戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない 作:瀬戸の住人
今回は少々短めですが、キリの良い所なので纏めてみました。
此れ迄長文の回が多かったので、多少は読み易くなったかも知れませんが……
其れでは、どうぞ。
戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない
第78話「“狂犬”、目覚めます!!」
「白熱する“第63回戦車道全国高校生大会準決勝・第二試合「プラウダ高校(青森)対県立大洗女子学園(茨城)」”は、西住 みほ隊長率いる大洗女子学園戦車道チームが角谷 杏選手率いる“
試合会場内に設置された首都テレビの実況席で、此の試合の実況を担当する首都テレビアナウンサー・加登川 幸太が鋭い声で語ると解説を担当する戦史研究家兼戦車道解説者の斎森 伸之が……
「あの無謀と思われた教会跡からの正面攻撃が“包囲網の手薄な場所へ相手を誘導して袋叩き”にしようとしたプラウダ側の思惑を打ち砕いたのは痛快でした!」
と大声で語った処、もう1人の解説者である戦史研究家・吉山 和則も「そうですね!」と答えた後、大声でこう指摘する。
「只、此の儘だと大洗女子はプラウダ側の
すると此の実況中継のゲストで、346プロダクション所属の大学生アイドル・新田 美波がこう語る。
「と言う事は、大洗女子の西住さんが又何かを仕掛けて来るって事ですね…今から楽しみです!」
其れに対して、加登川アナウンサーが冷静な声で「新田さんの仰る通り、試合は此処から一山も二山も有りそうな展開になりそうです。目が離せません」と語った後、突然鋭い口調でこう言った。
「あっ、此処で大洗女子に動きが有りました!」
すると実況中継の音声に、大洗女子学園戦車道チーム隊長車“
「“あんこう”2時に展開します!フェイント入って難度高いです!頑張って付いて来て下さい!」
此れに対して、大洗女子の戦車隊7輌全車は一斉に自分達の居る低地を抜け出すべく右から左へとジグザグ走行し乍らペースを上げて爆走し始めた。
其のチームワークは素晴らしく、追うプラウダ側との差を徐々に引き離している様にも見える。
特に大洗女子の7輌の中で唯一、此の試合が初陣の“
其の姿を観客席前の超大型モニターで見た観客達からは……
「頑張れ!“
「しっかり付いて行け!」
「振り切られるなよ!」
と大歓声が上がっており、観客席に居る“大洗女子学園・中等部4人組”こと五十鈴 華恋・武部 詩織・若狭 由良・鬼怒沢 光や秋山 優花里の両親である淳五郎・好子夫妻、そして五十鈴 華の母親・百合と使用人の新三郎も必死の声援を送っていた。
此の大洗女子の動きに対して、プラウダ高校戦車道チームのカチューシャ隊長は「何なの!?チマチマ軽戦車みたいに逃げ回って!」と苛立ち気味に叫んだ後、無線で友軍全車へ緊急の指示を出した。
「機銃、曳光弾!戦車砲は勿体無いから使っちゃ駄目!」
そしてプラウダ側から逃げる大洗女子の戦車隊へ向けて放たれる多数の曳光弾。
今は夜間の為、戦車砲に備え付けの照準器では光量不足で相手戦車を狙う事が出来ない。
其処で車載機銃から曳光弾を撃って“アタリ”と付けてから戦車砲を発砲しようと言うのがプラウダ側の狙いだったが、慌てて居る所為か彼女達が走行し乍ら撃った曳光弾の弾道は目標に対して上向き過ぎて居た為、夜空を照らすだけに終わっていた。
大洗女子戦車道チーム隊長車・
其の時、みほが被っている通信用ヘッドホンにチームの操縦手・冷泉 麻子の声が飛び込んで来た。
「見えたぞ」
其の声に反応したみほが前方を確認すると雪に覆われた上り斜面が見えて来た。
其処で、みほは沙織に対して無線発信の指示を出す。
「“カモさーん”、追い掛けて来ているのは何輌ですか!?」
沙織からの無線に対して“
其の時、みほの脳裏に天啓が走る。
「と言う事は…プラウダの
そう確信した彼女は“
「“カバさん”、“あんこう”と一緒に坂を乗り越えた直後に敵を遣り過ごして下さい!主力が居ない内に敵フラッグ車を叩きます!」
続いて……
「“ウサギさん”“カモさん”“カメさん”……」
と伝えた後、みほは一瞬だけ指示を出すのを躊躇ったが、直ぐ表情を引き締めると続きの指示を出した。
