戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない 作:瀬戸の住人
大洗女子対プラウダの準決勝。
今回は“みぽりんが考えた反撃作戦”の詳細が語られます。
其処へ嵐は如何絡むのか?
其れでは、どうぞ。
【
①裏拳打ち。
空手・拳法等の格闘技、武道、武術で用いられる打ち技の一種だが、ボクシングでは禁止されている。
②“後手からの一撃”。
此の言葉を戦史上で使う場合は、第2次世界大戦中の1943年2月19日から3月頃にかけてウクライナのハリコフ(現・ハルキウ)を中心とした地域で独ソ両軍が戦った「第3次ハリコフ攻防戦」においてドイツ側の司令官エーリッヒ・フォン・マンシュタイン陸軍元帥が行った“機動防御による逆襲”を指す。
此処は東京都内某所に在る高級住宅街。
其の一角に在る2階建ての住宅の前に1台の乗用車が停車すると中から「報道」の腕章を付けた男女3人組が降りて来る。
彼らは目の前に在る住宅の玄関前へ押し掛けてから傍に有るインターホンを押した処、スピーカーから「はい」と男の声が響いて来た。
其れに対して3人組のリーダーである壮年男性が問い掛ける。
「夜分遅くに失礼します。私達は首都テレビ報道部の者ですが、文科省学園艦教育局長の辻 廉太様でいらっしゃいますでしょうか?」
「辻なら、私だが?」
「実は大至急取材したい事が有りますので、御話を伺いたいのですが?」
「こんな時間に…まあ良いだろう、入り給え」
そして辻は玄関の扉を開けると、首都テレビ報道部の記者達が一斉に「失礼します」と礼儀正しい態度で挨拶し乍ら玄関から
其の様子を眺めて居た辻は訝し気な声で問い掛ける。
「こんな夜遅くに取材とは、一体何が有ったんだね?」
「あれ?御存知無いのですか?」
辻の問い掛けに対して壮年の男性記者は戸惑い気味に答えた後、こう告げたのである。
「今、此の時間に戦車道全国高校生大会の準決勝第二試合“プラウダ高校対大洗女子学園”が行われているのですが、其の試合中に大洗女子学園の角谷生徒会長から『此の大会で優勝しないと文科省の方針で学園が廃校になる』と言う告白が有りまして、其れが事実か否かの確認をする為に伺ったのですが?」
其れに対して辻は首を捻り乍ら記憶を辿っていたが、直ぐ思い出した様で……
「大洗女子?ああ、そう言えば今夜がプラウダとの準決勝だったな」
と語り、記者達の話が事実だと認めた上で“角谷生徒会長の告白”について語り出した。
「確かに今年の始め頃、学園艦教育局に大洗女子の生徒会三役…つまり角谷会長と副会長・広報担当の三人を呼んで“今年度一杯で学園を廃校にする”と内密に通知したのは覚えている」
其れに対して首都テレビ報道部の若い男性記者が自分のスマホにインストールされているボイスレコーダーのアプリをチェックし乍ら彼等のリーダーである壮年男性の先輩記者に向けて小さく頷いた時、辻はこんな事を言い出した。
「だが、あの場で『今年の戦車道全国高校生大会で優勝すれば廃校を撤回する』と約束したか否かについては、一寸記憶に無いのだが……」
と言った後、再び首を捻り乍ら記憶を思い出そうとする仕草を見せる。
其れに対して壮年の男性記者は怪訝な表情を見せ乍ら……
「
との疑念を思い浮かべる。
後で分かる事だが、此の時辻は「大洗女子との間でそんな約束はしていない」と
しかし、此処で突然首都テレビ報道部所属の若い女性記者が持っていたスマホの着信音が鳴り響いた。
「ああ済みません。一寸待って下さい」
其の様子を見た壮年の男性記者は済まなそうな声で辻へ謝罪した後、部下の女性記者と一緒にスマホの画面を十秒程眺めていたが、突然不敵な表情に変わると辻に向けて“新たな質問”をぶつけて来た。
「辻さん、実は
「何っ!?」
“思わぬ指摘”に動揺する辻の表情を見た壮年の男性記者は“やっぱりか!”と思いつつ、更なる質問をぶつける…実は此の時、首都テレビだけで無く関連会社の首都新聞も“戦車道全国高校生大会の試合中に発覚した大洗女子学園の廃校問題”の裏付け取材の為にタッグを組むと両社共部署を問わず動かせる記者を総動員し、文部科学省の室長・課長補佐級以上の職員に対して総当たりの取材攻勢を仕掛けていたのだ*2。
丁度其の中間報告が取材に当たっている両社の記者全員に共有される形で、辻の取材をしていた記者のスマホにもメールで伝えられていたのだ。
