戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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先ずは、少々旧聞では有りますが……
祝!ガルパン最終章第4話&水曜どうでしょう最新作・2023年公開!
果たして、どっちが先に公開されるのか、乞う御期待!(爆笑)

其れは兎も角…前回のラストでしぽりんが電話を掛ける描写で気付いた人も居ると思いますが、今回はアニメ本編では無くコミック版第3巻の描写を元に展開します。
更にタイトルで想像が付くかも知れませんが、“あの人”が登場です(笑)。
果たして、何が起きるのか?
其れでは、どうぞ。




第67話「悪党見参です!!」

 

 

 

此の出来事は、“第63回戦車道全国高校生大会・準決勝”の対プラウダ高校戦を明後日に控えた水曜日の午後7時前に起きた。

 

 

 

「如何したの嵐?私の話、聞こえてる!?」

 

 

 

クラスメートで“ウサギさん(M3中戦車リー)チーム”リーダー兼戦車長・澤 梓から注意された私・原園 嵐は“ハッ!?”となると、彼女に向けて謝罪した。

 

 

 

『あ…御免。考え事してた』

 

 

 

「やっぱり…()()()()だと危ないよ?」

 

 

 

そう…今、私と梓は何時もより遅い下校途中なのである。

 

そんな中、梓から注意された私は『うん……』と答えるが、其の様子を見た彼女は“私の声に元気が無い”と気付いたのか、心配気な声で問い掛けて来た。

 

 

 

「嵐…考え事って、放課後の練習前に戦車格納庫で河嶋先輩が()()()()()()()って言った事?」

 

 

 

『うん。其れと“あの会長さん(角谷 杏)”も「…勝たなきゃ駄目なんだよね」って言っていたでしょ。元々戦車道復活を推し進めたのが生徒会だから、相当テンパっちゃってるみたいで正直心配なんだ』

 

 

 

私が梓の問い掛けに答えると、彼女も頷き乍ら答えた。

 

 

 

「だからか…あの後、私達“ウサギさん”と“ニワトリさん”のメンバー全員で夕食を食べに行ったのに、嵐だけボンヤリしていたから皆が気を利かせて“私と嵐だけ一緒に帰る事になった”のに」

 

 

 

実は、今日の放課後に行われた“戦車道チーム全体練習”終了後、“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”と“ウサギさん(M3中戦車リー)チーム”のメンバー全員で「準決勝へ向けての決起集会」と称して学校近くのファミレスで夕食を食べに行ったのだが、皆が「準決勝も頑張ろう!」と盛り上がっている中、私だけがボンヤリして居て食事にも殆ど手を付けなかったから、皆(特に瑞希(ののっち)ウサギさん(梓以外)チームの面々)が私に気を利かせた心算で“先のアンツィオ戦で()()()()事になった私と梓を二人きりにして帰る”事になったのだが……

 

でも私が、あの時“ボンヤリして居た()()()理由”は…梓には絶対に言えない。

 

私は()()()()()()()が起きる事を恐れているのだ。

 

一つ目は、今日の放課後の全体練習前に、河嶋先輩が()()()()()()()と言った事で……

 

 

 

『河嶋先輩が何時か“此の戦車道高校生大会で優勝しないと学園が廃校になる”と言う“仲間達には知られてはならない秘密”をバラしてしまうのではないか?』

 

 

 

と言う事態。

 

 

 

そして二つ目は、同じく放課後の全体練習直前に角谷生徒会長が西住先輩に告げた“あの言葉”

 

 

 

「後で()()()()が有るから生徒会室へ来て」

 

 

 

若しかすると…今頃、角谷会長は“生徒会の秘密”である “此の戦車道高校生大会で優勝しないと学園が廃校になる”事実を西住先輩に知らせているのだろうか?

 

でも西住先輩は優しい人だから、此の事を知ったらプレッシャーで潰れてしまうかも知れない。

 

そんな事になったら、私達のチームは空中分解して、とても試合処では無くなってしまうだろう。

 

折角、私も大洗に来て、()()()“戦車道が楽しい、仲間達と一緒に戦車道が出来て嬉しい”と思えて来たのに…一体、私は如何したら良いの!?

 

 

 

「嵐?」

 

 

 

だが此の時、梓が私の顔を不安気に見詰めているのに気付いたので、私は慌てて笑顔を作るとこう答えた。

 

 

 

『あっ…御免。其れから、()()とアンツィオ戦の時に約束した“()()()”は別だから、気を悪くしないでね!?

