戦車道にのめり込む母に付き合わされてるけど、もう私は限界かもしれない   作:瀬戸の住人

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遅くなりました。
前回投稿から約2か月程の御無沙汰になります。

7月以降、何があったのかと言いますと。
体調不良で執筆を1か月程休む事にする→其の間、出来なかった身辺の整理や溜まっていた用事を済ませる→落ち着いた後でパソコンをデスクトップからノートへ買い替えた→ノートパソコンを使い始めたらOneDriveが勝手に同期した→1週間掛けて同期を解除する方法を調べてから同期を解除したらOutlook2021が死んだ→購入先の家電量販店へパソコンを持ち込んだら担当者がOutlookのデータを2つ繋げる様な少々奇妙な方法でOutlook2021を修復してくれた→約1週間後、今度は電源を入れたら「BIOS更新画面」が飛び出す有様(これはESCキーを押して回避)→現在。
此れに加えて、Office2021は2026年10月でサポート終了なのでOutlookとWordが使えなくなる…もう次はWindowsを買いたく無くなりますなあ……
今、Microsoftは勿論の事、Intelも最新CPU(13と14世代)の欠陥問題でアレな事になっているので、皆様もパソコンの買い替えには気を付けて下さいませ(こっちのCPUはIntelの12世代の為、何とかなっている模様)。

其れでは、久しぶりの本作をどうぞ。


第86話「決勝戦・前日です!!」

 

 

 

斯くして、決勝戦前日の土曜日。

 

此処はアクアワールド・茨城県大洗水族館内に設置された“生け花展示会場”。

 

其処に、私・原園 嵐は澤 梓と一緒にやって来ていた。

 

はい、女性(百合)同士なのにデートです。

 

勿論…梓は世にも幸せな表情を浮かべ乍ら私と腕を組んでいる。

 

 

 

断じて誓うが、私に百合の趣味は無い。

 

 

 

なのに…如何してこうなった!?

 

 

 

確かに私は幼稚園時代から“何故か同性に()()る”と言う現象が続いていたけれど、まさか親友の梓迄がこうなるとは…一体、如何したら良いの!?

 

等と悩みつつ、展示会場の入り口に視線を向けると…目の前にもう一組“見覚えの有る百合カップル”が居たので、私は其のカップルの背の高い方の()()へ声を掛けた。

 

 

 

『あーっ…“ののっち(瑞希)”も優季を連れて来ていたか』

 

 

 

すると“恋人(百合)”の宇津木 優季と腕を組んでいた我が親友兼好敵手(にして、私と梓に百合カップルに仕立て上げた元凶)・野々坂 瑞希は澄まし顔を浮かべ乍ら、こんな事を……

 

 

 

「あら?“連れて来た”んじゃ無くて、こっちもデートよ。()()()の原園 嵐さん?」

 

 

 

『成程…じゃ無くて“モテ女”は止めてよ!』

 

 

 

瑞希からの容赦無いツッコミで頭に来た私は強い口調で反論するが、相手は邪悪な笑みを浮かべると更なるツッコミを入れて来た。

 

 

 

「だって、嵐は普段着がTシャツ・デニムシャツとジーンズで、しかも全部男物だし。しかも皆からは()も含めて“凄く似合ってる”って羨ましがられるし」

 

 

 

すると話を聞いて居た梓が明るい声で「うん。私達のチーム(ウサギさん)や同級生の間でも“嵐や瑞希はそこら辺の男よりもカッコイイし、頼りになる”とか言って憧れている()多いし」と答えた上、優季迄が「私も“ののっち(瑞希)”と付き合ってから“もう男なんて要らない”と思ってるし♪」と迄言い出したから、私は顔を真っ赤にして彼女達の話を聞く破目になった。

 

だが此処で“或る事”に気付いた私は、こう言い返す。

 

 

 

『そう言う“ののっち(瑞希)”こそ、普段着が完全に私と被っているでしょうが!』

 

 

 

