戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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最近、本業(お菓子工場勤務)が忙しく、更新が少し遅くなりました。

申し訳ありません。

漸く落ち着いたので、投稿します。



第7話「これが、私の母親です!!」

 

 

 

ここは前回に引き続き、大洗女子学園・生徒会長室。

 

 

 

 

 

 

今…私・原園 嵐は、15歳の人生で最悪の状況に陥っていた。

 

 

 

 

 

 

昼休みに、必修選択科目で戦車道の履修を迫る生徒会からの呼び出しを受けて、同じく呼び出された西住先輩達と一緒に生徒会室へ行った私は、戦車道履修を強要する生徒会に対して反論した。

 

その結果、角谷生徒会長から「んな事言ってるとあんた達…この学校にいられなくしちゃうよ?」と言う、脅迫の文言を引き出す事に成功した。

 

予め、自分のスマホに入っているボイスレコーダー機能のあるアプリを使って、生徒会室の会話を録音した私は心の中で小躍りしながら、この録音をどうやって公の場に出してやろうかと考えていた。

 

この録音を然るべき所…例えば学園の職員室や県の教育委員会、あるいは戦車道連盟辺りに提出して、戦車道履修を生徒会から強要された事と脅迫の事実を主張すれば、生徒会の目論みは呆気なく潰えるだろうと、私は思っていたのだ。

 

しかし、私と生徒会の口論を聞いていた角谷生徒会長は、私の戦車道履修が無理だと思ったのか、矛先を西住先輩へ向けた。

 

その結果、私にとって予想外の事態が起きた。

 

西住先輩が戦車道をやると、その場で明言してしまったのだ。

 

去年の戦車道高校生大会決勝で起きた事を知っている私にとって、西住先輩の発言は全くの想定外だった。

 

 

 

何故なら…私は母から強要されて戦車道を修めていた中で、西住先輩だけは唯一人「この人となら、一緒に戦車道をやりたい」とまで思った程の憧れの人であった。

 

しかし、私は西住先輩が去年の戦車道高校生大会の決勝戦でとった行動によって、戦車道だけでなく、実家でもある西住流にも背を向けた事情をある人物から知らされていた。

 

その為、私は「西住先輩が戦車道に戻ると言うのは、天地が引っ繰り返ってもあり得ないはず」と、考えていたのだ。

 

 

 

だが、そんな西住先輩が戦車道を履修すると聞かされた結果……

 

精神の平衡を失った私も生徒会長の前で土下座をして、戦車道をやると言ってしまった。

 

「西住先輩と一緒に戦車道をやりたい」と言う、己の心の奥底に秘めていた夢と憧れに、私は負けてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

しかし…私が本当に人生最悪の事態を味わったのは、その直後だった。

 

何と、私の母・原園 明美が拍手をしながら生徒会室に姿を現したのだ。

 

その背後には、私が戦車道履修を巡って生徒会と喧嘩すると思い込み、それを止めようと生徒会室入り口の扉越しに盗み聞きしていたと言う、梓達6人を引き連れて。

 

このトンでもない状況に…私は何が起こったのか、しばらく理解出来なくなっていた。

 

 

 

 

 

 

『母さん…アンタ、一体いつからここにいたの!?』

 

 

 

 

 

 

ようやく状況を把握した私は、やっとの思いで母親に文句を言ったが、母はあっけらかんとした表情でこう言い放った。

 

 

 

「いつからって…ここにあなたと西住さん達が入って来た所から、隣の部屋でずっと事の成り行きを見守っていたのだけど?」

 

 

 

何、だと…!?

 

この生徒会室での言い争いを最初から聞いていた!?

 

まさかと思った私は、母へ向かって怒鳴った。

 

 

 

『と言う事は…母さん、全ての黒幕はあんたかぁ!?』

 

 

 

「黒幕だなんてぇ…人聞きが悪いじゃないの♪」

 

 

 

突如始まった私と母の口論を、西住先輩達はもちろんの事、小山先輩に河嶋先輩、そして先程まで扉越しに盗み聞きをしていた梓達までが唖然とした表情で聞いている。

 

角谷会長に至っては、相変わらず椅子にふんぞり返ったまま、ニヤニヤ笑いながら母娘の口論を聞いている有様だ。

 

そんな会長の姿を見て頭に来た私は、ある疑いをぶつけた。

 

 

 

『会長!! 貴女まさか…最初から母さんとグルになっていたのですか!?』

 

 

 

すると会長は頭をボリボリ掻きながら、こう答える。

 

 

 

「いやあ…さすがに最初からじゃなかったんだけど?」

 

 

 

『本当ですか?』

 