 

 

 

私は“自分の心の内を知られまい”と思ってアンツィオ戦の時に(瑞希(ののっち)の陰謀で約束させられた)“デート”の話を持ち出したが、梓は其れが()()にハマったのか……

 

 

 

「アッ…アハハ!気にして無いよ!」

 

 

 

と言った途端、急に私の右腕に両手を絡めて来て()()()()格好になった…そして彼女は“何故か”幸せそうな表情。

 

 

 

『アッ…え、え~と!?』

 

 

 

急に“カップルみたいな状況”になった事で慌てる私を見た梓は、(おど)けた口調で話し掛ける。

 

 

 

「あれ?“ののっち(瑞希)”から『嵐は“女子の扱い”が上手いから♪』って聞いて居たけど?」

 

 

 

『流石に女の子同士の()()()は…()()()()()()()けど、自分から誘った事は無いって!?』

 

 

 

すると、私の反応を見て笑っていた梓が、急に真面目な顔になって道の向こう側を指差した。

 

 

 

「嵐。あれ、西住隊長じゃない!?」

 

 

 

『えっ!?』

 

 

 

彼女の声を聞いた私が驚き乍らも視線を向けると、私達が歩いている道の向こう側に西住隊長が歩いているのが見える。

 

そして“()()()”に気付いた梓が一言付け加える。

 

 

 

「其れに隊長、綺麗な()()()()の人と一緒だけど…誰だろう?」

 

 

 

其の声を聞いた私が西住隊長の隣に居る()()()()に視線を向けた時…私は、薄っすらとだが彼女に()()()()()()()事を思い出した。

 

 

 

『あの人、名前は思い出せ無いけれど、何処かで顔を見た覚えが…あれ!?』

 

 

 

記憶を探り乍ら小声で呟いて居た私だったが、其の時“()()()”に気付くと梓に話し掛ける。

 

 

 

『一寸待って。()()()()()()()()()()(())()()()()

 

 

 

「あれは!?」

 

 

 

其の時、私は驚いている梓に向かって、口元に人差し指を立て乍ら無言で“喋らない様に(シーッ!)”と合図をしてから、二人の(あと)()けている()()の後ろに忍び寄ると、梓と一緒に小声で話し掛けた。

 

 

 

「『秋山先輩?』」

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

話し掛けられて驚く彼女に対して、私達は先程と同じく口元に人差し指を立てて静かにさせた後、改めて私が小声で問い質した。

 

 

 

『先輩、何でストーカー紛いの事をやっているのですか?』

 

 

 

「わ…私も正直“何をやってるの!?”と思っていますが、でも西住殿が」

 

 

 

「西住隊長が?」

 

 

 

私の質問に秋山先輩が“()()()”な答えを返した為、梓が戸惑い気味に問い掛けると、秋山先輩が「あれです」と言って西住先輩を指差す。

 

すると、和服美人と一緒に歩いている西住先輩は“今迄見た事の無い様な()()()()()()”を浮かべて居た。

 

其処で私が『西住先輩、ずっとああなんですか?』と問うと、秋山先輩は小さく頷いた後、「あの和服美人と暫く話をしてから、ずっとあんな表情です」と答えた時、二人が“或る建物”の階段を登って二階に在る玄関から建物の中へ入った。

 

其処は…我が母親(明美)が経営する「みなかみ戦車堂・大洗学園艦店・和風喫茶」である。

 

其処で私は、傍らに居る二人に向けて問い掛けた。

 

 

 

『私達も入りましょうか?』

 

 

 

其れに対して秋山先輩が「えっ!?其れじゃあ、私達は完全なストーカー……」と言い掛けた時、私がツッコミを入れる。

 

 

 

『でも、さっきの西住先輩が気になるんでしょ?』

 

 

 

すると、秋山先輩は観念した様な声で「はい……」と答え、梓も神妙な表情で頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

和風喫茶の店内へ入った私達は西住先輩と和服美人に気付かれない様、忍び足で二人が座って居るボックス席の隣の席へ座った後、和風メイド姿のウェイトレスに注文(オーダー)をしたのだが…秋山先輩と梓が共に“何を注文するか”で迷っている姿を見た私は、小声でこう話し掛けた。

 

 

 

『二人共…今日は私が奢ります。一人一品プラス・ドリンクバーと言う事で』

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

まさかの“奢り”に驚く二人を余所に、私は『大丈夫です』と告げた後、こう付け加えた。

 

