ガールズ&パンツァー 乱れ髪の乙女達   作:長串望

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みほ杏。
杏とまほがガールズトーク()するだけの軽めなお話。
なおみほは出ません。
直接の描写はありませんが、性的な表現がありますのでご注意を。


優しい君が怖すぎて

 電話がかかってくるのは大抵面倒事がある時だ。特に、戦車のフルメンテで戦車道も休み、本業である学業も休みの日曜日の朝にかかってくる電話なんてそうだ。

 寝ぼけ眼をこすりながら枕元の携帯電話を開けば、そこに表示されたのは『被害担当車』の文字。西住流から生まれ出た西住流ではないモンスターチャイルドこと西住みほ、その恋人である角谷杏大洗女子学園生徒会生徒会長の番号だ。

 出たくはない。例えばこれが、戦車の整備で不都合があったからちょっと来てくれとか、そういう戦車道に関わる事なら仕方がない。母からの呼び出しとか、学校の用事とか、そういう致し方がないものでも。だが寄りにも寄って西住みほ案件だ。間違いなく。

 角谷生徒会長とは、先日会った折に連絡先を交換し合っている。妹の恋人でもあるし、数少ない同年齢の友人でもあるし、プライベートでも何度か通話してお喋りもした。しかし、角谷杏は常識人だ。少なくとも休日の朝っぱらから電話をかけてくるような輩ではない。

 今日一日が潰れることを覚悟して電話に出れば、案の定、非常に言いにくそうに相談を切り出された。

『考えてみれば西住姉に相談するのが一番気まずいんだけど、でも他に相手がいなくてさー』

「いいから、早く要点を言ってくれ」

 このままでは電話を切りたくなってしまいそうだ。いや、朝っぱらから電話が鳴り始めた時点で既に電源を切ってやろうかという気持ちではあったけれど。

 大体女子の相談事というのは本当に面倒なのだ。あれは愚痴を言ってすっきりしたりコミュニケーションの一環として行っているのであって、問題解決を前提としたものではないからだ。子供の頃の私もそうだった気はするし、私自身自分が一切の責任を負わなくていいならそういう会話もいいものだ。しかし何せ私も西住流の子。戦車戦では問題を解決しないまま、だよねー、そうだよねー、うんわかるー、という純度80%以上の共感素子によって構成される会話で事態が好転する事はない。問題の要点をはっきりさせ、適切な解決方法を模索する、そういった教育を受けてきたし、そういう癖が染み付いている。何より、共感しようのないドライモンスターが家庭内に存在してしかもそいつが常に自分の後をついてくるような環境下に於いて、相談が必要そうな問題が発生する事は、私にとって即ち相談したいけど誰にも相談できない上に可及的速やかにどうにかしなければならない爆弾処理案件でしかなかったからな。

 角谷杏という女は、問題解決という一点に於いては私と同じだと思っていた。誰かに相談することなく、問題を速やかに解決に導く頭脳と決断力、そしてどうしようもなくどうしようもない性分の持ち主だと。

 その角谷生徒会長が誰かに相談するという事は私には想像できなかったし、それはつまり、もしかすると、これは問題解決を望む類のものではなく、いわゆる女子的な、女子力的な、女子トーク的なものなのではないかと私の中で急に不安がもたげてきた。

 私は余り口が回るほうではないが、会話が嫌いなわけではない。ただ、普段戦車漬けのせいか、余り話題の持ち合わせがない。必然的に黒森峰での会話は事務的なものか、ガールズ&パンツァートークに成りかねない。純粋なガールズトークなど私には余りにも未知な領域なのだ。

 不安と面倒臭さを感じつつ、しかし友人から恋人との関係で相談が、などという非常に女子高生らしいガールズトークを振られて、私の心は高揚してもいた。戦車尽くしの鋼色の青春の中で、この桃色トークはすっごく爽やかな存在だ。問題はその恋人が私の実の妹であり、その妹というのが脳器質の致命的な一点だけ神様が二日酔いの頭で作り上げてしまったような不気味の谷の体現者で、賞状の一つでもやりたくなるほど人間社会に溶け込むのが上手いコズミックホラー界隈からやってきたモンスターだということだ。

