戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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先月から母が入院中で、色々とバタバタしていましたが、何とか書き上げました。
其の代わり、先日あった「水曜どうでしょう2023最新作・ライブビューイング」に行けなかったよ……(涙)

と言う訳で、其れではどうぞ。



第74話「雪の進軍です!!」

 

 

 

「ねえ、降伏する条件に“ウチの学校の草毟(くさむし)り3カ月と麦踏みとジャガイモ掘りの労働”を付けたら如何かしら!」

 

 

 

此処は教会跡に立て籠もる大洗女子学園・戦車道チームを包囲中のプラウダ高校・戦車道チームが待機して居る村の片隅。

 

其処では第二次世界大戦中にソ連軍が使用したスノーモービル“RF-8アエロサン”をベッド代わりにして居るカチューシャ隊長がノンナ副隊長に対して“大洗女子学園が降伏する場合の条件”を冗談交じりで提案した処、彼女は微笑み乍ら……

 

 

 

「汚れていますよ」

 

 

 

と答えつつ、チームが持ち込んだフィールドキッチン( 野戦炊事車 )で作りたてのボルシチを食べた為に汚れているカチューシャの口元をハンカチで拭く。

 

すると彼女は不服そうな声で……

 

 

 

「知っているわよ!」

 

 

 

と言い返すが、其れ以上責める事は無くノンナに口元を拭いて貰うと「ふう…御馳走様。食べたら眠くなっちゃった」と呟いた為、ノンナがこんな事を指摘した。

 

 

 

「降伏の時間に猶予を与えたのは“御腹が空いて眠かったから”ですね?」

 

 

 

するとカチューシャは「違うわ!カチューシャの心が広いからよ!シベリア平原の様にね!」と反論するが、ノンナはやんわりとした声で「広くても寒そうです」とツッコんだ為「五月蠅いわね!」と言い返した。

 

だが…其の後、カチューシャは沈んだ声でこう付け加えた。

 

 

 

「でも…ノンナも“私が降伏の時間に猶予を与えた()()()()()には気付いているのでしょ?」

 

 

 

其れに対してノンナは小さく頷くと冷静な声で「はい」と答えてから、こう述べる。

 

 

 

「今の私達は“只勝つだけでは勝利したとは言えない()()です」

 

 

 

其の言葉を聞いたカチューシャも頷くと「其の通りよ」と答えた後、“覚悟を決めた表情”でこう呟いた。

 

 

 

「此の試合で大洗女子に()()して初めて、次の決勝戦で連覇を狙う資格が与えられるわ…チームの皆が“()()()()()”と言われない為にも」

 

 

 

其れを聞いたノンナもキッパリとした声で「はい」と答えると、カチューシャは真剣な声で頼れる副隊長へ“新たな指示”を出した。

 

 

 

「ノンナ。此の後私が眠ったら手筈通り、大洗女子に対して()()()()を決行する様に皆に伝えて置いて」

 

 

 

其れに対して彼女も迷いの無い声で「抜かりは有りません。既にクラーラ達には作戦の説明と準備(温かい食事と焚き木)を済ませてあります」と答えた処、カチューシャは微笑み乍らこう語る。

 

 

 

「流石ね。此れで後は大洗女子が降伏するのを待つだけだわ…彼女達が長期戦の準備をしていない事は教会跡へ軍使として向かわせた()達からの報告で明らかだし、其処へ“私達には温かい食事と焚き木が揃っている”事を見せ付ければ彼女達の心が折れるのは時間の問題だわ♪」

 

 

 

其れに対してノンナも笑顔で敬愛する隊長へ向けて……

 

 

 

「はい。其れでは時間迄ゆっくり御休み下さい」

 

 

 

と告げると、カチューシャも……

 

 

 

「じゃあ御休み!」

 

 

 

と元気良く答えてから、“RF-8アエロサン”に持ち込んだ寝袋に入って眠りに就いた。

 

其の様子を見届けたノンナはカチューシャを見守り乍ら子守唄を唄う……

 

