戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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今回は嵐ちゃんと西住殿が出ない為、番外編になりますが、本作オリジナルの展開が含まれていますので、是非読んで頂けますと幸いです。
其れでは、どうぞ。

其れと…本投稿日に開催される10周年記念の上映会、翌日の仕事の都合で行けないであります(泣)。



第65.5話「準決勝への序曲です!!」

 

 

 

此処は、“第63回戦車道全国高校生大会第二回戦・「プラウダ高校(青森)対ヴァイキング水産高校(岩手)」”の試合会場。

 

 

 

 

 

 

「ヴァイキング水産高校フラッグ車・Nbfz(ノイバウファールツォイク)、走行不能!よってプラウダ高校の勝利!」

 

 

 

「試合終了!二回戦最後の試合となった青森県代表・プラウダ高校と岩手県代表・ヴァイキング水産高校による“()()()()()()()()”は、昨年の大会覇者プラウダ高校が()()でヴァイキング水産高校の戦車10輌を全滅させて勝利。準決勝進出です!」

 

 

 

試合会場に場内アナウンスが流れた後、此の試合の実況を担当した首都テレビアナウンサー・飯塚 武司が改めて試合結果を全国の御茶の間へ向けて告げてから、解説担当の軍事研究家兼戦車道解説者・斎森 伸之へ話し掛ける。

 

 

 

「解説の斎森さん。此の試合は会場の地形や戦車の性能面でプラウダ高校が圧倒的有利な中、ヴァイキング水産高校は市街地エリアの建物を盾にしたゲリラ戦を展開しようとしたのですが、プラウダ高校は其れを許しませんでしたね!」

 

 

 

其れに対して、斎森は落ち着いた口調でこう答えた。

 

 

 

「はい。此の試合は会場が雪解け後の泥濘に囲まれた市街地で、泥濘地での機動力に劣るフランス製のソミュアS35やオチキスH35戦車を抱えるヴァイキング水産高校に対して、プラウダ高校が持つ旧ソ連製戦車は泥濘地での機動力だけで無く攻撃力や防御力も圧倒的優位でしたから、ヴァイキング水産高校は市街地に立て籠もる事で活路を見出そうとしたのですが、プラウダ高校は152㎜榴弾砲を持つKV-2や122㎜加濃(カノン)砲を持つIS-2重戦車で文字通り相手を“()()”しましたね」

 

 

 

其れに対して飯塚は「はい」と答えた後、斎森の隣に座って居る()()()()に向けて話し掛ける。

 

 

 

「そして()()()()()()()()として御越し頂いて居る“ニュージェネレーションズ”本田 未央さん、今日の試合を如何御覧になられましたか?」

 

 

 

すると、未央は持ち前の“元気一杯な声”で「私もプラウダ高校のKV-2や副隊長のノンナ選手が駆るIS-2がヴァイキング水産の戦車を隠れていた建物ごと砲撃して撃破するシーンを見て“凄い!”と思いました!」と返事をした処、斎森がこう語った。

 

 

 

「あの凄まじいパワーこそ、プラウダ高校が持つ()()()()()()()()()()ですからね」

 

 

 

そんな二人の会話に対して飯塚は「全く其の通りですね」と相槌を打ったのだが…其の直後、彼は実況映像に“異変”が起きた事に気付く。

 

 

 

「おや…ヴァイキング水産のⅢ号戦車N型・1号車の様子がおかしいですね?」

 

 

 

すると実況を聞いて()()()()()()()()に気付いた斎森が状況説明をする。

 

 

 

「此のⅢ号戦車N型は試合終盤に、プラウダ高校のKV-2重戦車からの砲撃で隠れていた建物ごと撃ち抜かれて、其の儘建物の瓦礫の下敷きになっていた筈ですが?」

 

 

 

其れに続いて、飯塚が実況映像に映っている様子を説明する。

 

 

 

「今、撃破されて白旗を掲げた状態のⅢ号戦車N型・1号車の周りにヴァイキング水産の選手達や戦車道連盟の審判団が()()()()()()()を浮かべ乍ら集まって来て居ます…何か有ったのでしょうか?」

