本日、快晴なり―――――。
心地よく晴れたこの青空に、数発の空砲が木霊する。
開催を報せる軽快な破裂音はこの川神市全体に広がっていった。川神学園の長、川神鉄心は体操服に身を包んだ全校生徒を前に一言を発する。
「それではこれよりー………川神学園体育祭を実施する!!」
その迫力ある一言は地を震わせた。
今日は多くの生徒が待ちに待っていた体育祭。日頃の成果を発揮するべく、またはここで目立つべく多くの学生がこの日に向けて特訓してきた。
が、武士の家柄が多く存在するこの川神学園がそれぐらいでないと盛り上がらない。
まるでこれから戦を始める武士のように多くの学生が大声を上げて応える。
「クラス総合一位を目指して頑張るんじゃぞい」
最後にそういうと鉄心は壇上から降りていく。
川神学園は全国から注目されている学び舎だけあって多くのテレビの取材、そして近くの商店街や県外からの露店も多く囲んでいる。
勿論保護者達なども子の活躍を見守るべくテントの下で活躍を見守っていた。
「さて、俺達Fクラスも優勝目指して頑張ろうぜ!」
「キャップ燃えてるな」
「そりゃ狙うなら優勝だ! 最高の栄誉を奪い取ってこそロマンだろ!」
翔一が目を輝かせる。
だが確かに狙うなら優勝以外にない。他の皆もやる気十分だ。
特に午後にやる予定の競技がそのやる気に拍車をかけている。何せ相手は因縁とも呼べる2-Sなのだから。
『ただいまより体育館にて男子バスケを行います。 出場選手は――――』
「おっ、来た来た! 俺様のダンクを見せてやるぜ!!」
「んじゃ俺らも行くぞ。 女子達、応援ヨロシク!」
「任せてください!」
アナウンスが流れてきた。一番最初の競技はバスケの模様だ。
登録メンバーは岳人、忠勝、翔一、大和、そして育郎となっている。
大和は司令塔としての参加だ。欲を言えば他のメンバーに任せたかったのだが、出場競技がダブってしまうと非情に面倒なことになるためだ。
応援を真与を始めとした女性陣に任せ、大和達はコートに立つ。審判は1-Cの担任、カラカル・ゲイルが務めていた。
「ではこれより、2-F対3-Sの試合を始めマース!」
「3-S……一番の強敵は京極先輩かな」
大和は相手を冷静に分析していた。
相手は京極以外は特に耳にするほどの活躍を聞かない面々だ。しかし一方でいつも和服姿の京極からは想像できないほどのユニフォームの似合いようである。
「いいかみんな! 相手に、特に京極先輩にパスを許すな!」
「ほぅ……皆に“道”を与える、良き言霊だ。 これは本気でお相手しなければ、な」
一方の京極も本気らしい。
よく見てみると他の面々の威圧感も凄いことになっている。
「それでは……始め!」
ゲイルが試合開始を告げるホイッスルを鳴らす。
高い笛の音が体育館に響き渡ると、先攻となる京極がボールを跳ねさせながら軽快な動きで大和と忠勝の間を抜いていく。
「何っ!?」
「ちっ、さすがはSクラス。 運動もお手の物ってか!」
言霊部や明らかに文学系という見た目に騙された大和と忠勝は悔しさに唇を噛む。
しかもイケメン四天王の脅威の身体能力というこの話題性が応援に駆けつけた女子達を沸かせる。
「ふ……古来より続く単純かつ効果的な言霊、それは声援だ」
言霊部として声援の重要さを理解している京極は一気に加速する。
そのままゴールが狙える位置まで駆け込んだ。
だがこれ以上ワンマンショーを行わせるFクラスではない。
「おっと甘ぇ! 俺は風だぜ!」
「っ!」
京極からまさに風のようにボールを奪い取ったのは翔一だ。
彼の身軽さと素早さは川神学園の中でもトップクラスだ。
しかし大分下がらされたためさすがの彼と言えどもここからではゴールは狙えない。
「ヨンパチ!」
「おうよ!」
翔一が渡したボールはヨンパチこと育郎の手の中へ。
ハッキリって身体能力としては並である彼だが、普段女子達の如何わしい写真を撮り続けている彼はフットワークが軽い。
以外にも機敏な動きで京極を抜いた。
「それ以上行かせるな!」
「「「おおぉーっ!」」」
京極の指示に敵方が吼える。
慌てて育郎はその足を止めた。何やら常人とは思えぬ気迫が沸きあがっているからだ。
「な、何!? こんな力噂には聞いていなかった……まさか先輩の言霊か!」
大和の収集したデータと全然違う能力だ。
と、ここで彼が何かに思い当たる。振り返るその先には得意げに微笑む京極が。
彼は言霊部として言葉で相手の動きを封じたり、能力をあげたりすることができる。バスケのルールとして相手の動きを封じることは禁じられている。しかし。
「京極先輩、試合開始前に声援をかけて能力を上げてやがったな……!」
「チッ、まずいぞ直江!」
忠勝の言うとおり、大和にも全く予想外の一手だった。
