戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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此処最近、新作を書きたい欲求は有るが書く時間が無い(無意味)。

其れでは、どうぞ。



第73話「試合も大変、外も大変です!!」

 

 

 

昔からマスコミ関係者の間で語り継がれている“異名”が有る。

 

 

 

“特ダネの首都新聞・スクープの首都テレビ”

 

 

 

両社共“大手新聞社年間発行部数&在京TVキー局年間平均視聴率万年4位”に甘んじているが、実は“報道に強い”と言う定評が有る。

 

両社の前身で有る新聞社“首都新報社”が明治初めに創刊以来、彼らの特ダネ報道で首が飛んだ首相・大臣・官僚・政財界の要人や仕事を干された芸能人は数知れず。

 

其の為、戦後の或る時期に某・中央省庁と其処の記者クラブが結託して“首都新聞と首都テレビを記者クラブから締め出そう”と画策したのだが、逆に彼らが隠していた不祥事を両社に暴かれて逮捕者迄出し、世間から袋叩きにされた結果彼らの策謀は大失敗に終わったと言うエピソードが有る程だ。

 

そんな両社の片割れである首都テレビが第63回戦車道高校生全国大会準決勝・第二試合「プラウダ高校(青森)対大洗女子学園(茨城)」の実況生中継の最中に……

 

 

 

「大洗女子学園は此の大会で優勝しないと文部科学省の方針で廃校になる」

 

 

 

と言う大洗女子学園生徒会長・角谷 杏の告白を実況中継の総合プロデューサー・八坂 信夫の独断で全国放送したのだ。

 

其の“スクープ”による衝撃はアッと言う間に日本中へ広まって行った……

 

 

 

 

 

 

此処は東京・上野駅の近くに在る首都テレビ本社・報道部オフィス。

 

其処では首都テレビ報道部長・駿河(するが) 洋平(ようへい)が自分を訪ねて来た大学の後輩である首都新聞編集局運動部デスク・中田 城一郎と一緒に世間話をし乍ら戦車道全国高校生大会準決勝第二試合「プラウダ高校対県立大洗女子学園」の実況中継をTVで観戦していたが……

 

 

 

「やってくれるじゃないか!“スポーツ実況中継(戦車道全国高校生大会)の最中にスクープをモノにする”なんて!八坂の奴、報道部時代の情熱は冷めていなかったな!」

 

 

 

八坂と中田の大学の先輩である駿河が後輩によるスクープ報道(戦車道史上に残る大事件)を見て歓喜の雄叫びを上げると、彼と八坂の後輩である中田は複雑な表情を浮かべ乍ら「俺は放送事故ギリギリだと思いましたけどね……」と呟くが、其れを聞いた駿河は笑い乍らこう語る。

 

 

 

「何を言っている!?“此の大会で優勝出来なかったら母校が廃校になる”と大洗女子学園の生徒会長が告白した瞬間を生中継で流したんだぞ。今頃日本中の御茶の間が大騒ぎだ!」

 

 

 

すると先輩の発言を聞いて呆れ顔になって居た中田が自分のスマホを駿河に見せ乍ら、こう答える。

 

 

 

「先輩、今はSNSの方が反応早いですよ。物凄い勢いで書き込みが増えています」

 

 

 

其れに対して後輩のスマホ画面を見た駿河は席から立ち上がると「こうしちゃいられない!今から報道部だけで無く政治部や社会部の記者も動員して“直ちに文部科学省の室長・課長補佐級以上の職員全員に対して『大洗女子学園廃校に関する情報の裏』を取れ”と指示を出す!政治部長や社会部長にも要請しないとな!」叫んだ処、中田も自分の席を立つとこう答えた。

 

 

 

「じゃあ俺も動きますか…先輩、こっちで何か分かったら情報を流しますよ」

 

 

 

すると駿河も大きく頷いてから、こう答えたのである。

 

 

 

「頼むぞ!こっちは此の試合が終わる迄に情報の裏を取ってニュース速報を打ってやる!」

 

 

 

 

 

 

戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない

 

 

 

第73話「試合も大変、外も大変です!!」

 

 

 

 

 

 

一方、試合会場内の観客席も“衝撃的なスクープ”で騒然となっていた。

 

既に試合の実況中継は大洗女子学園戦車道チーム側が“プラウダ側からの降伏勧告を拒否して徹底抗戦する”と決断した時点から中断しているが、特に大洗女子学園応援席に陣取る一般客が騒ぎ立てている。

