戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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年末だと言うのに仕事や用事が多過ぎる…(仮死状態)
其れでは、どうぞ。



第79話「“狂犬”復活です!!」

 

 

 

全員(プラウダ)仲良く、()()()()を踏みやがれ!』

 

 

 

大洗女子学園戦車道チームの“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”リーダー兼戦車長・原園 嵐の()()が、無線をモニターしていた首都テレビの実況中継によって試合会場の観客席のみならず全国の御茶の間にも響き渡った直後。

 

 

 

後に“本大会・名場面の一つ”と称されると共に“日本戦車道の()()()・原園 嵐伝説の始まり”と語り継がれる事になる「壮絶な殲滅劇」が始まった―。

 

 

 

私・原園 嵐は啖呵を切る直前、私達“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”を狙って包囲攻撃を仕掛けて来たプラウダ高の戦車6輌からの砲撃を急発進で(かわ)した後、其の儘相手の懐へ飛び込んで行った。

 

某・宇宙戦艦のアニメでは“沖田戦法”と呼ばれる戦い方だが、此れは自分よりも多い相手から撃たれる覚悟さえ有れば意外と効果的な戦法だ。

 

何故なら、相手の懐に飛び込んでしまえば敵は同士討ちを恐れて攻撃し辛くなるのに対して、此方は相手を撃ち放題の状況に持ち込めるからだ。

 

其の結果、何が起こったのかと言うと―。

 

 

 

「しまった!此れではカチューシャ様や仲間達を誤射してしまう!」

 

 

 

カチューシャの腹心・クラーラが絶望的な悲鳴を上げる。

 

其れは彼女だけで無く、カチューシャ達・プラウダ高の大洗女子追撃部隊に所属する戦車6輌の乗員全てに共通する“叫び”だった。

 

嵐のM4A3E8(イージーエイト)がプラウダ側追撃部隊の懐へ飛び込んだ結果、プラウダ側追撃部隊の戦車長全員は“目の前に居る嵐の戦車を攻撃するのか、其れ共味方の誤射を防ぐのか”の二者択一を迫られた。

 

其の結果、次の行動を躊躇したプラウダ側追撃部隊の戦車6輌中5輌迄が嵐のM4A3E8(イージーエイト)によって、僅か1分足らずの間に次々と狙い撃ちされてしまったのだ。

 

そして嵐のM4A3E8(イージーエイト)によって真っ先に撃破されたのは……

 

 

 

「ああっ!」

 

 

 

クラーラの駆るT-34/85だった。

 

彼女の戦車はエンジンルームの左側面に被弾した直後、炎を噴き上げて停車。

 

彼女が悲鳴を上げた時には、既に砲塔から白旗が揚がっていた。

 

更に呆然とする彼女の目前で、()()()()()が繰り広げられる。

 

2輌並んでいるT-34/76の間を嵐のM4A3E8(イージーエイト)が走り去ろうとした時。

 

 

 

「何やっちゅ!発砲すろ!*1

 

 

 

「駄目!此処からじゃあ、そっちを撃っちまう!」

 

 

 

M4A3E8(イージーエイト)を挟み撃ちにしている筈のT-34/76の戦車長同士が無線を使わず大声で(つまり、其れ程迄の至近距離で会話しているのだ)“攻撃か、其れ共誤射を防ぐべきか”で言い争っている最中にM4A3E8(イージーエイト)の76.2㎜砲が発砲したかと思うと其の場で右旋回してからもう一度発砲。

 

呆気無い程の素早さでT-34/76を2輌共撃破してしまった。

 

 

 

「そんな…こんな事に成るなんて!」

 

 

 

自分の乗るT-34/85も含めて、カチューシャ率いる追撃部隊の半数に当たる3輌の戦車があっと言う間に撃破された事実に呆然となったクラーラが漸く一言呟いた時、状況はプラウダ高にとって更に悪い方向へ向かっていた。

 

