戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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今回は、ガルパンとは無関係な話を少々。
先月から放送が始まった「機動戦士ガンダム・水星の魔女」を見た処、まとめの方で「本作の元ネタはシェイクスピアの“テンペスト”では無いか?」と言う話題が有って、其れは其れで説得力が有ったので楽しめたのですが…個人的には、何故か「装甲騎兵ボトムズ」の雰囲気も入っているのではと言う気が。
特に、主人公であるスレッタとミオリネの関係性がキリコとフィアナを連想させるんですよね…しかもスレッタは自分の正体を知らないらしいし。
今後の展開次第では、スレッタが自分の正体を知ろうとした時に何が起きるのかが気になります…尤も、彼女の場合“異能生存体”と言うよりは“PS”の方が近そうですが。

其れでは、どうぞ。



第66話「不穏な空気が漂っています!!」

 

 

 

“第63回戦車道全国高校生大会”を勝ち進んで来た私達・大洗女子学園が、昨年の大会覇者・プラウダ高校との準決勝戦迄後二日となった日の放課後。

 

学園の戦車格納庫では、明後日の試合に備えて自動車部々員が総出で戦車道チームの全戦車の整備を進めていた。

 

そんな中、自動車部々長・ナカジマ先輩が皆の前で“あんこうチーム”のⅣ号戦車について説明を行う。

 

 

 

「長砲身付けた(つい)でに外観も変えて置きました」

 

 

 

其れを聞いた秋山先輩が嬉しそうな声で「F()2()っぽく見えますね♪」と答え、続けて“ニワトリさんチーム”装填手・二階堂 舞も笑顔で「此れで火力も私達のM4A3E8(イージーエイト)や“カバさん”のⅢ突に負けなくなったね♪」と語った処、ナカジマ先輩も笑顔で「そうでしょ?」と返事をするのを見た皆も笑顔でⅣ号戦車の姿を見ていた。

 

実は、今回の自動車部による整備を機会に“あんこうチーム”のⅣ号戦車はオリジナルのD型からF2型(実際は此の形式名称で呼ばれたのは極短期間で、後に“G初期型”と改称したのだけど)仕様へと改装されたのだ。

 

其れに伴い、戦車砲が此れ迄の24口径75㎜砲KwK37から対アンツィオ戦直前に行われた学園艦内の戦車捜索の結果、旧・部室棟の庭で発見された“43口径75㎜砲KwK 40”に交換された他、追加装甲等多数の仕様変更が施された為、“あんこうチーム”のⅣ号戦車は此れ迄とはほぼ別物の戦車へ進化を遂げた。

 

更に、同様に戦車捜索で発見されてからレストアを進めていた新戦力・フランス製の“ルノーB1bis重戦車”も整備が完了。

 

此れで大洗女子学園・戦車道チームの戦力は大きくアップした。

 

一方、新たな愛車・Ⅳ号戦車F2型仕様の姿を見た西住 みほ隊長も「有難う御座いました、自動車部の皆さん」と御礼を言うと、ナカジマ先輩は嬉し気な口調で「いえいえ、まあ大変だったけど凄く遣り甲斐が有りました♪」と答えた処、“原園車輌整備”から自動車部員のサポートにやって来た張本 夕子さんが(おど)けた声で「刈谷さん(工場長)からの()()を受けた成果が出たね♪」と語ると、ナカジマ先輩は慌てた声で「いや~私達も未だ未だ未熟ですから!」と答えた時、其の慌てぶりに釣られて皆が一斉に笑い出した。

 

 

 

 

 

 

一方、盛り上がっている皆の姿を見た生徒会副会長・小山 柚子先輩は、傍らに居る生徒会広報・河嶋 桃先輩に向けて話し掛ける。

 

 

 

「Ⅳ号の砲身が変わって新しい戦車(ルノーB1bis)が1輌……」

 

 

 

其れに対して、河嶋先輩が「ソコソコ戦力の補強は出来たな」と答えた処、西住隊長が小山・河嶋両先輩に向けて問い掛ける。

 

 

 

「あのー、ルノー(B1bis)に乗るチームは?」

 

 

 

すると戦車格納庫の奥からやって来た“おかっば頭の生徒三人(風紀委員)が姿を現し、先頭に立つ少女が皆に向けて申告をした。

 

 