「更に
其の質問に対して辻はしどろもどろに成り乍ら「いや…其れは…記憶に……」と呟くが、壮年の記者は長年の経験と勘で“此処で
「
其れに対して真っ青な顔になった辻が「あの…その……」と呂律が回らない声で呟き出した姿を見た壮年の記者はピシャリと“トドメの質問”をぶつけるのだった。
「此処で、私の質問にハッキリと答えて頂けませんかね?学園艦教育局長の辻 廉太さん!」
「はい……」
首都テレビの巧妙な取材攻勢の前に、辻は嘘を吐き通せ無くなった。
戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない
第76話「バックハンド・ブローです!!」
此処は大洗女子学園・戦車道チームを包囲中のプラウダ高校・戦車道チームが待機して居る村の片隅。
大洗女子への降伏勧告に対する回答を持ち帰った軍使から報告を受けたチームの副隊長・ノンナが第二次世界大戦中にソ連軍が使用したスノーモービル“RF-8アエロサン”をベット代わりにして仮眠して居るカチューシャ隊長の下へ赴いた処、彼女の気配に気付いたカチューシャは目覚めた後、寝惚け眼の表情を浮かべ乍ら……
「で…土下座?」
と問い掛けた処、ノンナは冷静な声でこう答えた。
「いいえ、降伏はしないそうです」
するとカチューシャは“北極熊の様な獰猛な顔”に一変すると鋭い声で……
「ああ、そう。待った甲斐が無いわね!其れじゃあ、さっさと片付けて御家に帰るわよ!」
と告げたのに対してノンナも「はい」と答えた処、カチューシャは頷くと“ダメ押し”とばかりに“今大会に賭ける決意”を語った。
「ノンナ、チームの皆と一緒に勝って決勝、そして連覇を目指すわよ!もう去年みたいに誰からも後ろ指を指されない様にね!」
だが、未だ2人は知らない。
大洗女子が形勢を逆転するべく“予想外の作戦”に打って出ようとしている事に。
『西住隊長、其れと皆さん。私から提案が有ります』
私・原園 嵐がチームの皆に呼び掛けたのは“あんこう踊り”で皆の士気を高めた西住隊長が「最後迄戦います!」と決断してプラウダ高による降伏勧告を拒否した後、皆が徹底抗戦の覚悟を決めた時だった。
此処で私は、西住隊長が“あんこう踊り”を踊る前の絶体絶命の場面で“
『此れから私達“
「「「えっ!?」」」
私の提案に対して皆が驚きの声を上げる中…“
『御免。良恵には悪いけれど“群馬みなかみタンカーズ”出身じゃ無い貴女を此の作戦に連れて行く事は出来ないわ。だから貴女は今から“ウサギさんチーム”のM3リーに乗り換えて。M3リーはもう1人乗れる余裕が有るから大丈夫』
だが良恵は涙声で「嫌だよ、嵐!私も“ニワトリさんチーム”の一員だもの。一緒に行かせて!」と叫ぶが、私は心を鬼にしてこう答えた。
『河嶋先輩が言ったでしょ!私や瑞希・菫・舞は元々そんな心算は無かったけれど“此の大会で負けたら母校が廃校になる秘密”を生徒会と共有した結果“生徒会の手先”になった。だから此処で私達はケジメを付けなきゃ行けないの!』
其れに対して、今度は河嶋副隊長が真っ青な顔を浮かべ乍ら「原園…御前達、まさか私達の為に犠牲になる心算か!?其れだけは止めてくれ!」と叫ぶ。
如何やら河嶋先輩も“自分の「暴言」の所為で私達が犠牲になって仲間達を助ける”事に気付いたらしいが、もう遅い。
私は敢えて底冷えのする声で……
『駄目ですよ、河嶋先輩』
と告げた後、皆へ向けて“決意”を語った。
『西住隊長、そして皆さん。私達もさっき隊長が語った通り“来年も皆と一緒に戦車道がやりたい”です。でも私達は結果として生徒会と一緒に廃校の秘密を共有して皆に黙っていました。だから…此処で私達が犠牲になっている間に態勢を立て直して下さい!此れが私達の“ケジメ”です!』
だが、其れに対して悲鳴の様な叫び声が響いた。
「駄目です、原園さん!」
其れに対して、私は静かな声で……
『西住隊長、私達は簡単にやられる心算は有りませんから心配しないで下さい。最低でもカチューシャ隊長のT-34/85は道連れにしますから。そうすれば上意下達の厳しいプラウダ高は統率がガタガタになってロクに戦えなくなるから、其の時がチャンスに……』
と語って居た時だった。
突然西住隊長が私の話を遮る様にこう告げたのだ。
