戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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最近本当に筆が進まない中、何とか仕上げてみましたが、果たして……
其れでは、いよいよプラウダ戦も終盤です。
どうぞ。



第81話「願いを込めた1発です!!」

 

 

 

「やってくれるでしょうか…西住は」

 

 

 

“第63回戦車道全国高校生大会準決勝・第二試合「プラウダ高校(青森)対県立大洗女子学園(茨城)」”も終盤に差し掛かる頃、大洗女子学園戦車道チーム副隊長兼“カメさんチーム(38t軽戦車B/C型)”装填手(つい先程迄は同チームの車長兼砲手兼通信手だった)・河嶋 桃は観客席前に設置された超大型モニターを見詰め乍ら、仲間達に向けて不安気な声で呟いた。

 

 

 

彼女達“カメさんチーム(38t軽戦車B/C型)”は、先程プラウダ高の攻撃を受けた“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”を庇って撃破された後、試合を統括する日本戦車道連盟審判団の要請で派遣された回収班によって乗っていた戦車毎タンクトランスポータ(戦車運搬車)ーに乗せられた儘、試合会場内の観客席前に設置された超大型モニターの前迄送り届けられていたのだった。

 

勿論、桃のチームメイト3人も一緒であり、彼女の声を聞くと即座に励ましの声を送る。

 

 

 

先ず、チームの元・装填手で現在は通信手の名取 佐智子が「西住隊長達なら絶対にやってくれますよ!其れに原園さんも居るんです!今は皆の力を信じましょうよ!」と話し掛けると操縦手の小山 柚子も……

 

 

 

「そうだね。西住さんやカチューシャ隊長を倒した原園さんなら……」

 

 

 

と語り掛けて来たのを聞いた桃はバツの悪そうな声で「そ…そうだな」答えて居た処、彼女の様子を眺め乍らニヤニヤ笑っていたチームの砲手・角谷 杏生徒会長が……

 

 

 

「誰か来たみたいだね…あっ」

 

 

 

と呟いていた処、相手の()()に気付いて話すのを止める。

 

すると彼女達の前にWW2中の旧ソ連軍戦車兵用戦車帽を被った一人の幼女…いや先程、原園 嵐率いる“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”とのガチンコ勝負に敗れたプラウダ高校戦車道チーム隊長・カチューシャが現れたのだ。

 

そして、彼女は嵐との戦いに敗れたショックを一切感じさせない態度で、こう言い放つ。

 

 

 

「あら、貴方は大洗の生徒会長さん♪残念だったわね」

 

 

 

其れに対して“カチン”と来た桃が「そっちこそ、さっき原園とタイマン張って負けたんじゃないのか!?」と言い返した処、カチューシャは若干慌て気味の声で……

 

 

 

「ち…違うわ!アレは時間稼ぎをしたのよ!」

 

 

 

と叫んだ後、こう反論したのである。

 

 

 

「今に見てなさい!ノンナが原園に追い付かれる前にアンタ達のフラッグ車を倒して、私達プラウダが勝つんだから!」

 

 

 

此の発言で、“自分達のチームのフラッグ車・アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)に危機が迫っている”事を知った桃・柚子・佐智子が一斉に真っ青な顔になる中、角谷会長だけは澄まし顔で「成程ね……」と呟いた後、カチューシャに向けてこう答えたのだった。

 

 

 

「つまり、そっち(プラウダ)のIS-2にフラッグ車(アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型))を追わせている間、原園ちゃん達“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”を釘付けにした訳か」

 

 

 

其の発言で、漸く“カチューシャが嵐とタイマン勝負を張った理由”を知った桃・柚子・佐智子が「「「あっ!?」」」と叫ぶ中、カチューシャは不敵な表情を浮かべ乍らこう宣言した。

 

 

 

「フフ…流石に会長さんは分かって居るじゃない。もうアンタ達は私達プラウダの前に平伏す運命に有るのよ!」

 

 

 

だが、角谷会長はカチューシャの宣言を聞かされて震え上がっている桃・柚子・佐智子を庇う様な形で彼女の前に立ち塞がると静かな声でこう答えたのだった。

 

