戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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祝・水曜どうでしょう最新作2023放送開始&ガルパン最終章第4話公開記念(ステマ)。
しかし、今回のどうでしょうは史上最もヤバイ展開ですねえ……(笑)

其れは兎も角。
いよいよ、西住殿による“後手からの一撃”「トコロテン作戦」の始まりです。
此処から原作とは一味違う展開に持って行きます。
何が起きるかは読んでの御楽しみ。
其れでは、どうぞ。



第77話「中央突破です!!」

 

 

 

「敢えて包囲網に緩い所を作ってあげたわ♪」

 

 

 

審判団から試合再開の合図が伝わった直後、教会跡に立て籠もる大洗女子学園・戦車道チームを包囲中のプラウダ高校・戦車道チーム側の正面部隊ではカチューシャ隊長が余裕綽々の声で“大洗女子に仕掛けた罠”について語っていた。

 

すると副隊長・ノンナの副官でロシアからの留学生・クラーラが冷静な声で「奴等(大洗)はきっと其処を突いて来る」と指摘した処、カチューシャは微笑み乍ら……

 

 

 

「突いたら挟んでおしまい♪」

 

 

 

と結論付ける。

 

だが、其れに対してノンナ副隊長が「上手く行けば良いのですが……」と呟いた処、カチューシャは苛立ち気味の声で「カチューシャの立てた作戦が失敗する訳無いじゃない!」と叫び、更にクラーラも「其の通りです、同志ノンナ」と“カチューシャの()()を巡る争いのライバル”である副隊長に対して反論した上で……

 

 

 

「其れに万が一、大洗が此方のフラッグ車を狙いに来た場合の策も有ります」

 

 

 

と指摘すると、カチューシャも頷き乍ら……

 

 

 

「其の時は背後に隠れているカーベー(KV-2)たんがちゃんと始末してくれる♪」

 

 

 

と述べたのに対して、クラーラも「はい。用意周到の偉大なるカチューシャ様の戦術に隙は有りません」と答えた処、カチューシャは不敵な笑みを浮かべつつこう宣言した。

 

 

 

「今から敵が泣きべそを掻く様が目に浮かぶわ!」

 

 

 

だが、ノンナは自信たっぷりの笑みを浮かべて居る2人の様子を見て、小声で「ふぅ…そんなに上手く行けば作戦等要らないのだけど」と呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

しかし此の時、彼女達プラウダ高校・戦車道チームの首脳部は気付いていなかった。

 

既に大洗女子学園戦車道チーム隊長・西住 みほが自分達の作戦を見抜いて居り、其れを逆手に取った逆襲を狙っている事に。

 

そして…大洗女子学園の“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”のチームリーダー兼車長・原園 嵐の“()()”が目覚めようとしている事に。

 

 

 

 

 

 

戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない

 

 

 

第77話「中央突破です!!」

 

 

 

 

 

 

「其れでは之から、敵包囲網を一気に突破する“トコロテン作戦”を開始します。Panzer Vor (パンツァー・フォー)!(戦車前進!)」

 

 

 

『菫、エンジン始動』

 

 

 

教会跡で待機する私達・大洗女子学園戦車道チームの全車に西住隊長からの指示が下ったのを確認した私・原園 嵐は直ちに“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の操縦手・萩岡 菫に指示を出した処、彼女が静かな声で…

 

 

 

「了解」

 

 

 

と応答した。

 

其れを聞いた私はチームの皆へ“今回の作戦における当面の行動”について指示を出す。

 

 

 

『じゃあ皆、今から私達は“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”を援護しつつ前進を開始する』

 

 

 

「「「了解!」」」

 

 

 

私の指示に対して、菫と砲手の野々坂 瑞希(ののっち)、装填手の二階堂 舞、そして副操縦手の長沢 良恵の4人が一斉に応答する。

 

特に良恵は、此の作戦の前に私が提案した「“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”単独の正面突撃作戦」の際には作戦の危険度の高さを考えて“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”へ乗り換える様にとの私の指示に対して強硬に反対していただけに、誰よりも元気良く返事をしていた。

 

だから私も……

 

 

 

『良恵、さっきは“イージーエイト(M4A3E8)から降りろ”と言って御免』

 

 

 

と話し掛けた処、彼女は笑顔で……

 

 

 