だが二人は知らなかった…此の時、大洗女子が形勢逆転を狙って動き出していた事を。

 

 

 

 

 

 

戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない

 

 

 

第74話「雪の進軍です!!」

 

 

 

 

 

 

「原園…済まなかった。“生徒会の手先”だなんて決め付けてしまって」

 

 

 

『いえ、エルヴィン先輩。私、結果的にそう言う立場になっていましたし』

 

 

 

此れが秋山先輩やエルヴィン先輩と共にプラウダ高校戦車道チームの偵察任務に就いていた私が最初に交わした会話だった。

 

其れは偵察任務中の私達の前に立ちはだかった吹雪を凌ぐ為に秋山先輩が作った雪洞の中での出来事だ。

 

実を言うと此の偵察任務中、私はずっと黙っていた。

 

秋山・エルヴィン両先輩が旧日本陸軍の軍歌「雪の進軍」を唄い乍ら行軍している時も、其の途中でエルヴィン先輩が「足が冷たいな」と呟いた為、小休止を決めた秋山先輩が防寒対策として彼女の靴に新聞紙を詰め、足に唐辛子を(まぶ)して紙で足を包んでいる内に“各国軍隊の防寒対策”の話題で二人の先輩が盛り上がっていた時も私は黙っていた。

 

何故なら私は……

 

 

 

「望まなかったとは言え、自分は“戦車道を復活させて廃校阻止を目指す生徒会の手先”になっていた」

 

 

 

と言う“エルヴィン先輩からの告発”が心の中に残っており、出発前の作戦会議で自分の相棒である野々坂 瑞希から……

 

 

 

「秋山先輩とエルヴィン先輩の偵察班に嵐を入れましょう」

 

 

 

と言われた時から“エルヴィン先輩と如何やって向き合えば良いのか分からない”状態に陥っており、ずっと黙っているしか無かったのだ。

 

其の後、私達はプラウダ側の戦車が布陣する家屋の前に辿り着いて様子を窺った後、エルヴィン先輩の判断で“プラウダ側の後方を大きく迂回して偵察しつつ敵中突破、其の儘右手に敵陣を抜けて味方陣地へ帰還する作戦”に出たが途中で激しい吹雪に遭遇した為、秋山先輩が近くに在った山林の斜面に雪洞を掘り、其処に一時避難する事にした。

 

そして先程のエルヴィン先輩と私の会話に繋がって今に至る。

 

 

 

「そんな事無いさ。原園は御父さん(直之)故郷(大洗の学園艦)を守る為に戦車道へ戻る決意をしたんだろ?」

 

 

 

先程の私の言葉に対してエルヴィン先輩が声を掛けて来たので、私は小さく頷き乍らこう答える。

 

 

 

『はい…生徒会の黒幕となっていた(明美)の差し金でもあるんですけどね』

 

 

 

其れに対してエルヴィン先輩が小さく頷くと、今度は秋山先輩が……

 

 

 

「原園殿の御父様(直之)はどんな方だったのですか?」

 

 

 

と尋ね、続けてエルヴィン先輩も……

 

 

 

「私も知りたい。自動車部のナカジマから“自動車レースで活躍した天才メカニック”だったと聞いて居るが、普段はどんな人だったんだ?」

 

 

 

と訪ねて来た為、私は生前の(直之)の事を思い出し乍ら答える事にした。

 

 

 

(直之)は私が物心ついてから数年で天国へ行っちゃったけど、何時も笑顔で皆に接して居て、明るくて…優しい人だった』

 

 

 

二人の先輩が其の言葉を聞き乍ら頷く中、私は答え続ける。

 

 

 

『そして(直之)は戦車道が大好きな人だった。私が戦車に興味を持つ前から毎日戦車道の事を面白く話し続けていて、其の話を聞いて居る内に自分も戦車道が好きになって行った』

 

 

 

其れに対して秋山先輩が「じゃあ、原園殿が戦車道をやろうと思った“最初の切っ掛け”は御父様(直之)の影響なのですか?」と問うたので、私は小さく頷いてからこう答えた。

 

 

 

