戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない 作:瀬戸の住人
2018年2月04日、第5話投稿日にUAが10,000を突破しました。
ご覧になっている皆様、いつもありがとうございます。
今回感謝も込めて、第6話を投稿します。
どうか、今後ともよろしくお願いします。
【報告】2018年6月3日に一部修正(段落と一部の文章の訂正)しました。
嵐が澤 梓と山郷 あゆみに告白をした翌朝の大洗女子学園。
梓とあゆみは、教室前の廊下で待っていた友達4人の前に、暗い顔をしたままやって来た。
その表情に、2人を待っていた友人達は驚きを隠せなかった。
だが…彼女達を更に驚かせたのは、朝の挨拶もそこそこに飛び出した、梓の言葉だった。
「皆…戦車道を履修するのは止めよう…」
「「「?」」」
「どうしたの梓?」
突然の梓の一言に皆が当惑する中、大野 あやが心配そうに語り掛ける。
だが、それに答えたのは、あゆみだった。
「嵐のお父さん…10年前に戦車道の事故で、戦車に轢かれて死んだって…」
「「「えっ…?」」」
思いもよらぬ回答に、その場にいたあやと宇津木 優季、阪口 桂利奈はショックを受けた。
そして梓とあゆみの口から、両親と戦車道に関する嵐からの告白を聞いた事で、彼女達は更に大きな衝撃を受ける事となった。
普段から無口でおとなしい丸山 紗希も言葉こそ発しないが、以上の話を聞かされた事で、目を大きく見開いて驚いた表情をしている。
「じゃあ昨日、嵐が生徒会と口論してから、ずっと戦車道の事で不機嫌になっていた原因って…」
昨日の出来事を思い出した優季は、そう呟いたが、その後はショックを隠し切れない表情で呆然としている。
「どうしよう…昨日、みんなで戦車道、戦車道って言ったから…」
同じく昨日の放課後、戦車道の話題で不機嫌になった嵐から説教されたのを思い出した桂利奈が、悲痛な表情で皆に問い掛ける。
「もしかしたら私達、嵐から絶交されるかも…?」
あやが不安そうな表情を浮かべて最悪の事態を想像すると、紗希が突然泣きそうな顔になって首を横に振っている。
当惑する4人をよそに、梓とあゆみは辛そうな表情で黙っているだけだった…が。
ちょうどその時、遅れて来た原園 嵐が予想外なまでのあっけらかんとした表情で、梓達へ朝の挨拶をしたのだった。
『おはよー…って、皆、何暗い顔をしているの?』
その日の朝、教室の前で出会った梓達は、まるでお葬式が終わった直後の様な雰囲気だった。
「「「「「嵐…」」」」」
更に、今にも泣き出しそうな顔をした紗希が、私の方へ駆け寄ると目に一杯涙を溜めながら私を見つめていた…まるで、捨てられそうな子犬みたいな表情だ。
それで、ようやく私は梓達が暗い表情をしている訳に気付いた。
昨日の私の話を聞いた、梓とあゆみが、皆にも話したのだろう。
『ああ昨日、梓とあゆみにした話だね…余りにも暗い話だったから、みんなもショックを受けたと思うけど、私は大丈夫だよ』
「で…でも…」
あやが涙目で話し掛けて来たが、私は敢えて明るく振舞った。
『私はいいんだよ。お父さんが戦車道の事故で死んだのは、動かせない事実だし…それに、気持ちの切り替えが早いのが、私の取り柄だしね』
だが、そこへ梓が不安そうな声で問いかけて来た。
「でも、嵐は戦車道とお母さんの事で、長い間苦しんできたのでしょう…?」
これには、私も小さく頷くしかない。
『うん…だから、10年間母から強いられ続けて来た戦車道と戦車から逃げた。群馬を出て、ここに入学した理由も、父さんの故郷がこの学園艦だから。ここなら父さんが見守ってくれる気がしたんだよ』
梓達は、私の話を辛そうな表情で聞いている。
そんな彼女達を代表するかの様に、あゆみがこう告げた。
「嵐がそれだけ辛い思いをして来て、やっと戦車から離れたって言うのに、私達だけ出来ないよ、戦車道…」
あゆみの言葉を聞いた私は、胸が締め付けられる思いだったが、申し訳無さそうにこう答えるしかなかった。
『そう…皆、ごめん…』
やっぱり…皆、戦車道の履修を諦めちゃったか。
昨日は、そうするつもりで話をした訳ではなかったのだけれど…やっぱり、私の話を聞いたらそうなるよね……
さて、午前の授業が終わって、お昼休み。
私達は、学生食堂に集って昼食を食べていた。