 

 

 

「負けたら大洗女子学園が廃校!?」

 

 

 

「何故!?此処迄皆、頑張って来たじゃない!?」

 

 

 

「文科省は一体何を考えているんだ!?」

 

 

 

「其れより、大洗女子がプラウダに包囲されてから随分経つけど大丈夫なの!?」

 

 

 

そんな中、五十鈴家の奉公人である新三郎が主人で有ると共に“あんこうチーム”砲手・五十鈴 華の母でもある百合へ向けて「完全に囲まれているんですけど、御嬢()は大丈夫なんでしょうか!?」と叫んだ処、彼女はキッパリとした口調で「落ち着きなさい、新三郎!」と諫めた後、周囲で騒いでいた観客に向かってこう告げたのである。

 

 

 

「観客の皆さんも落ち着きなさい!此処で私達が騒いでも状況は変わりません。其れよりも今は大洗女子の選手達を信じて待つしかありません!」

 

 

 

「「「あっ…はい」」」

 

 

 

毅然とした態度で観客達を諫める百合の声を聞いた彼等は一斉に静かになった。

 

但し…其の中には「百合さん、さっき迄私達の前で『ウチの()は花を活ける手で油臭い戦車を扱って居るのは良くない』って愚痴を零していたのに、今ではすっかり()さん達を応援しているみたいだけど?」と思っている者も居たが。

 

 

 

 

 

 

一方、試合会場の外れでは観戦中の聖グロリアーナ女学院戦車道チーム隊長・ダージリンに、チームメイトの一年生・オレンジペコが問い掛けていた。

 

 

 

「如何してプラウダは攻撃しないんでしょう?」

 

 

 

其れに対して、ダージリンは……

 

 

 

プラウダの隊長(カチューシャ)は楽しんでいるのよ、この状況を。彼女はね、搾取するのが大好きなの…プライドをね」

 

 

 

と語るが、其の声は何時もの彼女とは違い、やや沈みがちで憂いを帯びていた。

 

其の様子に気付いたボンプル高校戦車道チーム隊長・ヤイカが問い掛ける。

 

 

 

「ダージリン、貴方らしく無いわね…若しかして大洗女子の娘達に情が移った?」

 

 

 

其れを聞いたダージリンは苦笑いを浮かべて「そう言う貴女も去年の大会で此れと同じ状況になった事が有るわね?*1」と返した為、ヤイカが不機嫌な表情を浮かべた時、アンツィオ高校の一年生・マルゲリータ(大姫 鳳姫)が二人の先輩に向けて指摘する。

 

 

 

「でも、追い詰められているのはプラウダも同じです」

 

 

 

其の一言に、二人の隊長が小さく頷いたのを見たオレンジペコが首を傾げているとサンダース大付属の一年生・原 時雨が「そうか!」と叫んだ後、こう答えた。

 

 

 

「プラウダは一回戦の対ボンプル戦ではヤイカ隊長の計略に引っ掛かってフラッグ車が被弾。其の汚名返上を狙った二回戦の対ヴァイキング水産戦では建物に立て籠もって居た対戦相手の戦車を攻撃した際に相手の選手を怪我させたから、其の二の舞になるのを恐れているんだ!」

 

 

 

すると話を聞いて居たダージリンが微笑み乍ら、こう語る。

 

 

 

「二人共正解よ…今やプラウダは“只勝つだけでは評価されない”立場に在るわ」

 

 

 

其れに対してヤイカも不敵な笑みを浮かべつつ、こう返したのだった。

 

 

 

「分かっているじゃないの、ダージリン。もし此処でプラウダが対ヴァイキング水産戦の時みたいに建物毎大洗女子の戦車を攻撃すれば、此の試合を観ている全員が“プラウダの戦い方は汚い”と思うわね」

 

 

 

するとダージリンは小さく頷いた後、こう付け加える。

 

 

 

「だから、プラウダはフェアに戦って大洗女子に勝たなければならないのよ」

 

 

 

其処へ、二人の会話を聞いて居たオレンジペコが「成程。確かにプラウダに取っては対ヴァイキング水産戦の二の舞をやるのは致命的ですね」と答えた処、ヤイカが複雑な表情を浮かべ乍ら「ええ……」と答えた後、続けてこう語ったのだ。

 

 

 