すると梓と優季が揃って「「ホントだ!」」と叫ぶ…そう、目の前に居る瑞希もデザインや色こそ違うものの私と同じ“男物のTシャツ・デニムシャツとジーンズ”で決めていたからだが、其れに対して彼女はクスリと笑った後、平然とした声でこう答えた。

 

 

 

「実はね、此のファッションは元々明美さんが好んで着ているから、何時の間にか私も真似していたんだよね♪」

 

 

 

其れに対して、梓が「そうか。言われてみれば明美さんも特別な行事が無い限りはそう言うファッションだし……」と呟くと優季が私に向かって「もしかして~、嵐も明美さんのコーディネイトで男物の服を着ている内に慣れちゃったのかな?」とのんびりした声で問い掛けて来た為、私も……

 

 

 

『ま…まあ、そうなんですけれど』

 

 

 

と白状する破目になった。

 

はい、小さい頃に母からそう言う服を着せられている内、私も“此れが自分の普段着”だと思い続けて、気付いた時には引き返せなくなっていました(滝汗)。

 

其の話を聞いて居る瑞希・梓・優季の3人が微笑んで居るのを見た私は顔を真っ赤にしていると、其処へ1人の少女がやって来て……

 

 

 

「あの…こんにちは」

 

 

 

と挨拶をして来た為、彼女の姿を見た私達は一斉に……

 

 

 

「「『あっ、華恋ちゃん!』」」

 

 

 

と呼びかけた…其処には五十鈴先輩の従妹・華恋ちゃんが何時ものカジュアルなファッションとは全く違い、青と白のシンプルな模様の和服姿で立っていた。

 

其処へ瑞希が「華恋ちゃん、今日は五十鈴先輩と一緒?」と聞くと彼女は「はい、と言うか、今日は華姉ぇや此の生け花展示会の主催者からの頼みで受付の御手伝いをしているんです」と答えたのだが、其の後何やら困り顔でこんな事を……

 

 

 

「其れで、原園さん達…今の御話、凄く興味深いんですけど、皆に聞かれちゃっていますよ」

 

 

 

『えっ…ゲッ!』

 

 

 

華恋ちゃんからのツッコミで驚愕した私が周囲に視線を向けると前方に“あんこうチーム”の先輩方が揃っているのに気付き、思わず私は絶句した。

 

特に西住先輩は私と梓、瑞希と優季と言う“百合カップル”の姿を見て赤面し乍ら「はわわ……」と口走っているし、秋山先輩も呆然とした表情で突っ立っている。

 

そして武部先輩が「“らんらん()”に“ののっち(瑞希)”、本当にモテモテだったんだ……」と絶句する中、麻子先輩は「相手の性別も同じだけどな」とツッコんでいるが、皆私や瑞希に向ける視線が生温か過ぎる。

 

斯くして、私は顔を真っ赤にし乍ら頭を抱える破目になった。

 

 

 

嗚呼…今回も先輩達に誤解されてしまった。

 

 

 

 

 

 

と言う訳で…此の後、先輩達に事情説明をする事で何とか誤解(?)を解いた後、皆で生け花展示会場へ入って行くと……

 

 

 

「わーっ、素敵!」

 

 

 

西住先輩が会場内に飾られた生け花の数々に感動する中、武部先輩も嬉し気な声で「御花の香り♪」と感嘆している。

 

すると秋山先輩も此処では戦車オタクでは無く女の子らしい笑顔で……

 

 

 

「何時も()()()()()()ばかり嗅いでいますからね、私達」

 

 

 

と語った処、瑞希が何を思ったのか、突然真面目な表情でこんな事を……

 

 

 

()()()()()()誕生以来変わる事もなし、閃光と硝煙。鉄の匂いと其の軋み……

 

 

 

其の時、私は瑞希が口走った内容の()()に気付くと即座にツッコミを入れた。

 

 

 

『おーい!“ののっち(瑞希)”さん、アストラギウス銀河に居る“最低野郎(ボ●ムズ)”共の世界から早く帰って来て下さい!』

 

