戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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いよいよ、今回でアンツィオ戦の勝敗が決まります。
そして、嵐達“ニワトリさんチーム”チームには一寸した“オチ”が…一体、彼女達に何が起きるのか?
其れでは、どうぞ。



第64話「全国大会二回戦・決着です!!」

 

 

 

第63回戦車道全国高校生大会・第二回戦「アンツィオ高校(栃木県)対県立大洗女子学園(茨城県)」も終盤に入り、大洗女子学園・“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”がアンツィオ高校のセモヴェンテM41・2輌に追われていた“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”と合流後、逆にアンツィオ高校のセモヴェンテM41・2輌を追撃しようとする少し前の出来事である。

 

試合会場・観客席正面に設けられた大型モニターが“試合の重大局面”が訪れた事を観客に伝えていた。

 

 

 

「アンツィオ高校、“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”3輌走行不能!」

 

 

 

大洗女子戦車道チーム隊長・西住 みほがアンツィオ高の仕掛けた“マカロニ作戦”を見破った直後、大洗女子“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”がアンツィオ高副隊長・ペパロニ率いる“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”4輌を発見。

 

其処から激しい追撃戦が続いていたのだが、此処へ来て“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”の猛攻で、ペパロニが乗る副隊長車以外の“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”が3輌撃破されたのだ。

 

其れ迄、ペパロニ率いる“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”部隊は“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”からの57㎜砲による砲撃を巧みに躱しつつ、至近弾を浴びて横転した車輌は“豆戦車故の軽さ”を生かして乗員達が自力で立て直して戦い続けた結果、“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”砲手・佐々木 あけびが「豆タンク(CV33)が不死身です~!?」と悲鳴を上げる程の奮戦ぶりを見せた。

 

しかし、其の悲鳴を無線で聞いた隊長・みほからの「落ち着いて相手のウィークポイントを狙って下さい!アヒルさんチームならきっと上手く行きます!」との激励を受けた“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”が攻撃を遣り直した結果、砲手が肩付け射撃をする為に走行間射撃での命中精度が良い八九式中戦車甲型の特性と砲手を務めるあけびの高い技量が合わさって、しぶとく戦い続けていた“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”4輌の内3輌迄を次々に撃破し、一気に戦いの流れを引き寄せたのである。

 

続いて観客席には、ペパロニ率いる“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”部隊がペパロニ車を除いて全車撃破された事を知ったアンチョビ隊長からの緊迫感有る無線が飛び込んで来る。

 

 

 

「何だって!?オ~イ、包囲戦は中止!」

 

 

 

だが其の直後、大型モニターにはアンツィオ高フラッグ車・P40重戦車の護衛をしていた“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”が大洗女子隊長車“あんこうチーム”・Ⅳ号戦車D型からの砲撃をエンジンルームに受けて、白旗を掲げた状態の儘一回転する姿が映し出された!

 

すると、再びアンチョビ隊長の悲鳴が無線を通じて観客席に伝わって来る。

 

 

 

「とか言ってる(うち)カルロ・ヴェローチェ(CV33)がやられた!丸裸だ!」

 

 

 

「「「やった!」」」

 

 

 

其の声を聞いた大洗女子学園・応援席では、五十鈴 華恋・武部 詩織・若狭 由良・鬼怒沢 光の“大洗女子学園中等部四人組”を始めとする学園生徒や大洗町から来た住人達の他、一回戦・対サンダース大付属戦での大洗女子の活躍を見て応援にやって来た一般客も一斉に歓声を上げ、大洗女子戦車道チームへの声援のボルテージを上げて行く。

 

逆に、アンツィオ高校側応援席ではイタリア語でMamma mia(マンマミーア)!(何てこったい!)”との悲鳴が響く中、アンチョビ隊長からの新たな指示が観客席に伝わって来た。

 

 

 

「一同、フラッグ車(P40)の下に集まれ!戦力の立て直しを図るぞ!分度器(コンパス)作戦”*1を発動する!」

 

 

 