「でも原園()が“大洗女子生徒会の手先”だと疑われた時、あれ程動揺する姿を見たのは初めてだった。流石に私も彼女が戦車道に戻った理由が亡き父(直之)の故郷・大洗女子学園の学園艦を守る為”だったとは知らなかった。其の事について明美さんは何も言わなかったのよ」

 

 

 

何時もと違い、相手選手()の事を心配するヤイカの発言を聞いたダージリンは「だけど原園 嵐はみほさんの声掛けで立ち直ったわ」と答えた処、彼女は小さく頷いてからこう語る。

 

 

 

「ええ。あれが私に取っては()()()()だった」

 

 

 

其の言葉を聞いた全員…ダージリン・オレンジペコ・時雨・マルゲリータ( 鳳姫 )が一斉にヤイカへ視線を集中させると彼女は再び表情を引き締めてから語り出した。

 

 

 

「今迄、原園()がチームの仲間や隊長に頼る姿を見た事は無かったのに、西住 みほにだけは心を開いた。今大会の抽選会で初めて会ってから彼女(みほ)が如何云う()なのかが今一つ分からなかったけど、あの姿を見て少し考えが変わったわ」

 

 

 

其処で一旦言葉を区切った後、再び彼女は語り出す。

 

 

 

「“一匹狼”で有名だった原園()が心を許せる隊長(みほ)なら、或いは……」

 

 

 

そしてヤイカは目の前に写る超巨大モニターを凝視しつつ、こう告げたのだ。

 

 

 

「奇跡を起こせるかも知れない」

 

 

 

 

 

 

一方、此方は観客席中央付近で試合を観戦して居るみほの母・しほと姉のまほ、周防 長門と原園 明美である。

 

実は大洗女子がプラウダの攻撃で教会跡に追い詰められて籠城を始めた頃、しほは「こんな試合を観るのは時間の無駄だ」と思って席を立とうとしていたが、直後に大洗女子学園生徒会長・角谷 杏による「此の試合に負けたら大洗女子は廃校になる」と言う発言を聞いた時、隣で明美が……

 

 

 

「チッ…河嶋さんは此の試合が終わったら“秘密をバラしたお仕置きとしてプロレスのスパーリング”をしなければならないわね!」

 

 

 

と小声で毒吐いたのを聞いた途端、彼女を詰問した。

 

 

 

「貴女まさか、此の事を知っていたの!?」

 

 

 

其れに対して彼女は……

 

 

 

「ええ、そうよ」

 

 

 

アッサリと“自白”した後、事の経緯を語り出した。

 

 

 

「抑々の始まりは大洗町へ工場進出を決めた時、大洗町の町長さんから“大洗女子学園廃校の話”を伝えられたのよ。其れから直ぐ学園へ行って生徒会長の角谷さんから詳しい事情を聞くと同時に彼女から“廃校回避の為に戦車道を復活させて今年の全国大会での優勝を目指す”と聞かされた時、私は彼女達の支援者になる事を決めたわ」

 

 

 

其れに対してしほが鋭い声で「其れで、みほを巻き込んだのね!?」と糾弾した処、明美は首を横に振るとこう答えた。

 

 

 

「いいえ。最初は私と生徒会もみほさんが大洗へ転校する事は知らなかった。だから当時の私は“大洗女子が戦車道を復活させる事を利用して嵐を戦車道へ戻す”心算だった」

 

 

 

此処で“(みほ)の転校先が廃校になる”と言う事実を知ったショックから漸く立ち直ったまほが「如何云う事ですか?」と問うた為、明美はこう答えた。

 

 

 

「大洗女子の学園艦は直之さんの故郷だから、嵐に其の事を教えれば“父親(直之)の故郷を守る為に戦うしか無いと考える”と踏んでいたのよ…実際そうなったし」

 

 

 

其れに対してまほが「其れが何故、みほを巻き込む事になったのですか!?」と糾弾した処、明美は小さく頷いてから事情を語り出した。

 

 

 

「私が大洗女子の支援者になってから暫く経った頃、角谷さんから『今度転入する生徒の中に不審な情報操作をされたらしい()が居る』と聞かされて、生徒会の協力で其の()の資料をチェックした時、彼女の正体がみほさんだと気付いたのよ」

 

 

 

其の“告白”を聞いて、みほが大洗女子で戦車道を再び始める迄の事情を知ったしほとまほの母娘が険しい視線を明美に向けるが彼女は動揺する事無く“告白”を続ける。

 