嵐の速攻に対して、今度は2輌のT-34/85がカチューシャの駆る隊長車(T-34/85)を守るべく前に出て、嵐のM4A3E8(イージーエイト)を迎撃しようとするが、其れに対して彼女は既に撃破したT-34/76の車体を愛車の盾にして相手の攻撃を防ぐ。

 

此の姿を見たカチューシャは“ハッ!”となって、無線で残された仲間のT-34/85・2輌へ向けて絶叫した。

 

 

 

「止めて!撃破された車輌への攻撃は“規則(ルール)違反”よ!」

 

 

 

日本戦車道連盟・戦車道試合規則・5「禁止行為」の(ニ)項。

 

競技続行不能車輌への攻撃を行った場合は失格となる。

 

但し、其の逆…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

其の事に気付いたカチューシャは仲間の攻撃を止めた後、原園 嵐がルールブック(試合規則)の盲点”を衝いたプレイを仕掛けて来たのに気付いて戦慄する。

 

 

 

「何よ!?あの()狡猾(こうかつ)さは!まるで狂犬…いや、狼王ロボ*2じゃない!」

 

 

 

だが、カチューシャが震え声で呟いた時には撃破されたT-34/76の陰に隠れていた筈のM4A3E8(イージーエイト)の姿が無い!

 

其の事に気付いた彼女が「あっ!」と叫んで周囲を見回した時には……

 

 

 

「ああっ!」

 

 

 

彼女の叫び声と同時に、自身の愛車の前方右翼に控えていたT-34/85が右側面を撃ち抜かれて白旗を揚げており、其れに気付いたもう1輌のT-34/85がカチューシャから見て前方左側から迎撃しようとしたのだが……

 

嵐のM4A3E8(イージーエイト)狡猾(こうかつ)にもカチューシャ隊長のT-34/85を掠める様に前方から後方へ走り去って行く…しかも、其の僅かな隙に“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”砲手・野々坂 瑞希はM4A3E8(イージーエイト)の76.2㎜砲を()()に向けて発砲したのだ!

 

此の結果、M4A3E8(イージーエイト)を迎撃しようとしたT-34/85は隊長車(カチューシャ)を誤射する危険が有る為に砲撃出来ない儘、瑞希が撃った76.2㎜徹甲弾によって砲塔基部を撃ち抜かれて白旗を揚げたのだった。

 

此れで大洗女子を追撃していたプラウダ高校の戦車6輌中、生き残っているのはカチューシャ隊長の愛車T-34/85・只1輌だけになってしまった。

 

 

 

 

 

 

此の時、試合会場内の観客席ではプラウダ高の戦車5輌を1分足らずで撃破した大洗女子の“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”と戦車長・原園 嵐の戦い振りを目の当たりにした観客達からどよめきの声が上がっていた。

 

特に、母校の廃校撤回を賭けた試合展開に緊張が続いていた大洗女子学園側・応援席では大歓声が上がる。

 

 

 

「凄い!」

 

 

 

「“アヒルさんチーム(大洗女子フラッグ車)”達を追っていたプラウダの戦車5輌を皆、やっつけちゃった!」

 

 

 

「原園先輩が“皆の救世主”になってる!」

 

 

 

「こうなったら、プラウダの隊長(カチューシャ)車もやっつけちゃえ!」

 

 

 

此処迄不安気な気持ちを押さえて、今夜の試合の応援の為に一緒に付き添って来てくれた両親や家族達と共に必死の声援を送っていた“大洗女子学園・中等部4人組”の五十鈴 華恋・武部 詩織・若狭 由良・鬼怒沢 光が次々に歓喜の声を送った処、其れを聞いた秋山 淳五郎・好子(優花里の両親)夫妻や応援席に居た人々が一斉に……

 

 

 

「「嵐ちゃん、頑張れー!」」

 

 

 

と大声援を送り始めた。

 

勿論、応援席では“あんこうチーム”砲手・五十鈴 華の母・百合と五十鈴家の奉公人・新三郎も大声で声援を送っている。

 

 

 