 

 

『でも“此れ”だけは使いたく無かった…母から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

そして、私が財布からクレジットカードを出した瞬間、其れを見た秋山先輩と梓が小声で驚く。

 

 

 

「「えっ…其れ、()()()()()()()!?」」

 

 

 

其の声を聞いた私は、観念して()()を説明した。

 

 

 

『母は“()()()()()()()”を持っていて、私も家族会員だから本来は“同じ待遇”を受けられるのだけど“貴女は未成年ですから、会社の規約上「ブラック」では無く、一ランク下の「プラチナ」カードになります”ってカード会社の人から説明を受けた事が有るの。だから友達から“嵐は御嬢様なんだ”って言われるのが嫌で、此のカードは誰にも見せたくなかったの』

 

 

 

其れに対して、秋山先輩と梓が一緒に「「明美さん…凄い」」と答えると、私も溜め息を吐き乍らこう答えた。

 

 

 

『ハッキリ言って、ウチの(明美)は“凄い”と言うよりも“えげつない”のよ』

 

 

 

そんな遣り取りをしている内に、ウェイトレスが再びやって来て私達が注文した品を(テーブル)の上に置く。

 

因みに其々が注文した品は、私が“チョコレートケーキとレモンティー”、秋山先輩が“チーズケーキと紅茶”、梓が“苺ショートケーキとミルクココア”で、其れ等が揃った処で皆が食べ始めた頃、隣の席に座る西住先輩が和服美人と会話を始めた。

 

 

 

()()さん、何時も手紙有難う」

 

 

 

「いえ…みほ御嬢様も御元気そうで安心致しました」

 

 

 

此処で二人の会話を聞いて居た秋山先輩が「ん?此の人、西住流の方かな?」と呟いた時、私は『思い出した……』と呟き乍ら、例の()()()()()()()に気付いた。

 

其処で、梓が「嵐、あの人に見覚えが有ると言って居たよね…誰なの?」と問い掛けた為、私は記憶を辿り乍ら答える。

 

 

 

井手上(いでうえ) 菊代(きくよ)。長年西住家に住み込んで居る御手伝いさん』

 

 

 

其れに対して、秋山先輩が「何故知っているのですか!?」と問うた為、私はこう答える。

 

 

 

『西住先輩の母親である西住(しほ)師範と私の母(明美)が黒森峰女学園の同級生で、卒業後も友達同士だったと言うのは以前に話しましたよね』

 

 

 

其れはアンツィオ戦の前、“私が戦車道から逃げ出して大洗女子学園へ進学した理由”を西住先輩達の前で告白した時の事だ。

 

此の時、秋山先輩と梓も私の告白を聞いて居たから、二人共頷いたのを見た私は再び語り始めた。

 

 

 

『其れで以前、(明美)が自分のアルバムを私に見せた時、写真の中に西住家の人達と一緒に彼女が写っていて、其の時に彼女の事を教えて貰ったのです。だから彼女の顔は薄っすらと覚えていたけれど、さっき道端で出会った時は名前を思い出せ無かったのです』

 

 

 

其処で、梓が「じゃあ、嵐は西住(みほ)隊長の事を()()()()知っていたの?」と問い掛けたので、私は小さく頷いてからこう答えた。

 

 

 

()()()()はね…只、母が写真を見せた当時は、西住(しほ)師範と姉のまほさんの方が有名だったから、先輩については本当に名前しか知らなかった。先輩の事を意識し始めたのは“去年の戦車道全国高校生大会・決勝戦”を試合会場で見てからだよ』

 

 

 

私の答えに二人が揃って「「成程……」」と呟いた時、再び菊代さんが西住先輩に語り掛けて来た。

 

 

 

「最近のみほ御嬢様の御活躍、拝見しております」

 

 

 

其の言葉に秋山先輩が「そりゃあ大洗女子は今回の全国大会で大躍進!注目のダークホースですから!」と呟いたので、私が『先輩、静かにしないとバレますよ!?』と諫めた時、西住先輩が話し始めた。

 

 

 

「菊代さんが来たのは、()()()ですか?」

 

 

 

すると彼女は一口御茶を飲んだ後、「はい。今日私が来た事で御分かりかと思いますが……」と前置きした後、西住先輩へ向けてこう告げた。

 

 

 

「今回の大洗でのみほ御嬢様の件…()()()()()()()()()()

 

 

 