 

 

 

実況映像で緊迫した様子が流れているのを見た未央が手で口を押さえた儘声を出せずに居る中、突然実況席に若い女性の声が飛び込んで来た。

 

 

 

「飯塚さん、真鍋です!」

 

 

 

すると其の声に対して、飯塚が反応する。

 

 

 

「大会本部に居るリポーターの真鍋(まなべ) (のどか)*1アナウンサー、何か有りましたか?」

 

 

 

其れに対して、全国の御茶の間のTV画面が“眼鏡を掛けたショートカットの若い女性”の姿を映し出した直後、彼女が緊迫した声で“実況映像に映って居た状況の説明”を始めた。

 

 

 

「ヴァイキング水産高校のⅢ号戦車N型・1号車ですが、先程のプラウダ(KV-2)高校の攻撃で()()()()()()が出た模様です!」

 

 

 

「「えっ!?」」

 

 

 

真鍋からの()()()()()()を聞いて驚愕の叫び声を挙げた斎森と未央を余所に、飯塚は実況担当らしく“冷静な口調”で大会本部に居る真鍋へ向けて問い掛けた。

 

 

 

「真鍋さん、詳しい状況は分かりますか!?」

 

 

 

其れに対して、真鍋は緊張した声で報告を続ける。

 

 

 

「詳しい事は分からないのですが、如何やら5人居るⅢ号戦車N型の乗員の内2人がプラウダ高校の重戦車・KV-2の攻撃で崩れた建物の瓦礫に当たって頭等に怪我をしている様です…あっ!たった今、戦車道連盟審判団からの要請で大会本部近くの仮設ヘリポートに待機して居た陸上自衛隊のUH-60JAヘリコプターに救急出動命令が出ました!此れから現場に向かって怪我をしたヴァイキング水産の選手を収容後、近くの病院へ緊急搬送する模様です!

 

 

 

すると飯塚が「分かりました!真鍋さん、此の後何か情報が入り次第、此方へ御伝え願えますか!?」と呼び掛けると、真鍋も「分かりました!」と返事をした後、大会本部に居る真鍋の姿を映していたTV画面が実況席の様子に切り替わった時、飯塚が解説者の斎森に向けて問い掛ける。

 

 

 

「斎森さん、大変な事になりましたね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()昨年の決勝戦(みほの人命救助)”以来と言う事になりますが……

 

 

 

其れに対して、斎森は隣で口を手で押さえた儘真っ青な顔になって居る未央に視線を向けた後、ゆっくりとした声で答えるのだった。

 

 

 

「そうですね。何れにしても、今はヴァイキング水産高校の選手の怪我の程度が軽い事を祈りたいと思います」

 

 

 

其の後、飯塚が「其れでは、此処で一旦CMを挟みます」と告げた後、試合の実況は中断した……

 

 

 

 

 

 

戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない

 

 

 

第65.5話「準決勝への序曲です!!」

 

 

 

 

 

 

其れから五日後、雪が舞い散る北の海を航行中のプラウダ高校学園艦内・応接室。

 

校舎の中とは思えない程重厚感溢れる室内に、二人の少女が丸机を挟んで座って居る。

 

一方は“旧ソ連軍の軍服”をモチーフにしたと言われるプラウダ高校の制服を着用しているのに対して、もう一人は青いブレザーが特徴の聖グロリアーナ女学院の制服を着ており、彼女が此の部屋に招かれた()()である事を示していた。

 

此の二人こそ、プラウダ高校戦車道チーム隊長・カチューシャと聖グロリアーナ女学院戦車道チーム隊長・ダージリンであった。

 

何方も“高校戦車道四強(黒森峰・プラウダ・サンダース・聖グロ)”の一角を占める強豪校の隊長に相応しい実力者である。

 

其処へ、カチューシャと同じプラウダ高校の制服を着た長身の美少女がロシアンティーと御菓子を持って二人の座って居る丸机の前に現れる。

 

プラウダ高校戦車道チーム副隊長・ノンナであった。

 

すると彼女は、此の部屋の客人であるダーリジンに“挨拶代わりの言葉”を贈る。

 