すると、大洗女子・“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”との交戦で唯一生き残ったアンツィオ高・ペパロニ副隊長が乗る“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”の操縦手・アマレットが「了解!」とアンチョビ隊長へ返信した後、車長でもあるペパロニに困惑気味の声で質問する。

 

 

 

分度器(コンパス)作戦”って、何でしたっけ?」

 

 

 

だが…彼女はいい加減な口調でこう答えるだけだった。

 

 

 

「ん?えーと、知らん!」

 

 

 

此の時、観客席の大型モニターにはペパロニの“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”が先程迄追い掛けていた“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”から離れて、アンチョビが乗るフラッグ車(P40)を目指して猛スピードで走っている姿が映し出されていたが…観客席からは“副隊長なのに、自分達のチームの作戦内容を知らないペパロニの発言”に対する笑い声が広がっているのは気の所為だろうか?

 

 

 

 

 

 

一方、観客席の外れで試合観戦をしている聖グロリアーナ女学院・サンダース大学付属高校の隊長達や原園 明美と其の仲間達が居る場所では、原園 嵐率いる“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”に乗車していたⅣ号戦車G後期型を撃破されたアンツィオ高のエース兼戦車長・大姫 鳳姫の母でアンツィオ高OGでもある大姫 龍江が涙目で叫んでいる。

 

 

 

「ああっ…ウチの母校(アンツィオ)が絶体絶命や!神様、仏様助けてやってや~!」

 

 

 

すると、彼女の姿を見た明美が“意味深な微笑み”を浮かべ乍ら、一言。

 

 

 

「“(たっ)ちゃん”…確か、アンツィオ高が“()()()()()()()()()()()()”を発動する時は“()()()()()”が立つよね?

 

 

 

其の“キツイツッコミ”に対して、龍江は怒り顔で「五月蠅いわ!」と叫んだが…直ぐ気を取り直すと“ボケ”とも取れる返事を呟いた。

 

 

 

「まあ、“あけみっち(明美)”の言う通りやけど」

 

 

 

明美からの“ツッコミ”を聞いた龍江の怒り顔を見て、一瞬緊張感に包まれた聖グロ・サンダースの面々は彼女の返事(ボケ)を聞かされて唖然とする中、一緒に話を聞いていた周防 長門も呆れ声でこう呟くのだった。

 

 

 

「“(たっ)ちゃん”も母校(アンツィオ)が劣勢なのは認めるんだな……」

 

 

 

 

 

 

そんな中、アンチョビ隊長からの指示で彼女の乗るフラッグ車・P40重戦車目指して集合を開始したアンツィオ高・戦車道チームの残存車輌…但し此の内、ペパロニと並ぶ副隊長“ひなちゃん”が乗るセモヴェンテM41は大洗女子“カバさんチーム”のⅢ号突撃砲F型と激しいドッグファイトを続けており、とてもアンチョビの下へ向かう事は出来ない状態だが、其れ以外の残存車輌であるセモヴェンテM41・2輌とペパロニ副隊長が乗る“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”は自分達が先程迄追っていた大洗女子の各戦車には目もくれず、“ドゥーチェ(統帥)”ことアンチョビの危機を救う為に彼女の下へ馳せ参じて行く。

 

特に、ペパロニ副隊長は「待ってて下さい、ドゥーチェ(統帥)!」と叫び乍ら、自ら指揮を執る“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”を猛スピードで走らせつつ起伏の激しい山道をドリフトし乍ら駆け下りており、其の後ろを大洗女子“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”が此れ又猛スピードで追跡している。

 

其の迫力ある光景は、ペパロニ車の車載映像や無線を通じて流れて来る彼女の叫び声と共に、試合会場の大型モニターや首都テレビの実況でも伝えられていた。

 

だが…此の時、大洗女子学園側の応援席に居た“大洗女子学園中等部四人組”の一人・鬼怒沢 光は其の実況を見て()()()()()()()、こんな事を言った。

 

 

 

「待ってて下さい、ドゥーチェ(統帥)貴女の犬(ペパロニ)は~っ、只今 6 号線に乗りました!」

 

 

 

其の発言を聞いた五十鈴 華恋が親友の光に向けて、呆れ声で問い掛ける。

 

 

