夢を見た。
痛みを伴う夢だったと思う。思うというのは、その辺り、はっきりしないからだ。
私は昔からはっきりとした鮮明な夢を見ない人種だった。断片的な記憶と、混ざり合い、溶け合った奇妙な色彩と感覚ばかりが思い出される。或いは目覚めた端からほろほろと崩れて行ってしまって、意識がしっかりする頃には覚えていられないだけなのかもしれないが、主観的には同じことだ。
ただ、推察は出来た。
立ち上がってカーテンを開ければ、ざあざあと、ざあざあと、雨が降っていた。車軸のように雨が降っていた。ざあざあと、ざあざあと。
雨の日。痛みを伴う夢。それは私にとって一つの解しか有り得なかった。
また私はあの日の夢を見たのだろう。黒森峰の何もかもを変えてしまった、あの日の、あの事件の夢。西住みほが英雄になり損ね、西住まほが支配者として君臨し、そしてこの私が、逸見エリカがその渦中で振り回される原因となった日の、夢。
夢の内容は思い出せなかったが、目を瞑り雨音に耳を傾ければ、あの日の事はいくらでも鮮烈に思い出せた。尤も、鮮烈ではあるが鮮明にではない。きっとその記憶は大いに偏向し、脚色されてしまっている。何しろあの時の私は、冷静に周囲を見る余裕などまるでなかったのだから。
私が乗っていた戦車は、頼れる無限軌道も空回りにからから回り、力なくその重たい身体をずるりずるずる滑らせて、呆気なく川へと落ちたものだ。私達は誰一人として正しく状況を理解できていなかった。観客からは自在に走り回るように見える戦車の視界は、恐ろしく狭い。そんな狭い視界が急にあらぬ方向を向き、そしてがたがたぐらぐらっと大きな地震でも起きたかのように振り回され、気付けば激しい水音の只中に。あの時の奇妙なほどに落ち着いた沈黙は印象深かった。人間というものは混乱の極致に陥ると、思考が停止するようだった。
誰かが、落ちた、と呟いた。落ちた? と誰かが聞き返し、落ちた、落ちた、と誰ともなく呟く。そして叫び声が上がった。川に落ちた!
厚く守られた車内は浸水こそしていなかったが、しかし外を覗けばどちらを見ても黒く濁った水また水。強い雨のせいか、それともどっぷりと川に使っているためか、無線は先程からざりざりと耳障りな音を立てるばかり。誰かが動けばその動きにさえ戦車は不安定に揺れてパニックを呼び、パニックを起こして動き回ればより戦車を揺らし、それがまたパニックを煽る。完全な悪循環だった。
戦車道に用いている戦車は、レギュレーション上、特殊なカーボン材を始めとした安全対策が厳重に施されている。大きな破損もしていない現状、浸水する確率は低かった。だがゼロではなかったし、そもそも大雨の中川に落ちるなんて経験、私たちの誰一人として持ち合わせてはいなかった。落ち着いて待っていれば、試合中か、それとも試合終了後にかはわからないが、回収に来てくれるはずだと誰もが知識としては知っていた。しかしそれが、それらの知識が、鋼鉄の棺桶の狭苦しい腹の中にぎゅう詰めにされて、地に足のつかない揺れの中、このまま沈められるのではないかというような雨音の中に取り残された小娘どもにどれだけの助けとなっただろうか。
窒息するのではないかという息苦しさに耐えきれず、私は咄嗟に乗降ハッチに手を伸ばしたが、仲間たちに取り押さえられた。もしかすると私たちはとうに水の中にすっかり沈み込んでいるのかもしれない、もしハッチから浸水したら今度こそ終わりだ、そんな恐怖が全員を支配していた。外に出たい。しかしハッチを開けたら死ぬかもしれない。真綿で締め付けられるような恐怖と狂気が私たちをじわりじわりと殺そうとしていた。