「違うんです、原園さん!私が言いたいのは……」
そして隊長の話を聞いた私達“
其れは……
「今から“ニワトリさんチーム”だけでは無く、皆でカチューシャ隊長達が居る敵の正面に突っ込むんです!」
西住隊長から提案された“まさかの全軍突撃”に対して私達は一斉に当惑の声を上げた。
先ず菫が……
「西住隊長!幾ら嵐ちゃんが突っ込むと言ったからって、全車で突っ込むなんて!」
と叫んだ処、舞も……
「皆で一番防御が固い正面に突っ込むなんて無謀なんじゃあ!?」
と反論する中、流石の私も隊長の作戦意図が理解出来ず……
『あの…西住隊長、本気でそう考えているのですか!?』
と問うたのだが…其の時、“
「皆、一寸待って!」
と叫んだ後、私や瑞希も参加した偵察隊の情報を元に武部先輩達が描いた地図をチラリと見た直後、大声でこう叫んだのだ。
「そうか!其の手が有ったわ!」
「「『はいっ!?』」」
長年の相棒の発言を聞いて驚いた私と菫・舞だけで無く、西住隊長以外の仲間達も一斉に驚く中、瑞希は「皆、時間が無いから手短に話すわね」と告げてから、こう語ったのだ。
「簡単に言えば、西住隊長の作戦は単なる正面突破では無くて“
其処で彼女は一呼吸入れてから、続けてこう語る。
「つまり“包囲網の一角に意図的な
すると西住隊長は両目を大きく見開いて「うん。でも野々坂さん、良く分かったね」と答えると瑞希は……
「今、地図でプラウダ高の戦車の配置を見た時に“ピン”と来ましたから!」
と答えた処、西住隊長は「凄いね……」と彼女を褒めた後、「じゃあ、私の考えを詳しく説明します」と皆に告げてから、具体的な説明を始めた。
時間が無いから手短に話しますが、プラウダ高の包囲網には1か所だけ“穴”が有ります。
此方から見て教会跡の出口の左側にはT-34/76が1輌しか居なくて其の周辺が手薄だけど、之は野々坂さんが指摘した通りの“罠”なんです。
つまり、そっちへ行ったら教会跡の正面に控えている9輌の戦車の内、1列目のT-34/85・5輌*3が此方の後を追い掛けて行く間に2列目のT-34/76が2輌にT-34/85とIS-2が各1輌の計4輌が“予備部隊”として、私達が向かう左側前方に回り込んで包囲する手筈になっている筈です。
しかも此方がフラッグ車のT-34/76を直接狙おうとしても付近には別のT-34/76とKV-2が待ち伏せて居るので、其れに私達が引っ掛かっている内に正面の戦車9輌に包囲されてしまいます。
でも…此のプラウダ高の作戦は、逆を言えば“此方が正面突破を図る筈が無い”と思い込んでいる可能性が高いんです。
しかも正面に居る9輌の戦車の内、2列目の4輌は“予備部隊”だから、其処を狙えば相手を混乱させる事が出来ます。
つまり、此処で私達が狙うべきは敵陣正面…其れも1列目の5輌じゃ無くて2列目の“予備部隊”です。
之を撃破すれば、敵は一時的に私達を追撃する為の戦力が無くなりますから、其の間に包囲網を突破する事が出来ます。
「「『おおっ!』」」
西住隊長による作戦説明を聞いた私達の間からどよめきの声が響く中、隊長の作戦意図を見抜いた瑞希が秋山先輩と小声で何やら話し乍ら笑顔で頷き合って居る。
そんな中、西住隊長が此処で不安気な声で、こんな事を語り出した。
「だけど…此の作戦には一つだけ“不安要素”が有るんです。其れは……」
と言った時、秋山先輩が挙手をしてからこう答える。
「西住殿、若しかして“カチューシャ隊長なら、其れを予測しているのでは?”と思っているのですね?」
すると西住隊長は「うん。もし秋山さんの言う通りだったらと思うと……」と語った時、秋山先輩は笑顔で「大丈夫です!実は私も同じ事を考えていたので、先程西住殿が作戦説明をした時に野々坂殿に質問をしたのです」と答えてから隣に居る瑞希を促すと彼女は「はい隊長!心配無用ですよ!」と答えてから、こう問い掛けたのだ。
「西住隊長、あの
「「『?』」」
瑞希からの問い掛けに、西住隊長や私達も其れが何を意味するのか分からず考え込んでいた処、彼女はこう語った。
「実は
其処で瑞希は一呼吸置いてから、笑顔でこう答えたのだ。
「彼女、“チビッ子”らしくスノーモービルの中でスヤスヤ眠っていたんですよ!」