更に試合会場の外れで観戦をしていた少女達の間からも声が上がる。

 

 

 

「嵐!」

 

 

 

嵐の元チームメイト・原 時雨が“嵐の過去”を思い出して、心配気な声で呟くが……

 

 

 

「大丈夫だ。今の原園は仲間達の為に戦っている。もう昔の様に“孤独な戦い”をしている訳じゃない!」

 

 

 

ヤイカが時雨の左肩に右手を載せてから力強い声で答えた処、傍に居たマルゲリータ(大姫 鳳姫)も「はい!」と答えた後、力強い声で叫んだ。

 

 

 

「そして…遂に眠っていた嵐の“()()”が目覚めた!」

 

 

 

すると3人の会話を聞いて居たオレンジペコが震え声で問い掛ける。

 

 

 

「まさか…此の獰猛な戦い方が“みなかみの狂犬( 原園 嵐 )”の正体!?」

 

 

 

其れに対して彼女の先輩兼聖グロ戦車道チーム隊長・ダージリンが小さく頷くとヤイカが頑張る(ヤバい)女の子の笑顔”を浮かべつつ、こう言い切ったのだ。

 

 

 

「そうだ!あれこそが“みなかみの狂犬( 原園 嵐 )”の本性!一度火が付いたら目の前の敵を倒し尽くす迄止まらないのが彼女の本領だ!」

 

 

 

 

 

 

一方、カチューシャは自らの目前で殲滅された仲間達を呆然と見詰め乍ら……

 

 

 

「有り得ない…こんなの有り得る筈が無い!」

 

 

 

恐慌状態に陥っていた。

 

 

 

勿論、彼女が臆病と言う訳では無い。

 

其れ処か彼女は“小さな暴君”或いは“地吹雪のカチューシャ”と呼ばれる程の猛将であり、其の狡猾且つ的確な作戦立案能力と情け容赦の無い攻撃力で高校戦車道の世界では恐れられていた。

 

伊達に戦車道全国高校生大会・前回優勝校の隊長を務めている訳では無いのである。

 

しかし…そんな彼女にも、過去に1人だけ()()を感じた人物が居た。

 

其の名は、西住 まほ。

 

1年前の春、当時戦車道チーム隊長代理を務めていた彼女が腹心のノンナと共に黒森峰女学園・学園艦に潜入して黒森峰・戦車道チームの練習を秘かに偵察していた時。

 

周囲の林の風景に偽装していた筈の彼女は、其処から遥か遠い場所でティーガーⅠ重戦車に乗って練習中だったまほに“直接”睨まれたのだ。

 

其の時の彼女の視線は…まるで“獲物を捕らえようとしている蛇”の様な禍々しい物であった。

 

其の結果、カチューシャは夢に其の光景がフラッシュバックすると言う状況に陥った為、暫くの間深刻な睡眠障害に悩まされた。

 

其れが今、雰囲気こそ“蛇”では無く“狂犬か狼”と言う違いこそ有れど、まほと同質の禍々しさを持つ少女()の視線が自分に向けられている。

 

しかも、相手は自分やまほよりも年下の()だ!

 

 

 

「そんな…あの西住 まほと同じ位“()()()()()()”を持つ()が、此の世にもう1人居たなんて!?」

 

 

 

だが、叫び声を上げた処で現実は変わらない。

 

“普通なら有り得ない事実”を受け入れるしかない状況下、呆然となるカチューシャだったが…其の時、彼女を糾弾する声が響いて来た。

 

 

 

『カチューシャ、よくも西住隊長や仲間達を傷付けてくれたな!』

 

 

 

「あっ!?」

 

 

 

気が付けば目の前にM4A3E8(イージーエイト)に乗った原園 嵐が下級生とは思えない禍々しい形相で自分を睨み付け乍ら、啖呵を切って来たのだ。

 

 

 

『私達を追って来た御前の仲間は全て倒した!次は御前の番だ!』

 

 

 

そして、カチューシャは自分を睨み付ける嵐の鋭い目を見た直後…西住 まほに睨まれた時に植え付けられた“トラウマ”が一気にぶり返した。

 

其の結果……

 

 

 

「嫌…いやーっ!」

 

 

 

下級生処か人間とは思えない程の迫力と恐怖感で自分を威嚇し乍ら、最後の突撃を仕掛けようとする嵐の表情を見たカチューシャは恐怖に駆られて錯乱一歩手前の状態に陥った。

 

処が!

