此処で、少しだけ時間を巻き戻そう。
原園 嵐が西住 みほ隊長へ“重大な報告”を告げる直前の出来事である。
此の時、大洗女子学園戦車道チーム隊長車・“あんこうチーム”が乗るⅣ号戦車D型の車内では、“ニワトリさんチーム”と共に街道の中心部に在る十字路左側へ偵察に出した“ウサギさんチーム”戦車長・澤 梓からの報告を受けたみほ達が戸惑っていた。
梓の報告内容は「カルロ・ヴェローチェ4輌、セモヴェンテ2輌が陣取っています」だったが、其れを聞いたチームの砲手・五十鈴 華と装填手・秋山 優花里が訝し気な声で“或る矛盾”を指摘する。
「数が合いませんね。合わせて“11輌”も居る」
「其れにP40もⅣ号戦車G後期型も居ません。二回戦のレギュレーションでは“10輌迄”と……」
二人の言う通り、戦車道全国高校生大会のレギュレーションでは“一回戦と二回戦に各チームが出場させる事が出来る戦車の数は10輌迄”と決められているが、先程自分達の前方に在る十字路右側へ偵察に出した“アヒルさんチーム”の報告によれば、十字路右側にはアンツィオ高のセモヴェンテ2輌、カルロ・ヴェローチェ3輌が陣取っている。
此れに“ウサギさんチーム”からの報告を合わせると…アンツィオ高は十字路の左右にカルロ・ヴェローチェ7輌、セモヴェンテ4輌を配置して居る事になり、其れだけで戦車の出場台数が11輌となってしまう。
オマケに優花里が指摘した通り、自分達は未だアンツィオ高のP40重戦車とⅣ号戦車G後期型を発見していない為、アンツィオ高が此の試合に投入している戦車は“13輌”になってしまうのだ。
華と優花里の意見を聞いたみほが、不安気な表情で地図を見乍ら現在の状況を確認していると、華が“或る想像”をみほに告げる。
「インチキをしているのでは?」
其の言葉を聞いて“思い当たる節”が有るのに気付いたみほが「若しかして……」と呟いた直後、“ウサギさんチーム”戦車長・梓から追加の報告が来た。
「其れと此の事について、嵐から報告が有ります」
其れに対して、みほが「えっ?」と戸惑いの声を上げた時、“ニワトリさんチーム”戦車長・嵐から“決定的な報告”が飛び込んで来た。
『隊長、此方と“アヒルさん”が見付けた戦車だけで11輌も居ますが、恐らく此れは“マカロニ作戦”です!“アヒルさん”と私達が見付けた戦車は偽物かも知れません!』
其の時、みほは“先程自分が気付いた事と嵐の報告内容が一緒だ”と確信すると、大声を上げる。
「やっぱり!原園さんも私と同じ考えなら間違いない!」
そして、みほは自分の声に驚く華と優花里を余所に通信手の武部 沙織へ指示を出した。
「“ウサギさん”・“ニワトリさん”、其れと“アヒルさん”。退路を確保しつつ斉射して下さい!反撃されたら直ちに退却!」
西住隊長からの指示を受けた直後、私達“ニワトリさんチーム”・“ウサギさんチーム” が十字路の左側から、“アヒルさんチーム”は十字路の右側から一斉に攻撃を行った…軍事用語で言う「威力偵察」だ。
そして、私達の攻撃は前方に待ち伏せていたアンツィオ高のカルロ・ヴェローチェとセモヴェンテを直撃し…次の瞬間、全車穴だらけになって吹き飛んだ。
『やっぱり!十字路に居た戦車は皆“マカロニ”だった!』
攻撃結果を確認した私が無線で仲間達に状況を告げると、十字路の右側から攻撃した“アヒルさんチーム”のリーダー兼戦車長・磯辺先輩からも「原園、こっちに居た戦車も偽物だ!全部看板に書かれた書き割りだった!」との返信が飛び込んで来た。
続いて、私達と一緒に十字路左側の攻撃に加わった“ウサギさんチーム”のリーダー兼戦車長・梓が車内の状況を報告する。
