真剣で私に恋しなさい!X   作:テンペスト

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第十八話 黄金の矜持

日は、昇った。

土曜の正午、それに差し掛かるまで後10分。今、風間ファミリーの秘密基地である廃ビルの周りを多くのドイツ軍が取り囲んでいる。

その数、凡そ1000人。

 

 

「中将殿、配置完了しました」

 

「ご苦労。 装備に関しては?」

 

「全員エアガンにレプリカ等の非殺傷系武器であることを確認しました」

 

 

そのビルの包囲網から少し離れたところでは今回の騒動の発端にして彼らの指揮を執るフランク・フリードリヒが佇んでいた。

今回日本が部隊という事で陣営も非常に日本らしいものになっている。

幕で仕切られた空間、今この場にはフランクと彼女の補佐官であるマルギッテ、そして彼らが雇った4名の人物。

 

 

「皆もご苦労。 前金分の戦果を期待している」

 

 

フランクは背後を振り返り、雇った人物達にそう告げた。

急な注文でも従わせる方法、それは莫大な額の前金。しかも現ナマで渡すこと。

そうすることでこの最高戦力を揃えることが出来た。他にもフランクの私兵にして世界から集めた選りすぐりの戦士達を呼び寄せてある。

 

 

「さぁ、準備は整った………始めよう」

 

 

拡声器を持ち、陣営から出た。

一般人相手に動員された兵士達も彼の登場に静まり返る。

静寂を確認したフランクは拡声器を通じて勧告を出した。

 

 

『風間ファミリーに告ぐ。 我が娘を返還せよ。 さもなくば総攻撃に移る』

 

 

まるで誘拐した、とでも言わんばかりの警告文だ。

無論心外である上に一方的過ぎる物言いに従うはずも無い。

対抗するように風間ファミリーが出てくる、がその中にクリスの姿は無かった。代わりにマントを羽織った人物が大和の傍に立っている。

 

 

『お断りする。 そちらこそ大人しく退かなければ防衛のため排除させて貰う!』

 

 

大和もまた拡声器を用いて撤退を命令していた。

ここはドイツではない、政治的に彼らを相手にすることが出来ない以上互いに最後の警告文となる。

出てきた面々の中にクリスの姿が見えないため、フランクは確認を取る。

 

 

「マルギッテ。 クリスはどこだ」

 

「廃ビル内のあの部屋にお嬢様の姿を確認しました」

 

「貸せ」

 

 

望遠鏡を手に取り、覗いた。

そこは普段ファミリーが寛いでいる部屋。その中に居座っている、あの金髪が。

まるで囚われのお姫様のようだ。

肉眼ではそう確認できるが、念には念を入れなくては。

 

 

「確かにクリスのように見えるが――――君、クリスの気配があるかね?」

 

「ええまぁ。 確かにあの廃ビルから感じますわ」

 

 

雇った人物のうち、一人を呼んだ。

如何にも飄々としていそうな中年はそう断定する。裏が取れたことでフランクも安心しきった。

あのビルにいるのは間違いなく愛しい娘であると。

 

 

「ならば直江大和の傍に立っているマントの人物は誰だ?」

 

「中将殿。 報告によれば彼らは西方十勇士の内、二人を引き入れたと」

 

「西方十勇士――――中々の使い手だと聞くが」

 

 

その総合力は川神学園を遥かに超えると言う天神館の、最も優れた10人の戦士。

確かに味方としてなら相当頼りになる戦力だ。

今のところもう一人が見えないが、あのマントの人物がその一人なのではと推測する。

雇った人物も、実力的に石田三郎か島右近辺りだろう。

 

 

「だがこの圧倒的軍勢の前では無力だろう……恐るるに足らん」

 

 

勝利を確信しているフランクは再び拡声器を手にする。

 

 

 

 

 

 

『よろしい! ならば戦争だ! 我々はこの圧倒的武力にてクリスを奪還する!』

 

『こちらも俺達の力でクリスを死守する!!』

 

 

 

 

 

 

交渉決裂だった。元よりフランクも成功するとは思ってもいない。

互いに拡声器を下げると臨戦態勢に入る。

最もドイツ軍は既にレプリカとは言えその銃口を構えているが。

 

 

「撃ち方用意! ………始め!!」

 

 

現場の指揮を執るマルギッテの一斉で、一斉射撃が発動した。

無数のBB弾が向かってくる。

幾らプラスチックの弾でも強度とその速度で当たれば超絶に痛い。勿論仲間を傷つけさせるわけが無い百代が一歩前に出た。

 

 

「ハハハ! さぁ開戦だー!! 奥義、万物流転!!」

 

 

百代が溢れるオーラを形にし、目の前に障壁を張り出す。

弾はその障壁に触れると、正確に進んできた道を引き返す。当然それらは撃ってきたドイツ軍の兵士達に命中する。

 

 

「ぐあぁぁぁぁ!!」

「は、跳ね返―――――おぉぉお!」

「これが武神……あぐらぉっ!」

 

 

「そうらドンドン行くぞー!!」

 

 

一気に前線が崩れるドイツ軍に百代が追い討ちをかける。

気弾を上空に打ち上げる。するとそれが天頂で破裂して雨のように降りかかる。気弾の雨は先程の兆弾が当たらなかった兵士達を襲った。

 

 

「さぁ俺達も行くぜー!! うおらぁー!!」

 

「俺様のパワー……ドイツNo.1と証明するチャーンス!!」

 

「ふん……負ける気がしねぇ」

 

 

翔一達男性陣も一気に敵の軍勢に突っ込んでいった。

出鱈目な強さと攻撃範囲を持つ百代に圧倒され、隊列が乱れているドイツ軍に翔一の蹴りが、岳人の拳が、忠勝の突撃が炸裂していく。

 

 

「クリは渡さない!!」

 

「友達を………守ります!!」

 

 

男性陣とは別方向に一子と由紀江が切り込んでいった。

豪快な薙刀の舞が敵を押しのけ、由紀江が鋭く切り込んでいく。あっという間に敵兵がざっと50人は倒れていった。

 

 

「つ、強ぇ……でも狙撃なら!」

 

「残念だがその程度の銃撃など私にとっては蚊トンボだ」

 

 

接近戦で強い連中には狙撃が良く利く。

兵士の一人が引き金を引き、弾を乱射した。そのプラスチック弾もクッキーの硬度の前には無意味だ。

戦闘用である第二形態は防御に関しても隙は無かった。

そして彼の手にはビームサーベルが輝いている。

 

 

「友を奪おうとする貴様らは……断じて許せん! クッキー・ダイナミック!!」

 

「ぐああああああああああ!!」

 

 

鋭い斬撃が敵兵を切り裂いた。

九鬼の技術は凄まじいものだと、大和は秘密基地の入り口から感心した。傍にはマントの人物が彼の傍を離れようとしない。

勿論眺めてばかりではなく、大和が更なる指示を出す。

 

 

「大友さん! 頼むよ!!」

 

「任された! 南蛮人の軍勢と戦う好機! 何より大和君の頼みだ!!」

 

 

影から頼もしい兵力を呼び寄せた。

それは西方十勇士の一人、大友焔だった。彼女は背に二台の大型大砲を背負っている。

花火職人が実家でもある彼女は切っての火力マニア。

故にその大砲から発せられる威力は。

 

 

「得と見よ南蛮人! 大友家秘伝――――国崩しーっ!!」

 

 

一気に大爆発を起こすほどのものである。

爆風に打ち上げられた兵士達が次々と地表に落下していく。無論大和の指示に従い、秘密基地に全く影響が出ない地点を狙って撃ち込んでいる。

特に敵が密集している箇所を狙う、その的確な指示はまさに軍師だ。

 

 

「ちぃ、アレが西方十勇士の一人か―――!」

 

「ご心配なく中将。 こちらも遠距離狙撃で落とします」

 

 

マルギッテが指を鳴らすと如何にも風格のある男達が出た。

誰もが重厚感のあるライフルを手にしている。スコープも装備し、何より彼らの目はまるで鳥のように鋭い。

更なるフィンガースナップで一斉に射撃体勢に入る。

狙いは大砲を扱う大友焔、そして全体の流れを指揮している直江大和。

 

 

「放て―――――………!?」

 

 

指揮官の一言で引き金を引きかけたその時だ。

スナイパーの一人が強烈な一矢を眉間に受け、倒れこんだ。凄まじい威力だったらしく、一気に仰向けになってしまう。

戸惑っている間にまた一本の矢がもう一人を射る。

 

 

「この矢、そして正確性………椎名京か!」

 

 

マルギッテが咄嗟に双眼鏡で覗き込んだ。

秘密基地の屋上、そこには弓道部のユニフォームを着用している京が弓を構えていた。

彼女のはなった矢が、マルギッテに向かってくる。

 

 

「く!?」

 

 

矢は正確にマルギッテが手にしていた双眼鏡のレンズを打ち抜いた。

咄嗟に避けたものの、あのまま突っ立っていればやられていただろう。

レプリカの矢とは言え、当たれば大ダメージは免れないそれを京は全く寸分の狂いも無く当ててくる。

 

 

「しょーもない………さっさとクリスを諦めてくれるカナ?」

 

 

京の言葉は聞こえないが、この表情が伝えている。

これほど正確な狙撃手は放って置けば壊滅的な被害を受けることは間違いない。

マルギッテの一声で部下達が構える。

 

 

「狙え! 撃て!!」

 

 

