戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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御待たせしました。
遂に今回、「アンツィオ高が大洗女子に仕掛けた“罠の正体”」が明かされます。
一体、マルゲリータはどんな“策略”を考え付いたのか?
其れでは、どうぞ。

※追記:私、瀬戸の住人はロシアによるウクライナ侵攻を非難します。
 戦車を無駄に歩兵や民兵の餌食にしているんじゃねーよ、プーチン!(割と本音)



第60話「私達に迫るアンツィオ高の罠です!!」

 

 

 

「此れより、“第63回戦車道高校生全国大会”二回戦・Aブロック第二試合『栃木県代表・アンツィオ高校対茨城県代表・大洗女子学園』の試合を開催致します!」

 

 

 

場内アナウンスが流れると、試合会場に集まった観客達の熱気は最高潮に達する。

 

近年の戦車道人気低迷で“戦車道高校生全国大会”も観客席の空席が目立っていたが、今年は様子が違う。

 

一回戦の時も例年より観客数が増えていたが、二回戦では更に増えており、各試合会場の観客席は何処もほぼ満員の状態だった。

 

何故、今大会は例年よりも観客動員数が増えたのだろうか?

 

先ず、在京TVキー局の“首都テレビ”が久しぶりに“大会の()()()生中継”を全国ネットで復活させた事に伴い、同局に於いてニュースや情報バラエティ番組の中で本大会の特集企画を連日放送した結果、例年よりも戦車道に対する世間の関心が高まっていた。

 

首都テレビとしても、開局以来「在京TV局視聴率ランキング万年四位」と呼ばれ続けている原因である「スポーツコンテンツが弱い」と言う弱点を克服するべく今大会の独占放送権を手に入れただけに、二年後に日本で開催予定の“戦車道世界大会”をも視野に入れた“戦車道人気回復”を狙い、長年親密な関係にある“346プロダクション”から“シンデレラプロジェクト”出身アイドルを複数ゲスト出演させる等して、大会のイメージアップを図って来た。

 

其処へ、大会の第一回戦「サンダース大学付属高校(長崎県)対大洗女子学園(茨城県)」で“今年約二十年ぶりに戦車道を復活させた無名校・大洗女子学園”が“高校戦車道四強の一角・サンダース大付属”を破ると言う“大波乱”が起きた結果、首都テレビによる大会生中継や関連番組の視聴率が大幅にアップしただけでは無く、戦車道とは関係の無いドラマや音楽・アニメ等の番組視聴率も上向いて来た。

 

更に、首都テレビの大会生中継を見て戦車道に興味を持った視聴者が“戦車道高校生全国大会・第二回戦”の試合会場へ直接足を運んだ為、大会の観客動員数が更に増加すると言う好循環も生んでおり、戦車道連盟や大会関係者を喜ばせていたのである。

 

 

 

 

 

 

そんな外野の声を一切知らない私・原園 嵐と西住隊長率いる大洗女子学園・戦車道チームは、試合会場の一角に在る待機場所でアンツィオ高校との試合前最後の打ち合わせを行っていた。

 

 

 

「此処がポイントです」

 

 

 

西住隊長が皆の前で地図を見せ乍ら、試合を行うフィールド内のポイントを説明していると、私達の後ろから“聞き覚えの有る声”がした。

 

 

 

「失礼します…こんにちは、西住さん。一寸良いかな?」

 

 

 

「あれ…“那珂ちゃん”?」

 

 

 

私達が後ろを振り返って声がした方へ視線を送ると同時に、西住隊長が相手の名を呼ぶ…何と相手は“大洗のアイドル”・磯前 那珂()()だった。

 

 

 

「良かった、名前覚えていてくれて♪西住さんは丁寧な方だから“磯前()()”とか言われたら“アイドル失格”だもん」

 

 

 

西住隊長に向けて笑顔で丁寧な挨拶をする彼女の姿を見た私と瑞希は思わず「()()()()?」と呼び返した処、怒り顔の本人から「違う、“()()()()()”だから!」と言い返された時、菫が戸惑い気味の声で問い掛ける。

 

 

 

「其れより、那珂ちゃんは何故此処へ?」

 

 

 

其れに答えたのは、意外にも角谷会長だった。

 

 

 

「実はね、那珂ちゃんから“試合前に会って欲しい子達が居る”って頼まれて」

 

 

 