 

 

「準決勝は残念でしたね」

 

 

 

そう…先日行われた“第63回戦車道全国高校生大会・準決勝第一試合「黒森峰女学園(熊本)対聖グロリアーナ女学院(神奈川)」”の一戦で、ダージリン率いる聖グロリアーナ女学院は黒森峰に対して“隊長兼フラッグ車同士による一対一の決戦”を挑もうとしたものの、後一歩及ばず。

 

逆にダージリンが乗る隊長兼フラッグ車のチャーチル歩兵戦車を撃破されて、惜しくも敗れたのだ。

 

其処へ、カチューシャも勝気な口調で「去年カチューシャ達が勝った所(黒森峰)に負けるなんて!」と声を掛けたが、ダージリンは落ち着いた声で「“勝負は時の運”と言うでしょ?」と軽く()なしたのだった。

 

だが…冷静に答えたとは言え、後一歩の処で黒森峰戦車道チーム隊長・西住 まほを倒せなかった悔しさは如何許(いかばか)りだろうか?

 

すると、二人の間に立って居たノンナが「どうぞ」と、トレイに載せて持って来たロシアンティーとジャムを薦めた処、ダージリンは笑顔で「有難う、ノンナ」と答えた。

 

其れに対して、ノンナが「いいえ」と挨拶した後、ダージリンがジャムをロシアンティーに入れて溶かそうとした処、カチューシャが其れを見咎める。

 

 

 

「違うの!ジャムは中に入れるんじゃないの。()()()()()()()()()のよ」

 

 

 

そして、自ら“ロシアに於けるロシアンティーの正式な飲み方*2”を実践して見せたのだが、其処へノンナが一言……

 

 

 

「付いてますよ」

 

 

 

「余計な事を言わないで!」

 

 

 

カチューシャの口元にジャムが付いているのを教えたノンナに対して、彼女は怒り顔で文句を言うが、ノンナは微笑み乍ら受け流しているし、カチューシャ自身も本気で怒ってはいないらしい。

 

如何やら此の二人は“隊長と副隊長”と言う立場を超えた“強固な信頼関係”を築き上げている様だ…尤も、二人は体格差から来る雰囲気が余りにも対照的なので“姉妹”と言うよりも“親子”と言った方が相応しいが。

 

其処へ、ノンナがダージリンに“御菓子”が盛られた皿を差し出し乍ら“御菓子の中身”を説明した。

 

 

 

「ピロージナイェ・カルトーシカ*3をどうぞ。ペチェーニエ*4も」

 

 

 

其の説明を聞いたダージリンは微笑み乍らロシアンティーを口にした後、二人に向けて()()()()をした。

 

 

 

「次は準決勝なのに、余裕ですわね…二回戦のヴァイキング水産戦では()()()()があったのに」

 

 

 

すると、カチューシャは一瞬だけ表情を固くしたが、此処でノンナが落ち着いた口調で、ダージリンの質問に答えた。

 

 

 

「幸い、負傷したヴァイキング水産の選手二人は共に全治三日間の軽傷でした。頭部を負傷したので脳の後遺症が心配されましたが、病院での精密検査の結果も異常が無かった為、昨日退院したとの報告を受けています」

 

 

 

そして落ち着きを取り戻したカチューシャも笑顔で「流石に“事故が起きて負傷者が出た”と知った時は驚いたけれど、大事に至らなくて良かったわ。チームの皆も今は落ち着いているし、次の準決勝は何の問題も無いわ」と語り、“チームの士気に問題は無い”点を強調した処、ダージリンは再び二人へ向けて問い掛ける。

 

 

 

「練習しなくて良いんですの?」

 

 

 

其れに対してカチューシャは両手を広げつつ余裕たっぷりの声で「燃料が勿体無いわ…相手は聞いた事も無い弱小校(大洗女子)だもの」と答えたが、ダージリンは更なる問い掛けを発する。

 

 

 

「でも、隊長は家元(師範)(むすめ)よ…西()()()の」

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

ダージリンからの「西住流」の一言に反応したカチューシャは驚きの声を上げると傍に控えていたノンナに向かって「そんな大事な事を何故先に言わないの!?」と叫んだが、彼女は冷静な口調で「何度も言ってます」と答える。