過呼吸を起こし、息苦しくなりながらそれでも溺れるような気持ちで必死に呼吸を続けようとする娘。それを押さえつけ、必死の形相で鼻と口元を手で覆ってやり、そうすることで自分自身の動揺も抑えこもうとする娘。通じない無線機にひたすら助けてと怒鳴り続ける娘。そうして、そうして私は、車長席で完全に脱力していた。糸の切れたマリオネットのようにくったりと体を投げ出し、まさしく魂消ていた。
頭の中を色んな事が駆け巡った。フラッグ車は無事だろうか。私達の抜けた穴は塞げただろうか。作戦を駄目にしてしまっただろうか。隊長の評価に傷をつけやしないだろうか。それにしても喉が渇いた。でもトイレにも行きたい。ああ、馴染のノンコールのビールが飲みたい。今なら
このまま死ぬのだろうか。
思考の一瞬の隙を突くように、冷たい隙間風のように死が感じられた。
温く呆けた脳に、冷たい刃がゆっくり差し込まれてきたようだった。
死ぬのか。
ここで死ぬのか。
これが、こんなものが、鉄の箱に押し込められて、水に沈んで溺れ死ぬなんて言うのが、私の死だというのか。
私がギロチンの刃を見上げた死刑囚のように絶叫を上げなかったのは、私が堪えたからではなく、鋼鉄の棺桶に響いた異音に驚いて、飲み込んでしまったからだった。
最初、それは何かがぶつかったのかと思った。ごん、と鈍い音がして、戦車は少し揺れた。みな一様に黙り込み、音のした方に真っ直ぐ視線が刺さっていた。
異音はすぐに連続した。こん、こん、こん、と軽い音が、ゆっくりと移動していた。その音は、雨音に隠れながらも、しかし聞き覚えのある音だった。爪先と靴底に鋼板を仕込んだ安全靴が、戦車の上を歩く音だった。体重の軽そうな足音を、私たちは亡霊でも見つけたような気分で視線で追った。
足音はゆっくりと、しかし不安定な車上の揺れを思わせない着実な足取りで、やがてハッチの傍で止まった。ごんごん、と短く連続して、ハッチを叩く音がした。誰も反応できなかった。ただただ戦々恐々としてハッチを見上げ、息を潜めるばかりだった。ああ、でも、連中はマシな方だったろう。何せ私は車長席にいたのだ。真上から響く音に、私は息をのんで見上げることしかできなかった。
このまま窒息死するのではないかと思う程の時間を、実際にはきっと十数秒程度の間をおいて、外からゆっくりとハッチが開かれた。
「……大丈夫?」
ひょっこりと顔を覗かせ、ぐっしょりと濡れながらも、安心させるように柔らかな笑みを見せる顔に、仲間たちは一瞬呆然とし、そしてすぐに歓声を上げた。良かった。助かった。もうだめかと思った。そして、ありがとうございます、副隊長、と。
私は一人、目を見開いたまま、見下ろしてくるその笑顔を見上げることしかできなかった。仲間たちの歓声さえもどこか遠かった。安心して然るべきの、ほっと胸をなでおろすべきの、感謝の余りに涙を流すべきの状況にありながら、私は見つけてしまった真実の欠片に殺されそうになっていた。
私は副隊長を、西住みほを、少し頼りないが、流石は西住流、隊長の妹、戦術も良く、指揮もうまく、タフでガッツのある奴だと密かに認めていた。しかし今やそれらは何の意味もない陳腐なキーワードに成り果てていた。
私たちを見下ろし、順繰りに視線を向けた、あの数瞬。私はあの目を見てしまった。最も近くで、真正面から見てしまったのだ。あれは、怪我がないかと見回して、安心したような、そんな笑顔でも瞳でもなかった。
あの目は見ていた。私達を見ていた。医師が患者を診察するように。いや、実った果実を見比べて収穫の時期を見計らうように。いや、いや、或いは、廃材置き場で使える鉄屑がないかと探すような、そんな目だった。今ならよくわかる。あれは怪我をしていなくてよかったなんて、そんな生易しいものではなかった。寧ろ、残念、怪我をしていればもっともっと脚光を浴びるための小道具になったのに、そんな目だった。
