真剣で私に恋しなさい!X   作:テンペスト

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第四話 お昼寝しようよ

翌日、日曜日は快晴だった。

熱すぎず涼しすぎず、程よい心地よさ。そしてさわやかな風が多馬川の土手を吹き抜ける。

直江大和はそんな場所で寝転がっていた。

 

 

「この辺りで寝て待っててくれ、か。 釈迦堂さんもいい加減だな」

 

 

大和は愛用している携帯電話の画面を開く。

そこにはつい先日メアドを交換した刑部からのメール画面が。

話を聞く限りでは危険な人物らしいが、今はそんな印象を受けない。それに元とは言え川神院の師範代。そんな人物とコネが出来るのは美味しい。

後で一子にも連絡先を教えたことで感謝していた。彼女もまた昔の師匠と連絡しあえるのは嬉しいのだろう。

 

 

「まぁいいや。 それにしてもふぁぁ~……」

 

 

心地よい風がまた頬を撫でる。

髪もふわりと揺れ、それがまた眠気を誘う。

 

 

「……昨日勉強してたからなぁ。 ちょっとだけ寝るか」

 

 

大和は携帯電話のアラームを10分後に設定した。

これから会う人物は女性だ。向こうから仕掛けてきたとは言え待ち合わせ最中に寝ているというのは余りにも格好がつかない。

だがのんびりやさんなので時間は余り気にしないだろう。だから少しだけ寝ることにした。

 

 

「ふぁぁ~……ヤドンとカリンに挟まれて死ぬ夢がみたいや……Zzz……」

 

 

ヤドカリ軍師はそのまま心地よさに意識をさらわれ、眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(おぉ! カリンが脱いだ! ヤドンがあられもない姿に……)

 

 

軍師、直江大和は夢の中であらぬ光景を眼にしていた。

と、そこにふにゅっ、という可愛らしい効果音と共に大和は唐突に柔らかさに包まれた。

 

 

(あれ? 何だこの懐かしい感触は……)

 

 

さすがに大和も夢から覚めた。

切り替えが得意な大和はすぐに眠気を覚ます。するとそこには。

 

 

「zzz……zzz……」

 

 

可愛らしい、しかし少し大人っぽい女性が大和を抱いて眠っていた。

青い長髪が大和の身体をくすぐる。

 

 

 

 

 

「あ、板垣辰子さん……来ちゃったんだ……」

 

 

 

 

 

彼女こそ待ち合わせをしていた女性、『板垣辰子』だ。

大和との出会いは4月、たまたまこの多馬川の土手で昼寝をしていたところ抱き枕にされていたという今のシチュエーションと変わりない。

以来大和に一目惚れしたようで、ちょくちょく会っては会話、もとい共に昼寝をしている。

 

 

「………ぁ~……大和く~ん……」

 

「辰子さん。 ごめん、寝ちゃってた」

 

「いいよぉ……私も一緒にお昼寝できて嬉しかったし……」

 

 

辰子が起きた。しかし彼女は寝ること大好きな人間。

そんな彼女だからこそ、大和を抱き枕にしているのだ。それも幸せこの上ないほどに。

大和は携帯電話を確認する。後1分でアラームが発動していた。

 

 

「今日はどうしたの? 釈迦堂さん使って呼び出しなんて」

 

「大和君に会いたかったんだぁ~……」

 

 

それだけのためだったらしい。

相当なべた惚れであることに大和はどこか京に通ずるものを覚えた。

ただ彼女の場合のんびりやさんである事が働いて彼女ほどの激しさを覚えない。

 

 

「師匠がね~メリハリをつけないと修行にならないからって……」

 

「なるほど。 それで釈迦堂さん自身が」

 

「私は大和君に会えてとぉ~っても嬉しいけどね~」

 

 

釈迦堂刑部は彼女達の師匠だ。

彼女にも姉弟がいて、彼女達の素質を見抜いた刑部が彼女達に訓練を施している。

そのため、武道に関しては並外れた強さを持つらしいが。

 

 

「ぐ~……すやー……」

 

「寝ちゃったよ……」

 

 

この通り寝ること大好きだから訓練も寝ていることが多いのだとか。

ただ大和ものんびりとした空気を過ごすのも悪くは無かった。

 

 