 

 

「だけどね…私は西住ちゃんや原園ちゃん達を信じているからね。試合終了迄は諦めないよ」

 

 

 

其の姿を見たカチューシャは当惑気味の表情で角谷会長を見詰めていた。

 

心の中で……

 

 

 

「何よ、此の自信は何処から来るのよ?まさか…本当に西住流の(みほ)や原園が私達を倒すと信じているの?」

 

 

 

と呟き乍ら。

 

 

 

そして、様々な出来事が起きた此の試合もクライマックスを迎えようとしている。

 

 

 

 

 

 

戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない

 

 

 

第81話「願いを込めた1発です!!」

 

 

 

 

 

 

一方…大洗女子戦車道チームのフラッグ車“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”と護衛役の“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”・“カモさんチーム(ルノーB1bis重戦車)”の3輌は、プラウダ高校戦車道チーム隊長・カチューシャが“カメさんチーム(大洗女子生徒会)”の前で宣言した通り、彼女のチームの副隊長・ノンナが駆るIS-2“スターリン”重戦車に追い付かれつつあった。

 

 

 

「カチューシャ様が体を張って作ってくれた此のチャンス…必ずモノにして勝利する!」

 

 

 

表情は全くのポーカーフェイスだが、実は心の中で気合を入れて呟いていたノンナは最大速度で走行中であるにも関わらず、相手フラッグ車・八九式中戦車甲型の姿を照準に捉えると直ちに砲撃を開始した。

 

其の走行間射撃は、初弾からいきなり逃走中の大洗女子戦車道チーム・フラッグ車“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”への至近弾となり、其の影響で激しく揺れる同チームの車内ではバレー部の乗員4人全員(典子・妙子・忍・あけび)が「「「うわーっ!」」」と悲鳴を上げる。

 

更に、其の様子を砲塔後部のハッチを開けて視察していた“カモさんチーム(ルノーB1bis重戦車)”リーダー*1・園 みどり(ソド)子が……

 

 

 

「何なのよ、アレ!反則よ!校則違反よ!」

 

 

 

と喚き散らし、ノンナが駆るIS-2重戦車の主兵装・46.3口径122㎜戦車砲D-25Tの威力が強過ぎると糾弾したが…何と此の発言が首都テレビの実況中継スタッフの耳に入った為、彼女の発言は本人が知らぬ間に試合会場は勿論の事、TVを通じて全国に流されてしまった。

 

其の結果、試合会場内の実況席では此の試合の実況を担当する首都テレビの加登川 幸太アナウンサーが……

 

 

 

「プラウダ高のIS-2は反則でも校則違反でも有りません。戦車道連盟の車輌レギュレーションに適合したWW2における旧ソ連軍最強の重戦車です」

 

 

 

と語り、視聴者に対してみどり(ソド)子の発言は事実では無い”と説明したが、此れに対して2人居る解説者の内の1人・吉山 和則が戸惑い気味の声で……

 

 

 

「加登川さん、結構容赦の無い実況をされますね……」

 

 

 

と話し掛けた処、もう1人の解説者である斎森 伸之が……

 

 

 

「でも吉山さん、此の試合を御覧に成られている皆さんの中には戦車道のルールを良く知らない方が多いでしょうから、此処でキチンと説明をされた方が……」

 

 

 

と語り掛けて“加登川アナの実況内容は妥当である”と結論付けようとした時。

 

彼等と一緒の実況席に居た此の試合のゲストで、アイドルユニット“ラブライカ”メンバー・新田 美波が大声でこう叫んだのだ!

