戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない 作:瀬戸の住人
かなり“ヤバイ”方向(笑)へ向かっていますが、果たして如何なるのか?
と言う訳で…其れでは、どうぞ。
第63回戦車道高校生全国大会・準決勝第二試合において、劇的な形で昨年の覇者・青森県代表・プラウダ高校を下し、決勝戦へ進出した茨城県代表・県立大洗女子学園。
此の結果、今大会決勝戦は“絶対王者復活”を狙う熊本県代表・黒森峰女学園と“優勝して廃校阻止”を目指す大洗女子学園の激突と言う構図になった。
此のニュースは大会の独占配信権を持つ首都新聞社と首都テレビの報道によって全国へ広まって行った。
例えば、試合翌日の土曜朝に首都テレビで放送された情報番組「モーニング・グッドサタデー」の冒頭ではこんな光景が繰り広げられていた。
「御早う御座います!“モーニング・グッドサタデー”、司会の
(同時にTVの画面上には「首都テレビ・青木 直人アナウンサー」と字幕が表示される)
「アシスタントの
(同時にTVの画面上では「首都テレビ・永瀬 麗アナウンサー」と字幕が表示される)
「永瀬さんも見てましたか。実は僕も見ていたので、今朝は寝不足なんですよ」
(苦笑いを浮かべつつ語る青木アナウンサー)
「私、一回戦の対サンダース大付属戦の時から大洗女子学園の事が気になって彼女達の試合を観続けて来たのですが、昨夜の準決勝は色々な出来事が有って最後迄本当に目が離せませんでした!」
(と興奮し乍ら語る永瀬アナウンサー)
「そうですね、永瀬さん。特に大洗女子学園は試合中“文科省からの通告で、今大会で優勝出来なければ廃校になる”と言う衝撃的な事実が明るみになった中での決勝進出でしたからね…そして本日のゲスト・高森 藍子さんは昨夜の試合、御覧になられたでしょうか?」
(此の青木アナウンサーのコメント後、画面が高森の顔を映すと同時に「今日のゲスト・346プロ所属アイドル・高森 藍子」と字幕が表示される)
「青木さん。実は私、昨夜は自分のラジオ番組が有ったので試合を観る事が出来なかったんですよ。だから番組冒頭で“見れなくて口惜しい!”って言ったら、リスナーから試合の途中経過を教えてくれるメールが沢山来て…そして番組が終わった後も試合終了迄リスナーさん達が番組宛にメールを送って来てくれていたので、此の場を御借りして御礼を申し上げます。リスナーの皆さん、昨夜は本当に有難う御座いました!」
(普段の“ゆるふわ”な雰囲気とは全く異なる“熱い”コメントの後、カメラに向かって丁寧な御辞儀をする高森 藍子)
(此処で、カメラが再び青木アナウンサーの正面へ移る)
「そうでしたか、高森さん。実を申しますと昨夜の試合に関しては視聴者の皆様方からも“試合中断の時間が長かった為に試合を全部見る事が出来なかった”との御叱りのメールや電話が多数寄せられました。其処で急遽今夜7時から4時間スペシャルで“第63回戦車道全国高校生大会・準決勝第二試合”茨城県代表・県立大洗女子学園対青森県代表・プラウダ高校戦を試合中断中の時間の一部を除いてノーカットで再放送する事に成りました!」
(此処からカメラが永瀬アナウンサーの正面に移る)
「更に、此の4時間スペシャルでは決勝戦で大洗女子と対戦する熊本県代表・黒森峰女学園が神奈川県代表・聖グロリアーナ女学院を下した準決勝第一試合もダイジェストで再放送致しますので、是非御楽しみ下さいませ!」
(此の後、カメラが青木アナウンサーの正面に変わる)