「俺も寝るかな……まだ眠いし………ふぁ」

 

 

本来、日曜日などの休日。惰眠で潰すのはよくない。

だがこれは惰眠等ではない。有意義なお昼寝だ。そう割り切り、大和は彼女の柔らかい感触を味わいながら眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーいタツ姉!」

 

「やっぱり大和を抱き枕にしてたね。 ま、師匠からの提案だし仕方ないか」

 

 

しばらく夢見心地だったところに今度は女性二人の声が大和の耳に届いた。

十分に睡眠をとった大和の眠気はもう無いため、すんなりと起き上がる。

そこは赤髪のツインテールの、派手な服を着た少女に紫色のショートカットという、大人っぽい女性が現れた。

 

 

「姉の亜巳さんに妹の天使(エンジェル)か。 お久しぶり」

 

 

彼女達は辰子の姉妹だ。あわせて板垣三姉妹と呼ばれている。

長女『板垣亜巳』。本職SMクラブの女王というドS人間であらゆる人間をMに仕立て上げるという驚きの素質を持つ。

そして三女の『板垣天使』。見るからに活発そうな印象を受けるが。

 

 

「大和テメー!! その名で呼ぶんじゃねぇ!!」

 

 

キれやすかった。特に自身の名前が所謂DQNネームなのでからかわれ易いことを嫌い、本気で怒るのだ。

彼女の手にはゴルフクラブが握られている。刑部より授けられたゴルフクラブ護身術が彼女の戦闘スタイルだ。

 

 

「じゃぁどういえばいいんですか亜巳さん」

 

「私の振るのかい豚。 私は天って読んでるし、それでいいんじゃないかイベリコ」

 

「さりげなく言葉攻めしないでいただきたい」

 

 

亜巳の意見を貰い、天使の呼び名も決まった。

そうこうしていると会話に起こされたらしく、辰子が眠たそうに目を擦りながら起き上がってくる。

 

 

「ふぁ~……あれ? どーしたのみんな」

 

「どーしたもこーしたもねぇよタツ姉!」

 

「そろそろお昼の時間だからさ。 家に帰ってメシ作って欲しいんだよ」

 

 

板垣一家の中で料理が出来るのは辰子だけだという。

故に彼女がいなくては昼食がとれないらしい。

 

 

「……あ~そう言えばもうそんな時間~……」

 

「お昼ご飯すっぽかすほど大和との昼寝楽しみにしてたのかよ……」

 

「うん」

 

「断言されると私達がツライんだけどね……」

 

 

大和は次女に振り回される姉妹に同情を示した。

少々違うが、姉に振り回されるという気分は大和が良く知っているからだ。

 

 

「折角だし、大和君もおいでよ~。 作ってあげる~」

 

「え? いいの?」

 

「いいんじゃね? 大和が来るとタツ姉張り切ってメシが美味くなるしよぉ!」

 

「私も構わないよ」

 

 

辰子から昼食に呼ばれた。

本来ならどこかのレストランで昼食でもとろうかと模索していたところだ。

板垣三姉妹からの許可も下りたことだし、昼食代も浮くという事で大和はOKを出した。

そしてそのまま彼女達の家にご案内される。

 

 

「ケホケホッ! あ、相変わらず煙たいなこの工業地帯」

 

「ごめんねぇ大和君」

 

「しっかし今日はやたら多いねぇ……暫く洗濯は無理そうだねこれは」

 

 

彼女達は工業地帯のボロ家に住んでいる。

親もおらず安定した収入がない彼女達にはそういった住居しかないのだ。

それでも彼女達に案内されながら家に到着する。

 

 

「お邪魔しま~………げ!」

 

「おう直江じゃねぇか。 久しぶりだな」

 

 

大和は入って早々声を上げた。

中にいたのは板垣家の長男、辰子の弟こと『板垣竜兵』だ。

鍛え上げられた筋肉に鋭い目つき、ガラの悪さから分かるとおり根っからの不良で親不孝通りでは不良達の頭となっているのだ。

 

 

「久しぶりに会って『げ』が第一声はないだろ」

 

「顔を近づけるな! それが答えだ!」

 

 

大和が苦手意識をもっている理由は一つ。彼がガチホモであることだ。

ガチホモになった経緯としては元々の仕事の契約者であるマロードという人物の影響らしいが。

 