 

「其れ…“北海道ローカルTV局の()()()()“欧州21カ国完全制覇”で、“モジャモジャ頭のタレントさん”ドイツの高速道路で車を運転している時に言った()()が元ネタだよね?」

 

 

 

すると、華恋の隣に居た二人の親友・武部 詩織がこう語る。

 

 

 

「しかも()()()()()()、本当は6号線に乗ってイタリアへ行く筈だったのに、“()()()()()()()()()()()”に唆されて別の道(656号線)を通っちゃったと言う……」

 

 

 

更に、三人の共通の親友である若狭 由良が観客席の大型モニターに映って居る“ペパロニが乗るカルロ・ヴェローチェ(CV33)”の姿を見詰め乍らこう語り掛けるのだった。

 

 

 

「あのカルロ・ヴェローチェ(CV33)、本当にドゥーチェ(統帥)が乗って居るフラッグ車(P40)迄辿り着けるのかな?」

 

 

 

 

 

 

其の頃、私達“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”は、澤 梓率いる“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”と共に、アンツィオのフラッグ車(P40)との合流を目指す2輌のセモヴェンテM41を撃破すべく追撃を続けていた。

 

 

 

『アンツィオのフラッグ車(P40)迄、後1.2㎞!』

 

 

 

西住隊長からの無線連絡で入手したP40の位置を元に計算した距離を梓に伝えるが、彼女の率いる“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”は走行間射撃を続けているものの中々命中弾が得られない。

 

其の様子を見た私が思わず『ああ…あや(37㎜砲々手)もあゆみ(75㎜砲々手)も焦って居るだろうなあ』と呟くと、私の隣に在る装填手用砲塔ハッチから身を乗り出して外の様子を見ている装填手の舞が心配気な声で「砲撃って、猛特訓しても簡単には腕が上がらないもんね」と話し掛けて来たので、私も頷き乍らこう答えた。

 

 

 

『あゆみ、何時も私に「何で当たんないのーって、腕だよね……」って言っているもんなあ』

 

 

 

其処へ、砲手席に座って居る瑞希が「如何する?そろそろ“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”に攻撃を任せ切りにするんじゃ無くて、私達も攻撃参加しようか?」と話し掛けて来たので、私も『そうだね…西住隊長からも“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)のスキルアップ”の事を考えて“私達は梓達のアシストに徹して欲しい”と言われていたけれど、此の儘じゃあアンチョビさんのフラッグ車(P40)とセモヴェンテ2輌が合流してしまうから、そろそろこっちも攻撃に……』と答えて居た時。

 

ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”のリーダー兼車長の梓が無線で私に報告を入れて来た。

 

 

 

「嵐、やっぱり停車して撃つよ!昨日の練習の時にやった“スポッティング・ライフル作戦”をやるから弾着観測を御願い!」

 

 

 

其れに対して私は『OK!』と返信すると、瑞希も「梓も肚を括ったわね!じゃあ私も弾着観測のサポートをするから嵐も弾着観測のデータをしっかり梓へ伝えるのよ!」と叫んだので、私も『勿論!梓達の為にも此処でヘマは出来ないわ!』と答えつつ車長用キューポラの外から双眼鏡で逃走を続けるアンツィオ高のセモヴェンテM41・2輌の位置を確認していた。

 

すると、“ウサギさんチーム”のM3リー中戦車が私達のM4A3E8(ニワトリさんチーム)の隣に停車すると梓から無線連絡が入る。

 

 

 

「嵐、今から“スポッティング・ライフル作戦”を始めるよ。あや、37㎜砲で先頭を撃って!」

 

 

 

私と“ウサギさんチーム”37㎜砲々手・大野 あやが同時に「『OK!』」と返信すると“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”の37㎜砲が先頭を走るアンツィオ高・セモヴェンテM41目掛けて火を噴いた…が、37㎜砲弾はセモヴェンテM41のやや前方に外れて着弾する。

 

其処で、私は『あやにあゆみ、待っててね!』と思いつつ、梓へ弾着観測の結果を報告した。

 

 

 

『一発目、先頭車から左に1m、下に50㎝程ズレて居る』

 