 

「今日から参加する事になりました、園 みどり子(ソド子)と風紀委員です。宜しく御願いします」

 

 

 

「御紹介に(あずか)りました、風紀委員の後藤 モヨ子(ゴモヨ)です。宜しく御願いします」

 

 

 

「同じく、金春 希美(パゾ美)です。宜しく御願いします」

 

 

 

そして三人が丁寧な御辞儀をして挨拶を済ませた処、相手の中に園先輩(ソド子)が居るのに気付いた麻子先輩が「あっ」と声を上げた時、目の前に角谷生徒会長が現れると皆に向かって園先輩(ソド子)の事を改めて紹介したのだが……

 

 

 

「略してソド子(園先輩)だ。色々教えてやってねー♪」

 

 

 

其の()()()()()()()に対して園先輩(ソド子)「会長、名前を略さないで下さい!」と叫ぶが、角谷会長は其れを無視しつつ西住隊長に向かってこう問い掛けた。

 

 

 

「何チームにしようか、隊長(みほ)?」

 

 

 

其れに対して、西住隊長は「えっ?…う~ん」と少し悩んだ後……

 

 

 

「B1bisって、()っぽく無いですか?」

 

 

 

其れに対して、私の傍に居た“ニワトリさんチーム”砲手・野々坂 瑞希(ののっち)が「えっ…西住隊長、まさかの()()()()?」と呟き、同じチームの副操縦手・長沢 良恵ちゃんが「“()”って…西住隊長、()()()()()()()()()()()()()()*1んじゃ!?」と呆れ声を上げたのを聞いた私が小声で『二人共…西住先輩、普段はあんな感じなの知っているでしょ?』と返事をした処、今度は角谷会長が“ノリの良い声”でこう答えた。

 

 

 

「じゃあ“()”に決定~♪」

 

 

 

此れに対して園先輩(ソド子)()ですか!?」と角谷会長に反論する中、今度は小山先輩が発言する。

 

 

 

「戦車の操縦は冷泉さん、指導してあげてね」

 

 

 

すると仰天した園先輩(ソド子)が「私が冷泉さんに!?」と叫んだのに対して、麻子先輩が何時ものぶっきら棒な声で「分かった」と答えた処、園先輩(ソド子)が彼女に詰め寄ると……

 

 

 

「成績が良いからって好い気にならないでよね!」

 

 

 

と叫んだのに対して、麻子先輩も眠そうな表情を変えない儘……

 

 

 

「じゃあ“自分で”教本見て練習するんだな」

 

 

 

と言い返した為、園先輩(ソド子)は「何無責任な事言ってんの!?ちゃんと分かり易く、懇切丁寧に教えなさいよ!」と怒鳴るが、麻子先輩は目を細めて「はいはい」とあしらった為、園先輩(ソド子)も「“はい”は1回でいいのよ!」と怒鳴り返すが、麻子先輩は相変わらずの口調で……

 

 

 

「はーい」

 

 

 

と返した結果、“此の儘だと二人が喧嘩を始めてしまう”と直感した“ニワトリさんチーム”操縦手・萩岡 菫が慌てて二人の間に割って入り、「園先輩(ソド子)、私も一緒に教えますから喧嘩は止めて下さい…冷泉先輩も挑発は止めて下さ~い!」と叫ぶ破目になった。

 

そんな三人の姿を小山先輩と共に見て居た河嶋先輩は溜め息を吐いた後、視線を私達に向けてから凛とした声で皆に“檄”を飛ばした……

 

 

 

「次は愈々(いよいよ)準決勝!しかも相手は去年の優勝校・プラウダ高校だ…絶対に勝つぞ!()()()()()()()なんだからな!」

 

 

 

「「「『!?』」」」

 

 

 

彼女からの()()()()()()()の一言に驚く私と“ニワトリさんチーム”の瑞希・菫・舞。

 

そう…私達“群馬みなかみタンカーズ組(嵐・瑞希・菫・舞)”は大洗女子学園で戦車道を始めるに当たり、私の母・明美と生徒会トリオ(杏・柚子・桃)から“此の戦車道高校生大会で優勝しないと学園が廃校になる”事を知らされているのだ*2

 