更に彼女は「だから西住隊長、カチューシャは私達の作戦に気付いていません!此の私が自信をもって断言します!」と語ると、西住隊長はホッとした表情を浮かべて「野々坂さん、有難う!此れで自信をもって作戦を遂行出来ます!」と瑞希に向けて答えると彼女は笑顔で「いえ、隊長の決断を助ける為に知恵を絞るのは当然の事ですから!」と答えた。
そして西住隊長は先程迄の不安気な表情から一変して凛々しい表情に変わると凛とした声で私達チーム全員に指示を出した。
「其れでは皆さん、此れから敵包囲網を一気に突破する“トコロテン作戦”の準備を始めます!速やかに準備を整えてから各戦車に乗車して下さい!」
「「『はいっ!』」」
こうしてチーム全員が出撃前最後の点検と戦車への乗車の準備を進める中、瑞希が私の傍に来ると嬉し気な声でこんな事を言って来た。
「嵐。アンタが西住隊長にゾッコンな理由が分かった!だって、こんな絶体絶命の場面でWW2の第3次ハリコフ攻防戦時にマンシュタイン元帥がやった様な大胆な反撃作戦を立案出来る隊長さんなんて滅多に居ないもの!私もワクワクするわ!」
其れに対して私もつい……
『“
と振った処、彼女はニヤリと笑い乍ら……
「私も一度、隊長を口説いてみようかな?」
と答えた為、私は真面目な声で……
『其れだけはマジで止めて…と言うか、隊長はそう言う
と釘を刺すと、流石に瑞希も“之は不味い”と思ったのか……
「御免、冗談だった」
と謝ったので、私も『宜しい』と答えた処、愛車である
「本当に良いんですか?」
西住隊長の問い掛けに対して河嶋先輩が力強い声で「ああ!」と答えると小山先輩も「任せて!」と続き、そして佐智子ちゃんが決定的な事を喋る。
「プラウダの露払い、しっかりやって来ます!」
其の瞬間、私は“
『私達の代わりに“囮か露払いとなって敵陣正面に突っ込む”気か!?』
其れと同時に私の心に“火”が付いた時、角谷会長が元気良く……
「さあ、行くよ!」
と声掛けした後、続けて「西住ちゃん!」と隊長に呼び掛けた直後。
私にとって“生涯忘れられない会長の一言”が聞こえた。
「私等を此処迄連れて来てくれて、ありがとね」
其の瞬間、私は確信した。
『会長とカメさんの皆は“学園の廃校を皆に隠していたケジメを着ける為に敵陣正面へカチコミを仕掛ける気だ”!』と。
だけど其れは私も考えていた事。
だから私は、敢えて会長に向けて口を挟んだ。
『会長…そして“カメさん”の皆、駄目ですよ。そうやって自分達がプラウダの正面に突っ込んで犠牲になる事で“廃校の事を隠していたケジメ”を着け様だなんて!』
「「えっ!?」」
突然会話に割り込んで来た私の一言に動揺する西住隊長と角谷会長を余所に、私は冷静な声で“此のカチコミ”の首謀者であろう角谷会長に向けて語り掛ける。
『会長。何故西住隊長が私達“ニワトリさん”が犠牲になる作戦を認めなかったか分かりますか?隊長は“誰かが犠牲になる作戦は極力やりたく無い”んです』
「原園さん……」
私の指摘に対して、西住隊長が心配気な声で呟く中、会長は「でも原園ちゃん……」と抵抗の素振りを見せたが、此処で私は毅然とした声でこう語った。
『会長が言いたい事は分かります。今は隊長が一番嫌がる
其処で私は言葉を区切ると西住隊長へ向き直ってから、こう申告した。
『西住隊長、私達“
其れに対して西住隊長が「原園さん!」と心配気な声で私に話し掛けて来たが、私は笑顔でこう返した。
『大丈夫です!絶対自分達も会長達も無事に帰って来ますから!』
すると話を聞いていた会長が……
「ありゃーっ、如何やら原園ちゃんは私達だけに良い思いはさせないって処かな?」
と“的確な分析”を語って来たので私も……
『流石ですね会長、そして皆で一緒に西住隊長の所へ戻りましょう!』
と答えた後、2人に向けて精一杯の笑顔を贈るのだった。
(第76話、終わり)
此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第76話をお送りしました。
今回は此の後の展開の舞台裏を再構築する感じで書いてみましたが、如何だったでしょうか。
ガルパン本編ではこう言う場面に関する説明が結構ザルなので、色々と考えるの楽しいですが…読んでも楽しめたでしょうか?
そして遂に役人にもしっぺ返しの時が…だが、之はまだまだ始まったばかりなんだな(暗黒笑顔)。
其れでは、次回をお楽しみに。