「まさか、全部板に書かれた偽物だったなんて…皆も『看板!?』『偽物だー!』って大騒ぎだよ!」
『うん。其れより西住隊長からの指示が来るだろうから、今から移動の準備をしよう!』
私は梓に対して“次の行動の準備をすべき”と返信した時、西住隊長から“次の指示”が飛び込んで来た。
「“ウサギさん”・“ニワトリさん”・そして“アヒルさん”!恐らく、相手は十字路に私達を惹き付けて置いて機動力で包囲する心算です!直ちに其の場を離れて十字路の後方を捜索して下さい!其処に本物の戦車が居ると思われます!」
其の指示を聞いた私は、直ちに梓へ指示を飛ばした。
『よしっ!梓、直ぐに十字路の後方を捜索するよ!』
「了解!」
梓から気合の入った返信が入ると同時に、私達2輌の戦車は行動を開始した。
一方、此処は試合会場内・観客席の外れに在る広場である。
此処には聖グロリアーナ女学院&サンダース大付属高校の面々の他、原園 明美・周防 長門・淀川 清恵と明美に誘われて此処へやって来たマジノ女学院のエクレール隊長&フォンデュ副隊長に加えて、今アンツィオ高戦車道チームの一員として大洗女子と戦っている“マルゲリータ”の母親・大姫 龍江の姿が在り、全員が試合会場内の大型モニターに表示される試合の実況に見入っていた。
其処へ、もう一人の女性がやって来ると皆に声を掛ける。
「あっ、アンツィオ高伝統の“マカロニ作戦”がバレちゃったみたいですね?」
彼女は首都新聞社の契約ライターとして、今回の戦車道全国高校生大会の取材をしている北條 青葉である。
其の言葉を聞いて、試合を観戦中だった明美が笑顔で答える。
「そうよ~♪ 今、アンツィオ高のペパロニ副隊長が率いるカルロ・ヴェローチェ4輌が大洗女子のアヒルさんチームに追われて居るわ」
更に長門が「何故かは知らんが、アンツィオ高の連中、十字路に“マカロニ”を11輌分も立てていたんで直ぐバレたんだ」と語った処、先程迄「どや、アンツィオ高の“マカロニ作戦”の凄さは!大洗の奴等はビビって十字路で立ち往生しているやろ!“戦いは火力や無い、御頭の使い方”なんやで!」と関西弁で捲し立て乍らドヤ顔で(無い)胸を張っていた龍江が驚きの声を上げた。
「ええっ!?何で“マカロニ”の数を間違えたんや!?」
しかし、其処は関西人の龍江である。
直ぐ立ち直ると、青葉に向かってこう言い返した。
「記者さん、アンツィオの機動力を舐めるんや無いで!此処からが勝負や!」
だが其の時、龍江は傍らに居る嘗てのライバル二人がヒソヒソ話をし乍ら笑っているのを見て思わず「“あけみっち”に“ながもん”、何を笑っとるんや!」とツッコミを入れたが…此処で“或る事”に気付いた青葉がこう答えたのだ。
「あっ…若しかして副隊長のペパロニさん、“マカロニ作戦”がバレて八九式中戦車甲型に追われているのを未だアンチョビ隊長に報告していないんじゃないですか?」
すると、明美と長門は小さく頷いた後、先ず明美がこう答える。
「流石は青葉さん、良く気付いたわね。私に言わせれば、ペパロニさんの“報告漏れ”は“マカロニの数を間違えた”時以上の重大ミスよ♪」
続いて長門もこう語る。
「ああ。大洗女子の“アヒルさんチーム”は敵発見の報告をしっかりしていたのにな」
其処へ清恵が、聖グロのオレンジペコから注いで貰った紅茶を飲み乍らこう付け加えた。
「アンツィオ高の持ち味である“ノリと勢い”が悪い方向へ行っちゃいましたね♪」
其の結果、“ペパロニが犯した重大ミスの中身”を知った龍江は頭を抱え乍ら「あーっ!あの“アホの子”、何やっとんねん!マジでド突いたろか!?」と観客席前の大型モニターに向かって吼える中、ティータイムを楽しみ乍ら此処迄の一部始終を眺めて居た聖グロのダージリン隊長が溜め息を吐きつつ、こう呟いた。