 

 

 

「あんなの反則に決まってます!()()()()でもあんなルールで試合はしません!」

 

 

 

「「「はいっ!?」」」

 

 

 

彼女の“ラクロスと戦車道を混同した()()()()()()に加登川アナと解説者2人が唖然とし、SNSでは“嵐対カチューシャの対決直前に出た「でも、私は原園選手…いえ、大洗女子に勝って欲しいです!」*2”に続く美波の発言が盛大にバズる中、実況中継の音声に緊迫した叫び声が響いて来た。

 

 

 

「うわあっ、ど、如何しよう!」

 

 

 

其れは“アヒルさんチーム(大洗フラッグ車)”を守る“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”操縦手・阪口 桂利奈の声で、彼女達に迫って来るプラウダ高のIS-2からの砲撃に気付いて恐怖を感じたが故の叫びだったが、其処へ同チームの75㎜砲々手・山郷 あゆみが「私達の事はいいから、アヒルさん守ろう!」と呼び掛ける。

 

更に、通信手兼75㎜砲装填手の宇津木 優季からも「そうだね!桂利奈ちゃん頑張って!」と声援を送られた桂利奈は気合を入れ直すと「よっしゃー!」と叫んでM3中戦車リーを“アヒルさんチーム(大洗フラッグ車)”の後方へ前進させてフラッグ車を守ろうと態勢を整えた。

 

其の姿が観客席前の超大型モニターに映し出されると観客席から「頑張れー!」と歓声が湧き起こり、大洗女子の戦車道女子達の背中を後押しする。

 

だが、結果的に此の行動は“()()()”になってしまったらしい。

 

走行間射撃と言う難しい攻撃乍ら、振動で揺れるIS-2重戦車の車内でも冷静に照準器を見詰めていたノンナによる122㎜砲の一撃で、“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”は呆気無くエンジンルームを撃ち抜かれた後、白旗を掲げ乍ら脱落して行った。

 

 

 

 

 

 

「此方ウサギさんチーム、走行不能!」

 

 

 

『梓!』

 

 

 

ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”リーダー兼車長・澤 梓からの脱落報告を受けて動揺する私を余所に、無線から“あんこうチーム(Ⅳ号戦車F2型仕様)”通信手・武部先輩の声が響く。

 

 

 

「皆さん無事ですか!?」

 

 

 

其れに対して、“ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”のメンバー達からは……

 

 

 

「「「大丈夫です!」」」

 

 

 

と元気な声が無線で響く中、チームの37㎜砲々手・大野 あやからは「眼鏡割れちゃったけど、大丈夫です!」との返答が来た為、思わず私は……

 

 

 

『其れ、大丈夫じゃないでしょ!?』

 

 

 

とツッコんだ後、隣の砲手席に座って居る相棒に向かって……

 

 

 

瑞希(ののっち)!ノンナのIS-2との距離は!?』

 

 

 

と叫んだ処、彼女から「未だ3000mは有るわよ!」と怒鳴られた。

 

 

 

其処で私は操縦手の萩岡 菫に向かって……

 

 

 

『菫、もっと急げない!?』

 

 

 

と叫ぶと、彼女からは「こっちはフルスピードだよ!」と言い返された為、思わず私は苛立ち気味に『クッ!』と叫んだ処、副操縦席から良恵が現況を伝えて来た。

 

 

 

「今、私達は丁度月を目指して走っているから、瑞希(ののっち)の視力2.0の目なら月明かりで辛うじてIS-2を照準出来ると思うけど、此の儘じゃあ射程距離に入る前に皆やられちゃうわ!」

 

 

 

其れを聞いた私は……

 

 

 

あのデカ乳副隊長(ノンナ)の腕なら、ほんの少しの時間で確実に“アヒルさん(フラッグ車)チーム”がやられてしまう!一体如何すれば!?』

 

 

 

と呟きつつ焦っていた時、無線を聞いて居た装填手兼通信手の二階堂 舞が大声を上げる。

 

 

 

「今、敵地に乗り込んで相手フラッグ車(T-34/76)を追っていた“あんこう(Ⅳ号)”と“カバさん(Ⅲ突)”が護衛のKV-2を撃破…だけどこっちも“カモさん(B1bis)”が撃破されたよ!」

 

 

 

『!?』

 

 

 

其の報告を聞いた私は思わず叫んだ。

 

 

 

『駄目だ!此の儘じゃあIS-2に追い付く前にアヒルさん(フラッグ車)がやられる!こうなったら!』

 

 