正直京極の対策さえ出来れば後は各々の能力でその他はどうにでもなると思っていたのだ。その大前提が崩されたことでゴールポストが遠のいてしまう。
「俺様が行く!」
「ガクト! ……よし、お前に任せたぁ!」
突っ込むようにして岳人が手を挙げてきた。ボールを求めている。
彼を信じてヨンパチがボールを床に投げつけるように跳ねさせた。
跳躍したボールは吸い込むように岳人の手に収まる。
「俺様のパワーがあれば……てめぇら何ざ屁でもねぇ!!」
ベンチプレス190キロという人外のパワーを持つ岳人であれば一人や二人、弾き飛ばすのは容易い。
拳での直接攻撃はルール違反だが身体接触による弾き飛ばしはその限りではない。
岳人は持ち前のパワーを生かして敵を弾いていく。
「パワーは確かに素晴らしい。 が、速度はまだまだだな!」
「な!?」
ゴールが見えてきた、というところで何と京極が戻ってきた。
彼は先程奪われたお返しと言わんばかりに岳人の手からボールを掻っ攫う。
そしてまたその軽快な動きで岳人を抜き、大和を抜いていく。
「全員、動きが遅い」
京極はそういい残す。嫌味のようにも聞こえるが、イケメンだからこそ許される特権。
痺れるようなその一言に彼のファンが沸きあがった。
「なんの負けるなー! 大和ー! 頑張れー!!」
「自分達が応援しているぞー!!」
「ファイト! 大和ファイト! キャップ達も」
「F組ガンバ!!」
「頑張ってくださーい!!」
だが応援団ならこちらも極上のメンバーを揃えている。
一子の体操着は見慣れているが、クリスや京、そして千花や真与らの体操着姿もセットになっている。
何とも刺激的なその姿に大和たちのやる気も沸きあがってくる。
「ほう、いい眼をしている。 だが、もう間に合うまい」
「クソッ、高ぇ!」
京極が跳躍した。
ダンクシュート、とまでは行かずともゴールに近づければそれだけシュートを決めやすいことになる。ゴールが目の前にあれば、いれるのは造作もないはず。
育郎も必死に走るが、届かない。
「そこを動くなヨンパチ!!」
「え………ぐぁっ!! 俺を踏み台にぃぃぃいっ!?」
届かないなら、足場を作ればいい。
駆け込んだ翔一が育郎の頭を踏みつけ、その分高く跳んだ。
その高さは京極よりもはるかに高い。
「いっただきぃっ! 大和!」
「なっ……! ふっ、やはり2-Fは面白いな……!」
ボールを奪って見せた翔一はそのまま大和に投げつける。
何とか落とさないように受け取った大和はドリブルしていくが、当然敵が止めに来る。
「ゲンさん!」
「任せろ!」
予測していた大和が忠勝にボールを渡した。
武士娘程ではないとは言え、喧嘩で鍛えられている彼の肉体はまさにエレガンテ・クアットロの名に恥じない動きを見せ付ける。
それでもやはり敵の一人が彼の前に立った。
「島津、決めろ!」
「おう! 男、島津岳人……決めてやるぜ!!」
瞬時に手の空いていた岳人に回す。
岳人もここで決めるつもり満々である。しかし彼の先程の力技に警戒したらしく、何と彼の前に三人もの男が立ち塞がる。
これでは彼と言えでも厳しいかもしれない。
「ぐっふっふ。 幾らお前と言えど我ら三人は突破出来まい!」
「三本の矢も集まれば強くなる。 それに我々は京極の声援により能力アップ!」
「更に女子達の声援で我々のやる気は最高潮! もう誰も止められない!」
絶対的な自信が宿っている。
確かに彼らの言うとおりだ。岳人も苦虫を噛み潰す。あの声援が続く限り、彼らのパワーは無限大だ。
と、ここで大和が「軍師」として機転を働かせる。
「でもあの声援って先輩方ではなく京極先輩“ただ一人”に向けられているものですよね」
「「「…………………………え」」」
大和のその一言が敵を凍りつかせた。
言葉で能力を上げているなら、言葉の力でそれを下げてしまえばいい。
京極のように強力な言霊を操れなくとも、敵を動揺させることくらいは容易だ。狙い通り大和の一言に敵が激しく動揺した。
「もらったぁっ!」
「しまった……! まさかそのような言霊を使うとは……!」
今度は京極はその裏をかがれることになった。
敵の動きが止まったその一瞬に岳人が一気に目の前の三人を抜き去っていく。
力強い足音を響かせて、飛ぶ。
「決める!! ダーンク………」
「させんっ!」
が、それを邪魔する手が一つ。またも京極の手だ。
彼は岳人がダンクシュートを決める直前、真横から手を伸ばし勢いを逸らしたのだ。
ボールはゴールリングに弾かれ、落ちそうになる。
「や、やべぇ!!」
「リバウンドしろ! 一斉攻撃で勝負を決める!!」
確かに京極の言うとおり、ここでリバウンドをされて一斉攻撃をされてしまえば大和達に防ぐ術はない。
先程の大和の凶器とも言える一言から立ち直っている者達が集まってくる。