 

 

其のツッコミを聞いた瞬間、瑞希は「ハッ!?」と叫ぶと周囲を見回してから深呼吸して心を落ち着ける。

 

其の姿を見た秋山先輩は呆れ顔で「野々坂殿、まさかガンダムだけで無く“あのむせるロボットアニメ”も御好きなのですか?」と問い掛けた為、私は溜め息を吐いてからこう答えた。

 

 

 

『そうなんですよ。彼女はCATVでTV版を見たのが切っ掛けで“ペール●ンファイルズ”に手を出してから完全にハマっちゃって』

 

 

 

其れに続いて瑞希も「だから私、其の勢いで群馬みなかみタンカーズの後輩達にも布教したから、今では後輩達の中にも“最低野郎”が増えちゃって♪」と答えた為、其れを聞いた梓が驚きの余り、こんな問い掛けをして来た。

 

 

 

「えっ…其のアニメ、私は初めて聞いたけど、まさか雰囲気が戦車道と似ている点があったりするの?」

 

 

 

其れに対して“彼女の問いに心当たりが有る”私・瑞希・秋山先輩は一斉に……

 

 

 

「「『其れは否定しません……』」」

 

 

 

と答えた為、皆が絶句する中、逸早く立ち直って生け花を熱心に見て居た西住先輩が「華さんの御花は……」と語って皆の気持ちを切り替えてくれた時、武部先輩が指を指し乍ら皆へこう呼び掛けた。

 

 

 

「あっ、あれじゃない?」

 

 

 

すると華恋ちゃんも元気な声で「はいっ!此の真ん中に有る花がそうですよ!」と教えてくれたので、其の生け花を眺めた処……

 

 

 

「「『わーっ!』」」

 

 

 

皆が歓声を上げた後、先ず武部先輩が「凄い!」と感嘆し、次いで西住先輩も珍しく興奮気味の声で「戦車に御花が!」と言った為、私も其の生け花をじっくり見た。

 

其れは戦車の形をした花器に優し気且つ力強い色合いをした花を上手に選んで活けた“躍動感の有る美しい作品”だった。

 

だが、其処で突然優季が……

 

 

 

「此れ…砲塔に被弾した戦車が盛大に爆発してる最中なのかな~♪」

 

 

 

“余りに不適切な感想”をカマしてしまった為、直後に私と瑞希が彼女の口を塞いでから……

 

 

 

「『其れ、違うから!』」

 

 

 

と注意した処、梓が問い掛けて来た。

 

 

 

「そうだよね…じゃあ、嵐は如何思う?」

 

 

 

其処で私は、此の生け花を見た時の印象を率直に答えようと思い……

 

 

 

『此れはね、夕日を背に力強く驀進している戦車をイメージしたんだと思う。ほら、使っている御花の色が何と無く太陽を思わせる色合いでしょ』

 

 

 

と述べた処……

 

 

 

「原園さん、流石ですね。仰る通りです」

 

 

 

と聞き覚えの有る声が聞こえて来た為、私達は其の相手へ向けて……

 

 

 

「「「華さん!」」」

 

 

 

「「『五十鈴先輩!』」」

 

 

 

と呼び掛けた処、其の当人・五十鈴 華先輩が見事な和服姿でやって来ていたのだった。

 

そして彼女が何時も以上に落ち着いた声で「皆、来てくれて有難う」と挨拶すると西住先輩が「華さん、此の御花凄く素敵です!」と嬉し気に答えてから、更にこう語る。

 

 

 

「力強くて…でも優しい感じがする。まるで華さんみたい」

 

 

 

其処で、私も頷き乍ら明るい声で『はい。此の御花、“力強さと優しさをバランス良く表現したい”って言う先輩の意志を強く感じました!』と答えた処、五十鈴先輩は微笑み乍らこう答えたのだった。

 

 

 

「此の花は、皆さんが活けさせてくれたんです」

 

 

 

