真剣で私に恋しなさい!X   作:テンペスト

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第十六話 川神サッカー

今、東と西に分かれて両軍がにらみ合っている。

西方、才能と権力の塊こと2-S。東方、発想と根性が常識外れの2-F。

この二組は言うなれば表と裏。絶対に合わさることはないが、常に傍にいる。そのような状況だった。

彼らを壇上から見下ろしている川神鉄心が、厳粛な空気を伴う。

 

 

 

 

 

「ではこれより川神学園体育祭最終種目、『川神サッカー』を開始する!」

 

 

 

 

 

最強の武神の一言一句は重圧がある。

どこか助平な雰囲気は消え失せ、見るものに固唾を飲ませる。その威圧感はヒュームに近く、例えにされた彼も紋白の傍で不適に微笑んでみせる。

 

 

「これよりルールを説明する。 各クラスは互いに11名を選出し、ゴールにボールを打ち込む。 ここまでは普通のサッカーと一緒じゃが……」

 

 

まだ鉄心は続ける。

そう、単語の頭に「川神」がつくだけでこの競技は全く別次元になってしまう。

 

 

「各チームは11人の中でFW(フォワード)DF(ディフェンス)の証であるバッジを三つずつ渡される。 それを装備した者がFWとDFになれる」

 

「三つ? 普通のサッカーはFWは2人ほどではないのか?」

 

 

不死川心も、さすがにサッカーのルールくらいは心得ている。

これでもSクラス、大抵のスポーツであれば並以上の成績をたたき出す自信はあった。

だがこれはただのサッカーではない、『川神サッカー』。万が一の聞き逃しが無いように慎重に動く。

 

 

「で、試合が始まりボールを手にする……ではなく足にする選手が出る。 その時、FWだけがボールを持っている選手のみ攻撃できる」

 

「げ、マジかよ……集中砲火を食らうじゃねぇか。 白色彗星の如く」

 

 

井上準も苦い表情を隠せなかった。

FWは能力の高い人物に渡される可能性が高い。つまりFクラスで言えば一子に京、そしてクリス辺りが選出されることが予想される。

そんな人物から殴りかかられてしまえば、ノックアウトは免れない。

 

 

「それを防ぐためのDFじゃ。 DFはFWとだけ、30秒間のみ戦闘してもよい」

 

「なるほど。 つまり如何にボールを持っている選手を守り、逆にそれを潰しにかかってくるDFで相手を押さえ込めるかが勝負のカギですね」

 

 

マルギッテも過酷な戦いになると予想できた。

数々の戦場を経験してきた彼女だが、ここに集う選手は皆トップクラスの実力を持つ。迂闊な行動、油断は即敗北に繋がると知っている。

特に今回は中将―――――フランクが見ている手前、敗北は出来ない。

 

 

「左様。 欠員は3名まで。 試合は前半後半20分、オフサイドなし」

 

「短いねー」

 

「まぁ戦闘も絡むし、安全考慮とプログラムを考えてじゃ」

 

 

小雪の言葉にもそう返してみせる。

戦闘が絡むのであれば、体力の消耗も著しいものとなる。怪我人が出ることが予想されるだけに、観客もきっとこらえ切れない人物が出てくる。

それを考慮しての結果だった。

 

 

「学長、戦闘に関する際武器の所持は?」

 

「無しじゃ。 戦闘が絡むとは言えあくまでスポーツ。 素手でやれぃ」

 

 

最後に葵冬馬が質問を重ねた。

武器を所持できるなら武力で勝るSクラスが圧倒的有利である。が、お互いに素手であれば状況は色々と変わってくる。

 

 

「ではこれより10分後に試合開始じゃ。 選手登録した紙を受け付けに提出せい」

 

 

それだけ言い終えると鉄心は壇上を下りた。

一気にSクラスは騒然となった。予想以上に過激かつ駆け引きも絡みそうな種目になったためどのような選出にするか悩んでいるのだ。

一方大和達は既に準備完了している。何せ大和は予め、巨人からルールの説明を聞かされていたからだ。

 

 

「んじゃ俺達はこれで。 梅先生お願いします」

 

「分かった」

 

 

彼らの担任である梅子は、大和から出場選手が書かれた紙を受け取る。

一度眺めたが、文句のあるはずも無い。彼女はそのまま受付に紙を提出した。

 

 

「あー心。 Fクラス、もう提出しているよ」

 

「何!? ……まさか直江大和の奴、既にルールを聞きだしておったのか!?」

 

「なるほどー。 さっすが大和ー!」

 

「感心してる場合かユキ!」

 

 

小雪が既にこちらの選手登録が完了したことに気付いた。

それを伝えられた心はそのメンタル面の弱さが現れ、動揺を見せてしまう。彼女のものはかなり表立っているが、他のものも少し現れている。

これも大和の策の内で僅かでも精神的に優位になることで敵に圧力をかける作戦だ。

 

 

「えぇい! 九鬼英雄! 葵君! 早く決めんか!」

 

「落ち着いてください不死川さん。 敵の手に載せられていますよ」

 

「全くだ。 こういう時、真の勝者と言うのは堂々としているものよ」

 

 

心は全く対照的に落ち着いているSクラスの参謀、葵冬馬。そして同じくSクラスの委員長である九鬼英雄。

持ち前の頭脳と器の大きさが安心感を与えている。

とは言え事前に知らされていることと知らされていないとでは全然差があり、弁慶も不満を顔に出している。

 

 

「にしても担任が事前に教えるとはねー……ダメじゃないのー……ごくごく」

 

「川神水飲むなって。 情報が欲しかったら袖の下ってな」

 

「さすがだな大和……既に禁断の書庫から情報を得ているとはな」

 

 

弁慶はこんな時でも川神水を手放さない。が、不平不満はしっかり連ねる。

言い切るように鉄人はポケットを露骨に見せびらかす。情報が欲しければそれなりの対価を支払え、というある意味教師にあるまじき発言だ。

そして与一は今日も相変わらず中二病。

 

 

「Fとの対決と言えば義経さん、大丈夫ですか?」

 

「前回のプチ川神大戦では不覚を取ったが、今度はそうは行かないと義経は誓う!」

 

「これならば直江大和の言葉に惑わされることもありませんね☆」

 

 

Sクラスの懸念材料となっている存在、それは義経であった。

先日のプチ川神大戦ではまさに切り札のような存在であったが、あろうことか大和の言葉や策に動揺させられて本来の実力を発揮できなかった。

あずみもそこが心配だったが、彼女の顔を見る限りそれも杞憂だと知る。マルギッテもそれを見て安心した。

 

 

「何より奇襲の達人が二度も同じ策に踊らされるわけには行きませんね」

 

「そういう事だ。 だから義経は頑張る!」

 

「頑張れー我が主ー………ふにゃー」

 

 

義経が張り切る一方で弁慶は川神水が回りつつあった。

さすがに酔いが回った人間をこれから戦場に出すのは気が引ける。というよりも安心感が全く無い。

冬馬も彼女の選出は躊躇ってしまう。

 

 

「これは……弁慶さんを出すのは厳しそうですかね?」

 

「そこの所どうなのだ与一よ」

 

「姐御はまぁ、酔えばテンション高くなるからそこに賭けるしかねーな」

 

 

英雄の質問に少々自信が無いように答える与一。

彼女の付き合いのこととなれば与一か義経に聞くしかない。が、やはり厳しそうであった。

 

 

「では弁慶さんはまずは控えに入ってもらいましょう。 いざという時の切り札として」

 

「よいのか? 弁慶のパワーは即戦力じゃぞ」

 

「ですがこれはあくまでサッカー。 俊敏さも必要となりますし……」

 

 

心の質問にもあっさり答えてみせる。

戦闘と言う要素に眼が行きがちだがこれは列記としたサッカー。ボールと友達にならなければまず始まらない。

そういった上で冬馬はSクラスに目を向けた。

 

 

「2-Fからは誰が来るのか容易に想像出来ます」

 

「ま、確かに。 向こうにはあのメス猿三人くらいしか戦力が無いからの」

 

 

冬馬の知力は学年一位を誇る。

故に彼の言葉は別格だと心も認めていた。それだけに彼の言葉は安心感を与える。

 

 

「と、いう事でこんな選出ですね」

 

「ふむ。 我も異存はない。 これでよかろう」

 

「んじゃ提出してくるぜ。 変更は利かねーからな」

 

 

冬馬が提案した選出。特に英雄も異議などは無かった。他の面々があったとしても委員長であり自我の強い英雄の耳は冬馬にしか耳を貸さない。

最後に巨人が忠告を残すと紙を受け取り、受付に提出した。

 

 

「両軍選手の受付終了! では、川神サッカーを開始する! 選手入場!」

 

 

鉄心の宣言に、選び抜かれたイレブンがグラウンドに立つ。

どれもこれも、実質的な両軍の司令塔が選び抜いたエリートである。

 

 

『ここからの実況はお馴染みの絶世の美女、川神百代と』

 

『みんなー! 夏バテ防止に松永納豆をヨロシク~! 松永燕でーす!』

 

 

プチ川神大戦でもやっていた司会者コンビだった。

川神学園1,2位を争う人気者同士の実況はウケが良かったようで引き続き務めることになったようだ。

面白い勝負を特等席で見られるという事で燕は快く引き受け、百代に至っては燕がいるのでOKという即答振りだったとか。

 

 

『やっぱりハゲをクビにして燕とラジオやろう。 それでいい』

 