京に向けた放たれる弾の数々。

それは彼女に当たらなかった。飛距離も弾丸のそれと変わりないはずだが、全て屋上の壁やフェンスに弾かれたり、空を突き抜けたり。

京には掠りもしないどころか、当たる気配すらしない。

 

 

「何をやっているのですか!」

 

「む、無理です! 優に700ヤードは離れています!」

 

「向こうは当てている! 言い訳は無意味だと理解しなさい!」

 

「は、はい………ぐはぁっ!」

 

 

マルギッテの一喝で再び銃口を向ける兵士達。

その何れもがリズミカルに矢に倒されていった。700ヤードも離れているとなれば弾の威力も落ち、風にも晒される影響で正確に当てるとなれば最早神業。

それをあの少女、椎名京はやってのけている。天下五弓の称号は伊達ではない。

 

 

「やったよ京! 敵のスナイパーは全滅だ!」

 

「よし。 それにしてもモロ、中で待っててもいいのに」

 

「僕だけ何もしないのはイヤだからね。 ここで戦況を大和に伝えたりする」

 

「OK、情報係よろしく」

 

 

京が「10 GREAT!!」とかかれた赤い標識みたいな看板を掲げる。

邪魔にならないように、卓也は屋上の入り口で隠れながらノートパソコンを広げていた。

パソコンには設置した簡易カメラから送られる戦場の映像が送られてくる。

その映像を元に、軍師に様々な報告をする。

 

 

「大和! 敵の部隊が右後方に回り込もうとしている!」

 

「ガクト!! 右後方に行け! 恐らく背後から奇襲をかけてくるつもりだ!」

 

「了解だぜ軍師!! おらぁぁぁっ! 退きやがれぇぇぇっ!!」

 

 

大和が耳に備え付けているインカムマイクで仲間達にそれぞれの指示を与える。

彼の指示を受けた岳人がポイントに向かうべく拳を振り上げた。

ジムで来た続けたその筋力は伊達ではなく、大の大人が一気に吹き飛ばされている。

 

 

「まゆっち、ゲンさん! 敵を中央に集めるように応戦!」

 

「了解しました!」

「任せろ!」

 

 

マイクを通じて頼もしい応答が大和の耳に届く。

忠実に由紀江と忠勝が敵を押し込んでいった。約30名ほどの猛者がまるで円を描くかのように固まっている。

 

 

「姉さんそこにダーイブ!!」

 

「応!」

 

 

固まってくれたのならそこに百代を投げ込めばいい。

彼女の圧倒的武力が着地するだけで敵を吹き飛ばしていく。まるで紙切れのように空に舞い上がるドイツ軍。

百代は嬉々として拳を振るい、残敵掃討を行っている。そんな彼女を恐れ逃げていく敵を。

 

 

「一人たりとも逃がさないぜ!」

 

「逃げる人を討つのは気が引けるけど、敗残兵を纏められると大変だしね!」

 

 

翔一と一子が、その持ち前の行動力で追撃する。

戦争において兵力は重要である。例え逃亡してきた兵士達も新しい武器を与えれば立派な戦力になる。

下手に戦力を残すよりよっぽどマシだと大和の指示が伝えられてある。

 

 

「中将殿! 一気に300名は削られました!!」

 

「あーらら、だから私をさっさと出せっつたんですよ」

 

 

余りにも押し込まれているドイツ軍。情けないと言わんばかりにあの男が出た。

既に押しつぶしてくるかのようなその殺気を放っている。

フランクは確信した。この男ならあの武神――――川神百代を止められると。

 

 

 

「では頼んだよ………釈迦堂君」

 

 

 

彼の命令を受けた男――――釈迦堂刑部が一気に飛んだ。

その顔はまさに楽しみを見つけた獣だ。彼は百代に狙いを定めると拳を振り上げる。

 

 

「富士砕きィッ!!」

 

「!?」

 

 

強烈な威力を持つその拳を、百代は下がることで避けた。

凄まじい衝撃と亀裂が地面を走る。

砂煙が腫れた浮かび上がった彼の姿、釈迦堂を目にした百代の顔が輝く。

 

 

「釈迦堂さん! 来るの速いですね!」

 

「まぁな。 あんまりにもダメダメだったからよ、つい出張っちまった」

 

「お互い大変ですねー。 こーんなことに借り出されるなんて」

 

「全くだ。 前金もらえたのはいいけどよ、これなら梅屋の方が楽しいわ」

 

 

釈迦堂こそ、川神百代対策として雇われた切り札だった。

殺傷能力のある武器の使用を自ら禁じた以上、圧倒的な武力を持つ人間が必要だ。元川神院師範代にして百代の師匠である彼ならば適任だと考えたのだ。

百代も、そして釈迦堂も口では面倒くさそうではありながらも強敵を前にして心が震えている。

 

 

「でも私としては釈迦堂さんと戦えて嬉しいですよ……致死蛍!!」

 

「へへっ、でなきゃ俺も出張った意味がねぇしな! 行けよリング!!」

 

 

百代が掌から放つ強烈な衝撃波、釈迦堂が飛ばすチャクラム状の気弾。

双方がぶつかり、弾け合った。秘密基地から離れていなければ、ヒビすら入りそうだ。大和は念のために基地から離れて戦うように指示しておいた甲斐があったと安心する。

 

 

「よし、これで川神百代は押さえが利くな………マルギッテ!」

 

「はい。 増援部隊500名、投入します!」

 

 

マルギッテの背後には、増援に駆けつけた500名もの兵隊が並んでいた。

何れもドイツ軍の中でもかなりの戦果を上げてきた兵士達。まさり選りすぐりのエリート。

彼らをここで投入することにより、一気に片をつけるつもりだ。

 

 

「狩りなさい!!」

 

 

少尉の指示が飛び、一斉に走り出した。

その手には模擬刀やエアガンなどの他、重圧そうな装甲を身に纏っている。

言うなれば重装歩兵。

 

 

「大和! 敵軍の増援! 数は凡そ……ご、500!」

 

 

インカムマイクから卓也の焦った声が飛んで来た。

折角削った兵力があっという間に回復された他、声色からして相当強そうな部隊らしい。

それでも大和は慌てなかった。既に手を打っているから。

 

 

「ああ。 頼むぜ――――川神学園の有志達!!」

 

 

大和が回線を切り替え、指示を飛ばす。

すると向かってきた兵士達を左右から挟みこむようにして一斉に駆け寄ってくるものが。

それは大和の懇願に応えてくれた川神学園の学友達だった。

中には体育会系ではないが、スタンガンなどを持って戦闘してくれる者も。

 

 

「へへっ、クリスは連れて行かせるかよォ! 大事なクラスメート(被写体)なんだ!」

 

「お前それは口に出すだけ残念だぞ」

 

「にしても意外だったな、スグルも加わるとは」

 

 

福本育郎、大串スグルもその一員だった。

彼らは後方から不意をつき、おびき寄せた敵兵をスタンガンで倒していた。育郎の理由はある意味予想通りではあるが、三次元を軽蔑しているスグルまでいるとは意外だ。

 

 

「確かに三次元の女は興味なし……それでもなぁ! 俺のクラスメートなんだよォ!」

 

「キモオタにしてはよく言った系! オラァ! クリス連れていけると思うなァ!」

 

 

熱い台詞を吐きながら、再びスタンガンを振るうスグル。

因みにこれは彼がこよなく愛するゲームの台詞でもある。でも、参戦してくれたこと事態が嬉しい。

羽黒黒子もそれを認め、存分にレスラーとして文字通り腕を振るう。

クリスは、何だかんだでクラスメートとして認識されていた。

 

 

「お腹空いたよぉおおおおお!!!」

 

「だ、ダメだ! 何だあの弾力のある装甲………ギャァッ!」

 

「止まらねぇ! 逃げ………おぶぅっ!」

 

 

育郎達の手によって腹を空かされていた満も戦線に投入された。

脂肪の鎧が思った以上の働きをしてくれたようで経験豊富な彼らも類を見ないその相手に、まるでダンプカーに跳ねられたかのごとく次々と吹き飛ばされていく。

 

 

「何をしている! 相手は高々学生! 冷静になって戦え!」

 

 

見かねてフランクの檄が飛んだ。

幾ら武士の血を引く者が多いこの川神といえども相手は所詮学生、こちらは実戦経験豊富な軍人。負ける道理が無いと兵士達を奮い立たせる。

尊敬する上官の言葉に気を保たせた兵士達が武器を構える。

 

 

「邪魔だぁぁぁっ! 芯竜―――――拳!!」

 

「ぐほはぁっ!?」

「バハマッ!!」

 

 

そこに鋭い拳が襲い掛かってきた。

それを放ったのはツルリとそのスキンヘッドを光らせるその男。

 

 

「井上準……!? 馬鹿な、2-Sの生徒まで!?」

 

 

マルギッテもよく知るクラスメートだった。

彼はボクシングの心得があり、その戦闘力は凄まじい。それに驚いたのではない。

準がこの戦場にいること自体が驚きだった。あれだけ仲の悪かった2-Sが、敵対するFクラスのクリスをかけたこの戦場に来るとは考えづらかったからだ。

 

 

「クリスがログアウト=委員長(´;ω;`) ………そんな事は許さねぇ!!」

 

「あ、なるほど」

 

 

思わずマルギッテも納得してしまった。

だがここにいる2-Sの生徒は彼だけではない。凄まじい足技で蹴り倒している、榊原小雪もその一人だ。

 

 

「大和からの応援要請! 駆けつけて当ったり前の介ー!」

 

 