すると那珂ちゃんの後ろから十人の子供達が私達の前に現れて、一斉に「「「今日(こんにち)は!」」」と元気良く挨拶した後、那珂ちゃんがステージでの元気一杯な姿からは想像出来ない“丁寧な口調(言葉)”で子供達の紹介を始めたのだ。

 

 

 

「実はね…此の子達、私の両親が勤めている“児童養護施設”で暮らしている子供達なんだ」

 

 

 

「『えっ!?』」

 

 

 

“那珂ちゃんの御両親の意外な職業”を知らされて驚く西住隊長や私達を余所に、彼女は連れて来た子供達についての説明を続ける。

 

 

 

「此の子達は、皆色々有ってね…“去年起きた()()()()()”で保護者を亡くしたり、家族に虐待されている所を救い出される等して施設へやって来た子供達なんだ。だから皆、普段は笑顔でも心の中ではずっと辛い思いを抱え続けていたの」

 

 

 

「『!?』」

 

 

 

那珂ちゃんが語る“子供達の身の上話”に私と西住先輩達が衝撃を受ける中、彼女は思わぬ事を話した。

 

 

 

「そんな子達がね、此の間のサンダース大付属戦で頑張る西住さん達をTVで見て、皆が必死になって“大洗の御姉ちゃん達、頑張れっ!”って声援を送ったんだよ…そして西住さん達が勝った時、皆泣き乍ら喜んでたの」

 

 

 

すると那珂ちゃんが連れて来た施設の子供達が口々に“当時の事”を喋り始めた。

 

 

 

「うん!御姉ちゃん達、皆凄かった!」

 

 

 

「TVの中継で“サンダース大付属は高校戦車道四天王の一角”だって聞いて居たから『絶対勝てない』と思っていたのに、私達と同じ大洗で暮らしている御姉ちゃん達が勝ったから凄く嬉しかった!」

 

 

 

「だから私達“今日の試合も御姉ちゃん達に勝って欲しい”と思ったから、那珂ちゃんの御両親や施設長先生に御願いして私達が施設に居る皆の代表で御姉ちゃん達の応援にやって来たんだ!」

 

 

 

子供達の声に感動した私達が皆「「『わあ…!』」」と感嘆の声を上げる中、那珂ちゃんが「其れで、私は御父さんに引率を頼まれて此処へ来たの」と事情を説明すると、再び子供達がこんな事を言い出した。

 

 

 

「そうだ、那珂ちゃんも今度()()()があるんだろ?」

 

 

 

「そうそう!明後日、“346プロダクション”主催の音楽フェスティバル“全国ローカルアイドルバトル”の予選に出場するんだよ!」

 

 

 

「其処で優勝したら、“346プロダクション”のプロデュースでメジャーデビュー出来るんだよ!」

 

 

 

子供達の話を聞いた私達が、那珂ちゃんに向けて一斉に「「『おおっ!?』」」と歓声を上げると、何時もはハイテンションな声で話す那珂ちゃんが珍しくオドオドした声で「いや、先ずは予選を突破しないといけないし……」と呟いた時、子供達の中の一人が元気の良い声で喋り出す。

 

 

 

「那珂ちゃん、折角()()()()()()から脱出するチャンスなのに、そんな声じゃあ優勝出来無いよ!?」

 

 

 

「ち…()()()()()()は止めて!気にしているんだから!」

 

 

 

子供達からの“容赦無いツッコミ”に那珂ちゃんが困惑していると、もう一人の子供が西住隊長や私達に向けて“或る御願い”をした。

 

 

 

「そうだ、みほ御姉ちゃんや戦車道の御姉ちゃん達も、那珂ちゃんに“頑張れ”って言ってあげて!」

 

 

 

すると、話を聞いて居た西住隊長が笑顔で那珂ちゃんに「あの…私達も頑張りますから、那珂ちゃんも頑張って下さい!」とエールを送ったので、私や他の仲間達も一斉に那珂ちゃんへエールを送った。

 

 

 

「「『那珂ちゃん、メジャーデビュー目指して頑張れ!』」」

 

 

 

勿論、那珂ちゃんの返事は……

 

 

 

「は、はいっ!那珂ちゃん、メジャーデビュー目指して頑張ります!」

 

 

 

 

 

 