其の一言を聞いた秋山先輩が「()()って西住流の……」と呟き、梓も「其れって西住隊長の御母(しほ)さんの事だよね……」と呟いたのを聞いた私は、表情を引き締めてからこう答える。

 

 

 

『西住流師範・西住 しほ…西住先輩の母親であり乍ら、先輩を黒森峰と西住流から追い出した()()()

 

 

 

私の答えに、秋山先輩と梓の表情が強張ると同時に、菊代さんからの話を聞いて居た西住先輩も不安気な声で「やっぱり……」と呟くのが聞こえて来た。

 

其れから重々しい空気が流れた後、菊代さんが静かに語り始める。

 

 

 

「此の様な事、私(ども)が申し上げるのも憚られるのですが……」

 

 

 

其の言葉に、秋山先輩と梓が「「えっ…何!?」」と呟き乍ら不安を顕わにし、私は心の中で“()()()()()()”を予見して「まさか!?」と小声で呟いた時。

 

菊代さんから()()()()()()が告げられた。

 

 

 

「若しも今回の準決勝、みほ御嬢様がプラウダ高校に負ける事が有れば、()()()()()()西()()()()()()()()()()()

 

 

 

其の時、私は怒りを抑え乍ら小声で呟いた。

 

 

 

あの女(しほ)()()()()()()()のよ!?』

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

此の時、秋山先輩と梓が怯える様な表情で私を見ているのに気付いたので、ふと視線を手元に移すと、私は右手に持っていたフォークの柄を握り潰して捻じ曲げていた。

 

其れに気付いた私は、苦笑いを浮かべると二人へ向けて……

 

 

 

『あっ、御免。私、つい怒りが抑え切れ無くて…()()!?

 

 

 

だが私は、秋山先輩と梓が座って居る席の後ろのボックス席から“()()()()()()()()()()()”が立ち上がったのに気付いて驚愕する。

 

そして()()()の“()()()()()()()()”が聞こえて来た!

 

 

 

「ほぉ~♪聞いた、“()()()()”?次の準決勝で大洗女子が負けたら、みほさんが勘当されるんだって♪」

 

 

 

「ああ、“()()()()()”。私に取っては寧ろ“みほちゃんを()()に迎えるチャンス”が到来だな♪」

 

 

 

何と…此の場に、我が母親(明美)と周防 長門さんが居たのだ!

 

予想外の出来事に私が驚愕の叫び声を上げると、梓も後ろを振り返ってから……

 

 

 

「明美さん!?」

 

 

 

と叫び、続けて秋山先輩も後ろを振り返って……

 

 

 

「其れに、長門さん迄!?」

 

 

 

と叫んだ直後……

 

 

 

「「えっ!?」」

 

 

 

隣のボックス席からも叫び声が…其れは西住先輩と菊代さんだった!

 

其れに気付いた私・秋山先輩・梓は狼狽した余り、三人揃って……

 

 

 

「「『バ…バレたぁー!』」」

 

 

 

と叫んだ直後、和風喫茶のカウンターからワイシャツにネクタイを締めた制服姿の若いポニーテールの女性が早足で現れて……

 

 

 

「御客様、静かにして下さい!…って、嵐ちゃんに西住さん達!? 其れに社長(明美)や長門さん迄!?」

 

 

 

其の女性…「みなかみ戦車堂・大洗学園艦店」店長・伊良坂 美崎さんが私達の姿を見て驚愕していた。

 

 

 

 

 

 

母さん(明美)…何時の間に、西住先輩達をストーカーしていたのよ?』

 

 

 

「そう言う嵐こそ、()()でみほさん達をストーカーして居たよね?」

 

 

 

「いえ、明美さん。抑々(そもそも)私が、西住殿の事を気になって(あと)()けたのが悪いんです……」

 

 

 

「秋山さん、気にしなくて良いのよ♪其れより、みほさん。吃驚させちゃって御免なさいね」

 

 

 

「はい……」

 

 

 

此処は「みなかみ戦車堂・大洗学園艦店」の三階に在る“会議室”。

 

此の部屋は、休日になると戦車・ミリタリー関連の同人誌即売会や戦車模型のコンテストとか戦車道に関する講演会等のイベント会場として使われているのだが、今回は和風喫茶内で騒いでしまった私達全員と西住先輩・菊代さんが集められていた。

 