「嵐、私も“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の一員だから、どんなに危険な任務でも絶対に逃げないよ!だから副操縦手席は私に任せて!」

 

 

 

と答えたので、私も笑顔で『うん!』と答えてから『其れじゃあ、皆……』と前置きした後、大声で号令を下した。

 

 

 

 

 

 

Panzer Vor(パンツァー・フォー)!(戦車前進!)』

 

 

 

 

 

 

そして“試合再開”の場内アナウンスが観客席に流れた直後…包囲されていた大洗女子学園・戦車道チームの戦車7輌全てが単縦陣で立て籠もって居た教会跡から飛び出して来た。

 

其の様子を実況している首都テレビの実況席では、実況を担当する首都テレビアナウンサー・加登川 幸太が珍しく絶叫する。

 

 

 

「何と試合再開早々、大洗女子学園が教会跡を包囲しているプラウダ高の正面部隊目掛けて突撃を開始しました!しかし、之は全滅覚悟の作戦でしょうか!?」

 

 

 

其れに対して、此の試合を担当する2人の解説者の内の1人である戦史研究家・吉山 和則も大声で……

 

 

 

「加登川さん、大洗はまるで知波単学園の様な突撃を見せていますが、此処迄的確な戦い振りを見せていた彼女達にしては不自然な攻撃ですよ!?」

 

 

 

と叫んだのに対して、もう1人の解説者である戦史研究家兼戦車道解説者の斎森 伸之も“何か”に気付いたらしく……

 

 

 

「確かに、今迄の大洗女子からは想像出来ない攻撃ですが…まさか、之も何らかの意図が有るのかも!?」

 

 

 

と喋っている。

 

そんな実況を聞き乍ら観客席に陣取る両校の応援団…特に大洗女子学園側応援席では“中等部4人娘(華恋・詩織・由良・光)”や秋山夫妻、そして五十鈴 百合と新三郎を始めとする人々が必死になって大洗女子を応援している中、フィールド内では大洗女子を包囲攻撃する態勢になったプラウダ高校戦車道チーム隊長・カチューシャが不敵な笑みを浮かべつつ……

 

 

 

「フフ…予想通りね。流石私♪」

 

 

 

と呟いて居たが……

 

 

 

「御待ち下さい、カチューシャ様!敵が此方へ突っ込んで来ます!」

 

 

 

ノンナ副隊長の副官であるクラーラが“大洗女子の異変”に気付いて叫び声を上げたのを聞いたカチューシャも大洗女子の突撃を見て……

 

 

 

「こっち!?馬鹿じゃ無いの!?敢えて分厚い所へ来るなんて!」

 

 

 

と叫ぶ。

 

其れに対してノンナ副隊長は感情を殺した声で「如何やら此方の作戦が読まれていた様ですね」と語った処、カチューシャは怒りの声で「返り討ちよ!」と叫ぶと共にチームの各車へ応戦命令を出したのである。

 

 

 

 

 

 

其の頃、“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の車内では私が……

 

 

 

『ねえ、瑞希(ののっち)。正面の攻撃は会長さんの気持ちを汲んで“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”に任せて私達は“カメさん”の援護に回ったけど、確か“カメさん”の砲手は河嶋先輩(ノーコン)の筈じゃあ?』

 

 

 

と尋ねていた。

 

そう、“狙った獲物は必ず()()”事で有名な河嶋先輩が砲手である限り、“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”は1輌も撃破出来ない筈なのだが、何と瑞希はこう答えたのだ。

 

 

 

「大丈夫よ」

 

 

 

『えっ!?如何言う事?』

 

 

 

瑞希からの“信じられ無い回答”を聞いて思わずツッコミを入れる私に対して、瑞希は平然とした声でこう答えたのだ。

 

 

 

「今頃、“カメさん”は砲手を交代している筈だから」

 

 

 

『えっ!?誰が砲手なの!?』

 

 

 

 

 

 

其の頃…“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”の車内では。

 

 

 

「河嶋、代われ」

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

生徒会長の角谷 杏が砲手を務めていた河嶋 桃に交代の指示を出すと続けて車内の仲間達に向けてこう告げる。

 

 

 

「其れと佐智子ちゃんは無線手に、河嶋が佐智子ちゃんに代わって装填手を頼むよ」

 

 

 

其れに対して名取 佐智子が鋭い声で「了解!」と答えると先程迄会長が座って居た無線手席に座る。

 