あれに渡してしまえばその瞬間、勝負が決まる。
だからこそ、ここはこの“男”が決める。
「だから……俺が……ヒーローがいるんだぁっ!!」
頼れる皆のキャップ、風間翔一だった。
彼はあっという間に一人抜き、二人抜き、三人抜き。次々と敵をごぼう抜きにしてゴールの真下に辿り着く。
そして岳人の手から弾かれたボールを。
「それっ!」
優しく、押した。
ボールは翔一の指先から離れ、そしてすっぽりとゴールネットに収まった。
「ゴール! 先制、2-F!」
「「「やったぁぁぁぁぁ!!!」」」
彼らがゴールを決めれば女子達から盛大な歓声が沸く。
特に風間を賞賛する声が後を立たない。目立つこと大好きな翔一は気持ちよさそうに手を振り返す。
まさに皆のヒーローと言った存在だ。
「やっぱり決めるがキャップ、決めないのがガクトだな」
「ああ」
「何だその嫌な括りは! ゲンまで!!」
そんなやり取りが彼らの間で交わされる。
結局その後、この先制点を守りきり2-Fが勝利した。勢いに乗った彼らはそのまま走りこみ、男子バスケの部で見事優勝を飾ったのだった。
「ふー……疲れた疲れた……」
メンバーとして、司令塔として。
大和は走りに走り、指示を飛ばすに飛ばした。そのため蓄積した疲労は生半可なものではない。
と、汗を拭こうとベンチに戻ろうとすると一子とクリス、そして京が待っていた。
「大和、お疲れ様ー! タオルあるわよ」
「おうサンキュ」
「冷たい飲み物もあるぞ。 飲むか?」
「頂くよ」
「疲労回復に私の胸に抱かれてみる?」
「魅力的な提案だがお友達で」
女子三人から様々なサポートを受けていた。
まさにいたせりつくせり、という夢のような状況。そんな状況をやっかむ岳人と育郎が影から見ていたのはまた別の話。
「次は借り物競争ね」
「ああ。 俺はバスケと借り物競争以外では午後の川神サッカーだけ登録してある」
大和の次なる出場種目は借り物競争。
体育祭ではメジャーな競技と言える。脚力も問われるが、何を選べるかは運任せというちょっとしたゲーム要素が取り入れられているのが魅力的だ。
場合によっては脚力がない人でも勝算はある。
「その川神サッカーって何だ? 自分にはよからぬ雰囲気しか分からぬが」
「すまんが俺も詳しいことは知らない。 学長が考案したとか」
「学長かぁ……川神ボール、何て例もあるし過激になりそうだね」
クリス達も午後の川神サッカーに出る予定だ。京の言うとおり戦闘が絡みそうな予感がするので一子、京、そしてクリスといった主戦力は午後の競技に回してある。
因みに川神ボールとは野球に戦闘の要素を織り交ぜた川神学園ならではの過激な野球だ。
「っと俺は借り物競争に行ってくる。 お前らも午後までに怪我するなよ」
「ああ、ベストを尽くして来い!」
クリスの声援を受けて大和は借り物競争のために体育館を飛び出していった。
当然次の種目、借り物競争はグラウンドにて行われる。物、だけではなく人が借り出される場合もある。
大和はどこに何があるのか、予め探るべく色々と見て回ろうとしていた。
最中、応援席で見たことのある軍服姿が。
「やぁ、直江大和君。 久しぶりだな」
「あ、えーと……クリスのお父さんの……」
「フランク・フリードリヒだ」
大和の目に入ったのはドイツ軍の英雄、フランクだった。
予想通りクリスの応援に駆けつけたらしい。彼は一般の応援席に混ざっていた。
「クリスの応援に駆けつけたのだが……何とも激しい体育祭だな」
「ええ、何せ川神ですからね。 武士の血を引く者が多い証拠です」
「武士、侍か………私としては日本にはそんな面影は残っていない、と思っていたが」
さりげなく出した単語にフランクは少々悪態づいてみせる。
やはり彼は、日本に対して失望していた。いや日本だけではなく、会話相手である大和にもうまく隠せて入るようだが所々に棘を感じる。
先日の由紀江の報告どおりクリスや大和を監視している、と言うのは本当らしい。
「では今日を機にその認識を改めて貰えると嬉しいです」
「興味深い。 是非見させてもらう。 無論、君の活躍もな………」
一言呟くと席に戻った。
去り際の彼の視線は、やはり鋭い。彼を監視しているのは確定事項のようだ。
声をかけたのは改めてどんな人物なのか直接見たかったからであろう。
「……………………」
その時から、大和はある「最悪の事態」を想定していた。
あのドイツ軍の中将が生み出す最悪のシナリオを。それに伴い、彼の頭の中ではそれを打ち砕く対策を生み出しつつあった。
が、間もなく借り物競争が始まる。大体ものの確認も出来たし、所定の位置につく。
「では、借り物競争を始める! 審判はこの僕、カラカル・ゲイツが務めます!」
今度の審判はゲイルの弟、ゲイツが務めるようだ。