そして、私達の会話の合間に店長の伊良坂さんが改めて皆へ御茶菓子(和風喫茶で出している物だが、此れは“(明美)からの奢り”と言う形になった)を出してから会議室を出た後、今度は(明美)が菊代さんへ向けて話し始めた。

 

 

 

「其れより、“お菊ちゃん(菊代)”。御久し振り♪」

 

 

 

「“あけみっち(明美)”…吃驚したわ。後で奥様(しほ)には()()()挨拶に行こうとしてたら、行き成り現れるんだもの」

 

 

 

「ウフフ…私が経営している此の店に入ろうとした時点で察しは付いていたわよ♪」

 

 

 

其処へ私が『母さん…如何やって西住先輩と菊代さんが此処へ来るのを知ったのよ?』と口を挟んだが、(明美)は「秘密~♪」と惚けた儘、答えてくれなかった。

 

そんな時、西住隊長が戸惑い気味の声で問い掛ける。

 

 

 

「長門さん…“お菊ちゃん”って、菊代さんの事なんですか?」

 

 

 

其れに対して長門さんが「ああ。実は高校時代、明美が菊代に付けた渾名なんだ」と答えると、(明美)がこう語る。

 

 

 

彼女(菊代)はね、元々西住流の門下生で“しぽりん(しほ)”や私達とは同級生なの。だから黒森峰では常に“しぽりん(しほ)”が乗るティーガーⅠ重戦車の装填手をやっていたのよ」

 

 

 

すると、今度は長門さんが西住・秋山両先輩を見詰め乍ら、こう語った。

 

 

 

「だから、今のみほちゃんと秋山を見ていると当時のしほと菊代の姿を思い出すんだ。あの頃から二人は本当にピッタリ息が合っていたよ」

 

 

 

其の時、長門さんから“黒森峰時代のしほと菊代の様だ”と言われた西住先輩は恥ずかし気な笑顔を見せ、秋山先輩に至っては頬を赤らめつつ「本当ですか~嬉しいです♪」と惚気て見せる中、長門さんは菊代さんに視線を向けつつ、こう説明した。

 

 

 

「だから彼女は大学卒業後、西住家住み込みの家政婦を務めているんだ」

 

 

 

こうして“菊代さんのプロフィール”を知った私達が頷き乍ら納得していると、我が母親(明美)が呆れた表情を浮かべつつ、語り出す。

 

 

 

「しかし『次のプラウダ戦(準決勝)で大洗女子が負けたら、みほさんを勘当する』とはね。恐らく、()()()()()()()()()()西()()()()()()()()()()()()のでしょうけど、“しぽりん(しほ)”の頭も()()()()()()()のかしら…()()()()()()()()

 

 

 

其れを聞いた長門さんが「『魚は頭から腐る*1』だな」と呟くと“()()()()()()()”を聞いて居た秋山先輩が目を丸くしつつ、こんな事を言い出した。

 

 

 

「“()()()()()()()”って…親子(明美と嵐)()()()()()()()()()()

 

 

 

『秋山先輩、()()言うの止めて下さい』

 

 

 

秋山先輩の一言に、思わず私は“(明美)と一緒にしないで欲しい”と思いつつ文句を言った為、秋山先輩が「あっ…御免なさい」と詫びた後、其の様子を聞いて居た菊代さんが済まなそうな声で(明美)に向けてこう語った。

 

 

 

「“あけみっち(明美)”、返す言葉も無いわ。今の奥様…いえ、“しぽりん(しほ)”は“西()()()()()()()”に囚われた儘なのよ」

 

 

 

其れに対して(明美)は珍しく苦い表情を浮かべつつ、こう答える。

 

 

 

「やっぱり…“しぽりん(しほ)”がああも頑なな姿勢で居る裏には、黒森峰PTA*2会長の富永*3辺りが絡んでいるのかもね」

 

 

 

何時もの(明美)らしくない“シリアスな話”に、菊代さんも俯いた儘答えない為、私達の間に何も言えない雰囲気が広がっていた時、突然長門さんが菊代さんに問い掛けて来た。

 

 

 

「其れより菊代。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のを“しぽりん(しほ)”は知っているのか?」

 

 

 

すると、菊代さんが「えっ、それは本当ですか!?」と驚きの声を上げたのを聞いた長門さんはこう説明した。

 

 

 

「菊代も知っているだろう。大洗の学園艦は、明美の旦那(直之)さんの故郷だからな」

 

 

 

此の時、菊代さんは“ハッ”とした表情で我が母親(明美)を見詰めるが、(明美)は不敵な表情を浮かべつつ、こう呟く。

 