隊長とよく似た顔が、隊長とよく似た目が、隊長とよく似た妹が、人間とは似ても似つかぬ悍ましい輝きを秘めて、人間とは思いたくない程の濃密な空気を伴って、こちらを覗き込んでいる。柔らかな声で、心をくすぐり警戒を奪い、緊張を壊し、神経に囁いて精神を奪わんと何事かを述べている。もうだいじょうぶ、あんしんして、すぐにでようね、みんなもまっているから。何を言っているのかわからない。お前は何を言っているのだ。隊長とよく似た顔を被って、隊長とよく似た声を作って、隊長とよく似た妹が、人間の真似をした人間が、優しい言葉を吐く。それは余りにも冒涜的な光景で、唾棄すべき情景で、憤怒すべき悪趣味だった。しかし私は、そっとさし延ばされた彼女の手を黙って取る他になかった。
だって、どうしたらよかったのだ。
私は。あの時私は、怖かったのだ。
沈みゆく戦車でも、荒れ狂う川でも、降りしきる雨でもなく、ただただ西住みほが怖かった。ありとあらゆる抵抗も反抗も、その恐怖の前に完膚なきまでに圧し折られていた。
その後、どうやって戦車を出て安全な場所まで運ばれたのか、私はとんと覚えていない。気が付いた時には、大丈夫かと繰り返す隊長に頬を軽く叩かれながら、ストーブの傍で呆然と座り込んでいる自分を発見した。
隊長がぽつぽつと、話しかけるでもなく呟くように教えてくれたところによれば、私たちは負けたらしかった。本来ならば地団太を踏むほどに悔しい事の筈なのに、その時の私はただぼんやりとそれを聞いていることしかできなかった。学園艦へと向かう戦車の列は、毎年華々しく凱旋を繰り広げていたのと同じ鉄の色でありながら、まるで葬列だった。生徒たちはみな一様に口数が少なく、悔しいというより、どうしたらよいのかわからないといった、曖昧な不安の中にある様だった。予定外の事態に弱い黒森峰らしい姿ではあったかもしれなかった。
私たちが責められることはなかった。敗因となった副隊長の独断専行も、救助活動を否定することもできず、責めるに責められぬといった煮え切らない具合だった。悔しくはあるが、しかし誰のせいにもできない、そんな空気だった。行き場のない不安と鬱憤が、しかし晴らすあてもなく立ち込めていた。
生徒たちはそのような具合だったが、外から見ているだけの大人たちは、好き勝手言ってくれた。一番目立ったのは、西住流の師範であり、西住隊長のご母堂でもある、西住しほさんが学園に足を運び、副隊長を車長たちの前で手酷く叱責したことか。
それまで、何故みんながこんなにも暗くなって、自分の事に何一つ触れないのだろうと不思議そうにしていた副隊長は、それでようやく自分の仕出かしたことの重大さに気づき、自責の念から部屋に籠るようになってしまった……などということはなかった。酷く申し訳なさそうな顔を作ってはいたが、一度あの本性を垣間見てしまった私には、副隊長の内心が透けて見えるようだった。あれは、はじめ何を言われているのかと困惑し、次いで自分が叱責されていることを理解して反射的に申し訳なさそうな顔を作り、そして自分の思い通りにいかない展開に腹を立ててすっかり拗ねてしまったのだ。
わざわざ吊し上げて叱責した西住師範も師範だ。あの人は自分の娘を恐れていた。ここできちんと叱りつけておかないと、次はもっと酷い事をする、今回は偶然だったが、味をしめたら今度はマッチポンプを平気でやりかねない、そんな焦りが、陳腐な叱責をさせていた。言葉で叩くたびに、自分の胃の方が痛くなっているのに、よくもまあ頑張れるものだ。西住流を背負う者としての義務か、それとも彼女なりの母親としての思い遣りなのか。