過去、大和の救われた小雪はその強烈な足技で次々と敵を蹴散らしている。

それでも数はこちらが上、と言いたかったがそれも全てこの少女の前では無意味だった。

斬撃の嵐が部隊を次々と切り伏せていく。

 

 

「源義経……推参!!」

 

「同じく武蔵坊弁慶……だる~~~んと登場ー。 ま、大和の頼みだしね」

 

 

刀で敵を切り伏せた、源義経だった。隣には杯を口にしている弁慶もいる。

まさかのクローン勢の登場に戦くドイツ軍。

うろたえた地点を狙って、地を割るほどの強烈な矢が打ち込まれた。この威力は、京では出せない。

 

 

「ったく、姐御が絡まなけりゃ俺がこんな戦争(クリーク)には出ねーよ」

 

「でも来た以上やる」

 

「わーってるよ。 ま、大和にゃ姐御を抑えてくれている恩もあるしな………」

 

 

京と同じく、基地の屋上で弓を構える天下五弓の一人。那須与一だった。

相変わらず気取ったポーズをつけて京を呆れさせている。今まで気だるそうに基地で待機していたが、義経達の登場とあわせて出張ってくれた。

 

 

「どういう事だマルギッテ! 何故2-Sの面々が……!」

 

「わ、私にも…………!?」

 

 

勿論中には不死川心や九鬼英雄といった面子はいない。

でもこれだけの戦力が揃ったのであれば最早ドイツ軍など敵ではない。さすがに彼らの参戦、そして戦力を予想しきれていなかったフランクが怒声を飛ばす。

マルギッテも混乱していると彼女の携帯電話が鳴り出した。相手は『葵冬馬』だ。

 

 

「葵冬馬! どういう事ですかこれは!」

 

『こんにちはマルギッテさん。 貴方のうろたえたその声も可愛いですよ』

 

「いいからさっさと答えなさい! 何故2-Sまで加担しているのですか!」

 

『おや、大和君の言葉であれば照れるところなのに……まぁいいです』

 

 

冬馬はさすがに戦線に出るような人物ではない。

基地の中か、外か、どこか安全な場所から通話しているようだ。だが彼の所在などどうでもいい。聞きたいのは何故2-Sまで参戦しているのか。

彼はあっさりと、その答えを告げた。

 

 

 

 

 

『簡単ですよ。 マルギッテさんを帰国させたくないからです』

 

「え………?」

 

 

 

 

 

意外なその答えに、マルギッテの思考が停止した。

 

 

『クリスさんが帰国、という事は貴方も帰国するという事でしょう?』

 

「た、確かにそうですが………」

 

『皆嫌なんですよ。 クラスメートが減るのを。 大和君が呼びかけていました』

 

 

それだけ告げると冬馬は電話を切ってしまう。しかし、マルギッテにとってそれは十分だった。

これだけの仲間達が、自分の帰国を嫌がってくれていることを。大和が、それを呼びかけてくれたことを。

マルギッテにとって、それは何よりも嬉しかった。

 

 

「ぬぅ……まだまだ! マルギッテ、セルゲイ達を出せ!!」

 

「………」

 

「マルギッテ!!」

 

「は、はい中将殿! セルゲイ、リカルド、ミスマ! 出なさい!」

 

 

上官の命令に我に返ったマルギッテ。

通信機を使って指示を行った。

すると秘密基地上空にヘリが現れる。そこから投入された三つの人影。それは華麗に戦場に降り立った。

 

 

「フンガー!! オレ……テキ、タオス!!」

 

「フッ、神の眼とも呼ばれた俺の出番か……面白い」

 

「いるないるな。 上質なメス共が……全員打ちのめして俺の奴隷にしてやる」

 

 

それはフランクが抱え込んだ戦闘のエキスパート達だった。

緊急招集に応じられたのはこの三名だけだが、それでも十分だ。

ロシアより現れた230センチという巨体のセルゲイ、神の目を持つと言われたリカルド、そして自称世界最強と言う拳を持つミスマ。

 

 

「大和! 敵増加してきたわよ! ……あれ? 世界チャンピオンのミスマまで!」

 

「まずいぞ! 大友も弾薬が尽きそうだ……」

 

「報告ご苦労ワン子! 大友さん下がって! んじゃそろそろ頼みますか……」

 

 

相当強そうな人材が派遣されてきた。

確かにあれらに自由にさせてはいけない。しかも先程から大砲を撃ちまくっていた焔もそろそろ打ち止めになろうとしている。

だからこそ、大和はここで切り札の二つ目を投入した。

 

 

「板垣三姉妹! 張り切ってどうぞ!!」

 

 

更に茂みから三人の美女が現れる。

知る人ぞ知る、親不孝通りでは有名な姉妹板垣一家だった。今回は竜兵こそいないが、どれもやる気に満ち溢れている。

 

 

「きゃっほー! 大和も粋な計らいをしてくれるぜぇ!!」

 

「へぇ、世界最強ねぇ……ああいう奴こそ、豚に相応しい」

 

「大和君のためだー。 頑張ろー」

 

 

久々に暴れられるという事で天使はやる気十分とゴルフクラブを振り回している。

亜巳も女王様気質を全く崩さず、得物である棒を構えた。

大和のためと聞いて馳せ参じた辰子はどこから拝借してきたのか、バス停を手にしている。

 

 

「おいおいアイツらまで来たのか。 尚更頑張らねーとな」

 

「釈迦堂さんもやっぱり人の師匠ですね。 弟子が来た途端張り切りだした☆」

 

「まぁ、これ以上あいつらにカッコ悪いとこ見せたくねーし……な!」

 

 

弟子の登場にどこかやる気なさそうだった釈迦堂にも活が入ってきた。

更に戦いを楽しめると百代も張り切りだす。

お互いに拳をあわせると、互いに地面を滑った。師匠の激闘を見た板垣一家もやる気を出したらしく、天使はリカルドに目を付けた。

 

 

「んじゃーウチは……あのオッサンに決定ー!」

 

「俺の相手は小娘か……」

 

「板垣天使だったな! その男の目は全てを見るぞ、気をつけたまえ!」

 

 

彼と何らかの面識があるらしい、クッキーが注意を促す。

しかしそれも天使の耳には届いていないらしくゴルフクラブを構えた。武器がゴルフクラブだとは以外だったらしく、リカルドも舐めてかかる。

得物であるナイフを取り出し、切りかかった。

 

 

「でもどんな攻撃も……師匠直伝の流水の構えにゃ通用しねー!」

 

「!? 防がれ……ぐはぁっ!!」

 

 

思った以上に堅い防御に、リカルドの攻撃が弾かれた。

天使の武器であるゴルフクラブはただの攻撃用ではなく、防御用である。激しい性格からは想像できないその正確な防御で敵の攻撃を弾き、体制を崩す。

そこに攻撃を打ち込むという、彼女の必勝スタイルでリカルドが一気に沈んだ。

 

 

「ヒャッハー! 弱ぇ弱ぇ!」

 

「天、それ以上やったら九鬼の粛清が入るよ」

 

「へいへい。 ま、ウチはその他雑魚と遊ぶか!!」

 

 

姉である亜巳からのストップが掛かった。

天使は倒れた敵にも容赦なく蹴りを入れるほどの凶暴性だ。ただ彼女達でもさすがに九鬼の力には敵わず、何より姉である亜巳の命令もあり別に対象を切り替える。

そして亜巳の目の前には、ミスマがいた。

 

 

「ふん、リカルドめ役立たずだな。 その点セルゲイは――――」

 

「セルゲイってあのデカブツのことかい?」

 

 

亜巳が背後に指を差した。

振り返ってみると、何とあの巨体が浮き上がっている。投げ飛ばされたのだ。

他でもない、辰子に。

 

 

「オ、オ、オ!?」

 

「せぇーのぉっ!」

 

「ヒデブッ!!」

 

 

落ちてきたところに、辰子によるバス停のフルスイング。

パワー溢れるその一撃が、セルゲイを吹き飛ばした。巨体は打ち飛ばされ、他のドイツ軍をも巻き込む。

余りにも情けない姿にミスマはため息をついた。

 

 

「やれやれ……だから俺一人で十分だと言ったのだ」

 

「へぇ……じゃあアンタはかなり出来ると?」

 

「10秒だ、10秒で片付けてやろう。 10秒後にお前を地を這っている、豚のように」

 

 

自信満々に宣言したその10秒後。

 

 

「た、しゅけて……おね、がい……たしゅけ、て」

 

「ダメに決まってんだろこの豚がぁ!!」

 

「ぴぎゃあああああああああ!!」

 

 

あっさりと亜巳に下されていた。

醜く地を這っているのは、あの世界王者とも呼ばれているミスマである。いい悲鳴で泣き喚く彼に亜巳はドSとしての快感を覚えた。

 

 

「馬鹿な……我が精鋭達まで………!」

 

 

フランクの動揺が激しくなった。

それを見逃さなかった与一が耳に備え付けてあるインカムマイクで大和に伝える。

 

 

「大和。 敵の総大将が動揺したぞ」

 

「サンキュ」

 

「なぁに。 これで俺を狙う“お客さん”の一つが消えるわけだからな」

 

 

与一の報告に感謝し、通信を切った。

相変わらず古傷を抉るような中二病全開の発言だったが、今はそれを気にしている場合ではない。

大和は大声で辰子に呼びかけた。

 

 

「辰子さん! 道を作って!!」

 

「……うん!」

 

 

大和の言葉に、辰子のリミッターが外れる。

本来彼女のリミッターを解除できるのは亜巳だけなのだが、それをあっさり解かせるとはもう彼女の主導権は大和が握っているのも同然だった。

一気に力を解放した辰子が、予め受けていた指示通りの方向にバス停を叩き付けた。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「な、にぃ!?」