今日も愛用のノートパソコンを片手に出場している選手のデータを分析しているようだ。
(この借り物競争は生徒会長に井上準、武蔵小杉……そして)
大和はスタート地点で構える中、出場している選手を見つめる。
相手は生徒会長こと虎子、2-S所属で何気にスペックの高いロリコン、1-Sの委員長で『あった』武蔵小杉が出場している。
だがその中でも最も存在感を放っているのは、その真ん中に立つ清楚な女性。
(武士道プラン、最後のクローン……葉桜清楚先輩か……)
顔つき、立ち居振る舞い、そして着込んでいる体操服。どれをとっても完璧に清楚な女性。
それがこの葉桜清楚であった。今日も頭に付けられているヒナゲシの髪留めがステキだ。
しかしクローンにしては彼女の名前は聞いたこともない。とある英雄のクローンらしいが、その正体は九鬼英雄や紋白ですら知らないらしいのだ。
「直江君。 よろしくね」
「はい。 葉桜先輩が借り物競走に出るとは」
「うん。 これなら私も勝ちを狙いにいけると思うし」
「ははっ。 それは借りられた人も幸せですね」
見よこの清楚な会話を。
見るもの、相手にした者の心を浄化していくような清楚さ。まさに葉桜清楚の名に恥じぬ魅力である。
可愛らしい、それでいてどこか美しい。そんな彼女は3-S所属。
「でも勝負である以上
「うん。 モモちゃんの言ったとおり、勝負事には真剣だね。 私も頑張るよ!」
葉桜清楚と川神百代は既に仲良しこよしだった。
と言うよりも彼女が川神学園に転入してきた直後に百代が教室に雪崩れ込み、口説いたのだとか。
るんるん、と鼻歌を歌いながらもやっぱり彼女は清楚に構える。
「では始めるよ! 位置について、よーい……ドーン!!」
ルーが手にしている空砲が、試合開始を告げる。
一斉に走り出す走者。まず真っ先に上手をつけたのは準、そして清楚。
「げぇ! “60歳を超えた女性”!? 枯れ木を持って来いってのかよ!!」
「私のは“ダンボール”だね。 えっと……」
ゲーム性がある、と言ったが紙に書かれているものは全て学長こと鉄心が用意したものだ。
彼らしい、厳しいと言うよりも意地悪な要素が垣間見える。
全く法則性のない指示に困惑する走者達。無論虎子や武蔵小杉も例外ではなかった。
「俺のは……名前に“め”がつく女性か……」
大和は知り合いの女性の中から“め”が含まれている人物をピックアップしていく。
まず頭文字に“め”のついている女性を候補に挙げていく。
と、瞬時に思い浮かんだ女性が一人。
「そうだ! 燕先輩だ! 燕先輩ー!!」
大和が彼方此方を見渡しながら松永燕を探す。
他にもいることにはいるのだが、一緒にゴールして貰う必要性を考えると身体能力の高い彼女が適任だと考えたのだ。
幸い彼女は応援席の近くで納豆の行商をしており、すぐに見つけることが出来た。
「燕先輩! 借り物競争です! 一緒に来てくれますか!」
「おっ、大和クン! 私を真っ先に選んでくれるなんて嬉しいなーっ」
テントを軽く跳躍して飛び越し、彼の目の前に降り立った。
そのまま大和の頭を撫でてみせる。百代とは違った意味のお姉さんキャラに大和は思わずうっとりしてしまいそうになる。
「っといかんいかん! 燕先輩、一緒にゴールしてくれますか!」
「うん、いいよん」
満面の笑顔で燕は応えてくれた。と、言うよりも嬉しそうだった。
そのままゴール目掛けてまっしぐらだ。
「ちょっと距離あるけどこれなら俺達が一位ですね!」
「! いや……まだ安心するのは早いよ大和クン」
テントからゴールまで距離があったものの、他の走者はまだゴールは愚か物を探しているようだ。
であればまさにそれより一歩進んだ状況である大和が断然有利。
そう思っていた矢先、燕の表情が引き締まる。彼女の目線に同調させるとその先は。
「待って待って~!」
「な、何ィ!? 葉桜先輩ぃ!?」
何と葉桜清楚が走りこんできたのだ。
しっかりと組み立てられたダンボールを左手一本で掲げ、ゴールに向かって一直線だ。
「つーか何!? 先輩メチャクチャ速ぇ!!」
普段は図書室で本を読んでいる、言うなれば文学少女として人気の高い清楚。
しかし今の彼女はそれを吹っ切るようなスピードで走っているのだ。
走りながらもそのフォームは美しく可憐で、そして清楚であったが。
「清楚ちゃんステキ! 走る姿もマジ清楚!!」
「いいよぉいいよぉ!! 日々人類は進化し続ける! だから速くてもOK!」
「清楚ちゃぁん! 清楚っちゅわぁん!! ハァハァハァッ!!」
因みに清楚のファンである男達は彼女の常人離れしたスピードを許容していた。因みに約一名いる変態はこの後百代が蹴り飛ばしたと言う。
(このままだと……追い抜かれる! 燕先輩に来てもらっているのに負けるわけには!)