 

 

すると、梓が「嵐、了解!」と返信した後、其の儘「あゆみ、今の射撃データから右に1m、上に50㎝修正して!」と告げるのが無線で聞こえる…つまり、梓はあやが撃った37㎜砲の弾着データを元に、“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”・75㎜砲々手を務める山郷 あゆみに射撃データの修正値を伝え、より正確な射撃を狙っているのだ。

 

此れが、昨日の練習で梓達“ウサギさんチーム”が編み出した“スポッティング・ライフル作戦”の全貌だ。

 

そして、梓が「撃て!」と号令を下したのが無線で聞こえた直後…あゆみが撃ったM3リー中戦車の75㎜砲弾が見事、先頭を走っていたセモヴェンテM41のエンジンルームを直撃して撃破した!

 

其の瞬間を目撃した私は興奮を抑え乍ら『梓、先頭のセモヴェンテは撃破した!』と報告すると、梓からも「了解!」と返信した後、「あや・あゆみ、次を狙って!」と指示したが、其の時生き残っていた2輌目のセモヴェンテM41が手前の坂を登り切って逃走してしまった。

 

だが、梓は冷静な声で「追うよ!落ち着いて冷静に!」とチームの仲間達に告げてから前進を始めたので、私が“もう一つのアドバイス”を送る。

 

 

 

『梓、坂を登り切る前に一旦停止して、相手の様子を見てから坂を登り切ろう…若しもセモヴェンテの車長に度胸が有るなら、私達の死角に当たる坂の下の方で待ち伏せ(アンブッシュ)て一撃を浴びせて来る可能性が有るからね』

 

 

 

すると、梓は「有難う、嵐」と礼を述べた後、「桂利奈、坂を登り切る直前で一旦停車!」と命じて坂の下に居る筈のセモヴェンテM41の姿を双眼鏡で確認したが、其のセモヴェンテM41は反撃処か必死になって逃げているだけだった。

 

 

 

『あ…如何やら、セモヴェンテの車長はフラッグ車(P40)の下へ向かうのに必死で反撃する余裕も無かったか』

 

 

 

梓と共に其の様子を双眼鏡で見ていた私が呟くと、梓は私に向けて「じゃあ、急いで追い掛けよう!」と話し掛けて来たので、私も気合の入った声で『了解!』と応答後、“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”と共にアンツィオ高フラッグ車を目指して走り続けるセモヴェンテM41の追撃に向かった。

 

 

 

 

 

 

一方、其の時“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”の車内では、通信手の宇津木 優季が梓の冷静な指揮ぶりを見て「梓、西住隊長みたーい♪」とフワフワした口調で話し掛けて来たが、梓は心の中でこう思っていた。

 

 

 

「『西住隊長みたい』って言われて、未だ良かった…若しも優季が『嵐みたーい♪』って言っていたら、恥ずかしくて死にそうになる処だったよ」

 

 

 

梓的には、つい先程“嵐に告白をして、此のアンツィオ戦に勝ったらデートする約束を取り付けた”話を聞いた仲間達に冷やかされただけに、今、嵐の事を持ち出されると、とてもでは無いが落ち着いて指揮を執れる状態では無かったのである。

 

 

 

 

 

 

同じ頃、街道近くの開けた平地で繰り広げられていた「大洗女子“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”対アンツィオ高副隊長“ひなちゃん”の乗るセモヴェンテM41による“突撃砲同士の格闘戦”」はクライマックスを迎えようとしていた。

 

 

 

大洗女子“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”のリーダー兼装填手・カエサルが「次で決着着けてやる!正面で撃ち合った直後に!」と叫ぶと、偶然にも彼女とアンツィオ高・セモヴェンテM41の車長兼装填手・“ひなちゃん”は全く同じ言葉を叫んだ。

 

 

 

「「後ろに回り込む!装填の速さで決まる!」」

 

 

 

そして、両車は一旦正面で撃ち合ってから相手の後ろへ回り込もうとした結果、再び相手の正面に向かう形になった直後…互いにもう一度撃ち合う!

