戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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前回の後書きで触れた“超○○○”ネタの深掘り、早速冒頭から投入しておりますので、御楽しみ下さい。
そして後半では、大洗に“あの重戦車”が登場。
更に“あの人”達が登場しますが、其れに何故か“ニワトリさんチーム”メンバーの1人が…?

と言う訳で、其れではどうぞ。




第84話「決勝戦へ向けての準備・前編です!!」

 

 

 

此処は、黒森峰女学園・学園艦内の一室。

 

其の日の昼休み時間終了後、黒森峰機甲科生徒全員が“決勝戦に向けて西住 まほ隊長からの訓示を聞く為に体育館へ集合せよ”との指示を受けていた時、此の一室に置かれている大画面TVからは、最近人気が高まっている首都テレビの情報番組を担当するアナウンサーの声が響いていた。

 

 

 

「大洗女子学園の廃校問題に関連して、国会では今日午前中に行われた衆議院・予算委員会質疑で野党議員が牟田(むた)文部科学大臣に対して『文科省担当者()が大洗女子学園の生徒会長との間で交わした“戦車道全国高校生大会で優勝したら廃校を取り消す”約束を公文書として作成しなかったのは、後で其の約束を反故にしようと企んでいたからではないか?』との疑惑について追求しましたが、牟田(むた)大臣は終始曖昧な答弁を繰り返すだけに留まった為、野党からは文科省担当者()本人の参考人質疑を要求する声が高まっています」

 

 

 

其れに対して、TVを見乍ら座って居た和服姿の熟女が忌々し気な声で文句を垂れる。

 

 

 

「辻奴…全く使えない上に()()()()()迄持ち込んで。アイツはもう見限った方が良いわね」

 

 

 

其の後、彼女は傍らに控えていたメガネを掛けた若い女性へ命令を下した。

 

 

 

「あの使えない()が抱えている()()()()()()()()()を其れと無くマスコミへリークして欲しいと()()()()へ伝えて置いて。タイミングは戦車道全国高校生大会・決勝戦の翌朝頃で」

 

 

 

「はい」

 

 

 

彼女の指示に対して、若い女性は能面の様な表情の儘会釈をすると部屋を退出した。

 

実は、此の女性の正体は和服姿の熟女の娘である。

 

彼女は()()の命令で黒森峰へ入学(しかも母のコネによる“裏口入学”である)後、戦車道チームのレギュラーになって去年の戦車道全国高校生大会にも出場したが、其の決勝戦で起きた“事件”の影響で進学就職が難しくなったと感じた母は、今春黒森峰を卒業した彼女を自分の秘書として手元に置いているのだった。

 

すると、今度は若い女性と入れ替わりに黒いスーツを着た女性…黒森峰と繋がりの深い戦車道・西住流師範・西住 しほが入って来る。

 

彼女は丁寧な御辞儀をしてから部屋の中央部に有るソファーに座って居た和服姿の女性へ挨拶をした。

 

 

 

「富永PTA会長、御用と聞いて伺いました」

 

 

 

此れに対して“黒森峰PTA会長”(其の実態は戦車道スポンサー企業と西住流関係者及び黒森峰OGによる連絡会(PTA)の責任者である)・富永は「ええ…取り敢えず、其方へ座りなさい」と答えてしほに着席を促した後、“本題”に入る。

 

 

 

「TV各局の報道を見たけれど、今度の日曜日に行われる大洗女子との戦車道大会決勝戦、想定外の事態に直面している様ね?」

 

 

 

其の問いに対して、しほは凛とした表情を崩さない儘、冷静な声で答える。

 

 

 

「みほの事でしたら、心配ありません。決勝戦は全力を挙げて優勝を目指します」

 

 

 

すると富永は「そう……」と呟いた後、“思わぬ事”を告げた。

 

 

 

「でも、其れだけでは足りないんじゃないかしら?」

 

 

 