 

 

 

「カチューシャ様は()らせない!」

 

 

 

此処で、カチューシャのT-34/85と嵐のM4A3E8(イージーエイト)の間に1輌の巨大な戦車が割り込んで来た!

 

T-34/85からの乗り換え作業の為に遅れてやって来たノンナ副隊長が駆るIS-2重戦車が嵐のM4A3E8(イージーエイト)の前に立ち塞がったのだ。

 

だが……

 

 

 

「ノンナ!?…あっ、此の儘じゃあいけない!」

 

 

 

此の時、カチューシャは絶体絶命の窮地をノンナに救われた安堵では無く“()()()()()()()”を思い出して叫び声を上げたのである。

 

 

 

 

 

『チッ…流石に、ノンナさんは此の危機を見逃さなかったか!』

 

 

 

カチューシャの乗るプラウダ高隊長車・T-34/85を仕留めようとした私達“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”の目の前にIS-2重戦車を狩るノンナさんが現れた時、私は思わず舌打ちをし乍ら小声で呟いた。

 

其の直前、私は“去年の戦車道全国高校生大会・決勝戦”の場面を思い出し乍ら、カチューシャに向けて啖呵を切っていた。

 

何故なら私にとって、彼女は“西住先輩(みほ)の心を傷付けた憎むべき相手”だったから。

 

無論、“憎い”と言っても彼女を嫌っている訳では無い。

 

私が彼女に対して抱いていた“憎しみ”の中身とは「去年の全国大会・決勝戦で仲間達の命を助けに行った西住先輩(みほ)が降りた後の黒森峰フラッグ車(ティーガーⅠ重戦車)を狙い撃った彼女の行いは許せない。だから、対戦する機会が有れば其の事に対する“落とし前”を着けさせる」と言う物であった。

 

あの前回大会決勝戦を観戦中に西住先輩が見せた“母校の十連覇よりも仲間達を助ける事を選ぶ姿”を見て「もう一度初心に帰って戦車道を続けよう」と決意した(但し、其の決意は西住 しほによって一度は打ち砕かれたが)私にとって、西住先輩が乗っていたフラッグ車・ティーガーⅠ重戦車を狙い撃つ事で“西住先輩の戦車道を否定した”カチューシャと言う“小さな先輩”は、此の大会で対戦の機会さえ有れば“絶対に倒したい相手”だった。

 

そして、私は此の試合の味方フラッグ車である“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”を追って来たカチューシャ隊長率いるプラウダ高追撃部隊を撃破する事で其の目論見を果たす寸前まで行ったのだが、最後に残ったカチューシャ隊長車・T-34/85を倒そうとした処へ彼女が愛する副隊長・ノンナが介入した為、私の目論見は阻止されてしまった。

 

其れでも、私はIS-2の車長用キューポラから見える氷の様なノンナの表情を見詰め乍ら……

 

 

 

「“彼女(ノンナ)と相討ち”になっても()()()()()

 

 

 

と考えていた。

 

何故ならプラウダ高の“強さ”はカチューシャ隊長とノンナ副隊長の能力の高さに負う点が大きい為、試合中に此の2人の内1人でも倒せばプラウダ高の力をかなり削ぐ事が出来ると確信していたからだ。

 

只、此の儘相討ちとなった場合、常日頃「仲間達が『自分を犠牲にする作戦』を実行する事だけは止めて欲しい」と願っている西住隊長の想いを踏みにじってしまう事に成りかねない。

 