そして無線手席から砲手席へ移った会長は……

 

 

 

「やっぱ37㎜じゃあ真面にやっても中々抜けないよねぇ」

 

 

 

と呟いた後、操縦席に居る柚子へ向けて指示を出す。

 

 

 

「小山!一寸危ないけどギリ迄近付いちゃって!」

 

 

 

「はいっ!」

 

 

 

そして角谷会長率いる“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”は正面に居るプラウダ高の戦車部隊目掛けて突撃を開始した。

 

 

 

 

 

 

『“カメさんの砲手”が会長!?』

 

 

 

「うん」

 

 

 

瑞希から“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)の新砲手”の正体を聞かされた私は信じられ無い気持ちで問い返した処、彼女は平然とした声で答えた為、私は半信半疑の声でこう問い返した。

 

 

 

『と言うか、何で瑞希(ののっち)が知っているのよ!?』

 

 

 

其れに対して彼女は事情説明を始めた。

 

 

 

「実はアンツィオ戦の前頃に会長さんから『河嶋が砲手として頼り無いから、私に砲術を教えて欲しい』って頼まれてね。其処で毎日早朝と放課後に2人だけの極秘練習をやっていたんだけど…驚いたわ」

 

 

 

すると装填手の舞が「如何言う事?」と問うた為、瑞希はこう説明したのだ。

 

 

 

「其れがね、会長さんは練習の最初の段階から八割方は目標に当てられる腕前でね。後は私が幾つかコツを教えたら、チームの中では私と五十鈴先輩の次に上手い砲手になっちゃった訳」

 

 

 

「『マジか!?』」

 

 

 

余りにも信じ難い話だが、話相手が長年の相棒で“中学時代は関東有数の砲手(みなかみのヴァルタザール・ヴォル)”と呼ばれる有名人だった瑞希だけに“嘘を吐いていない”と確信した私と舞は驚きの声を上げる。

 

其れに対して瑞希も真面目な声でこう語るのだった。

 

 

 

「余りに上手かったから、私も会長さんに“若しかして過去に戦車道をやっていたんですか?”って尋ねたわよ…本人にははぐらかされたけどね」

 

 

 

「「『ええっ!?』」」

 

 

 

瑞希の口からまさかの「角谷会長・戦車道履修疑惑」迄飛び出した為、私達は驚愕の叫び声を発してしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

一方、“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”と共にプラウダ高校戦車道チーム目掛けて突撃中の“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”の車内ではプラウダ側からの防御砲火を目の当たりにした角谷会長が……

 

 

 

「おーっ、怖えー…良ぉしっ!」

 

 

 

と不敵な微笑を浮かべ乍ら47.8口径37㎜砲の照準を合わせて行く。

 

そして会長が照準を合わせていたプラウダ高のT-34/85が彼女よりも先に85㎜戦車砲の照準を合わせて来たのに気付くと……

 

 

 

「来るぞ!」

 

 

 

と叫んだ途端、操縦手の柚子が素早いドリフトを決めてT-34/85から発射された85㎜砲弾を躱してから一気に相手との距離を詰めると会長が37㎜砲を発射!

 

僅か数十mの距離から放たれた砲弾は見事正面に居たT-34/85の弱点である砲塔基部に命中、白旗を揚げさせたのだ。

 

そして殊勲の“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”を先頭に包囲網を突破する大洗女子学園戦車道チームの戦車達。

 

其の姿を見たプラウダ高のカチューシャ隊長が「やったなあ!後続、何が何でも阻止!」と叫んで、後方に居る正面部隊第2陣の4輌の戦車に指示を出す。

 

 

 

 

 

 

一方、敵正面部隊第1陣の戦車5輌による包囲網を突破した大洗女子学園戦車道チームでは西住 みほ隊長が正面に居る敵戦車に気付いて「前方、敵4輌!」と叫ぶ。

 

すると“カモさんチーム(ルノーB1bis)”リーダー兼車長(副砲砲手兼副砲装填手兼通信手でもある)・園 みどり子(ソド子)から無線連絡が入る。

 

 

 

「此方最後尾、後方からも4台来ています。其れ以上かも!」

 

 

 

其れに対して、みほは「挟まれる前に隊形を乱さない様、10時の方向に旋回して下さい!」と全車に指示を出すと、今や“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”リーダー兼車長兼砲手となった角谷会長が気合の入った声で……