『よくないよくない。 ほらー井上君泣いちゃったじゃん』

 

 

井上準の瞳から今日も一滴の涙が零れ落ちる。

 

 

『まぁ我が願望はさて置き、選手紹介!』

 

『2-S、ゴールキーパーは九鬼英雄!』

 

「フハハハ、我が全身全霊を持って止めてくれるわ! 勿論一子殿のシュートも!」

 

 

ここで選手の紹介に回り始めた。

気になるキーパーを務めているのは英雄。その鍛え上げられた筋骨隆々の肉体が決め手となったようだ。

無論、彼は上半身を脱いでふんどし一丁になっている。

 

 

『現時点でFWを務めているのは忍足あずみ、榊原小雪、源義経』

 

 

百代の紹介に最も中央に近い三人の美女が服に装備されている赤いバッジを光らせた。しかも「S」とプリントされている。

あのバッジこそFWであることを示す証。あれが装備されている限り、ボールを持っている選手を攻撃できる。

 

 

『そしてDFは井上準、不死川心、マルギッテ・エーベルバッハ!』

 

 

続けた燕が読んだ名はこの試合においてDFを務める3名の戦士。

確かにいずれ打たれ強そうでもあり、戦闘においては自信が垣間見える面々だった。その胸には同じく「S」とプリントされたオレンジ色のバッジが装備されている。

 

 

『後はその他のクラスメートだな、うん』

 

『あれ? 那須与一とか武蔵坊弁慶とかは?』

 

『二人とも控えに入っているな、葵冬馬と共に』

 

 

どうやら冬馬はあくまでベンチから指示を飛ばす役目に専念するようだ。

監督となったポジションのものは試合に出なければならないが、控えとしてなら十分声を張り上げれば選手の耳に届く。

それを加味した上での登録だった。

 

 

『ではそろそろ2-Fの紹介ナットウ!』

 

『2-Fのゴールを守るのはこの男、島津岳人!』

 

「俺様の溢れるパワーで全てを止めてやるぜ!!」

 

 

まるで九鬼英雄に対抗するかのように、そして観客達に見せつけるかのように筋肉の盛り上がりを見せ付ける岳人。

彼の体格の大きさ、力強さ、そしてタフさはまさに壁。キーパーには適任だろう。

 

 

『そしてFクラスのFWは現時点でこの三人!』

 

『風間翔一、川神一子、源忠勝!』

 

 

名前を挙げられた三人は準備運動をこなしながらバッジを装備していた。こちらは対照的に青色の、「F」と文字が付けられている。

 

 

『DF! 椎名京、羽黒黒子、そしてクリスティアーネ・フリードリヒ!』

 

 

この三人は既に準備運動を終えていた。そして胸には緑色のバッジをつけてある。

プロレスラーの娘である羽黒はその気概を買われて大和に見出された。その他二人も防衛には十分役立つ選手だ。

 

 

『以上、後はクラスのメンバーで構成されているな』

 

『で、控えは?』

 

『控えにはクマーンと甘粕真与、そして小笠原千花だな』

 

『あれ? 大和君は控えじゃないの?』

 

 

控えは明らかに戦闘向けとは言いがたい面々だ。端から見れば余り物、という印象が否めない。

が、燕には気になる点が一つあった。大和の存在だ。

Sクラスの司令塔である葵冬馬は控えとしてベンチに入っている。しかしFの控えに大和はいない。

―――――彼は、スターティングメンバーとして既にグラウンドに立っていた。

 

 

『ワォ。 相変わらず体張るね……』

 

『それが大和の真剣と書いてマジなのさ』

 

 

軍師として、一人の漢として。大和は前線に立つ。

そういった男気が逆に燕に関心を与えた。以前もこうして驚かされたものだ。

 

 

「はいはイ。 主審はこのルー・イーが務めるネ」

 

「副審は私、カラカル・ゲイルと!」

 

「特別に務めます、ヒューム・ヘルシングで行います」

 

 

気になる審判は何れも腕っ節に自信のあるものばかりだった。

それだけに緊急事態に即対応してくれ、尚且つ反則行為は容赦なく見逃さないという安心と緊迫が織り交ざった面々だ。

本来なら実力のある梅子が担当するところだが彼女はFクラスの担任。公平さに欠けることを考慮し、実力と年齢が備わっているヒュームに白羽の矢が立ったのだった。

 

 

『さあ両者とも戦士は揃った! 群雄割拠、今グラウンドは東西に分かれているッ!』

 

『両軍戦力をフルに使い臨むこの一戦! 間もなくキックオフです!』

 

 

実況の二人が喋り終えるとルーがホイッスルを手に近寄る。

ジャンケンの結果、先にボールに触れることになったのは2-S。ホイッスルが鳴り響いた瞬間、彼らがボールを触れる。

しかもその役目は義経とあずみというこの上ない攻撃的な選手だ。

 

 

(私の目から見ても義経、そしてマルギッテと戦い合ってきた忍足あずみの実力は一級品。 直江大和よ、君はこの逆境をどう乗り越える……?)

 

 

フランクから見ても十分Sクラスが有利だと見ている。

その一方でマルギッテの報告からプチ川神大戦では完勝に近い結果をもぎ取ったFクラス。勝利に導いた大和がどう動くのかが彼の見所だ。

 

 

(だがやっぱり我が娘が一番だな、うん)

 

 

それでも親バカ中将はやはり娘に最も視線を向けていた。

 

 

 

 

「それでは………キックオフ!!」

 

 

 

 

ルーが試合開始を告げるホイッスルをとうとう鳴らした。

その瞬間に義経がボールをつま先で僅かに蹴り、あずみに渡す。そしてあずみがそれを踵で後方に押し出すように蹴る。

ボールの行く先は、その後ろで待機している小雪だった。

 

 

「いっけぇー!!」

 

「い、いきなりシュートかよ!?」

 

 

この先制攻撃はさすがの大和も予想外だった。

面食らってしまい、ボールを目で追いかけてしまう。その速さ、威力は一子やクリスですら追いつけないほどだ。

まさに言うなれば大砲と言うような威力を持つそれが、ゴールに向かっていく。

 

 

「っと、そうはいかねぇ!!」

 

「あれ? それを取っちゃうのー?」

 

 

それを余裕で止めて見せたのはゴールキーパー、岳人だった。

彼はその自慢の力で押しつぶすかのように圧力をかけ、小雪が打ち出したボールを止めて見せた。

 

 

「ふふん、俺様をぶち破りたいのなら後2倍くらいのパワーが必要だな」

 

 

さすがはベンチプレス190kg。大和はつくづくこの男を文字通りの「壁」に任命しておいて良かったと冷や汗を拭った。

小雪の脚力が凄まじいものとは知っていたがこれほどまでとは。

彼女の一撃を受け止めたが岳人が、ボールを人差し指に乗せてまるで地球儀のように回転させている。

 

 

「そんじゃ冷や冷やさせれた分攻撃と参ります、かッ! ゲン!!」

 

「おう!」

 

 

岳人が打ち出した大砲のようなボールが天高く舞い上がる。

ハッキリ言ってコントロールが絶妙だとはお世辞にも言えない。しかし誰に向かって蹴っているのか言えばある程度の狙いは付けられるし、本人も動いてくれる。

フォロー上手な忠勝はボールを受け取るとそのまま走りこんでいく。

 

 

「ふーん、さすがはヒゲと一緒に代行業をやっているだけあるなぁ」

 

「ですね。 しかし、忍足あずみ達はそう生易しくはありませんよ」

 

 

意外な走力を見せている忠勝に関心している準とマルギッテ。

言っている間に忠勝に向けて忍足あずみと榊原小雪が飛ぶ。無論ボールを持っている忠勝をボコりに。

 

 

「一子パス!」

 

「ハイ!」

 

 

ならば教われる前にパスを回してしまえばいいだけのこと。

忠勝はボールを足の土踏まずで右に蹴り、ボールを転がした。ウィンクの先には、ボールを受け取ろうと一子が足を伸ばす。

 

 

「それも想定済みだ!」

 

「義経!」

 

「一子さん……前回の雪辱を晴らさせて貰う!」

 

 

葵冬馬はそれすらも先読みしていた。義経が拳を振りかざして一子に向かう。

幾ら武器は無いとは言え壁を越えた者としてその強さを広めている彼女の体術を受けてしまえば一子とて無事ではすまない。

 

 

「ごめん、それまたの機会で」

 

「えっ? あれ?」

 

『おーっと! ワン子これはスルーパス! 義経引っ掛けられたー!』

 

 

一子はそれを受け取らなかった。

ボールを受け取らなければ攻撃できない。大和はそのルールを利用し、忠勝からのアイコンタクトによってボールを受け取るかスルーするかで使い分けていたのだ。

転がっていくその先には―――――。

 

 

「待ってましたーっ! ヒーローの出番だぜ!」

 

 

翔一が待っていた。

脚力に関しては凄まじい彼がボールを転がせば一気にゴールまで持っていける。サッカーという競技は彼にとって得意中の得意だった。

 

 

「はっ、それを予測していないアタイだとでも思ったか!」

 

「なっ!?」

 

「武器装備してなけりゃ軽くなれっからな。 すぐ追いつける!」

 

 

しかし、葵冬馬は万が一のスルーパスに供えた指示をしていた。

それはオフェンスの中で最も走力のあるあずみに翔一の撃退を指示していたのだ。

あずみは先程まで忠勝の攻撃に回ろうとしていたが、パスしたその瞬間翔一に狙いを定めていた。

 