 ガールズトークという字面に対する高揚がモンスターヤングシスターへの不安からどんどん冷めていくのも気にせず、角谷隊長はついに切り出してきた。

『昨夜さー、西住ちゃんとお泊り会だったんだけど。なんていうか。言いづらいんだけど、その。恋人同士さ、こう、一夜を明かしたというか』

「すまない角谷会長。察しはしたが気付かなかった振りをしたい気分だ」

『つまりエッチしたんだけどさ』

「開き直るな」

 想像していたよりかなり生々しいのがきた。もうちょっとこう、西住みほと他の人間とのずれを浮き彫りにするようなサイコホラーじみた相談がくるかと思ったら、思いの外初々しいカップルみたいな相談がきた。いや実際そうなのだが。そうなのだが。

 いくらあの最先端技術をフルにつぎ込んだガイノイドだけどソフト面の開発は心理学者がトチ狂って失敗しましたみたいな妹とはいえ、実の、血のつながった妹のそういう生々しい話題は聞きたくなかった。

 何やってんだお前ら。

 廃校の危機は免れたとはいえ露出も増えて大事な時期だろうが。そりゃ一大事を力を合わせて乗り越えて、胸に抱えた恋心の告白も済ませて、となれば盛り上がってそういう気分になったりするのかもしれないが、どうなんだ女子高生。不純異性交遊、じゃないな、不純同性交友を生徒会長が率先してやってしまうのはどうなんだ。とんだスキャンダルじゃないか。

 しかし責めることもできない。やっとあの、両親が揃って育て方を間違えたんじゃないかと俯いてしまうような出来の妹が、そういう人間の暖かな営みに至ったのかと思うと感無量でもある。それに私もエリカとしてるし、それも割と頻繁にしてるしって言うかさせてるし、責められんな。ああ、責められんとも。

『それで、そのエッチの内容がさ。私もこう言うの初めてだから普通かどうかわかんないんだけど、やっぱり普通じゃないんじゃないかなーと思ってさ。私も目立つからそういう本とか手に入れるのも大変だし、西住ちゃんのこと相談できるの西住姉だけだし、ごめんね』

「いや、いい。それで?」

 普通ではない、ときた。こういうものは秘めるものだから、何が普通で何が普通じゃないというのは余り一概には言えないけれど、何せ相手はみほだ。小学校低学年の時には近所の山の昆虫類を粗方解体し終えていた猛者だ。小学校高学年の時には小動物のバラバラ死体が幾つも発見されて集団下校まで引き起こした件の真犯人であるみほだ。それ以降鳴りを潜めているが、単に戦車で戦車を叩きのめすほうが面白くなっただけだと私は信じている。

『私さ、西住ちゃんがちょっとアレだし、あの包帯ぐるぐる巻きの熊、ボコだっけ? あれ可愛がってるのも知ってるし、ちゃんと準備はしておいたんだよね』

「準備?」

『救急箱』

「お前は天使か何かか」

 身を守る術とかじゃなくて受け入れた後の処置じゃないか。何で暴力を受け入れる方向性で準備しているんだお前は。捨身品か。お前が救おうとしてるのは飢えて困った虎じゃなくて、人間社会に潜伏寄生している地球外生命体だぞ。

『でもそういうのじゃなくってさ。なんていうかもっと酷くて、上手くいえないんだけど…………ねちっこいっていうか』

「ねちっこい?」

 割とドライなところのあるみほに余り似つかわしくない言葉だ。しかし角谷会長には随分執着していたし、興味ないものは記憶にも残らないが、一度気に入ったものはどこまでも執着するタイプか。