 

 

 

「正面の4輌引き受けたよ!上手く行ったら後で“ニワトリさん(M4A3E8)”と一緒に合流するね!」

 

 

 

とみほに対して返信した後……

 

 

 

「T-34/76と85にスターリン(IS-2)かぁ…硬そうで参っちゃうなあ♪」

 

 

 

と1人呟く。

 

尤も本人は此の状況を楽しんでいるらしく、不敵な笑みを浮かべ乍らチームの仲間達に向けて「小山!ねちっこくへばり付いて!河嶋、装填早めにね!そして名取!小山の操縦のサポート宜しくね!」と指示を出すと彼女達も気合の入った声で「「「はいっ!」」」と答える中、会長は正面から迫るプラウダ高校戦車道チームのIS-2重戦車の姿を見乍ら……

 

 

 

「38(t)の37㎜砲でも零距離なら何とか……」

 

 

 

と呟いた後、再び西住隊長へ向けて無線を飛ばす。

 

 

 

「西住ちゃん、いいから展開して!」

 

 

 

此処でみほ達本隊を分離しないと本隊がプラウダ高の追手に捕まってしまうからだ。

 

其れに対して、みほも……

 

 

 

「分かりました、気を付けて!」

 

 

 

と返信して来たのを聞いた角谷会長は御道化た声で「そっちもねー♪」と答えた後、みほ達大洗女子の本隊が左方向へ旋回して此方から離れて行く。

 

そして角谷会長率いる“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”は“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”を従えてプラウダ高の戦車4輌目掛けて突っ込んで行った。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

プラウダ高の追手を阻止する為に突撃する2輌の仲間の姿を見て、思わず“後悔”するみほ。

 

 

 

(皆の為とは言え、プラウダ高の強力な戦車部隊相手じゃあ…“カメさん”や“ニワトリさん”達は無事に帰って来れないかも知れない)

 

 

 

例え“勝つ為”に嵐や角谷会長が提案した作戦とは言え、仲間を生贄にする様な作戦をやるべきでは無かったのでは…と思っていたみほだったが、次の瞬間“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の車長用キューポラから見えた少女の“笑顔”を見て驚く。

 

 

 

「原園さん!?」

 

 

 

其の少女…“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”リーダー兼車長の原園 嵐がみほに向けて敬礼し乍ら“最高の笑顔”でウインクして見せた後、“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”の後に続いて突撃して行ったのだ。

 

其の時みほは、嵐から“必ず戻って来ますから、隊長も頑張って下さい!”と言われた様な気持ちになり、心の中でこう呟いた。

 

 

 

「有難う、私も頑張る!」

 

 

 

 

 

 

あの時、私達から離れる本隊の先頭を行く“あんこうチーム(Ⅳ号戦車F2型仕様)”の車長用キューポラを見た時、西住隊長が凄く心配気な表情をしているのを見た私は……

 

 

 

「隊長を元気付けたい!」

 

 

 

と思って咄嗟に“自分が出来る「最高の笑顔」”を浮かべ乍ら敬礼とウインク迄して見せた。

 

だって、あんなに悲し気な表情で私達を心配している西住先輩の顔を見たら“心配しないで、大丈夫です!”って伝えたいと思いますよ、誰だって。

 

尤も、後日瑞希(ののっち)に之を話したら彼女は……

 

 

 

「嵐もすっかり雌堕ちしたわね♪」

 

 

 

って揶揄(からか)ったから、其の時は彼女の頭をゴツいたけれど(苦笑)。

 

其れは兎も角、此の突撃の際に私達は敢えて定石を破る攻撃方法を採った。

 

私達“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”よりも砲力が劣る“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”が攻撃役となり、私達は“カメさん”の援護に回ったのだ。

 

其れは「学園の廃校を皆に隠していたケジメを着ける為に敵陣正面へカチコミを仕掛ける!」と言う角谷会長と“カメさん”の気持ちを汲んだ結果だ。

 

勿論、作戦上は非合理的な理由に過ぎないが…其処は援護役である私達が「“カメさん”が撃ち洩らした敵に止めを刺す」役割を果たす事で帳尻を合わせる心算だった。

 

しかし、私達の心配は結果的に杞憂に終わる。

 

何故なら“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”は私達の予想を遥かに超える戦闘能力を発揮してプラウダ高の正面第2陣に居た4輌の戦車を翻弄したのだ。