「尚、此れに伴い本日の番組欄が今朝の朝刊に掲載されている物から大幅に変更されております。最新の番組欄については御手持ちのTVリモコンの“D”ボタンで御確認頂くか、首都テレビのHPでも告知しておりますので、視聴者の皆様には御手数を掛けますがTVの番組予約の確認を必ず行って頂きます様、御願い申し上げます」
(此処から、カメラが永瀬アナウンサーを映し出す)
「又、首都テレビの番組の中でも随時番組欄の変更を御知らせ致しますので、如何か宜しく御願い申し上げます」
(此の後、カメラが心配気な表情を浮かべて居る高森 藍子を映し出すと、彼女が不安気な声でコメントを始める)
「でも、青木さんに永瀬さん…大洗女子は今大会優勝しないと廃校だって文科省から言い渡されているんですよね。私、其れが非常に心配なんです。大洗女子も勿論ですが、対戦する黒森峰の選手達にも影響が出かねない状況だと思うのですが」
(其の問いに対して、青木アナウンサーは「其の通りですね、高森さん」と頷き乍ら答えた後、カメラの正面に向き直ってから再び語り出す)
「と言う訳で、此処からは大洗女子学園の廃校問題を含めた最新情報を首都テレビ・報道センターから御送り致します。報道センターの飯塚 武司アナウンサー、宜しく御願いします」
(するとTV画面が如何にもTV局の報道センターらしい多数のモニターに囲まれた部屋に移ると同時に、画面正面に在る机の後ろに置かれた椅子に座った飯塚アナウンサーの姿が映し出される)
「はい、飯塚です。其れでは此れ迄に入っている最新情報を御送り致します」
(そしてTV画面に「文部科学省の担当者が隠蔽工作か?大洗女子学園との間に廃校問題関連の公文書を作成せず」との字幕が表示される)
「先ず先程も御伝えしました様に、第63回戦車道全国高校生大会で決勝に進出した茨城県代表・県立大洗女子学園の廃校問題に関連して『文部科学省の
と言う訳で、首都新聞社と首都テレビは来週の日曜日に迫った戦車道全国高校生大会決勝戦へ向けて、大洗女子学園と黒森峰女学園に関する情報を大量発信したのである。
其の結果、特に「文部科学省から突き付けられた“廃校”を阻止すべく優勝を目指す」大洗女子学園・戦車道チームの戦い振りは世間の注目を集める様になり、今大会決勝戦への関心度が大いに高まる事となった。
戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない
第83話「準決勝の後です!!」
そして「モーニング・グッドサタデー」が放送されてから2日後の月曜日。
「「「皆様、先日の準決勝は本当に申し訳御座いませんでした!」」」
此処は大洗女子学園・生徒会長室。
其処では大人達が女子高生を相手に謝罪すると言う
先ず彼等の謝罪を聞いて居るのは、御存知・大洗女子学園生徒会長・角谷 杏と副会長・小山 柚子、副会長補佐官(戦車道担当マネージャー)・名取 佐智子。
そして戦車道チームを代表して西住 みほ隊長と準決勝で“チームを窮地から救ったエース”として世間から注目を集めつつある“ニワトリさんチーム”リーダー兼車長・原園 嵐の5名である。
因みに、此の場には生徒会広報・河嶋 桃の姿が見えないが…彼女は“今迄、生徒会関係者と群馬
一方、生徒会長室で彼女達に向かって謝罪している面々は……
首都新聞社々主・
同社編集局運動部デスク・中田 城一郎。
首都テレビ社長・
同社報道部長・駿河 洋平。
同社スポーツ部プロデューサーで、第63回戦車道全国高校生大会の実況中継・総合プロデューサーを務める八坂 信夫。
要するに戦車道全国高校生大会の特別後援社であると同時に、此の大会の独占配信権を持つ首都新聞社と同社の関連会社で本大会のTV中継を行う首都テレビのトップや関係者達なのであった。