「足りない…まさか!?」

 

 

 

富永からの指摘を聞いたしほは“心当たり”が有った為、思わず声を上げた処、富永は微笑み乍らこう答えた。

 

 

 

「ええ…以前から我が校の懸案となっていた“あの戦車”のレストアが完了しました。先日貴女から借りた整備マニュアルの御陰で決勝戦に間に合いました」

 

 

 

其の後、富永はしほへ向けて指示を出す。

 

 

 

「決勝戦では“あの戦車”を使って大洗女子を倒しなさい。此れは会長命令です」

 

 

 

其の言葉を聞いたしほは、常に真剣な表情を崩さない彼女にしては珍しく動揺した声を上げる。

 

 

 

「ですが会長…“あの戦車”のレストアに要する費用はかなりの金額の筈です。一体何処から其れだけの費用を!?」

 

 

 

しかし、富永はキッパリとした声でしほの問いを遮った。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()。後、貴女から御借りした“あの戦車”の整備マニュアルを御返しします」

 

 

 

そう告げた後、富永はしほの目の前に置かれた机の上に1冊の古ぼけた整備マニュアルを静かに置くと、しほは会釈をしてから……

 

 

 

「分かりました…今大会決勝戦、全力を挙げて優勝を目指します」

 

 

 

と告げた後、表紙に“作成者・黒森峰女学園・機甲科3年 石見(原園) 明美”と書かれてある整備マニュアルを受け取った処、富永は再び微笑乍らこう答えた。

 

 

 

「期待しているわね…話は以上です。退出して宜しい」

 

 

 

其れに対して、しほは礼儀正しく「失礼します」と告げてから部屋を出た後、部屋の扉に掲げられた「黒森峰PTA会長室」の札を見詰め乍ら、こう呟いた。

 

 

 

“あの戦車”のレストア費用を聞くなとは…まさかと思うが、“あけみっ(明美)ち”や“ながも(長門)ん”が聞いたら激怒しそうな舞台裏が在りそうね」

 

 

 

其れは、今迄“西住流と黒森峰の戦車道”を信じて疑わなかった西住 しほが、黒森峰や西住流OG達の考えに対して初めて疑念を抱いた瞬間だった。

 

其の後、しほは部屋の外の廊下の外れに在るバルコニーへ移動後、自分のスマホを取り出して電話を掛けた。

 

 

 

「もしもし、菊代?至急調べて欲しい事が有るから、今から言う事を良く聞きなさい。実は先程……」

 

 

 

 

 

 

戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない

 

 

 

第84話「決勝戦へ向けての準備・前編です!!」

 

 

 

 

 

 

此れは首都新聞と首都テレビの関係者が、角谷生徒会長や私達・大洗女子学園戦車道チームの仲間達へ謝罪を行った翌日の事。

 

私・原園 嵐と戦車道チームの仲間達は学園艦内に在る戦車道演習場の一角で“レストアが終了して試運転中の()()()()()”が四苦八苦し乍ら動く姿を見て、途方に暮れていた。

 

 

 

『“ののっち(瑞希)”…まさか、学園艦内で紗希が見付けたティーガー重戦車が“ポルシェティーガー”だったなんて!』

 

 

 

「そうね。私も、こんなレアな重戦車がウチの母校に隠されていたなんて予想すらしていなかったわ!」

 

 

 

私とチームメイトで“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”砲手・野々坂 瑞希が目の前でスタックして動けなくなっているポルシェティーガーを眺め乍ら愚痴を零し合っていると……

 

 

 

「マニアには堪らない一品です!」

 

 

 

あんこうチーム(Ⅳ号戦車F2型仕様)”砲手兼戦車マニアの秋山 優花里先輩が歓喜の叫び(?)を上げると“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”操縦手・萩岡 菫も嬉し気な声でこんな事を言い出した。

 

 

 