『多分、私が今迄戦車道を続けて来て、そして大洗で再び戦車道に戻ろうと思った理由は“御父さん(直之)が戦車道で何を目指していたのかを知りたい”からだと思う。そして御父さんと西住先輩の戦車道の考え方は「戦車道は楽しむ為の物だ」と言う点で似ていると思う』

 

 

 

するとエルヴィン先輩が「楽しむ為の戦車道か……」と呟いた後……

 

 

 

「私は生徒会のやり方に如何も疑問を感じていたから、河嶋先輩が廃校の事を言った時、つい原園の事を……」

 

 

 

と沈痛な表情で語った時、突然秋山先輩が声を掛けて来た。

 

 

 

「神戸中尉殿が居られます!雪中偵察は必ず成功させます!」

 

 

 

其れに対してエルヴィン先輩も……

 

 

 

「2km…我々の陣地迄はたった2km!」

 

 

 

『!?』

 

 

 

唐突に二人の先輩が先程迄とは“全く違う話”を始めた為、話に()いて行けなくなった私が戸惑っているとエルヴィン先輩がこう語る。

 

 

 

「其の2kmの道も…此れなら余裕だな」

 

 

 

其れに対して秋山先輩も……

 

 

 

「雪とは何だろう?」

 

 

 

と語った時、漸く私は“二人の先輩が語っている話の内容”に気付いて、恐る恐る……

 

 

 

『映画の“八甲田山”?』

 

 

 

と問い掛けた処……

 

 

 

「ア…アハハ!」

 

 

 

と秋山先輩が笑い出し、エルヴィン先輩も……

 

 

 

「原園、やっと気付いてくれたか!」

 

 

 

と笑顔で語り掛けて来たので、こう答えた。

 

 

 

『私は…徳島大尉を演じた高倉 健のファンだから、今のシーンはピンと来なくて』

 

 

 

するとエルヴィン先輩はクスクス笑い乍ら「原園のオジサン好きって本当だったんだな!」と呟いた為、秋山先輩も再び笑い出し、私は恥ずかしさの余り顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

 

 

 

 

 

其れから少し経った後、秋山先輩が雪洞の外の様子を眺めた処……

 

 

 

「吹雪は収まりましたね……」

 

 

 

と呟き乍ら外に出た途端!

 

 

 

「うわーっ!」

 

 

 

と叫び乍ら、雪洞出入口に出来た下り坂を寝そべり乍ら転げ回って行ったので……

 

 

 

『危ない!?』

 

 

 

と私が叫び、エルヴィン先輩も「何をやってる!?」と声を掛けたのだが、秋山先輩は笑顔で転げ回っていたのを見た私は“思い当たる節”が有ったので、大声でこう呼び掛けた。

 

 

 

『秋山先輩、其れはまさか…八甲田山の“()()()()()”?』

 

 

 

すると秋山先輩は“悪戯がバレた子供”の様な笑顔で……

 

 

 

「いやあ、新雪見るとつい転げ回りたくなりません?」

 

 

 

と語ったから、エルヴィン先輩は「てっきり、雪洞から出たら汗が一瞬で凍結したのかと思った」と呟いた処、秋山先輩は……

 

 

 

()()()()!やっぱりやりますよね!」

 

 

 

と語った為、エルヴィン先輩が当惑気味に「そ…そうかな?」と呟いたので、私は呆れ顔でこう言った。

 

 

 

『やっぱり映画の「八甲田山」に出て来た「裸で凍死する兵卒」のシーンですか…昔、群馬みなかみタンカーズの後輩が雪中での訓練時に其のネタをやろうとしたら“本当に寒さで矛盾脱衣*1をしようとしている”と思ったコーチに止められた事が有ったなあ』

 

 

 

すると二人の先輩が同時に……

 

 

 

「「やっぱり居たんだ!?」」

 

 

 

と答えたので、私は苦笑し乍ら“余談”を語った。

 

 

 

『因みに其の時、雪原で転げ回ろうとした()が今、みなかみタンカーズの隊長を務めているんですよ』

 

 

 