自分は昨日の事があったから、気分転換のつもりで今日は弁当ではなく、ここの名物メニューの海鮮丼を食べて元気を出そうと思っていたら、梓とあゆみもそのつもりだったらしく、それに他のメンバーも同意したと言う流れだ。
すると……
「選択どうした?」
「迷ったんだけど、あたし戦車道にしちゃったー」
周囲では、必修選択授業を話題にしている生徒が多い様だ。
戦車道の話題を語っている生徒も少なくない。
しかし、梓達はそんな生徒達の会話をよそよそしそうに聞いている。
そこまで、私に遠慮しなくても良いのだけどな…そうだ、こっちから話題を振るか。
『あっ、そう言えば私、選択授業は合気道にしたのだけど、みんなは?』
すると、あゆみが今朝とは対照的に、嬉しそうな表情で答えてくれた。
「合気道?なら、私と同じだね♪」
あゆみもか…同じ選択科目を一緒にやる友達がいるのは、ちょっと嬉しいぞ。
『本当? 私も体を動かす方が性に合っているから、一緒にやろうぜ♪』
「OK、いいよ♪」
その会話をきっかけに、みんなも自分が選んだ選択授業の科目を話し始めた。
ようやく笑顔を取り戻した梓は「私、華道に決めた」と言って来た。
あやは「手裏剣が使えそう」という理由で忍道。
優季は「香道」…ある意味、彼女らしいかも。
紗希は何も語らなかったけれど、彼女は昆布茶が好物だって知っていたから、私から『茶道?』と聞いてみたら、笑顔を浮かべて頷いてくれた…う~む、何故紗希とは一言も喋らなくても意思疎通が出来るのだろうか?
自分でも謎だ。
でも、そんな中で1人だけ悩んでいる友達がいる。
『桂利奈ちゃん、どうしたの? もしかしてまだ科目決まってない?』
私は、いつもの彼女からは想像できない位に悩んでいる桂利奈に向かって尋ねてみたが、当人から意外な返事が返って来た。
「戦車道…」
その言葉を聞いた瞬間、梓達はまた青い顔になっていたが、私は普段通りの表情で桂利奈に話し掛けた。
『そっか…桂利奈はどうしてもやりたいんだね?戦車道』
すると、桂利奈は少し涙目になりながら、こう話してくれた。
「うん…私、昨日のオリエンテーションで戦車の映像を見た時から、これしかないって…だから嵐ちゃんが戦車道嫌いだって知っても諦め切れなくて…ごめんね」
私は、そんな桂利奈ちゃんの頭を撫でながら優しく話し掛けた。
『いいんだよ。自分が本気でやりたいなら戦車道をやっても。確かに昨日、戦車道は簡単じゃないって言ったけど、誰だってチャレンジしたいって思った時はどんな困難があっても止められないじゃない。それを邪魔する事は私にも出来ないよ』
「あい…」
桂利奈は私の言葉でようやく気持ちが落ち着いたのか、涙を拭いながら頷いてくれた。
みんなも、そんな私と桂利奈の会話を聞いて、ようやく朝からの暗い雰囲気から抜け出してくれたと思った、その時。
広い学生食堂全体に無粋なブザー音が鳴り響くと、生徒会広報の河嶋らしき声で、校内放送が始まった。
「普通Ⅰ科2年A組 西住 みほ、普通Ⅰ科1年A組 原園 嵐、至急生徒会室に来る事。繰り返す…」
更に、食堂の柱に複数設置されているLEDモニターにも「緊急呼び出し 生徒会」の表示と共に、私と西住先輩の名前が掲示された。
『とうとう来たわね…』
私は、校内放送とLEDモニターの掲示に驚いている皆へ聞こえる様に呟いた。
「とうとう、って…?」
と、梓がまたしても不安そうな顔で私に問いかけて来る。
『戦車道を履修しろって言う、生徒会からの最後通告でしょうね…負けるモンですか』
すると、今度はあやが不思議そうな顔で問い掛けて来た。
「でも、嵐だけじゃなくて2年A組の西住さんって人も来る様に言っているよ? この人誰?」
『ああ…実は昨日、体育の50m走で転んで、梓に保健室へ連れて行って貰った後で偶然本人に会って知ったのだけど、私の他にもう1人、生徒会から戦車道を履修する様に強要されている2年生の先輩がいて、その人が西住さんなの』
「へぇ~。嵐の他にもこの学校に戦車道をやっていた人がいたんだ…って、あれ? もしかして、あの人が西住さんじゃない?」
すると、頷きながら答えていたあやが突然、私の後ろの方を指差した。
私も思わず振り返ると……
「どうしよう…?」
「私達も一緒に行くから…」
「落ち着いてくださいね」
意外にも私達が座っていた席の真後ろで、今の放送を聞いて震えている少女…西住 みほ先輩と、彼女を勇気付けている2人の同級生…武部 沙織、五十鈴 華両先輩の3人がいた。