尚、彼等の後ろでは首都新聞社編集局・運動部々長付の“戦車道担当・専属契約ライター”・北條 青葉が呆れ顔で様子を見守っている。
では、何故彼らが女子高生相手に謝罪をする破目に陥ったのかと言うと……
彼等の謝罪を聞いた大洗女子学園生徒会長・角谷 杏の一言が全てを物語っていた。
「いやーっ、流石に私や河嶋が言った『此の大会で優勝しなければ我が校は廃校になる』と言う告白が全国に生中継されていたと知った時はビックリしましたけどね♪」
其れに対して“パンチパーマ姿で、如何見てもヤクザの若頭にしか見えない”筈の八坂が世にも情けない声で「申し訳御座いません!」と深々と頭を下げて謝罪した後、当時の状況についてこう釈明した。
「只、我々としましては“試合中に起こった出来事は極力有りの儘に伝える”と言うのが局の方針である以上、あの様な形にせざるを得ませんでした!」
其処へ嵐が猜疑心に満ちた声で大人達を問い詰める。
『正直に言ったら如何ですか?“視聴率の為に会長達の告白を生中継した”って!』
「原園さん!」
彼女の剣幕を見たみほが慌てて仲裁に入るが、其処へ佐智子が……
「いいえ、此ればかりは原園さんの言い分が正しいです!幾ら何でも我が校の廃校の件をスクープのネタにするなんて、失礼にも程が有ります!」
と
「いや、実際其の通りだから返す言葉も無いよ」
首都テレビ・駿河報道部長が済まなそうな声で謝罪をすると八坂が“大洗女子の廃校問題を派手に報道した理由”について説明した。
「ウチと首都新聞は長年“在京TV局視聴率と大手新聞社発行部数共に万年4位”と言われ続けて来たから、今大会の報道で其のレッテルを剝がしたいと願い続けて来た」
続けて、駿河が更なる事情を説明する。
「恥ずかしい話だが…首都新聞社と首都テレビはバ
其処へ中田が落ち着いた声で補足説明を行う。
「其れ以降、両社は経営を立て直した後も株式投資の失敗で出来た負債の返済を長年続けた結果、何かと資金不足に直面してライバルの後塵を拝する事が多くなった…特に首都テレビの場合、多額の放映権料が掛かるスポーツ中継や有名タレントの出演するバラエティ番組・ドラマの視聴率は振るわなくなったし、首都新聞も部数の低迷が長年続いた」
其れに対して、佐智子が「其の割に首都テレビの番組には346プロのアイドルや歌手・俳優が結構出演されていますよね?」と問い掛けると、今度は首都テレビの相馬社長が……
「346プロダクション
と答えた為、首都新聞と首都テレビを糾弾しようとした佐智子と嵐は毒気を抜かれた声で「『はあ……』」と生返事をした処、今度は副会長の柚子がこう問うて来た。
「じゃあ…首都新聞と首都テレビが戦車道大会の配信権を買ったのは?」
すると首都新聞の霧島社主が静かな声でこう答えた。
「脆弱なウチの資金力でも何とか買える大会の配信権を探していたら、或るCS放送局*1が戦車道大会の放映権を昨年度一杯で手放したと知り、起死回生を狙って縋る思いで手に入れたの」
「『そうですか……』」
両社が大洗女子の廃校問題を派手に報道した理由と戦車道大会の配信権を買った事情が“
「で…私達関連の報道の効果は有ったんですか?」
其れに対して、此れ又神妙な声で答えたのは首都テレビの相馬社長。
「御蔭様で…特に先週土曜夜の準決勝・対プラウダ戦の再放送は、放送時間が4時間と言う長丁場にも関わらず平均視聴率が25%、最高視聴率は38.9%に達しまして、更に此れ迄の中継で高視聴率を獲得して来た勢いが他の番組にも波及した結果、我が社の歴史上初めて“月間平均視聴率全国1位”を獲得する事が出来ました」
“まさかの事実”を聞かされた佐智子と嵐が口を揃えて「『マジですか!?』」と叫ぶと首都テレビ・駿河報道部長が「本当なんだよ」と答えた上で、こう付け加えた。