 

先ず、私達“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”が進路を微妙に変える事で迎撃しようとしたプラウダ側の対応を遅らせると、其の隙に“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”がプラウダ側の懐に飛び込んで行く。

 

そしてプラウダ側の戦車4輌の中へ飛び込んだ“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”が、先ずT-34/76の車体後部に1発当てて其の駆動輪を吹き飛ばす。

 

更にIS-2重戦車の後面へ回って命中弾を出すが、之はIS-2の重装甲に阻まれてしまった。

 

でも会長は「失敗…もう一丁!」と鋭く指示を出すと、装填手に抜擢された河嶋先輩が「はいっ!」と答えて素早く装填。

 

更に相手戦車の後面に命中弾を出すと先程駆動輪を吹き飛ばしたT-34/76の砲塔基部に止めの一撃を加えて白旗を揚げさせた。

 

 

 

「もう一丁!」

 

 

 

「はいっ!」

 

 

 

こんな感じで息もピッタリな二人の様子を見た名取 佐智子ちゃんは後に……

 

 

 

「会長の砲撃も凄かったけど、河嶋先輩も装填手としては優秀だったんだ」

 

 

 

と語ったのだけど、勿論敵弾を綺麗に避け切って見せた小山先輩のドライビングテクニックと其れを陰で支えた佐智子ちゃんも凄かったよ。

 

そして“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”は別のT-34/76の駆動輪を吹き飛ばした後、T-34/85の履帯も砲撃で切断してから再び駆動輪を吹き飛ばしたT-34/76目掛けて突入すると其の砲塔基部目掛けて砲撃を加え、之を撃破!

 

相手戦車から白旗が揚がった後、“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”は私達“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の援護の下、意気揚々と戦場を離れて行った。

 

 

 

 

 

 

「良しっ、こん位で良いだろ!撤収―♪」

 

 

 

角谷会長からの撤収命令に対して私も息を弾ませ乍ら『はい!』と答えた後、追加の報告をする。

 

 

 

『其れと会長、さっき履帯が切れただけだったT-34/85に止めを刺して置きました』

 

 

 

…私達も“カメさん”を守るだけでは無く、会長達が撃ち洩らした敵が居ないかチェックした上でしっかり止めを刺して置いたのだ。

 

私が其の報告を会長さんに告げているのを聞いていた砲手の瑞希も“会長が撃ち洩らしたT-34/85を自分が撃破した”事で機嫌が良いのか、満面の笑みを浮かべて居る。

 

其処へ会長さんから返信が来る。

 

 

 

「あっ、原園ちゃん有難う。之で4輌中3輌は仕留めたか♪」

 

 

 

『はい会長。残るIS-2は此方の砲力では撃破が難しい重戦車ですから深追いする必要は無いでしょう』

 

 

 

「そうだね♪じゃあ西住ちゃんの所へ帰ろうか」

 

 

 

と角谷会長と私が会話をしている中へ河嶋先輩が「御見事です!」と口を挟んで来たのが無線で聞こえたから、私は苦笑いを浮かべて居たが…其の時、私は背筋に“()()()()()”を感じた瞬間、咄嗟に無線でこう叫んだ。

 

 

 

『会長!直ちに10時方向へ急旋回!』

 

 

 

其れに対して角谷会長も「小山!方向10時!」と指示する声が無線越しに聞こえた時…“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”が小山先輩の操縦で急旋回した直後、其の近くに砲弾が着弾して雪煙を上げたのだ。

 

 

 

「原園ちゃん、さっき迄私等が居た場所に砲弾の弾着を確認!」

 

 

 

無線で角谷会長が状況報告したのを聞いた私は反射的に状況を告げる。

 

 

 

『後方にプラウダのT-34/85を確認!別の場所に居た部隊の様です!』

 

 

 

すると小山先輩が「危なかった!」と叫ぶのが聞こえた直後、角谷会長がホッとした声で「いや~原園ちゃん、有難う!」と無線で告げたので、私も元気良く応答した。

 

 

 

『はいっ!じゃあ会長、今直ぐ西住隊長の所へ戻りましょう!』

 

 

 

 

 

 

一方、“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”を砲撃したものの嵐の“優れた直感力”によって()()()()()()()プラウダ高のT-34/85の車長…プラウダ高校戦車道チーム副隊長・ノンナは自車の車長用キューポラから顔を出して外の様子を確認した後、忌々し気な声でこう呟いた。