妹が引きこもってしまった間、隊長はあちこちに顔を出しては叱責を受けたり、嫌味を言われたり、逆に励まされたり慰められたり、色々と忙しいご様子だった。私は、私たちは、あの敗退の要因の一つとして、あれ以来腫物でも扱うような態度を取られており、必要がない時は部屋に籠るか、誰もいない屋上や、図書館の隅などに隠れるようになっていた。行き場のない不安に不満に怒りに悔しさ、そういったものが、ふわりふわりと私たちの頭上で分厚い雲となって立ち込めていて、私たち自身のお互いへの思い遣りだとか、少なくとも卑怯な事をして負けたわけではないという自負が、その雲を支えていた。支えてしまっていた。少しずつでもさっさと愚痴を言い合い、荒れに荒れてしまえばすっきりとしたろうに、私たちは私たちの優しさでもって、嵐の種を育て続けたのだ。
堰を切ったのは隊長だった。
副隊長と何か話し合ったという噂だったが、ある日突然、隊長は全てを一度壊してしまうことにしたらしかった。
妹を庇うよき姉は、冷徹な指導者として腑抜けた黒森峰に喝を入れた。それは徹底的な遣り様だった。生徒を集めて演説をぶつ様はまるで役者だった。大げさに手を振り、大きく声を上げ、険しい顔でねめつける。後は些細な扇動と誘導。それで十分だった。黒森峰は指揮を求めていたのだから。右も左もわからぬこの巨大な戦車は、車長を得て途端に息を吹き返した。私達の頭上に立ち込めていた不安の雲は、いまや悪意の雨となって降り注いだ。嵐が来た。
副隊長の救助活動は少なくとも悪い事ではなかったという評価は、一夜にして学園史上最大の悪行としてぶち上げられ、副隊長が今までやってきたことの全ては否定され、彼女が抜けた穴は遠慮なしに踏み荒らされ、誰もがこぞって埋めにかかった。
副隊長が転校した際には、その情報は隊長によって巧妙に伏せられ、十分な時を置いて晒され、黙って逃げ出した負け犬として、すでにその場にはいない元副隊長という名前だけの存在に全ての悪意が向けられた。
みんなは、隊長があの一件に深く責任を感じ、挽回するためにも全霊をもって励んでいるのだと、その姿に強く感銘を受け、崇拝し、応援した。私一人だけがその背中を痛々しく見つめていた。私にはわかったのだ。あの怪物の本性を見てしまった時のように、隊長の本音が今の私の目にははっきりと見て取れた。
あの人は、面倒臭くなったのだ。誰もかれもが鬱屈し、ふさぎ込み、誰のせいでもないさと言葉だけはご立派に、鬱々と悪意を溜め込んでいるのが余りにも面倒臭くなったのだ。面倒臭くなって、そして、その重荷を蹴り上げて自分の背中にまとめて背負い込み、ほら、持ってやったからさっさと行くぞと焚き付けたのだ。
あの人は何時もそうだった。誰かに任せればいい事も、誰かに頼ればいい事も、任せることが頼ることがとてつもなく面倒臭くって、自分で全部抱え込むのだ。自分が全ての悪の元凶だと、自分自身で背負うのだ。
私の事も、あの人は無理矢理背負ってしまった。
孤立していた私を自分の隣においても自然なように、私が野心故に隊長の傍にいようとする女狐だと噂を流し、居場所とすらいえない様な小さな居場所を一つ一つ潰して自分の庇護下に無理矢理引きずり込み、私自身が抱いていた罪悪感や申し訳なささえ、歪めて捻じ曲げて正当化させようとした。
全く。
まったく、本当に、面倒臭い人だと思う。