 

其れに対してカチューシャが「聞いて無いわよ!?」と言い返した処へダージリンが「但し、(みほ)の方だけれど」と付け加えた瞬間、カチューシャは「えっ!?…何だ♪」呟き乍ら、ホッとした表情を浮かべた。

 

 

 

そう…去年の“第62回戦車道全国高校生大会・決勝戦”で、川に落ちた黒森峰のⅢ号戦車J型の乗員を救出する為、当時黒森峰の副隊長だった西住 みほが川へ飛び込んだ後、彼女が降りた黒森峰のフラッグ車・ティーガーⅠ型重戦車への砲撃を命じた結果、プラウダ高校戦車道チームに優勝を(もたら)した“()()()”が彼女なのだから。

 

 

 

そんな彼女の表情を見たダージリンは微笑み乍ら、みほの近況について「黒森峰から転校して来て、無名の学校(大洗女子)を此処迄引っ張って来たの」と語った処、カチューシャは笑顔でこう返した。

 

 

 

「そんな事を言いに態々来たの…ダージリン?」

 

 

 

其れに対して、ダージリンも笑顔で「まさか。美味しい紅茶(ロシアンティー)を飲みに来ただけですわ」と答えたのだが…彼女は心の中でこう呟くのだった。

 

 

 

「慢心しているわね、カチューシャ…そう言う事なら、みほさんの傍らに忠実な騎士(原園 嵐)が居る事は言わない方が良いわね。尤もノンナは既に彼女()をマークしているでしょうけれど」

 

 

 

 

 

 

其れから30分後。

 

ダージリンが帰った後、カチューシャとノンナは二人だけで()()を交わしていたが、其の内容はダージリンに語った物とは全く異なり、二人共準決勝へ向けての不安を抱えている事を感じさせた。

 

 

 

「ダージリンの前では上手く取り繕ったけれど…正直参ったわね。プラウダの皆を報道被害から守る為にやった()()を逆手に取られるとは」

 

 

 

先ずカチューシャが一言呟いた後、彼女は二回戦翌日の「首都新聞」朝刊・スポーツ欄に大見出しで書かれた()()()()()をノンナに見せる。

 

 

 

「プラウダ高、前回大会での“()()”に続いて、今度は対戦校の選手を負傷させる」

 

 

 

「対戦相手の選手の負傷すら厭わずに勝利を狙うプラウダ高を率いる“暴君・カチューシャ”…彼女達に“王者”の資格は有りや?」

 

 

 

其れを見たノンナが「申し訳有りません、カチューシャ」と答えたが、カチューシャは静かな口調で「いいのよ」とノンナを慰めた後、“今のプラウダ高校戦車道チームを取り巻く状況”について語る。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()の後、多くのメディアが手段を選ばず私達を叩いた中で“首都新聞と首都テレビ”だけは他のメディアによる強引な取材を批判して間接的に私達を守ってくれた。あの時は“日本にも良心的なメディアは有る”と思ったけれど、今にして思えば“此の時”を待っていたのかもね」

 

 

 

其れに対して、ノンナも頷くと「確かに。首都新聞と首都テレビは大会直前になってから我々の事を()()()()()()と位置付けて報道していましたから」と“首都テレビと首都新聞の報道姿勢の変化”を指摘した処、カチューシャも頷き乍らこう指摘した。

 

 

 

「多分、今年から全国大会の“特別後援社”になった首都新聞と大会の実況中継を独占している首都テレビは“去年の決勝戦での事件に続いて、ヴァイキング水産戦で怪我人を出した私達が大会を連覇すれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思っているのでしょうね」

 

 

 

其の指摘に対して、ノンナは苦い表情を浮かべ乍ら「其れは厄介ですね…彼らの主張は()()()()()()とは違って“()()()()()()()”だけに、私達も反論が出来ません」と答えると、カチューシャは表情を引き締めて、こう結論付けるのだった。

 

 

 