「よくわからないな。詳しく頼む」

『う、うん。えーっと。最初から説明しよっか。まず、お風呂入れられた』

「入れられた、というと」

『うん、西住ちゃんと二人で。狭いし一人でいいって言ったんだけど、なんか凄い迫られて』

「風呂場で早速何かされたのか」

『そういう、エッチなことはなかったんだけど、逆になかったのが怖いって言うか…………全身恐ろしく丁寧に磨かれてさ。私の部屋のお風呂なのに私の見覚えのない高そうなシャンプーとか使われて。私の方はこう、西住ちゃんの裸もまあ皆で風呂入ったりするときに見慣れちゃいるとはいえ、シチュエーションがシチュエーションなだけにちょっと意識してたんだよね。でも西住ちゃん完全に作業員の目付でさ。戦車を徹底的に磨き上げたときみたいな満足そうな顔してた』

「ああ……すごくわかる。みほはそういうところあるな。普段割とずぼらなのに、一度始めると徹底的なんだよな」

『私も自分の体が貧相なのは自覚してるけど、胸とかあそこまで表情一つ変えずに丁寧に洗われると、恥ずかしいとか以上に完全に物扱いされてる状況に怖くなったね』

「まあ、普通の恋人の対応ではないな」

 捨て猫を拾ってきて洗ってやるヤンキーの方がまだ感情豊かかもしれない。そこには心温まるドラマを感じるが、みほの洗浄光景にはサスペンスホラーしか感じない。

『で、お風呂上がってパジャマに着替えた後も怖くて』

「今度はなんだ」

『これからするんだなーて意識しちゃうと何だか凄くどきどきしてきて、我ながら初心だなーとか思いながら、でも西住ちゃんと初めてとか期待もしながらベッドに向かったらさ』

「思いの外純真すぎて辛くなってきた」

『西住ちゃんメモ取り出して』

「メモ?」

『なんか一通りチェックしたかと思ったら、お泊りセットの中から厚手のタオル取り出してベッドに敷き始めて、私のことその上に寝かせたと思ったら、辛くない様にとか言って腰の下に枕敷いてくれるし、湯冷めしないように暖房強めに入れてくれるし』

「気持ち悪いくらい親切設計」

『それで、今度はお泊りセットの中からいろんな道具取り出し始めて、私ああいうの見るの初めてで驚いたよ』

 道具。一体何を取り出したというのか。即座に思い起こされたのが手錠だの首輪だの縄だのといった方向である私をどうか責めないでほしい。私は単に妹が怖いだけなのだ。別に私の部屋にそういうものが置いてあるわけではない。私が戦車道で汗をかいたあとでも決して皆とは風呂に入らず、エリカ以外の人前で肌を晒さない理由など気にしないでいい。首筋の絆創膏は咽頭マイクが擦れただけでそういうのではないのだから。

『フィンガーコムとか、えーっと、デンタルダム? とかそう言う名前の奴。あとぬるぬるしてあったかい、ローションとか言うの』

 ごめんなさい私が汚れていました。

 要するに、指用のコンドームと、その、口でしてあげるときに使うためのラテックスの膜だ。二人の年齢で性病を心配するほど大洗の風紀は乱れてはいないと思うが、戦車道をやっていれば指先が荒れるのはいつものことだし、手指や口内は雑菌が多い。大事なところに触れるのだ、感染症予防のためにもそういったアイテムを使用することは大事だ。ローションも、慣れていない身体を優しくほぐしてあげられることだろう。

 だが。

『どういうものか一つ一つ説明してくれたんだけどさ、ああ、私のこと気遣ってくれてるんだなってちょっと感動もしたけどさ。余りに準備が良すぎて計画犯じみた怖さを感じたよね』

 それだ。

 どれだけ前から用意していたんだそれらは。というか何処で仕入れてきた。薬局で気軽に買えるようなものじゃないだろうそれ。私だって色々仕入れるのは苦労したんだぞ。人目も気にしなきゃいけないし。

『で、まあ、呆れはしたけど、西住ちゃんが、じゃあ、しましょっかって、いつもと全然違う、戦車戦に勝ったときみたいなもの凄い目を私に向けるもんだから、私もああついに始まるんだなって、ちょっと怖かったけど、どきどきもしてさ』