「はいっ、秋山先輩!電気自動車や世界初のハイブリッドカーも手掛けたフェルディナント・ポルシェ小父様が()()で作った電気駆動式重戦車(ポルシェティーガー)の本物が見られるなんて最高です!」

 

 

 

そんな2人の姿を目の当たりにした“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”装填手・二階堂 舞は脂汗を掻き乍ら、慌て声で……

 

 

 

「嵐ちゃんに“ののっち(瑞希)”、秋山先輩も菫ちゃんも目の輝きがヤバ過ぎるよ!」

 

 

 

と話し掛けて来た為、私と瑞希(ののっち)は如何答えて良いか分からず、「『あはは……』」と小声で笑い乍ら其の場を誤魔化していたが、其処へ秋山先輩が再び……

 

 

 

「まあ、ポルシェティーガーは走り出すと地面にめり込んだりー、加熱して(エンジンが)炎上したりー、何かと壊れ易いのが難点ですけど♪」

 

 

 

何とも不穏な言葉に“嫌な予感”がした私と瑞希(ののっち)は視線を正面へ向けた処、案の定……

 

 

 

「あちゃ~、又やっちゃったー♪」

 

 

 

「おーい、ホシノ!消火器!」

 

 

 

「『ああっ……』」

 

 

 

秋山先輩が言った通り、試験走行中に地面にめり込んだ儘動けなくなっていたポルシェティーガーのエンジンルームから火が噴き出した為、試験走行を担当する自動車部々長・ナカジマ先輩が同級生の部員であるホシノ先輩に呼び掛けている姿を見た私と瑞希が呆然として居る中、傍に居た菫が悲鳴を上げる。

 

 

 

「あーっ!ポルシェティーガーの空冷V10ツイン・エンジン*1が燃えてるー!」

 

 

 

其れに対して瑞希(ののっち)が呆れ声で「菫、其れはポルシェティーガーにとっては“何時もの事”だから……」と(たしな)める中、今度は“ニワトリさん(M4A3E8)チーム”副操縦手・長沢 良恵が私に向けてこんな事を言って来た。

 

 

 

「だけど此の姿…まるで“()()()”だね」

 

 

 

すると舞が嬉し気な声で「あっ、良恵ちゃんも()()()()()()()()()()が書いた漫画を読んだんだ」と話し掛けると良恵も笑顔でこう答えた。

 

 

 

「うん。嵐に『()()()()()』の事を教えて貰って読んだんだけど、其のマンガが書かれた当時は“ポルシェティーガーが実戦投入されていなかった”と考えられていたって知って吃驚しちゃった!*2

 

 

 

そんな話題で盛り上がっている2人を眺めていた私は、視線を消火作業中のポルシェティーガーへ向けると心底疲れた声で……

 

 

 

『でも、まさか“()()()()”と全く同じシーンが再現されるとは……』

 

 

 

と零した処、角谷会長も苦笑しながら「戦車と呼びたく無い戦車だよね…♪」と呟いた為、秋山先輩が大声で「でも足回りは弱いですが、88㎜砲の威力は抜群ですから!」と言い返して来た処で生徒会副会長・小山先輩が此れ又疲れ切った声で……

 

 

 

「もう、他に戦車は無いんでしょうか……」

 

 

 

と零すと、瑞希(ののっち)が心配気な声で……

 

 

 

「園先輩達風紀委員がくろがね四起(九五式小型乗用車)で学園艦内を走り回って“戦車を見掛けたら速やかに御知らせ下さい”って呼び掛けていますが……」

 

 

 

と語ったのに続いて、生徒会で“戦車道担当・副会長補佐官”を担当する名取 佐智子が……

 

 

 

「後、ウサギさんチームや他のチームの()達も戦車探しをやってくれていますが、今の処は有力な手掛かりが得られていません」

 

 

 