 

 

「うん…最初からグルだった訳じゃなかったんだけどね」

 

 

 

私は更なる疑念を会長にぶつけたが、本人はのほほんとした表情でとぼけるだけだ。

 

だが、その時、今度は母が思わぬ事を口走った。

 

 

 

「ああそうだ、忘れていたわ…あなた達、もうそろそろ入って来ていいわよ♪」

 

 

 

「「「はーい!!!」」」

 

 

 

その次の瞬間、私は本気で心臓が止まりそうになった。

 

私の目の前に懐かしい…いや違う。

 

本来ならば、ここにいる筈の無い3人の元・群馬みなかみタンカーズの戦車道仲間が…しかも、大洗女子学園の制服姿で現れたのだ!!

 

 

 

『そんな、バカな!?』

 

 

 

思わず、私はそう叫んだが、現実は変わらない。

 

 

 

『”ののっち”…いや、瑞希に菫、しかも舞まで、何でアンタ達がここに揃っているのよ!?』

 

 

 

私の驚愕に対して、まず目立つ銀髪と男装の麗人を思わせる印象が特徴の”ののっち”こと、野々坂 瑞希がポカンとした表情で答えて来た。

 

 

 

「えっ? 私、この学園の商業科に入学していたのだけど?」

 

 

 

続いて、紫色の髪をセミロングでまとめている、萩岡 菫が346プロに所属する某・シンデレラな人気アイドルそっくりな微笑を浮かべながら、こう答えた。

 

 

 

「私は情報科~♪」

 

 

 

そしてトドメとばかりに、金髪のポニーテールと高校生にしては小柄な体格で幼い雰囲気を持つ、二階堂 舞が元気一杯な声でこう口走った。

 

 

 

「私は普通科だけど、普通Ⅱ科の1年C組だから、嵐ちゃんとは今日まで一度も会わなかったよ♪ 本当に学園艦って大きいんだね!!」

 

 

 

『な…何だってぇぇ!?』

 

 

 

彼女達からのまさか過ぎる回答に、思わず驚きの言葉を発する私。

 

じゃあ、私はこの間まで戦車道をやっていた仲間達が、この春から同じ学園に入学していたのを今日まで知らずに過ごして来たのか!?

 

そこで、ある事実に気付いた私は、生徒会広報の河嶋先輩を思いっ切り怒鳴りつけた。

 

 

 

『河嶋先輩、さっき「我が校、他に戦車経験者は皆無です」と言っていましたね。あれは嘘だったのですか!?』

 

 

 

すると、河嶋先輩はやや困惑気味な表情で答える。

 

 

 

「いや…彼女達は明美さんからの紹介で、我が校の推薦入試を受けて入学したのだが、実を言うと会長との間で『原園が戦車道を選択しなければ彼女達も戦車道の授業を受けない』と言う約束があったから、あの時は嘘をついた訳では無かったのだ」

 

 

 

その答えを聞いた私は、生徒会長の傍でニヤニヤ笑っている母を睨みつけた。

 

 

 

『母さん!! あんた、もしかして…いや、しなくても最初からこうするつもりで、私がこの学園へ入学するのを許したのね!?』

 

 

 

すると、母はあっけらかんとした表情で答えた。

 

 

 

「えっ、最初からじゃないわよ? 大洗で戦車道が復活するって知ったのは偶然」

 

 

 

『嘘をつくな!!』

 

 

 

「嘘じゃないわよ…と言うか嵐、去年の秋の終わり頃、私貴女にこう言わなかったかしら? 今度、関東地区に新しい工場を建てるって話」

 

 

 

『ああ、その話は聞いたけど…って、まさか!?』

 

 

 

「うん、実はその話をしてから少し後にね、この学園艦の母港であり、10年前に亡くなった主人の故郷でもある大洗に、新しい工場を建てる事にしたのよ♪」

 

 

 

『何だと…?』

 

 

 

「もちろん、最初は千葉や栃木に埼玉とか、茨城でも他の町を候補に入れていたわ。でもなかなか良い場所が見つからなくて…最後に大洗町へ工場進出を打診したら、町長さんが直々に私達を町役場へ招いてくれて、その場で工場の敷地を無償提供しますって提案してくれたから、喜んでこの大洗町に工場を建てる事に決めたの」

 

 

 

すると、今度は角谷会長が笑顔を浮かべながら、こう付け加えた。

 

 

 

「何でもねー、バブルの頃に当時の町役場が工場進出を当て込んで、町外れに造成したけれど、バブル崩壊後の不景気続きで何処も買わないまま雑草だけが生えていた工業用地があったから、それをタダで提供したんだって」