「そして“ニワトリさん”は“
みほとしては本来戦闘力の高い“
因みに、みほが“
だが同時に、みほは“
すると…彼女の懸念通り、嵐からの無線が飛び込んで来たのである。
『隊長、其れだったら私達“ニワトリさん”は坂を乗り越えた直後に反転した後、敵を待ち伏せします!』
そう…みほが懸念していたのが、正に此れだった。
思わず彼女は無線でこう叫ぶ。
「原園さん、待って下さい!其れじゃあ“ニワトリさん”は!?」
此の時、みほは「嵐が“ニワトリさん”の仲間達と共に自らを犠牲にしてプラウダ高の追手を待ち伏せして、相手と刺し違える作戦」を決行する心算だと判断し、其れを思い止まらせようと考えていた。
実際、嵐は先程迄「“母校廃校の秘密”を生徒会と共有して、生徒会の手先になっていた事に対するケジメを付ける為、自分達がカチューシャ達とタイマンを張っている間に皆は教会跡から逃げて下さい」と提案していたのだから。
心の中で“仲間達が「自分を犠牲にする作戦」を実行する事だけは止めて欲しい”と願うみほ。
だが、其れに対して嵐は先程の提案時の時に見せた“悲壮な雰囲気”は一切見せず、明るい声でこう答えて来た。
『大丈夫です!“1対多数の戦車戦”は私達の得意分野です!絶対にやられません!』
其の声を聞いたみほは“ハッ”となる。
「此れは何時もの原園さんだ!どんなに困難な状況下でも“
そう実感した彼女は“此れ以上、原園さんの気持ちを疑う訳には行かない!”と心の中で呟くと気持ちを切り替えて、こう返答したのだった。
「じゃあ“ニワトリさん”、武運を祈ります…気を付けて!」
『はいっ!』
無線で嵐からの元気一杯な声を聞いたみほはもう迷いが無くなっていた。
「こうなったら、後は原園さんや皆を信じて、プラウダのフラッグ車を絶対にやっつけます!」
みほはそう呟くと自らが率いる“
こうして大洗女子学園・戦車道チームの戦車7輌が一斉に斜面を登って行く中、“
「皆…さっきの無線を聞く限り、私達を逃がす為に残る原園ちゃんの実力を疑う心算は無いけれど、如何も“
其の問い掛けにチームメンバーで有る河嶋 桃・小山 柚子・名取 佐智子の3人が無言で頷くと会長はこう問い掛ける。
「悪いけど皆、此の私に“チームの運命”を預けてくれないかな?」
すると……
「了解です、会長!」
「はい!」
「了解!」
桃・柚子・佐智子の順で皆が会長の意見に同意すると彼女は皆に向けて“新たな指示”を出した。
「じゃあ、今から私達は“
其の指示を聞いた佐智子は「了解!」と叫んだ後、無線機を操作し始めた。
此の角谷会長による“
そして私達“
『さあ皆、直ちに砲戦用意!こっちは斜面の下に居るから斜面を登ろうとしているプラウダ側はこっちに対して車体底部を見せる形になる!だから相手の数が多くても私達の方が有利に戦えるわ!』
私が皆に“自分が考えた迎撃作戦の方法”を伝えると
「つまり、即席版の“反斜面陣地”ね!」
『流石は“
と答え乍ら、私も笑顔で叫び返したので、皆が笑顔で私を見詰めている。
さて、此処で私が此処で立てた作戦は
つまり、プラウダ側から見ると私達は斜面の下に居る為、斜面を登り切る迄は私達を直接視認する事が出来ない。
しかも、プラウダ側が私達を攻撃する為には斜面を登らないと行けないが…そうなると斜面を登る時に戦車砲の砲身が此方側から丸見えになって待ち伏せされ易くなる。
其の上、プラウダ側の戦車は斜面を登り切る直前に装甲が比較的薄い車体底部を私達に見せる事になる為、此方はプラウダから撃たれる前に相手を叩く事が出来るのだ。
その為、“プラウダ側が数を頼みに押して来ても私達は互角以上に渡り合える”と私は考えていた。
こうして待ち伏せ態勢に入った私は無線で、こう叫ぶ。
『じゃあ、“あんこう”と“カバさん”、直ちに斜面を抜けて下さい!追手は此処で私達が叩きます!』
其れに対して、両チームから「「了解!」」と応答が有ったのを聞いた私は笑顔を浮かべ乍ら、心の中で一言呟いた。
『待ってて下さい、西住隊長…カチューシャ達は此処で叩いて、
だが…此の時、プラウダ側にも“動き”が有ったのだ。