すると二人の先輩は揃って「「アハハ!」」と笑い出したので、私も此の偵察行で初めて笑う事が出来た。

 

 

 

 

 

 

其れから私達は相手陣地の奥深くへ潜入して行った。

 

そして……

 

 

 

「居たぞ」

 

 

 

「フラッグ車ですね」

 

 

 

プラウダ高校戦車道チームのフラッグ車(T-34/76)が居る場所を突き止めたエルヴィン先輩と秋山先輩が会話を交わす中、私も『此処が敵の本陣かな?』と呟くと、エルヴィン先輩が頷き乍ら「此れで何とかなるかも知れない。後方を迂回して味方陣地に戻るか?」と訪ねて来た処へ秋山先輩が……

 

 

 

「其れ共、あの中を突破します?」

 

 

 

と言って来た時、私は小声で『あれは!?』と呟き、エルヴィン先輩も小さく頷いた。

 

 

 

秋山先輩の視線の先にはプラウダ高校戦車道チーム所属のKV-2重戦車が停車しており、更に其処から少し奥の場所には西洋風の煉瓦造りの小屋が在る。

 

其の小屋の壁には“プラウダ高校戦車道チームの冬季用コート”が4着分吊るされていた。

 

 

 

 

 

 

其れから少し後……

 

此処はプラウダ高校戦車道チーム所属のKV-2重戦車が停車して居る場所。

 

其処へ3人の“冬季用コートを着たプラウダ高校戦車道チームのメンバー”がやって来ると真ん中の()がKV-2の傍らでスコップを持って雪を掘っていた少女(仲間)へ声を掛けた。

 

 

 

「いや~っ、寒いね!」

 

 

 

「あっ…え~と、()()?」

 

 

 

すると()()は「ああ」と答えた為、()()()()()が「もう作戦開始ですか?」と訪ねた処、()()は「いや、寒いだろうと思ってココア持って来たよ!」と答えて魔法瓶を見せた。

 

すると()()は東北訛りの発音で「有難う御座います!」と答えた後、()()から貰ったココアを大事そうに飲んで「ふあ~っ♪」と一息吐いた……

 

 

 

 

 

 

もう御気付きかと思いますが、今KV-2の乗員と思われるプラウダの()と一緒に居る3人の“()()”の正体は“冬季用コートを着たプラウダ高校戦車道チームのメンバー”に化けた秋山・エルヴィン両先輩と私です。

 

私達は此処へ潜入する為にKV-2が停車して居る場所から少し奥に在る小屋に吊るされていた“プラウダ高校戦車道チームの冬季用コート”を拝借したのですが、其の時、私は秋山先輩に……

 

 

 

『私、みなかみタンカーズ時代にプラウダの()達に顔を知られている筈なので、後方で様子を窺おうと思うのですが……』

 

 

 

と訪ねたんです。

 

だって私、群馬みなかみタンカーズ時代には“みなかみの狂犬”の異名で東日本中の戦車道乙女達から恐れられていたから、プラウダ高校の生徒なら私の顔を知っている筈だと思い、先輩方と一緒に潜入するのは危険だと考えて後方警戒の任に就こうと提案したのですが秋山先輩は笑顔で……

 

 

 

「大丈夫です!此の為に栗毛のウィッグを用意しましたよ!」

 

 

 

と答え、エルヴィン先輩も「流石は秋山、用意周到だな!」と喜んでいた為、慌てた私はこう言ったのです。

 

 

 

『先輩方、大胆不敵過ぎますよ!御二人は銀英伝でイゼルローン要塞へ潜入したシェーンコップ大佐ですか!?』

 

 

 

処が、其れに対してエルヴィン先輩が笑い乍ら……

 

 

 

「おお、此れで私達も“薔薇の騎士連隊(ローゼンリッター)”の一員か!」

 

 

 

と御道化て見せると秋山先輩も「原園殿、銀英伝も御好きですか!と言う事はやはりシェーンコップ殿のファン?」とツッコんで来たので、つい私は……

 

 

 

『私の好みの銀英伝キャラはメルカッツ提督とビュコック提督…って、何を言わせるんですか!?』

 