 

此処で私は意を決すると腹の底から声を出しつつ、新たな指示を出した。

 

 

 

瑞希(ののっち)!此処で1発、榴弾でプラウダのIS-2を狙って!』

 

 

 

「何考えているのよ!此の距離じゃあ徹甲弾で撃ってもIS-2を撃破出来ないのに榴弾を使うなんて意味無いわ!」

 

 

 

私の指示に対して砲手の瑞希(ののっち)から無謀だと(なじ)る声が響いたが、其れは私の予想範囲内だった為、直ちにこう答えた。

 

 

 

『私に考えがある…だから御願い!』

 

 

 

「分かった!でも如何なっても知らないわよ!」

 

 

 

瑞希(ののっち)からの投げ遣り気味な返答を聞いた私は“でも…もう此れ以上打つ手は無い!”と心の中で呟き乍ら覚悟を決めると指示を出す。

 

 

 

『射程距離3000m、弾種榴弾、狙いは……』

 

 

 

と叫んだ後、私は一呼吸置いてから皆に向けて“最後の作戦”の内容を告げた。

 

 

 

『IS-2の砲塔上面!最大仰角からの曲射弾道で撃ち降ろす!』

 

 

 

其れに対して瑞希(ののっち)は「()()()()な注文を付けてくれるじゃない…だけど御注文通りに命中させて見せるわ!」と返答。

 

其処で私は『了解!』と答えると続けて皆に向けての指示を下す。

 

 

 

『此れから停止射撃でIS-2を撃つから、チャンスは1度きりよ!じゃあ…停止!』

 

 

 

そして“イージーエイト(M4A3A8)”が停止直後、舞が榴弾を素早く装填し、瑞希(ののっち)が76.2㎜砲の仰角を最大に上げてから照準器で相手の狙いを定めた姿を確認した後……

 

 

 

『撃て!』

 

 

 

と叫ぶと同時に私達の“イージーエイト(M4A3A8)”から76.2㎜榴弾が発射され、其れは山なりの弾道を描いて飛翔する。

 

私は其の光景を眺め乍ら、心の中で必死に祈っていた。

 

 

 

『御願い…今、私達に出来るのはこんな“悪足掻き”しか無いけれど、其れでも私は西住隊長や学園の皆と戦車道を続けたい!父さん(直之)が生まれ育った学園艦で戦車道を続けたい!だから、絶対に此の1発は当たって欲しい!』

 

 

 

夜空を飛翔する榴弾を見詰めつつ、私は必至の思いで祈っていた。

 

其れしか出来る事が無かった。

 

戦車道を始めてから、こんな切羽詰まった気持ちで戦うのは初めてだった。

 

だから…本当に此の1発は当たって欲しかった。

 

そして、私は前方に居るプラウダ高のIS-2に砲弾が着弾する瞬間を確かめようとした時…目の前の光景を見て真っ青になった。

 

IS-2の砲塔上面に此方の76.2㎜榴弾が()()()()()()()()()()()()()()()で、IS-2が122㎜砲を発射したのだ!

 

 

 

『ああっ!』

 

 

 

此の時、私は正に地獄に落ちたかの様な感覚を味わい乍ら……

 

“失敗った!こっちの砲撃が間に合わなかった!”と心の中で喚きつつも無線で……

 

 

 

『“ニワトリ”より“アヒルさん”、緊急回避!』

 

 

 

と叫ぶのが精一杯だった……

 

 

 

 

 

 

此れは、原園 嵐が“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”へ向けて絶望的な叫び声を上げる少し前の出来事。

 

プラウダ高戦車道チーム副隊長・ノンナはIS-2重戦車の砲手席で照準器を見詰め乍ら一言呟いた。

 

 

 

「あと1つ!」

 

 

 

今、彼女の心は“明鏡止水”の極致…簡単に言えば“ハイパーモードを発動した某・Gガ〇ダムの東方不敗か新生シャッフル同盟メンバー”並みの精神状態に有る。

 

実は此の時、彼女の乗るIS-2は122㎜砲の徹甲弾を撃ち尽くしてしまっており、榴弾もあと1発しか無かったのだ*3

 