私は「じゃあ皆…私はこれから、西住先輩達と一緒に生徒会室へ行って来る」と梓達に告げると、机の上で手を重ねていた3人の後に続いて、右手を重ねた。
『失礼します、西住先輩…それと武部先輩と五十鈴先輩。私も一緒に行きますから安心して下さい。生徒会の奴らをギャフンと言わせてやりますから』
「あっ…ありがとう」
生徒会からの呼び出しに震えていた西住先輩は、不安そうな表情のままだが、私に感謝の言葉を掛けてくれた。
そして、武部先輩と五十鈴先輩も私に向かって小さく頷きながら微笑んでくれる。
西住先輩…私、去年の戦車道大会の決勝戦を現地で見てからずっと、先輩の事を心配していました。
まだ、その時の事を話す訳にはいかないけれど、きっと生徒会の魔の手から救い出しますから、安心して下さいね……
それから少し後、場所は生徒会長室。
校内放送で呼び出された私と西住先輩は、一緒に付いて来てくれた武部・五十鈴両先輩と共に生徒会の3人と向き合っていた。
私は五十鈴先輩の隣にいる。西住先輩は不安そうな表情だが、武部・五十鈴先輩が手を握っており、一緒に頑張ろうとしていた。
対照的に私は、手こそ握っていないものの、生徒会長室に入った瞬間から闘志剥き出しの表情で角谷会長を睨んでいる。
ここからが勝負。
生徒会の連中、特に会長と河嶋に負けてたまるか…自分はもちろんだが、西住先輩も彼女達から守ってみせる。
あいつ等、西住先輩がこの学園に来るまで、どんなに苦しい思いをしていたのか知らないくせに……
すると、広報の河嶋が決戦のゴングを鳴らした。
「これはどういうことだ?」
西住先輩と私が書いた2枚の必修選択科目履修届を突き付けて詰問するが、私はすかさず、西住先輩の分まで言い返してやる。
『どうもこうも、西住先輩も私も戦車道を履修する気は一切ありませんが?』
「何で選択しないかなー」
会長が文句を言ったので、私はこう反論した。
『会長、椅子にふんぞり返って足を肘掛けに掛けながら、オマケに目線は私達ではなく机のパソコンの画面を向きながら人にモノを頼むなんて、一体親からどういう躾を受けて来たのですか? いずれにしても西住先輩も私も戦車道なんてやりませんが』
これに対して、河嶋は思い切り私を睨み付けたが、会長は全く動じていない。
そして小山先輩が首を横に振ると、河嶋は私を睨み付けるのを止めて、会長の方へ顔を向けるとこう報告した。
「我が校、他に戦車経験者は皆無です」
その時、深刻そうな表情で会長の傍らに立っていた小山先輩が妙な事を喋った。
「終了です、我が校は終了です…」
えっ…それ、どう言う事?
思わず、私はこう問い掛けた。
『小山先輩、我が校は終了って…一体どう言う事ですか?』
「あ、いえ…何でも無いのよ」
小山先輩はそう答えたが、相当動揺した表情を浮かべているので、私はもう少し詰問しようと思った所、武部先輩が会話に割り込んで、会長を非難した。
「勝手な事言わないでよ!!」
続いて、五十鈴先輩も会長達を非難する。
「そうです!! お二人共やりたくないと言っているのに、無理にやらせる気なのですか?」
まあ会長の言い分を聞く限り、無理にやらせる気満々としか思えないけどね…と、私が思っている間にも武部・五十鈴両先輩による非難は続く。
「みほや原園さんは戦車やらないから!!」
「西住さんと原園さんの事は諦めて下さい」
だが、その次の瞬間…角谷会長が不敵な表情を浮かべて、決定的な事を言った。
「んな事言ってるとあんた達…この学校にいられなくしちゃうよ?」
一瞬、場の雰囲気が凍りつく。
「あっ…」
突然の会長の発言に息を呑む、武部先輩。
「脅すなんて卑怯です」
対照的に怒りを露にする、五十鈴先輩。
「脅しじゃない…会長はいつだって本気だ」
会長の発言をフォローするどころか、火に油を注ぐ様な発言をしたのは、河嶋だ。
一方、問題の発言をした会長本人は……
「そーそー」
と、まるで他人事の様な口調で河嶋の言葉を肯定している。
だが、私はその時、角谷会長の正面に立ちはだかって詰問した。
『会長、脅迫は立派な犯罪ですよ。そんな事を言っても良いのですか?』
実はこの時、私は心の中で『遂に引っ掛かったな、アンタ達…ザマアミロ!!』と快哉を叫んでいた。
私は、いつもスマホを持ち歩いているが、スマホのアプリの中には、ボイスレコーダーの機能を持った物があるのだ…もちろん先程の会長の発言はしっかり録音されている。
これを職員室へ持ち込んで、今の話を教職員へ訴えたらどうなるか?