「何だか私まで恥ずかしくなってきた」

『そこからがさー、そこからがほんと問題でさ』

 今までのは全然問題の内ではなかったらしい。菩薩かこいつ。

 非常に恥らいながら、ぽつりぽつりと話してくれる角谷会長。しかし角谷会長のロリータボイスでこういう話題を口にされると犯罪的な気分になってくるな。しかも相手はナチュラルボーンサイコガールミーツパンツァー西住みほだ。並べると余計犯罪的だ。性犯罪って言うか、殺人と死体損壊的な意味で。

『私も恥ずかしながらどうしたらいいのか全然分からなくて、西住ちゃんにされるがままだったんだけどさ、パジャマ脱がされて、西住ちゃんもパジャマ脱いで、それからがもうねちっこくて……優しいって言うか』

「優しい?」

『うん。何処触るにもちゃんと声かけてくれて、最初はそれこそマッサージでもされてるんじゃないかってくらい丁寧に柔らかく触ってきてさ、痛くないですか、気持ちいいですかって何度も聞いてくれるんだよね。それで私の体が慣れてくるのに合わせて、その、際どい所も触ってくれるようになるんだけど、それがまた丁寧で優しくて、物凄く時間かけるんだよね。私も年頃だし、自分ですることもあったけどさ、そういうときの感覚と全然違うんだよね。とろ火でとろとろじわじわ温められる感じ。何時もしてるときよりずっと弱い刺激が、何時までも続いて、積み重なって、どんどんたまっていく感じなんだ。

 もう、本当に硝子細工でも扱ってるみたいって言うか…………工場の最終チェックラインで徹底的に調べられてるみたいって言うか』

 それは恋人との営みに対して相応しい表現なのだろうか。しかし分からないでもない。みほは内心がどうであれ、つまり嫌いなものでも愛おしいものでも、作業自体は手先の精密性を損なわない。それが恋人への執着と組み合わされば、それはなるほど、ねちっこいと言われる訳だ。

『しかもさー、私が咄嗟に、いや、とか、だめ、とか言うとさ、本当に止めちゃうんだよね。それでにこにこしながら軽いキスとかしかしてくれないんだ。で、恥を忍んでもっとして欲しいって言うとさ、何をして欲しいのか何処を触って欲しいのかって言わせてくるんだよ。でも私ももう堪えきれないからさ、もう死にそうなくらい恥ずかしい思いで言ったら、よく出来ましたと言わんばかりに徹底的に責められて、今度こそ死ぬかって位』

 ああ、うん、多分それ苛めて楽しんでるのも半分位あるけど、やりすぎて嫌われたらどうしようというのがあるはずだ。考えてみたらみほもこういうことは初めての筈だからな。何らかの手段で情報は集めて事前に予習はしているだろうけれど、実際に角谷会長とするのは初めて。みほは初めてのことに弱いのだ。手本がなければみほはどうしたらいいかわからない。だから凄く慎重になる。そのときのみほも多分、笑顔の裏はかなり必死だったことだろう。

 ということを伝えてみたら、なんだか呻き声というか、声にならない叫びというか、そういう形容しがたい声が聞こえてきた。悶絶してるのだろう。多分。

『西住ちゃん可愛いところあるなー、もう! でも確かに、そうかも。何処が気持ちいいか徹底的に調べ上げられて、私が悦ぶようにずっとしてくるもん。多分私の身体で西住ちゃんの指と唇が触れてないところはないんじゃないかってくらい』

 そうだろうな。解剖されていないのが不思議な位だ。中身がどうなっているだろうかと気になって腹を開く位はしかねないと常々思っている。そこまではしないとしても首を絞める位のプレイは相談されるんじゃないかと警戒していたしな。

『首? あー、首も触られた。人間って首だけでもあんなになるんだねー』

 何それ凄い気になる。だがあんまり生々しいところを聞くと私のメンタルはそろそろ折れそうだ。戦車の装甲が硬いのは中身が脆いからなんだぞ。私のメンタルは絹ごし豆腐以下と思っていただこう。