と戦車探しの進捗が余り思わしくない状況になっている事を聞いて困り顔をする角谷会長達生徒会三役(杏・柚子・桃)の姿を見て“ある事”を思い出した私は憤懣遣る方無い声でこう叫んだ。

 

 

 

『全く!こんなに戦車が欲しい時にウチの馬鹿母(明美)は何処へ雲隠れしてるのよ!昨日は“廃校の事を皆にバラした御仕置き”だと言って、体育館で河嶋先輩にプロレス技のフルコースを仕掛けていた癖に!』

 

 

 

「呼んだ?」

 

 

 

「「『うわっ!?』」」

 

 

 

私の怨嗟の声に合わせたかの様に突然現れた母の能天気な笑顔を見た私や西住先輩達が一斉に驚愕の声を上げる中、私は大声で母を糾弾しようとして……

 

 

 

『呼んだじゃ無いわよ!一体、今迄何処へ…って、河嶋先輩に長門さん迄!』

 

 

 

と叫んだ途端、目の前にやって来たのが母だけで無いと気付いて絶句した直後、先ず長門さんが「皆、元気だったか?」と挨拶した後、何故か腰に手を当てて歩いている河嶋先輩が……

 

 

 

「ウッ…未だ足腰が自由に動かない……」

 

 

 

と呟き乍らヘロヘロな状態でやって来たのを見た我が母・原園 明美は「あっ、いけない…昨日は調子に乗って夕方迄河嶋さん相手に“プロレス技のフルコース”を仕掛けたんだった」と言った為、私は頭に来て……

 

 

 

『母さん…幾ら“廃校の秘密をバラした御仕置き”だからって、やり過ぎでしょ!?』

 

 

 

と言い返した処、母は悪びれない声で「いやーっ、昨日は調子に乗ってつい……」と答えた後、視線を私から角谷会長へ移すとこんな事を言ったのである。

 

 

 

「其れは兎も角、角谷さん。“例の話”だけど、準備出来たわよ」

 

 

 

すると会長が頷き乍ら、こんな事を言った。

 

 

 

「ああ。私達が決勝進出した事で、色んなクラブが義援金出してくれたんだけど戦車を買うには一寸無理そうだったから、今有る戦車の補強・改造に回す為にどんなパーツを買えば良いか、昨日明美さんに相談したんだっけ」

 

 

 

其れに対して、話を聞いて居た西住先輩が驚きの声で……

 

 

 

「えっ!?其の話って、昨日首都新聞と首都テレビの方々が謝罪をして帰った後、皆で相談した話ですよね。もう準備が出来たのですか!?」

 

 

 

我が母(明美)へ話し掛けた処、母は胸を張り乍ら……

 

 

 

「其の通り!私は嵐が思っているみたいに雲隠れした訳じゃ無いわよ!」

 

 

 

『其処で私の文句を出すな!』

 

 

 

母の“好い加減さ”に怒りを覚えた私は思わず文句を言ったが、其処へ長門さんが「まあまあ」と口を挟んでから、こう語った。

 

 

 

「今から用意出来た補強・改造用パーツを見せるから、皆を戦車格納庫へ集合する様に連絡してくれないか?原園車輌整備の社員達も待たせているから急いだ方が良いぞ」

 

 

 

やれやれ…母の言い分には文句を言いたいが、決勝戦迄時間が無い以上、此処で母娘喧嘩をしてもしょうがない。

 

 

 

 

 

 

斯くして、学園内の戦車格納庫へ集合した私達の前では、先ず原園車輌整備社長・原園 明美(我が母親)の秘書・淀川 清恵さんが綺麗な声で“今回用意した改造用パーツキット”の説明を始めた。

 

 

 

「先ず、“カメさんチーム”の38(t)軽戦車B/C型を駆逐戦車“ヘッツァー”に改造する為のキットを用意したわ。早速取り付け作業を始めるから、手伝える人は集まって!」

 

 

 

「「「はいっ!」」」

 

 

 