とにかくこのままだと入射角、そして彼女の速度からして間違いなく先にゴールされてしまう。
クラス優勝への貴重な得点、何より隣に燕を走らせている状況で負けを許すほど直江大和は腑抜けでもなんでもない。
そんな彼の気概を気に入った燕は。
「大和クン、私にお任せナットウ!」
精一杯の笑顔で彼に応えた。
一体何をするつもりなのか――――その答えを聞く間もなく、大和はとある感覚に包まれる。
――――むにぃっ
(え? あれ? 何か柔らかいゾ? ……マサカ、ソウナノデスカ!?)
燕がこの勝負を勝つために実施した手段、それは大和を即座にお姫様抱っこすることだった。
「つ、つ、燕先輩ぃぃぃぃぃ!!?」
「喋らないで! 舌噛んじゃう……よっ!!」
スピードはまさに飛燕の如く、四天王最速とも言われる彼女は持ち前の素早さで他の追求を許すことなく一気にゴールを潜り抜けた。
燕のスピード、何より彼女の抱っこに驚いたものの大和は審判のルーに条件の紙を見せる。
「名前に“め”がつく女性……確かに! ゴ~ル! 一位、直江大和!」
高らかなルーの宣言で大和の勝利が確定した。
そのまま清楚も後一歩及ばず二位を手に入れる。続いて井上準、虎子、そして武蔵小杉と続いていく。
「あー惜しかったなぁ………」
「でも二位なんだから胸張って……って清楚。 このダンボール、本で詰まってる」
「ホントだ。 気付かなかった」
「これだけの本があると優に30kgを超える……やはり、彼女は只者ではなさそうだ……」
後一歩で一位になれた清楚は残念がる。
そんな仕草まで清楚だ。ゲイツが励ましに掛かろうとすると、持ってきたものの中身に驚いた。
本と言うのは重なれば凄まじい重量になる。それを彼女は片手で運んでいた。
もしあれが空のダンボールだったならば勝負は分からなかっただろう、大和はホッと安堵の息をつく。
「はぁ……はぁ…た、助かりました燕先輩………」
「いやいや。 大和クンのやる気がなかったら私はあそこまでしなかったよん」
陽気に微笑んでくる燕、
その言葉の裏には「大和でなければそこまでしない」というちょっとしたアピールも含まれている。
微妙にそれに気付きながらも大和は微笑み、礼を言う。
「大和クンはこの後の競技何か入ってるの?」
「後は午後に川神サッカーをやる予定です」
「川神サッカー……何やら激闘の予感だね。 頑張って!」
燕はそう言って彼に微笑むと一瞬にして消えてしまった。
自由奔放な彼女らしい消え方と言えよう。
かと思えばまた向かい側で納豆の行商をやっているようだったが。
「燕先輩……そういや俺、お姫様抱っこされた……ってことは……」
突然大和は振り返ってみる。
あの時、自分はどういう状態にあったのか。言うなれば大和は燕の胸の中に顔を埋めている、そんな状態だった。
つまり走っている間感じていた“柔らかさ”。
間違いない。大和はあの時、間違いなく『ラッキースケベ』だった。
「大和………お疲れちゃん」
「!! ね、姉さん………?」
背後から恐ろしい声が。
まるで油が切れたかのようにギギギと背後を振り返る。そこに魔王がいた。
彼女は間違いなく怒っている。指までバキバキと鳴らしているのだから。
「私以外のおねーちゃんの胸を味わうとか……いい度胸だな?」
「い、いや! 今のは事故……っていうかラッキーっていうか……」
「燕の手を借りないように……走ればいいだけだろうがぁーっ!!」
百代は瞬時に大和の背後を取り、その腕で彼の頭を抱え込んだ。
ギューッという音が出るほどまでに彼の頭を締め付ける。無論大和の顔は百代の胸に食い込んでいるがそれ以上に激痛が襲い掛かっている。
「ぐあああああああっ!! ギブギブぅぅぅ!!」
「
「そういう意味に受け取っちゃうのねぇぇぇぇっ!!?」
結局この後大和はヘッドロックをかけ続けられた。
☆
――――それから時間が経って、昼休憩。
「はい! 特製バーベキューが焼けたよ~」
ここは2-F側の陣営。
熊飼満が実家から持ってきたコンロや鉄板などの器具を使い、腕によりをかけて料理を振舞っていた。彼に食材費を予め支払っておけばこの通りプロ顔負けの料理を作ってくれる。
大和達は早速焼けた串に手を伸ばし、肉にかぶりつく。
「んめぇ~~~! さっすがクマちゃん!」
「味付けも辛すぎず薄すぎず、絶妙なバランスね~!」
大和や一子もその美味たる極上のバーベキューに舌鼓を打っていた。
無論それは他の2-Fの面々も同じである。忠勝も口にこそは出さないものの、実においしそうに食べている。
「いやぁすまないなクマーン。 私まで食わせて貰ってガツガツガツ」
「姉さんナチュラルに混ざってるし」
「いいじゃんいいじゃん~モグモグモグ」
満の料理の腕は学校では有名なほどだ。
この通り武神と名高い百代ですら齧り付き余裕なのです。