「それで、なんだ。そういうねちっこいプレイがつらいという相談だったか?」

『あー、いや。ねちっこいはねちっこいし、実際気付いたら気を失ってたんだけどさ。痛いことは何一つしないし、姿勢が辛くないように疲れないようにしてくれるし、目が覚めたら全身綺麗に整えられてるし朝御飯までできてるし、思ったほど疲れも残ってないし、プレイ自体はいいんだけどさ』

「だけど?」

『あんなに優しくされると、勘違いしそうで』

「ああ……」

 ああ、そうだった。問題があるのは生まれてくる時代と場所と種族を間違えた我が妹だけでなく、この小さな生徒会長殿もだったか。みほの日頃の行いのせいという自業自得もあるが、角谷会長もとことんみほからの好意を信じない。信じ切れない。みほは本当に、驚くことに本心から角谷会長に恋して恋焦がれて焼け付きそうになっているようだが、角谷会長のほうではあくまでも弱みを握られた上でペットとして愛玩されていると信じているのだ。どれだけ言葉を重ねても、どれだけ身体を重ねても、こころだけが重ならない。

 学園艦と言う巨大な構造体に、大洗女子学園という無数の青春と希望、そういったものをあの小さな背中に背負い、大人達にひとり立ち向かい、誰にも弱音を吐かずやってきた。それは角谷会長の芯の強さでもあり、そして他人を信じられない、というよりは、自分が愛される筈がないという呪いにも似た信仰のせいでもある。

 私には、母の期待を思うたびに心が塞ぎ、西住流を満足に背負うことも恐ろしくて、たった一人の妹の個性さえも冗談交じりにしか向き合えないような私には、角谷会長の過去に何があったのか、何がなかったのか、何にもなかったのか、それさえも分からない私には、何も言えはしない。言えはしないけれど、応援はしてやりたい。

 何とも噛み合えないと知っている歯車であるみほと、誰とも噛み合っちゃいけないと信じている歯車である角谷会長。ぎちぎちと音を立ててがたがたと震えながらやっとこ回るとも回らないこの歯車の、潤滑油に私はなってやりたい。

 それは実の妹であるみほに対する私のささやかな姉としての思いであるのかもしれないし、数少ない友人であるところの角谷会長に対する友情なのかもしれない。また或いは、自分という至らぬところの多い駄目な女に、せめてもの箔をつけたいというその程度のことなのかもしれない。

「私には」

『んー?』

「私にはお前達はお似合いの恋人に見えるよ」

『そーかな』

「そうだ。そしてきっと、もっといい恋人になれる」

『そうかな。そうだといいな。そうなれたら、きっと素敵だね』

 夢見るような、諦めたような、悟ったようなそんな声。今はそんなものだろう。だけど、それでも、いつかきっと、ああ、そんなことで悩んだ頃もあったねと笑い合えるような、そんな光景を目に出来たらと思う。

 なんでもないような、なんでもない、中身のない雑談を少し続けて、角谷会長はありがとうと残して通話を切った。

 私は暫く携帯電話を見つめて、電話帳を開いた。『被害担当車』と表示されたページを探し当て、表示名を編集する。慣れない操作をぽちぽちとこなして、なんとか名前を変更し、保存する。表示される名前はこうだ。『未来の義妹』。そうなればいい。そうなったら、きっと素敵だ。

「とはいえ…………」

 相談事と構えたが、すっかり惚気られてしまったようなものだ。

 私は携帯電話を操作して、電話帳の一番上にある番号に電話をかけた。

『もしもし』

「ああ、エリカ。今大丈夫か」

『隊長? 今日は一日休むと――』

「寂しい。構って」

『――すぐ行きます』

 通話を切って、私はすぐに起き上がる。身支度を整えて、出迎える準備をしなくては。私の恋人(いぬ)は、きっと10分とかけずに走ってやってくることだろう。私は鼻歌交じりに着替え始めたのだった。

 

 

 

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