こうして私達との面会を終えた那珂ちゃんと施設の子供達が此の場から立ち去るのと入れ替わりに、一台の装輪車輛が私達の居る待機場所へやって来た。

 

其の車輛は、第二次世界大戦中にイタリア軍が使った車輛の中でも優秀とされる“SPA-ヴィベルティAS42偵察車・サハリアーナ”だ。

 

其のオープントップの車体前面に備え付けられた窓ガラスの上枠に足を掛け、腕組みをして立っている軍服風の制服を着た少女が居た。

 

彼女こそ、今日の対戦相手・アンツィオ高校戦車道チーム隊長“ドゥーチェ(統帥)”ことアンチョビさんだ。

 

でも、あの人はずっと走っていた“サハリアーナ”の上に立って居たけど、だとしたら凄いバランス感覚の持ち主だな…あの車、ずっと未舗装の路面を走っていたから、もしも路面の凹凸で揺れた時に転倒したら大怪我するのに。

 

其処へアンチョビ隊長が「頼もうー!」と“サハリアーナ”の上から声を掛けると、居合わせた角谷会長が手を挙げて……

 

 

 

「ああ、“チョビ子”♪」

 

 

 

其の瞬間、アンチョビ隊長は停車した“サハリアーナ”から飛び降りると「“チョビ子”と呼ぶな、“アンチョビ”!」とツッコミを入れて来た。

 

 

 

『そりゃ対戦相手に向かって変な渾名(チョビ子)で呼んだら誰だって怒りますよ、会長』

 

 

 

私が心の中でボヤいていると、今度は会長の後ろに付いて来た河嶋先輩が……

 

 

 

「で、何しに来た“安斎”?」

 

 

 

其の瞬間、私は心の中でアンチョビ隊長の()()を言った河嶋先輩へ向けて()()()()は止めて下さい!』と悲鳴を上げていると、案の定……

 

 

 

「“アンチョビ”!試合前の挨拶に決まっているだろ!?」

 

 

 

アンチョビ隊長が会長と河嶋先輩を怒鳴り付けると、不敵な微笑を浮かべ乍ら自己紹介を始めた。

 

 

 

「私はアンツィオの“ドゥーチェ(統帥)・アンチョビ”。()()()()()()は?」

 

 

 

そして、アンチョビ隊長が私達に向かって右手の指を差すと、河嶋先輩が「おい、西住」と西住隊長に向かって呼び掛ける。

 

其れに対して、西住隊長は表情を引き締めて「はい」と答えてからアンチョビ隊長の方へ向かって行った。

 

 

 

「ほう、アンタが()()西()()()か」

 

 

 

「西住 みほです」

 

 

 

自信たっぷりな表情で西住隊長に向き合うアンチョビ隊長と、少し緊張し乍ら自己紹介をする西住隊長…すると、アンチョビ隊長が挑発的な態度でこんな事を言って来た。

 

 

 

「フン!相手が“西住流”だろうが“島田流”だろうが、私達は負けない…じゃ無かった、勝つ!」

 

 

 

其の“挑発的な発言”に、私は心の中で『アンチョビ隊長…そんな事を言って居られるのも今の内ですよ!』と呟き乍ら闘志を燃やしていた。

 

でも、此処でアンチョビ隊長は表情を和らげると西住隊長に握手を求めつつ一言。

 

 

 

「今日は()()()()と勝負だ」

 

 

 

「はい。此方こそ宜しく御願いします」

 

 

 

アンチョビ隊長からの“フェアプレイ”精神溢れる言葉に西住隊長も笑顔で答えて、二人が握手をする姿を見た瑞希が「良かった…アンチョビ隊長が西住隊長をもっと挑発していたら嵐が怒鳴り込むんじゃ無いかって心配だったわ」と声を掛けたので、私は呆れ顔で『いや…試合前に騒動を起こす気は無いから』と答えた時。

 

 

 

「あっ、其れで実はな…“()()()()と勝負する”と言った以上、()()()()()()()()()()()()()()()()が……」

 

 

 

『えっ、未だ他に何か言う事が有るんですか!?』

 

 

 

アンチョビ隊長の“妙な発言”に、私が不安を感じた時だった。

 

アンチョビ隊長が乗って来た“サハリアーナ”偵察車の運転手がアンチョビ隊長の傍をウロウロしているの見たカエサル先輩が、運転手の金髪少女に向かって声を掛けたのだ。

 

 

 