だが、既に大洗女子学園のフラッグ車である八九式中戦車甲型(アヒルさんチーム)の護衛2輌を其々一撃で仕留めており、唯一残った八九式も射撃に必要な照準を合わせ終わった処だった。

 

最早、ノンナの心に一切迷いは無く、後は目前の八九式目掛けて122㎜砲の引き金を何時引くべきかと言う点だけに集中していた。

 

 

 

だが、後年ノンナは当時の事を振り返った際、こう語っている。

 

 

 

「あの時、精神的に“集中し過ぎた状態に有った”事が、あの試合で私達チームが犯した“()()()()()”だったのかも知れません」

 

 

 

勿論、彼女がこう語ったのには理由がある。

 

何故なら、此の時彼女達のIS-2を追っていた大洗女子の“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”が突然停車した直後、76.2㎜砲の仰角を上げるとIS-2を目掛けて砲撃を加えたからだ。

 

実は此の時、IS-2は砲撃に集中していたノンナを含めて全乗員が視界の悪い車内に居た為、“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”の攻撃に気付いた者が1人も居なかったのだ。

 

もしも、此の時IS-2の乗員の中に“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”のリーダー・原園 嵐や大洗女子の西住 みほ隊長の様に常時キューポラから顔を出して戦況を確認している者が居たら、此の後起きた出来事は事前に防がれたかも知れない。

 

 

 

其の結果…IS-2の車内でノンナが122㎜砲の引き金を引いたと同時に“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”の砲手・野々坂 瑞希が必死の思いで放った76.2㎜榴弾がIS-2の砲塔上面を直撃したのだ!

 

 

 

「何っ!?」

 

 

 

予想外の攻撃を受けて驚いたノンナが一言叫んだ後、彼女が照準器を見ると……

 

彼女が絶対の確信を持って放った筈の122㎜砲弾は、発砲と同時にIS-2の砲塔上面に命中した76.2㎜榴弾による振動の影響で弾道がブレてしまい、本来狙っていたコースから大きく外れて飛翔していたのだった……

 

 

 

 

 

 

腹の底から大声を出して“アヒルさん(フラッグ車)チーム”へ緊急警告を発した私だったが、心の中では“駄目だったか!?”と後悔し乍ら手にした双眼鏡で前方を見ていた時…ある事に気付いて驚いた。

 

 

 

『あれっ!? IS-2が撃った砲弾が“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”の居る場所からズレて行く!?』

 

 

 

全国の高校戦車道の砲手の中でも、サンダース大付属のナオミさんと並ぶ名手であるノンナ副隊長の砲撃が外れて行くと言う“信じ難い事実”を目の当たりにして驚く私。

 

 

 

『でも…何故全国でも屈指の腕前を誇る高校生砲手のノンナが絶対に外し様の無い場面で、あんな外れ弾を撃ったんだろう!?』

 

 

 

思わず、私は“アヒルさん(フラッグ車)チーム”が無事だった事に安堵するよりも“何故ノンナの砲撃が外れたの?”と言う疑問が湧き上がって来て色々考えたが、答えは全く出なかった。

 

やがてIS-2の砲撃が完全に外れた事を示す雪煙が揚がると“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”のリーダー兼車長・磯辺 典子先輩から無線連絡が入った。

 

 

 

「此方“アヒルさん”…原園、“緊急回避!”って言うから“若しかしたら躱せないかも!?”と思い乍ら急回避したんだけど、相手の砲弾はこっちから50m以上もズレて着弾したんだが?」

 

 

 

其の報告に対して、私も『わ…私も何が何だか分からなくて……』と返信し乍ら“目の前で起きている事”が信じられず、頭の中が真っ白になって居た私の耳に無線から“更に信じられ無い報告”が飛び込んで来た。

 

其れは……

 

 

 

 

 

 

「試合終了!大洗女子学園の勝利!」

 

 

 

 

 

 

『えっ…勝った!?』

 

 

 

