戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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今週は突然の腰痛で仕事がロクに出来ませんでした…皆さんも腰には気を付けて下さいませ。

今回は、主人公の嵐と西住殿が登場しないので“番外編”として御送りします。
只、代わりに何故か“意外なキャラ”が登場する事に…如何してこうなった(汗)。
其の代わり、試合会場内の様々な光景を御楽しみ頂ければと思っています。
其れでは、どうぞ。



第60.5話「番外編~全国大会第二回戦・スタートです!!」

 

 

 

此処は“第63回戦車道全国高校生大会第二回戦・「アンツィオ高校(栃木)対県立大洗女子学園(茨城)」”の試合会場である。

 

ファンファーレが鳴り響く中、いよいよ試合が始まろうとしているが、会場内は()()()()()に包まれていた。

 

其の()()を全国の御茶の間に伝えるべく、此の試合の実況を担当する首都テレビアナウンサー・加登川 幸太が軍事研究家兼戦車道解説者・吉山 和則に問い掛ける。

 

 

 

「解説の吉山さん。アンツィオ高が()()()()のⅣ号戦車G後期型を投入すると言う()()()()()()()に打って出ましたね」

 

 

 

此れに対して、長年のイタリア在住経験を持ち、イタリア軍やイタリア製戦車の歴史に詳しい吉山が、興奮を抑えつつこう語る。

 

 

 

「私もイタリア戦車が大好きですから、此の試合にアンツィオ高が()()()()G()()()()を投入した事には驚いています。只、直前のインタビューでアンツィオ高の“マルゲリータ(大姫 鳳姫)”選手が話していた通り、第二次世界大戦(WWⅡ)で降伏する直前のイタリア軍には、Ⅳ号戦車G後期型を始めとするドイツ製戦車とⅢ号突撃砲を保有した機甲師団“レオネッサ”が存在しましたから、アンツィオ高が()()()()()()()()()()()()()んですよ

 

 

 

其れに対して、加登川アナウンサーは頷き乍ら「そうですね。実際、対戦相手である大洗女子学園は“各国戦車の寄せ集め”ですからね」と語り、“アンツィオがドイツ製のⅣ号戦車G後期型を持ち出した事は戦車道のルール違反では無い”事を全国の視聴者に向けて伝えた処、実況席に座って居る()()()()()()()が心配気な表情で実況席のモニターを見て居るのに気付き、優し気な声で彼女に話し掛けた。

 

 

 

「そして本大会のテーマソングを歌っている“トライアドプリムス”のメンバーで、本日は“此の実況のゲスト”として御越し頂いている“渋谷 凛さん”。何か気になる事が有りますか?」

 

 

 

すると、凛は行き成り呼ばれた所為(せい)か戸惑い気味の表情を見せたが、其処は日本を代表する芸能プロ“346プロダクション”の所属アイドルだけに、直ぐ様落ち着いた表情を取り戻すと明るい声で返事をした。

 

 

 

「はい。アンツィオ高が長砲身のⅣ号戦車(G後期型)を持っている事を知った大洗女子の皆が凄く動揺して居るみたいで心配だけど、頑張って欲しいです。実は一回戦のサンダース大付属戦も事務所の皆と一緒に見て凄く感動したので…絶対、彼女達に勝って欲しいな」

 

 

 

そんな彼女に対して、吉山も「渋谷さんの言う通り、此処からは“アンツィオの秘密兵器(Ⅳ号戦車G後期型)”に不意討ちを喰らう格好となった大洗女子がどうやってチームを立て直すのかにも注目したいと思います」と語り、対戦相手である大洗女子学園のファンにも配慮を示す発言をした事で、首都テレビの生中継の視聴者は“アンツィオがドイツ製戦車を持ち出した事は戦車道のルール違反では無い”事を理解して、此れから始まる試合の行方に注目していた。

 

 

 

 

 

 

尤も、此れが“試合会場の観客”だと立場が異なる為、こんな話をする()が出て来る。

 

 

 

「アンツィオの卑怯者!イタリア製()()()()戦車を使うなんて!」

 

 

 

大洗女子学園側応援席の一角では、“アンツィオ高校がドイツ製のⅣ号戦車G後期型を秘密兵器として送り出した”事を知った“あんこうチーム”通信手・武部 沙織の妹で中等部三年の詩織が正面に設置された大型モニターに向かって叫ぶ姿を見た親友兼同級生で沙織と同じチームの砲手・五十鈴 華の従姉・華恋が詩織を諭した。