「あれ…()()()()()!?」

 

 

 

たかちゃん(カエサル)!久しぶり~♪」

 

 

 

()()()()()、久しぶり!」

 

 

 

するとカエサル先輩と金髪の運転手が嬉しそうに駆け寄ると、両手を組んで勢い良く会話を始めた。

 

 

 

『そうか…“()()()()()”が、此の間カエサル先輩が言っていた“ずっと戦車道をやっている小学校の同級生”なのか』

 

 

 

二人の様子を見た私が、此の間“カバさんチーム”のシェアハウスでカエサル先輩から聞いた話を思い出していると“()()()()()”が、カエサル先輩へ話し掛けて来る。

 

 

 

たかちゃん(カエサル)、ホントに戦車道始めたんだね。吃驚♪ねえ、どの戦車に乗っているの?」

 

 

 

「秘密~♪」

 

 

 

「え~っ、まっ、そうだよね。()()()だもんね♪」

 

 

 

明るい声で語り合う二人の雰囲気が余りにも“百合百合しい”為、私は唖然としたが、其処へカエサル先輩のチームメイトである“カバさんチーム”操縦手・おりょう先輩も呆気に取られた声で「“たかちゃん”って、誰ぜよ?」と呟く。

 

すると同じチームの砲手・左衛門佐先輩が「カエサル(鈴木 貴子)の事だろ?」と的確なツッコミを入れる一方で、同じチームの戦車長兼通信手・エルヴィン先輩は「何時もとキャラが違う……」と呟いて“カエサル先輩の変貌ぶり”に驚愕している。

 

更に、何故か其の場へ紛れ込んでいた瑞希が明るい声で「此れは明らかに“カップル(百合)”ですね♪」と“余計な事”を口走っていた。

 

一方、そんな外野の声を知らない“()()()()()”は、カエサル先輩に向かって語り続ける。

 

 

 

「でも、今日は敵でも私達の()情は不滅だからね♪」

 

 

 

其の言葉を聞いた瑞希が()()()()()を浮かべている中、カエサル先輩も……

 

 

 

「うん!今日は正々堂々と戦おうね!」

 

 

 

“百合百合しい”口調で答えた処、“()()()()()”は「試合の前に会えて良かった。もう行くね、バイバイ♪」とカエサル先輩に別れを告げた。

 

そして、カエサル先輩も「バイバイ♪」と答えて、後ろを振り向くと……

 

 

 

「アッ!」

 

 

 

其処には、“()()()()()”との()()を見ていた“カバさんチーム”の仲間達が意味深な笑顔で待ち受けていたのだった。

 

 

 

「たかちゃん♪」

 

 

 

「カエサルの知られざる一面発見♪」

 

 

 

「ヒューヒュー♪」

 

 

 

おりょう・エルヴィン・左衛門佐先輩の順でカエサル先輩を冷やかす仲間達。

 

其の言葉で“()()()()()()()()()”の一部始終を見られたと悟ったカエサル先輩は「な…何だ、何が可笑しい!?」と悲鳴を上げたが、其の瞬間。

 

 

 

「可笑しく無いですよ、カエサル先輩。其れより先輩も隅に置けないじゃないですか♪同じく()()()()()()()として応援します♪

 

 

 

目の前に現れた瑞希が目を輝かせ乍ら、カエサル先輩を“百合仲間”に引き込もうと思ったのか、鋭い“ツッコミ”を入れて来た。

 

そんな“ツッコミ”を聞かされたカエサル先輩は顔を真っ赤にすると、瑞希に向かってこう言い返したのだった。

 

 

 

「ブルータス…いや野々坂、御前もか!?」

 

 

 

 

 

 

一方、“ひなちゃん”とカエサル先輩の再会で“話”を遮られてしまったアンチョビ隊長だったが、二人の会話を聞き終わったタイミングで“ハッ”とすると、再び西住隊長へ話し掛けて来た。

 

 

 

「ああそうだ…一寸忘れていたんだが、実は“正々堂々と勝負する”と言った以上、此処で言って置かないと行けない事が有るんだ。出来れば此処に原園 嵐も呼んで来て欲しいんだが」

 

 

 

「原園さんも?」

 

 

 

西住隊長が当惑した表情で答えると、アンチョビ隊長は「ああ。実は“其の件”で、原園に話がしたいと言う()が居るんだ」と語ったので、西住隊長が「原園さん。アンチョビ隊長が呼んでいますが、宜しいですか?」と私に話し掛けて来た。