幾ら学園艦の生徒会が、一般の学校よりも遥かに絶大な自治権を持っているとは言え、この事実が証拠付きで露見したら、今の状況は逆転するだろう。
仮に、この学園の教職員が取り合わなかったとしても、県の教育委員会や戦車道連盟へスマホの録音記録を持ち込む手がある。
実は、私の大叔母である鷹代さんは以前の仕事の関係で、教育委員会や戦車道連盟とは少なからぬ繋がりがあるのだ…既に鷹代さんは、私の味方になってくれているから、スマホの録音記録を渡せば、確実に証拠として採用されるだろう。
そうなれば話がもっと大きくなるから、生徒会の連中にとってこの先の展開は地獄だろう。
下手をすれば、この学園は戦車道復活どころではなくなるかも知れない。
私は心の中でせせら笑いながら、生徒会長と河嶋の顔を睨んでいた。
但し小山先輩は、入学前の学園見学時に案内をしてもらった恩があるので、目線を外していた…のだが。
その直後、当人が私達に向かってトンでもない事を告げたのだ。
「原園さん…それと皆も、今の内に謝った方が良いと思うわよ? ねっ、ねっ?」
そう言って、小山先輩が西住先輩の方へ近づこうとした次の瞬間。
頭に血が昇った私は、小山先輩の正面に立ちはだかると彼女を思い切り睨み付けて、静かな口調だが、こう言い放った。
「小山先輩、あなただけは良識があると思っていたのに…見損ないました。そうまでして、西住先輩や私に戦車道をやらせたいのですか!?」
多分、その時の私は赤鬼の様な形相だったのだろう。
思わず後ずさりした小山先輩だけでなく、彼女の近くにいた河嶋までが「ひっ…!!」と小さく悲鳴を上げると、会長の座っている椅子の後ろまで下がっていた。
そんな様子を見ていた武部先輩と五十鈴先輩は、生徒会に対する批判の勢いを盛り返す。
「酷い!!」
「横暴過ぎます!!」
これに対して狼狽したのか、河嶋は反論…いや、結果的に墓穴を掘る発言をした(笑)。
「お…横暴は生徒会に与えられた特権だ!」
そんな河嶋に、私は苦笑しながらも引導を渡す。
『河嶋先輩…今の私の話を聞かなかったのですか? 会長の発言は単なる横暴じゃなくて脅迫、つまり犯罪だと言ったのですが…分かります? 今の先輩は、会長の共犯者なのですよ?』
「ゲッ…」
河嶋は「共犯者」と言う言葉の意味を悟ったか、絶句したまま何も言わなくなってしまった…ああ、コイツは多分、普段態度がデカいけど根は小心者なのじゃないかな?
そんな私と生徒会役員2人の口論を聞いていた会長は、私が相手だと分が悪過ぎると思ったのだろう、矛先を西住先輩に向けて来た。
「さて…原園ちゃんは絶対戦車道やりたくないみたいなのは分かったけど…西住ちゃんはどうかな? そろそろ答えを聞きたいのだけど…」
そこで、私も西住先輩にこう告げる。
「西住先輩!! こんな人達の脅迫に屈しちゃ駄目です。戦車道なんて絶対やりませんよね!?」
私は、生徒会に対するトドメのつもりで、西住先輩を促す様に問いかけた。
私の言葉に続いて、武部先輩と五十鈴先輩も西住先輩に呼びかける。
「みほ、原園さんと一緒に、戦車道やりたくないって会長に言おうよ!!」
「西住さん、原園さんがここまで頑張ってくれています。生徒会からの脅迫に負けないで、はっきり答えて差し上げましょう」
すると、この一連の口論が始まってからずっと不安な表情で俯きながら耐えていた西住先輩は、一度深呼吸した後、はっきりとした口調でこう答えた……
「あの!!…私!!……戦車道やります!!」
「「えええっ!?」」
驚きの声を挙げる武部先輩と五十鈴先輩。
そして、私はと言うと……
『西住先輩…って、はぁ??!!』
この瞬間、私は危うく顎を外しそうになった。
に…西住先輩が、ま…まさかの裏切り~!!??