 

 

 

「でもアンツィオがイタリア製戦車を使うのは“ルール違反じゃない”って実況も言っていたよ?」

 

 

 

すると二人の親友である鬼怒沢 光が「そうそう。(たか)がⅣ号戦車の一輌位、一回戦の対サンダース戦の時に出て来た“M4シャーマンの群れ”に比べたら何でも無いって!」と語って二人を励ますと、今度は三人の共通の親友である若狭 由良が「じゃあ私達もアンツィオに負けない様に、西住先輩や原園さん達に声援を送ろう!」と呼び掛けた処……

 

 

 

「「「任せて!」」」

 

 

 

彼女達の後ろから心強い返事を聞いて、思わず後ろを振り向く四人の大洗女子学園・中等部三年生(詩織・華恋・由良・光)

 

すると其処には、一回戦の時は詩織・華恋・由良・光の四人しか来なかった大洗女子学園の生徒が、今日は中等部・高等部合わせて千人以上も来ており、彼女達が由良の“声掛け”を聞いて一斉に声を上げたのだ。

 

更に……

 

 

 

「「「オーッ!」」」

 

 

 

観客席からは、()()()よりも力強い声援が上がる。

 

実は、大洗女子学園側応援席には中等部・高等部の生徒だけで無く、“あんこうチーム”装填手・秋山優花里の両親である淳五郎・好子夫妻の他、数千人もの()()()()()()()が控えていたのだ。

 

其の一部は秋山夫妻以下、大洗女子学園の地元である大洗町の住人であり、其の中には先程西住 みほ達・大洗女子戦車道チームを激励に訪れた“大洗のアイドル”磯前 那珂と彼女の両親が勤めている“児童養護施設”で暮らしている子供達の姿も在るが、大半は一回戦の対サンダース戦を現地観戦したか首都テレビの生中継で見て“大洗女子のファン”になった人達であり、其れ以外の接点は全く無い人々であった。

 

しかし、観客達は()()()()で声援を送る。

 

 

 

「大洗女子の皆、約束通り来たよ!今日は皆の力でアンツィオを倒そうね!」

 

 

 

此の声を送ったのは、一回戦の時応援に来て試合に勝った直後、詩織達四人に向かって「大洗女子の皆、二回戦でも会おうね!」と言っていた若い社会人の女性*1だ。

 

彼女からの声援に、大洗女子・中等部四人組(詩織・華恋・由良・光)が一斉に「「「「はいっ!」」」」と答えると、観客席に陣取る()()()()()()()から更に心強い声援が飛んで来る。

 

 

 

「アンツィオの秘密兵器なんぞ、P40も長砲身Ⅳ号(G後期型)も纏めてブッ飛ばせ!」

 

 

 

「サンダースのシャーマン(M4)軍団に勝った大洗を舐めんなよ!」

 

 

 

「アンツィオの戦車なんか、皆パスタの具にして食っちまえ!」

 

 

 

生徒よりも遥かに多い一般人からの“気合の入った声援”を次々に送る大洗女子学園・応援団の前に、“二つの秘密兵器”の登場で勢い付いて居たアンツィオ高校の応援団は圧倒されて声が出せなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

そんな中、観客席から少し離れた場所では二つの高校の戦車道チーム隊長と仲間達が試合観戦をしていた。

 

一つは、先日行われた二回戦で群馬県代表のヨーグルト学園に勝利して準決勝進出を決めている聖グロリアーナ女学院のダージリン隊長と彼女が乗るチャーチル歩兵戦車の装填手・オレンジペコで、二人は英国陸軍が偵察用に使用していたフェレット四輪装甲車で試合会場に乗り付けて来たが、今回も英国風のソファーやパーティション等を用意してティータイムを楽しんでいる。

 

もう一つは、一回戦で大洗女子学園と戦ったサンダース大付属高校のケイ隊長と副隊長のナオミ&アリサ、そしてケイからは“シーズー”の渾名で呼ばれているチームの次期エース候補・原 時雨である。

 