「実は、今大会の実況中継を始めてから大会関連のニュースや情報番組だけじゃ無く、大会とは無関係なバラエティやドラマ・アニメ等の視聴率も上向きになり、局のスタッフ達も『戦車道大会の実況で局の名前を視聴者に覚えて貰える様になった』と喜んでいた処へ君達の戦い振りが目立って来たから、局内も興奮しているんだ」
其処へ首都新聞の霧島社主も「準決勝翌日の朝刊もあっと言う間に売り切れて、急遽増刷致しました」と告白した上、同社の中田デスクも「抑々新聞が朝刊を増刷するなんて前代未聞なんだけどね」と語ったのを聞いた角谷会長も唖然とした声で「いやあ…其れは凄いですねえ」と答えた処、此処迄呆れ顔で女子高生に謝罪する勤務先の上司達の姿を見ていた青葉が何かを思い出したらしく、直接の上司である中田デスクに目配せをした上でこう告げた。
「其れでね…実は私達が皆さんを訪問しに来たのには、もう一つ理由が有るのよ」
其の発言を聞いて一斉に「『えっ!?』」と戸惑い気味の声を返した生徒会メンバーとみほ・嵐に対して青葉は真剣な声で詳しい説明を始めた。
「学園艦で生活している皆さんには分かり辛いだろうけれど、今、日本中が大洗女子の話題で持ち切りの状態で、大洗町にも
すると角谷会長が小さく頷くと「ああ、だから今朝大洗町役場から“警備体制を強化する時間が必要だから、明日の午後迄学園艦の入港は控えて欲しい”って通達が来ていたんだ」と語ると名取
「何でも茨城県警から機動隊が、海上保安庁からも巡視船がやって来て、決勝戦当日迄大洗港の警備に当たるんですって」
「『えーっ!?』」
予想の斜め上を行く現実を聞かされたみほと嵐が唖然としていると首都テレビ・相馬社長から……
「其れと、此れは西住さんには伝えにくい事なのだけど……」
「えっ…もしかして、黒森峰女学園にも何かあったのですか?」
名指しされたみほが戸惑い気味の声を上げると相馬社長は複雑な表情を浮かべ乍らこう告げた。
「其の通りよ。黒森峰の学園艦は準決勝当日から今日の御昼迄の間、母港の有る熊本港に近い天草灘に停泊しているから、少々不味い事になっているの」
其の言葉にみほが不安気な表情を浮かべて居ると首都新聞社・中田デスクが詳しい話を語る。
「決勝戦のカードが大洗女子対黒森峰だと知った戦車道ファンや全国大会の独占配信権を持つウチを除く報道関係者達が準決勝の翌朝から天草灘周辺に船やヘリで殺到した為、黒森峰の学園艦の出港が難しい状態になっているんだ。今、海上保安庁と熊本県警が躍起になって航路の警備に当たっているよ」
予想外の事実を聞かされたみほ達が呆然としている中、逸早く立ち直った柚子が……
「何故、そんな事になっているのですか?」
と問い掛けると首都テレビ・駿河報道部長がこう答える。
「今、黒森峰は日本中から“大洗女子を廃校
すると佐智子と嵐が口を揃えて「『幾ら何でも其れはヤバ過ぎる!』」と叫ぶ中、首都新聞・霧島社主が現状説明を行った。
「そう言う状況なので、戦車道連盟からも『混乱回避の為、此れ以上戦車道ファンを煽る様な報道は控えて欲しい』と要請されている為、今朝からはある程度控えめな報道内容に変えています」
更に首都テレビの相馬社長もこう説明した。
「私達としても不測の事態を引き起こす様な事は望んでいませんから“大洗女子や黒森峰の学園艦に押し掛ける様な事は絶対に止めて下さい”と局のニュースや情報番組で呼び掛けている有様なのです」
其の説明を聞いた角谷会長は苦笑いを浮かべつつ「うわーっ、ウチを応援してくれる人が増えるのは嬉しいけど、ヤバそうなファンが増えるのも困るよねえ」とボヤくが、其処へみほが不安気な声で一言呟いた。