私自身、プラウダ高・追撃部隊を待ち伏せしようとした時、私達を心配する西住隊長に対して『大丈夫です!“1対多数の戦車戦”は私達の得意分野です!絶対にやられません!』と答えた以上、出来れば相討ちは避けたかったが、相手は東日本最強の砲術を誇るプラウダ高の副隊長・ノンナだけに其れも難しい。

 

そんな状況下、私は彼女が駆るIS-2重戦車を睨み乍ら『さて、此の場は如何すべきか?』と考えを巡らせていた時。

 

 

 

『あれっ!?』

 

 

 

私は目の前で思わぬ光景が展開されているのを見て、戸惑いの声を上げていた。

 

目の前に居るカチューシャとノンナが無線で何やら言い争っている様な姿が見えたのだ。

 

 

 

 

 

 

此の時の光景を原園 嵐は『言い争い』と表現したが、実は“或る事”に気付いたカチューシャが自分を守ろうとするノンナを説得していたのだ。

 

其の内容は以下の通りである。

 

 

 

「ノンナ!私の事は良いから、早く相手フラッグ車(八九式中戦車甲型)を仕留めに行きなさい!」

 

 

 

「しかし!」

 

 

 

ノンナの救援によって恐慌状態から立ち直ったカチューシャの指示に対して“あくまで彼女(隊長)を守る”意思が固いノンナが抗った時、カチューシャは鋭い声で彼女を諫めたのだ。

 

 

 

()()()()()を忘れたの!?フラッグ車さえ倒せばこっちの勝ちなのよ!」

 

 

 

「!」

 

 

 

隊長からの指示を聞いて“ハッ”となるノンナ…此の時、彼女は心の中で「カチューシャ様の仰る通りだ!私は大事な事を忘れていた!」と叫んでいた。

 

戦車道全国高校生大会の試合ルールは“フラッグ戦”である。

 

つまり、極端な事を言えば“自軍フラッグ車以外の仲間が全てやられても、相手フラッグ車さえ撃破すれば試合に勝てる”のだ。

 

其の事に逸早く気付いていたカチューシャは、改めてノンナへ指示を出した。

 

 

 

「だから、ノンナは今から大洗女子のフラッグ車(八九式中戦車甲型)を仕留めに行きなさい!此処は私が時間を稼ぐわ!」

 

 

 

彼女はそう告げると、ノンナからの応答を待たずに後方の廃村周辺に待機しているフラッグ車(T-34/76)と護衛のKV-2重戦車(自分とノンナを除くと、此の2輌がプラウダ高最後の生き残りである)へ向けて“新たな指示”を出した。

 

 

 

「カチューシャから生き残っている全車へ!私から“最後の命令”よ!」

 

 

 

そして彼女は具体的な戦況を仲間達に告げる。

 

 

 

「“みなかみの狂犬( 原園 嵐 )”が出現し、追撃隊は私とノンナを除いて壊滅したわ!でも、未だ打つ手はある!」

 

 

 

すると、ノンナを除く残存各車から“息を呑む様な声”が無線を通じて聞こえて来たが…カチューシャは構う事無く“此の後の指示”を生き残っている仲間達へ出した。

 

 

 

「フラッグ車と護衛のカーベー(KV-2)たんは敵襲に備えて守りを固めなさい!そうしていれば、必ずノンナがフラッグ車を仕留めてくれるわ!私は其れ迄の間“みなかみの狂犬( 原園 嵐 )”を押さえて見せる!」

 

 

 

其れに対してプラウダの生き残りの戦車長3人が一斉に「「了解!」」と返信した後、其の中の1人であるノンナが「カチューシャ様、御気を付けて下さい!」と伝えてから彼女の駆るIS-2重戦車が其の場を離れた直後、此の様子を見た原園 嵐が大声を上げる。

 

 

 

『待て!』

 

 

 

だが、此処でノンナの駆るIS-2重戦車を追撃しようとした嵐達の“イージーエイト(M4A3E8)”の前に、プラウダの隊長車・T-34/85が立ちはだかるとカチューシャ隊長が先程の嵐に負けない位の大声を上げた。