 

 

「成程、“しぽりん(しほ)”は知らないのか…此れは良い事を聞いたわ♪」

 

 

 

其れを聞いた長門さんが慌てた声で「おい、“あけみっち(明美)”。又、良からぬ事を企んでいるな?」と忠告するが、(明美)は其れを無視した儘、菊代さんへ“頼み事”を告げた。

 

 

 

「ねえ、“お菊ちゃん(菊代)”。一寸貴女のスマホ、貸してくれない?」

 

 

 

 

 

 

一方、此方は熊本市の外れに在る「戦車道西住流宗家」。

 

其の家の主である西住流戦車道師範・西住 しほは、自室で電話を待っていた。

 

彼女は先程、長女のまほに“次の準決勝・「大洗女子学園対プラウダ高校」戦を観戦し、大洗女子が負ければ自ら次女であるみほに対して勘当を言い渡す”と宣告した後、大洗女子学園・学園艦へ向かわせていた家政婦兼秘書の井手上 菊代にも「みほにも覚悟を決める為に“勘当”の件を告げて置く様に」と指示していたのだ。

 

そして、自室の机に置いていたスマホから着信を告げるブザーが鳴った時、此れを“菊代からの連絡”だと思い込んだしほは、スマホを操作して発信相手の番号を確認してから、こう告げた。

 

 

 

「もしもし…菊代か?」

 

 

 

だがスマホから流れて来た声は、彼女では無かった。

 

 

 

「“しぽり~ん(しほ)”、御久~!」

 

 

 

「なっ…あ、“あけみっち(明美)”!?」

 

 

 

何と流れて来たのは、常に冷静な菊代とは対照的な“明るくて楽天的(能天気)な声”…そう、嘗ての“戦車道仲間兼親友”・原園 明美であった。

 

実は、先程「みなかみ戦車堂・大洗学園艦店」三階・会議室で、菊代から“しほは、自分と長門が大洗女子学園・戦車道チームの支援者を務めている事を知らない”と聞かされた明美は、菊代のスマホを借りると長門と共に会議室の隣に在る事務所へと移り、其処から菊代のスマホを使ってしほへ電話を掛けたのだ。

 

因みに、明美は事務所へ行く時、菊代へ「私達が電話を掛けている間、みほさんや嵐達に“昔の私達の話”でもしてあげてね」と伝えた為、嵐が訝し気な声で『母さん(明美)、一体何を企んでいるのよ?』と問うたが、彼女は“不敵な笑み”を浮かべつつ、こう答えただけだった。

 

 

 

「詮索してはダメよ…此処から先は“大人同士の()()だから」

 

 

 

 

 

 

「何故、御前が出て来る!?」

 

 

 

“予想外の相手(明美)”からの挨拶に激昂するしほだったが、彼女はあっけらかんとした声で答えた。

 

 

 

「だって去年の秋、嵐に()()()()を言って以来、私とは一切口を利かなくなったじゃない。だから、こうでもしないと話す事さえ出来やしない」

 

 

 

其れに対して、しほは「先に絶交を宣言をしたのは誰だ?」と“二人が決別した理由”を持ち出したが、明美は其れには答えない儘“()()()”を突いて来た。

 

 

 

「其れより…聞いたわよ。“もしも今度の準決勝、大洗女子がプラウダ高校に負けたら、みほさんを勘当する”って。其れがしぽりん(しほ)の戦車道”なの?」

 

 

 

「貴様…菊代から話を聞き出したな!?」

 

 

 

明美の発言に対して、“高校時代の同級生だった菊代から無理矢理話を聞きだした”と思い込んだしほは再び激昂するが、彼女は“そんな物は馬耳東風”とばかりに、こう言ってのける。

 

 

 

「ふ~ん。でも此処で電話を切ったら()()するわよ?」

 

 

 

「何!?」

 

 

 

其の言葉にしほが絶句していると、再び明美は余裕たっぷりの口調で語り出した。

 

 

 

「だって私、此の春から戦車道を復活させた()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をやっているから」

 

 

 

「何だと!?」

 

 

 

明美から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を務めている”と言う()()()()()()を聞かされたしほが絶句する中、彼女は能天気な声でこう話す。

 

 

 

「其の分だと“しぽりん(しほ)”だけで無く、黒森峰OGやPTAの連中も()()が大洗女子学園を支援している事を知らないみたいね…まあ黒森峰から見れば大洗女子は無名校だから調べないのも当然か♪」