 

 

「其の時、私は“此れで嵐を手懐ける事が出来る”と思ったわ…去年の大会決勝戦以後、嵐はみほさんに憧れて居たから、彼女と一緒なら間違い無く戦車道へ戻るだろうと確信したのよ」

 

 

 

其処へ、今度は長門が冷静な声で一言付け加えた。

 

 

 

「そして私は大洗女子が戦車道を復活させた直後、明美からみほちゃんと嵐の事を聞かされた上で協力を依頼されたんだ」

 

 

 

二人の告白に対してまほは二人を睨み続けていたが、しほは漸く納得した表情を浮かべつつ「そう言う事だったの……」と呟いた処、明美が更なる“告白”を始めたのだ。

 

 

 

「でもね…チームの練習初日に行った公開練習試合(みほ対嵐の一騎討ち)でみほさんの戦い振りを見た時、私の中に“希望”が生まれたのよ」

 

 

 

其れに対してまほが……

 

 

 

「希望?」

 

 

 

と問うた処、明美は微笑み乍らこう述べた。

 

 

 

「あの日、みほさんは“戦車道を始めたばかりの素人(後のあんこうチーム)”である同級生4人(優花里・華・沙織・麻子)を率いて“群馬みなかみタンカーズ”で今年の春迄7年間戦車道を続けて来た嵐達のチーム(後のニワトリさんチーム)を相手に互角の勝負を繰り広げ、終盤で大ピンチに陥っても諦めずに戦い抜いた結果、嵐達のチームに勝ったのよ」

 

 

 

其の言葉を聞いたしほが目を細め、まほも「確か、みほが本格的に戦車道を始めたのは小学校5年の夏休みが終わってからだから、原園達は戦車道ではみほの先輩と言う事になるのですか!?」と驚くと、明美がこう付け加えた。

 

 

 

「まほさんの言う通りよ…因みに嵐は5歳の秋から“群馬みなかみタンカーズ”に入団する迄の間、私が直接戦車道を仕込んで来たから嵐の戦車道歴は10年近くになるわ」

 

 

 

其の言葉に対してまほが「成程」と答えた後、明美は続けてこう語り出した。

 

 

 

「でも一番重要だったのは…戦車道の経験で自身を上回る嵐を倒したみほさんの戦い方が“私と直之さんが目指して来た戦車道”に限りなく近かった事よ!」

 

 

 

其れに対してまほが「其れは一体、どんな戦車道なのですか!?」と問うと明美はこう断言した。

 

 

 

「“決して誰も見捨てない戦車道”よ!」

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

其の答えにしほとまほが驚きの声を上げる中、明美は普段の飄々とした態度からは想像も出来ない程しっかりした声で、こう語る。

 

 

 

「私は幼い頃から戦車道が好きだったけど、同時に“違和感”をずっと感じていた…其れはドイツでプロ戦車道チームの整備隊長を務めて居た時にハッキリと言葉に出来る様になったわ」

 

 

 

其れに対してまほが「其れは、如何言う事なのですか?」と問うた処、明美はこう答える。

 

 

 

「戦車道は武道としての在り方に拘り過ぎる余り、“其々の流派に合わない考え方を持つ者は切り捨てる”傾向が強いんじゃないかって…でも“戦車道が人を教え導く為に在るのなら誰も切り捨てたり、見捨てたりしてはいけないのでは無いか?”って強く思う様になったのよ」

 

 

 

そして明美は一旦言葉を切ると、こう結論付けた。

 

 

 

「其れじゃあ“誰も見捨てない戦車道”を実現するには如何したら良いのか?長年私を悩ませてきた此の問題の答えをみほさんは実践していたわ。彼女の答えは“皆で戦車道を楽しむ”事だった…正に私が“群馬みなかみタンカーズを結成した理由”と同じだったわ」

 

 

 

其れに対してしほは過去を思い返し乍ら、こう語る。

 

 

 

「私も黒森峰を卒業する時に同じ事を聞かされたわね…私は貴女の考え方は“甘過ぎる”と思って居るけれど」

 

 

 

「そうそう。だから未だに此の点では私としぽりん(しほ)は意見が一致していないのよね」

 

 

 

しほによる回想を含んだ反論に対して明美が答えた後、彼女はこう宣言した。

 

 

 