「となると、次の準決勝は“無名校・大洗女子に対して()()()()()()()()()()()()()()()()()”事が求められるわね…中々難しいけど、こうなった以上はやるしかないわ」

 

 

 

其の結論を聞いたノンナは「はい」と答えた後、一言付け加える。

 

 

 

「其れとカチューシャ、大洗女子ですが」

 

 

 

其れに対して、カチューシャ「何?」と問い掛けると、ノンナは真剣な口調でこう語る。

 

 

 

「あそこには西住 みほの他にもう一人、()()()()()が居ます…“みなかみの狂犬・原園 嵐”。東日本の戦車乙女達の間で、彼女の名前を知らない者は居ません」

 

 

 

すると、カチューシャは少し考えた後で「原園…ああ、強襲戦車競技(タンカスロン)の昨シーズン最終戦でボンプル高のヤイカと決闘して勝った()?でも、所詮は()()()()()()()で名を売っただけでしょ?」と答えたが、ノンナは小さく頷き乍らも次の様に反論した。

 

 

 

「ですが、彼女()は昨年の全国中学生大会でも“群馬みなかみタンカーズ”のエースとして大会初出場のチームを準優勝に導いています。侮るのは危険です」

 

 

 

だが、カチューシャはノンナの反論に対して冷静な口調でこう答える。

 

 

 

「でも、みなかみタンカーズは其の大会の決勝戦で黒森峰中等部の“()()”五代 百代にフラッグ車を撃破されて負けたでしょ?なら、今の私達でも対処出来るわ」

 

 

 

其の答えを聞いたノンナは隊長の意見に納得したらしく、小さく頷くと「はい。愈々(いよいよ)となれば私が彼女()に直接引導を渡します」と返事をした処、カチューシャは済まなそうな声でこう答えたのだった。

 

 

 

「悪いわね…ノンナに負担をかける様な事になるけれど」

 

 

 

其れに対して、ノンナは毅然とした口調で「いいえ。私はカチューシャと共に在ります」と答えると、二人共“胸の(つか)えが取れた”かの様な笑顔を浮かべ合っていた。

 

 

 

だが、此の時二人は理解出来て居なかった…“みなかみの狂犬”原園 嵐の“()()”と“()()”を。

 

 

 

 

 

 

同じ頃、此処は東京・上野駅近くに在る首都新聞社・本社ビル内の“編集局・運動部”のオフィス。

 

同社編集局・運動部々長付の“戦車道担当・専属契約ライター”・北條 青葉が直接の上司である編集局・運動部所属のデスク・中田(なかた) 城一郎(じょういちろう)に問い掛けていた。

 

 

 

「中田さん…プラウダ高校に対する報道内容、()()とは言え“あれで良かった”のでしょうか?」

 

 

 

其れに対して、彼は微笑み乍ら(おど)けた声で「何、アレは首都テレビの番組プロデューサーから“プラウダ高校に関しては、あの()()()()で報道して欲しい”と言われていたんでな」と答えた処、突然青葉の後ろから別の人物が話し掛けて来た。

 

 

 

「そうそう、俺が大学時代の後輩でもある“ジェイムズ(中田)*5”に頼んだんだよ♪」

 

 

 

其の声に驚いた青葉が「えっ!?」と叫び乍ら後ろを振り向くと、其処にはパンチパーマにサングラスを掛けた顔で“如何見ても何処かのヤクザの若頭にしか見えない男”が立っていた。

 

其の姿を見た青葉は表情を凍り付かせたが、其れに対して中田は困り顔で“パンチパーマの男”に向けて答える。

 

 

 

「八坂先輩…“ジェイムズ(中田)”と呼ぶのは止めて下さいよ。幾ら俺の母親が英国人だからって、其のミドルネームは使っちゃいませんから」

 

 

 

其れに対して、彼は中田に向かって「いや、御前って“日本人と言うよりも()()()と言った方が良さそうな彫りの深い顔”だし」と笑顔で返した処、落ち着きを取り戻した青葉が“パンチパーマの男”の正体に気付いて声を掛けた。

 

 

 

「あの…失礼ですが、貴方は首都テレビ・スポーツ部プロデューサーで、今年の戦車道全国高校生大会の実況中継で総合プロデューサーを担当している八坂(やさか) 信夫(のぶお)さんですか?」