 

 

 

「今の砲撃は原園に見切られていたのか…恐ろしい娘!」

 

 

 

強豪・プラウダ高の主力選手であるノンナは以前から“みなかみの狂犬”の渾名で関東中の戦車乙女から恐れられていた嵐と直接対決した事こそ無かったものの、常に彼女の行動に注目していた。

 

しかもノンナは遠距離狙撃の達人として全国的に名が知られており(前回の戦車道全国高校生大会・決勝戦で黒森峰のフラッグ車(ティーガーⅠ重戦車)を撃破する決勝弾を放ったのも彼女だ)、自身も其の事に誇りを持っていただけに自らが狙った目標に対して警告するだけで外させた嵐の実力を直感して“彼女は我がチームに取って危険過ぎる存在”で有る事を確信した。

 

 

 

(何としても原園 嵐を倒さねば我々の勝利は無い!)

 

 

 

心の中でそう呟いたノンナは突破された正面部隊の全車に対して毅然とした声で……

 

 

 

「動ける車輌は速やかに合流しなさい!」

 

 

 

と命じた処、チームの仲間達から次々に「「「はいっ!」」」と返信が入って来る中、突然カチューシャ隊長が鋭い声で新たな命令を出して来た。

 

 

 

「ノンナ!今直ぐIS-2に替わりなさい!原園が出て来たならT-34/85では役不足よ!」

 

 

 

其れを聞いたノンナも無意識の内に頷いた…敬愛する隊長も“みなかみの狂犬()”の存在を危険視し、自分にプラウダ高最強の重戦車(IS-2)に乗る様命じたのだ。

 

つまり、此れは隊長から「原園 嵐は貴女が倒しなさい!」と命令されたにも等しい。

 

其れに対してノンナは歓喜に打ち震え乍らも、其の事を一切表に出さない儘、大声で返答した。

 

 

 

「はい、カチューシャ様!」

 

 

 

 

 

 

一方、“カメさんチーム(38(t)軽戦車B/C型)”と“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の突撃で敵陣正面の突破に成功した大洗女子学園戦車道チームの主力部隊では西住 みほ隊長が仲間達に新たな指示を出していた。

 

 

 

「此の窪地を脱出します!全車“あんこう”に付いて来て下さい!」

 

 

 

「「「はいっ!」」」

 

 

 

主力部隊の各車から元気の良い返事が返ってくる中、突撃作戦を終えた“カメさん”と“ニワトリさん”の2チームも合流して来る姿がみほの視界に入って来る。

 

そして“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の車長用キューポラから笑顔で顔を出している嵐の姿を見たみほは胸が熱くなる思いを抱き乍ら……

 

 

 

(本当に帰って来てくれた!)

 

 

 

と心の中で呟いた後、目に涙を滲ませ乍ら無線で……

 

 

 

「“カメさん”と“ニワトリさん”、御帰りなさい!」

 

 

 

と伝えると両チームからも返信が届いたのだった。

 

 

 

「此方“ニワトリ”、“カメさん”と一緒に只今戻りました!」

 

 

 

「西住ちゃ~ん、心配かけて御免ね!今戻ったよ!」

 

 

 

 

 

 

此の時のみほと嵐や角谷会長との間の無線交信は首都テレビの実況中継によってリアルタイムで流された為、全国の御茶の間で実況を見ていた視聴者は勿論の事、試合会場内の観客全員も聞いて居た。

 

そして観客や実況中継の視聴者達は皆、敵陣正面へ突撃して行った“ニワトリさん”“カメさん”両チームの運命を案じていたみほと全力を上げて突撃を成功させた嵐や角谷会長達の姿に感動していた。

 

勿論、試合会場内に設置された首都テレビの実況席でも状況は同じである。

 

 

 

「驚きました!大洗女子、絶体絶命の包囲網を正面突撃で突破した後、敵陣に乗り込んで行った“カメさん”と“ニワトリさん”チームがプラウダのT-34戦車を3輌撃破して無事に戻って来ました!」

 

 

 

実況席で加登川アナウンサーがやや興奮気味に実況を伝えると解説陣の1人である斉森も興奮気味の声で先程の戦況を解説する。

 

 

 