説明を受けて、私達の仲間の有志が清恵さんの前に集まる中、実は清恵さんに憧れていると言う西住先輩が笑顔で其の様子を見守っている隣で、小山先輩が不安気な声で……

 

 

 

「結構、無理矢理よね……」

 

 

 

と語る中、長門さんが苦笑いを浮かべつつ「まあ、元々は38(t)軽戦車の火力不足を嘆いていたり、38(t)の車台を流用したマーダーⅢ対戦車自走砲やグリレ自走砲*3しか持っていないチームへの救済策だからな」と説明していると、次は原園車輌整備・整備課副班長で工場長を勤める刈谷 藤兵衛さんの右腕・張本 夕子さんが“新たな戦車の改造策”について説明を開始する。

 

 

 

「其れと“あんこうチーム”のⅣ号戦車に“シュルツェン*4”等を取り付けてF2型からH型仕様へとアップグレードさせようと思います」

 

 

 

其の話を聞いた角谷会長が御道化た声で「いいねー♪」と返した処、突然母がこんな事を言い出したのだった。

 

 

 

「其れとみほさん、今から話を聞いて欲しい()が居るのよ」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

母からの一言に西住先輩が当惑の声を上げる中、其の場に“猫耳型のカチューシャと瓶底眼鏡”と言う“中二病キャラ”を連想させる人が現れると彼女はオドオドした声で……

 

 

 

「に…西住さん!」

 

 

 

と呼び掛けた為、先輩は……

 

 

 

「あっ、猫田さん!」

 

 

 

と答えた処、“戦車道担当・生徒会副会長補佐官”の名取 佐智子ちゃんが「猫田さん、此の間は上手く声を掛けられ無くて御免なさい」と謝罪すると彼女は……

 

 

 

「い、いいんだよ。あの時は僕も“戦車道を取りたい”って言う勇気が出なかったから」

 

 

 

と語った為、思わず私は……

 

 

 

『えっ…と言う事は!?』

 

 

 

と叫んだ処、猫田さんと呼ばれた人は勇気を振り絞っている感じの声で……

 

 

 

「う…うん。僕も今から戦車道、取れないかな?」

 

 

 

「『えっ!?』」

 

 

 

思わぬ形で、新たな戦車道履修者が現れた事に、私と西住先輩が驚いていると猫田さんは……

 

 

 

「是非協力したいんだけど…操縦はね、慣れてるから」

 

 

 

と告げた為、西住先輩は嬉し気な声で「本当!?有難う!」と答えたものの“ある事”に気付くと悲し気な声で……

 

 

 

「でも、もう何処を探しても戦車が無くて……」

 

 

 

と告白したのだが…其処へ我が母親(明美)がこう言ったのだ!

 

 

 

「西住さん、其れなら問題nothing(ナッシング)(無し)!」

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

我が母親(明美)の能天気な声で意表を突かれた西住先輩が驚く中、続けて母は皆を驚かせる事を告げたのだ。

 

 

 

「実はね…猫田さんが戦車を見付けてくれたのよ!」

 

 

 

「「『ええっ!?』」」

 

 

 

 

 

 

「ほらね♪」

 

 

 

「こんな所に三式中戦車が……」

 

 

 

『まさか、校内の駐車場に置きっ放しだったとは!?』

 

 

 

母に連れられて、学園内の校舎群の片隅に有る屋根付き駐車場に来た私と西住先輩達が見た物は、日本陸軍が太平洋戦争末期に量産した最後の中戦車・三式中戦車(チヌ車)だった。

 

其の姿は、私が幼い頃、両親と一緒に陸上自衛隊・土浦駐屯地へ行った時に見た同型車とそっくりだったので、私は言い様の無い既視感(デジャヴ)を感じていると……

 

 

 

「此れ、使えるんですか!?」

 

 

 

「ずっと置きっ放しになっていたから、使えないんだと思っていました!」

 

 