「黒森峰の皆…大丈夫かな?」
其の一言に、角谷会長・小山副会長に加えて首都新聞と首都テレビの大人達も腕組みをし乍ら「「う~ん…確かに」」と考え込んで居る中、佐智子が優し気な声で……
「嘗ての母校とは言え、決勝戦の対戦相手の心配をされるなんて西住先輩らしいですね」
とみほへ話し掛けた処、彼女と一緒に嵐も頷き乍ら『うん』と答えた上で、こんな事を語ったのだった。
『私も西住先輩と同じ気持ちです…此の儘だと決勝戦が真面な試合にならない様な気がするし、そんな試合に勝っても意味が有るのかなって思うんです』
其の言葉に、首都新聞と首都テレビの大人達は「確かに……」と呟きつつ“此の事態を収める為には如何すれば良いのか”と考え込むのだった。
同じ頃、黒森峰女学園の学園艦が停泊している熊本県・天草灘では。
「此方は海上保安庁です!黒森峰女学園・学園艦は間も無く出港します!周辺を航行する船舶や航空機は直ちに学園艦の周囲から離れて下さい!特に学園艦が出港する際は大きな波が発生する為、近くを航行する小型船舶は大変危険です!直ちに学園艦から離れて下さい!」
海上保安庁のヘリコプター2機搭載型巡視船「しゅんこう」搭載の大型ヘリ・エアバスヘリコプターズH225スーパーピューマ“MH693・なべつる”が学園艦上空を飛行し乍らスピーカーで周辺海域に群がる船舶(主に戦車道ファンや地元住民が乗り組んでいる)や報道機関が飛ばしている航空機に向けて警告を発していた。
天草灘と其の周辺海域を管轄する海保の組織は熊本海上保安部と天草・八代の海上保安署だが、何れも小型の巡視艇しか配備されていない為、上部組織に当たる鹿児島県鹿児島市の第十管区海上保安本部は管内に所属する巡視船艇・航空機を応援に出した他、隣接する福岡県北九州市門司区の第七管区海上保安本部にも応援を要請。
其の結果、本来なら尖閣諸島付近を航行する中国公船との睨み合いに従事する筈の鹿児島海上保安部(第十管区)所属の巡視船「しゅんこう」の他、十数隻の巡視船艇や複数の航空機が黒森峰女学園・学園艦出港時の安全確保の為に天草灘へ集結した。
此れに熊本県警の警備艇や同航空隊所属の中型ヘリ・ エアバスヘリコプターズH135“おおあそ”も加わった結果、黒森峰女学園・学園艦の周辺海域は騒然となっていた。
当然、黒森峰女学園の生徒達にとっては不安を掻き立てる状況である。
「うわーっ…此処迄ヤバい状況になるなんて!?」
黒森峰女学園校内の一角にあるカフェで仲間達と一緒に昼食後のコーヒータイムを過ごしていた戦車道チーム・ヤークトパンター車長・
「まさか、
エミの仲間で乗る戦車を選ばないオールラウンダー型の戦車長・入間 アンナも不機嫌そうな声で返すと此方もチームでは戦車長を務める勝気な少女・飛騨 エマがこんな事を言った。
「優勝へのプレッシャーなら慣れているけど、
確かに、常勝・黒森峰戦車道チームメンバーでも周囲から“負けろ!”と言われ続ける様な経験をした者は居ないだろう。
其処へチームの主力中戦車であるパンターG後期型の車長・赤星 小梅が自身の体験談を語り出した。
「私も昨日の日曜日に外出した時、熊本市街で偶々擦れ違った他校の生徒達から『悪いけど、今回ばかりはみほさん達大洗女子を応援する』って言われたよ」
「地元からも
彼女の話を聞いて、チームでは偵察・連絡用に多用されるⅢ号戦車J後期型*2の車長を務める勝矢 メグが天を仰ぎ乍ら嘆いていると……
小梅は衝撃的な話を皆に告げた。
「更に『同じ熊本県の女子高生と言う理由だけで、去年の決勝戦の最中に川へ戦車毎落ちた仲間達を助けたみほさんを見限った
「「「えっ!」」」