 

 

()()を掘った結果、御二人は揃って……

 

 

 

「「やっぱりオジサン好きだ!」」

 

 

 

と笑顔で返して来たから、私は顔を真っ赤にして俯く破目になりました(苦笑)。

 

そんな私に対して秋山先輩は笑顔で「じゃあ敵に見付からない内に準備をしますよ♪」と告げた後、私達3人は小屋に吊るされていた“プラウダ高校戦車道チームの冬季用コート”を身に着け、更に私は秋山先輩から借りた“栗毛のウィッグ”を頭に被った状態で、今KV-2の乗員と思われる背の低い少女から情報を聞き出している訳です。

 

そして……

 

 

 

 

 

 

「しかし、戦闘は何時始まるのかねぇ?」

 

 

 

と秋山先輩が尋ねた処、少女は笑顔でこう答えました。

 

 

 

ウチの隊長(カチューシャ)の目が覚めたら、じゃないですか?」

 

 

 

其れに対してエルヴィン先輩が「ほう、カチューシャ隊長は御休みになっておられるのか?」と語ったのですが、少女の方は其の答え方に不審を抱いたらしく……

 

 

 

「…貴女は?」

 

 

 

と問い掛けた処、エルヴィン先輩が……

 

 

 

「何でも無い。気にするな」

 

 

 

と“空気を読めない”答え方をした為、私は心の中で『ええっ!? 其の答え方は不味過ぎる!』とビビっていた時……

 

 

 

「ああ!そっか、そっか!こんな状況下で寝ているなんて、流石はカチューシャ隊長!」

 

 

 

と秋山先輩がフォローに入った為、少女はエルヴィン先輩に対する不信感を忘れたかの様に秋山先輩へ向けて「食べたら寝るなんて、子供ですよね~」と笑顔で答えて来た。

 

其れに対して秋山先輩も「でも“油断大敵”とも言うよ!」と返すと、少女は……

 

 

 

「大丈夫ですよ!あんな弱小校(大洗女子)相手ですから!」

 

 

 

と答えた為、私は思わず“ムッ”としたが、秋山先輩は……

 

 

 

「だよね~♪」

 

 

 

と笑顔で返した為、私は『秋山先輩、凄いや…普通なら怒りたくなる処なのに、スパイに徹して本音を隠している!』と驚嘆した。

 

でも同時に『プラウダの隊長(カチューシャ)副隊長(ノンナ)は北海道出身だから其処は「だよね~♪」じゃ無くて「DA.BE.SA」か東北弁で「DA.CHA.NE」の方が良かったんじゃないかな?』と()()()()を想像しちゃったけど*2

 

そんな事を思って居た時、秋山先輩は違う質問に切り替えていた。

 

 

 

「あっ、そうそう!ド忘れしちゃったんだけど、こっちの配置って如何なっているんだっけ?」

 

 

 

其れに対してプラウダ高の少女は「はい!私達のKV-2(カーベー)が後衛で、前にフラッグ車(T-34/76)、其の側面援護にT-34/76が居ます」と答えた処、秋山先輩は……

 

 

 

「いや~っ、KV-2(カーベー)大変でしょう?」

 

 

 

と訪ねると、少女は「そうなんですよ。砲弾重いですからね」と答えたので秋山先輩は「重過ぎで分離装薬式になった位だもんね」と答えた為、私も『KV-2の152㎜砲は元々砲兵が使う榴弾砲を戦車砲に改造した物だからね』と付け加えた処、少女は「はい!」と答えて頷いた後、「其れに、あんな大きな砲塔を手回しで動かすから毎回筋肉痛でキツイっすよ~」と語った。

 

すると秋山先輩がKV-2の砲塔を眺めつつ「其の上傾くと砲塔回らないし」と指摘すると少女はこう語る。

 

 

 

「アレ悲惨ですよ~車台が倒れるんじゃ無いかって気が気じゃ無いです~」

 

 

 