 

「先手必勝! 素手でもイケるぜアタイは!!」

 

「―――――なーんてな。 頼んだぜ京!」

 

「しょーも……ないっ!」

 

 

強烈なあずみの手刀を、割り込んできた京が受け流した。

弓兵とは言え彼女の家系も武士であり、万が一に備え接近戦の心得くらい得ている。最も全て大和の護衛のため、というなんとも一途なものだが。

 

 

『あずみの凄まじい一閃! 椎名京、華麗に受け流す!』

 

『そしてその隙に風間翔一、ビュンビュンと突き進んでいきます!』

 

 

あずみの相手を任せた翔一は一気に駆け抜けていく。

その間にも準や心といった2-Sの面々が止めに掛かる。が、彼らはFWではないので戦闘できず、ただ足を使ってボールを奪おうとすることしか出来ない。

素早い翔一はそれすらも乗り越えていく。

 

 

「きーん!!」

 

『と思いきや榊原小雪、キャップに負けないくらいの脚力で追いついてい来るー!』

 

 

両手をまるで飛行機の翼のように広げ、小雪が翔一を追いかけてくる。

幾ら翔一と言えど武士娘のように鍛錬しているわけでもないため、あっさり追いつかれそうになる。

 

 

「ちぃ、ユキ! お前が来るか!」

 

「ごめんねキャップ~。 でもこれは勝負! えいやっ!」

 

 

昔遊んだ仲として彼女の素早さは知っているつもりだった。

だが葵紋病院に引き取られてから最高峰のテコンドーのコーチにその技術を教わったおかげでその戦闘力は並を遥かに超えている。

それを失念していた翔一の身体に破壊力満点の足が打ち込まれようとしている。

 

 

「させん!!」

 

「っ!」

 

 

今度割り込んできたのはクリスだった。

彼女はその足を、これまた受け止めるのではなく受け流して衝撃を減らした。おかげでクリスの身体に残るダメージはほぼ0に近い。

 

 

「見事だ! と言いたいが……白魚のような肌に傷が入ってしまうでは無いか……!」

 

 

フランクはその技術を見事に褒め称えた。

その一方で傷が入りそうな防ぎ方にハラハラする。攻撃とはまた違うDFに任命した大和に厳しい視線を差し向ける。

 

 

「キャップ! 行け!」

 

「おうよ!」

 

「くっ、ここは義経が―――――!」

 

 

クリスが次々と襲い掛かる小雪の足を綺麗に受け流す。

その隙に翔一は突き進もうとする。当然、残るFWである義経が翔一の撃退に向かうしかない。

それを防ぐのは残るDFである羽黒の役目。

 

 

「アンタの相手はアタイだコラァァァ!」

 

「……凄い気迫だな……義経は感心する!」

 

「ったり前よ! 義経と戦りあったなんて、レスラーとしての名が売れる系!」

 

 

羽黒が吼え、義経の前に立つ。

正直戦闘力では勝てる気はしないだろうが、その気迫で僅かでもいい時間を稼げばよい。

その間に翔一がゴールを決めるのだから。

 

 

「いっくぜー! 妙技、レアバードシュート!!」

 

『おーっ! まるで鳥が飛ぶかのようなシュート!!』

 

 

ゴールに近づいた翔一が思い切りボールを蹴った。

そのボールは、まるで地面擦れ擦れで飛ぶ鳥の如く鋭さ。そのボールを、この男は片手で受け止めた。

 

 

「ふん、確かに速度はまぁまぁよ。 しかしパワーが足りぬわ!」

 

『おーっと! 九鬼英雄、余裕のよっちゃんで受け止めるー!』

 

『モモちゃんそのギャグちと古いよ……』

 

 

九鬼英雄だった。彼の専門分野は野球であるが、九鬼一族の名に恥じぬ素養でボールを受け止めて見せた。

おまけに彼は中国拳法を齧っているため実力も、度量もある。

 

 

「さぁここからは我が軍の反撃だ! 行けぇい! マルギッテ!!」

 

「了解……!」

 

 

英雄が蹴り上げたボール。

それはストンとマルギッテの前に落ちた。DFとは言え、彼女は現役の軍人。そして欧州最強の戦士とも言われる戦闘力。

彼女が一度オフェンスに回れば、一気に戦闘が激化する。

 

 

「おーっとぉ! アタシが相手よマル!!」

 

「川神一子ですか……面白いっ!」

 

 

持ち前の素早さで一子がマルギッテの前に立った。

が、マルギッテの視線が微妙に泳ぐのを大和は見逃さなかった。

 

 

「ですがこのボールは譲れませんね」

 

「ゲンさん! ロリコンについて!」

 

 

大和の指示が飛ぶ。

飛んだと同時にマルギッテがボールを準に渡そうとした。

ボールが彼の足元に転がった瞬間、忠勝の拳が飛んだ。

 

 

「悪いな。 沈んでくれやっ!」

 

「おっとそれはこっちの台詞」

 

 

だが準は涼しい顔で忠勝の拳を掴んで見せた。

準もまた、小雪と同じようにボクシングを会得しておりその戦闘力は一子やクリスらに匹敵するほどなのだ。

おまけにロリが絡めばその戦闘力は無限。要するにタチが悪い。

 

 

「チッ、直江の言ってた通りか……!」

 

「不意打ちならいけるかと思ったか? だがこれでもSクラスなんでなっ!」

 

 

拳を掴まれている今の忠勝では、準のラッシュを防ぐことが出来ない。

そしてラッシュが一度襲い掛かれば忠勝はダウンしてしまうだろう。忠勝は貴重な戦力――――何より友達。

絶対に傷つけさせないと大和が合図を送る。その先はFの控えに座っている、真与だった。

 

 

「委員長! 恥じらいの一言だが頼む!!」

 

「井上お兄ちゃ――――――ん!!」

 

「ゑ!?」

 

 

耳を疑うような、天使の一言。

Fの控えベンチから聞こえた、井上準が最も聞きたかった一言が彼の耳を突き抜けた。

ロリコンである彼にとって真与はまさにストライクゾーン。そんな彼女からの一言であれば絶対に聞き逃すわけが無い。

 

 

「やれやれ……まさしく直江の言ったとおりだ……なっ!!」

 

「あべしっ!?」

 

『おっと源忠勝! 強烈なアッパーカットを顎に打ち込んだー!』

 

 

燕の目から見ても鋭い拳が、準の顎を捉えた。

顎はもっとも衝撃が行き渡りやすい場所。つまり脳震盪を起こしやすい部分。

準の視界が揺れてしまい、意識も一瞬飛んでしまう。

 

 

「ボールは貰った!」

 

「あずみさん! 止めてください!」

 

「任せな!」

 

 

ボールを忠勝が奪う。

瞬時にSのベンチから冬馬の指示が飛んだ。指令を受けたあずみは忠勝を撃退するべく走っていく。

近くにいるのはやっと追いついてきた卓也ただ一人。

 

 

「今だ羽黒! モロにバッジを!」

 

「へい任せろ系!!」

 

「なっ!?」

 

 

なんとここで大和の指示を受けた羽黒が胸につけてあるバッジを外したのだ。

DFの証であるそれを、卓也に投げつけた。

的確なコントロールで飛ぶそれを卓也が何とか受け取り、すぐさま胸に着ける。

 

 

「バッジを装備した者がDF、FWになれるって事はバッジ譲渡OKってことだろ!」

 

「……そう来たか。 だが、そんなヒョロっちい坊や一撃で沈めてくれる!」

 

「させないよ!!」

 

 

卓也が忠勝を庇うように両手を広げた。

さすがに顔を狙わずに、腹に攻撃を打ち込むあずみ。無防備な腹に一撃を入れればダウンすると踏んだからだ。

ところが殴りつけた腹からは人肉とは思えない感触が伝わる。

 

 

「そして腹の中にジャソプといった防具を仕込んじゃいけないっていうルールも無い!」

 

『おーっと軍師大和! 先程からグレーゾーンの応酬~!』

 

『上手い事ルールを利用してボールを守っているね。 うんうん』

 

 

卓也は無事だった。彼は日頃買い込んでいる週刊誌ジャソプを仕込み、防具としていた。

紙の束が拳の衝撃を和らげ、辛うじてダメージを0に近く抑えてくれた。

 

 

「へぇやるじゃねーか。 つかアタイもセラミック加工の鎧仕込んでるんだけどな」

 

「うわぁ。 これは殴りつけた人の拳が砕けそうだね」

 

 

卓也が密かに反撃を考えていたことを悔いている。

一撃を与えようと拳を打ち込んだが最後、逆に拳が割れてしまうだろう。

その隙に忠勝がまたボールを蹴っていく。

 

 

「ヒュホホホ。 下賎な猿よ、高貴なる此方の手に掛かって処理されるがよい」

 

「不死川か……!」

 

「ボールを持っている人物を攻撃できるのはFWだけ……しかしDFである此方はFWと戦うことが出来る!」

 

 

鉄心が告げたルールを利用してきたのは葵冬馬も同じだった。

今回、忠勝はFWを務めている。そんな彼がボールを蹴っているという事はFWを止める役目でもあるDFの真骨頂でもあるという事。これがルールに隠された真意である。

しかも不死川だけではなく、マルギッテまでもが迫ってくる。

 

 

「ゲンさん!」

 

「おうよ!」

 

『源忠勝、瞬時バッジを後方にいる京に渡した!』

 

 

大和の指示を受けて忠勝が後方にバッジを投げ捨てた。

彼に前方には、味方がいない。だからこそ大和の指示を信じて、後方に投げ捨てたのだ。忠勝はもう、誰が見ても立派な風間ファミリーの一員である。

そして彼が投げつけたバッジを拾うのは京の役目。

 

 

「な、何じゃと!?」

 

「そしてついでにゲンさんパース」

 

 

忠勝がFWで無くなったために攻撃をすることが出来ないDFの心は戸惑う。

そして京は自らの役割であるDFのバッジを忠勝に投げつけた。

射撃系はお任せ、と豪語するだけあって投げつけたバッジは弧を描きながら彼の手に収まる。

 

 

(そ、そうじゃ! 事故に見せかけてこの山猿を処分してしまえ……ハッ!)