「でも、私はみほさんと嵐達を見守る事で日本…いや“世界の戦車道”を変えるわ。此の二人の戦いを通じて戦車道を“単なる武道”から本当の意味で“世界中の人々が心の底から楽しめるレクリエーション”へと変えて見せる!」

 

 

 

「明美…貴様!」

 

 

 

明美の“宣言”に対して“西住流を含む日本戦車道の遣り方を否定された”と思ったしほは怒りを込めて彼女を糾弾するが、彼女は凛とした声で言い返す。

 

 

 

「しぽりん、此れは西住流だけで無く日本で戦車道に関わる人々全員に対する私からの“宣戦布告”よ!」

 

 

 

「何っ!」

 

 

 

明美の言葉にしほが驚愕の叫びを発した直後、明美はこう断言した。

 

 

 

「もう戦車道は西住流だの島田流だのと言った()()()()()()()()()()()()()()()のよ!」

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

明美の言葉の意味を計りかねたしほとまほの母娘が驚愕する中、明美は“此れから自分が為そうとする事”と二人に告げる。

 

 

 

「戦車道がもっと広い世界に打って出る為に、私はみほさんと嵐を…そして大洗女子学園を見守る心算よ。仮に此の試合で彼女達が負けて大洗女子学園が廃校になっても私は彼女達を見捨てない覚悟を決めている。其の為に必要な手は既に考えてあるわ」

 

 

 

其れに対してまほが…

 

 

 

「其れは“みほ達の戦車道”を見捨てないと言う事ですか?」

 

 

 

と告げたのに対して明美が頷くとしほが険しい表情で問い掛ける。

 

 

 

「明美…御前は本気で“戦車道を変える”決意なんだな?」

 

 

 

其れに対して明美は「勿論よ」と告げると、しほは……

 

 

 

「分かった。御前が言う“みほの戦車道”がどんな物か見届けよう。但し、此の試合で大洗女子が負けたらみほは実家へ連れ帰る心算だったが…如何やら御前は其れを認めないだろうな」

 

 

 

と明美に向けて語った処、彼女は真顔で「当たり前でしょ?」と答えてから試合会場前の超大型モニターへ視線を移したのだった。

 

一方、二人の会話を聞いて居た長門は、その時まほが小声で呟いて居るのを聞き取っていた。

 

 

 

「みほが“自分の戦車道”を見出したとしたら…私は如何すれば良い?」

 

 

 

 

 

 

其の頃、教会跡に立て籠もって居る大洗女子学園・戦車道チームでは各チームのメンバーが自分達の乗る戦車の整備や修理を行っていた。

 

例えば“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”では……

 

 

 

「直りそう?」

 

 

 

チームの砲手・佐々木 あけびが通信手の近藤 妙子へ呼び掛けると彼女は車載通信機を弄り乍ら……

 

 

 

「さっき嵐が組み立て方を教えてくれたから、何とか動くと思うけど……」

 

 

 

と答えた直後、車載通信機の電源が正常に作動したのに気付くと笑顔で「動いた!」と答えた。

 

其の姿を見たあけびは「良かった!」と告げると砲塔のキューポラを開けて顔を外へ出してからチームリーダー兼戦車長・磯辺 典子へ向けて「キャプテン、通信機が直りました!」と叫んだのだった。

 

 

 

続いて、此方は“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”。

 

 

 

「流石に()は直せないよね……」

 

 

 

チームの75㎜砲々手・山郷あゆみが悲し気な声で呟いた。

 

先程のプラウダ高の攻撃で自分が担当するM3中戦車リーの75㎜砲は砲身基部から先が破壊されてしまい、其の砲が有った車体右側には大穴が開いていたのだ。

 

其の声を聞いた操縦手の阪口 桂利奈は「可哀想……」と呟く。

 

更に通信手を務める宇津木 優季が「包帯巻いとく?」と少々ボケ気味な発言をした為、其れを聞いた37㎜砲々手・大野 あやが「意味無いから」とツッコミを入れた処……

 

 

 

「そんな事無いよ!」

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

 

思いも寄らぬ“返し”を聞いたあゆみ・桂利奈・優季・あやがビックリし乍ら、其の声を上げた相手…“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”装填手・二階堂 舞へ視線を集中させる。

 

彼女は此の時、プラウダ高からの攻撃で額に作ったたん瘤をカードする為にフェイスガードを被っていたが、怪我をしているとは思えない程の大声でこう答えた。

 