ノンナの砲撃が外れたと言う“信じられ無い展開”に続く“予想外のニュース”で頭がフリーズしてしまった私だったが、其処へ装填手兼通信手の舞が笑顔で“私の疑問”に対する答えを告げてくれた。

 

 

 

「嵐ちゃん!今、沙織先輩からの無線連絡で“あんこう”と“カバさん”がプラウダのフラッグ車をやっつけてくれたって言って来たよ!」

 

 

 

実は此の時、プラウダ高フラッグ車(T-34/76)が潜んでいると思われる廃村跡へ潜入した“あんこうチーム(Ⅳ号戦車F2型仕様)”と“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”は、事前に観測手として降車後、廃村内の鐘塔(しょうとう)*4へ登っていた秋山 優花里先輩の偵察で相手フラッグ車(T-34/76)を発見。

 

此れを追跡中に護衛役のKV-2を仕留めるが、逃げ足の速い相手フラッグ車(T-34/76)には中々追い付けずにいた。

 

処が、其のフラッグ車(T-34/76)が廃屋の周りをグルグル回っているだけだと気付いた西住隊長は“カバさんチーム(Ⅲ号突撃砲F型)”を先回りさせた上で雪の中に車体を埋めて待ち伏せた結果、相手フラッグ車(T-34/76)の狙撃に成功したのだ。

 

其れは、ノンナのIS-2が私達のチームのフラッグ車“アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)”の狙撃に失敗した直後の出来事だけど、其の一部始終を私達が知ったのは此の試合が終わった後の事だ。

 

 

 

と言う訳で、此の時の私は舞からの呼び掛けに対して……

 

 

 

『えっ!?じゃあ、プラウダのフラッグ車を西住隊長やエルヴィン先輩達が仕留めてくれたんだ!』

 

 

 

と答えると、舞が笑顔で「仕留めたのは“カバさん”だったそうだよ」と告げたのを聞いた私と菫・良恵の3人は思わず……

 

 

 

「「『と言う事は!』」」

 

 

 

とハモると、其の様子を笑顔で眺めていた瑞希(ののっち)が話を締め括る様に……

 

 

 

「私達・大洗女子の大逆転勝利!」

 

 

 

と大声で叫んだのを聞いた私達は一斉に……

 

 

 

『「「や…やったぁ!」」』

 

 

 

と叫んで“去年の優勝校・プラウダ高相手に奇跡の勝利”を納めた実感を嚙み締め合ったのだった。

 

 

 

でも、試合終了後も私達には色々な出来事が待ち受けていたんだけどね。

 

其れは次の機会に。

 

 

 

(第81話、終わり)

 

 

*1
実は車長・副砲の砲手と装填手・通信手も兼務する1人5役である(笑)。

*2
此れについては第80話「カチューシャ対嵐の対決です!!」を参照の事。

*3
抑々IS-2は122㎜砲弾が大型且つ分離装薬式である上、車内容積が狭い事から弾薬庫には砲弾が28発しか搭載出来ない。

*4
教会等で鐘を収める為に独立して建てた塔。




此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第81話をお送りしました。

強力な122㎜砲を持つIS-2重戦車で大洗女子に迫ったノンナに対して、嵐ちゃんが採った“最後の手段”は…IS-2の砲塔目掛けて曲射弾道で榴弾を撃ち降ろすと言う“悪足掻き”。
流石の嵐ちゃんも、チームを救う為に出来る事は此れが精一杯でした。
処が…其れが何と122㎜砲を発射する瞬間を迎えたIS-2への直撃弾となり、此れが原因でノンナが“アヒルさんチーム”目掛けて放った筈の122㎜砲弾はまさかの大外れ!
其の直後、“あんこう&カバさんチーム”の連携攻撃によって、大洗女子がプラウダ高フラッグ車を撃破すると言う劇的な結末に。
そして次回、試合終了後の大洗女子&プラウダ高との交流や試合を観戦して居た明美さん&しぽりんの鍔迫り合いが展開される中、試合の実況を担当する首都テレビが……

果たして、何が起きる?

其れでは、次回をお楽しみに。

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