 

 

 

「待ちなさい、原園 嵐!貴女の相手は此の私よ!断じてノンナの所へは行かせないわ!」

 

 

 

 

 

 

『此れは!?』

 

 

 

其の声を聞いた時、私・原園 嵐は全身が震え上がった。

 

 

 

『さっき迄とは、カチューシャ(チビッ子隊長)の様子が全く違う!』

 

 

 

先程迄幼女の様に泣き乍ら震えていた小さな少女・カチューシャが大声で吼えた時、其の姿がまるでヒグマの様な巨大な存在に見えたのだ。

 

其の姿は正に“地吹雪のカチューシャ”の異名に相応しい力強さと恐怖を私に感じさせた。

 

流石は去年、()()()()()()()()黒森峰の十連覇を阻止して全国制覇を成し遂げたプラウダ高校・戦車道チームの現・隊長だ。

 

 

 

『此れ迄の対戦相手の隊長とは全く違うオーラを感じる…今の彼女は間違い無く強い!』

 

 

 

全身から凄まじい威圧感を発するカチューシャの姿を見乍ら、私は彼女が此処に居る意図を素早く導き出した。

 

彼女は大洗女子のフラッグ車である“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”を倒しに行ったノンナ副隊長のIS-2重戦車を狙おうとする私達“ニワトリさんチーム(M4A3E8)”を喰い止めるべく、相討ち覚悟で私達の前に立ちはだかったに違いない。

 

此の彼女の判断は私から見ても“全く正しい”ものだった。

 

其れと同時に、私の心の中に“ある反省”が思い浮かんだ。

 

 

 

「此れ程迄の力を秘めている人が去年の大会や今大会のヴァイキング水産戦みたいな“卑怯とも取れる戦い”をするだろうか…いや、もしかしたらカチューシャさん程の人でも“絶対に勝ちたい、優勝したい”と言う心があったから、あんな無理な戦いを強いられたんじゃないだろうか?」

 

 

 

でも、今は私も引き下がる心算は無い。

 

此の戦いは最早“母校・大洗女子学園の存続”だけでは無く“此れからも仲間達と一緒に戦車道を続けるための戦い”になったからだ。

 

もう、こんな所で“相手の戦う理由や気持ち”を考えて、立ち止まっている事なんて出来ない!

 

だから、私は恐怖感を振り切る様に彼女へ向けて啖呵を切った。

 

 

 

『なら、受けて立つ!』

 

 

 

 

 

 

(第79話、終わり)

 

*1
津軽弁で「何をやっている!発砲しろ!」の意。作成に当たってはWEBサイト「BEPPERちゃんねる・恋する方言変換(https://www.8toch.net/translate/)」を使用しました。

*2
英国の博物学者アーネスト・トンプソン・シートン(1860年生―1946年没)が書いた「シートン動物記」の代表作のタイトルでもある狼の群れのボス。作中では優れた体格と知性を兼ね備えた恐るべき狼として描写されている。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第79話をお送りしました。

遂に目覚めた嵐の速攻により、カチューシャ率いるプラウダ追撃隊は壊滅。
其の勢いに乗って嵐はカチューシャを仕留めようとするが、其処へノンナが割り込んで来て睨み合いかと思われた時……
嵐からの恐怖に耐えて“覚醒”したカチューシャが自分を助けに来たノンナに対して“大洗のフラッグ車を撃て!”と命じて送り出した後、彼女を追撃しようとする嵐の前に立ち塞がる!
大会連覇の為に自らを犠牲にする覚悟を決めたカチューシャと母校廃校阻止の為に心の中の“狂犬”を蘇らせた嵐、2人の“凶暴な戦車乙女”が遂に激突する!

プラウダ戦もいよいよ大詰めとなります。
次回、嵐対カチューシャが直接対決。
そして大洗女子のフラッグ車・“アヒルさんチーム”を追うノンナは如何戦うのか?

其れでは、次回をお楽しみに。

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