 

「で、どうして今日来たんだ?」

 

「いや辰子さんに昼食に呼ばれたからさ」

 

「ハハッ。 タツ姉に相当気に入られてるな……あ~俺って菊の花大好き」

 

 

竜兵も彼女の料理がグレードアップすることを喜んでいるようだ。

一方で彼から全く警戒を外せない大和である。

 

 

「それじゃ私はお料理作るから大和君はのんびりしていてね~」

 

「ウチはゲームやーろうっと!」

 

「私は風呂の掃除でもやるか……ボロ家でも汚いのは勘弁だからね」

 

 

三姉妹はそれぞれの持ち場についていった。

天使はゲーム好きで主に対戦格闘ゲームを中心にやりこんでいる。時々ゲーセンでは卓也やスグルと顔を合わせており、時折遊んでいるのだとか。

 

 

「じゃ俺は漫画でも読ませてもらうか」

 

「どれどれ……ほぅ。 シニモノグルイとは中々渋いチョイスじゃねぇか」

 

 

天使はゲーム好きであるほか、漫画好きでもある。

そんな彼女が買い込んだ漫画の一冊を手に取った。が、何故か竜兵が顔を近づけてくる。

 

 

「ちょ、顔を近づけ……むぐっ!?」

 

 

追い払おうとした大和だったが一瞬のうちに口を塞がれ、別の部屋に連れ込まれてしまった。

何かの物置らしいが暗くて分からない。それが恐怖心を煽る。

 

 

「な、何を!?」

 

「いやぁお前の皮膚がさ、何かこう艶かしくてよ。 誘ってきてるからさ」

 

「誘ってないわ!! 俺はノーマルじゃい!!」

 

 

断じてそっちの気がない大和は竜兵を追い払おうとする。

しかし力は彼のほうが上であり、身動きが取れない。

 

 

「大丈夫だって。 味見程度だからよ」

 

「許せるかぁー!!」

 

「ふっふっふ。 俺のピストンを受けてそんな台詞が吐けるか?」

 

「味見どころじゃねぇー!! メインディッシュになってるじゃーん!!」

 

 

なんていっている間に竜兵はタンクトップを脱いだ。

ガッチガチの筋肉がそこにある。今の大和にはそれが狂気にしか見えない。

 

 

「最近九鬼の監視が酷ぇからよ、男狩り全然してなくてムラムラしてたんだよ」

 

「やめろぉ!! ズボンに手をかけるなァ!!」

 

 

竜兵の息遣いが荒くなってきた。

さすがの大和も冷静さを欠き、脳内が恐怖で支配される。

とそこに差す、希望の光。

 

 

「……リュウちゃん?」

 

「げっ!! た、タツ姉!!」

 

 

光の正体は辰子だった。彼女が押入れの扉を開けてくれたのだ。

大和の顔が希望に溢れる一方、竜兵の顔は絶望に塗れていく。

 

 

「……大和君に何しようとしてたの?」

 

「あ、いや……お、押入れの中を見せてたんだよ! 珍しいものがあるってな!」

 

「何してたの?」

 

「ヒュー! 理由を求められたのに全く取り合おうとしねぇー!!」

 

 

今の彼女に、先刻までの穏やかさは無い。

いつも閉じられている眼が開き、緑色の眼光が滾る。彼女の周り凄まじいオーラがあふれ出そうとしていた。

 

 

「大和君を襲おうとしてたんでしょ?」

 

「ちょ、襲うとかじゃなくて……」

 

「辰子さん! 竜兵はただ味見しようとしてただけなんだ!」

 

「大和テメェ!! フォローのようなトドメを差すんじゃねぇ!!」

 

 

竜兵が彼の口を塞ごうとした時には、もう遅かった。

今の辰子にあの優しい表情は欠片もない。まさに獣の顔だ。

 

 

「リュウちゃん……世界一周しようか。 きっと心が変わるよ」

 

「そりゃ姉の手で世界一周させられれば心も擦り切れる」

 

 

あの猛々しい雰囲気は何処か、竜兵はすっかり辰子相手に腰が引けていた。

彼女は板垣一家の中で最も危険なのだ。普段は亜巳の抑制によりその力と凶暴性を抑えられている。

が、彼女からの許可が下りるかもしくは大好きな大和に危機が及ぶ際にはそのリミッターを外す。

 