 

 

彼女が大地に打ち付けたその一撃、それが地震を起こした。

フランク達も激しく揺れてしまう。何より衝撃波が突き進み、フランク達の陣営まで『道』を作った。

大和と、そして彼の傍にずっとついているマントの人物が一斉に走り出す。

 

 

「いくぞ、遅れるなよ!」

 

「……………」

 

 

大和はマントの人物にそう告げる。

衝撃波を恐れた兵士達が道を開けてしまい、大和達はそこを突き進んでいく。

が、それをフランクが見逃すわけが無い。

 

 

 

 

 

「今だ! 行け!! ………“梁山泊”の精鋭達よ!!」

 

 

 

 

 

雇い主の指示で、今まで陣営に控えていた三人が飛び出した。

彼らはこの混戦を難なく駆け抜け、そしてあっさりと大和達を取り囲んでみせる。何れもチャイナ服のような、中国を思わせる服装を着た美女だ。

 

 

「な、何……!?」

 

「見たかね! それこそ私の切り札……“梁山泊”だ!!」

 

 

まさかこんなにあっさりと包囲されるとは思っても見なかった。

つまりそれだけ彼女達――――梁山泊という存在は凄腕を思わせる。凄腕も何も、彼女達は古来より続く傭兵部隊。

そしてその中でも最も強いと言われる三人衆。

 

 

「我が名は梁山泊の一人、天雄星………林中! 依頼主は私が守る!!」

 

 

槍を構えた美女が、道を塞ぐ。

その覇気と、動きの美しさで分かる。この人物がどれほどの実力者なのかを。勝てるわけ無い、という結論に至る。

迂回しようにもその左右にまた梁山泊が塞いでいる。

 

 

「同じくわっちは梁山泊の天微星、史進! 棒を使わせたら天下一さね!」

 

 

荒々しく棒を振り回し、その危険さを知らしめる。顔つきも凄く乱暴そうだ。

凶暴性ならば天使といい勝負かもしれない。

そして最後の一人は鋭く光る双剣を手にし、怪しい笑みを浮かべている。

 

 

「私は天暗星を継ぐ楊志。 大好物はパンツ」

 

「おい明らかに一人HENTAIがいるぞ!」

 

「因みにパンツと言っても美女のパンツのみ受け付けます。 お気に入りはリン」

 

 

最後の一人はどこか変態チックだった。

パンツが好きと公言している辺りタチ悪そうでしかもリンこと林中と呼ばれた女性は告げられた途端股を恥ずかしそうに押さえた。

そんな恥じらいに妙な魅力を覚える大和。

 

 

「ってええい!! いいからそこを退け!」

 

「させない! お前はこのまま依頼主のところに行くつもりだろう」

 

「んな事させたらわっちらの意味無くなるじゃん」

 

 

しかし仕事とあれば容赦は無いようで一斉に武器を差し向ける。

楊志も怪しく光る双剣を構えていた。

3対2ではどうみても分が悪すぎる。しかも想像以上の凄腕らしく、特に林中から発せられる気迫は由紀江や義経と同じくらいのものだった。

 

 

「おっ! 生意気そうな奴発見ー! 大和、そいつらはウチらが引き受けるぜ!」

 

「だからアンタはさっさと進みな!」

 

 

そこに天使と亜巳が援護してきてくれる。

楊志には天使が、史進には同じ棒使いである亜巳が突っ込んでいく。

頼もしい増援を受けながら、大和は林中を避けて進もうとする。

 

 

「通すわけには―――――!!」

 

「させません!」

 

 

鋭い槍の一撃を、いなす刀の一閃。

駆けつけてくれた由紀江のものだ。彼女の瞳は今、武道四天王の名に相応しいものとなっている。

林中はこの娘の実力をすぐに感じ取ったらしく、その華麗な槍捌きで攻撃していく。

神速の斬撃で、由紀江はそれを弾いた。

 

 

「大和さん、お先に!」

 

「分かった! まゆっち、気をつけろよ!」

 

「はい! ……武人として、梁山泊と戦えるのは素直に嬉しいです」

 

 

由紀江の想像以上の実力が、林中の攻撃全てを押しのけた。

その一瞬に大和とマントの人物が駆け抜けていった。

林中は悔しそうな顔を抑えきれない、と同時に凄い焦燥感に駆られた。

 

 

「ま、まずい!! ……依頼主を守らないと……守らないと!!」

 

「!? くぅうっ!!」

 

 

焦りは雑さを生み出すことになる、がそれも時に力となる。

林中はその見惚れるようで激しい槍の乱舞で由紀江を圧倒していく。由紀江も松風と会話する余裕をなくしてしまうほどの乱舞を、防御するしか出来なかった。

まるで守ることに「固執」している林中の必死さに、気圧されそうになる由紀江であったが。

 

 

「でも………負けません! 友達のために!!」

 

「依頼主を守るために!!!」

 

 

達人の域に達する二人が、決死の攻防を繰り広げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ………はぁっ……!」

 

 

大和は息を切らしながら、マントの人物と共にこの戦場を駆け抜けていく。

梁山泊に絡まれた所為で折角辰子が作ってくれた『道』がふさがり始めている。

つまり敵兵を掻い潜るのに一苦労というわけだ。回避だけなら一流である彼も一斉に襲い掛かられてはどうすることもできない。

 

 

「くたばれ!!」

「お前さえいなければ指揮系統はもう働かねぇ!」

「死ねぇー!!」

 

 

一切に三人が模擬刀を振り落としてくる。

そんな敵兵達から助けてくれるのは―――――頼りになる仲間達だった。

 

 

「おっと! 仲間に手を挙げる奴は………キャップたるこの俺が許さねぇー!」

 

「キャップ!」

 

 

翔一が敵を蹴り飛ばしてくれていた。走力のある彼が一気に加速をつけて飛び込めば、相当の威力を持つことになる蹴り。

それを食らっては敵も伸びるしかない。

残り二人も、岳人と忠勝がその拳で下してくれていた。

 

 

「ここは引き受ける! 行け!」

 

「しっかりあのバカ親父相手に決めて来い!!」

 

「ゲンさん……ガクト………ああ! 任された!」

 

 

男らしい彼らの言葉を受けて、大和達は再び走り出した。

 

 

「こ、この野郎……止まりやがグバァ!!?」

 

 

今度は別の兵士が襲いかかろうとする。だが彼は突如発生した爆風に吹き飛ばされた。

振り返り間でもない、焔が助けてくれたのだ。

 

 

「大和君! そのまま突き進めー!!」

 

 

彼女の声援に、大和は走りながら親指を立てることで返した。頼もしい援護に感謝しながら本丸目掛けて大和は突っ込んでいく。

だが降り注いでくるのは何も彼女の大砲だけではない。弾も飛んでくるのだ。

 

 

「私に任せろ!」

 

「クッキー! ナイス援護!」

 

「礼ならば……敵を討ち取ってからにしろ! クッキー・ダイナミック!」

 

 

それを防いでくれたのは、弾丸も寄せ付けないクッキーのボディだった。

彼が盾になってくれることで安心して攻撃を避けられる。射撃してきた敵は、クッキーが葬ってくれた。

感謝して大和は駆け抜けていく。

いよいよ敵の本丸も目の前―――かと思えばあの人物が。

 

 

「おっと通さないぜー☆」

 

「お、お前は……史進!? 亜巳さんはどうした!?」

 

「ああ、あの女ね。 割と強かったけど棒の使い方ならわっちが上さ」

 

 

振り返るとそこには倒れている亜巳がいた。

あの彼女をあっさりと倒して追いかけてくる辺り、やはりこの女――――いや梁山泊はとんでもない存在なのだと知らされる。

今、マントの人物に戦わせるわけにも行かない大和が何とか突破口を見つけようとする。

 

 

「ハッ、小賢しいことを考える前にここで――――!!」

 

「大和に……手を出すなー!!」

 

 

振り下ろされた棒の一撃を受け止める薙刀。

大和の目の前には、あのトレードマークのポニーテルが揺れている。

 

 

「何だお前? わっちの邪魔するな!」

 

「邪魔するわよ! この川神一子……大和を傷つけさせないんだから!」

 

「ワン子……頼んだぞ!!」

 

 

一子だった。彼女が史進の棒を受け止めてくれたことにより史進に隙が出来る。

力の限りその隙を駆け抜けていく大和達を、史進は見送ることしかできなかった。

何故なら今目の前に倒し甲斐のある相手がいるから。

 

 

「川神……へー。 川神百代の妹か……面白い!」

 

「梁山泊……誰だろうと、負けない!!」

 

 

一切負ける気がしない、とでも言っているかのように荒々しく史進は棒を振り回す。

力強く、それでいてどこか華麗な棒術。川神院でも滅多にお目にかかれない。

でも一子は怯まない。敵に立ち向かう『勇気』が、彼女に力を与えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直江大和は、敵を掻い潜っていた。

飛び交う弾、振りかかる拳、襲い掛かる模擬刀の薙ぎ払い。

その全てを避け、時には受け止め、前に進む。

時々目の前にふさがる敵は京の矢、小雪の足、準の拳が退けてくれる。彼らに感謝しながら、大和とマントの人物は、ついに。

 

 

「敵本陣………到着っ!!」

 

 

フランクの元まで、辿り着いた。

幕で仕切られたこの空間、いるのはフランクだけだった。彼は悠然と佇んでいる。

先程までの狼狽はどこか、一切揺らいでいない。

 