しかし、此の事は緘口令が敷かれている為、此の事実を知るのは私達“群馬みなかみタンカーズ組(嵐・瑞希・菫・舞)”4人の他には、生徒会で構成された“カメさんチーム”の4人(生徒会トリオの他に、農業科一年生の名取 佐智子も一回戦のサンダース戦の時に此の事実を知っている)と、私達戦車道チームの支援者である私の母・明美と大叔母・鷹代さん、そして周防 長門さんしか知らない(只、此の時の私は知らなかったが、実は母の秘書・淀川 清恵さんと母の会社の工場長・刈谷 藤兵衛さんも母から事情を知らされていたのを後になって知った…其の事を告げたのは勿論“あの母親(明美)”だ)。

 

其れなのに、河嶋先輩は“仲間達には知られてはならない秘密”である“大会で負けたら母校が廃校になる事実”をバラしかねない発言をした為、私は彼女の話を止めようと思って声を掛けようとした時。

 

 

 

「如何してですか?」

 

 

 

“ウサギさんチーム”75㎜砲々手・山郷 あゆみが私よりも先に河嶋先輩へ問い掛けると、同じチームの操縦手・阪口 桂利奈ちゃんも「負けても次が有るじゃ無いですか?」と語り、続けて同チームの通信手・宇津木 優季も「相手は去年の優勝校だし♪」と話した後、同じくチームメイトで37㎜砲々手・大野 あやが「そうそう、胸を借りる心算で……」と告げた時、河嶋先輩が切羽詰まった声で……

 

 

 

「其れでは駄目なんだ!」

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

 

彼女の“絶叫”に驚かされた皆が呆気に取られていると……

 

 

 

「勝たなきゃ駄目なんだよね」

 

 

 

角谷会長が“意味深な声”で河嶋先輩の発言を肯定した結果、皆は不安気な表情の儘黙り込んでしまった。

 

 

 

「原園さん…河嶋先輩も会長さんも如何しちゃったんですか?」

 

 

 

其処へ“ニワトリさんチーム”副操縦手・長沢 良恵ちゃんが私に向かって問い掛けて来たので、私は悩みながらも……

 

 

 

『いや…河嶋先輩も会長も一寸テンパっちゃっているのかも?』

 

 

 

と答え乍ら、私は自己嫌悪に陥る。

 

“ニワトリさんチーム”の中で唯一“群馬みなかみタンカーズ”出身では無い彼女は“生徒会と私達が共有する秘密=大会で優勝出来なければ母校が廃校になる”を知らないのだ。

 

だが、そんな私の悩みを余所に河嶋先輩は「西住、指揮」と命じた為、西住隊長は「あっ、はい!」と答えた後「では練習開始します!」と皆へ指示を出した。

 

 

 

「「「『はいっ!』」」」

 

 

 

西住隊長の指示の下、皆は不安を抱え乍らも其々の戦車へ乗り込んで行く…其の時、私の耳に角谷会長と西住隊長の会話が聞こえて来た。

 

 

 

「西住ちゃん」

 

 

 

角谷会長からの呼び掛けに西住隊長が「はい?」と答えた時、角谷会長が告げた言葉が私に衝撃を与えた。

 

 

 

「後で“大事な話”が有るから生徒会室へ来て」

 

 

 

『!?』

 

 

 

会長…若しかして、“生徒会の秘密”である “此の戦車道高校生大会で優勝しないと学園が廃校になる”事実を西住隊長に知らせるのですか!?

 

 

 

『如何しよう…西住隊長は優しい人だから、此の事を知ったらプレッシャーで潰れてしまうかも知れない。でも隊長として何時かは知らなければならないだろうし、私は如何すれば!?』

 

 

 

私は心の中で西住隊長が“此の戦車道高校生大会の結果が母校の運命を決める”事実を知る事について底知れぬ不安を抱いたが、同時に今の自分には何も出来ない事に悔しさを感じ乍らも自分の愛車・M4A3E8(イージーエイト)へ乗り込むしか無かった……

 

 

 

 

 

 

…暗い大広間の中に設置されたプロジェクターから映像が流れている。

 

 

 

「敵は!?」

 

 

 

「正面!」

 

 

 

「撃ちます!」

 

 

 

聖グロリアーナ女学院戦車道チーム隊長車兼フラッグ車・歩兵戦車チャーチルMk.Ⅶが“65高地*3”の頂上へジャンプし乍ら躍り出ると、車内では乗員達がジャンプの衝撃をものともせず砲撃準備を整えた。