 

ウサギさんチーム(M3中戦車リー)”操縦手・阪口 桂利奈ちゃんと彼女のチームメイトで37㎜砲々手・大野あやが駐車場に置かれていた三式中戦車を見て驚愕の声を上げていた為、其の姿を見た瑞希が戦車を指差して、こう付け加えた。

 

 

 

「オマケに“バイクから戦車迄扱う事で有名な買取専門店・ブラックデューク”のチラシが砲身にぶら下がっていれば、誰だって“オーナーが売りに出しているんだ”と勘違いするでしょうね」

 

 

 

其のツッコミの的確さに、西住先輩と私は思わず苦笑いを浮かべ乍ら「『あはは……』」と呟く事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

そんな感じで、私達が三式中戦車を駐車場から学園内の戦車格納庫へ移動させる準備を始めようとした時、西住先輩が不安気な声で……

 

 

 

「猫田さん。戦車は見付かったけど仲間は他に居るの?」

 

 

 

と問い掛けた処、彼女は微笑み乍ら……

 

 

 

「大丈夫…もう仲間を呼んでいるから」

 

 

 

と答えたのである。

 

 

 

其れに対して、西住先輩が「仲間?」と問うと……

 

 

 

「「わーっ!カッコイイ!!」」

 

 

 

何時の間にか駐車場にやって来たそばかす顔の爆乳美女(羨ましい)と右目に桃形の眼帯を付けた少女が、三式中戦車を眺め乍ら歓声を上げていた。

 

其処へ猫田先輩が「皆、オンラインの戦車ゲームしてる仲間です」と彼女達を紹介した途端、私は心の中で“嫌な予感”がした。

 

 

 

『えっ…オンライン戦車ゲーム?』

 

 

 

と言う事は猫田先輩達、戦車道の経験は?

 

と思っているのを余所に、3人の“オンライン戦車ゲーム仲間”達は自己紹介を始める。

 

 

 

「あっ…僕“ねこにゃー(猫田先輩)”です」

 

 

 

先ず彼女の挨拶に対して、右目に桃形の眼帯を付け、頭にはピンク色のカチューシャを付けた少女が「あっ!貴女が!?“ももがー”です!」と答え、続いてそばかす顔の爆乳少女が「私“ぴよたん”です!」と答えた処、彼女達の挨拶を聞いて居た瑞希が……

 

 

 

「えっ…あの人達って、若しかして!?」

 

 

 

と口走った為、私は慌て声で『如何したの、“ののっち(瑞希)”!?』と話し掛ける中、猫田先輩が「おおっ!“ももがー”に“ぴよたん”さん!リアルでは初めまして!」と2人の“オンラインゲーム仲間”へ声掛けをすると“ぴよたん”さんが「本物の戦車を動かせるなんて、マジヤバい~!」と答えていた時、何を思ったのか瑞希が3人の中へ入って行くと大声でこんな事を言い出した。

 

 

 

「あのっ!若しかして先輩方はオンライン戦車ゲームの“Tanks Of World”の日本サーバーでトップ3のプレイヤーでは有りませんか?私、其処のサーバーで第4位のプレイヤー“ののっち”です!」

 

 

 

『はあっ!?』

 

 

 

瑞希からの“予想外の告白”でブッ飛ぶ私を余所に“ねこにゃー・ももがー・ぴよたん”のオンライン戦車ゲーム仲間が声を揃えて“更に予想外の答え”を返して来た。

 

 

 

「「「おおっ!“ののっち(瑞希)”さん迄!」」」

 

 

 

思わぬ場所で、瑞希(ののっち)の知り合いが現れた事を知った私は驚きの声でこう言った。

 

 

 

『“ののっち(瑞希)”…アンタ、中学時代から“Tanks Of World”を遣り込んでいるなと思っていたけれど、年上のネット友達迄作っていたの!?』

 

 

 