 

 

 

だが此処で、しほは明美の話の中に()()()が有るのに気付くと、こう問い掛けた。

 

 

 

「一寸待て…今、“()()”と言ったな。()()()()()()()()()()()()()()!?」

 

 

 

すると明美は「おーっ、流石にそう言う処は気付くのが早いわね」と褒めるが、焦って居るしほは「惚けるな!一体、誰だ!?」と叫んだ処、彼女はしほを宥める様にこう告げたのだ。

 

 

 

「まあ、落ち着いて。実は()()が此処に居るから、電話を代わるわね♪」

 

 

 

そして焦りを募らせるしほを余所に、一瞬の沈黙が流れた後……

 

 

 

「私だ」

 

 

 

其の声を聞いた途端、()()()()()に気付いたしほは絶叫した。

 

 

 

「“ながもん(長門)”!?何故、御前迄居るんだ!?」

 

 

 

するとしほが叫んだ相手…明美と並ぶ彼女の親友にして戦車道仲間・周防 長門が落ち着いた声でこう語った。

 

 

 

「実は、私も明美に誘われて大洗女子学園・戦車道チームを支援しているのだが…本当に知らなかったんだな?」

 

 

 

「何だと!?」

 

 

 

高校時代の親友二人からの“告白(宣告)”に対して激しく動揺するしほを余所に、長門は話を続ける。

 

 

 

「まあ、実は私の実家(周防石油グループ)が“此れがしほに漏れると新たな悶着を起こす事になる”と心配して、私達が大洗女子学園を支援している事に関する情報を統制してくれていたから、此の事を知る人は地元の大洗町関係者を除くと極僅かなんだがな。尤も、黒森峰やPTAの関係者連中なら私達の調査位はしていると思っていたが、如何やら無名校・大洗女子の事は歯牙にも掛けていなかった様だな?」

 

 

 

此れに対してしほが「其れより、何故御前達が大洗に居る!?」と叫んだ処、長門は冷静な声でこう語った。

 

 

 

「其の質問に答える前に…先ず、私が率いる『周防ケミカル工業』と明美が社長を務める『原園車輌整備』は、“戦車道を通じて、互いに重要な取引先同士である”事を忘れたのか?」

 

 

 

其の話に、しほが「あっ!?」と驚愕の叫び声を上げると、長門は彼女の問いに答えて行く。

 

 

 

「其れで今年の春、今年度に原園車輌整備へ卸す戦車用オイルや添加剤等の価格交渉の席上、明美から“大洗女子学園・戦車道チームの支援者になって欲しい”と頼まれたのだ」

 

 

 

其の時、しほは()()()()()()()に気付いて、呻き声を上げる。

 

 

 

「まさか…其処で、みほが大洗に居る事を!?」

 

 

 

其れに対して、長門はスマホ越しに微笑み乍ら、こう答える。

 

 

 

「勿論だ。そして御前(しほ)の所為で“みほちゃんの転校先”を一切知る事が出来なかった私は“みほちゃんを助けたい”一心で、明美の誘いに乗った!後悔はしていない!御蔭で私は毎日みほちゃんを眺め乍ら()()()()……

 

 

 

此の時、長門の口調が()()()()()()()のに気付いたしほが叫び出す。

 

 

 

「おい“ながもん(長門)”!みほには手を出すな!御前はみほの事になると()()()()()()()()()から、彼女を大洗へ転校させる時、御前にだけは一切知らせなかったんだ!」

 

 

 

其の直後、しほのスマホから“スパーン!”と、ハリセンが炸裂する音が鳴り響いた後、明美の大声が流れて来た。

 

 

 

「はい“ながもん(長門)”、アウト!アンタは何時もみほさんが絡むとそんな事ばかり言ってる“()()()()()”だから、“しぽりん(しほ)”に嫌われたんでしょ!?」

 

 

 

すると、明美はしほに向けて「御免ね~。“ながもん(長門)”は()()()事を言っていたけど、大洗女子学園の生徒会長(角谷 杏)さんとの間で“みほさんには御触りしない”約束を交わしているから安心してね♪」と告げた処、先程の口論で疑心暗鬼に陥り掛けていたしほが呻く様に問い掛けた。

 

 

 

「…本当だな?」

 

 

 