其の一言に西住先輩と私が戸惑い気味の声で「『えっ?』」と問い掛けると、五十鈴先輩の後ろから威厳の有る声が……

 

 

 

「そうなんですよ」

 

 

 

五十鈴先輩の御母様・百合さんだった。

 

更に、彼女の隣に居た女性にも気付いた私が驚愕の声を上げる。

 

 

 

『百合さん…其れに母さん(明美)迄!』

 

 

 

其れに対して、母は百合さんとは対照的に「ヤッホー♪」を能天気な声で答えて来たから、私はつい頭に来て、こう言い返した。

 

 

 

『ヤッホーじゃない、何で五十鈴先輩の御母様と一緒に居るのよ!』

 

 

 

だが、母は表情を真面目な方に切り替えてからハッキリとした声で「嵐、其の前に百合さんの話を聞きなさい」と返した為、私は……

 

 

 

『うっ……』

 

 

 

と、ぐうの音も出なくなってしまった。

 

其れを余所に、百合さんは我が母親(明美)に会釈をしてから、再び話し始めた。

 

 

 

此の娘()が活ける花は纏まってはいるけれど、個性と新しさに欠ける花でした」

 

 

 

だが、此処で百合さんは表情こそ硬いが顔を五十鈴先輩に向けてから、こう言ったのだ。

 

 

 

「こんなに大胆で力強い作品が出来たのは戦車道の御陰かも知れないわね」

 

 

 

「御母様……」

 

 

 

其の時、五十鈴先輩が“戦車道の件で自分を勘当した母が自分を認めてくれた”事に驚きの表情を見せ、一緒に居た従妹の華恋ちゃんも「百合伯母さん…其れって華姉ぇの戦車道の事を認めてくれるって事!?」と驚きの声を上げる中、百合さんは複雑な表情を浮かべ乍らもこう告げたのだった。

 

 

 

「私とは違う…でも、其れが一番大事なのね」

 

 

 

「「『えっ!?』」」

 

 

 

百合さんからの一言に皆が驚く中、彼女は皆に向けてこう語ったのだ。

 

 

 

「実は準決勝が終わった後、偶々明美さんと御会いして“華の勘当”の事について話をした時、明美さんがそう言ってくれたのよ」

 

 

 

そして、当時我が母(明美)が語った言葉を再現したのだった。

 

 

 

“例え、母娘であっても全く同じ道を行く理由は有りませんよ。むしろ親だからこそ「同じ道」を歩ませようとして、子供()が本当に遣りたい事を無視したり、無理を押し付けると取り返しの付かない結果を招いてしまう事の方が多いんです…だから親は子が自分で考えて決めた道を歩むのを見守る位が丁度良いと思うんです。実際、そうした方が親も視野が広がって子に良い影響を与える事も有ります”

 

 

 

『母さん…其れって私との事?』

 

 

 

其の話を聞いた私は“まさか”と思い乍ら問い掛けるが、母は笑顔の儘、何も語らなかった……

 

そんな風に私が“余計な事”を考えていると百合さんは続けてこう語ったのだ。

 

 

 

「其れで漸く目が覚めたわ…そして私が華を勘当した時、華恋が私に言った事の意味も理解出来たの」

 

 

 

其の言葉に“従姉の華を勘当した伯母・百合に対して「勘当返し」”をした華恋ちゃんが「えっ!?」と叫ぶ中、百合さんは話を続けた。

 

 

 

「今にして思えば華恋の言う通り、私も華の事を娘としてでは無く“五十鈴流の後継者”としてしか見ていなかった。其の事に気付いた時“本当に華の成長を願うのなら、私とは違う『何か』を彼女が掴む事を優しく後押しするべきだった”と悟ったのよ」

 

 

 

百合さんからの告白に五十鈴先輩や華恋ちゃん・私達が驚いて居る中、百合さんは最後に薄っすらと微笑むと五十鈴先輩に向けてこう語った。

 

 

 

「華…貴女の新境地ね」

 