 

 

 

なるほど、そう言う裏があったのか。

 

しかし、大洗の町役場め、何て余計な事をしてくれたのよ……

 

私が心の中で、罪の無い大洗町へ呪いの言葉を吐いていると、母が続けてこう語った。

 

 

 

「でね、町役場で工場建設の契約書を調印した後、町の人達との懇親会に参加した時、町長さんから『地元の大洗女子学園で今度戦車道が復活する』って聞いたの。そこで私は町長さんに、ぜひ学園の生徒会長さんに会いたいと頼んで、その足でこの学園艦に来て、会長の角谷さんから話を聞いた訳…理由はもちろん、亡くなった主人の故郷で20年ぶりに戦車道が復活するって言うんですもの、スポンサーとして名乗りを挙げる事にしたのよ」

 

 

 

そして、ここで角谷会長が再び補足説明をした。

 

 

 

「でね、その時に明美さんから、スポンサードの条件として『戦車道を辞めて、戦車道の無いウチの学校を受験すると言っている娘がいるから、入学して来たら彼女を説得して戦車道に戻して欲しい』って頼まれた訳」

 

 

 

『なっ……!?』

 

 

 

ここまでの事情を聞いた私は、唖然とした表情で固まっていた。

 

いや、私だけではない。

 

西住先輩はもちろんの事、武部先輩に五十鈴先輩、そして梓達6人も、母から語られる予想外の説明に呆然としている。

 

ウチの母以外で、平然とした態度で話を聞いているのは、生徒会の3人と元・群馬みなかみタンカーズの戦車道仲間3人だけだ。

 

恐らく、この6人は事前に母から色々な事情を知らされているのだろうと思うと、私は無性に腹が立ってきた。

 

 

 

 

 

 

だが、母は私に更なる追い討ちを掛けるかの様に、視線を西住先輩へ向けると、こう告げたのだ。

 

 

 

「でも、スポンサーとして名乗りを挙げた後で本当に驚いたのは…西住みほさん、あなたがここへ転校して来るのを知った事。私はこれこそ、天の助けだと思ったわ」

 

 

 

「えっ…?」

 

 

 

突然、母から自分の名を告げられた西住先輩は、驚いた表情で母を見つめる。

 

 

 

「みほさんは覚えていないと思うけれど、私は、あなたが小さい頃に熊本で1度だけ会った事があるのよ。懐かしいわ…それに、あなたのお母様とは色々と付き合いが長いから。しかも、ウチの娘の嵐はね…」

 

 

 

まさか!!

 

ここで、西住先輩と私がそれぞれ抱えている戦車道へのトラウマをバラす気か、と思った私は、顔を真っ赤にして母の前に立ちふさがった。

 

 

 

『やめろ母さん!! 私を戦車道の世界へ引き摺り戻す為に、西住先輩まで巻き込むつもりだな!! 幾ら母親でも、そんな事は絶対に許さない…あっ!?』

 

 

 

しかし、次の瞬間。

 

母は私の背中に回り込んだかと思うと、いきなり後ろから首に右腕を回し、頸動脈を締め上げて来た!!

 

 

 

『くっ…これは、母さんの必殺技、スリーパーホールド…!!』

 

 

 

この技は…私と母が喧嘩をする時、プロレス女子でもある母がフィニッシュ・ホールドとして必ず繰り出す技だ。

 

 

 

「まだまだ甘いわね、嵐…こう言う単純な誘いでも簡単に乗って来るのだから♪」

 

 

 

私の苦悶をよそに、飄々とした表情で首を締め上げて来る母。

 

こう見えても母は、長年戦車整備士として力仕事をやって来たから、その身体能力はかなり高いのだ。

 

何しろ高校時代、乗っていた列車の中で、隣にいた同級生の尻を触っていた痴漢を関節技で締め上げ、肩を脱臼させてから警察に突き出したと言うエピソードがある位だ。

 

そんな母のスリーパーホールドは、非常に強い力で素早く締め上げて来るから、すぐ返さないと…頭に血が行かなくなって…落ちてしまう……

 

 

 

「悪いけど嵐、もう学校は放課後でしょ…これから、皆さんに色々と話して置かないといけない事があるから、ちょっとお寝んねしていてね♪」

 

 

 

『こ…この母親…!! ふ…ざける…な……』

 

 

 

本気で首元を締め上げて来る、生みの母親に対して呪詛の言葉を吐いていた私だったが、情けない事にこの直後、呆気なく意識を失ってしまった……

 

 

 

 

 

 

突如始まった、実の母娘による激しい口論と「生徒会長室プロレス」。

 