 

「今からこの大地を持ち上げるね」

 

「タ、タツ姉ぇ!! もうしない!! もうしないからよォォォォ!!!」

 

 

竜兵は涙目になっている。

彼女のパワーは、それだけならば百代すら凌ぐといわれているほどだ。だから釈迦堂も武道の基本だけを教え、後は基礎を伸ばすだけの特訓をしているという。

そんな彼女に掴まれればミンチより酷くなることは確かだ。

 

 

「辰子さん、確かに怖かったけど何もされてないわけだし反省しているしやめてあげて」

 

「……大和君はそれでいいの?」

 

「うん。 血って張り付くと中々綺麗に出来ないから」

 

「理由は納得いかねぇがナイスフォローだ直江!!」

 

 

竜兵は九死に一生を得るために必至に首を縦に振っていた。

彼女の一睨みで、竜兵は更に激しく首を振る。何より大好きな大和の意見、辰子はあっさり表情を緩めた。

 

 

「……うん。 じゃ、いいや」

 

「ハァ~ッ……し、死ぬかと思った……」

 

「次は無いからねリュウちゃん?」

 

 

胸を撫で下ろすと同時に辰子の鋭い視線。

背筋が凍ったかのように竜兵は背を伸ばし、ビシッと敬礼。辰子は威嚇完了したことを悟るとまたあの穏やかな表情に戻す。

 

 

「あ、そーだ。 ご飯出来たよ二人とも」

 

「もう作ったんですか?」

 

「大和君に美味しいもの早く食べさせてあげたかったし、お客さん来てるし」

 

「お客さん?」

 

 

大和は自分のために料理を仕上げてくれる嬉しさを感じると同時に来訪者の存在に首を傾げた。

こんな彼女達を尋ねる人物は相当限られてくる。というか一人しかいない。

 

 

「おう大和。 上がらせて貰ってるぜ」

 

「やっぱり釈迦堂さんでしたか」

 

 

辰子達の師匠、釈迦堂刑部しかいない。

彼はさも当然かのようにちゃぶ台の前に座って寛いでいた。こうしてみると本当に彼が父親のように見えてならない。

 

 

「竜兵~疲弊しきってんなぁ。 辰子に相当シボられたかぁ?」

 

「ああ。 ったく、アミ姉の許可なしにリミッター解除とかどんだけ直江好きなんだか……」

 

「だから男はやめて40手前の女狙えっつってんだ」

 

「おっさんの趣味はイマイチ理解出来ねぇ」

 

 

どっちもどっちだ。大和は心の中で突っ込んだ。

そんな会話そっちのけで辰子は料理をちゃぶ台の上に並べていく。

 

 

「おいおい! から揚げとかあるぜ! マジかよ!!」

 

「エビフライ、サラダ、スープ、ローストビーフ……クリスマスでも食べないよこんなの」

 

「やれやれ。 タツ姉本当に直江大好きだな」

 

「よっしゃ。 予想通り美味いメシにありつけるぜ~」

 

 

一家の面々も並べられた料理の数々に驚いていた。無論大和もである。

刑部はただ飯を集りに来ただけらしい。聞けば今日はバイトが無いため、賄いが食べられないのだという。

だから大和をこの家に送り込んで昼食のグレードアップを狙ったのだ。

 

 

「はい、これは大和君の分ね」

 

「ありがとう辰子さん」

 

「みんな、大和君の分取ったら許さないからね」

 

 

態々辰子が大和の分を別の皿に移して盛ってくれた。

最後に睨みを利かせて家族全員に警告する。この中で彼女に勝てる人間は釈迦堂しかいないため、亜巳達も狙わないことを決めた。

 

 

「「「「「それじゃいただきまーす」」」」」

 

 

音頭と同時に凄まじい速さで手が動かされた。

我先にと言わんばかりに板垣一家、刑部が食事に手を伸ばしている。

板垣一家の食事はこうしてご飯の奪い合いになるのが日常茶飯事であるという。

 

 

「あーそれウチのエビフリャー!!」

 

「甘ぇっつってんだよ天」

 