「と、いうか私たちまでご一緒していいのでしょうか……伊予ちゃん」
「そ、そうだね……ホントごめんなさい直江先輩」
「いいよ。 まゆっちもこの際混じったらいいし。 大和田さんも遠慮せず食べて」
すぐ傍には由紀江と彼女の念願の友達である大和田伊予がいる。
伊予との出会いは大和のサポートで得られたものだ。
由紀江はそのことで大和に凄く感謝しているし、それは伊予も同様である。そして二人はまさに唯一無二の親友と言うほどの仲のよさだ。
「そうそう、直江君の言うとおり色んな人たちが幸せそうに食べるの、僕大好きだから」
「クマちゃんもああ言ってるし、遠慮するのは逆に失礼だよ」
「……ですね。 ありがとうございます」
「ここまできたらもう食うっきゃないね! 直江先輩、午後はしっかり応援します!」
満の食事の拘りもあって、由紀江と伊予も馴染むことができた。
大和は友達と楽しそうに食事をする由紀江を見て微笑ましい表情を絶やさなかった。
「……んむ? 何やらいい香りが……ぬおぉっ!?」
「ん? 不死川か。 偵察ご苦労さーん」
すると匂いに釣られて一人の女子がやってきた。
数十分後に敵として対峙する2-Sの不死川心だった。彼女の目の前には御三家の食卓に並ぶそれと大差ない豪華そうな料理が並べられているのだ。
彼女の目の前で遠慮なく肉を食いちぎるのは岳人。
「ふ、ふん。 まぁ下賎な輩は肉でも頬張っておけば―――――」
「おお。 何やらいい匂いがするかと思えば大和のクラスだったのか」
強がりを言い始める心の言葉を遮って一人の小柄な女子と大柄な老人が。
知る人ぞ知る実質的な1-Sの最高権力者にして九鬼英雄の妹、紋白だった。傍には当然のようにヒュームが控えている。
「紋様。 お食事中ですみません」
「よいよい。 これから我も昼食にしようと思ったが……これは美味しそうだな」
「何だったら一緒に食べる? 美味しいものは皆で食べた方がより美味しくなるからね」
「良いのか? では混ざらせて貰おう!」
紋白も満の料理に興味を持ったようだ。
火傷しないように注意しながら大和が焼きたての串を渡す。口に適する音頭にするためふーふーと息を吹きかける紋白が悩ましいほどに可愛い。
そして肉を一口。彼女の頬や下は一瞬にしてとろけた。
「………美味し~~~~~い!! く、九鬼の料理人に匹敵するぞ!」
「折角ですからヒュームさんも如何です?」
「ふん。 では頂いてやろう。 ……む……この味付け、火加減は中々だな……」
料理に関してはあのヒュームですら認めるほどだった。
その様子を眺めていた心は勝負前に見下しに来たという当初の目的をすっかり忘れるほどに釘付けになってしまう。
「あ、でもそろそろお肉なくなっちゃうね」
「ご心配なく熊飼様。 こちらに新しいお肉をご用意させていただいております」
「こ、これはグルメネットワークでも滅多にお目にかかれない高級肉! いいの?」
「はい。 お食事のお礼、ということで存分にお使いください。 調味料もございます」
肉や野菜の残量が尽きかけた、と思いきやいつの間にかクラウディオが姿を現している。
彼の傍にはクーラーボックスが置かれており、その中には満ですら中々手に入らない厳選に厳選を重ねた食材のエリート達が詰まっていた。
満もやる気を出したようですぐに新しいものを焼き始める。さすが完璧執事、タイミングも準備も完璧である。
「この料理……ん~~~たまらん~~~!」
「紋様、この料理を焼いているのが彼。 熊飼満です」
「うむ! この料理の腕前、情熱! どれをとっても文句なしだ!」
さりげなく大和はここで満を紹介した。
紋白の趣味にして使命の人材のスカウトだ。満の能力を存分に見せ付けられたため、紋白は躊躇いなく太鼓判を押した。
スカウトの話を聞いていた満も大喜びだ。
「まさか道楽で始めたことなのに、世界最大の企業に誘われるなんて嬉しいよ」
「この腕前! 文句があるはずがない! なぁヒューム、クラウ爺!」
「はい。 ………ふん、中々やるな赤子」
「ええ。 料理の腕は十分に帝様達にお出しできるレベルです」
ヒュームやクラウディオ達のお墨付きさえでた。
これでもう満も就職先に困らないだろう。自身の腕を存分に発揮できるという事で満はそのスカウト話を受け入れた。
「………ふ、ふーん! 良いのじゃ! 此方には高貴なる昼食が待っておる!」
あの世界の九鬼ですら認める食事。
本音を言えば食べたかった心であるが高すぎるプライドが災いし、結局何も言えぬままその場を去ってしまう。
因みに誰一人彼女に目を向けてもいなかった。
「ついでにチャーハンも焼くよ~! 欲しい人は並んでね」
「折角です。 私もお手伝いしてもよろしいでしょうか?」
「お願いします。 皆この後の試合で頑張りますからね」