その急展開ぶりに皆仰天していたが、娘にスリーパーホールドを仕掛けた母親・明美の表情が余りにも真剣だったせいか、生徒会長室にいた誰もが声を出す事さえ出来ないまま、勝負はあっさりついてしまった。

 

 

 

「「「お…落ちたー!!!」」」

 

 

 

嵐が意識を失った事に気付いた、みほと沙織、華に梓達が、びっくりした口調で一斉に叫んだ。

 

すると、嵐を失神KOさせた張本人が楽天的な口調で答える。

 

 

 

「あ、みんな大丈夫よ。気を失っただけだから♪ さすがに母娘喧嘩で命に関わる事をやったらマズイもの」

 

 

 

明美は、そう言って皆を安心させつつ、一時的に意識を失っている嵐を傍らにいた瑞希と菫に預けた。

 

そして、呆然としているみほや梓達の前で語り始める。

 

 

 

「さてと…生徒会の方々はともかく、ここにいらっしゃる皆さんにはまだ自己紹介をしていなかったわね」

 

 

 

これには、みほ達も「あっ…はい…」と答えるしかない。

 

すると、明美は一度お辞儀をしてから自己紹介を始めた。

 

 

 

「もうお気付きかも知れないけれど、私が原園 嵐の母で、明美と申します。今は群馬県みなかみ町で、車両整備工場を営んでおります…まあ、本業は戦車道で使う戦車の整備や関連部品の製造販売等々、だけどね」

 

 

 

その時、心配そうな口調で質問する者が現れた。

 

 

 

「あの…私、嵐のクラスメートで、山郷 あゆみと言います。失礼ですがお母さん、実は昨日、嵐からお父さんは10年前に戦車道の事故で亡くなったと聞いたのですが…」

 

 

 

「「「えっ…?」」」

 

 

 

その話を初めて聞いた、みほと沙織と華は思わず口を揃えて、驚きを露にした。

 

すると、明美は一瞬寂しそうな表情をするが、すぐに微笑を取り戻すと、こう語る。

 

 

 

「ええ…私の主人、つまり嵐の父親の直之さんはこの学園艦の出身で、私と結婚してから今の工場を一緒に立ち上げたのだけど、今から10年前の秋、嵐が5歳の時に戦車道の試合会場へ移動中の戦車に轢かれそうになった子供を助けた時に、自分がね…でも、夫には夢があったの」

 

 

 

その時、梓が思わず明美に向かってこう問い掛ける。

 

 

 

「夢って…?」

 

 

 

「自分が若い頃に、戦車道を廃止した大洗女子学園で戦車道を復活する時が来たら、必ず力になりたいって、いつも語っていた。そして、もしも自分に何かあったら私にその夢をかなえて欲しいって…だから、生徒会長の角谷さんから戦車道復活の話を聞いた時、迷わず支援するって決めたの。それが主人との約束だったから」

 

 

 

その話を聞いたみほや梓達は、皆胸を詰まらせながら明美を見つめていた。

 

そんな彼女達の表情を見た明美は、敢えて明るい口調で、彼女と一緒にやって来た少女達を紹介した。

 

 

 

「ああそうそう、話は変わるけれど、今、私の隣に並んでいるのは嵐のお友達で、私が地元で代表を勤めている戦車道のユースクラブチーム『群馬みなかみタンカーズ』で小学3年から中学卒業まで戦車道を修めて来た元メンバーよ。右から野々坂 瑞希、萩岡 菫、そして二階堂 舞です。みんな挨拶してあげてね」

 

 

 

「「「よろしくお願いします!!」」」

 

 

 

元気な瑞希達の挨拶につられて、みほや梓達も同じ挨拶を返した。

 

その後、明美の説明が続く。

 

 

 

「この学園で戦車道を再開するに当たって、嵐の他にも戦車道経験者がいたら何かと良いだろうと思って、彼女達を生徒会長の角谷さんへ推薦したのだけど…取り越し苦労だったかもね。まさかその時は、西住さんが転校して来るとは思っていなかったから」

 

 

 

「えっ…?」

 

 

 

再び、自分の名前を言われたので動揺するみほ。

 

しかし明美は笑顔のまま、それ以上みほの事を語らず、ただ彼女へ向かってこう告げただけだった。

 

 

 

「西住さん、突然の事で悪いと思うけれど、嵐やこの娘達の事をよろしくね。きっと貴女やこの学園の役に立つと思うわ」

 

 

 

そして、場が静まったのを確かめた明美は、生徒会長の杏に話し掛ける。

 

 

 

「さてと…もうこんな時間だし、他に用事が無ければ、今日は嵐と一緒に失礼しますね♪」

 