此の時迄、大洗女子を追っていたプラウダ高校戦車道チームでは彼女達を率いるカチューシャ隊長が終始無線で「追えっ、追えーっ!永久凍土の果て迄追いなさい!」と叫んでいたが、大洗女子が目の前の斜面を登って行く光景を見た時、突如異なる命令を仲間達に下したのだ。
「
すると彼女の腹心でT-34/85の戦車長でもあるクラーラが「待ち伏せですね!」と応答すると乗車をT-34/85からIS-2スターリン重戦車に乗り換えた為に仲間達よりもやや遅れて来ているノンナ副隊長も隊長の考えに同意する。
「カチューシャ様、“
其れに対してカチューシャも「私もそう思うわ!」と答えた後、こう語る。
「斜面頂上に煙幕を張れば、此方も斜面を登り切る迄の間は前方が見えなくなるけど、其のリスクよりも此方を狙っている“
其れに対して、ノンナとクラーラが同時に「「はい、カチューシャ様!」」と同意の無線を発信した直後、カチューシャは無線で仲間達全員へ向けて新たな命令を下した。
「あの“
斜面の下で待ち伏せていた私が“異変”に気付いたのは、戦場でのふとした出来事が切っ掛けだった。
『おかしい…
車長用キューポラから顔を出して外の様子を見て居た私が訝し気な声で呟いた時、副操縦手の良恵が叫び声を上げる。
「斜面から煙幕が上がっています!前方が見えません!」
更に砲手の
「此れじゃあ、斜面頂上が煙幕で隠れているから相手戦車の腹を狙い撃ち出来ない!」
と叫んだのを聞いた私も歯噛みし乍ら……
『しまった!プラウダの奴等、此処から煙幕に紛れて一列横隊で進んで来る!』
と呟いた後、頭が真っ白になった。
流石の私も“カチューシャが此方の待ち伏せを見抜いて対応策を採って来る”事は予想外だった。
其の上、相手が“煙幕を張る事で斜面を登り切る迄前方が見えないと言うリスクを負って迄、此方からの砲撃を封じた上で数の有利を活かした正面対決を仕掛けよう”等と言う“博打”を打って来るとは思わなかった為、咄嗟の対応が思い付かない。
『之が“地吹雪のカチューシャ”の実力…此処迄容赦の無い攻撃を仕掛けて来るなんて!』
彼女の凄まじい攻撃に対して、私は戦車道で初めて“
其処へ装填手の舞が大声で「嵐ちゃん!」と叫んだのを聞いた私は“ハッ!?”となって前方を見た時は既に遅く、煙幕の中からプラウダ高の戦車6輌が一列横隊で此方へ向けて突き進んでいた。
『
そして、戦車砲が発射される光が見えた瞬間……
『之迄か…って、ええっ!?』
だが此の時、絶望的な状況に突き落とされる筈だった私達の目前で…
私達の目の前に1台の
『ああっ!?』
私達の身代わりになって被弾し、其の勢いの儘転覆してから白旗を揚げた
「いや~っ、原園ちゃんが“危ない事になっているかも知れない”と直感して後を追って来たけど、大正解だったよ。こっちはやられちゃったけどね~」
其の時“私達の身代わりになったのは
『えっ…会長?そんな!?』
と叫んだ処、再び会長は一言伝えて来た。
「原園ちゃん…
『ああ……』
其の瞬間、私は理解した。
会長や“
そして目の前に居るプラウダ高の戦車6輌の中に、去年の戦車道全国高校生大会決勝戦終了後からずっと意識していた“
『よくも…西住先輩だけで無く“かめさん”迄!カチューシャ、アンタだけは許さない!』
去年の秋の日、西住 しほと出会って心を折られてから、私の中でずっと眠っていた“
『
そして私はプラウダ側からの2度目の砲撃を急発進で躱した後、大声で吼えた。
『
(第78話、終わり)
此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第78話をお送りしました。
白熱する戦いが続く準決勝。
其の中で嵐ちゃんは待ち伏せを狙うが、カチューシャも其れを見抜いて煙幕で待ち伏せを躱してから接近戦を挑んた為、“ニワトリさんチーム”は大ピンチに!
処が、其処へ会長の独断専行によって割って入った“カメさんチーム”が“ニワトリさんチーム”の身代わりになって犠牲に……
其の結果、遂に原園 嵐の“本性”が目覚めた!
そして次回。
仲間を倒されて怒りに燃える嵐、準決勝の後半戦で何が起きるのか!?
…あっ、そうだ。
ラストの嵐ちゃんの台詞は元ネタが有るのですが、分かった方は感想欄へ一言どうぞ。
何も出ませんが、返信はします。
其れでは、次回をお楽しみに。