 

「……見事だよ、直江大和」

 

「………?」

 

「この戦力の中、よくぞ辿り着いた。 仲間達への指示も素晴らしい」

 

 

今までのフランクからは考えられない賛辞の言葉だった。

違和感を覚えずにはいられず、訝しむ。

 

 

「何か妙に優しいですね」

 

「そりゃそうさ。 私だって認めるものは認める。 何より………」

 

 

彼は腰に提げている銃を捨てた。

降伏するのではない。拳を固めてみる。指をバキボキと鳴らし、首の調子を整えている。

明らかに戦闘体制に入っていることは大和でも分かった。

 

 

「これからこっ酷い目に合う者には誰だって優しいものさ」

 

 

妙な気迫が、フランクから溢れている。

47歳とは思えない迫力が大和にも、マントの人物にも伝わっている。

 

 

「君達……私が、戦闘は苦手と思っていたかね?」

 

「軍人ですから悠々とこなすとは思っていましたが……」

 

「それはそれは……私も甘く見られたものだ………」

 

 

この迫力は、彼にエネルギーが集中していることから溢れ出しているものだ。

思わず大和たちも一歩下がらざるを得ない、そんな危険性が伝わってくる。

まるで吐き出すかのようなそんな構えを彼は取ると、溜め込んだその力を溢れさせた。

 

 

 

 

 

「メフィストフェレス!!」

 

「な!? わ、若返った!?」

 

 

 

 

 

何とあの老け込んでいたフランクの顔つきが綺麗になった。短かった髪も長くなっている。

若く、凛々しいその活気に大和は愚かマントの人物ですら固唾を飲ませる。

明らかに見て感じ取れる力は、軍人程度などではない。クリス達武士娘にも匹敵するほどだった。

 

 

「これぞ私の切り札だ……有事に備えて力を蓄えた甲斐があった」

 

「無茶苦茶な……!」

 

「その顔つき……最大の誤算とでも言うべきかな?」

 

 

フランクの言うとおり、大和はこんな技が存在しているなど考えもしなかった。

天神館の石田のように寿命を削ってまで身体能力を上げる大技は知っているが体の構造までも変化させてくるとは誰が想像できようか。

 

 

「勿論この時の私は強いぞ………しゃあ!」

 

「くっ!?」

 

 

慌てて大和が首を捻る。

そうしていなければ剛拳が彼の頭を打ち抜いていただろう。

慌てて距離をとり、フランクの間合いに持ち込まれないようにする。

 

 

「ほう、これを避けるか………だがこの時点でお前の負けだぞ大和」

 

「な、何ですって?」

 

「君がマルギッテをひきつけて助っ人に私を倒させるつもりだったのだろうが」

 

 

まだ何か誤算があるらしい、平静を装うため大和が尋ね返す。

フランクの笑みは輝かしい。まるで勝ち誇っているかのように。

 

 

「何故、この場にマルギッテがいないか分かるかね?」

 

「マルギッテさん………? まさか!」

 

 

そう、この場には彼の傍についていると思われたマルギッテの姿が一切無いのだった。

何故彼女がこの場にいないのか。大和は一つの結論に至った。

もう遅い、と言わんばかりに怪しげな微笑を漏らす。

 

 

 

 

 

「そう、今マルギッテは………クリス奪還に向かっている」

 

 

 

 

フランクは、悠々と戦場を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ! こ、こいつウチの技を………!」

 

「流水の構えだっけ? 中々面白かったよー。 せやぁっ!」

 

「う、あああああっ!!」

 

 

天暗星、楊志。彼女は梁山泊の中でも最も器用な人物と言われる。

その器用さは、一度見た技を完璧にコピーして見せるほどだ。天使の攻撃をそのまま使い、彼女の攻撃を防ぐ。

刹那、鋭い一閃が彼女に見舞った。

 

 

「お疲れさーん。 さてパンツパンツ………ん?」

 

 

倒れこんだ天使のパンツを覗き込もうとした楊志の目に飛び込んだもの。

それはフランクの傍についているはずのマルギッテだった。彼女は眼帯を外し、そのスピードを極限まで高めていた。

あらゆる兵士を掻い潜り、一気に秘密基地の入り口まで辿り着く。

 

 

「京、与一! マルギッテが入り口に来たよ!」

 

「「!」」

 

 

屋上で卓也が報せる。

全てカメラに移っていた。だがもう遅い。マルギッテは一気に駆け上っていく。

この長い廃ビルの階段を。

 

 

(お嬢様……マルギッテ少尉、ただいま向かいます!)

 

 

この戦いは、あくまで軍人として割り切っていた。

だからこそ彼女はクリスに同情しながらもフランクの命令に忠実に従っている。その目に、動きに。一切の迷いは無い。

とうとう彼女は、あの部屋に辿り着いた。

 

 

 

 

 

 

「………お嬢様、お迎えに上がりました」

 

 

 

 

 

押し開けたドアの先に、あの金髪の少女は座っていた。

こちらに目を向けず、窓だけに視線を当てている。まるでこちらを見たくないとでも言うかのように。

マルギッテはその心情を理解できた。が、任務と一瞬のうちに割り切る。

手を伸ばし、クリスを引き込もうとした。

 

 

「我々の勝利です。 ………こちらにお出でくださいお嬢様」

 

「………」

 

「お嬢様!」

 

 

行きたくないのだろう、目の前の少女は一切の反応を見せない。

痺れを切らしたらしく、マルギッテが一歩踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、彼女の四肢は見えない糸で封じられてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「な!? ぶ、ブービートラップ!?」

 

 

 

マルギッテが、完全に封じ込められた。

しかもこの巧妙さ、罠の完璧さ。明らかにプロが仕掛けたものだ。だが風間ファミリーの中に、そして彼らに助太刀した者に罠の達人はいないはず。

 

 

「………愚かなりマルギッテ。 このような罠にあっさり掛かるとは」

 

「な………お、お嬢様……じゃない!?」

 

「だがこれも直江の指示通り………任務成功」

 

「お前は……まさか!!」

 

 

気付いた時には、もう遅い。

そう背中で語っているかのように、今までクリスと信じてきたその人物が立ち上がった。

だが発せられたその声は明らかに低い。男性のものだ。

罠、そしてこの声。マルギッテの知る限り、一人しかいない。目の前の人物は衣装を脱ぎ捨て、その姿を露にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「左様。 ………西方十勇士が一人、鉢屋壱助。 ここに見参」

 

 

 

 

 

 

 

便利屋にして何でもこなす、天神館の忍者だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何!? 偽者だと!?」

 

 

その様子を、マルギッテに仕掛けていた小型マイクを通じて確認していたフランクに激震が走る。

今までクリスと信じてきた人物は鉢屋だった。

おまけにそのマルギッテも罠に嵌ってしまい、身動きが取れない。

つまり今までの作戦は全て無駄足であり、尚且つ全て大和の策の上だったことを意味する。

 

 

「しかし私は釈迦堂に確認させたはずだぞ……!」

 

 

だがどうしても解せないことがある。それは予め釈迦堂にその存在を確認させたはず。

激しく狼狽するフランクに大和は嫌らしい笑みを浮かべながら携帯電話を取り出した。

 

 

「最近の世の中って、“コレ”が便利でしてね~………」

 

「ま、まさか……釈迦堂すらも丸め込んだのかぁっ!!」

 

「と、言うよりも釈迦堂さんが連絡してきてくれたんですよ」

 

 

 

全ては大和の策どおりだった。

川神百代に対抗できる人物として雇われた人物が、実はスパイであるとはよくある展開。故にそんなことはないだろうという真理をついた作戦だった。

刑部に予め「クリスの気配を感じた」と嘘をつかせることで攻撃の目を逸らさせたのだ。

大和達の“演技”も相まって、フランクは完全に騙されてしまった。

 

 

「! ま、待て……それならば……クリスはどこだ!!?」

 

 

慌ててクリスを探し始める。

釈迦堂の言葉が嘘であった以上、秘密基地内にはいない。ならばどこにいるのか。

戦場を見渡しても彼女の姿は無い。と、目を向けてみると戦場は大変な事になっていた。

それは―――――雇った梁山泊の三人が、地伏せていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――数刻前、マルギッテの突入を確認した楊志は作戦の最終段階に入ったことを知った。

となれば自分達の役目は間もなく遂行されるという事。

 

 

「さぁて、パンツパンツ………ん?」

 

 

倒れこんでいる天使のパンツを嗅ごうとした瞬間、殺気が走った。

後方に飛びのき、その攻撃を避ける。

楊志の目の前に、新たな少女が立っていた。凛々しく刀を構えているその存在。

 

 

「源義経……参上!」

 

「義経か………君のパンツも興味あるんだ~」

 

 

日本で生まれたクローン、源義経が女性と聞いたとき楊志は激しく興奮した。

彼女のパンツの匂いを嗅いで見たかったのだ。

遥々日本まで来た甲斐があったと、彼女は喜んで愛用の武器である「吹毛剣」を構える。一方の義経はやられる気はないというように刀を構えた。

 

 

「それに君の技もコピーしたいし」

 

「……悪いが、それは許せない」

 

「そう。 それじゃこっちから…………ッ!?」

 

 

切りかかって相手の技を見ようとした時だ。隣から威圧感を感じた。

慌てて飛び上がるとそこには辰子がバス停を振り下ろしている。

地面に激しいへこみが出来、思わず青ざめた。

 

 

「よくも………よくも天ちゃんを!!」

 