 

 

其の言葉に五十鈴先輩は笑顔で「はい!」と答えた。

 

其の姿を見た華恋ちゃんが「華姉ぇ、良かったね!百合伯母さんが認めてくれたよ!華姉ぇと皆で活けた“戦車の花”を!」と声掛けすると五十鈴先輩も微笑み乍ら皆に向かって頷いた後、百合さんが先程とは打って変わった明るい声で話し掛けて来た。

 

 

 

「其れにしても、あの戦車型の花器には驚いたわ」

 

 

 

其れに対して我が母(明美)も「流石の私も、あの発想は無かったわ♪」と話し掛けると五十鈴先輩は「特別に頼んで作って貰ったんです」と答える中、私達の傍に居た華恋ちゃんは薄っすらと涙を浮かべつつ笑顔を見せ乍ら3人の会話を聞いて居た。

 

 

 

 

 

 

そして、此の日の昼下がり。

 

 

 

「さあ、愈々(いよいよ)決勝戦だよ!目標は優勝だからね!」

 

 

 

戦車格納庫の前に集まった大洗女子学園・戦車道チーム全員の前で、角谷 杏生徒会長が気合の入った声を上げると生徒会書記・河嶋 桃が絞り出す様な声で……

 

 

 

「大それた目標なのは分かって居る。だが、我々にはもう後が無い!負ければ……」

 

 

 

と語った処で、角谷会長が「まあ、其れは言う迄も無い事だけど……」と口を挟んだ上で“今日の本題”を皆に告げた。

 

 

 

「今日は何時もと違って此れから“例のインタビュー”が始まるから、西住ちゃんも何か一言考えといてね、ほら♪」

 

 

 

そして角谷会長が戦車格納庫前に集まった人達に視線を向けると、其れに気付いた西住 みほ隊長は其の数の多さに緊張しつつも「あっ…はいっ!」と答えたのだった。

 

 

 

実は此の時、戦車格納庫の前には何時もの戦車道チームの仲間達とは違う人達も集まっていた。

 

彼らは、全国紙の新聞記者や大手テレビ局の取材クルー・そして近年勢力を拡大しつつあるネットニュースの配信会社から来た記者達で、合計40人余り居る。

 

此の記者達は、此れから首都新聞・首都テレビの発案と其の提案を受け入れた日本戦車道連盟の共催で行われる……

 

「第63回戦車道全国高校生大会決勝戦直前・対戦校合同インタビュー」

 

の為に集まったのだ。

 

此のインタビュー…実は先日、大会準決勝第二試合の対プラウダ高校戦の試合中断中、首都テレビが“角谷会長や河嶋が『此の大会で優勝しなければ我が校は廃校になる』と告白した場面を全国に生中継した”事についての謝罪の為に大洗女子学園を訪れた際、今大会決勝戦関連報道の過熱で()()()()()が起きている事を知ったみほが「黒森峰の皆…大丈夫かな?」と嘗ての母校の仲間達を気遣う発言をし、更にチームのエース格・原園 嵐も『私も西住先輩と同じ気持ちです…此の儘だと決勝戦が真面な試合にならない様な気がするし、そんな試合に勝っても意味が有るのかなって思うんです』と語った事が首都新聞と首都テレビの大人達にも響いた事が開催の切っ掛けだった。

 

其処で首都新聞・首都テレビの首脳部が日本戦車道連盟を始めとする関係者達を交えて“今起きている事態を収める為には如何すれば良いのか”を考えた結果、“決勝戦前に試合の独占配信権利を持つ首都新聞・首都テレビ以外のメディアにも対戦校に来て貰って選手からの声を全国の視聴者に届けよう”と言う結論となり、日本戦車道連盟も共催する形で此の合同インタビューが開催される事になったのだった。

 

以上の経緯から、今回のインタビューは不測の事態を避ける為に「1メディアに付き1問1答」形式、事前に主催者側を通じて各対戦校宛に質問状を送り、事前に対戦校側が質問状を熟読した上でインタビュー中に回答を行う(尚、質問内容が常識から考えて不快又は不躾な物で有ると判断されれば突き返す事が出来る)と言う方法で行われる事となった。