私のことを心配して、私の為にしてくれたことだ。例えやり方が悪辣であっても、隊長自身が私の事を求めていたにしても、だからと言って全部自分一人の物にして、私が持っている荷物まで奪ってしまって、それで鬱々と自分の罪だの罰だのと暗いことこの上ない。
あの人の扇動能力は本物だ。指揮能力も本物だ。隊員たちを洗脳して、手駒のように自在に操るのもお手の物だ。
だが好いた女ひとり手に入れるためにあれやこれやと理屈をこねて、策を巡らせて、それで結局自分の手で汚してしまっただの歪めてしまっただの、なんともまあ意気地なしなことだ。可愛そうな人だ。可愛い人だ。貴女が自分の為に勝手にしたことかもしれないけれど、でもね、私の方だって勝手に貴女の事が好きだったし、一人隠れて反吐をぶちまけている様なのを見つけて一層好きになってしまうくらいには今更過ぎるのだ。
ああ、そうだ。私は忠実な犬なのだ。可愛くてしょうがない飼い主に、鬱気味で自分が信じられなくてアニマルセラピーに頼りながらそのアニマルにさえ罪悪感を感じてるようなポンコツな飼い主に、ぞっこん飼いならされた犬なのだ。
船舶科の気象予報で、咲夜未明から雨が降り出し、今日一日は強い雨の中だというのは知っていた。戦車道の練習はお休みで、嫌な湿気に眉をしかめながらも、生徒たちは分厚い布団みたいな眠気に身を預けて午後までノンアルコールビールと共にひきこもるに違いない。私も布団から出たくないが、こういう天気の時はぐずりだして、精神的布団に籠ってしまう子がいるのを知っている。だからこうして早めに目をさまし、手早く着替えて身だしなみを整えている。今日も一日疲れることを覚悟して、高カロリーなチョコレート・バーを三本も朝飯代わりに消費して、さっきから携帯電話の前で待ち構えている。
午前六時過ぎに鳴り出す携帯電話を即座に開き、いつものように朝の挨拶。
「おはようございます、隊長」
今日もご機嫌な雨模様に死にたくなって汗だくで震えてるんですか、とは続けない。
『エリカ、たすけて』
泣きじゃくった後の様な掠れた声。道に迷った子供の様な頼りない声。自分で捻じ曲げてしまったと後悔している様な相手にしか、自分の本音を晒せない様な面倒臭い性格をしているから、そんな風に泣くことになるのだ。
でも、まあ、仕方がない。私だって共犯なのだ。私の為に駆けずり回ってくれた隊長が嬉しくて、結局今の今に至るまで、全部知った上で受け入れてますだなんて言えたものではない。そういった所で信じさせるのにまた苦労しそうだし。
「……すぐ行きます」
私は通話を切るなり、部屋を出た。天気は最悪。湿度は地獄。気分はちょっと憂鬱で、向かう先はかなり鬱屈してる。Gott sei Dank.いつも通りだ。平和な一日だ。
私はじっとり重たい空気をかき分けて、朝の静謐な廊下を引き裂くように全力疾走で駆け抜けて行く。朝から準備運動もなしに走るのは、横っ腹が痛くなるけれど、その位はまあ、必要経費と思っておく。或いは当然の対価。だって私もこの面倒な交際を、なんだかんだ楽しんでいるのだ。喜んでいるのだ。嬉しんでいるのだ。憧れの、いや、まああんまり憧れじゃなくなって憐れみ三分に愛玩六分、あと一分はプライスレスの、まあ一応憧れの先輩をかわいがれるのは私だけなのだ。そのうち、これ以上面倒臭くなる前に矯正がいるかもしれないが、それまでは、土曜日の朝に微睡みを楽しむようなだらだらと不健康で不健全なお付き合いをしていきたい。
ただ、やっぱりこれ以上隊長の性癖がエスカレートする前にどこかでブレーキかけた方がいいんじゃないかなとは、最近ちょっと思うようになった。
さて、急ごうか。あの人の世界が重力に負けて潰れてしまわない内に。
雨の午前六時過ぎ。吐息は少しチョコレートの匂いがした。