彼女の告白を聞いた仲間達は真っ青な顔で一斉に叫んだ。
其れも其の筈、小梅は去年の決勝戦で乗車していたⅢ号戦車J後期型と共に川の濁流に飲み込まれようとしていた所をみほに助け出された乗員5名中、唯一人転校せず黒森峰戦車道チームに残った少女だ。
其れは“あの時、みほさんがしてくれた事を他の誰にも否定させたりしない”為だったのだが……
しかし、小梅はむしろ真っ青な顔になっている仲間達を落ち着かせようと静かな声でこう答えた。
「仕方無いよ。去年の大会決勝戦の真相を詳しく知らない人達にとっては私も“黒森峰の生徒の1人”に過ぎないのだから」
其れに対して皆は「「「そんな!?」」」と叫ぶが、小梅は必至に涙を堪え乍らこう告げる。
「如何言い訳しようと世間の目から見たら私達は“仲間の命よりも
「何て事になっているのよ!?」
本当は、みほを擁護する為にチームに残った小梅迄“
何故なら、戦車道全国高校生大会の配信権を持つ首都新聞や首都テレビでは去年の大会後のみほと黒森峰の動きについてはみほ達関係者のプライバシーに配慮してある程度控えめに報道されていたが、決勝戦の組み合わせが決まった直後から一部ネットニュースや週刊誌の電子版で“去年の大会決勝戦で起きた事故”の事が派手に報道されており、其の結果黒森峰は“文科省の手先となって大洗女子学園を廃校に追い込もうとしている「今大会最大の悪役」”と見做されてしまったのだ。
更に、此処迄首都新聞と首都テレビの報道で“今大会の悪役”と思われていたプラウダ高校が準決勝で大洗女子に敗れた後のインタビューで、みほや嵐達大洗女子のメンバーが「プラウダは本当に強かったです」と述べた事やプラウダ高のカチューシャ隊長も首都新聞や首都テレビでのインタビューの中で此れ迄の件について謝罪した事から、世間も“プラウダ高校は連覇を目指して無理をしていたのだ”と理解を示していた事も黒森峰にとっては逆風となっていたのだ。
「文科省の
思わず、エマが大洗女子・廃校問題のとばっちりを喰らう形で世間から敵視される破目になった自分達の境遇を呪っていると、仲間達から“
「皆、話の途中で悪いけど機甲科生徒は昼休みが終わったら体育館へ全員集合だって。決勝戦に向けて
すると小梅がホッとした表情で「良かった…皆、取り敢えず隊長の訓示を聞いて落ち着こう」と話し掛けた処、其の場に居た全員が安堵の表情を浮かべて頷き合っていた。
確かに、此処で隊長から訓示を貰って心を引き締めなければ、とてもでは無いが決勝戦へ向けて気合を入れる処の騒ぎでは無い。
だが…此の時、黒森峰の内部では戦車道大会決勝戦へ向けて“或る陰湿な
(第83話、終わり)
此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第83話をお送りしました。
皆さん、ヤバい事になりました(爆)。
首都新聞&首都テレビの報道が切っ掛けとなり、黒森峰が“今大会最大の悪役”の座をプラウダ高校から奪う結果に。
其の上、世論も文科省による理不尽な廃校方針を撤回させる為に戦う大洗女子の味方に回った結果、黒森峰は地元・熊本県民からも敵視される破目に。
しかし、其の裏で黒森峰内部ではある動きが…でも、此れは原作を知る人なら分かる“超○○○”ネタの深掘りですので、詳細は次回を御覧頂ければと思って居ります。
後、其の陰で地味に追い詰められている役人(爆笑)。
原作・劇場版では大洗女子を廃校にする為に役人が使った「廃校回避に関する公文書を作らなかったと言う姑息な手段」が本作ではブーメランとなって帰って来るオチに(ゲス顔)。
と言う訳で、此の役人が本作ではどうなるのかにも御注目下さい(暗黒笑顔)。
其れでは、次回をお楽しみに。