彼女達も第二次大戦中に米軍がノルマンディー上陸作戦等で使用したGMC DUKW六輪水陸両用車で試合会場へ乗り付けて来ており、此方は折り畳み式の机と椅子を用意し、更に軽食代わりのKレーションや瓶詰のコーラ等を持ち込んでいた。

 

しかし、両校の生徒達は観客席正面に設置された“28cm列車砲K5・Leopold”の車台部分を模した特製貨車に乗せられた巨大モニターに映し出されている“アンツィオ高校戦車道チームの陣容”を見て驚きを隠せなかった。

 

 

 

「まさか…アンツィオが“イタリア製じゃない戦車(Ⅳ号戦車G後期型)”を投入するなんて」

 

 

 

聖グロの観戦席では、オレンジペコが不安気な声でダージリンに語り掛けると彼女は冷静な声で答える。

 

 

 

「アンツィオも勝つ為とは言え、思い切った手段に出たわね…しかも其の策を考えた“マルゲリータ(大姫 鳳姫)”と言う()は一年生。此れは流石の私も予想外だったわ」

 

 

 

其の声を聞いたオレンジペコは「はい」と答えつつ「ダージリン様が驚く程の策をアンツィオの一年生が打って来るとは……」と心の中で呟いた後、先程観客席正面の巨大モニターに映し出されていた“両チームの選手の様子”を思い出し、こう問い掛ける。

 

 

 

「大洗女子はかなり動揺していた様です。大丈夫でしょうか?」

 

 

 

其の問い掛けに対して、ダージリンも表情を引き締めると自分に言い聞かせる様な声でこう答えるのだった。

 

 

 

「でも此処を凌げなければ先は見えないわ。みほさん達にとっては正念場ね」

 

 

 

 

 

 

一方、聖グロの隣に居るサンダース大付属高校の面々も同じ話題で会話を交わしていた。

 

 

 

「“イタリア軍・幻の最強機甲師団(レオネッサ)”が使っていたⅣ号戦車G後期型をアンツィオ高が投入…確かに()()()だな」

 

 

 

サンダース戦車道チーム・副隊長兼チームNo.2のナオミが真剣な声で呟くと、同じく副隊長兼チームNo.3のアリサが冷や汗を掻き乍ら答える。

 

 

 

「アタシも()()は予想出来なかったわ…アタシが大洗女子戦でやった無線傍受よりも相手が受けるショックが大きいし、何より“()()()()()()”にも引っ掛からない」

 

 

 

すると、二人の会話を聞いて居たケイ隊長が重苦しい空気を振り払うかの様な明るい声で“シーズー”こと原 時雨に向けて声を掛けた。

 

 

 

「流石は“シーズー(時雨)”の同級生にして前・群馬みなかみタンカーズ隊長(大姫 鳳姫)だった()が仕掛けただけの事は有るわね…そして彼女が立てた策を受け入れたアンチョビもガッツが有るじゃない?」

 

 

 

だが、時雨は済まなそうな声でこう答えるのが精一杯だった。

 

 

 

「御免なさい。“姫ちゃん(鳳姫)”から電話が掛かって来た時、つい私が“嵐とオットボール三等軍曹(  秋山 優花里  )の潜入作戦”の事を話しちゃったから、こんな事に……」

 

 

 

処が、更に時雨が語り続けようとした時。

 

 

 

「時雨ちゃ~ん♡其れは気にしなくても良いのよ♪情報を集めて策を練るのは()()()()()()()()()なんだから♪」

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

行き成りの能天気な掛け声と共に、其の場に居たケイ達が仰天していると“()()()()()”に気付いた時雨が叫んだ。

 

 

 

「明美さん!?其れに長門さんや清恵さん迄来ているじゃないですか!?」

 

 

 

そう…此の場に、原園 明美・周防 長門・淀川 清恵の三人が並んでやって来たのだ。

 

 

 

「うん♡今日は嵐と前・隊長の鳳姫ちゃんが対戦するから観に来たのよ♪」

 

 

 

明美があっけらかんとした声でサンダースの面々に答えた後、長門が胸を張ってこう語る。

 

 

 

「一回戦は仕事の都合で来られなかったから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からな!