「おー危ない危ない」

 

「そうだねー。 危ないねー」

 

 

避け切ったことで安全と思い込んだ楊志。

その背後には、既に弁慶が飛んでいた。彼女は武器である杖を振り回そうとしている。

顔の青ざめはとれなかった。こんな空中でパワフルと伝えられている彼女攻撃を食らえば地表にたたきつけられて終わりだ。

 

 

「なっ………くうっ!」

 

「よく避けたね。 すっごい器用さ。 でも………もう終わりだよ。 ねぇ義経」

 

「!!?」

 

 

器用さは、何も技だけではない。回避にも活かすことが出来る。

何とか身体を捻り、その攻撃を避けたものの安心できなかった。

確かに背後に気配を感じた。振り返るとそこには刀を手に飛翔している義経がいる。

 

 

「技を見てコピーするのなら………見えない速さで倒すまでだッ!」

 

「ぐ!!?」

 

 

振り返ったその瞬間、一閃が楊志の身体に走った。

急所に鋭い一撃を浴び、楊志は地面に落ちた。その身体はピクリとも動かない。それを追撃しようとする辰子を、弁慶が抑えた。

 

 

「ちょっと待って。 これ以上は良くない」

 

「でもコイツ………天ちゃんを……アミ姉を!!」

 

「それ以上やったら大和に怒られるよ」

 

 

弁慶ですら梃子摺るパワーの持ち主。だが彼女はその怒りを静める方法を大和より知らされていた。

彼女の役目は敵の撃退の他、暴走した辰子を抑えること。

少々気は引けるが、ベタ惚れしている大和の名前を出すことでその怒りを抑えた。

 

 

「………大和君………」

 

「それに今回は私達の勝ちなんだから、敵討ち終了でしょ」

 

「………そうだね……Zzz………」

 

 

渋々ながらも納得した辰子はそのまま寝てしまった。

やれやれとため息をつく弁慶。一方の義経は、不安そうに見ていた。視線の先には史進の棒に突かれている一子の姿がある。

 

 

「はっはっは! 弱っちぃねアンタ。 これなら亜巳っつぅ女の方がまだマシ」

 

「ぐぅ………ぅっ!」

 

 

倒れこんだ一子にそんな暴言を吐いている。

だが、一子は痛みを堪えながら立ち上がろうとした。杖にしているその薙刀の如く、彼女の心はまだ折れていない。

やがて立ち上がって見せた彼女の傷だらけの姿に、史進はため息を漏らした。

 

 

「ふん、何度やっても勝てるわけな――――――!?」

 

 

油断しきってた矢先、矢の雨が降り注いだ。

慌てて棒を振り回し、その全てを叩き落す。が、矢は続けて史進の隙を狙っており防戦一方に持ち込まれる。

これだけの技量をもつ人物を、一子は知っている。

 

 

「……ありがとう、京!!」

 

 

矢の支援を受けて一子は突っ込んでいく。

仲間のため、大和のため、そしてクリスのために。持てる力を振り絞り、薙刀を振り回す。

薙刀の回転数に応じて威力を挙げていくこの技こそ、一子の今の最大奥義。

 

 

「川神流………大車輪っっ!!!」

 

「っ!?」

 

 

明らかに今まで出した技と危険さが違うことを肌で感じ取った史進。

尚も降り続く矢を回転していなしながら、一子のその技を防ごうとした。

しかし楊志ほど器用ではない彼女に、矢を防ぎながら一子の攻撃を防ぐ、なんて芸当が出来るはずも無く棒は吹き飛ばされる。

 

 

「やあああああああああああああああっ!!!」

 

「ぐアッ!!!」

 

 

遠心力を持って威力を増した薙刀の一撃が、史進を吹き飛ばした。

脇腹を抉るようなその一撃を防ぎきれず、史進は木にぶつかった。激しく打ち付けられたその衝撃で、彼女は気絶してしまう。

勝った。仲間の支援があったとはいえ勝った。一子は言いようの無い嬉しさを覚えながらも。

 

 

「オス!!」

 

 

しっかりと、対戦相手への礼儀を忘れなかった。

 

 

「楊志………史進……!」

 

「焦りが出てきましたね!!」

 

 

仲間達の敗北に一番動揺をしていたのは残る一人である林中だった。

今までその必死とも言える槍で由紀江を圧していた彼女だったが、完璧な由紀江の防御、そして仲間達の敗北に精神を揺らされた。

刀の一閃で交代させられる。

 

 

「な、仲間も……守れなかった……わ、わ、私は……」

 

「………?」

 

 

何かのトラウマが思い起こされたらしい、林中は顔を青ざめていた。

早く仲間達の元へ駆けつけなければ。そんな焦りがあからさまに見て取れる。由紀江は彼女の過去など知らないが、それだけは分かった。

 

 

「私は………私はッ!」

 

「本当に友達のことを考えるのなら―――ただ冷静にいることです」

 

 

焦りを伴ったまま、林中が突っ込んできた。

凄まじい速度で繰り出されるその槍は、これ以上ないくらいの威力を持っているだろう。

当然そんなものを貰えば達人であろうが死は免れない。

―――――にも関わらず、由紀江は冷静に刀を構えていた。

 

 

 

 

 

 

その心、涅槃寂静の如く。

 

 

 

 

 

 

「斬――――――」

 

 

 

 

 

―――――林中の槍ごと斬り伏せた。

余りにも速く、余りにも鋭く、余りにも華麗なその一閃に林中は声を出すことすら出来ず沈んだ。

精神面の差が出た一幕であった。

今ここに、中国からの刺客である梁山泊は完全敗北したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………梁山泊までもが………」

 

「そのうちドイツ軍も仲間によって終わるでしょうね」

 

 

あの梁山泊ですら敗北した。

その事実も受け入れがたいが、それよりもフランクにとっては娘を探し出すことが大事だった。

だがどこにもいない。戦場にも、あの廃ビルにも。

 

 

「クリス………どこだ!? どこにいる!? クリィィィィィス!!!」

 

 

フランクの雄たけびが空に消える。

今度は大和が勝ち誇る番だった。彼はまるでもういいよ、と言っているかのように指を鳴らした。

その瞬間、ある人物が動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは今まで大和の傍についてきた―――――マントの人物。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は―――――否、“彼女”はマントを脱ぎ捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

現れたのは、金髪の髪、真っ直ぐな視線、凛々しい姿を持つ、あの少女。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリスティアーネ・フリードリヒ…………今ここに推参ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

今まで助っ人と思われたマントの人物、彼女こそがクリスだった。

フランクの眼が点になる。会いたかった娘が、目の前にいる。

だが彼女は、レイピアを構えていた。その姿に隙は無い。彼女の眼が、今にも刺しに来ると伝えてくる。

 

 

「クッ………クリスううううぅううぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!!」

 

「父様………覚悟!!」

 

 

やらなければ、やられる。

フランクは彼女を気絶させるべく、拳を振りかざしてきた。強烈なストレート。しかし彼は既にそれを見せていた。

他でもない、彼女自身の目の前で。だからこそクリスは冷静でいる。

彼女は向かってくる父親に構えた。

 

 

 

 

 

 

「零距離………刺突―――――!!!」

 

 

 

 

 

 

強烈な突きが、カウンターとして決まった。

 

 

 

「ぐはぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

 

猛烈な突きを受けたフランクは、吹っ飛ばされた。

幕をつきぬけ、激しく地面を転がり、そして止まった。フランク・フリードリヒの断末魔が、この戦場に響き渡る。

ドイツ軍、敗北の証として―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――どうやら終わったみたいだな」

 

「ですねー。 釈迦堂さんともうちょっと戦っていたいな~」

 

「いやいや俺シンドイからそれ」

 

 

響き渡った大将の断末魔に、百代と釈迦堂も終戦を悟った。

戦い足りない百代は尚も拳を向けるが満足しきった釈迦堂はもう遠慮している。

彼女も戦闘意思のないものと戦うほど節操なしではない、今回の戦いはあくまで大和の指示という事もありここで打ち切りになった。

 

 

「でも俺も楽しかったぜ。 んで天達を鍛えなおさなきゃな」

 

「梁山泊なんて出てきましたもんねー」

 

「ああ。 さて祝勝会なら梅屋でやってくれよ」

 

 

そういい残して釈迦堂は倒れこんでいる天使達のところに行った。

彼女達の怪我も後遺症が残るなどの大それたものではなく、何とか立ち上がっている。

と、周りを見渡しているとフランクが討ち取られたことを悟った兵士達がガクリと膝をついている。

 

 

「お姉様ー!!」

 

「ワン子! よくぞあの梁山泊を倒した!!」

 

 

一子が飛び込んできた。

その豊満な胸で抱きとめてやると大金星を上げた妹を精一杯褒めた。

 

 

「良かったねワン子」

 

「ってか京のおかげでもあるでしょ」

 

「でも実際倒したのはワン子だよ」

 

「ま、確かにね」

 

 

基地から降りてきた京と卓也も微笑ましい光景に和んでしまう。

幸いと言っていいのか、あれだけ激しい戦いだったにも拘らず仲間内で重傷を負ったものは見た限りいないようだ。

 

 

「やったな、ゲン。 まゆっちも」

 

「ああ」

 

「はい! 友達を……守りきれました!」

『ドンドン進化しているまゆっちを見逃すな! チャンネルはそのまま!』

 

 

岳人と忠勝が拳をあわせた。男同士ならではのやり取りだった。

そして同じく梁山泊の一人、林中を倒したまゆっちこと由紀江も褒め称えられる。やっと松風も喋る余裕が出てきたらしい、

こうなるとクッキーや焔、翔一も安心してしまう。傍には鉢屋もいる。

 