「成程、確かに明美さんの言う通りね」
其れに対して、オレンジペコが「如何言う意味ですか?」とダージリンに問い掛けたが、其の疑問に答えたのは彼女では無く、明美達を挟んで自分達の反対側に陣取っていたサンダースのケイ隊長だった。
「ペパロニがやったミスよ…確かに“マカロニの数を間違えた”のは悪い事だけど、ミスとしては“報告を怠る”事の方がもっと重大だわ」
すると、ナオミも頷き乍らこう語る。
「確かに、こんな時は“悪い情報”程迅速に報告しないとな」
更に、アリサも頷きながらこう語った。
「素人は“ペパロニがマカロニの数を間違えた”事を面白可笑しく言うでしょうけど、選手の目から見ると“報告を怠る”方がタチが悪いわ…下手をすると仲間達全員が何が何だか分からない儘相手にやられるかも知れないのに」
更に、此処迄先輩達の会話を聞いていた時雨が群馬みなかみタンカーズ時代の経験を思い出して、こう語った。
「タンカーズでも“マカロニの数を間違えた”程度の単純ミスは『次はやらない様に気を付けてね』ってコーチから注意されるだけで済んだけど、必要な報告や連絡を怠ったら即座にレギュラーから外されました…明美さん、そう言う所のメリハリはしっかりしているんです」
時雨の話を聞いて、聖グロの二人とサンダースの先輩達三人は納得した表情で頷いていた。
一方、明美に誘われて此処へやって来たマジノ女学院のエクレール隊長とフォンデュ副隊長は“高校戦車道四強”の内の二校・聖グロとサンダースの隊長達や明美達戦車道OGが語る試合解説を聞きつつ、互いに「今の話、凄く勉強になるわね」「はい、エクレール様。試合中のミスについての議論が此れだけ奥深い話になるとは思っても見ませんでした」と語り合い乍ら必死にメモを執るのだった。
其の頃、私達“ニワトリさんチーム”は“ウサギさんチーム”の後ろに従いて十字路後方の森林地帯を偵察していた。
私達を襲おうとしているアンツィオ高の“本物の戦車”を捜しているのである。
そんな時、私に“ウサギさんチーム”リーダー兼戦車長の梓から通信が入った。
「ねえ嵐。さっきアンツィオの“偽物の戦車”を“マカロニ”って呼んでいたけど、其れって意味が有るの?」
此処で、私は“意識せずに「偽物の戦車」を「マカロニ」と呼んでいた”事に気付くと其の理由を梓に説明する。
『ああ…其れはね。“マカロニ”って外側はしっかりしているけれど中身は空洞でしょ。其処から転じて“偽物を用いた欺瞞作戦”の事をアンツィオ高では“マカロニ作戦”って呼ぶ伝統があるんだよ』
「成程。欺瞞作戦をやって来るなんて凄いね…詰めが甘かったけど」
私の説明に対して、梓が“アンツィオ高のマカロニ作戦”に感心しつつ“詰めの甘さ”を指摘したのを聞いた私は、此処で一言付け加える。
『でも本来の“マカロニ作戦”はね、今のとは違って“本物の中に偽物を混ぜる事によって「相手に此方側の戦車の数を誤認させて正確な状況判断を出来なくさせる」効果を狙ったもの”なんだ』
すると話を聞いた梓が更に感心し乍ら「そうか。“マカロニ”と“具材”を絡めて料理を作るのと一緒だね」と的確な答えを返した処で、私は彼女にこう忠告した。
『其の通り。でも今回、彼女等は十字路で“マカロニ”だけを見せて来た…と言う事は、恐らく此の近くに本物の戦車が私達を狙っているに違い無いよ』
其の忠告を聞いた梓が「そうか……」と呟いていた時、突然彼女が私に向かって叫ぶ。
「あっ、2時方向に敵影!」
『!?』
梓の報告に反応した私が双眼鏡を向けると、林の中にセモヴェンテが2輌居る。
其処で私が梓に指示を出そうとした時だった。
『よし梓、発砲はせずに様子を…って、ええっ!?』