 

其処で、私の他に“ニワトリさんチーム”の仲間達もアンチョビ隊長の前に来て「「『アンチョビさん、御久し振りです』」」と挨拶をした時。

 

突然、私達の目前に背の低い少女が現れた。

 

 

 

「皆、久しぶり♪」

 

 

 

「「『“姫ちゃん”……』」」

 

 

 

彼女こそ“姫ちゃん”こと、元・群馬みなかみタンカーズ隊長・大姫 鳳姫(おおひめ ほうき)だった。

 

しかし彼女は澄まし顔の儘、私達に向けてこう語る。

 

 

 

「ああ…今の私は“姫ちゃん”じゃないわ。アンツィオでは“マルゲリータ”と名乗っているの」

 

 

 

「其のソウルネーム(魂の名前)…“ピザ(ピッツァ)の名前になったイタリアの王妃様”*1の事だから、やっぱり“姫ちゃん”だね?」

 

 

 

“アンツィオでのソウルネーム(魂の名前)”を明かして、“今はアンツィオの一員である”と釘を刺した鳳姫に対して、舞が笑顔で“ソウルネーム(魂の名前)も御姫様の名前だ”と指摘した処、鳳姫は苦笑し乍ら「舞は相変わらずね……」と呟いた後。

 

私達に向けて()()()()()()を告げた。

 

 

 

「…其れより嵐、如何だった?()()()()()は?」

 

 

 

「「『えっ?』」」

 

 

 

“思いも寄らぬ一言”に当惑する私や仲間達を余所に、鳳姫は薄笑いを浮かべつつ問い掛ける。

 

 

 

「其方に居る“オッドボール三等軍曹( 秋山 優花里 )”と一緒に、ウチの学校(アンツィオ高)へ潜入した感想は?」

 

 

 

「「『!?』」」

 

 

 

“秋山先輩と私がアンツィオ高へ潜入した事実を知っているぞ”と告げられて驚愕する私と西住隊長を始めとする仲間達の姿を見た鳳姫は、不敵な笑みを浮かべ乍ら語り続ける。

 

 

 

「貴女達が一回戦の試合前、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のか、私が知らないとでも思っていたの?」

 

 

 

「「『アッ!』」」

 

 

 

鳳姫からの指摘に更なる衝撃を受ける私達。

 

そして鳳姫は“サンダース大付属への潜入作戦を知った理由”を説明した。

 

 

 

「私ね、一回戦が終わった後、()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()。其れで私は“大洗女子は、必ずや我がアンツィオ高にも潜入して来るに違いない”と確信して、“ドゥーチェ(統帥)”に進言したの…“彼女達の潜入作戦を逆手に取って、大洗女子を罠に嵌めよう”ってね」

 

 

 

だが其処で、私は鳳姫の説明に対して浮かんだ“疑問”をぶつける。

 

 

 

『一寸待って!? 戦車道のルールでは“他校へ潜入したスパイが相手校の生徒に捕まった場合、対象となる試合が終わる迄は母校へ帰れない”筈でしょ。だったら何故、校内で私達を捕まえなかったの!?』

 

 

 

すると鳳姫は私を諭す様な声で、こう答えたのだ。

 

 

 

「嵐…私はこう言ったわよ。()()()()()()()()()()って。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のよ」

 

 

 

其の時、“アンツィオ高が仕掛けた罠の正体”に気付いた秋山先輩が鳳姫を問い質す。

 

 

 

「ま…まさか、私達を捕まえなかったのはディスインフォメーション( 欺瞞情報 )を摑ませる為ですか!?」

 

 

 

すると鳳姫は小さく頷いてから「正解です。“オッドボール三等軍曹殿( 秋山 優花里 )”」と答えた後、こう問い返した。

 

 

 

「じゃあ私が貴女達に摑ませたディスインフォメーション( 欺瞞情報 )の正体も分かりますよね?」

 

 

 

此れに対して秋山先輩は「其れは、“アンツィオの秘密兵器はP40重戦車”…でも、イタリアで重戦車と言ったら其れしか有りませんが!?」と半信半疑な声で答えたが鳳姫は再び不敵な笑みを浮かべ乍ら語り出した。

 

 

 