其れを聞いた秋山先輩、今度は「やっぱりロージナ*3とかの方が良いよね!」と少女に問い掛けると彼女も笑顔で「ですねー」と答えつつもこう語った。

 

 

 

「でもKV-2(カーベー・ツー)はカチューシャ隊長の御気に入りですから」

 

 

 

其れに対して秋山先輩が「あっ、車高が高いから?」と問うた処、少女は……

 

 

 

「そうなんですよ!“此の上に乗ると良く見えるから”って」

 

 

 

と笑顔で答えた為、秋山先輩も「だよねー!」と答えた時、私は先輩に向けてさり気無く時計を見せる事で『時間が経ち過ぎていますよ』と知らせた処、秋山先輩は自分の時計で時間を確認してから少女に向けて「あっ、そろそろ行かないと!御免ね、時間取らせて!」と告げたので、私達3人は漸く其の場を離れて行ったのだった。

 

其れに対してプラウダ高の少女も「あっ、いいえ!ココア有難う御座います!」と御礼を言ってくれたので秋山先輩が手を振り乍ら立ち去って行く。

 

そして私達は前方に在る小屋(私達が拝借したプラウダ高の防寒用コートが吊って在った所だ)の裏へ向かって行ったのだった。

 

但し、私は心の中で私達と会話していた少女に向けて……

 

 

 

『ニーナさん御免なさい!私、去年の全国戦車道中学生大会で観戦に来ていた貴女にサインを書いてあげたのに、貴女とプラウダ高を騙して本当に御免なさい!』

 

 

 

と謝罪して居たのでした。

 

 

 

 

 

 

一方、プラウダ高の生徒に化けていた優花里・エルヴィン・嵐が立ち去った後のKV-2では砲塔のハッチが開くと此の戦車の乗員である一年生・アリーナが同級生でつい先程迄優花里・エルヴィン・嵐と会話をし乍ら優花里から貰ったココアを飲んでいた少女・ニーナに向かって「あれ、誰だべ?」と問い掛けていた。

 

其れに対して彼女が「そんな事も知らねえのか?先輩に決まってるだべなぁ」と答えるが、アリーナは不審げな声でこう指摘する。

 

 

 

「忘れたべか?あの3人の内の1人は去年の戦車道中学生大会で顔を見た覚えが有るんだべさ。確か其の大会でニーナは彼女からサインを貰った筈だべ。名前は…え~と」

 

 

 

と告げつつも“相手の名前(原園 嵐)”が思い出せず苦労しているアリーナの姿を見たニーナは戸惑い気味の声でこう答える。

 

 

 

「えっ?でも其の()…“みなかみの狂犬( 原園 嵐 )”は赤毛の()だべ?そんな()は居なかったべさ」

 

 

 

其の為、“赤毛の()=原園 嵐”だと言う“痛い点”を突かれたアリーナは……

 

 

 

「あっ、そうだべか…勘違いだべかぁ?」

 

 

 

と呟いた為、彼女は“ニーナと会話していた3人が大洗女子のスパイ”だった事に気付く事が出来なかったのである。

 

 

 

 

 

 

そして私達は小屋の裏で拝借していたプラウダ高校戦車道チーム用の防寒コートを元有った場所に戻すと一気に其の場から走り去った。

 

 

 

「バレたかと思った!」

 

 

 

「いや~っ、ヒヤヒヤしました!」

 

 

 

此処でエルヴィン・秋山両先輩が走り乍ら語るのを聞いた自分も……

 

 

 

『私もです!あのニーナさんって人、去年の戦車道中学生大会で私にサインを書いて欲しいと頼まれて書いた事が有って、其れで顔を覚えていたから“バレたら如何しよう!?”と思ってドキドキしてました!』

 

 

 

と告白した処……

 

 

 

「ヒューヒュー!」

 

 

 

「流石原園殿!モテモテじゃ無いですか!?」

 

 

 

『止めて下さい!私、そう言う趣味は有りませんから!』

 

 

 

エルヴィン・秋山両先輩からツッコミを喰らった私は顔を真っ赤にして答えざるを得なかった。

 