熱した鉄板をそのまま利用したチャーハンを用意し始める満。
肉や野菜ばっかりで舌も飽き始めたところにまた嬉しい料理が。育ち盛りにしてこの後の試合でエネルギーを補充した面々が一斉に並び始めた。
更には完璧執事として料理もパーフェクトなクラウディオも手伝ってくれればいう事無しだ。
「試合……そう言えば大和は兄上達と戦うのだったな」
「はい、紋様は英雄……お兄様の応援ですよね」
「当然! だが我に構うことなく兄と戦ってくれ!」
大和の密かな懸念事項。しかしそれは杞憂に終わった。
以前、紋白は姉である揚羽を下した百代を、そして英雄の告白を受け入れない一子を快く思っていなかった。
だが先日のカラオケでそれはいい方向に解消された。紋白の成長を窺うことができ、大和も胸を撫で下ろしている。
「紋様、チャーハンです。 ……ついでだ、お前も食え赤子」
「ありがとうございますヒュームさん」
「紋様が期待を寄せているのだ、無様に負けることは許さんからな」
ヒュームが焼きたてのチャーハンを持ってきてくれた。大和の分も。
彼らしい理由であったが、大和はキチンと感謝の言葉を伝え、チャーハンを口にした。
米粒の一つ一つが実に味を持っており、味わい深い一品となっている。
「もぐもぐ………このチャーハンも絶品であるなぁ!」
「さっすがクマちゃん……下手なドーピングよりも効果あるわ」
その美味しさときたら、紋白の足をバタバタさせるほどだ。
大和も満の料理を味わうたび、体の奥底から力がわいてくるようだった。
「お、大和に紋白。 一緒に食べてたのか」
「クリスか。 っておい、米粒ついているぞ」
「え? あ、ど、どこだ!?」
すぐ近くにはクリスが座った。勿論満特製のチャーハンやバーベキューと共に。
実に凛とした立ち振る舞い――――なのだがやはり顔にご飯粒をつけている辺りが残念。
慌てて彼女は顔中をまさぐり、米粒を口にした。
「それになんだその串。 肉ばっかりじゃないか」
「い、いいだろう! その分後で身体を動かすんだ!」
「言い訳してないで野菜食べなさい! クマちゃーん! 野菜追加ー!」
「鬼かお前達はー!!」
野菜嫌いなところもやっぱりお嬢様。
本来ならここで自愛の視線を送っているところだがさすがにバーベキューといいチャーハンと言い今日の昼食は油っぽい。野菜が必要だと一子が騒ぐ。
数秒後、焼きたての野菜を運んでくる一子と京。彼女達の眼が光っていた。
「ワン子、京。 クリスのためだ、野菜を食わせてやれ」
「アイ・サー」
「さぁクリ! あーんしなさーい!!」
「た、多勢に無勢とは卑怯だぞー!」
クリスの言葉もむなしく、彼女の言葉に大量の野菜が運び込まれていった。
彼女からしたら地獄絵図なのだろうが、一般的には当たり前の光景なのである。
「やれやれ……クリスは可愛らしいな。 フランクの気持ちも分かるぞ」
「クリスー大変だーお前ー年下にー愛でられてるよー」
代わりに紋白が自愛に満ちた視線を送った。確か彼女とくず餅パフェを食べに行っていたときも同じような現象が起こった。
やはり器が最初から違いすぎていたようだ。
「ところで大和、一つ気になったのだが」
「何でしょう」
「熊飼だが、余り食べておらんではないか。 いや自重した方がいいのかもしれないが」
紋白の気になっている一点はそこだった。
そう、先程から満は殆ど料理ばかりで余り口にしていないのだ。勿論口にしている時もあるが、皆が食べている量に比べると少なく見受けられる。
「ちょっとこの後クマちゃんには頑張って貰わないといけないので」
「これもお前の策の内、というわけか」
「何せ相手は2-S、全身全霊を出さないと勝てない相手なので」
既に大和はこの時から勝負を始めていた。
満には少々酷だが、頑張って貰わなければならない。ついでに体脂肪も少し減らしてあげなければ。
「面白い、兄上達とどう戦うか楽しみにしておるぞ!」
「はい」
食事に、そして人材スカウトの成功に満足した紋白は足取りを軽くして1-Sの陣営に戻っていく。
彼女が去ると大和は午後で敵対する2-Sの陣営に目を向けた。
黙々と昼食を取っているが、午後の競技に向けてテンションを高めている。特に午前中特に接触してこなかったマルギッテの威圧感が凄まじい。
「どーした大和ぉ? 2-Sのお姉ちゃん達が気になるのか~?」
「まぁね。 っていうか理由は話したとおりだけど」
「……監視、か。 軍人ってのは可哀想だなー」
百代がべったりと絡んできた。
だが大和が真剣になっていると悟るや否やなるべくそれを邪魔しない姿勢になる。
そしてマルギッテ達に警戒している理由は、やはり由紀江の報告にあった。
「どっちかって言うかフランクさんの方が怖いけどね。 色々」
「安心しろ。 戦闘機50機来ようが全部打ち落とすぞ」
「だから怖いの」