其れに対して、彼女は不敵に笑い乍ら「いやあ…此の人達は日本サーバーのトップ3だから、何とかして打ち勝とうと思っていたんだけど、なかなか勝てなくて“凄い人達だな”と思っていたら母校の先輩だったんだもの。そりゃテンション上がるわよ!」と答えると、“ねこにゃー”こと猫田先輩も「いや、“ののっち(瑞希)”さんも“Tanks Of World”では世界レベルのプレーヤーですよ」と返して来たので、私は苦笑いを浮かべるしか無かったのだが…一寸待て。

 

其処で“或る問題”に気付いた私は“ねこにゃー・ももがー・ぴよたん”のオンライン戦車ゲーム仲間に向けて一つ質問を発した。

 

 

 

『あの、先輩方…私と瑞希はリアルの戦車道歴が約10年有るんですが、先輩方の戦車の操縦歴は?』

 

 

 

すると、先ず“ねこにゃ(猫田)ー”先輩が……

 

 

 

「初めてです」

 

 

 

次いで“ももがー”先輩が…

 

 

 

「初心者です」

 

 

 

そして“ぴよたん”先輩も……

 

 

 

「恥ずかし乍ら…リアルでは初体験です」

 

 

 

『えっ!?』

 

 

 

新たな戦車道仲間3人の正体が“全員、オンライン戦車ゲームの経験が豊富でも戦車道は未経験者”だと知って驚愕の叫び声を上げた私を余所に、其の様子を見ていた西住先輩と瑞希は揃って「「あはは……」」と呟くのが精一杯の様子だった。

 

 

 

(第84話、終わり)

 

 

*1
ポルシェティーガーはエンジンが2つ有り、此れで直流発電機を回して得られた電力を電気モーターへ送って駆動させる“ガス・エレクトリック方式”で動いていた。但し、ハイブリッドカーとは違って蓄電池は持っていない。

*2
実際はエレファント重駆逐戦車装備の第653戦車駆逐大隊で指揮戦車仕様に改修されたポルシェティーガーが数輌、実戦使用されている。

*3
何方もオープントップなので、公式戦車道のレギュレーションでは使用出来ない。

*4
ドイツ語で“エプロン”を意味する単語だが、此の場合は戦車の車体や砲塔側面等に付ける薄い増加装甲の事。ドイツ軍では本来、対戦車ライフル対策で此れを装備したが、実戦では対戦車ロケット砲等に使われる成形炸薬弾にも有効である事が判明した為、多くの戦車で使用された。





此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第84話をお送りしました。

先ず、黒森峰内部で不穏な動きが…PTA会長の富永が“あの戦車”のレストアを済ませたから、決勝戦では其れを使って大洗女子を倒せとしぽりんへ指示を出す。
しかし“あの戦車”のレストア費用が高額なのを知るしぽりんは其の事について質すも富永は“其の話を知る必要は無い”と一蹴。
此れに対して不信感を抱いたしほは菊代に調査を依頼するが、果たして……
此の話は後々への伏線ですが、一体何時になったら回収出来るか分かりません(苦笑)。
其れと“PTA会長の富永”は、コミカライズの「プラウダ戦記」第5巻に出て来る三号戦車の戦車長・富永の母親です。
本作では、此の後に起きる事態の“黒幕”の1人になるのですが、果たして如何なる事か?

一方、大洗女子は手持ちの戦車の改修作業を立案する中、三式中戦車と後の“アリクイさんチーム”メンバー3人が登場。
そうしたら、何と瑞希が彼女達がやっているのと同じオンライン戦車ゲームのプレイヤーだった事実が発覚しましたが、ねこにゃー達は戦車道の素人だと知った嵐ちゃんは呆然(笑)。
さあ、一体大洗女子・戦車道チームは如何なってしまうのか!?

と言う訳で、次回も決勝戦に向けての準備回となります。
其れでは、次回をお楽しみに。

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