 

 

 

すると八坂は笑顔で頷いた後「やあ!君が“ジェイムズ(中田)”の下で戦車道全国高校生大会の記事を書いている青葉ちゃんだね。君の書く記事は中々鋭いから何時も読んで居るよ」と語った処、青葉は「有難う御座います」と答えて一礼した後、彼に向かって問い掛けた。

 

 

 

「其れで、八坂さんに質問があるのですが…何故、プラウダ高校を()()()()()()と言う姿勢で報道しているのですか?幾ら去年の決勝戦の事が有るとは言え、何だか彼女達を虐めている様な気がして……」

 

 

 

すると、八坂は苦笑いを浮かべつつ「いや…別にプラウダ高の子達を虐めている心算は無いんだけどね」と語った後、真面目な口調で答えた。

 

 

 

「でも青葉ちゃん。“視聴者目線”で考えて御覧?試合中の事故とは言え、“()()()()()()が大会を勝ち進んで行くのを見るのが()()()”かい?」

 

 

 

「其れは……」

 

 

 

八坂からの指摘に意表を突かれた青葉が口籠っていると、彼は「まあ、こっちとしても“()()()()()()()()なのは事実”だけどね、嘘を吐いている訳じゃ無い」と前置きした上で“首都新聞・首都テレビと戦車道全国高校生大会を取り巻く関係”について説明し始めた。

 

 

 

 

 

 

昨年の第62回戦車道全国高校生大会でプラウダ高校が優勝後、対戦相手だった黒森峰女学園の優勝を当て込んで今後の宣伝方針を決めていた為に“予定”を狂わされた国内各メディアが“プラウダ高校叩き”に狂奔する余り、試合には無関係だったプラウダ高の一般生徒を狙って“()()()()()()()”を行っていた事実が“首都新聞”と“首都テレビ”によって大きく報じられて()()()()()を集めた結果、此の事態を重く見た日本戦車道連盟は国内各メディアに対して“()()()()()()()()()()”を要請。

 

そして“()()()()()()()”を行ったメディアに対する()()()()()()()()()()を兼ねて、此の件で冷静な報道姿勢を貫いた“首都新聞社”を今年の第63回戦車道全国高校生大会から“大会の特別後援社”に起用すると同時に、同社との間で“日本戦車道連盟が管轄する全ての公式試合の独占配信権に関する契約”を締結。

 

此れにより首都新聞社は“戦車道の公式試合を独占的に配信する権利”を得ると同時に、TV放送に関する権利も関連会社の首都テレビが独占する事となったのである。

 

此れは今迄「スポーツコンテンツが弱い為、読者と視聴者が中々増えない」と言う弱点を抱えていた首都新聞社と首都テレビに取っても“メリットが有る”と受け止められていた。

 

 

 

 

 

 

「と言う訳で、此れを機会に我々首都テレビと首都新聞社は二年後の開催が有力視されている“戦車道世界大会の日本開催”と“来年度に予定されている戦車道プロリーグ開幕”を見据えて“日本での戦車道人気を盛り上げよう”と様々な施策を打つ事になった…我々としても、戦車道人気を盛り上げる事で高校生大会のTV視聴率と新聞購読者を増やして“長年続いて来たTV視聴率と新聞発行部数のランキング万年四位からの脱出”に繋げたいからね

 

 

 

そんな八坂の説明を聞いた青葉は頷き乍ら「と言う事は…世間では戦車道も“スポーツの一種”と見做されている以上、戦車道人気回復の為には()()()()()()()()()()()()()()()()って事なんですね」

 

 

 

すると八坂は“我が意を得たり”と言わんばかりの表情で「青葉ちゃん、良く分かっているじゃないの♪」と褒めた後、こう語った。

 

 

 

「其れに考えて御覧…此の儘行くと今大会の決勝戦は“前回大会決勝戦で仲間達の命を助けた副隊長(みほ)を追い出した黒森峰”対“前回大会では人命救助に行った相手校の副隊長(みほ)が乗って居たフラッグ車を撃破して優勝した上、今大会では相手校の選手を怪我させてでも連覇を狙うプラウダ”って構図になるんだ…此の組み合わせ、ウチや戦車道連盟としては()()()()()()()も良い処だと思わないか?