 

 

「今から75㎜砲の基部を帆布で覆って紐で縛るから、皆手伝って!そうしないと走行中に破壊された75㎜砲の穴から寒気が入って来て皆凍えちゃうよ!?」

 

 

 

「「「ま…マジですかー!?」」」

 

 

 

舞からの指摘を受けたあゆみ・桂利奈・優季・あやは大声で叫んだが、彼女達は直ぐ立ち直ると舞と一緒にM3リー中戦車の車体右側に出来た75㎜砲基部の穴を帆布で覆う作業を始めるのだった。

 

 

 

又、プラウダ高の砲撃を受けて砲塔が旋回出来なくなった“あんこうチーム(Ⅳ号戦車F2型仕様)”でも修理作業が終わり、修理された砲塔の作動テストが行われていた。

 

砲塔の修理を手伝った“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の操縦手・萩岡 菫が「調整した砲塔の調子は如何ですか?」と呼び掛けると……

 

 

 

「ちゃんと回りますよ!」

 

 

 

あんこうチーム(Ⅳ号戦車F2型仕様)”装填手・秋山 優花里が元気良く答えると菫が「良かった。念の為、砲塔の中をチェックしたら砲塔旋回に使うベアリングは無事だったから調整すれば大丈夫だと思っていたけど心配でした」と告げると、“あんこうチーム(Ⅳ号戦車F2型仕様)”砲手・五十鈴 華が……

 

 

 

「ええ、菫さんも手伝ってくれて有難う御座います」

 

 

 

と答えた為、菫も「如何も致しまして!」と返事をしていた。

 

 

 

 

 

 

一方、隊長である西住 みほは“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”メンバーの生徒会四人組(杏・柚子・桃・佐智子)や“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”メンバーの嵐・瑞希と共に作戦会議を行っていた。

 

先ず、副隊長の桃が籠城している教会跡周辺の状況を書いた手作りの絵地図を指差し乍ら……

 

 

 

「問題は此の包囲網を如何やって突破するかだな」

 

 

 

と問題提起すると、柚子が困り顔を浮かべ乍ら……

 

 

 

「敵の正確な配置が分かれば良いんだけど……」

 

 

 

と呟いた処、みほが其れに答える形で……

 

 

 

「偵察を出しましょう」

 

 

 

と皆に告げた処、嵐が『偵察ですか。メンバーは?』と問い掛けた為、みほがこう答える。

 

 

 

「優花里さんとエルヴィンさん、其れと麻子さんと園さんの二組です」

 

 

 

すると瑞希がこんな提案をして来た。

 

 

 

「じゃあ、私が冷泉先輩と園先輩の組に入ってサポートしますから、秋山先輩とエルヴィン先輩の組に嵐を入れましょう」

 

 

 

するとみほは、瑞希の話を聞いた嵐とエルヴィンが驚きの表情を浮かべて居るのに気付いて“桃が廃校の秘密をバラした際、エルヴィンが嵐の事を「生徒会の手先」呼ばわりした事”を思い出し「でも……」と当惑気味の声を上げたが、瑞希は冷静な声でこう進言した。

 

 

 

「エルヴィン先輩と嵐は今の内に仲直りさせないと行けないと思いますし、秋山先輩も居るから大丈夫でしょう」

 

 

 

其れを聞いた嵐とエルヴィンが互いの顔を見乍ら驚いている横で、優花里が真剣な表情で自分に向かって頷いたのを見たみほは大きく頷くと皆へ向けてこう告げたのだった。

 

 

 

「分かりました。じゃあ、偵察隊のメンバーは其れで行きましょう」

 

 

 

(第73話、終わり)

 

 

*1
これについては「プラウダ戦記」第4巻を参照の事。此の時、ボンプル高は1回戦でプラウダ高と対戦した際、廃工場で包囲された結果、車輌故障も有って降伏している。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第73話をお送りしました。
首都テレビの実況中継で「此の大会で優勝しないと大洗女子学園が廃校になる」と言う角谷会長の告白が全国放送された為、試合会場の内外では動揺と新たな動きが加速する……
勿論、辻に対する“しっぺ返し”も此処からスタートであります(笑)。
そして遂に明かされた明美さんの目的。
今後、しほとまほが率いる西住流と黒森峰にどんな影響を与えるのか?

其れでは、次回・6人に増えた“雪の進軍”をお楽しみに。
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