突然“ウサギさんチーム”の砲塔に備えられた37㎜砲と同軸機関銃が、林の中に潜んで居る2輌のセモヴェンテ目掛けて火を噴いたのだ。
其の光景を目撃した私は、思わずこう呟いた。
『あやの馬鹿!“またセモヴェンテ、さっきと一緒だ!騙されるもんか!”と思い込んで撃っちゃったのか!?』
…試合後、私は此の件で梓と37㎜砲々手の大野 あやから聞き出した処、此の時“ウサギさんチーム”に起きた出来事の内容は私の呟き通りだった事が分かった。
先程と同様、林の中で発見した2輌のセモヴェンテも偽物だと勝手に思い込んだあやは、梓が止めるのも聞かずに発砲してしまった結果、彼女が撃った37㎜砲弾を車体前面装甲板で弾いたセモヴェンテに気付かれて反撃され、其処で初めて“相手が本物だ”と知って「ゲッ…本物だぁ!」と呻いたが時既に遅しだったと言う訳である。
其れは兎も角、“ウサギさんチーム”から梓が「もう!」と叫ぶ声(此れは先程の勝手な発砲をしたあやを叱る声だった)が無線から聞こえたが…其の時、私は“ウサギさんチームを狙うもう1輌の戦車”の姿に気付くと絶叫した。
『梓、直ぐ左旋回!』
其の直後、“ウサギさんチーム”が素早い左旋回を決めると、直前迄彼女達が居た場所の地面に砲弾が炸裂した。
そして、砲撃を回避した梓が無線で叫ぶ。
「嵐、もう1輌の戦車が…長砲身のⅣ号が居る!」
そう…梓と私の視線の先には、ダークイエロー一色に塗られた“アンツィオ高真の秘密兵器・Ⅳ号戦車G後期型”の姿が在り、其の48口径75㎜戦車砲の砲口が梓達の乗るM3中戦車リーを狙っていた。
勿論、其の車長用キューポラからは“マルゲリータ”が不敵な笑みを浮かべ乍らM3中戦車リーの車長用キューポラから頭を出している梓を睨んでおり、其の姿を見た彼女の横顔は真っ青だった。
『殺らせない!』
其の瞬間、私は本能的に“イージーエイト”をⅣ号戦車G後期型の正面に向けると、梓に向かって叫んだ。
『梓、Ⅳ号G型は私に任せて!1対2になって悪いけど、2輌のセモヴェンテは宜しく!』
すると梓が心配気な声で「了解…嵐、西住隊長には報告するから頑張って!」と呼び掛けて来た為、私は梓の不安を振り払う様に大声で返信した。
『了解!』
そして、私は車内の皆に聞こえる様、声を張り上げた。
『皆、“姫ちゃん”…いや“マルゲリータ”に仲間を殺らせる訳には行かない!アイツは此処で倒す!』
其の時…私の心の中には、大洗で戦車道を再開してから封印していた“みなかみの狂犬”時代の気持ちが蘇り始めていた。
其の頃、此方は大洗女子の主力部隊・“あんこう”・“カバさん”・そしてフラッグ車の“カメさん”の3チームである。
彼女達は十字路を通過して前進を続け、恐らくは其の前方に居るであろうアンツィオ高のフラッグ車を捜索していた。
其の時、十字路左側を捜索していた“ウサギさんチーム”リーダー兼戦車長の梓から、急報が“あんこうチーム”に入った。
「A23地点、セモヴェンテ2輌とⅣ号戦車G後期型を発見。今度は本物です!勝手に攻撃してしまいました。済みません!交戦始まってます!」
梓の報告から彼女が焦って居るのに気付いたみほは「大丈夫。御蔭で敵の作戦が分かりました」と返信して梓を落ち着かせていたが、其処へ彼女から“続報”が入る。
「其れよりも今、嵐がアンツィオのⅣ号と交戦中です!私達がⅣ号に狙われたので私達を庇って…今、私達はセモヴェンテ2輌に追われています!」
其の報告を受けたみほは“ハッ!”と表情を変えると鋭い声で梓へ指示を出した。
「分かりました!セモヴェンテとは付かず離れずで交戦して下さい。西に行動を始めたら其れは合流を意味します。全力で阻止して下さい!」