と言うか西住先輩、ここまでの話の流れ、分かっています!?
生徒会の奴ら、脅迫まで弄して私達を戦車道へ引き摺り込もうとしたのに…?
「よかった!!」
一方、先程から祈る様な表情だったのが一変して、笑顔で喜ぶ小山先輩。
会長はうんうんと頷き、河嶋に至っては片眼鏡を不気味に輝かせながら、ニヤリと笑っている。
よ…よくない、良くないって!!
あんた達、犯罪覚悟で脅迫までやったでしょうが!!
喜ぶな!!
と、私が心の中で慌てていると、追い討ちを駆ける様に会長が私にこう詰問してきた。
「と言う訳で、西住ちゃんは戦車道やってくれるって言ってくれたけど…原園ちゃんはどうする? まあ西住ちゃんがやってくれるから断っても良いのだけど?」
『えっ…?』
この一言で、私の精神の平衡は完全に崩壊した……
いや、だって……
わ…私が西住先輩と一緒にここへ来たのは、西住先輩が戦車道をやりたくないって言っていたからで。
それに…私が人生で『この人となら戦車道をやってもいい』って、唯一思った人が、去年の戦車道高校生大会の決勝戦での行動で私を感動させた、西住先輩だった訳で。
その西住先輩が、あの決勝戦での行動が原因で戦車道を辞めたと知らされたから、私も戦車から逃げ出す決心をした訳で。
だから…その…何が言いたいかと言うと。
西住先輩が「戦車道をやります」と言ってしまったら…わ…私は……
私は…西住先輩と…一緒に…!!!!
さっきまでの強気な表情もどこへやら、思いっ切り狼狽した私は、会長に向かって小声でこう呟いた。
『えっ…えーと…生徒会長…私は…その…あの…』
「ん? 何? 声が小さいから聞こえないよ?」
立場が逆転したのを良い事に、追い討ちを掛ける会長。
そして、その一言に焦った私は、会長の目の前で土下座をすると、こう宣言する破目になった。
『角谷生徒会長、参りました。私も戦車道やります!!』
「「「え…えええっ!?」」」
先程の武部先輩や五十鈴先輩に、今度は西住先輩まで加わって、私の突然の翻意に驚きの声を挙げていた。
一方、私は予想外の屈辱に身を震わせる事になった…これで本当に、西住先輩と一緒に戦車道からおさらばするはずだったのが、何がどうしてこうなったのよ!?
あのタンカスロンからの引退試合の時、ヤイカ先輩が語っていた忠告「戦車の方からお前を追いかけて来る」時が、本当にやって来るとは…!!
だが、しかし。
私が本当の意味で衝撃を受けるのは、この次の瞬間だった。
突然後ろの扉が開いたかと思うと、パチパチと拍手が鳴った。
そして…私にとっては忘れ様も無い声が響いてきた!!
「あ~、どうなる事かと心配していたけれど、嵐が戦車道に戻ってくれると知って、安心したわ♪」
『か…母さん?!』
「えっ…あの桃色の髪の人が、原園さんのお母さん!?」
思わず、その声の主に反応する私と武部先輩だが…驚くのはまだ早かった。
更に、母の後ろには…何と、梓達6人が揃って立っているではないか!!
私が驚愕の表情でその姿を見ていると、梓が皆を代表して済まなさそうな表情で、こう告白した。
「ゴメン…私達、嵐が戦車道の事で生徒会と喧嘩するんじゃないかって思って。そんな事になったら嵐が退学になっちゃうから、みんなで止めようと思って、ここで盗み聞きしてた…そうしたら、突然嵐のお母さんだと言う人がやって来て…」
そして、あゆみが続けてこう漏らす。
「私も本当にビックリした。だってこの人、昨日嵐に見せてもらった昔の『月刊戦車道』の表紙に載っていた人と顔がそっくりだったから」
今の状況が、余りにも急展開過ぎて、私は目眩がして来た……
(第6話/終)
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
第6話をお送りしました。
前回の後書きで予告しましたが、正に「トンでもない展開」となりました事をお詫び申し上げます(苦笑)。
でも、前回が非常に暗い話でもありましたので、ここまではっちゃけた方が良いだろうと思って書きましたが…やり過ぎだったらゴメンなさい。
しかし次回、遂に嵐と西住殿達の前に現れた明美さんが本性を表しますので、どうかご期待下さい(笑)。
それでは、次回をお楽しみに。