 

 

 

其の発言に対して、明美はジト目で長門を見詰め乍ら「“ながもん(長門)”は、みほさんが絡むとホントにブレないわね……」と呟くと、明美の秘書である清恵が苦笑いを浮かべつつこんな事を言った。

 

 

 

「だから、今回は私が観戦場所をセッティングしました。聖グロとサンダースの間に私達が陣取る形に……」

 

 

 

其の言葉通り、明美達は右側にサンダース、左側は聖グロに挟まれた状態で正面の大型モニターを見乍ら試合観戦をする形になっており、其の姿を見た聖グロのダージリンとオレンジペコも呆気に取られていたが、此処でダージリンが明美達の中に“見知った顔”が居る事に気付いて声を掛ける。

 

 

 

「あら…貴女はマジノ女学院の“エクレール”隊長じゃなくて?」

 

 

すると、彼女は戸惑い気味の声で答えた。

 

 

 

「ええ…実は明美さんから誘われました。『大会直前の練習試合(大洗女子)大会一回戦(アンツィオ)で貴女達が負けた相手が対戦するのだから、“貴女達のチームの今後の為”にも絶対見るべきよ♪』と言われまして」

 

 

 

其処へ、エクレールの副官格でマジノ女学院戦車道チーム副隊長・フォンデュが詳しい事情説明をした。

 

 

 

「実を言うと、明美さんは大洗女子との練習試合の時にも来て下さり、試合後も負けた私達の事を気遣って下さったのです…結構押しの強い方ですけどね」

 

 

 

そんな二人の話を明美がニヤリと笑い乍ら聞いている中、彼女の傍に居る長門が軽く咳払いをした後、皆にこう告げる。

 

 

 

「皆…実はもう一人、私達と一緒に試合を観に来た人が居るんだ」

 

 

 

すると、明美と長門の間から“妙に背が低くてツインテールの髪形をした”一人の女性が現れると、大声で挨拶をした。

 

 

 

「こんちわ~♪ウチがアンツィオ高で戦車道をやってる“マルゲリータ( 鳳姫 )”のオカン(母親)大姫(おおひめ) 龍江(たつえ)や~♪皆、よろしゅうなあ♪」

 

 

 

行き成り()西()()()()()()を聞かされて呆気に取られる聖グロとサンダースの面々を余所に、先ず明美が龍江を紹介する。

 

 

 

「彼女はね、群馬みなかみタンカーズの前・隊長で、今はアンツィオ高校の“マルゲリータ”こと大姫 鳳姫さんの御母様で、私達は()っちゃん”って呼んでいるの」

 

 

 

続いて長門も「彼女はアンツィオ高OGで私や明美と同学年だったから、高校時代は公式戦・練習試合を問わず何度も激突したライバル同士だったんだ」と説明した処、龍江は当時を思い出したのか憮然とした表情でこう語るのだった。

 

 

 

「でも高校三年間、黒森峰には一度も勝てんかったけどな~」

 

 

 

すると明美が笑顔で“()()()()”を言い出す。

 

 

 

「でも高校戦車道では“カルロ・ベロ(CV33)ーチェの龍江”って呼ばれる程の腕利き戦車長だったじゃん…確か高三の時、全国大会・一回戦で継続高校の隊長兼フラッグ車だったソ連製のT-28中戦車*2を機動力で翻弄した上、崖から落として白旗を上げさせて試合に勝った事が有ったよね?」

 

 

 

此れに対して龍江は「アレはな、こっちが逃げ回っている間に相手が勝手に崖から落ちただけや!」()西()()()()()()()()()を入れたが、其処へ長門が「其れでも試合終了後、皆から“奇跡だ!”と騒がれたじゃ無いか?」と口を挟んだ処、龍江は当時を思い出したのか顔を赤くして「まあ…そうやけど?」と白状した為、明美が「そうよ♪」と()()()()()()をした後、こんなエピソードを紹介した。

 

 

 

「其れで次の二回戦、私達黒森峰と()った時もヤークトパンターの履帯をCV33の8㎜連装機関銃の集中射撃で切断して戦線離脱させたじゃん?アレは整備班長として試合を観戦していた私も凄いと思ったわよ♪」

 

 

 

其れに対して龍江は「あれも苦し紛れに撃ったら、偶々上手く行っただけや!其れに試合はアッと言う間にウチ等アンツィオの負けやったし!と言い返したが、其処へ長門が優し気な声で龍江を褒めた。

 

 

 

「でも私達・黒森峰の全員は、あの試合の“()っちゃん”の戦い方を見て感心させられたな…“戦車が弱くても戦う手段は有る”って事を思い知らされたよ」

 

 

 

二人の元・ライバルからの話を聞いて一瞬微笑んだ龍江だったが、直ぐ表情を引き締めると明美に向かって指を差してからこう言い放った。

 

 

 

「でもな、“あけみっち(明美)”。今回はウチ等アンツィオ高が勝つで!其の為にウチと旦那が建てた戦車博物館のコレクションの中から取って置きのⅣ号戦車G後期型をアンツィオ高に貸し出したからな!勿論戦車道連盟の車検も通って登録済みやで!