 

尚、既に此の時、太平洋上を航行中の学園艦内で実施されていた黒森峰女学園側のインタビューは終わっており、此れから大洗女子学園側のインタビューが始まる事になっている。

 

 

 

 

 

 

「其れでは、此処で大洗女子学園戦車道チーム隊長・西住 みほ選手から、決勝戦への意気込みについて一言御願いします」

 

 

 

こうして始まったインタビューも佳境に入って来た。

 

戦車格納庫内に仮設された大洗女子学園・戦車道チーム側のインタビュー会場内に司会を務める首都新聞社“戦車道担当・専属契約ライター”北條 青葉の声が響くと西住隊長が演壇に上がって発言を始めた。

 

 

 

「明日対戦する黒森峰女学園は、私が居た学校です」

 

 

 

其の言葉を聞いた各メディアの記者の視線が西住隊長に集中する中、彼女は緊張していたが深呼吸をしてから再び語り始める。

 

 

 

「でも、今は此の大洗女子学園が私の大切な母校で…だから、あの……」

 

 

 

其処へ新興ネットニュースからの記者が笑顔で「西住さん、ゆっくりで良いですよ」と告げた処、緊張で言葉が出なくなりかけていた西住隊長はホッとした表情を浮かべ乍ら「有難う御座います」と答えた後、こう締め括った。

 

 

 

「私もチームの皆も一生懸命落ち着いて、冷静に頑張りますので、TVを見ている皆さんも応援を宜しくお願いします!」

 

 

 

発言を終えた後、西住隊長が会場に集まった取材陣から拍手を贈られて演壇を離れた後、司会の北條さんが「其れではもう一方、チームのエース・原園 嵐選手からも一言御願いします!」と告げられた為、思わず私も心の中で『えっ…私も!?』と思い乍ら立ち上がってから演壇に立つ。

 

そして私も“自分が今、決勝戦について思っている事”を語り始めた。

 

 

 

『私も…黒森峰とは去年の中学生大会の決勝戦から色々と因縁が続いて来た間柄なので……』

 

 

 

私の発言に取材陣だけで無く、西住隊長や角谷会長を始めとする仲間達も聞き耳を立てる姿を見た私は、此処で先程の西住隊長と同じく深呼吸をしてから……

 

“一度、黒森峰の連中に向かって言って遣りたかった事”を言って遣ろうと心に決めた。

 

そして……

 

 

 

『明日の決勝戦、チームの皆の為に“黒森峰をボコボコにする”心算で頑張ります!』

 

 

 

「「「おおっ!」」」

 

 

 

私の口から“期待以上の返事(黒森峰をボコボコにする)”が返って来たからだろうか、各メディアの記者達からはどよめきの声が上がる。

 

其の様子を確かめた私は、笑顔で仲間達の方へ顔を向けたのだが……

 

其処で私が見たのは、西住隊長以下チームの全員が驚愕の視線を送っている姿だった。

 

全員“本気で黒森峰をボコボコにする気なの!?”と言いたげな顔をしている…其れに気付いた私は“自分が言った言葉の意味”を思い出すと其の場で固まってしまった。

 

 

 

わ…私、調子に乗ってトンデモ無い事を言っちゃった!?