其処へエルヴィン先輩が「早く戻って風呂に入りたい!」と叫ぶと、秋山先輩が「無いですけどね!」と答えたので私は御二人に向けてこう答える。

 

 

 

『帰ったら、きっと西住隊長が熱いココアを用意してくれていますよ!』

 

 

 

すると二人の先輩も「「うん!」」と答えて走り続けて居た時、私はふと“思い出した事”が有ったので……

 

 

 

『あっ、其れよりも秋山先輩?』

 

 

 

と問うた処、彼女が「何ですか、原園殿?」と返して来たので私はこう続ける。

 

 

 

『さっきからずっと聞こうと思っていたのですが……』

 

 

 

「「?」」

 

 

 

其の問い掛けに、御二人の先輩が立ち止まって私を見ている。

 

其処で私は“此の偵察任務中にふと思い付いたネタ”を語った。

 

其れは……

 

 

 

『秋山先輩が履いている靴って…もしかしてア●プス●ノー社が出してる“()()()()()()でしたっけ?』

 

 

 

其れに対して秋山先輩が唖然とした表情で「はあ?」と呟く中、“私のネタの意味”に気付いたエルヴィン先輩が大声で笑い乍ら、こう答えてくれた。

 

 

 

「アハハ!“サイコロ3後編”か!」

 

 

 

『はいっ!』

 

 

 

エルヴィン先輩に対して私が笑顔で答えると先輩の御二人は……

 

 

 

「「アハハ!」」

 

 

 

と大声で笑ってくれたので、私も釣られて笑い出すとエルヴィン先輩が笑顔でこう答えてくれた。

 

 

 

「原園も元気になったな!出発した時からずっと黙っていたのが嘘みたいだ!」

 

 

 

『はいっ!此れで思いっ切り試合に打ち込めます!』

 

 

 

「良かったです!エルヴィン殿と原園殿が仲直りしてくれて!」

 

 

 

と言う訳で、此れで私とエルヴィン先輩の間に有った“(わだかま)り(原因は河嶋先輩の暴言だが)”は漸く消え去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

『まさか、本当に敵陣を一周するとは……』

 

 

 

こうして私達は「雪の進軍」を唄い乍らチームが立て籠もって居る教会跡へ戻って来た。

 

しかも私達を取り囲んで居るプラウダ高校戦車道チームの包囲陣を一周する形で。

 

そんな大胆な作戦をやってのけた2人の先輩の凄さを間近で見続けた私が一言呟くとエルヴィン先輩が「いや、原園も居てくれたからこれだけ大胆な作戦が出来たんだ。感謝するぞ」と語り掛け、秋山先輩が「もう直ぐ西住殿の下に着きますから、最後迄気を抜かないで行きましょう」と告げたので、私も『はい』と答えた後……

 

遂に私達は偵察任務をやり遂げて、教会跡で私達を待って居た西住隊長の前に戻って来たのだった。

 

 

 

「「『只今、帰還しました!』」」

 

 

 

でも此の後、私達には“更なる試練”が待ち受けていたのだ……

 

 

 

 

 

 

余談。

 

※此処より、実験的に台本調で進みます。

 

 

 

そど子「此方も偵察終わりました」

 

 

 

嵐『御帰りなさい…ののっち(瑞希)、麻子先輩や園先輩とは上手く行った?』

 

 

 

瑞希「其れがね…聞いてよ」

 

 

 

嵐『何か有ったの?』

 

 

 

瑞希「有った処じゃ無いわよ…御陰で危うく()()になる処だったわ」

 

 

 

嵐『えっ!?』

 

 

 

瑞希「最初は園先輩が“スターリン( IS-2 )”重戦車を“モロトフ( 火炎瓶)”と言い間違えただけだったんだけど、其れで彼女が『何で冷泉先輩と一緒に偵察に出なきゃ行けないのよ!?』と言い出しちゃって」

 

 

 

嵐『ああ…確か、3人がチームを組んだ理由の一つが“全員視力が2.0有るから”だったよね』

 

 

 

瑞希「そうなんだけど、其れを冷泉先輩に指摘された園先輩が逆ギレしちゃって……」

 