恐れを抱いているのは、姉の専守防衛と銘打った一方的な制圧だった。
「で、どうなんだSクラスとの対決」
「ん、大体策は練れた。 ルールも把握してるし」
「把握……ってまたヒゲに賄賂を贈ったな」
「いやいや。 溜まりに溜まった勝負のツケをチャラにしてね」
大和は視線を差し向ける。
そこは教師達が待機するテント。その中で椅子でリラックスしている教師、宇佐美巨人に眼を向けた。
彼はだらけ仲間であると同時に袖の下を渡すことでテストの成績や、学校の情報等を提供してくれることがある。
「小島先生。 この体育祭が終われば飲みに行きませんか?」
「ビアパーティーですか……悪くはないかもしれませんな」
(フィッシュオーン! やった! とうとうオジサンにもツキが……)
と、リラックスしていた巨人は梅子を見かけた、
美人教師として名高い彼女を、巨人は日々口説いている。いつもは飲みに誘っての断られることが多いのだが、今回は提案に乗ってきてくれたようだ。
そう思っていた矢先。
「打ち上げ、ですか! いいデスネー!」
「僕達も、ご一緒させてくださーい」
「まぁ。 たまにはこういうのに付き合うのもいいか、の」
「いいネいいネ! こういうのは皆で行った方が楽しいヨ!」
「ふぉふぉ……ではワシもご同行するかの。 のぉ、宇佐美先生」
カラカル兄弟を始め次々と教師陣が同行を申し入れてきた。
しかもあろうことか学長である鉄心すら混じり、「打ち上げ」と称してしまっている。
こうなっては巨人も断るに断れず、トホホと頭を抱えるのだった。
「何か連敗数を重ねているようだが……んじゃ、プチ川神大戦同様楽しませて貰うか」
「はいはい。 ごゆるりと」
どうやら百代はやはり実況として回るようだ。
料理で腹を満たし、弟からエンターテイメントを約束された彼女は上機嫌だ。
そのまま実況の準備をしにいったのか、その場から消える。
『今から、川神サッカーに参加する選手は入場門にお越しください』
と、ここでアナウンスが流れた。
瞬間に和やかだった2-Fの間に緊張の空気か流れる。やはり敵が因縁のある2-Sだからだろう。
前回プチ川神大戦で勝利としたとは言えあの後双方謝罪という、ある意味で納得の行かない結果になった以上、やはり溝は深い。
「直江ちゃん、号令お願いします!」
「委員長いいの? 俺で」
「はい! 直江ちゃんは監督ですし、私信頼してますから!」
真与が号令をかけることを命じた。
一策士として一応遠慮したが、こうまで言われてはやらないわけには行かない。
2-Fの面々の誰一人として大和の選抜に異を唱えなかった。寧ろ従う気満々である。
「よーしお前ら! 敵は2-S、相手にとって不足なし! 一人一殺の覚悟で望め!」
『『『『おおぉ―――――っ!!』』』』
大和の鼓舞が、2-F全体を沸かせた。
この軍師ならば自分達を勝利に導いてくれる。日頃の付き合いと、いざという時に見せた成果が士気となって現れる。
おまけに満特製の料理でエネルギー充填完了した今の彼らに死角はない。
「ルールは前もって説明したとおりだ! 大変危険な競技だがそれだけに誰でも活躍できる! 一人の活躍はクラスの栄光! クラスの勝利は個人の喜び!」
『『『『うおおおおおおお!!!』』』』
Fクラスの気質を何より理解している大和の激励が、一人一人のやる気を煽る。
端から見守っている梅子も頷いてしまうほどだ。失礼な話かもしれないが、真与ならばここまでの威厳は出なかっただろう。
「一人の活躍なくして勝利なし! 勝利のために捨石になる覚悟はあるか!」
『『『おぉぉ―――――っ!!』』』
「ニューヨークに行きたいか――――!!」
『『『おおぉぉおぉ―――――!!』』』
「ノリがいいお前らが好きだ!! よし行くぞ! 川神サッカーへ!!」
『『『やってやるぜ――――――――!!!』』』
テンションも最高潮。栄養補給は文句なし。何より当方に迎撃の用意あり。
今の2-Fは、まさに特攻をも辞さない姿勢が窺えた。
彼らを引き連れ直江大和は入場門へと向かう。その姿が、何より猛々しく見えた。
「見させてもらおうか直江大和。 Sクラスに、マルギッテにどう戦うのかをな……」
そんな彼ただ一人を見つめている男、フランク。
彼の視線は凄まじく厳しかった。だがそれに反して、大和の瞳はそれをすらも跳ね返すほどに煌いていた。
続く
どうもテンペストです。私の体育祭?ボロボロでしたが何か?
さて置き、原作の方でもそうでしたけど川神学園の体育祭って激しい分楽しそうですよね。
ただ原作と同じだと詰まらないので川神サッカーなるものを登場させました。
因みに序盤の方で京極先輩がバスケやってますが、これはもうただのパロディネタです。
次回、またもSクラスとの激闘。どうかお楽しみに。
感想ご意見、お待ちしております!!