 

だが…此の砲撃で、“カバさんチーム”のⅢ号突撃砲F型は車体左側の工具箱やスコップ等の工具類が丸ごと吹き飛ばされ、“ひなちゃん”のセモヴェンテM41も車体右側に備え付けられているヘッドライトやジェリカンがバラバラに飛散したが、未だ互いに白旗を揚げるには至らない!

 

其の時、カエサルと“ひなちゃん”は、又しても同じ言葉を叫んだのだ。

 

 

 

「「もう、回り込む暇は無い!もう一回撃つ!」」

 

 

 

其の直後、両車は事実上の零距離から必殺の砲撃を撃ち合ったのだ!

 

果たして…其の結果は如何なるのだろうか!?

 

 

 

 

 

 

一方、此方はアンツィオ高・フラッグ兼隊長車のP40重戦車。

 

先程迄大洗女子の隊長車・Ⅳ号戦車D型(あんこうチーム)とフラッグ車・38(t)軽戦車B/C型(カメさんチーム)を相手に単独での戦いを余儀無くされていたのだが、気が付くとP40の前から大洗女子の2輌の姿が見えなくなっていた。

 

此の状況に、P40の車長兼アンツィオ高戦車道チーム隊長・アンチョビは「追って来ないぞ…アンブッシュ(待ち伏せ)か!?そうは行くか!」と叫んで周囲を捜索した結果、林の中に潜んで居た大洗女子フラッグ車・38(t)軽戦車B/C型(カメさんチーム)の姿を発見して追撃を始めたが、其れから暫く経っても大洗女子隊長車・Ⅳ号戦車D型(あんこうチーム)の姿が見えない。

 

流石に、アンチョビ隊長も“大洗女子の隊長車(Ⅳ号戦車D型)がフラッグ車を囮にして待ち伏せ(アンブッシュ)て居るのではないか?”と気になって、仲間の乗員と一緒に周囲を確認したが自分は勿論、乗員からも「待ち伏せ(アンブッシュ)らしきⅣ号短砲身(D型)の姿は見当たりません」との報告しか来ない。

 

 

 

「囮かと思ったが…考え過ぎか?」

 

 

 

アンチョビがそう呟くと、続けて彼女は車内の乗員に向けて、そして自らを鼓舞するべく大声で号令を掛ける。

 

 

 

「良いか、見せ付けてやれ!アンツィオは弱くない…じゃ無かった、()()()()()()()

 

 

 

そして、更に気合の入った一言を付け加えた。

 

 

 

「目指せ悲願のベスト4…じゃ無かった、優勝だぁ!」

 

 

 

其れと同時に、アンチョビが指揮するP40と大洗女子フラッグ車・“38(t)軽戦車B/C型(カメさんチーム)”が互いに走行間射撃を行うも命中弾を出す事は出来なかった。

 

 

 

「外れー♪」

 

 

 

此の時、大洗女子フラッグ車・“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”の車内では、無線手席に座って居る角谷 杏生徒会長が“相手のP40と自分達の砲撃が共に外れた”のを告げると、必死になって38(t)軽戦車B/C型の操縦を続けている小山 柚子が「偶には当ててよ、桃ちゃ~ん」と、今や“砲手としてはノーコン”で有名になった親友・河嶋 桃へ向けて愚痴を零したのだが……

 

 

 

「済みません…今、砲手は()で、河嶋先輩は装填手です

 

 

 

「「えっ、()()()()()!?」」

 

 

 

何と、本来なら装填手兼“何時も試合中は干し芋しか食べない角谷会長に仕事をさせる役”を務めている筈の名取 佐智子が“思わぬ事実”を告げた為、角谷会長と柚子が驚愕の叫び声を上げた処、今は38(t)軽戦車B/C型の37㎜砲弾の装填作業をしている桃が“ポジションを変えた理由”について説明する。

 

 

 

「もう、友軍相撃(フレンドリー・ファイア)を繰り返す訳には行かないから、今回から名取に砲手を頼んだんだ!其れに、今は挑発行動中だから当たらなくても良いんだ!」

 

 

 

