

『いえ、先輩を褒めた心算ですけれど?』

 

 

 

すると河嶋先輩は恐縮した表情で「あっ…済まない。つい()()を言われたと思ってしまったんだ」と弁解した途端、向こうの御座敷に座って居る小山先輩からこんな事を言われたのだった。

 

 

 

「桃ちゃん、“()()()()”は止めよう♪」

 

 

 

其の直後、今度は恥ずかしさで顔を真っ赤にした河嶋先輩の姿を見た全員が笑い出したのは言う迄も無い。

 

 

 

 

 

 

こうして夕食を終えた後、皆で飲み物を飲み乍ら“最近の話題”について語り合って居た時、良恵ちゃんがこんな事を話して来た。

 

 

 

「そう言えば佐智子ちゃん、昨日“気になる事”が有ったんだよね?」

 

 

 

「うん。実は昨日の昼休み中、校舎で西住先輩達(みほ&沙織&華)と擦れ違った時に、“戦車道をやりたい”って先輩達に声を掛けようとした人に出会ったんだけど」

 

 

 

其の話を聞いた私が『如何したの?』と佐智子ちゃんに其の先の話を促した処、彼女はこう語ってくれた。

 

 

 

「其の人は“かなりの人見知り”らしくて、西住先輩達に声を掛けられなかったから私が彼女に『戦車道志望ですか?』と問い掛けたら凄く驚かれてアッと言う間に私の前から逃げ出しちゃったんです。それで私、“何かいけない事をしたのかな?”って気になっていて……」

 

 

 

其の話を聞いた私も気になって『其の人、何か特徴とか無かった?』と佐智子ちゃんに質問した処、彼女は自信無さ気な声で「其れが、長身で長い金髪の人なんだけど瓶底眼鏡で頭には猫耳を着けている“一寸変な人”で…ああそうだ。確か自分の事を“ねこにゃー”って言っていました」と答えた時、瑞希が「“ねこにゃー”?まさかね……」と独り言を呟き乍ら考え込んで居たのを見た私は『如何したの“ののっち(瑞希)”、何か心当たりが有るの?』と問い質したが、彼女は首を横に振り乍ら「いや、多分私の“()()()”だと思うわ」と答えると話題を変えて来た。

 

 

 

「そう言えば会長、此の間の戦車捜索で見つけた“ルノーB1bis”の乗員が決まった事、未だ皆に言って無いですよね?」

 

 

 

『何、其れ?』

 

 

 

突然の“新しい戦車の乗員”の話題に、何も知らなかった私が瑞希に向かって問い掛けた処、角谷会長が笑顔で詳しい内容を語り出した。

 

 

 

「ああ、野々坂ちゃんは私と一緒に其の場に居たから此の事を知っているんだよ…実はね、“ルノーB1bis”は風紀委員に任せる事にしたんだ」

 

 

 

『風紀委員…まさか、園先輩(ソド子)達にですか!?』

 

 

 

角谷会長の話を聞いて“風紀委員”に心当たりが有った私は、毎朝登校時に学園正門で挨拶をしている内に、私の事を“何時も元気の良い挨拶で遅刻をしない”と褒めてくれたのを切っ掛けに親しくなった風紀委員長の園 みどり子(ソド子)先輩の姿を思い出して問い質した処、瑞希が腹黒い笑みを浮かべ乍ら、こう答えたのだ。

 

 

 

「ピンポーン。風紀委員長で三年生の園先輩(ソド子)と二年生の後藤・金春(ゴモヨとパゾ美)両先輩の三人よ♪」

 

 

 

余りにも“まさか過ぎる答え”を聞かされた私は、呆気に取られつつ『大丈夫?』と問い掛けたが、瑞希は「園先輩(ソド子)渋る後輩二人(ゴモヨとパゾ美)に向かって『戦車道を切っ掛けに、一層レベルアップした“ハイブリッド風紀委員”に成れるかも知れない!』と言って励ましていたから、やる気は有ると思うわよ?」と答えた処、其の話を聞いた菫が戸惑い気味にこんな事を言った。

 

 

 

「“ハイブリッド風紀委員”って…トヨタ・プリウスじゃ無いんだし」

 

 

 

其の瞬間、皆が自動車好きな菫の“天然ボケ”に釣られて「「「アハハ!」」」と笑い声を上げる中、ふと私は“戦車捜索で発見されたもう一輌の戦車”の事を思い出し、角谷会長へこう問い掛けた。

 

 

 