 

 

ラフプレーに見せかけようとした心。

刹那、凄まじい殺気を左から感じ取った。今回の副審となっているヒュームだった。

彼は心の分かりやすい態度を見て警告しているのだ。もしルールを破るようであれば『串刺し』だと。

 

 

「一子、決めろ!!」

 

「OK!」

 

「ぬぅ! 一子殿のシュート……逆光であるがその愛、受け止めてみせるッ!」

 

 

忠勝がボールを高く蹴り上げた。

一気に跳躍する一子。ゴールキーパーを務める英雄の目から見ても太陽を背にしているため、陰ってしまい上手く目にすることが出来ない。

本来ならここでDFが一子を止めるべきなのだろうが、一つ問題が。

 

 

「何をしておるかマルギッテ! 川神一子を止めんか!」

 

「いえ……川神一子はバッジをつけていない!」

 

 

そう、既に一子はバッジを外しているのだった。

大和の指示で彼女のバッジはスグルのものとなっている。彼は後方で悠々とお気に入りのアニソンを鼻歌にしている。

 

 

「大和君さすがですね……グレーゾーンを利用しての撹乱、お見事です」

 

 

冬馬も純粋に褒め称えた。

しかし同時に不適に微笑んでいる。因みにこの大和の破天荒なルールは今大会のみ適用され、次回からは禁止になったと言う。

 

 

「いっくわよー! 川神シュート!!」

 

「……ですが、野ウサギは止められなくともボールは止められる!」

 

 

マルギッテは逆行ぐらいでは目を逸らさなかった。

跳躍した彼女の足が一子の足からボールを弾き飛ばす。

だが思ったより威力があったそれはSのゴールを横に逸れていってしまう。瞬間、ルーがホイッスルを鳴らした。

 

 

「コーナーキック、ネ! 誰か一人、選手を選びなさイ!」

 

「来たかこの局面……京、いけるな?」

 

「大和がイけというなら……イクっ!」

 

 

何やらニュアンスが違うようだが、京は愛しい人の指示を受け、コーナーに向かう。

先程から絶妙なコントロールを見せ付けている京が最も適任と踏んだのだ。

実際Sクラスの彼女の登場に警戒心を抱いている。

 

 

『さぁFクラス、攻撃のチャンス!』

 

『果たして決められるでしょうか! 注目の結果はCMの後! ナットウ!』

 

『いやこれCMとかないから』

 

 

百代の冷静なツッコミが入った。

実況では愉快なコントが繰り広げられているが、京は額に汗を流している。

ここに辿り着くまで、DFの役割をしている間に義経やあずみといった猛者達の猛攻を受け流していたのだ。

 

 

「FW、DF! そして腕に自信のあるものは我の壁となれ!」

 

 

更には九鬼英雄の一言で強固な壁が形成される。

確かに彼女達ならば軽く跳躍するだけであらゆる高度のボールを受け止められる。

冬馬も考えうる限りの最高の防御壁だ。そして京がどんなボールを蹴るか、さすがの冬馬でも予測できない。ここはこの布陣に頼るしかなかった。

 

 

「京……」

 

「うん……任せて大和!」

 

 

京の狙いは最初から決まっていた。大和はコーナーキックに直面した事態を想定して、京に指示を送っていた。

彼女だけではない、他の面々にもそれを綿密に伝えてある。

いよいよ、京が蹴り出そうとしていた。

 

 

『さぁキッカー京! 注目の一球!』

 

『どの角度で飛ばすのか!? 大きく足を振り上げるー!!』

 

 

あの足の角度からして、大振りかつかなりの高度を意識したボールが飛び込んでくる。

そう判断した猛者達が一斉に飛び上がった。

―――――京は、それを待ってきた。

 

 

「残念。 私のボールは……ジメジメと地を這うのでした」

 

「な、何ィ?!」

 

 

鉄壁の防御壁。隙が無いなら隙を作ればいい。そう、敵を浮き上がらせることで下に隙間を作ること。

それが大和が与えた策だった。

京のボールは綺麗に地面を這い、彼らの足元をすり抜けていく。そしてそれは構えていたクリスの足元に。

 

 

「行くぞ!!」

 

「ぬぅ、誰が相手だろうと止めてくれるわぁ!!」

 

 

こうなれば一騎打ちのような形になる。

クリスがいかにも好みそうなシチュエーションだ。壁になるために飛び上がった連中はもう間に合わない。

であれば、止められるのは英雄だけ。クリスの足の動きを予測し、英雄が右に飛んだ。

 

 

「……大和!」

 

「任せろ!!」

 

「ハァ!!?」

 

 

が、それすらもフェイクだった。

彼女は僅かに左に蹴り、走りこんできた大和にパスした。思わず先走ってしまった英雄に方向転換が出来るわけもない。

大和は思い切りけりこみ、そしてそのボールは誰の手に触れることにも無くゴールネットに収まった。

 

 

「ゴール!! 先制点はF!!」

 

「よっしゃぁ!! ナイスだぜクリス!」

 

「大和も!! 良くぞ決めた!」

 

 

文句なしのゴールにルーも高らかに宣言してホイッスルを吹いた。

電光掲示板に、大和がもぎ取った得点が映し出される。

見事な連係プレーを行った大和とクリスが、ハイタッチを交わした。

 

 

「まさかクリスがフェイントを使うとは……これも直江大和の影響なのか……」

 

 

フランクの見立てからして、英雄も武士娘程ではないにしろ相当な使い手であった。

そんな彼がタイミングと方向さえ間違わなければクリスのシュートは受け止められていたはず。それを可能にしたのはあのフェイント、そして大和の存在。

普段指示を飛ばしているだけ、と思われている彼だからこそ、油断させられた。

 

 

「中々やるな。 だが分かるかね大和君。 出る杭は打たれるものだよ……」

 

 

まるで皮肉を込めた笑い声。フランクは容赦なく口にした。

さて先制点を奪われたSクラスはさすがに悔しさを隠そうとしなかったが、いつまでもズルズルと引きずっていない。

瞬時に冬馬の指示が飛び、ボールを中央に戻した。

 

 

「では試合、再開!」

 

 

ルーのホイッスルで今度はSクラスのその他と銘打たれた生徒が僅かにボールを蹴る。

と思いきや渡された仲間はそのままボールを優しく、しかし勢いよく蹴った。

――――蹴った先にいる、大和に。

 

 

「今です!」

 

「!! な、何ィッ!?」

 

 

孔明の罠、ではなく冬馬の策が発動する。

大和にボールが行き渡った瞬間、何と彼は一気にあずみ、小雪、そして義経に取り囲まれてしまう。

冬馬の策、それはわざとボールを大和に渡すことでFW達に潰させることだった。

 

 

「いけない! 大和が!」

 

「ここは自分が助太刀に……!」

 

「ヒュホホ、そうは行かんぞ山猿」

 

 

クリスが援護に向かおうとするがすぐ目の前には不死川心が立っていた。

彼女はDFだが、クリスの進路妨害くらい出来る。

同じく彼を援護しようとした卓也や忠勝も、準やマルギッテに止められてしまう。

 

 

「まぁ俺らは攻撃こそは出来ないケド」

 

「殺気を叩き付ける事は出来ます」

 

 

圧倒的な威圧感が思わず卓也達の警戒心を動かしてしまう。

これによってもたつかせる作戦だ。

 

 

『大和、これは大ピンチー!』

 

『ありゃりゃ。 幾ら何でもプチ川神大戦と状況が違うね、これは』

 

 

そう、前回のプチ川神大戦は大和が一気に三人を引き受けたことが合った。それは彼の策が合ったからこそどうになった状況。

だが今回は忍足あずみという、明らかに大和の言葉に耳を傾けない人物がいる。義経も前回の経験から巧みな弁舌も通用しないだろう。

 

 

「早く仕留めてくださいねー!!」

 

「……ってトーマが言ってるよ」

 

「んじゃ指示通り、潰すか」

 

 

あずみ達が一歩迫る。

このままでは大和は一気に狩られてしまうだろう。勝負事となれば小雪も手加減してくれそうに無い。

 

 

「こうなったら他の人にパス!」

 

「っとそうはいかねぇ。 ほれ」

 

 

大和に残された手段はボールを他の人に渡すことで攻撃の目から逃れようと言うもの。

だがあずみはボールをあっさりキャッチすると大和に返した。

続けても続けても、義経や小雪も同じことをしてくる。

 

 

「ちょっとォ!? こんなことやっちゃっていいんですかね義経さんや!?」

 

「す、すまない直江君。 でもこれでおあいこになると冬馬君が……」

 