 

「終わったな、マイスター」

 

「ああ! 敵も倒し、大将首も取った! 完全勝利だ!」

 

「うむ、我らが天神館も完全勝利を掲げておるからな! 気持ちいい!!」

 

「――――長年色々とこなしてきたが、こんな清々しい依頼は初めてだな」

 

 

さて、風間ファミリーが安心が安心しているその傍では、満が相変わらず暴れていた。

必死にそれを宥めるべく、育郎やスグルが用意していたおにぎりを詰め込む。

それを食べてようやく彼は落ち着いた。

 

 

「はぁ……はぁ……収まったよ。 ありがとうね」

 

「あー良かった。 クマちゃん手がつけられねぇもん」

 

「だな。 特にこんなエンディング気分には暴れさせねぇ」

 

「見てよ。 ワン子達、すっごい嬉しそう系!」

 

 

羽黒も彼らの笑顔を見て間違いなく勝利したと確信している。

勝利、その二文字がスグル達を沸かせた。

 

 

「良かった……これで委員長、悲しまずに済むぜ」

 

「全く、このハゲは相変わらずブレないのだー」

 

「いいじゃありませんかユキ。 これでクリスさんもマルギッテさんも行かずに済みます」

 

 

いつもの仲良し三人組である準達も戦いの終わりに疲れを感じていた。

最も冬馬は物陰に隠れながら指示していたため全くの無傷である。でも、彼もやり遂げたと言う顔をしていた。

大切なクラスメートが、これでいなくならないのだから。

 

 

「義経達は勝ったぞ! 弁慶、与一! ありがとう!」

 

「ふふふ。 この後大和達と一緒に勝利の川神水を!」

 

「負けても飲むくせに……ぐおおお! 姐御、アイアンクローはやめてくれぇ!!」

 

 

源氏一派も勝利を祝っていた。

仕事をやり遂げた義経は勿論、弁慶も晴れやかな顔をしている。そして正論ながらも言ってはいけない一言を発してしまった与一は顔を鷲掴みにされている。

各々の勝利を祝っているその最中、翔一がこの戦場の中央に立った。

 

 

「皆! 色々理由はあったが………戦ってくれてありがとう!!」

 

 

翔一の声が全員に聞こえていく。

 

 

「折角だ! 皆で勝ち鬨を上げようぜ! うおおおおおおおお!!!」

 

『『『うおおおおおおおおおおおお!!!』』』

 

 

一斉に勝ち鬨で、この戦場が沸いた。

それは倒れている兵士達にとって、まるで目覚ましのように響き渡り続ける。

少年少女の勝ち鬨は、この川神の空に消えていった―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………がはっごほっ……か、完敗だよクリス……大和、君…」

 

「余り無理に喋らない方が……」

 

 

戦場から聞こえてくる勝ち鬨に、完全敗北を悟ったフランク。

彼は清々しそうに、空を見上げていた。視界には心配そうに大和とクリスが覗き込んでいる。

そしてようやく鉢屋の罠から抜け出したマルギッテが、戻ってきていた。

 

 

「中将殿………」

 

「ま、マルギッテ………ふふ……お前の忠告を、聞いておくべきだったな………」

 

 

と、言いつつもフランクは後悔していなかった。

後悔すればそれは散って言った兵士達に申し訳が立たないからである。

最も今回の戦いは皆レプリカなどを使っていたため死者は出ていないが。

 

 

「……クリス…………すまなかったね………」

 

「いえ、分かっていただけのなら………それでいいです」

 

 

クリスの思い。それはあのレイピアの一撃に全て載せられた。

直にそれを受け取ったフランクも、認めざるを得ない。

認めてくれた。嬉しさにクリスの顔も綻ぶが、彼女にはまだ一つ疑問が残っていた。

 

 

「……でも、どうしてあそこまで執拗に……?」

 

「クリス………私には……母さんではない、好きだった人がいたんだ……」

 

「え?」

 

 

クリスは驚いていた。今でこそ仲睦まじいあの母親以外にフランクにも好きな人がいたとは。

口ぶりからして、それは浮気などでは断じてない。彼の過去のようだ。

 

 

「……でも、家の掟にしたがって………諦めるしかなかったんだ………」

 

「だから………あそこまで……」

 

「でも、お前は“私”ではない………もっと早く気づくべきだったよ……ガハッ」

 

 

いよいよ呼吸も苦しくなってきたらしい。

フランクの咳も激しくなってきた。最悪、吐血もありうる。呼吸を安定させようとした大和だが、フランクに止められた。

 

 

「大和君……すまなかった………」

 

「クリスの言うとおり、分かっていただけたならそれでいいです」

 

「だが……失態は失態………後に慰謝料を送ろう……そして………」

 

 

やはり自らの非はしっかりと詫びる。そう言った所はクリスの父親らしかった。

大和もその誠意を無碍に出来ず、受け取ることを約束した。

彼に継げた後、フランクは愛しい娘に顔を向ける。

 

 

「クリス……日本が………仲間が……“彼”が、好きなのだな……」

 

「はい」

 

 

父親の言葉に、クリスは迷い無く答えた。

満足したかのように晴れやかな表情をしてみせる。

 

 

「なら……卒業まで、この国で暮らすといい………」

 

「い、いいのですか……?」

 

「ああ………お前も…………そうしたいだろう………?」

 

 

久々に見せる、フランクの父親としての顔。

今身体に激痛が走っていると言うのに、とても穏やかそうだった。それを見せられてはクリスも笑顔で頷くしかない。

こんな素晴らしい国と、仲間と、そして大和と。もう一年過ごせるなどこんなに嬉しいことは無い。

 

 

「………はい!」

 

「……それで、いい………後悔、しないよう……行動す、るんだ……ぐふっ」

 

 

娘の笑顔を、ようやく見ることができた。

フランクはようやく気付いた。愛しい娘の幸せそうなこの顔を見るためにするべきことを、そしてそれが思いのほか簡単であったことを。

 

 

 

 

 

「…………む、娘を……頼む――――………」

 

「と、父様!?」

「中将殿!」

 

 

 

 

 

とうとう力尽きた、フランクは首がだらんと横を向ける。

慌ててクリスが抱きかかえ、マルギッテが覗き込んだ。

 

 

「Zzz………」

 

「ね、寝てるだけか………」

 

「何だかんだでタフだな。 さすがクリスの親父さんと言うべきか………」

 

 

彼はただ安らかな寝息を立てている。クリスの一撃を、しかもカウンターで受けてこれで済む辺りはさすがと言うべきか。

クリスだけでなく、大和が呆れている。

でも、次の瞬間にはお互いに顔を見合わせ微笑み合った。

 

 

「………ありがとうな、大和」

 

「お礼だったら俺じゃなくて―――――」

 

 

仲間達に言えばいい、そう言おうとした矢先大和の頬に柔らかい感触が弾けた。

目を向けてみるとクリスがこれ以上ないくらいに近づいている。いや距離をなくしている。

その柔らかく、美しい唇を大和の頬に押し当てていた。

 

 

「………――――!!?」

 

「ふふっ、騎士クリスからのお礼だ」

 

 

まさかこんなに大胆になるとは思っても見なかった。

ある程度の好意は感じ取っていた。でも、まさかここまで直接行動に移るとは全くの予想GUY。

マルギッテも一瞬武器に手をかけそうになったが、グッと堪えている。

一方のクリスは嬉しそうに跳ねながら、仲間達のところに戻る。大和も頬を摩りながら、皆の下へ戻った。

 

 

「よぉクリス、大和。 バシッと決めてきたようだな」

 

「ってどうかしたの大和?」

 

 

勝利を称えてくるのは翔一。バシバシと背中を叩いてくる。

だがあんな出来事の後に色々対応できるわけが無い。すぐに彼の違和感を京が感じ取った。

そして鼻を頬に近づけて、その匂いを嗅ぐ。

 

 

「これは………クリスのニオイ!?」

 

「何でお前の嗅覚は変態じみてるんだ!?」

 

「こうしちゃいられない! 大和! 私が上書きするーっ!!」

 

「み、京!! やめっぬああああああ―――――っっ!!!」

 

 

さて、大和の貞操がピンチを迎える頃クリスは戦場の中心に立った。

そこに立っているのはこの戦いの勝者、つまり大和達に味方した者のみ。そして改めて見渡してみて分かる。その味方の多さが。

クリスは感謝の念を込めて、声を張り上げる。

 

 

 

 

「皆! 今日は………戦ってくれて、ありがとう!!!」

 

 

 

 

クリスの声が、この戦場に透き通っていった。

これ以上ないくらいの、最高の笑顔で―――――――。

 

 

 

 

 

 

因みに大和はこの後、百代に何とか救出されたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――それから次の日、風間ファミリー、そして先日の戦闘に参加してくれた一部のものがプールに来ていた。

巨大遊泳プールということだけあって流れるプール、造波プール、ウォータースライダーなど充実した設備が揃っている。

 

 

「やっぱり暑い日にゃプールが一番だなー!!」

 

「そうよねー!!」

 

 

開放的な場所に来たことで翔一と一子は非常に大はしゃぎである。

しっかり傍には浮き輪、ビーチバレーボール、ゴムボートなど遊ぶためのオプションがズラリと揃えられている。

 

 

「確かに凄いところだが………大友も来て良かったのか?」

 

「当然だよ。 あれだけ頑張ってくれたんだから」

 