 

 

 

すると明美の傍で話を聞き続けていた清恵が頷き乍ら「成程。“資金難のアンツィオ高が何故長砲身のⅣ号戦車を手に入れたのか”が不思議だったのですが、そう言う事だったのですか」と語った処、此処迄珍しく口を挟んでこなかったダージリンも頷き乍ら「成程…確か大姫さん御夫妻は戦車博物館を個人で運営されているわね」と呟いた後、長門が簡単な事情説明を行った。

 

 

 

「実は、“()っちゃん”と夫の俊家さんはイタリアのミラノで初めて出会った際、共に“()()()()()()”だと知ったのが切っ掛けで交際を始めて結婚したんだよ」

 

 

 

其の話を聞いた皆が興味津々になって居るのを見た長門は、小さく頷くと話を続ける。

 

 

 

「当時大学生だった“()っちゃん”はイタリアで戦車道留学の傍ら自分の夢だった“イタリア車のディーラー”を目指して勉強の日々を過ごしていた時、パティシエを目指してミラノに在る御菓子作りの名店で修業をして居た俊家さんに出会ったんだ。そして帰国後結婚した二人は、其々イタリア製自動車のディーラーと洋菓子店を経営して財を築き、遂には“子供達に戦車道の楽しさを伝えたい”との思いから宇都宮市の郊外に小さな戦車博物館をオープンしたんだ」

 

 

 

すると、今度は龍江が「其れとな……」と口を挟んだ後、自らの経歴について補足説明をする。

 

 

 

「ウチは大学時代、イタリアだけじゃなくドイツへ短期留学した経験も有ってな。其の時からイタリアやドイツ等に有る大手戦車バイヤーや戦車工場との間に独自のコネクションを築いて来たんや。今回、ウチがアンツィオ高に貸し出したⅣ号戦車G後期型もウチの知り合いのドイツ人が経営するバイエルンの戦車工場でレストアされた物をウチと旦那(俊家)が戦車博物館のコレクションにする為に買って来た処へウチの娘(鳳姫)から『大洗女子に勝つ為に、ドゥーチェ(アンチョビ)とチームの仲間達に力を貸して欲しい』と頼まれたんで、アンツィオ高へ貸してあげたんや」

 

 

 

其処へサンダースの次期エース候補・原 時雨が「大姫さん御夫妻の博物館、小さいけど持っている戦車は全部稼働するし、更に手持ちの戦車コレクションを惜しげも無く戦車道を目指す前途有望な女子に貸し出しているもんな……」と呟くと、ケイ隊長も「其れは凄いわね…そんな御両親の下で育った“マルゲリータ(大姫 鳳姫)”って()も戦車道が強いんじゃない?」と問い掛ける。

 

すると時雨は頷き乍ら「はい。みなかみタンカーズでも彼女(鳳姫)…私達は“姫ちゃん”と呼んでいたけど、彼女は隊長として優秀だっただけでは無く戦車長としてもタンカーズで五本の指に入る実力者でした」と語った処、サンダースの副隊長コンビ・ナオミとアリサが互いに顔を見合わせて「「あの嵐と同じ位の実力者なのか!?」」と、嵐と戦った一回戦を思い出しつつ呟いた。

 

だが、此処で明美が不敵な笑みを浮かべ乍ら龍江に向けてこう宣言する。

 

 

 

「“()っちゃん”…悪いけど、今の大洗女子は嵐だけのチームでは無いわ。“あの”西住 みほさんが隊長なのよ?彼女は“戦車の数や性能の違いが、戦車道の実力の決定的差では無い”事を先のサンダース戦で実証したわ。だから大洗女子は“秘密兵器”の一つや二つで勝てる程甘く無いわよ♪」

 