「チィィ!! 葵冬馬ァァァァァァ!!!」

 

「私の名を叫んでくれるなんてステキです大和君……」

 

 

義経をも言いくるめた張本人に向かって叫んだ。

それすらも冬馬は愛の叫びと受け取ってしまったようだ。やはりこの男、ライバル等ではなく天敵だった。

 

 

「さて、大和君の熱い告白を受け取ったのはいいんですが早くしてくださいよ!」

 

「よくねーわ!! 俺の貞操が危ない!!」

 

「愉快なコントはさて置き、仕留めさせて貰おうか」

 

 

あずみが一歩詰め寄る。どうやら本格的に仕留めに掛かるのは彼女のようだ。

他の二人も大和に手を出すことを余り好んでいないようだ。

Fクラスの面々も大和救出に向かいたいが、他のSクラスのメンバーに遮られてしまっている。

腹には卓也と同じくジャソプを仕込んでいるとは言え、あずみのことだ。それを外して顔や首を狙いに来るだろう。

 

 

「クッソ!」

 

「ハッ、チマチマ義経やユキにボール蹴ったって僅かに寿命が延びるだけだぜ」

 

 

あずみはせせら笑った。

当然だ、大和の行動は全くの無駄に見えるからだ。

だが大和はまるで堪え切れなかったかのように微笑む。

 

 

「………俺はその“僅か”が欲しかったんだよ」

 

 

瞬間、ルーがホイッスルを鳴らした。

一斉に面々が振り返り、葵冬馬は頭を痛そうに抑えている。そして大和はガッツポーズを取っていた。

 

 

「はーイ! 前半終了~!」

 

「しゅ、終了!?」

 

「確かにこれサッカーだけど20分ずつで短くなってること忘れてるな~?」

 

 

大和は得意げに鼻を鳴らした。

普通のサッカーは前半後半共に45分ずつで区切られている。だがこれは体育祭という関係上20分ずつ。

故に時間間隔が狂っていたことが仇になった。

 

 

「そっかー……だからトーマが急かしてたんだ」

 

「そのための時間稼ぎだったわけか……」

 

 

小雪や義経もシュン、と落ち込んでいる。

一気にこの二人が襲い掛かってきてしまえば詰んでいただろう。Sクラスの絶対戦力である以上、FWから外したくないという妙なプライドに助けられた。

 

 

「ぬぅ……直江大和を仕留められず、一点をもぎ取られたか……」

 

「なぁに、すぐに取り返して圧倒しますよ英雄」

 

 

ハーフタイムに入ることで一旦英雄達も場外に出、水分補給などをする。

少々悔しさを覚えているようだが、冬馬の様子からまだ余裕そうだ。一点の余裕があるが、逆にこれは一点分の油断があるという事。

大和は汗を拭く中、厳しい表情を絶やさなかった。

 

 

「さて小笠原さん、どうかなそっちは?」

 

「いい感じに仕上がっていると思うけど……このメモ通りで大丈夫?」

 

「ヨンパチの暗算と一緒にしないで。 大丈V!」

 

「古いけど、やっぱナオっちはサルよる全然頼りになるわ~」

 

 

大和と千花は何やら話し込んでいた。

思えばこの二人、割と仲が良い。密かに京も懸念材料として歯軋りを出していた。

 

 

「ギリギリギリ」

 

「はいはい。 口に出さなくていいからね京」

 

「しかし相手は那須与一とか武蔵坊弁慶とか出してないな」

 

 

嫉妬を堪える京を慰める傍ら、スグルが気になっていたことを呟いた。

大和もそれを懸念していたところだ。

如何にこれはサッカーとは言え肉体としては極上の部類に入るあの二人。それに主である義経が出ている以上、本気になってくると踏んだが。

 

 

「……後半で投入してくる可能性が高いな」

 

「だったら俺もシャッターチャンス! 弁慶や義経の体操服姿、高く売れる!」

 

「ヨンパチ、九鬼絡みは危険って言ってなかったっけ?」

 

「はぅ! そ、そうだった……無念でゴザル」

 

 

Fクラス男性陣はどこかのんびりしているやはり1点分の余裕と油断が生じている。

確かにこの1点は勝利にも繋がるが、同時に敗北につながりかねない。2点3点の差があれば余裕と言ってもいいのかもしれないが。

 

 

「さぁ皆さん! ハーフタイムが終了しますよ!」

 

 

真与の一言で休憩を終えた面々がグラウンドに戻っていく。

汗も拭いたし、水分補給もしっかりと行った大和も彼らに続いていこうとする最中、方に手を置かれてその動きを止められた。

クリスだった。彼女は真剣な目つきになっている。

 

 

「大和。 後半戦だが……あの作戦を実行するのか?」

 

「ああ。 これなら確実に点を取れる」

 

「それは分かるが危険すぎる」

 

「最低限の備えはしてあるし、それにSクラスに勝つためだ」

 

 

大和は自信満々に言い切った。

対するクリスは顔から心配の二文字を払拭できないでいる。けれども、頼れる軍師がこうして堂々としている。

彼を信じないのが、軍師を信じないのは騎士ではないとクリスも頭を振った。

 

 

「………分かった。 自分も、出来ることをする」

 

「頼む。 ……さぁ、行くぞ!」

 

 

クリスを納得させ、大和達もグラウンドに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、グラウンドに出たところでコートチェンジを行う。今度は大和達Fクラスが西側に、Sクラスが東側に陣取る。

ここまでは別に問題等ありはしないのだが。

 

 

『ここで2-S、出場選手の変更をお知らせするぞー』

 

『2-S、杉田君と中村君に代わって武蔵坊弁慶、那須与一が加入します!』

 

 

出てきたメンバーが問題だった。

早速問題視していた与一と弁慶の登場だ。相変わらずの中二病である与一は余りやる気が見られないが。

 

 

「さーて、義経が頑張ってるんだ……部下も頑張らなきゃ申し訳立たないってね~」

 

 

弁慶が割りとやる気を出していた。

しかも試合開始前に見たあの酔いも無くなっている。

冬馬が彼女らを最初控えに回していたのは弁慶の酔いが収まるのを待つためだった。川神水とは言え水なのだから、酔いが覚めるのも早いのだ。

 

 

「それに……マルギッテさんには早速本気になってもらいますしね」

 

「お前が言うと危険な風に聞こえるが……クラスのためです。 いいでしょう」

 

 

更にはここで冬馬が指示を出した。

それはマルギッテの眼帯を外すことだった。彼女はこれを外すことで欧州最強といわれる戦闘力を手にすることが出来る。

そのスピードは、忍足あずみのライバルと言われるほどだ。

 

 

「更には私は……ステイシー!」

 

「おう!」

 

 

あずみが声をかけると彼女の部下、ステイシー・コナーの登場だ。

彼女が持ってきたのは何かのカップ。芳醇な香りが漂っている。持ってきたそれを一口。

 

 

「………きた……来た来た来たァ!! 圧倒的なこの力ァ!!」

 

「ちょーい! ヒュームさん! 明らかにドーピングしましたよねあれ!?」

 

「違う。 コンソメスープだ。 あずみはコンソメスープを摂取することで戦闘力を上げる」

 

 

ワケの分からない体質らしい。

何やら背後から京の求めるような視線を感じる。求めているのはスープなどではなく大和から出る「ミルク」だろうが。

 

 

「その通り。 私はコンソメスープを摂取することで五感を研ぎ澄ませるんです☆」

 

「いいの!? ルールそれでいいの!?」

 

「んー特に何も言っていないしのぉ。 OK!」

 

「学長ぉぉぉぉ!!」

 

 

さすがに反論する大和だったがドーピングでもなかったため学長こと鉄心はあっさり了承してしまう。

相変わらずどこかルーズなジジイだと大和、ひいては百代やヒュームも呆れる。

とは言えこれで益々Fにとって不利になる。最高戦力の増強が行われてしまったのだから。

 

 

「では後半戦……開始!」

 

 

ルーが試合開始のホイッスルを吹いた。

瞬間に駆け出した人物が二名。それはFWのあずみと新たにFWのバッジを装備したマルギッテだった。

彼女達は一瞬にしてFクラス側の陣営に駆け込んでいく。

 

 

「ワン子!!」

 

「OK! 任せ……………!?」

 

 

前半戦からバッジを交換していなかった一子が二人の行く手を阻もうとする。

スピードに優れた彼女なら、どちらか一方は止められたかもしれない。

だが彼女達のスピードはMAXだった。その上二人も揃って。

華麗なパス回しで一子を翻弄し、そして彼女達を抜き去ってしまう。あっという間にゴールの前にまで到達してしまう。

 

 

「速ぇ……! だが俺様が止めて………」

 

「パワーではお前が上でしょうが!」

 

「今のアタイらにウスノロが追いつけるわけねーだろうが!!」

 

 

岳人が止めようとする姿勢を見せる。

先程小雪のシュートを止めて見せた彼だが、それは彼女のシュートが直線的だったからだ。

しかしこの二人の連携は完璧だ。

まるでピンボールのように互いに弾きあう。リズミカルのように見せて全く等間隔ではない。

 

 

「そこです!!」

 

「あッ!」

 

 

パスを回しながら隙を窺っていたマルギッテが、とうとうそれを見つけた。

彼女はボールをあずみから受け取り、瞬時に打ち込んだ。

岳人の反応できない速度で打ち込まれたそれは、彼の横で跳ね、ゴールに収まった。

 

 