「いやあ、先程の大洗女子の攻撃は“カメさん”の角谷選手達が凄かったですね!38(t)軽戦車の豆鉄砲(37㎜砲)では威力に限界が有るのでゼロ距離迄近付いて撃ったのですが、アレは相当な度胸が無いと出来ないですよ!」

 

 

 

そしてもう1人の解説者である吉川もこう述べる。

 

 

 

「でも大洗女子の西住隊長も凄いですよ!敵が包囲網に開けていた穴を罠だと見抜いた上、“一番守りが固そうに見えた正面が包囲網の急所”だと見破った状況判断力は流石“西住流”でしたね!」

 

 

 

すると加登川アナウンサーが「吉川さん、其れは如何言う事でしょうか?」と問うた処、吉川は「はい」と答えてからこう解説する。

 

 

 

「実はプラウダ側の包囲網正面に居た9輌の戦車の内、正面の守備に就いていたのは1列目の5輌だけで、2列目の4輌はプラウダ側が故意に開けていた包囲網の穴へ大洗女子が向かった時に其の穴を塞いで他の部隊と挟撃する為の“予備部隊”だったんだと思うんです。だからプラウダは大洗女子があの状況下で正面突撃をするとは思っていなかったのでしょう」

 

 

 

其処へ斉森がこう付け加える。

 

 

 

「つまり、大洗女子はプラウダ側の思惑を見抜いた上で正面部隊の2列目の撃破を狙ったんだと思います。そうする事でプラウダ側は予備部隊を失う為、大洗女子が包囲網を突破した後、一時的にですが大洗女子を追撃する為の戦力が無くなってしまったんです」

 

 

 

其れに対して2人の解説を聞いて居た加登川は落ち着きを取り戻した声で「成程、其れでプラウダ側が混乱している間に大洗女子は包囲網の突破に成功した訳ですね」と述べた処、吉川が「はい」と答え、続いて斉森も「其の通りです」と答えた後、加登川は実況席に居るゲストの様子に気付くと優しい声で……

 

 

 

「其れと新田さん…今涙ぐんでいらっしゃる様ですが、大丈夫ですか?」

 

 

 

と此の実況中継のゲストで346プロダクションの大学生アイドル・新田 美波に話し掛けると彼女は少し落ち着きを取り戻してから涙声でこう語った。

 

 

 

「はい…今、西住さんの『御帰りなさい!』を聞いた瞬間、今迄の出来事を思い出したから涙が溢れてしまって。御免なさい、此れ以上は何も言えないです」

 

 

 

其の言葉を聞いて居た加登川は優しい口調で「其の気持ち、よく分かります。其れでは此処で観客席へカメラを向けてみましょう」と語った処で実況映像は観客席で応援をする観客達の姿に切り替わった。

 

 

 

 

 

 

「皆大洗を応援しています!」

 

 

 

此の時、試合会場の外れで聖グロリアーナ女学院戦車道チーム隊長・ダージリン達と一緒に試合観戦中の聖グロ1年生・オレンジペコが観客席前に設置された超大型モニターに映し出された満員の観客席を見乍ら感嘆しているとダージリンが微笑乍ら……

 

 

 

「判官びいきと言う事かしら?」

 

 

 

と呟くと、隣で其の会話を聞いて居たボンプル高校戦車道チーム隊長・ヤイカが首を横に振り乍ら「少し違うと思うわよ?」とツッコミを入れてから、こう指摘した。

 

 

 

「此れで大洗女子に勝機が見えて来たから、観客も希望を持ち始めているんじゃないかしら?」

 

 

 

すると“群馬みなかみタンカーズ”前・隊長でアンツィオ高校1年生のマルゲリータ(大姫 鳳姫)が頷き乍ら……

 

 

 

「判官びいきだけじゃあ、試合には勝てませんからね!」

 

 

 

と話すとヤイカも頷いて……

 

 

 

「そうね。此れで後は原園が“本性”を顕せば……」

 

 

 

と呟いてから不敵な表情を浮かべた時、嵐の親友でサンダース大付属高校1年生の時雨が心配気な声で……

 

 

 

「ヤイカさん…私は嵐に“そうなって欲しく無い”と思うのですが」

 

 

 

と語るが、其処でヤイカは不思議そうな表情で時雨を見詰めつつ「あら?そうならないと大洗女子に勝機は無いわよ」と告げた為、時雨は意表を突かれた声で……

 