桃からの“意外な告白”を聞かされた角谷会長が感心した表情で「かーしま…やるねぇ」と呟くと、柚子も呆気に取られた表情で「桃ちゃん…賢くなったね」と話し掛けたが、彼女は必死の形相で「勝つ為に当然の判断をした迄だ!」と叫んでいた。

 

そんな桃の様子を見て、我に返った角谷会長は無線で隊長のみほを呼び出し、「西住ちゃん、そっちは如何?」と尋ねると、彼女から「()()()()()()()()()。キル・ゾーンへの誘導、宜しく御願いします!」との返信が来た為、角谷会長は「ホイホーイ♪」と返信した後、操縦手の柚子に「小山、例の場所へ向かうよ」と告げた…そう、アンチョビが当初予測していた通り、大洗女子はアンブッシュ(待ち伏せ)を決めるべくフラッグ車の“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”を囮にして居たのだ。

 

そして…遂に、“其の時”が来た!

 

 

 

 

 

 

「よーし、追い詰めたぞ!」

 

 

 

アンツィオ高フラッグ車・P40で切り立った崖の下に大洗女子フラッグ車“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”を追い込んだアンチョビ隊長は一言叫ぶと、38(t)軽戦車B/C型が停車した一瞬を狙って自らの手で砲撃を加える*2が、其れは38(t)の操縦手・柚子の巧みな“誘い”であり、P40が砲撃した瞬間に、38(t)はP40から見て右方向へバックしてアッサリ躱してしまった。

 

何しろ柚子は、昨日大洗女子が行った全体練習中、車長兼砲手の桃がやらかした“友軍相撃(フレンドリー・ファイア)”の結果“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”に追い回された時も冷静な操縦で一発も被弾する事無く切り抜けた為、“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”メンバーの嵐・瑞希・菫・舞の四人から「「「『小山先輩は凄い!』」」」と褒められた程の腕前だから、彼女が操縦する“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”は簡単に撃破出来る様な相手では無いのだ。

 

そうとは知らないアンチョビ隊長は悔し気な声で「アッ、糞…装填急げ!」と叫んだが装填手が「はいっ!」と応答する間も無く、ふと視線を切り立った崖の上にある高台へ向けると…!

 

何と、高台の上から大洗女子隊長車・Ⅳ号戦車D型(あんこうチーム)が此方を狙っているでは無いか!

 

 

 

「えっ…えーと!?」

 

 

 

其の時、アンチョビ隊長は当初自身が危惧した“フラッグ車を囮にしたアンブッシュ(待ち伏せ)作戦”の予想が当たっていたのを悟ったが、最早此の罠から逃れる術が無い為、頭がフリーズしていた。

 

 

 

 

 

 

当時、私達“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”は“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”と共にアンツィオ高のセモヴェンテM41・最後の1輌を追っていたが、其の結末は呆気無かった。

 

西住隊長達“あんこうチーム(Ⅳ号戦車D型)”と“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”が設定したキルゾーンに追い込まれたアンチョビ隊長のP40重戦車を救おうと駆け付けたセモヴェンテM41だったが、自分達が走っていた道の先が崖だと気付かない儘飛び出してしまい、崖からP40が居るキルゾーンの端へ転落してしまったのである。

 

私はイージーエイト(M4A3E8)の車長用キューポラの上から其の事故を目撃しつつ『うわっ…危ない!あの()達、怪我をしていないかな?』と思ったが、実はアンチョビ隊長もセモヴェンテM41の車長が「ドゥーチェ(統帥)、遅れて済みません…キャア!」と叫び声を上げたのを無線で聞くと「あっ、コラッ!無茶するな、怪我したら如何する!」と叫んだそうだ…()()()()()以外の戦車道チームなら何処の隊長さんもそう思うよね。

 

でも“試合は試合”…其の直後、高台の端へやって来た“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”が状況確認後に放った37㎜砲の一撃で、セモヴェンテM41のエンジンルームを撃ち抜き、白旗を揚げさせた。

 

 

 

『此れで…残るは、ペパロニ副隊長の乗る“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”とフラッグ車のP40だけ!』

 

 

 

ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”が一仕事終えたのを見て、ホッとした私は気合を入れ直して高台から崖下を見ると“更にドラマチックな光景”が待っていた。

 

 

 

「アンチョビ姐さん~!姐さん!」

 

 

 

ペパロニ副隊長の乗る“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”が“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”の追撃を必死に躱し乍ら、アンチョビ隊長を救うべく崖下迄やって来たのだ。

 

しかも、ペパロニ副隊長がアンチョビ隊長を呼ぶ声は、高台に居た私達に迄聞こえる程だった…ホント、あの時のペパロニさんの“絶叫”は凄かったよ。

 

でも此の時迄、ペパロニさんはずっとジグザグ走行をして“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”の追撃を躱していたのだけど、アンチョビ隊長に向かって叫んだ時だけ直線走行をしたのが()()()になった…単に真っすぐ走っているだけの目標を私達の仲間の中でも最高レベルの練度を誇る“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”が見逃す筈が無かったのだ。

 

そして“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”の必殺の一撃で“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”のウィークポイントである“車体後部のエンジン始動用クランク基部”に被弾したペパロニ車は派手に三回転半した後、既に撃破されたセモヴェンテM41の車体に寄り掛かる様に停止してから白旗を掲げる。

 

其の直後、アンツィオ高フラッグ車・P40が“あんこうチーム(Ⅳ号戦車D型)”目掛けて最後の砲撃をしたのを見た梓が「ああっ!」と悲鳴を上げたが、私はP40と“あんこうチーム(Ⅳ号戦車D型)”の様子を見て、梓にこう呟いた。

 

 

 

『梓、大丈夫だよ。P40は慌てているから、先ず当たらない…其れに、こう言う時に五十鈴先輩が砲撃を外すと思う?』

 

 

 

私の声掛けに、梓が五十鈴先輩の砲撃の腕前を思い出して「あっ!?」と叫んだ時…全ては私が梓に語った通りとなった。

 

あんこうチーム(Ⅳ号戦車D型)”を狙ったP40の砲撃は大きく外れ、其の直後に砲手を務める五十鈴先輩が発射した“あんこうチーム(Ⅳ号戦車D型)”の75㎜砲弾はP40の車体正面を見事に撃ち抜き、白旗を掲げさせたのである。

 

 

 

 

 

「アンツィオ高校フラッグ車・P40、走行不能!よって大洗女子学園の勝利!」

 

 

 

 

 

そして、撃破されたアンツィオ高の各戦車から乗員がガッカリした表情で降りてくる中、ペパロニ副隊長が何を慌てて居るのか「うわぁ…助けてくれえ!?」と叫び乍ら、撃破されたセモヴェンテM41に寄り掛かって縦に立った状態の“カルロ・ヴェローチェ(CV33)”から転がり落ちていた。

 

更に、アンツィオ高フラッグ車・P40が撃破される少し前に“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”と“ひなちゃん”副隊長のセモヴェンテM41との間で戦われていた“突撃砲同士の格闘戦”は、最後の巴戦で双方が正面から連続砲撃をした結果“相打ち”となって共に白旗を掲げた為、アンツィオ高・戦車道チームの10輌はフラッグ車も含めて全滅。

 

此の結果、私達大洗女子学園・戦車道チームは全国大会の二回戦を“予想外の大勝利”と言う結果で突破したのだった。

 

 

 

『良かった…勝った!』

 

 

 

私は、Ⅳ号戦車D型(あんこうチーム)の車長用キューポラから笑顔で皆を見守っている西住隊長の笑顔を横から見詰めつつ、ホッとした気持ちで勝利の喜びを嚙み締めて居た時、私が立って居る車長用キューポラの隣に在る装填手用ハッチから砲手の瑞希が顔を出すと少し恨めし気な声で話し掛けて来た。

 

 

 

「一寸、嵐…此処で一言云っても良い?」

 

 

 

『何、“ののっち(瑞希)”?』

 

 

 

瑞希の恨めし気な表情を見た私は、少し不安気な声で問い掛けると瑞希は“私に取って思わぬ事”を告げたのだ。

 

 

 

「今日の試合…私達“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”は1()()()()()()()()()()()んだけど?」

 

 

 

『えっ…あーっ!そうだった!』

 

 

 

私達、今日の試合前半は“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”の面倒を見ていて、中盤に“マルゲリータ(大姫 鳳姫)”が駆るⅣ号戦車G後期型と戦った時は応援に来てくれた“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”の待ち伏せ(アンブッシュ)攻撃を御膳立てし、そして試合の終盤は再び“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”のアシストに徹していたから、今日の試合は相手戦車を1輌も撃破していないんだ!