「ゴール!!」

 

 

ルーの宣言でSクラスに一点が入ってしまった。

誰も岳人を責めやしない。それは圧倒的早さだったからだ。

 

 

『マルギッテ、そして忍足あずみ! 圧倒的スピードを武器にして同点だーっ!』

 

『武器が仕えない以上、元の身体能力が有利になってくるからね』

 

 

冷静に実況をしているこの二人。

だが武人としてあずみとマルギッテの能力を高く評価している。

何よりFクラスの面々を掻い潜ったのはそのコンビネーションが最高だったことにある。

 

 

「っくぅ……何よあの素早さは……」

 

「さすが、というべきだなマルさん……!」

 

「仕方ない……ワン子、クリス! 次からそれぞれについてくれ!」

 

 

大和の指示が飛ぶ。

それぞれに有利な相手をぶつけて止めさせるしかない。有利と言うほど有利ではないかもしれないが、ストッパーを置いておかなければ大変な事になる。

しかし、葵冬馬の眼鏡が光ったことに気付けていない大和だった。

 

 

「では再びスタート、ネ!」

 

 

またルーが笛を鳴らした。

今度は大和達が蹴る番だ。翔一と忠勝がなるべく前方に注意しながらボールを転がしていく。

するとそこに割り込む一人の男。

 

 

「活躍しないと姐御に殺されるんでなっ!」

 

「那須与一か!」

 

 

義経の部下にして天下五弓と呼ばれる腕前を持つ那須与一だった。

ついつい弓の腕ばかりに眼がいきがちだが、彼の身体能力もまさに義経の部下に相応しいものだった。

忠勝が離れようと思っても彼はしつこく追い掛け回してくる。

 

 

「チッ、風間!」

 

「おう! 俺が決めてやる………」

 

「させないよ~。 私もぬるっと活躍しないとね……」

 

 

翔一の前に弁慶が立ちはだかった。

彼女が目の前に立つとさすがの翔一も警戒しなければならない。

何せ軽く叩いただけでマルギッテが大きく後退させられるだけのパワーを持つのだ。

 

 

「ほいよっと!」

 

「おわぁ!!?」

 

 

弁慶がそのパワーで地面を軽く叩いた。

すると一気にこの学校周辺が揺れる。その衝撃で翔一は愚か、ほぼ全員が浮き上がってしまうほどだ。

そしてボールは衝撃で彼女の元へと浮き上がっていく。

 

 

「しまった!!」

 

「そして誰にも邪魔されないところ……って行ったらやっぱり空かなッ!!」

 

 

更に彼女は自分のものにしたボールを天高く打ち上げた。

そして弁慶もそれに負けないくらいに飛翔する。

この体育祭に集まっていた人間が、天を仰いだ。まさに義経の部下として相応しいその能力を見せ付けている。

 

 

「さぁーて………ここから打ち込むこの一撃……ちょっと痛いよっ!!」

 

(まずい!! ガクトと言えどもあれ食らったらタダじゃすまない!!)

 

 

弁慶の一撃。そして天空からの攻撃により合わさる重力。

間違いなく今から繰り出そうとしているシュートは岳人であろうが無かろうが病院送り確実の一撃だ。

大和がここは逃げろ、と叫ぼうとした瞬間。

 

 

「あれ?」

 

 

弁慶が蹴ったボールは、何と破裂してしまった。

彼女のパワーに耐え切れなかったのだ。空からは無残に散ったボールの破片がひらひらと舞う。

着地した弁慶はやりすぎたと頭を掻いた。

 

 

『おうおう。 あのボール、川神学園の特別仕様だぞ………』

 

『それを割るって凄いパワーだよね……モモちゃん並かな?』

 

 

武士の家柄が多く集う学園、と言うだけあってボール一つにしても簡単に割れたりしないように特別な細工、材料を施してある。

それを容赦なく割って見せた弁慶のパワーはまさに人外と呼ぶに相応しい。

Fクラスの人間が呆気に囚われる中、多くの観客が沸いた。

 

 

『すげぇ! さすがあの武蔵坊弁慶だ!!』

 

『彼女の凄いが与一も義経も凄ぇ!!』

 

『なんたってあのメイドと軍人が速すぎる! Sクラスマジパねぇ!!』

 

 

どれもこれもSクラスを賞賛する声だった。

こうなってしまうとFクラスの面々はそのテンションを下げざるを得ない。

 

 

「予想外の展開ではありましたが、思わぬ効果が出ましたね」

 

 

ベンチでは冬馬もSクラス達の士気が上がったことに微笑む。

紛れもない得点のチャンスであったが、それにも勝る効果を得られた。敵の士気が下がり、こちらの士気が上がる。

最高のシチュエーションでは無いか。

 

 

「凄いな弁慶! 与一も!」

 

「そりゃ義経の部下だもん。 これぐらいしないとね」

 

「ふん……特異点がこんなに目立っちまうと、お客さんが増えちまうだろうがな」

 

 

すっかり義経達のテンションも上がってしまっている。

口ではどうと言えども、与一ですら悪い気分になっていない表情だ。

精神面でも余裕が出てしまった今、Sクラスは最高の戦力にして最高のコンディションだ。

 

 

「ヒュホホ! いいぞ、山猿どもの鼻っ柱を追ってやれい!」

 

「ではまず、私が………」

 

 

件の如くホイッスルがなり、まずあずみがボールを足にする。

また先程のようにマルギッテと連携を決め込もうと思ったその矢先だ。

 

 

「絶望的な時……ヒーローは現れるってなぁ!」

 

「!」

 

 

翔一があずみに突っ込んでいった。

戦闘力に圧倒的差がある中、迷い無く突っ込んでいくその姿勢はFクラスの面々に輝かしく見える。

だからこそ、彼らは皆の「キャップ」なのだ。

 

 

「はっ、返り討ちにしてやる……と言いてぇが付き合ってられっか!」

 

 

下手に相手をすれば増援が来る。

多勢に無勢、幾らあずみでも拭く数人を相手にするほどの余裕は無かった。故に彼女は翔一を無視し、回り込んだ。

その先には一子がいる。

 

 

「ここはFWとしてアタシが止める!」

 

「無駄だ! アタイの五感は最高潮なんだからな!」

 

 

一子の登場にも動じることなく、迎え撃とうとするあずみ。

だが一子はその言葉を聴いて不適な微笑を見せた。

 

 

「五感が圧倒的ってことは……耳、さぞかし良いんでしょうね! わんっ!!」

 

「ぐ!?」

 

 

一子が凄まじい大声を上げた。

五感、それは味覚、嗅覚、視覚、触覚、そして聴覚。つまり耳が良くなっているという事はそれだけ音を聞き取りやすいという事。

彼女の大声は、まるで拡声器のようにあずみの耳に広がる。

 

 

「ぅぐ……だが、これくらいじゃ………!」

 

「貰ったぁ!!」

 

 

揺らいだ一瞬を見逃すことなく、一子がボールを掻っ攫う。

あずみが気付いた時には、彼女は既にゴールに向けてまっしぐらだった。そんな彼女の様子を見て情けなさそうにため息をつくのはヒュームである。

 

 

「ならばここは私が……!」

 

「そうはいかないぞマルさん!」

 

「本気モードの貴方だからこそ、二人で抑える!」

 

 

フォローに回ろうとしたマルギッテ。しかしまたもクリスが止めに掛かる。

しかも隣には京まで。

幾ら欧州最強の戦士と言えど素手で、しかも二人同時に相手するのはきつかった。

 

 

「大和!」

 

「ほい! モロ!」

 

「ぼ、僕だって……ヨンパチ!」

 

「おう! ここで活躍して……ウヘヘヘ」

 

 

一子から渡されたボールは大和へ。そして更に卓也、そして育郎へと繋がっていく。

余りにも強力なアタッカーがウロウロしているので連携で掻き乱そうとしている。

だが育郎が受け取った瞬間、FWである義経が前に出た。

 

 

「切り捨て御免! でいやぁっ!!」

 

「ぐあぁっ!?」

 

 

強烈な拳を打ち込み、育郎を吹き飛ばした。

腹にジャソプを仕込んでいたもののその一撃で随分なダメージを貰い、そしてその頼みの防具もボロボロになっていた。

 

 

「くっ! 援護に………」

 

「悪いな。 それを守るのがDFの役目ってなぁ!」

 

 

一子が動こうとしたが、そこに準が拳を固めて襲い掛かる。

戦闘力としては彼女に並ぶほどの実力を備えている準。しかも互いに素手であるが、素手は準も得意とするところ。

慌てて動作に移ろうとしている今の一子では迎撃できない。

 

 

「余所見注意だ!」

 

「ぐ!?」

 

 

忠勝が更に準の横から拳を入れた。

咄嗟にガードするが、交代させられてしまう。DFがFWと戦闘できるならその逆も然り。FWである忠勝もDFと戦えるのだった。

 

 

「あちらでは井上君が押されているか……だが義経は行くッ!」

 

「義経を止めるんだ!!」

 

 

大和の指示で翔一、スグル、育郎の三人が出る。

どれも武力では及ばないが、壁になることは出来る。しかも三人ともDFでも何でもないため武力排除が出来ない。

彼らを避けようと義経が大きく動き、そしてパスをする。

 

 

「与一!」

 

「ほれ不死川」

 

「ヒュホホホホ。 高貴なる此方が高貴なるゴールを………」

 

 