 

 

「其れは!」

 

 

 

と叫ぶと、其れを聞いて居たオレンジペコが……

 

 

 

「原園さんの“本性”?」

 

 

 

と問い掛けた処、ヤイカは再び不敵な表情を浮かべ乍ら、こう答えたのだ。

 

 

 

「そう、原園が“みなかみの狂犬”と呼ばれていた頃に戻れば大洗に勝てるチャンスが巡って来る。何故なら彼女は……」

 

 

 

と語った後、ヤイカは一旦言葉を区切ってから、こう言ったのだ。

 

 

 

「彼女は、母親である明美さんが生み出した“戦車戦を勝ち抜く為のサイボーグ”だからな!」

 

 

 

 

 

 

一方、大洗女子による中央突破で包囲網を破られただけで無く、合計4輌の戦車を失ったプラウダ高校戦車道チームでは、カチューシャ隊長が生き残った仲間達へ向けて叫んで居た。

 

 

 

「何やってるのよ、あんな低スペック集団相手に!全車で包囲!」

 

 

 

処が、其の最中にカチューシャが乗るT-34/85の無線機からこんな声が……

 

 

 

「此方フラッグ(T-34/76)車、フラッグ車もっすか?」

 

 

 

…普通、全車で包囲すると言ってもフラッグ車が包囲に参加するケースは少ない。

 

もしも包囲中にフラッグ車を狙い撃ちされたら、其の時点でチームは負けるからだ。

 

其の為、カチューシャは無線の相手であるフラッグ(T-34/76)車々長へ向けて「アホか!」と一括した後……

 

 

 

「アンタは冬眠中のヒグマ並みに大人しくして居なさい!」

 

 

 

と、少々苛立ち気味の声で叫ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

其の頃、試合は敵に包囲される大ピンチを脱出して主導権を握った大洗女子によって新たな展開へ向かおうとしていた。

 

大洗女子戦車道チーム隊長・西住 みほが次の行動へ移るべく自らが車長を務める“あんこうチーム(Ⅳ号戦車F2型仕様)”操縦手・冷泉 麻子へこんな問い掛けを発したのだ。

 

 

 

「麻子さん、2時方向が手薄です。一気に振り切って此の低地を抜け出す事は可能ですか?」

 

 

 

すると麻子は何時もの“眠そうな表情”からは想像出来ない程冷静な声で「了解。多少キツ目に行くぞ」と答えると、みほはチームの通信手・武部 沙織へ無線発信の指示を出す。

 

そして沙織は無線機の周波数を合わせてチーム全車への送信モードに変更した後、隊長の指示を全車に伝えた。

 

 

 

「“あんこう”2時に展開します!フェイント入って難度高いです!頑張って付いて来て下さい!」

 

 

 

するとチーム全車から……

 

 

 

『了解!』

 

 

 

「了解ぜよ!」

 

 

 

と応答が有る中、各車の車内では……

 

 

 

「大丈夫?」

 

 

 

「大丈夫!」

 

 

 

「マッチポイントには未だ早い!気ぃ引き締めて行くぞ!」

 

 

 

「「「おーっ!」」」

 

 

 

「頑張るのよ、ゴモヨ(モヨ子)!」

 

 

 

「分かってるよ、ソド子(みどり子)!」

 

 

 

と其々の乗員の間で掛け声が交わされた後、大洗女子の全車は一気に低地を抜け出すべく激しい機動を開始した。

 

 

 

(第77話、終わり)

 

 

 




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第77話をお送りしました。
遂に大洗女子が“トコロテン作戦”と言う名の中央突破と敵陣への襲撃により、プラウダの包囲網を突破。
しかも原作と異なり、嵐ちゃん達“ニワトリさんチーム”の援護を得た“カメさんチーム”は撃破される事無く脱出に成功。
2輌共無事に西住殿達本隊へ復帰しましたが…嵐の直感によって“カメさんチーム”を撃破し損ねたノンナがIS-2重戦車へ乗り換える事に。
此の状況の変化が次回以降、試合にどう影響するのか?
そして“大洗女子廃校問題”が首都テレビの実況で全国に知れ渡った事による影響は?

本当の事を言うと今回は“みなかみの狂犬”復活の場面迄持って行きたかったのですが、之は次回に回します。

其れでは、次回をお楽しみに。

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