其の指示に対して、梓から「自信無いけど、やります!」と覚悟の籠った返信が届くと、みほは次の指示を出す。
「其れと“カバさんチーム”に御願いが有ります。直ちに“ニワトリさんチーム”の救援に向かって下さい!アンツィオに勝つ為には“ニワトリさん”と力を合わせて敵のⅣ号戦車G後期型を倒す必要が有ります!」
みほからの“鋭い指示”を聴いた“カバさんチーム”車長・エルヴィンがドイツ語で「Jawohl! Herr Kapitän(隊長殿、了解!)」と返信すると、みほは更なる指示を出した。
「そして“あんこう”・“カメさん”チームは、此の儘直進します。包囲される前にフラッグ車を叩きましょう。当然此方は2輌だけですしフラッグ車も標的となりますが、逆に囮として上手く敵側を惹き付けて下さい」
そして最後に、みほは各車に向けて送信する。
「其れでは皆さん、健闘と幸運を祈ります!」
そして通信が終わった後、みほは心の中で“チームで一番心配な娘”の姿を思い浮かべ乍ら、心の中でこう呟いた。
「原園さん…絶対に一人にはしないから、待っていて!」
一方、此方は十字路の行き止まりに在る小さな高台で待機して居るアンツィオ高・本隊の戦車2輌と突撃砲1輌。
其の編成は、隊長車兼フラッグ車でアンチョビ隊長が乗るP40と護衛のカルロ・ヴェローチェ、そしてペパロニと並ぶ副隊長の“ひなちゃん”が乗るセモヴェンテが各1輌である。
其処に、自分達から見て前方の右翼方向から大洗女子を包囲しようとしていた部隊を率いるマルゲリータから“思わぬ報告”が齎された。
「何っ!其れは本当か、マルゲリータ!?」
「はいっ、ドゥーチェ!現在此方は十字路右翼外れの林の中で嵐が乗るイージーエイトと交戦中!セモヴェンテ2輌は嵐と一緒に居たM3リー中戦車を追撃中です!」
「何だって…もしかして“マカロニ作戦”がバレたのか!?」
本来の作戦では“自分達が十字路に仕掛けた「マカロニ」に大洗女子が足止めされている間に、アンツィオ高から見て十字路の左側からペパロニ副隊長の部隊が、右側からはマルゲリータが率いる部隊が大洗女子を奇襲する”筈が、十字路の外れで大洗女子に発見されたと言う“異常事態”に気付いたアンチョビ隊長は“作戦失敗”の懸念を抱きつつ、マルゲリータを問い質すと彼女から返信が届いた。
「其の可能性が高いです。何しろ、ペパロニ副隊長は“北海道のローカルTV局の移動番組に出て来るタレントやディレクター陣”と一緒で“地図も読めないバカ”ですから心配で…済みません!念の為、ペパロニ副隊長に確認を御願いします!」
マルゲリータからも“作戦が失敗した可能性有り”との報告(と愚痴)を受けたアンチョビは「了解!」と返信後、無線のチャンネルをペパロニが乗るカルロ・ヴェローチェに切り替えてから十字路左翼の攻撃を担当する部隊を率いる彼女を詰問した。
「オイ、ペパロニ。マカロニ作戦は如何なっている?たった今、マルゲリータから“大洗のM3中戦車リーとイージーエイトに遭遇した。ペパロニは地図も読めないバカだから心配だ”って報告が来たぞ?」
処が此れに対して、ペパロニが「済みませーん、其れ処じゃ無いんで後にして貰えますか?」と“場の空気を読まない”能天気な声で報告したのを訝しんだアンチョビは再び「何で?」と問い掛けた処、ペパロニが“トンデモ無い報告”を寄越して来た。
「Tipo 89(八九式中戦車甲型)と交戦中です。如何してバレちゃったのかな~?」
其処で初めて“悪い予感”を抱いたアンチョビは苛立ち乍らペパロニに「十字路にちゃんとデコイ置いたんだろうな!?」と問い掛けた処、案の定ペパロニは能天気な声で、アンチョビに取って“最悪の報告”を返して来た!