着物でも割と機敏な動きをする心が与一からボールを受け取った。

だがその瞬間、卓也がその前に立ちはだかった。

 

 

「そ、そうは行くもんか!」

 

「ちっ、山猿の処分をしたかったが……DFか」

 

 

卓也はDFだ。同じDF同士では攻撃できない。

心は彼を避けてゴールを目指そうとした。だがそこに大和がスライディングで駆け込んでいく。

 

 

「にょわ!?」

 

「キャップ!」

 

「任せろ!」

 

 

心の不意をついた大和がスライディングでボールを奪ってみせる。

そのまま翔一にボールが繋がるが、即座に小雪が襲い掛かってくる。

またも腕を翼のように広げて走りこんできた。

 

 

「あははー! 僕マルるんとバッジ交換してDFになったよー!」

 

「まずい……キャップ!」

 

 

大和が指示を飛ばす。

近くには彼女の猛攻を抑えきれるだけの戦力が無い。

何より“頃合である”と感じた大和が、翔一の耳に聞こえるように伝えた。

 

 

「了解した……ぜッ!」

 

「あー!?」

 

 

翔一がボールを蹴った。

それは他の誰でもない、コートの外に。彼は指示通り、わざとボールを外したのだ。

これによってスローインとなる。刹那、大和が手を挙げて審判を呼んだ。

 

 

「審判、チェンジ!」

 

「いいデスヨ! 誰を選びますカ?」

 

 

大和の声に応えたゲイルが近寄る。

スローインにしたのは時間稼ぎでもあり、そしてこの機に控えの選手と交代させるためである。

 

 

「福本育郎とチェンジして、熊飼満をお願いします」

 

「分かりました! 主審!」

 

「ルール的に問題なシ! 交代を認めマス!!」

 

 

主審であるルーもそれを認め、控えだった満を呼び寄せた。

彼は戦闘をしていないにも拘らずふらふらである。

それもそのはず、控えベンチに座っていた真与と千花によって適度に食べ物与えられたり、取り上げられたりの繰り返しで腹を空かしているからだ。

 

 

『大和、ここでクマーンを登場させる! そして同時に………』

 

『後半の20分終了! ロスタイムは1分です!』

 

 

実況もまさにグッドタイミングで流してくれる。

ヒュームが持ち上げた看板にはロスタイムの時間が書き込まれていた。1分。

1対1の状況である中、この1分間が勝負となる。

これでも同点であればPK戦になるだろうが、それでは勝てる見込みが少ない。

 

 

「大和……とうとうあの作戦を……」

 

「ああ。 だから何よりも………」

 

 

大和はクリスの声に応えながら目を一歩も離さなかった。

彼の先にはスローインを行おうとしている準がいる。彼からどうボールを奪うか、それに掛かっていた。

ボールがマルギッテ目掛けて投げ込まれると同時に。

 

 

「ワン子!! ボールを奪えッ!!」

 

「了解!」

 

 

一子が全身全霊をかけて一気に接近した。

瞬間的な素早さならば、マルギッテと同等以上のものだった。

さすがのマルギッテも面食らったようで必死に飛ぶが、追いつけない。

 

 

「頼むわよクマちゃん!!」

 

 

後一歩及ばず、ボールは一子のものに。

胸で受け止め、足元に下ろしたボールを一子は蹴った。

ボールは弧を描きながら熊飼の元へ。そしてそれは彼の腹に受け止められ、足元に落ちた。

と、同時に千花がベンチから動いていた。英雄が守るゴールの後ろへ。

 

 

「? お前、何をやっている」

 

「いや見れば分かるでしょ。 料理を置いてんの。 さっきの昼食の残りをね」

 

「何故そんなものを…………?」

 

 

当然英雄はその行動に気付いた。

だが別に試合に介入するものではないため、それを見逃してしまう。

最早千花に目を向けることなく前を向いた瞬間、満の様子が可笑しいことに気づいた。

 

 

「お腹………空いた………」

 

 

いつも温厚そうな彼が、何とも言えない殺気を纏っている。

思わずマルギッテやあずみ、義経も固唾を呑んでしまうほどだ。やがて彼は。

 

 

「お腹空いたよおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

吼えた。

熊飼満は大食らいだが、腹が満たされないとこの通りあらぶるクマになる。

今回の大和の最大の策にして切り札。それはこのクマちゃん暴走モードだった。

その凶暴性は武士娘達とも渡り合えるほどに。そしてそんな彼の目の前に料理があればどうなるか。

 

 

「………食べ物!! ゴールの向こうにあるぅぅぅ!!」

 

「! しまった……これかぁ!!」

 

 

英雄は気づいた。千花が何のために料理をゴールの後ろに置いたのかを。

それは満をゴールに向けさせるためだ。後は彼の足元にボールを置いておけばそれを勝手に転がしてくれる。

大地を揺らしながら満はゴールに――――否、料理に向けて走り始める。

 

 

「ちぃ、あずみ! マルギッテ! 義経!!」

 

「「「了解!」」」

 

 

英雄の指示を受け、FW三人が飛ぶ。

さすがの満も攻撃を顔面に受けないよう、走りながらボールを転がしている。

となれば腹を狙うのみ。これだけ出っ張った腹であれば仕込める防具も早々無い。そう思い込んで拳や蹴りを打ち込むが。

 

 

「ふんっ! 吹き飛んじゃえ!」

 

「うわぁぁっ!」

「くっ!」

「な、何だ!?」

 

 

満の脂肪がクッションの役目を果たし、衝撃を吸収してしまった。

更にはその吸収した衝撃を利用し、三人を弾き飛ばしてしまう。あの三人を弾き飛ばした上で満は突き進んでいく。

 

 

「まずいですね……杉田君、中村君」

 

「任せろ。 あの料理を退けりゃいいんだな」

 

「所詮は血に飢えた獣。 餌が動けば逸れるもんだ」

 

 

当然、手段を講じるのは参謀である冬馬の役目。

その食事は控え選手である千花と真与が守っている。

彼は控えに入った二人に命じ、妨害を乗り越えて料理を退けさせた。食べ物目当てに動いていた満はそれに反応してしまい。

 

 

「ごはんが………あっちに行くぅぅぅぅぅ!!」

 

 

追いかけてしまった。

しかも運の悪いことにボールを足から外してしまい、彼からボールが離れる。だがそれはこの男――――直江大和にとって好都合だった。

彼は、満が逸れたその瞬間彼の背後から現れたのである。

 

 

「行くぜーっ!!」

 

「何? 直江大和め……熊飼を盾にしていたな!」

 

 

大和はずっと、満の裏に張り付いていた。

こうすることで敵の油断を誘い、例え満が倒されたとしてもそのまま大和がボールを引き継ぐと言う作戦だった。

無論満が食事を追いかけていくというアクシデントが起きたが、偶然にもボールが彼の足元から外れたのは嬉しい誤算だった。

 

 

「不死川、準、ユキ! 防げ!!」

 

「そうは行かない!」

 

 

またも英雄の指示が飛ぶが、即座に京が割り入った。

地面を滑りながら小雪の前に立つ。彼女はDFだが、大和の邪魔にならないように壁に離れる。しかも突入した際に巻き起こした砂煙が葵冬馬達を覆った。

 

 

「けほけほっ……これは……私達の視界を遮る目的ですね……」

 

 

見抜いた葵冬馬だったが、一足遅かった。

文字通り煙に巻かれ、砂煙から脱しようとする。これによって京は間接的に司令塔からの指示を遮断させた。

その間に卓也と黒子が不死川と準の前に立つ。

 

 

「ここから先は通さない!」

 

「それがアタイらの役目系!」

 

 

彼らだけではない。忠勝や翔一、スグルもそれぞれ与一や弁慶と言った強敵を抑えておいてくれる。

中には一子のように戦ったりして直接足止めしてくれているものもいた。

FWやDFと言うルールがまさに邪魔して、思うように手出しが出来ないでいるSクラスであった。

しかも彼らが何かと足を動かし、砂煙を巻き上げている。

 

 

「な、何をするか無礼者!!」

 

「ぺっぺっ……ちっ……眼が………!」

 

「大和も小賢しいことを考えるね………」

 

 

心や与一、弁慶も砂煙に翻弄され動けないでいる。

最早誰の助けも期待できない。ならばと英雄は覚悟を決めた。

その堂々とした姿たるや、まさに王のに相応しい立派なものだった。

 

 

「行くぞ九鬼英雄ぉぉぉっ!!」

 

「敵ながらあっぱれなり! 我に突っ込んでくるか直江大和!!」

 

 

このままで行けば英雄と大和の一騎打ちだろう。距離をつめれば英雄相手でもゴールを奪える可能性は高くなる。

英雄もその危険性は承知していた。だからこそ、防ぐよりも確実な手段を使う。

 

 

「だが甘いぞ! あずみ!」

 

「はい英雄様ぁぁぁっ!」

 

 

英雄の指示を受けて、専属の従者であるあずみがそれに従った。

それは彼女がつけているバッジを、英雄に向けて投げることだった。

バッジは見事彼の手に渡り、秀雄はそれを一瞬のうちにつけた。ふんどしに。

 

 

「フハハハ! 我のカンフーを受け、貴様は沈むのだ!」

 

 

こうして英雄はGKでありながらFWの権限を手にした。凄まじく荒業だが、ルールに触れていないので許容されている。

残り時間もあとわずか10秒弱。

後は大和を持ち前の技で葬り、ゴールを守ればPKに持ち込める。そうなれば総合力で勝っているSクラスの勝利は確実だ。

 