 

 

嵐『何をやったの?』

 

 

 

瑞希「先ず冷泉先輩の事を“貴女は冷泉 麻子だから、略してレ・マ・コよ!”と呼んだ挙句、何時の間にか作っていた雪玉を冷泉先輩に投げ付けてね……」

 

 

 

嵐『えっ!?』(唖然とし乍ら園へ視線を向ける)

 

 

 

瑞希「其れで、冷泉先輩はああ見えて運動神経抜群だから雪玉を避けたんだけど、其の代わりに雪玉は先輩の後ろに有った大木に当たって、其の音がプラウダ側の歩哨に聞かれたから私達は其の場から遁走する破目になったのよ」

 

 

 

嵐『何時は“しっかり者”の園先輩らしくない……』

 

 

 

瑞希「しかも当人は自分がやった事で敵に正体を露見した原因を作った癖に『見付かっちゃったじゃない!』って冷泉先輩を責めるし…正直“何だかなあ”と思ったわよ」

 

 

 

園「一寸!野々坂さん、ベラベラ喋らないでよ…って、ハッ!」

 

 

 

嵐&瑞希(ジト目で園を見詰める)

 

 

 

園「あっ…その、流石に敵に見付かる様な真似をやったのは悪かったわ。反省してる」

 

 

 

嵐&瑞希(小さく頷くと同時に何か皮肉を言おうとした麻子の口を塞ぐ)

 

 

 

麻子「ウググ……」(「二人共卑怯だぞ!」と喋ろうとしたが、口を塞がれて喋れない)

 

 

 

以上、“余談”終わり。

 

 

 

(第74話、終わり)

 

 

 

*1
酷寒の状況下で体感温度(外気温)と実際の体内温度との間に極端な差が生じた場合、低体温症の為にまるで暑い場所にいるかのような錯覚に陥って衣服を脱いでしまう現象。嵐が語った映画「八甲田山」での「裸で凍死する兵卒」のシーンはこの現象の典型例である。

*2
何故此処で「DA.BE.SA」と「DA.CHA.NE」をローマ字表記にしたかについては後書きを参照の事。

*3
T-34の愛称。本来はロシア語で「祖国」「母国」「故郷」と言う意味が有る。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第74話をお送りしました。

今回はTV版OVA第5話「スノー・ウォー」が原作です。
前々回から気不味い雰囲気に陥っていた嵐ちゃんとエルヴィンが、秋山殿の仲立ちも有って仲直りする話となりました。
まあ、此処で仲直りをしないと色々と不味いですからね。
其れとソド子&麻子の話も入れたかったので、此れは“余談”と言う実験的な形で纏めています。

追記:
今回、作中でニーナに対して秋山殿が「だよね~♪」と返した際、嵐ちゃんが心の中で思っていた事について。
「DA.BE.SA」とは1995年にNORTH END×AYUMI from SAPPOROがリリースしたヒット曲「DA.YO.NE」(EAST END×YURIが1994年にリリース)の北海道ローカル版で、「DA.CHA.NE」も同じ年にNORTH EAST x MAI from SENDAIがリリースした東北弁版。
尚、「DA.BE.SA」の作詞とボーカルには某・北海道ローカルTV局の“移動番組”の出演者が、メインボーカルには当時其の出演者の妻だった方が参加しており、嵐ちゃんは幼少の頃に直之さんから其の事を教えて貰っていた(「DA.CHA.NE」は其の後嵐ちゃん自身が調べて見付けたらしい)。
只、実を言うとオリジナルの「DA.YO.NE」自体がヒットした切っ掛けも北海道のFM ラジオ局でヘヴィー・ローテーションされた為に早くから道内では話題となり、其の後道内のローカルチャート番組ではMEN'S 5の「“ヘーコキ”ましたね」(此れもある意味名曲w)と激しいトップ争いを演じた事が他の地方へも波及したからだそうで。
何と言う恐ろしい実話なんだろう(白目を剥く藩士語る)。

其れでは、次回をお楽しみに。

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