 

其れも其の筈…彼女達が乗るチャーチルMk.Ⅶの目前には、此の試合の対戦相手である黒森峰女学園戦車道チーム隊長(西住 まほ)兼フラッグ車・ティーガーⅠ重戦車が後ろを向けた状態で高地頂上に停車して居るのだ。

 

此の試合、会場は第二次世界大戦の北アフリカ戦線で英軍が勝利を収めた事で戦局のターニングポイントとなった“第二次エル・アラメインの戦い”を彷彿とさせる起伏の在る砂漠地帯だったが、其の分見晴らしが良い為に戦前の予想では“遠距離射撃能力に優れたドイツ製戦車を多数持つ黒森峰が有利”と見られていた。

 

其の上、戦車の質では戦車道の車輌レギュレーション上、優秀なドイツ製戦車を多数持つ黒森峰に対して聖グロは圧倒的に不利である。

 

しかし、聖グロ戦車道チーム隊長・ダージリンと隊員達は諦めなかった。

 

此の試合に巡航戦車クロムウェル1輌とクルセイダー2輌を投入して敵陣の捜索と攪乱を行った彼女達は黒森峰戦車道チームの目を欺きつつ、同チーム隊長・西住 まほが駆るフラッグ車・ティーガーⅠ重戦車が居るであろう場所を探ったのだ。

 

其れに対して、黒森峰はチームを主力と別動隊に分けて聖グロを挟み撃ちにしようとしたが結果的に混戦状態に陥った事もあり、ダージリンが駆るチャーチルMk.Ⅶは秘かに戦場から離脱した後、北側に在る“65高地”頂上を目指して東側から回り込む様に登って行った。

 

此れは、“未だに見付かっていない黒森峰の隊長車兼フラッグ車(ティーガーⅠ)は、戦場に近い“65高地”頂上に居るに違い無い”と言うダージリンの“読み”だったのだが、其れは見事的中し、今黒森峰の隊長車兼フラッグ車(ティーガーⅠ)を砲撃する絶好のチャンスを摑んだのだ。

 

しかも相手のティーガーⅠは、()()()後ろを向いた儘で砲塔さえも旋回する気配が無い…西住流の後継者・西住 まほにしては“()()()()()()()”だが、勿論此れを見逃すダージリンでは無かった。

 

そして……

 

 

 

「アッサム、今よ…!?」

 

 

 

「!?」

 

 

 

其の時、砲撃命令を下す寸前だったチーム隊長兼戦車長・ダージリンと砲手のアッサムは()()()()に気付いて絶句した。

 

何故なら…()()()()()()()()()()()()1()()()()()()2()()()()()のだ!

 

1輌目は自分達が狙っていた“黒森峰の隊長車兼フラッグ車・ティーガーⅠ”。

 

そして2輌目は中戦車パンターG後期型で、其の車長用キューポラからは色白で薄い白金(プラチナ)色をしたセミロングの髪を靡かせた小柄な少女が凛とした表情を見せつつ、同じくチャーチルMk.Ⅶの車長用ハッチから上半身を出しているダージリンを睨んでいる…勿論、彼女が乗るパンターG後期型の75㎜70口径戦車砲Kwk42の照準は、聖グロの隊長車兼フラッグ車・チャーチルMk.Ⅶを完璧に捉えていた。

 

其の時、ダージリンは“何故、自分が目前に迫って来るのに、西住 まほの駆るティーガーⅠは応戦しないのか”と言う疑問が解けた…つまり、まほは“自分の援護に駆け付けたパンターG後期型の動きを邪魔しない為に()()()()()()()()()”のだと。

 

同時に、彼女は“()()()()()()()()()()()()()()()G()()()()()()()()()()()()()()()”と悟ると、自嘲気味にこう呟いた。

 

 

 

「如何やら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたい」

 

 

 

そして、黒森峰のパンターG後期型から轟く砲声。

 

 

 

「聖グロリアーナ女学院フラッグ車行動不能、よって黒森峰女学園の勝利!」

 

 

 

 

 

 

此処は熊本県熊本市の外れに在る「戦車道西住流宗家」。

 