 

 

これに対して、杏は頷きながらこう答えた。

 

 

 

「はい明美さん、この後また…」

 

 

 

すると明美は杏に向かって小さく頷き返すと、生徒会長室にいる全員に向けてこう挨拶した。

 

 

 

「じゃあ皆さん、嵐達の事をよろしく頼みますねー♪」

 

 

 

かくして、明美は失神したままの嵐を抱えた瑞希達を連れて、生徒会室から退出して行った。

 

 

 

 

 

 

その姿を見送った杏は、視線をみほ、沙織、華に向ける。

 

 

 

「さてと…原園ちゃんの方はお母様に任せるとして…改めて西住ちゃん、戦車道を履修するって事でいいかな?」

 

 

 

「あ…はい」

 

 

 

急に質問を振られたみほだが、一瞬動揺したものの、一度戦車道をやると決めた以上、再び翻意する気は無かった。

 

その様子を確かめた、副会長の柚子が今度は、みほ以外の全員に向けて声を掛ける。

 

 

 

「じゃあ、武部沙織さんと五十鈴華さん、そして…そこにいる子達。あなた達は全員、原園さんと同じ普通Ⅰ科の1年生ね?」

 

 

 

「「「「「えっ…あっ、はい…」」」」」

 

 

 

これには、みほと一緒にここへ来ていた沙織と華はともかく、嵐が生徒会と喧嘩するのではと思い込み、生徒会長室内の会話を盗み聞きしようとしてやって来た梓達6人は、副会長から怒られると思ったのか、一言話しただけで(紗希だけは話してさえいないが)、全員震え上がっていた。

 

すると、柚子は震えている梓達1年生に苦笑しながら、こう話した。

 

 

 

「大丈夫よ、別に怒っていないから…その代わり、ここにいる皆さんに確かめたい事があるの。皆も西住さんや原園さん達と一緒に戦車道を履修してみる?」

 

 

 

要するに、この場を利用して1人でも多く履修者を確保しようと言う訳だが、ここまでの展開が急過ぎてよく考える余裕が無かったのか、それとも断り様が無かったのかはともかく、沙織と華だけでなく、梓達6人の1年生達も戦車道履修の意思を示した。

 

その光景を見ていた生徒会広報の桃は、会長へ確認をする。

 

 

 

「では、ここにいる全員、戦車道履修希望と言う事でよろしいですね、会長?」

 

 

 

「うん、河嶋。その様に書類を処理しといて」

 

 

 

杏は、桃へそう指示を出すと、室内にいたみほ達へこう告げた。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、みんな長い時間悪かったね。私達はこれから生徒会の業務があるから、今日は帰っていいよ」

 

 

 

 

 

 

かくして、生徒会長室で起きた戦車道履修を巡る対決(?)は決着した。

 

まず、梓達1年生6人が疲れた表情で部屋から退出すると、続いて沙織と華が並んで退出し、少し遅れてみほが最後に退出して行った。

 

そしてみほは、オロオロしながら廊下を歩きつつ、少し前方で並んで歩いていた沙織と華に向かって、小声でこう呟いた。

 

 

 

 

 

 

「どうしよう…?私、原園さんまで戦車道に巻き込んじゃった…」

 

 

 

 

 

 

みほの呟きを聞いた、沙織と華は思わず「しまった」と言わんばかりの表情を浮かべて、互いの顔を見合わせたが…それ以上、何も言い出す事が出来なくなってしまった。

 

 

 

(第7話/終)

 

 




ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
第7話をお送りしました。

まずは、前回に引き続きトンでもない展開となりました事をお詫び申し上げます。
やり過ぎだったら、本当にゴメンなさい。

しかし…今回、明美と杏が明かした「大洗女子学園戦車道復活の理由」には、嘘はありませんが、まだ語られていない部分が。

もちろん原作ファンの皆様なら、それが何か察していらっしゃると思いますが、次回は正にその部分、明美が杏と手を組んで、嵐を戦車道に引き摺り戻す事になった「本当の事情」が明かされます。

それでは、次回をお楽しみに。

【報告1】2018年6月4日に一部修正(段落と一部の文章の訂正)しました。
【報告2】2020年1月23日に明美の台詞の一部を修正しました。
※修正前「悪いけど嵐、もう学校は放課後でしょ…これから、貴女には話しておかないといけない事が色々とあるから、ちょっとお寝んねしていてね♪」
→修正後「悪いけど嵐、もう学校は放課後でしょ…これから、皆さんに色々と話して置かないといけない事があるから、ちょっとお寝んねしていてね♪」

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