 

其の事を思い出した私は、頭を抱えつつ瑞希に向かって「あの…その、今日は御免ね」と呟くのが精一杯だったが、気が付くと車体前方の操縦手用と副操縦手用のハッチから操縦手の菫と副操縦手の良恵ちゃんが私の顔を見乍らクスクス笑っているし、車内からは装填手の舞の笑い声も聞こえて来る。

 

其の事に気付いた私が恥ずかしさで顔を真っ赤にして居ると、瑞希が微笑み乍ら私にこう言ってくれた。

 

 

 

ウフフ…嵐も成長したわね。みなかみタンカーズに居た頃は“仲間が狙っていた戦車も平気で横取りして撃破していた”のに、今日は“仲間達のアシストに徹するプレー”が出来る様になったんだから」

 

 

 

瑞希からの“思わぬメッセージ”に、私は少し嬉しそうな気持ちで『“ののっち(瑞希)”……』と呼び掛けると、瑞希は表情を引き締めてこう言ってくれた。

 

 

 

「其の代わり、次の準決勝では私達にも相手戦車を撃破するチャンスを頂戴ね?」

 

 

 

『うん!』

 

 

 

瑞希の言葉に、私は心の底から“有難う!”の気持ちを籠めて返事をすると、其の様子を“あんこうチーム”の西住隊長と秋山先輩が嬉しそうな表情で見て居るのに気付いた。

 

其処で私は、二人に向かって飛び切りの笑顔を見せ乍ら右手を振るのだった。

 

 

 

(第64話、終わり)

 

 

*1
原作OVAでは「ぶんどき」と発音していたが、実は此の作戦名、第二次大戦中の1940年12月8日から1941年2月9日に掛けて北アフリカ方面の英軍がリビア方面からエジプトへ侵攻して来たイタリア軍に対する反攻作戦の名称として実際に使っている。其の結果は、約15万人の将兵を持っていたイタリア軍が約6万人の英軍の反攻によって戦死約1.5万人・捕虜約11.5万人の損害を出して惨敗(対する英軍の損害は死傷者1873名)。此れによって英軍がリビア方面へ侵攻して来た為、北アフリカ戦線で窮地に立たされたイタリアはドイツに援軍を要請。其の結果、エルヴィン・ロンメル将軍率いる“ドイツアフリカ軍団”が派遣される事になる。

*2
P40は車長が砲手を兼ねる為、此の場合、車長のアンチョビ隊長が砲手も担当する。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第64話をお送りしました。

と言う訳で、此れにて対アンツィオ戦は決着しましたが、今回は色々と有りました。
先ずは、嵐ちゃん…主人公なのに、アンツィオ戦では1輌も撃破出来ませんでした!(苦笑)
勿論、チームのアシストに徹して勝利に貢献したのですが、此れは嵐に取って結構な一大事だった様です。
次の試合、嵐達“ニワトリさんチーム”は相手戦車を撃破出来るのか?(さり気無く、フラグ)
そして、何と今回、桃ちゃんが砲手を佐智子ちゃんに譲って自分は原作よりも一足早く装填手に!
果たして、次の試合の“あの名場面”は如何なってしまうのか!?(ガクブル)
と、今回は色々と小ネタ(と言う名の試行錯誤)を重ねてみましたが、今後も色々仕込んで行く心算ですので、宜しく御願い致します。

と言う訳で、次回は…勿論、アンツィオ高校名物の“アレ”をやりますよ!
更に、嵐とマルゲリータが試合後に再会した時、果たして何を語るのか…御期待下さい。

其れでは、次回をお楽しみに。

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