 

 

 

「あっ!?」

 

 

 

八坂からの指摘の中に“今大会決勝戦で予測される懸念事項”が存在する事に気付いた青葉が声を上げると、其れ迄ずっと話を聞いて居た中田がこう指摘する。

 

 

 

「つまり、ウチが新たなスポーツコンテンツの柱として育てようとしている“戦車道の道”が()()()()()()()()()()()()()()と言う事さ」

 

 

 

其の指摘に対して青葉は心配気な表情で「今の儘だと“戦車道は選手の安全を考えない危険なスポーツ”と言う致命的なマイナスイメージを視聴者や新聞購読者に植え付けてしまう恐れが有るんですね」と語った処、二人の話を聞いて居た中田が小さく頷いた後、こう答えた。

 

 

 

「其の通りだ。だから我が社としては“試合中に対戦相手の選手の生命を軽視するプレイを繰り返すプラウダ高の戦い方は批判せざるを得ない”訳だ」

 

 

 

其れに対して八坂も二人に向かって「ああ」と同意の呟きを漏らしてから“意味深な事”を語り出した。

 

 

 

「だから俺は“今度の準決勝第二試合、()()()()()()大洗女子に勝って欲しい”と願っている。前回大会決勝戦からの流れを見ている限り、そうならないと戦車道ファンも大会実況中継の視聴者も()()()()()()んじゃないか?って気がするのさ

 

 

 

其の言葉を聞いた青葉が「其れって……」と呟くと、中田が苦笑いを浮かべつつ口を挟む。

 

 

 

「八坂先輩、だからと言って“()()()”は無しですよ。仮にやったらこっちの首を絞めるだけですから」

 

 

 

すると彼は(おど)けた口調で「当たり前だよ。俺は報道部出身のTVマンとして“嘘と捏造が一番嫌い”なんだ」と答えた後、こう付け加えたのだった。

 

 

 

「今の俺達に出来る事は…()()()()()()()()()()を、有りの儘の姿で全国の視聴者や新聞購読者へ伝えるだけさ」

 

 

 

(第65.5話、終わり)

 

 

*1
彼女の名前に心当たりが有る方は、私の同志です(笑)。

*2
一説によると、ロシアで此の様な飲み方をするのは「ジャムを直接紅茶に入れると紅茶が冷めてしまい、体を温められない」のを防ぐ為らしい。

*3
ロシア語で“ジャガイモ・ケーキ”と言う意味だが、実際はジャガイモは使わず、粉々にしたビスケット・スポンジ生地・パン粉等をベースにバター・練乳・牛乳で作ったクリームとココア等を混ぜてジャガイモの様な形にした旧・ソ連時代から有るスイーツ。

*4
ロシア語で“クッキー”を意味する。

*5
此の二つの名前にピンと来た方、直ちにFAF特殊戦第5飛行戦隊へ出頭せよ(笑)




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第65.5話をお送りしました。

さて、今回は番外編として本作オリジナルの展開である“準決勝目前のプラウダ高校”と“首都新聞・首都テレビ”の“内情”について色々と書かせて頂きました。
第二回戦で、対戦校の選手を怪我させていたプラウダ高。
此れによって、プラウダは次の準決勝・対大洗女子戦では“クリーン且つ圧倒的な力の差を見せて勝つ”必要が生じる事に…果たして、其の結末や如何に?
更に、其のプラウダ高を批判する論調を強める首都新聞・首都テレビ。
其の背後には、彼らが戦車道に関わる事になった理由と“戦車道人気回復”を図る事で視聴率や新聞購読者の増加に繋げる為にはプラウダの様な学校が強くなるのは不味いと言う判断が有りました。
そして、首都テレビが放送する高校生大会の実況中継を担当する八坂が意味深な事を。
今後、彼は何をやるのでしょうか?(ヒント・ラストの台詞)

其れでは、次回をお楽しみに。
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