「本当よ。抑々(そもそも)しぽりん(しほ)”が、みほさんの転校の事を“ながもん(長門)”に知らせなかったのは、彼女がみほさんの転校騒ぎを知った時に『私がみほちゃんを養子に迎える!みほちゃんを一人にはさせない!』って騒ぎ出したからビビったんでしょ?」

 

 

 

明美からの指摘で“少なく共、明美は長門よりもマトモな話をしている”と感じたしほは、疲れた声でこう答えた。

 

 

 

「其の通りだ…“ながもん(長門)”は、みほの事になると普段の冷静さが何処かへ吹き飛んでしまうからな。だから、みほの転校の事は黙って置くしか無かった」

 

 

 

其処で、しほは一度深呼吸すると“明美の行動パターン”を思い出してから彼女へ向けてこう問い掛ける。

 

 

 

「だが“あけみっち(明美)”。御前が何かを遣る時は、必ず“何らかの理由”が有っての事なのは昔から良く知っているが…今、御前がみほの居る大洗女子を支援しているのは“私や西住流との対立”を意味する事は分かっているんだろうな?」

 

 

 

すると明美は、先程迄の楽天的(能天気)な口調から一転して、極真面目な声で答えた。

 

 

 

「勿論よ。そして私は貴女と違って、みほさんを見捨てる気は一切無いわ」

 

 

 

明美からの決意が籠った答えに「こう語る時の“あけみっち(明美)”は、例え梃子(てこ)でも動か無い」事を熟知するしほが無言で居ると、彼女が優し気な声で語り掛けて来た。

 

 

 

「それより、“しほりん(しほ)”。“お菊ちゃん(菊代)”から聞いたけど、今度の準決勝・大洗女子対プラウダ戦を観戦に行くんだって?」

 

 

 

其の言葉に、しほが反射的に「ああ」と答えると、明美は「其れじゃあ……」と前置きしてから、こう告げたのである。

 

 

 

「其の試合、私も観戦に行くから、試合会場で詳しい話をしましょう。果たして如何なるかは分からないけどね」

 

 

 

「ああ…分かった。試合当日に会場で会おう」

 

 

 

「じゃあ、待ち合わせ場所は当日に改めて連絡するわね♪」

 

 

 

 

 

 

そして、しほが電話を切った後、彼女の部屋から……

 

 

 

「“あけみっち(明美)”の奴~!“ながもん(長門)”迄(たぶら)かした挙句、二人揃ってみほを甘やかすとは!こうなったら()()()()()にして、一刻も早くみほを連れ戻さなければ!」

 

 

 

と言うしほの絶叫が響き渡り、其れを聞いた長女のまほと、学園艦が母港に寄港中は西住家に寄居している百代の二人が「「何か有ったのですか!?」」と驚きの声を上げ乍らしほの部屋へ駈け込んで来たのが、此の日の一連の騒動の締め括りとなる事件で有った。

 

 

 

そして、運命の「第63回戦車道全国高校生大会・準決勝第二試合“プラウダ高校(青森)対県立大洗女子学園(茨城)”」の幕が切って落とされる迄、後二日である。

 

 

 

(第67話、終わり)

 

 

 

 

*1
古代ギリシア時代(ロシア説も有る)から使われている諺で“社会や組織の腐敗は上層部や上流階級から進行する”事を意味する。

*2
支援者と戦車道の協会で「プラウダ戦記」第3巻に記述有り。尚、本作では独自設定として「戦車道スポンサー企業と西住流関係者及び黒森峰OGによる連絡会」とする。

*3
「プラウダ戦記」に登場する黒森峰の生徒・富永の母親。「プラウダ戦記」第5巻に顔は出ていないが登場する。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第67話をお送りしました。

と言う訳で、今回は前書きでも書いた通り、アニメ本編では無くコミック版第3巻で描かれた「ファミレスで菊代さんから“勘当”の件を西住殿に告げるのを聞いてしまった秋山殿」の場面を元に展開しました。
コミック版と異なるのは、本作の主人公(笑)嵐ちゃんと澤殿も巻き込まれた事(爆)。
そして…遂に、明美さん&長門さんも動く!
電話でヤバい事をしぽりんに告げてしまった長門さんは兎も角(爆笑)、明美さんはしほや西住流を敵に回してでも西住殿を見捨てないと宣言、試合当日に会場で会おうと約束します。
そして、次回から準決勝・対プラウダ戦が本格的に始まりますが、一体何が起きるのでしょうか…乞う御期待!

其れでは、次回をお楽しみに。
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