 

「ホワッチャァァァ――――――!!」

 

「ぐはぁっ!!」

 

『大和、強烈な蹴りを受けた―――――!!!』

 

 

鋭い蹴りが、大和の顎を蹴り飛ばした。

強烈なその一撃に大和は浮き上がってしまう。燕も実況を忘れ口元を押さえてしまうほどだった。

その瞬間、英雄は勝利を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――大和の更に後ろに、クリスが来ていなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだとおおおおおおおおおおおおお!!?」

 

 

 

 

 

 

大和は、『壁』を二枚張っていた。

それは満と紛れもない、大和自身だ。つまり大和自身ですら単なる囮に過ぎなかったのである。

大和も男子だ、クリスが身を屈めればその背後に隠すことが出来る。京達に砂煙を巻き起こさせたのも、周りからクリスの存在を悟られぬためであった。

 

 

「九鬼英雄………覚悟ォッ!!!」

 

「ぐ……………ォォォォオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

 

そう、大和は英雄にFWのバッジが渡されることも予測済みだった。

まず自らがバッジを渡すなどという荒業を見せ付けることにより、Sクラスにも真似させるよう誘導した。

腕に自信のある英雄ならば尚更そうなるように仕向けて。

そして仕上げは―――――DFであるクリスがボールを、英雄ごとゴールに打ち込めばいい。

 

 

「ゴール!! ゴール!! ゴォォォォォル!!!」

 

『クリ、堂々のトドメの一点を入れたぁーっ!』

 

『そして同時に試合終了のホイッスルー! 勝者、Fクラスー!!』

 

 

クリスがゴールを決めたと同時に、ルーが二度笛を鳴らした。

試合終了を告げるものだった。得点盤は2-1と表記されている。紛れもない、Fクラスの勝利だった。

まさかの大逆転に歓声が沸く。しかしクリスは勝利に喜ぶよりも、真っ先に倒れた大和に駆け寄っていった。

 

 

「大和!! 大丈夫か!?」

 

「……ゲホゲホッ! し、しっかり決めたか……クリス………」

 

「………勿論だ」

 

 

後から一子や京、そしてFクラスの面々も駆け寄ってくれる。

何せ勝利のためとは言え、結果的に最もダメージを被ったのだ。顎に激痛がまだ残って上手く立てない。

クリスはそんな大和に微笑んだ後、肩を貸した。

 

 

「皆! 我々はこの最高の軍師、直江大和のおかげで勝利した!!」

 

「「「「「おおぉぉぉ―――――っ!!!」」」」」

 

 

クリスの透き通った声が、グラウンド中に響き渡った。

軍人の娘らしく、統率能力がここで頭角を現そうとしている。大和もそれを見ると普段のどこか抜けた彼女とは違った魅力があると感じた。

そして大和が立ち上がったことで、Fクラスはようやく勝ち鬨を挙げられるのだ。

 

 

『Fクラス、勝利を収めたーっ!!』

 

『いやぁ、前半はともかく後半は凄い根性だったね』

 

『大和か。 確かになー。 でも総合力の低さを補ったのもアイツだ』

 

『だね。 Sクラスも大和クンを舐めきっていたことが敗因だね』

 

 

実況の傍ら、燕が皮肉にも近いコメントを残した。

しかしそれはハッキリ言ってSクラスを馬鹿にするためのものではない。

大和を褒め称えるための、遠まわし的な言葉だった。そして実況を終えた直後、燕と百代はマイクのスイッチを切る。

 

 

「………ホントに凄いね、大和クン」

 

「燕。 アレは私の弟で所有物なんだからね」

 

「ごめんねモモちゃん。 私、欲しいものは全力で手に入れる主義なので」

 

「……ちょっと怖くなってきたな。 だが大和の姉として簡単には許せないなー」

 

 

密かに火花を散らしている燕と百代。

この二人が対決する日は来るのだろうか。密かに見守っていた総代、川神鉄心も自慢の顎鬚を撫でた。

そして大歓声のまま、多くの成績を収めた2-Fが今年の体育祭の優勝を飾り、大歓声のまま閉会式を迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………で、話とは何なのでしょうか父様」

 

 

閉会式を向かえ、既に生徒や教師が去り、川神は夕方を迎えた。

空では鴉が寂しく鳴いている。

そんな茜空の下で、クリスとフランクは会合していた。誰もいない、変態大橋こと多馬大橋の上で。

 

 

「すまないな、疲れているであろうに」

 

「構いませんが……」

 

「急いでいるのかね?」

 

「はい。 この後大和達……ファミリーと一緒に打ち上げをする予定なので」

 

 

体育祭が終わって、クリスはマルギッテを通じて彼に呼び出されたのだ。

何やら大事な話があるらしい、一人出来てくれと念を押されて。

かく言うフランクはマルギッテを始め、多くの部下をこの橋の近くに待機させているが。

 

 

「まずは賞賛だ。 よくぞあれだけの戦力を突破し、Sクラスから勝利をもぎ取った。 さすがだよクリス。 戦女神とはお前のための言葉だな」

 

 

やはり親バカであるフランクは真っ先に褒めちぎった。

正直彼の目から見ても勝率は薄いと考えていた。それだけにFクラスの、クリスの勝利は嬉しい。しかも決着となる1点を決めたのは彼女なのだから。

だが当のクリスは余り嬉しそうではなかった。

 

 

「………ありがとうございます、父様。 ですが……」

 

「どうした? あ、そうかご褒美か。 勿論用意―――――」

 

「それも嬉しいのですが……そうではなくて」

 

 

クリスは勿論嬉しかった。

尊敬する父親から褒められるというのは楽しみでもある。

頑張ればその分ご褒美として大好きな物をもらえるし、言葉だけでもクリスにとっては満足できた。

だが、今回は少し違った。

 

 

「今回の勝利は……大和のおかげです」

 

「大和君……か………」

 

「はい。 最初の一点を決めたのも彼、そして二点目も彼のおかげです」

 

 

胸を張って、そう言えた。

しかしフランクは余りよろしくない表情だ。とは言え怒りを露にするわけでもなく、まずは彼女からそんな台詞が出る理由を探ろうとする。

 

 

「失礼かもしれないが、彼の弄した策は余りにも回りくどすぎる。 最初からクリス、お前が運んでいれば――――」

 

「それだと奇襲性が無くなり、敵の防御が厚くなってしまいます」

 

 

フランクもその主張を認めた。

真っ先にクリスなどという最高戦力にボールが行き渡ってしまえば、一気に警戒が酷くなるだろう。

満、そして大和が壁となることで彼女への注意が無くなったことは大きい。

 

 

「それに――――大和の作戦には、もう一つ大きな意味があります」

 

「何かな? それは」

 

 

クリスにとって、大和にとってはそれこそが最も重要なポイントらしい。

軍人として素直に興味が沸いたフランクは尋ねてみる。対する彼の自慢の娘、クリスは自身が愛用するレイピアの如く、真っ直ぐとその視線を向けていた。

 

 

 

 

「自分が……仲間が、怪我を負わないようにするためです」

 

 

 

 

そう告げたクリスの脳内に一つの想い出が蘇る。

秘密基地に案内されて、自分がビルを取り壊せなどと言ってしまったあの日。大和の頭に来る言い分に、クリスは彼の卑劣な所を非難した。

その際、百代は「大和が策を挺するのは、仲間を傷つけないためだ」といった。今ならその意味が良く分かる。

 

 

「プチ川神大戦もそうです。 大和は自分達に反撃がいかないようにその身を張って行動してくれました。 ……彼は、自分にとって最高の“義”の人です」

 

 

いつの間にか、大和の自慢話になっている。

しかも彼のことを話すクリスはすごく嬉しそうだ。間違いない、と確信したフランクは微笑を漏らし、目を伏せる。

 

 

「……そうか。 直江大和か……」

 

「と、父様……?」

 

「その名が出た時、私の心は決まっているのだよ………」

 

 

一瞬、フランクからただならぬ気配を感じ取った。

まるでこれから戦いを仕掛けるような――――そんな危険な何かを。

 

 

「クリス。 私はお前に謝らなければならない」

 

「な、何ですか突然?」

 

「このフランク、お前と過ごして15年を超えるが……初めて約束を破ることになる」

 

 

まず、フランクから感じられたのは申し訳なさだった。

物心ついた時から、父と娘は様々な約束を交わしてきた。そしてどちらもそれを破らなかった。故にクリスは“義”に厚い性格となる。

そう育ててきたフランクが、まさか約束を破るとは。信じられないながらも、何か事情があるのだろうとクリスは耳を傾ける。

 

 

 

 

 

 

「………クリス。 私とドイツへ戻りなさい」

 

 

 

 

 

 

それはあまりに突然すぎて、クリスには飲み込めなかった。

 

 

 

 

 

続く




サッカーの話をかきましたが実は私、サッカーあんまり良く知らない。
ってことでテンペストです。
戦闘要素を織り交ぜたオリジナル競技如何だったでしょうか。ルールのグレーゾーンって何か活かすとちょっと快感を覚えます。
というワケで今回はグレーゾーンの応酬。大和の軍師らしさが出せたなら幸いです。
普通ならSクラス相手にするや否や一瞬でカタがつくでしょうし。
そしてラスト、フランクさんとうとう強硬手段に。果たしてどうなってしまうのか。
次回をお楽しみに!
感想ご意見、お待ちしております!
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