『あっ…其れと、紗季が見付けた()()()()()()()()()、あれは如何なったのですか?』

 

 

 

すると、角谷会長に代わって河嶋先輩が複雑な表情を浮かべつつ「実はな…アレは見付かった場所が学園艦内の奥深い場所だったので、原園車輌整備の刈谷さんに頼んで専門のクレーン業者を呼んで貰ってから引き揚げる心算だったんだが……」と答えている途中で、菫が済まなそうな声で“其の結末”を告白した。

 

 

 

「其の前に自動車部の先輩(ナカジマ)達が()()()引き揚げようとして…()()したの」

 

 

 

『ええっ!?』

 

 

 

菫の告白に仰天した私が叫んだ処、角谷会長が笑顔で“其の先の話”を語ってくれた。

 

 

 

「まあ、戦車は甲板を一枚ブチ抜いて落ちただけで済んだんだけど、刈谷さんが酷く怒ってねえ。引き揚げを止めようとした萩岡()ちゃんを除く自動車部の四人(ナカジマ達)を正座させて『御前達、勝手に作業するんじゃない!肝心の大型クレーン車が未だ来ていないんだぞ!』って怒鳴っていたよ」

 

 

 

其処で私は『それで引き揚げ作業は大丈夫なんですか?』と問い掛けた処、小山先輩がこう答えてくれた。

 

 

 

「さっき、刈谷さんから連絡があって『専門のクレーン業者が学園艦に到着したから、明朝から作業に入る』んですって。其れと戦車の方は“相当()()()()()()()()な気がする”から修理したら自動車部が乗りたいって言って来たので、刈谷さんも『其れだけの覚悟が有るなら戦車の引き揚げに失敗した件は勘弁してやる。其の代わり、俺が修理を指導するから覚悟しろよ』って言っていたわ」

 

 

 

其の言葉に、私は『うわ~っ、刈谷さんの指導は厳しいから自動車部の皆は大丈夫かな?』と呟いたが、其処へ菫が「ナカジマ先輩達、本気であの戦車に乗りたがっているから大丈夫だと思うよ」と笑顔で答え乍ら自動車部の話を語り続けた。

 

其の為、私はつい“()()()()()()()()()()()()について聞くのを忘れてしまった…其の結果、後日私は此の戦車の正体を知って呆然となるのだけど、此れは又別の話だ。

 

 

 

こうして生徒会役員達との夕食を終えた翌日、遂に“戦車道全国高校生大会第二回戦”・アンツィオ高校との試合の日がやって来た。

 

 

 

(第59話、終わり)

 

*1
※此れは本作独自の設定です。御注意下さい。

*2
最近飛行機や宇宙ロケットに迄手を出している会社。

*3
茂木町に在る“アレ”。

*4
裏で自動車用エンジンの開発・生産請負もやっている。

*5
某・鈴菌で有名なあの会社。

*6
言わずと知れたあの会社。

*7
※此の会社、実は戦後間もない頃、豊田市に本社が在る日本最大の自動車メーカーの赤字部門だった電装部を独立させて作った為、独立時に一億四千万円の累積赤字があり、其の結果独立直後に社員の30%を人員整理していると言う、まるでアンツィオ高みたいな歴史がある。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第59話をお送りしました。
と言う訳で…今回は、ガルパンおじさんなら御存知のとんかつレストラン“Cook Fan”を舞台に御送りしました。
勿論、実在する方の御店と店長さんとは全く無関係の本作オリジナル設定ですので混同しない様に御願いします(苦笑)。
其れと今回は「アンチョビがアンツィオ高で苦労した話」を菫と瑞希が語っていますが…実はアンツィオ高の生徒が多い栃木・静岡・愛知三県は自動車・バイクメーカーや関連会社の工場が多い所なので「もしかするとアンチョビはこんな苦労もしていたのでは?」と想像しつつ書きました(嵐の語っている様にアンツィオ高のモデルのイタリアも色々ある国ですし)。
勿論、此方も本作オリジナルの設定ですので原作や現実と混同しない様に御願いします…でも、きっとアンチョビは苦労してアンツィオ高をあそこ迄強くしたのは間違い無いと思います。

そして次回、いよいよ戦車道全国大会二回戦が始まりますが…遂に“マルゲリータ”が大洗女子の前に現れると同時に「アンツィオ高が大洗女子に仕掛けた“罠”の正体」が明かされます。
其の時、一体何が起きるのか!?
其れでは、次回をお楽しみに。

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