 

 

 

 

 

 

一方、此の時、黒森峰女学園・戦車道チームメンバー達は先に自分達のインタビューを終えた後、TVで大洗女子学園側のインタビューを見ていたのだが……

 

 

 

「なっ…あの小娘()、隊長や私達に対して何て事を!」

 

 

 

嵐の“黒森峰をボコボコにする”発言を聞いた直後、逸見 エリカ副隊長が椅子から立ち上がるとヒステリックな声で絶叫した。

 

確かに、長い高校戦車道の歴史でも“絶対王者”と迄呼ばれていた黒森峰相手に此処迄過激な発言をした選手は初めてである。

 

だが、其れに対する周囲の反応は…エリカにとって意外な物だった。

 

 

 

「確かにね…でも逸見、此れは此れで面白い事になったじゃない?」

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

「うん。私達・黒森峰相手に“ボコボコにする”なんて言っちゃう()、初めて見たよ♪」

 

 

 

「しかも無名校の一年生で、去年五代(百代)が率いたウチの中等部に中学生大会の決勝戦で負けたチームのエースだった()だからね。此れで明日の決勝戦、私達も本気を出せるわね!」

 

 

 

「先日、西住隊長(まほ)も言ってたでしょ!」

 

 

 

今大会決勝戦、私達は“大洗女子を廃校へ追い込もうとする悪役”だと言われているが、そんな外野からの圧力に屈する程、私達は弱いのか?

 

むしろ、此の試合は“私達、黒森峰は甘く無い”事を全国に示すチャンスだ!

 

明日の決勝戦、勝って“黒森峰女学園復活”の号砲を鳴らす心算で戦おう!

 

 

 

仲間達からの発言に加えて、先日の隊長による激を思い出したエリカは気を取り直すと……

 

 

 

「そうだったわ!此の決勝戦、あの()が言った事を後悔させてやるチャンスよね!」

 

 

 

と叫ぶと……

 

 

 

「逸見、漸く元気が出て来たじゃん!」

 

 

 

「ええ!世間が何と言おうと此処で勝って優勝しなきゃ、黒森峰の一員として示しが付かないわ!」

 

 

 

と、仲間達から更なるエールを貰ったエリカは“何時もの勝気な気持ち”を甦らせてから、皆に向けてこう宣言したのである。

 

 

 

「よしっ、こうなったら私達も“今大会の悪役”らしく、トコトン暴れてやろうじゃない!」

 

 

 

こうして、今迄“大洗女子を廃校に追い込もうとする悪役”扱いされて来た事で不完全燃焼気味だった黒森峰の皆が漸く決勝戦へ向けて闘志を燃やしつつあった頃。

 

黒森峰・学園艦内の戦車道チーム専用戦車格納庫で、決勝戦に備えて整備を済ませた状態の戦車隊の姿を眺めて居た西住 まほ隊長の下に副隊長補佐・五代 百代がやって来ると不安気な声で問い掛けて来た。

 

 

 

「隊長…宜しいのですか?」

 

 

 

其れに対してまほは怪訝な表情を浮かべ乍ら、冷静な声で「如何した?」と答えると、百代が持って来た車輌のリストを渡した上でこう語る。

 

 

 

「決勝戦に投入する戦車隊の編成ですが、バランスが悪過ぎます。せめて重戦車の数を減らして、其の分パンターを増やして欲しかったのですが……」

 

 

 

だが、まほは小さく首を横に振ると「今更、部隊編成を変える余裕は無いぞ?」と答えたが、其れに対して普段なら自分の意見に従う筈の百代が必死の表情を浮かべ乍ら食い下がる。

 

 

 

「ですが、此の編成では機動性の低い重戦車や砲塔を持たない駆逐戦車の数が多過ぎます!此れでは変幻自在の作戦で対戦相手を翻弄して来た大洗を圧倒する事が出来ません!」

 

 

 

此の諫言に対して、まほが僅か乍ら苦い表情を浮かべつつ黙っていると更に百代が畳みかけて来る。

 

 

 

「出来れば、此方は大洗が繰り出す戦車と同じか其れ以上の数のパンターを用意するべきです。パンターなら大洗の戦車に対して火力・装甲だけで無く機動力でも優位に立てますから、パンター隊で大洗の動きを封じる事が出来ます。其の後、残りの重戦車隊で遠距離から大洗の戦車を狙い撃ちすれば此方が勝つ可能性が高まります!」

 

 

 