「フフッ…貴女は戦車に御詳しいんですね。確かに、()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()P()4()0()()()()()()()()。でも其処が()()なのですよね」

 

 

 

其の時、話を聞いていた瑞希が驚愕の叫びを発した。

 

 

 

「姫ちゃん…アンタまさか!?」

 

 

 

すると鳳姫は、“我が意を得たり”と言わんばかりの声でこう答えたのだ。

 

 

 

「流石は“ののっち(瑞希)”。貴女なら此処で気付くと思ったわ…菫に舞、そして嵐も思い出したんじゃない?私が一番好きだった“幻のイタリア軍最強機甲師団の話”

 

 

 

「「『“レオネッサ”…アッ!?』」」

 

 

 

鳳姫の話を聞いて“彼女が好きだった話”を思い出した私・瑞希・菫・舞の四人が一斉に“幻のイタリア軍最強の機甲部隊・レオネッサ”の名を叫ぶと、鳳姫は小さく笑い乍ら()()()()()()()()()()()を語り始めた。

 

 

 

「アハハ、やっと気付いた?確かに戦車道をやっている学校ではね、提携校等の関係で“特定の国の戦車”を使う所が多いわ。私達・アンツィオ高が常にイタリア製の戦車を使う様に。でも“他国の戦車を使っては()()()()”と言うルールも無い…貴女達大洗女子学園がそうである様に。だから私は“幻のイタリア軍最強機甲師団・レオネッサ”の故事に倣って“大戦中イタリア軍が使用した、最強の外国(ドイツ)製戦車”を我がアンツィオの“真の秘密兵器”に仕立て上げたのよ。そしてP40は貴女達を油断させる為の“()()()”にした!

 

 

 

「「『!?』」」

 

 

 

其の時…私達の目の前に“Ⅳ号戦車G後期型”が姿を現した。

 

 

 

其れを見た秋山先輩が「そんな…アンツィオに、長砲身のⅣ号が!?」と悲鳴を上げる中、鳳姫は「何を今更?」と小さく呟くと、澄まし顔で語り続ける。

 

 

 

「言った筈です。第二次世界大戦で連合国に降伏する直前のイタリア軍に短期間だけ存在した“ドイツ製戦車を装備した最強の機甲師団・レオネッサ”が装備していた()()()()()()()()()()がこの“()()()()G()()()()”です。だから私達・アンツィオが使っても何の問題も有りません」

 

 

 

『そうか…此れが“アンツィオ・()()秘密兵器”だったのね!』

 

 

 

其処で、漸く“罠の正体”に気付いた私が鳳姫に向かって叫ぶと、彼女は私を正面に見据え乍らこう語った。

 

 

 

「嵐。幾らウチが“強い”と言っても、豆戦車のCV33や短砲身の75㎜砲しか持たないセモヴェンテM41突撃砲にP40では貴女の率いる“ニワトリさんチーム”のM4A3E8(イージーエイト)だけでも荷が重いわ…だから、私は貴女達に勝つ為に“罠”を仕掛けさせて貰った!」

 

 

 

此処で話の中に入って来なかったアンツィオ高のアンチョビ隊長が「済まない…ウチも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思ったから、マルゲリータの提案に乗ったんだ」と申し訳無さそうな声で私達・大洗女子の仲間達に告げると鳳姫が私に向かってこう宣言した。

 

 

 

「嵐、私達に勝ちたかったら私と勝負しなさい!私が乗るⅣ号戦車G後期型を倒さない限り、貴女達大洗女子には“次”が無いわよ!

 

 

 

 

 

 

「「「ど…如何しよう!?」」」

 

 

 

鳳姫の“宣言”後、アンツィオ高のメンバーが其の場を離れてから私達・大洗女子学園戦車道チームはパニック状態に陥っていた。

 

アンツィオ高に潜入して相手の戦力を把握した筈が逆に欺瞞情報を摑まされて、Ⅳ号戦車G後期型と言う“予想外の秘密兵器”迄突き付けられたのだから、全員如何したら良いのか分からなくなったのだ。

 

 

 

「折角此方も長砲身の75㎜砲を見付けたのに、アンツィオに先を越されるなんて……」

 

 

 