「ちゃんと置きましたよ、全部!」
其の瞬間アンチョビは“ひょっとするとペパロニは「十字路にデコイを置いていなかった」のかと思っていたが、まさかデコイを全部置いてしまったのか!?”と“自分の悪い予感が更に悪い方向へ外れた”のだと理解した後、ペパロニに向かってこう怒鳴った。
「はあ!?11枚全部だと数多いから即バレるだろうが!?」
だが…ペパロニはアンチョビからの叱責にも「そうか!?流石姐さん、賢いっすね!」とアホの子全開の返事を寄越して来たので、頭に来たアンチョビは無線でこう叫んだ。
「御前がアホなだけだ!マルゲリータが心配するのも当然だ!」
そして、アンチョビは“マカロニ作戦がバレた”事を悟ると次の対応策をもう一人の副隊長である“ひなちゃん”へ告げた。
「オイ、出動だ!敵は其処迄来ている!其れとそっちはマルゲリータの援護に行ってくれ!」
だが此処で、“ひなちゃん”がアンチョビへ“其の指示の問題点”を指摘する。
「ですがドゥーチェ、そうするとフラッグ車の護衛がカルロ・ヴェローチェ1輌だけになりますが!?」
「うっ!?」
“アホの子”・ペパロニよりも遥かに信頼出来る“もう一人の副隊長”からの指摘に絶句するアンチョビ。
此処で“ひなちゃん”が乗るセモヴェンテを分派すると、隊長車兼フラッグ車のP40を守るのは、8㎜機関銃を2挺しか持たない豆戦車・カルロ・ヴェローチェ1輌しか居なくなるのだ。
其の事に気付いて一瞬悩むアンチョビだったが、直ぐに首を横に振ると改めて“ひなちゃん”へ指示を出した。
「いや、やはり御前はマルゲリータの援護に行ってくれ。相手は“みなかみの狂犬”だ。マルゲリータだけでは荷が重いし、其れに仲間を見捨てる訳には行かない!」
其れに対して“ひなちゃん”もアンチョビの指示に反対する事は無く「はい!」と返事をすると乗車しているセモヴェンテの車内に入って移動を開始した。
其の姿を確かめたアンチョビも、本隊の移動を開始させると砲塔上部のハッチを開けた儘前方を直接視認し乍ら、ペパロニがやったミスを思い出して独り言を呟く。
「2枚は予備だってあれ程言ったのに、何で忘れちゃうかなあ?」
だが、其の直後。
自分達が待機していた小さな高台を降りて十字路方向へ前進を始めたアンチョビ達の目前に2輌の戦車が見えたと思った瞬間。
「「あっ!?」」
何とアンツィオ高と大洗女子の本隊が、其々フラッグ車と護衛車が1輌ずつの状態で互いに擦れ違ったのだ!
此れには大洗女子の西住 みほ隊長も驚いたが、もっと驚いたのはアンツィオ高のアンチョビ隊長だった。
「全車停止!隊長車とフラッグ車を発見!」
直後に本隊へ指示を出すアンツィオ高のアンチョビ隊長。
同時に、大洗女子の隊長車・Ⅳ号戦車D型とフラッグ車・38(t)軽戦車B/C型も停止して此方側へ方向転換するのを視認し乍ら、アンチョビは先程下した“決断”を後悔しかけた。
「此処でセモヴェンテをマルゲリータの援護へ行かせたのは…いや、違う!」
だが此処で、アンチョビは首を横に振ると“先程の決断”をポジティブに振り返る。
「マルゲリータを…仲間達を見捨てる訳には行かない!相手は“みなかみの狂犬”だし、マルゲリータだけで勝てる相手じゃ無いしな!なら、こっちは手持ちの戦力で戦うしか無い!」
そしてアンチョビの率いるP40とカルロ・ヴェローチェは、大洗女子の戦車2輌と共に林の中の斜面を駆け下り乍ら砲撃戦を展開する事になったのだった。
(第62話、終わり)