「そうだね。 私もお礼をしないほど無頓着でもなんでもない」

 

 

戦友として今回は焔も参加していた。その小柄で可愛らしい外見に相応しい、プリティな水着を着ている。少々恥ずかしそうで、戸惑っている。

それでも大和と京も彼女の存在を認めている。彼らの一言で随分と気が楽になった。

西方十勇士とも交流を深める機会でもあるという事だが、ここで忠勝が辺りを振り返る。

 

 

「ところであの忍者はどうした?」

 

「鉢屋か。 水着一枚で公衆の面前に出るなど自殺行為とか言ってた」

 

「あはは。 忍者らしいねぇ」

 

 

卓也も苦笑している。鉢屋は何かと「女に気を許すと寝首をかかれる」だの、忍者らしい言動をしている。

その一貫した生き方はある意味感心するところだ。

 

 

「あれ? いないと言えばモモ先輩もそうじゃねぇか」

 

「モモ先輩ならあちらの方で義経さん達に近寄っています」

『あれですね、狩りですね分かります』

 

 

ふと岳人も百代がいないことに気付いた。

由紀江に言われて振り返るその先に彼女はいた。義経や小雪といった美少女二人をプールサイドの端にまで追い込み、物凄い興奮している。

 

 

「ふふふ、もう逃げられまい………ハァハァ……」

 

「うわー! モモ先輩が怖いよー!」

「べ、弁慶助けてくれ!! 義経達が襲われてしまうー!!」

 

 

まさしく追い詰められるウサギと追い詰める狼。

刀がない以上義経も百代を撃退できるわけもなく、ジリジリと詰め寄られる。頼みの綱の弁慶はと言うものの。

 

 

「弁慶さん。 ユキや義経さんがピンチですよ」

 

「ふふ、義経可愛い~♪」

 

「あーあ。 ダメだこりゃ。 すまんユキ、俺達じゃ力不足みたいだ」

 

 

冬馬や準と合わせて諦めの視線を送っていた。

寧ろ弁慶は追い詰められる義経の姿に萌えている。

 

 

「でもいないって言えばクリもそうよ」

 

「まーだ着替えているのか。 往生際の悪い奴め」

 

「この間のゲームで負けた罰ゲームに際どい水着だからね……」

 

 

一子ももう一人、重要な人物がいないことに気付く。他でもないクリスだ。

実は彼女は前回クイズゲームで敗北したために罰ゲームを科せられた。

際どい水着という、大和のオーダーに張本人は勿論、卓也も少々興奮してくる。彼らだけではない、岳人や冬馬も期待している。

 

 

「大和ぉ。 私の水着の紐………外していいよ」

 

「そのメビウスの輪を外した時、俺の世界は終わる」

 

「寧ろそこから始まる。 クク………」

 

 

クリスのセクシーショットに期待していると何やら京が色っぽい声と視線と仕草で近寄ってくる。

昔はガリガリだった彼女も今ではすっかり発育のいい体に。

平静を装いつつ大和は断るが、京の瞳は益々塗れてくる。

 

 

「お。 あれクリスじゃね?」

 

「どこだ!? 愛しのクリはどこだ!?」

 

「モモ先輩急に現れないでくださいッスよ……義経達は?」

 

「………ヒュームさんやクラウディオさん達に止められた」

 

 

と、ここで翔一がこちらに歩いてくるクリスを発見した。

瞬時に聞きつけた百代も現れる。どうやら義経達も紋白や英雄と同じく九鬼家の従者部隊によって見守られているらしい。

 

 

「っておい! クリス、バスタオル巻いているじゃねぇか!」

 

「あ、当たり前だろう! あんな水着、披露できない………」

 

 

ガックリと肩を落とす岳人。その理由はクリスがその身体をバスタオルで覆っているからである。

顔を真っ赤にしている。確かにあの時の制約にバスタオルを巻いてはいけない、とは言っていない。せめてもの抵抗だろう。

ならばその抵抗力をそぎ落とすまで。

 

 

「ク・リ・ス! ク・リ・ス!」

 

「や、大和!?」

 

「ク・リ・ス! ク・リ・ス!」

 

「も、モモ先輩まで………」

 

 

突然大和が『クリスコール』を駆け出した。

乗せやすい騎士様のやる気を煽る手段だ。彼にすぐ同調して百代もコールをかける。

 

 

「なんだかよく分からねぇけど俺も! ク・リ・ス! ク・リ・ス!」

 

「キャップはよく分かってからコールしろ!!」

 

 

お祭り好きの翔一まで加わってしまえば一気に場が盛り上がってしまう。

その場に来ていた一堂がクリスを取り囲み、コールをかけ続けた。

熱気は、天より差し込むその日差しをも跳ね除けてしまうほどに高かった。

 

 

「ク・リ・ス! ク・リ・ス!」

 

「目をキラキラさせるなモロ!」

 

「ク・リ・ス! ク・リ・ス!」

 

「ガクト黙れ」

 

「俺様だけピンポイントで冷たくね!?」

 

 

冷静に突っ込もうも熱いクリスコールは鳴り止むことを知らない。

忠勝など一部は参加こそしていないが、それでも止める姿勢は見られないようだ。やがて高まってくるその熱狂に観念したクリスは。

 

 

 

「………あーもうっ!! 得と拝めばいいッ!!!」

 

 

 

思い切り、バスタオルを投げ捨てた。

瑞々しいその肢体が一同の前に露になる。その白い肌が降り注ぐ日光を反射し、輝いている。

水着も非常に可愛らしい柄で、辛うじて隠す場所を隠している。

一気に息を飲んだ面々。

 

 

「や、大和…………」

 

「………」

 

「な、何とか言えッ!」

 

「あ、ああ悪ぃ。 いやいいなと思って」

 

 

偽らざる本心だった。ゲームなどでしかお目に出来ない、シミ一つ無いその肌。

美しい――――そう表現することしか出来なかった。

今ここにこそいないが、スグルが見てしまえばさすがに欲情してしまいそうな、そんな絶世の美を目の当たりに出来て大和は素直に幸せだった。

因みに翔一は「ふーん」と軽そうに鼻を鳴らしていた。お子様め。

 

 

「…………そうか。 なら、いい」

 

 

クリスはその言葉を聴けて、何よりも嬉しかった。

大分恥ずかしい思いをしたが、それを上回る嬉しさだ。そして彼女の笑顔を見てしまえば、一同もホッとしてしまう。

散々やりたい放題やってきたフランクの気持ちも、今なら理解できそうだった。

 

 

「さぁ皆! そろそろ入ろうでは無いか!!」

 

「よっしゃぁー! 行くぜみんなー!!」

 

 

クリスと、翔一のその一言で皆が呆れつつも一斉にプールに飛び込んだ。

―――――皆と一緒に飛び込んだ時、クリスは実感した。

自分はこの最高の仲間達の一員なのだと。再びこの中に入ることが出来て嬉しいと。そして―――隣に大和がいることが、何よりも幸せだと。

 

 

「ぷはぁっ! 大和!!」

 

「ん?」

 

 

水面を突き破り、クリスが息継ぎする。

隣で同じことをする大和に声をかけた。振り返るとそこには眩しい笑顔がある。

 

 

 

 

 

 

「…………忘れられないくらいに、遊ぶぞ!」

 

「……ああ!」

 

 

 

 

 

 

力強いその言葉に、力強く返した。

その後、彼らは日が暮れるまで遊んだ。水の掛け合い、飛び込み、ウォータースライダー。貴重な夏の思い出を、その身に刻み込んだ。

 

 

 

 

 

何れドイツに戻ることになるクリスだが、この日の出来事は一生忘れなかった。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あれ? そう言えばマル来てないじゃない」

 

「本当だ。 あの軍人割と恥ずかしがりやだからなー」

 

 

ふとここで一子の声が現実に引き戻した。

準も周りを見渡すが、彼女らしい姿はどこにも無い。と、ここで女子更衣室の方から赤い髪の毛を携えた女性が歩いてきた。

彼女の水着は……言うなれば南半球と北半球、である。魅力的なプルンパーンが、そこにある。

 

 

「う、うぅ………恥ずかしすぎます………」

 

「「マルさんアザース!!!」」

 

 

クリス以上に実った肢体、クリス以上に薄い水着、そしてクリス以上に赤面する顔。

突発的に大和と岳人が敬礼をしてしまう。

そこで感じる、隣からの凄まじい殺気。ハッ、と振り返るとそこにはまさに鬼のような形相をしたクリスが、殺意の波動に目覚めている。

 

 

「うぬぬぬ…………!! 確かにマルさんは魅力的だが……!!」

 

「ちょ、待てクリス!」

 

「大和の…………狼藉者ぉぉぉおお――――――!!!」

 

「俺とお前はまだ付き合っていなグハァッ!!!」

 

 

クリスの拳で、大和が打ち上げられた。

まさにその身に“刻まれた”思い出、だった。

 

 

 

 

 

 

 

………ホントに続く




どうもテンペストです。
今回でクリス編が終わりました。個人的には一番最初に構想を練り上げた回だけあって思いいれは深いですね。
でもやっぱり最後にいいところを持っていくのはマルさんだったりする件。
そして梁山泊も何気に登場。小雪ルートで暴れまくった梁山泊。強さだけなら何れもがクリス以上の強さを持つのでしょうな。
今後も梁山泊は絡ませていきたいです。因みに私はHENTAIこと楊志が割りとお気に入り。
さて次回からは幕間を2,3話挟もうと思います。お楽しみに。
では感想ご意見お待ちしております!
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