必死になって“勝つ為には決勝戦の戦車隊編成を変えるべきだ”と述べる百代の話をまほがじっと聞いて居ると、何時も冷静な筈の百代が大声を上げてこう主張した。

 

 

 

「其れに、あの()()()()は何ですか!あれをレストアする位なら、二回戦の継続戦と準決勝で撃破された後、格納庫の片隅で放置されている4輌のパンターを修理した方が戦力アップに繋がります!」

 

 

 

此れに対して、まほは少し俯いてから考えた後、再び百代に向き合うと冷静な声で「そうしたいのは山々だったんだが……」と答えてから、こう告げた。

 

 

 

()()()()()()はPTAからの援助でレストアされた車輌だ。今更其の好意を無下にする事は出来ない」

 

 

 

其の直後、百代は驚愕の表情を浮かべたが、直ぐ冷静さを取り戻した後、落ち着いた声で「其れは…西住師範も御存知なのですか?」と問い掛けた処、まほはこう答えた。

 

 

 

「ああ。実は師範御自身も百代と同じく“余り良くない策”だと考えておられるが、今更方針を撤回するには時間が足りない」

 

 

 

すると百代は悔し気な表情を浮かべた後、小声で「分かりました…其れでは失礼します。無理な事を言って申し訳有りませんでした」と答えてから、肩を落として其の場を立ち去って行く。

 

其の後ろ姿を見たまほは、表情を引き締めると百代が()()()()”と揶揄した超重戦車へ視線を移してから、こう呟いた。

 

 

 

「戦車隊の編成の件、皆には気付かれなかったが、百代だけは誤魔化されなかったか。流石は師範(しほ)が『次世代の黒森峰、そして西住流を背負って立つ事の出来る逸材』と評価するだけの事は有る」

 

 

 

そして彼女は一気に鋭い視線を()()()()に向け乍ら、心の中でこう叫んだ。

 

 

 

「だが、チームの編成が決まった以上、明日の決勝戦は此の戦力でみほに勝つ!」

 

 

 

一方、百代は悔し涙を浮かべつつ戦車格納庫を出て暫く廊下を歩いた後立ち止まり、誰にも聞こえない程の小声でこう呟いた。

 

 

 

「嵐…アンタの隊長さん(西住 みほ)や仲間達が羨ましいわ。きっと大洗女子では()()()()()()()()()()()()で戦車隊の編成が決まるなんて事は無いでしょうから」

 

 

 

(第86話、終わり)

 

 

 

 





此処迄読んで下さり、有難う御座います。
第86話を御送りしました。

先ず、本編は生け花展示会が“ダブル百合デート”となり、ついでに嵐と瑞希の普段着ファッションがバレる(笑)。
一方、華と百合母娘の和解の場面は明美さんも交えて原作よりも更に盛ってみましたが、如何だったでしょうか。
やはり、よくある話ですが例え親子であっても同じ道を歩む必然性は無い訳ですし、原作もそう言う話だった様に思いますので、此の辺をより強調しています。
そして後半では過熱していた決勝戦を巡る報道をクールダウンさせる意図も有り、西住殿や嵐ちゃんの気持ちを汲んだ上で首都テレビ&首都新聞・日本戦車道連盟が各メディア合同による対戦校へのインタビューを実施したのですが…嵐ちゃんがブッ飛んだ発言をした所為でマスコミと黒森峰の選手達が盛り上がる結果に(苦笑)。
しかし、其の裏では決勝戦での黒森峰戦車道チームの戦車の起用を巡って百代がまほ殿に苦言を呈する事態が…展開としては「既に高校生大会決勝戦は始まっている」と言う感じで書いてみましたが、如何でしょうか?

今回、休養をした上でパソコンの買い替えをやったらMicrosoftの所為で大事になり、今も其の余波が続いていますが、取り敢えず執筆は地味に続けて行きますので、どうか宜しくお願いします。
次の関門は2年後のOffice2021サポート終了やな…許さんぞMicrosoft(ポプテピピックのノリで)。

其れでは、次回をお楽しみに。

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