 

 

明美の言葉に、彼女の傍に居る長門や清恵だけで無く周囲に居た聖グロ・サンダース・マジノの戦車道乙女達全員が一斉に頷くが、龍江は其の姿を見ても怯む処か薄笑いを浮かべ乍ら反論した。

 

 

 

「フフッ…皆甘いで。忘れたんか?我がアンツィオ高の“伝統”を。此れから其れを皆に見せたるで!」

 

 

 

其の瞬間、試合会場に号砲が鳴り響いた…大洗女子学園対アンツィオ高校の試合が始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

「行け行け!何処迄も進め!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 

アンツィオ高校戦車道チームは試合開始早々、全戦車が勢い良くスタート地点から出発すると隊長のアンチョビが隊長車兼フラッグ車であるP40重戦車の砲塔上部キューポラから身を乗り出して無線マイクを手に持った後、威勢の良い声でチームを鼓舞する…()()()()()()()は兎も角。

 

すると副隊長の一人で豆戦車・CV33に乗っているペパロニが無線で「最高っすよ!アンチョビ姐さん!」とノリノリの声で答えた後、仲間達に向けて手前(テメエ)等モタモタすんじゃ()えぞ!」と叫ぶと、CV33やセモヴェンテ突撃砲・M41に乗車している仲間達が一斉に「「オーッ!」」と返答した。

 

其の返答を聞いたペパロニは、続いて仲間達に指示を出す。

 

 

 

「此のペパロニに続け!地獄の果て迄進め!」

 

 

 

其の指示に仲間達が「「ヤーッ!」」と答えた後、3輌のCV33と2輌のセモヴェンテ突撃砲・M41、そして“マルゲリータ( 鳳姫 )”が乗るⅣ号戦車G後期型がペパロニの乗るCV33に続いて先行すると、其の様子を確認したアンチョビ隊長が自信たっぷりの表情で“次の指示”を出した。

 

 

 

「良しっ、此の儘()()()()()()開始!」

 

 

 

此処で、アンチョビ隊長からの指示を聞いたもう一人の副隊長・“ひなちゃん”が無線でCV33に乗る仲間達に向けて詳細な指示を出す。

 

 

 

カルロ・ベローチェ(CV33)各車は“()()()()”展開して下さい!」

 

 

 

すると、ペパロニ副隊長が“漢前(おとこまえ)”な声で返事をした。

 

 

 

「OK!()()()()()()で行くぜぇ!」

 

 

 

そして、ペパロニ副隊長が率いる4輌のCV33は試合会場中央部に位置する十字路へ急行した後、其の場で乗員が降り、CV33のエンジンルーム上部に載せた“()()()()()()”を持って何処かへ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

こうして、アンツィオ高校は試合開始早々、伝統の必殺技である()()()()()()を開始した。

 

果たして、大洗女子学園はアンツィオ高の“二つの秘密兵器(P40とⅣ号戦車G後期型)”と“マカロニ作戦”に対して如何に戦うのだろうか?

 

 

 

(第60.5話、終わり)

*1
第42話「一回戦、決着です!!」を参照。

*2
T-28は「中戦車」と名乗っているが、実態は総重量27.8t、76.2㎜を装備する砲塔一個に機関銃塔二個を持つ大型多砲塔戦車である。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
今回は番外編・第60.5話をお送りしました。

と言う訳で、今回“マルゲリータ”の母・龍江さんが初登場しました。
彼女のモデルは「やたら関西弁を喋る平甲板胸の軽空母=RJ」です…何でや!(御約束)
其れとマジノ女学院からエクレール隊長とフォンデュさん、そして“アイドルマスターシンデレラガールズ”から“しぶりん”こと渋谷 凛さんにも登場して頂きました!(拍手)
因みに、今回登場した“しぶりん”ですが時間軸的にはアニメ版デレマス第25話ED後の初夏と言う設定になります(其の為、年齢は西住殿と同じ16歳となります)。
尚、今後もデレマスアイドルの登場を予定していますので御期待下さい。

次回、P40とⅣ号戦車G後期型と言う“二つの秘密兵器”を目の当たりにして荒ぶる嵐。
しかし彼女の姿を見た西住殿が“一寸意外な指示”をします。
一体、西住殿は何を感じ取ったのか?
其れでは、次回をお楽しみに。

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