其の大広間に設置されたプロジェクターで映されていた“第63回戦車道高校生大会・準決勝第一試合「黒森峰女学園対聖グロリアーナ女学院」”の試合映像が消されると、暗くなっていた大広間に再び照明が灯り、其処で机を挟んで向かい合って居る三人の女性の姿が見えた。

 

其の内、二人は黒森峰女学園の制服を着た少女であり、もう一人はスーツ姿の大人の女性である。

 

そして、スーツに身を固めた大人の女性…西住流戦車道師範・西住 しほが、向かい側に正座している自分の長女で黒森峰女学園戦車道チーム隊長・西住 まほの隣に座る色白で小柄な少女へ向けて声を掛けた。

 

 

 

「五代さん。()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

其の言葉に対して、声を掛けられた少女・五代 百代は少し赤面すると恐縮した口調で「いえ、試合が混戦になっていましたので、“自分が信じる道”を行った迄です」と答えた。

 

そう…大会準決勝第一試合・“黒森峰女学園対聖グロリアーナ女学院”戦に於いて、まほの駆るティーガーⅠ重戦車に対して“隊長車兼フラッグ車同士による1対1の決闘”を挑んだ聖グロのダージリン隊長が駆る歩兵戦車チャーチルMk.Ⅶの動きを先読みしてまほ車の援護に入り、ダージリン車を撃破して黒森峰に勝利を(もたら)した中戦車・パンターG後期型の車長こそ、チームの副隊長・逸見エリカの補佐を務める百代だったのである。

 

一方、しほは凛とした表情の儘百代に向かって答える。

 

 

 

「既にまほから話は聞きました。“試合の流れを読んだ上、的確なタイミングで隊長車の援護に入った貴女の行動が試合を決めた”と言っても過言ではありません。其れに隊長以下隊員達への伝達もしっかり出来ていたので、特に混乱が無かったと聞いて居ます」

 

 

 

其の言葉に、百代は「はい」と答えた後、冷静な口調で「ですが、聖グロの攪乱作戦で私達が一時的な混乱に見舞われたのも事実です。早急に今回の試合の教訓を整理し、決勝戦ではチームの皆がより働ける様に頑張ります」としほに告げた処、彼女は小さく頷いてから「宜しい。明日迄に報告書を纏めた上で、まほや副隊長の逸見さんとも良く相談してから隊員達に準決勝の教訓と決勝戦へ向けての訓練の方針を伝達しなさい」と告げた後、百代と一緒に正座をしていたまほに目配せをしてから再び百代へ指示を出した。

 

 

 

「では、私は此れからまほと話が有りますから、五代さんは部屋に戻って休みなさい」

 

 

 

すると、百代は「はい、其れでは失礼します」と告げてから、しほとまほへ向けて頭を下げた後、静かに立ち上がると大広間から去って行った。

 

 

 

 

 

 

そして大広間に一時の静寂が訪れた後、しほが冷静な声で、まほへ向けて語り始めた。

 

 

 

「まほ。先の一回戦では『()()()()()()()()()()()()()()()()』と言う“西()()()()()()()()()()()()()()()”をやったから心配していたのだけど、其の後の継続高校との二回戦と先日の準決勝では“西住流()()()戦い方”に戻ったわね」

 

 

 

其れに対して、まほも落ち着いた声で返事をする。

 

 

 

「はい。一回戦の時は()()()()()()()()()()()。試合後に師範(しほ)からの叱責で、“西()()()()()”を取り戻す事が出来、感謝しております」

 

 

 

すると、しほは冷静さを保った儘、こう返す。

 

 

 

「其れは良かったわ。だけど……」

 

 

 

此処で、しほの表情が一気に険しくなると、今日の“首都新聞”の朝刊をまほに見せた後、彼女に向かって詰問を始めた。

 

 

 

「貴女は、()()を知っていたの?」

 

 

 

「…はい」

 

 

 

母・しほの詰問に対して、沈痛な表情を浮かべ乍らも答えるまほ。

 

其の答えを聞いたまほは、小さく頷くとこう返した。

 

 

 

「そう…一回戦の知波単戦で()()()()()()()()()()のは、“()()()()()”だったのね」

 

 

 