五十鈴先輩が困惑気味の声で呟くと、麻子先輩が「試合直前になって()()()()が増えた様な物だな……」とボヤく中、秋山先輩は西住隊長へ「申し訳ありません西住殿、私達の潜入作戦を逆手に取られてしまいました!」と謝罪していたが、この三人は不安を口に出来ただけでも未だ良い方で、他の仲間達は殆どが真っ青な顔で突っ立って居るだけだ。

 

特に、先程迄幼馴染の“ひなちゃん”と旧交を温めていたカエサル先輩に至っては「まさか…“ひなちゃん”達があんな罠を……」と呟いた切り、絶句してしまって居る。

 

そんな仲間達の状況を見た武部先輩が「如何する“みぽりん”!?皆、動揺しちゃているよ!?」と西住隊長へ話し掛けたが、其の間にも“ウサギさんチーム”リーダーの梓が「如何しよう…P40よりも強い戦車が出て来るなんて!?」と皆に向かって語ると、河嶋副隊長が「うわーっ、もうダメだぁ!?」と叫び出す有様。

 

其の様子を心配気に見守っていた優季が縋る様な声で()()の瑞希に「“ののっち(瑞希)”…」と話し掛けると、彼女は沈痛な声で「あの娘(こ)(鳳姫)、昔から“勝つ為には手段を選ばない”処が有ったけれど、此処迄やるとは思っていなかったわ」と伝えると西住隊長も……

 

 

 

「まさか、イタリア製以外の戦車をアンツィオが使うなんて…其れに、あの長砲身のⅣ号戦車に対抗出来るのは“ニワトリさんチーム”のM4A3E8(イージーエイト)しか無いし」

 

 

 

と不安を露にした瞬間…私の心に火が灯いた。

 

 

 

『そうだ!私達のチームで鳳姫が乗るⅣ号戦車G後期型に対抗出来るのは、私のM4A3E8(イージーエイト)だけだ!なら、私が鳳姫を倒すしか無い!』

 

 

 

こうして意を決した私は、皆に向かってこう叫んだ。

 

 

 

『皆、落ち着いて!あの娘(こ)(鳳姫)とアンツィオのⅣ号G後期型は私が倒す!あんな罠を仕掛けた奴等には絶対負けない!』

 

 

 

(第60話、終わり)

 

 

*1
マルゲリータ・ディ・サヴォイア=ジェノヴァ(1851年生~1926年没)の事。サヴォイア=ジェノヴァ家出身の王族で、本家に当たるサヴォイア=カリニャーノ家の当主で従兄のウンベルト1世と結婚後、彼の第二代イタリア国王即位に伴いイタリア王妃となった。彼女は病弱な反面、貴族より庶民の食事であるピッツァ(ピザ)を好み、中でも彼女が気に入っていたレシピが後に「マルゲリータ・ピッツァ(ピザ)」と名付けられた。因みに、二人の間には一人息子が生まれたが、彼が第三代イタリア国王にして1943年7月に統帥(ドゥーチェ)・ムッソリーニを政権の座から引き摺り下ろした内の一人、ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世である。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第60話をお送りしました。

いよいよ今回からアンツィオ高校との二回戦が始まりますが、其の前にまずは那珂ちゃんに登場して貰って“意外な事実”を語って貰いました。
今後、那珂ちゃんもアイドル人生を賭けた“大勝負”が待ち受けていますので、此の話にも御期待頂ければと思います。

そして遂に明かされた、アンツィオによる“罠”の正体。
其れは、何と“イタリア軍が使った事がある外国(ドイツ)製のⅣ号戦車G後期型を「真の秘密兵器」として投入する”事だった!
ガルパンでは、大洗女子やスピンオフ作品に登場する一部の学校を除いて提携校等の関係から特定の国の戦車で戦車道チームを編成する学校が殆どですが、本作のアンツィオ高ではマルゲリータが其の事を逆手に取って“イタリア軍が実際に装備していたドイツ製の戦車を「秘密兵器」として使う”と言う策を編み出し、其の事実を隠して大洗女子を騙す為に、P40を“見せ金=囮”にした訳です。
流石の大洗女子も潜入作戦を此の様な形で返されるとは思っていなかったでしょう。

だが此の時、動揺する仲間達の姿を見た嵐の心に火が灯いた!

一体、大洗女子とアンツィオ高の試合の行方は…と言いたい所ですが、次回は其の前に試合会場内で起きる様々な出来事を“番外編”として御伝えしたいと思います。
と言う訳で回り道になりますが、次回をお楽しみに。

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