しほがまほに見せた“首都新聞”朝刊のスポーツ欄には、明後日の夜に予定されている“第63回戦車道全国高校生大会・準決勝第二試合「プラウダ高校(青森)対県立大洗女子学園(茨城)」”の戦前予想が掲載されており、其の中には、今は大洗女子戦車道チーム隊長を勤める西住家の次女・みほの写真も掲載されている。

 

そして、既にしほは“長女のまほが黒森峰戦車道チーム隊長として臨んだ今大会の初戦・対知波単戦で『西住流の教えから外れた一騎駆けで知波単の戦車10輌全てを撃破した』理由”を概ね察していた。

 

まほは、此の試合の前に行われた一回戦の「大洗女子学園対サンダース大学付属高校」戦を観戦していた…そして、彼女は大洗女子の隊長が()()()()()()()()の次女・みほである事をしほに知らせていなかったのだ。

 

そんな中、しほは険しい表情の儘、みほの写真を睨みながら呟く。

 

 

 

「西住の名を背負っているのに、勝手な事ばかりして…遂には、まほの心迄乱れさせるとは」

 

 

 

そして、しほはみほの写真に向かって「此れ以上、“生き恥”を晒す事は許さないわ」と語ると、まほに向けて西()()()()()を語り始めた。

 

 

 

「“撃てば必中 守りは堅く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心”其れが西住流……」

 

 

 

其の後、しほは表情を変えない儘「まほ」と告げると、彼女が沈痛な表情の儘、こう答えた。

 

 

 

「私は御母様と一緒で西住流其の物です。でも、みほは……」

 

 

 

周囲からはそう思われていないが、まほに取ってみほは掛け替えの無い妹であると同時に“戦車道では自分や西住流と()()()()()を持っている”と感じており、嘗て戦車道を続けるか否か迷っていたみほに対して「自分だけの戦車道を見付けなさい」とアドバイスした上で心の中では“自分が西住流の戦車道を引き継ぐ事で、みほを自由にする”と決意していた…要するに、彼女は()()()()()()なのである。

 

更に言えば、今大会一回戦「大洗女子学園対サンダース大学付属高校」の試合を、しほには黙って見に行った結果、みほの戦い振りに刺激を受けたまほは、黒森峰の初戦・対知波単学園戦に於いて、自らが駆る隊長車兼フラッグ車・ティーガーⅠ重戦車()()()知波単の10輌の戦車を相手に大立ち回りを演じたのだ。

 

其れは、一度は戦車道を辞めた筈のみほが、新天地である大洗で生き生きと試合に臨んでいる姿を見た事で、まほの心に「私だって、みほ以上の戦いが出来るのだ!」と言う()()()が生まれた結果起きた“心の乱れ”でもあったのだ。

 

だが、そんなまほの想いを知る由も無いしほは「もういいわ。準決勝は私も見に行く」と告げた後、立ち上がってから止めを刺す様にこう言い放った。

 

 

 

「あの()に勘当を言い渡す為にね」

 

 

 

其の後、しほは大広間を出てから自分の部屋へ入るとスマホを取り出し、何処かへ電話を掛ける。

 

 

 

「もしもし、()()?今、何処に居るの…そう、もう直ぐみほに会うのね。なら、必ずみほに“勘当”の件を告げて置きなさい。あの()にも覚悟を決めて貰います」

 

 

 

 

 

 

だが此の後…しほは“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”が待ち受けているのである。

 

 

 

一体、しほの身に何が起きるのであろうか?

 

 

 

(第66話、終わり)

 

 

*1
要は“カモにされる”と言う事である。

*2
此の顛末については、本編第8話「これが、戦車道復活の真相です!!」を参照の事。

*3
標高65mの高地と言う意味。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第66話をお送りしました。

いよいよ明後日に迫った大会準決勝・対プラウダ戦。
しかし、例によって桃ちゃんがテンパった上、危うく“大会で負けたら大洗女子学園が廃校になる”と口走りかねない状態に。
更に会長が西住殿を生徒会室に誘うのを見た嵐ちゃんは心配しますが、何も出来ない……
一方、熊本の西住流宗家では、みほが再び戦車道を始めたのを知ったしほがまほの前で“準決勝で負けたら勘当”と言い放つ……
しかし、此の後しほはトンデモ無い目に遭います。
一体、何が待ち受けているのか?
原作とは一味違う、本作の展開に御期待下さい(ゲス顔)。

其れでは、次回をお楽しみに。

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