「ふふん。 このローストビーフは私の……あれ?!」

 

「ハハッ、お前ら全然なってねぇな。 俺が全部食っちまうぞ~」

 

 

大和の眼では全然捉えられなかった。

ただ皿を見る限りでは刑部が多くの食事を手にしている。実力の差だろう。

 

 

「ふぅ……辰子さんが別に盛ってくれなかったら今頃空腹だよ」

 

「そうだね~」

 

 

そう言いながらもしっかり自分の取り分を取っている辰子であった。

 

 

「大和君、美味しい?」

 

「うん。 さすが辰子さんだ」

 

「ありがと~」

 

 

大和に料理を気に入って貰えたらしく辰子は幸せそうだ。

その一方で竜兵からしっかりから揚げを奪い取っている。

 

 

「あー食った食った。 おい辰子、美味かったぜ」

 

「師匠もありがと~」

 

「ううー……殆ど師匠に取られたような気がする……」

 

「その分辰がたくさん作ったんだ。 いつもとほぼ変わらないだろ」

 

「何より美味かったしな」

 

 

満足と言わんばかりに刑部は爪楊枝で歯茎の間を掃除している。

こうしてみると本当に父親のように見えてならない。

 

 

「ま、いつもメシ食わせてくれてるしな。 ほれ辰子」

 

「師匠、これ……お金?」

 

 

バイト料から捻出してくれた釈迦堂からの小遣いだった。

彼からの小遣いという前代未聞の事態に板垣一家全員が眼を見張る。

 

 

「ま、実際直江に対しての感謝だがよ。 ウチをご贔屓にしてくれてる、な」

 

「まぁ俺じゃなくてワン子が行きたがるんですけどね」

 

 

ワン子こと一子は梅屋の常連だった。

美味い上にボリュームもあり、お財布に優しい。何より元とは言え師範代がいるのだ。一子にとってこれ以上馴染みやすい外食は無い。

 

 

「折角だし今から外で遊んで来いや」

 

「師匠~……ありがと~」

 

「そん代わり今後もメシ食わせて貰うのと訓練はサボるなよ~」

 

 

実際の目的はそれだったらしい。

だがそれでも辰子は大和とデートが出来ると大はしゃぎだ。

それを見ると彼女にだけ小遣いを上げたという文句を言いたい他の面々も毒気が抜かれてしまう。

 

 

「それじゃ行こうか大和君」

 

「うん。 折角だし辰子さんのコミュニケーション力も上げていこうか」

 

 

大和からすれば家族以外どうなってもいいという閉鎖的な思考も持っている彼女の方針を直す魂胆らしい。

大和も折角なので板垣一家とコネを持てることは嬉しいのだがその閉鎖的な思考で他人を傷つけるのは憚られる。

そこでこれを機会に他人との関わりを深め、衝突、ひいては暴力行為に走らないように出来る。

 

 

「じゃ行ってくるねぇ」

 

 

辰子はそのまま陽気に外に出て行ってしまった。大和をつれて。

 

 

「……しっかし師匠が小遣いとか本当にどういう魂胆だよ」

 

「さぁねぇ。 これも川神に適応した影響なのか、一子の影響なのか……悪くねぇけどな」

 

「師匠。 寝るんなら外で寝てください」

 

「光学スモッグに巻かれろってかこのドS」

 

 

今日も板垣一家は何やかんやで平和だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊ぶんだったらラ・チッタ・デッラかな」

 

「うわーお洒落なお店が一杯だねー」

 

 

二人はイタリア商店街に来ていた。

ここにはイタリアンを模した商店街だけあってお洒落な店が多い。ブティック、喫茶店、映画館と若者が退屈しない全てがここにある。

 

 

「因みに辰子さん、お洒落は?」

 

「しないなー。 誰かのために綺麗になるってのは面倒だし」

 

 

ある意味その発想も間違っていない。

誰かが喜んでも、結局自分が楽しくなければ意味が無いのだから。

 

 

「でも大和君がしてほしいっていうなら……いいかも~」

 

「あ、あはは……そういや釈迦堂さんから幾ら貰ったの?」

 

「そう言えば中身見てないね~」

 

 

ここで大和が所持金を確認する。

いざという時のために大和も財布にある程度入れてきている。しかし折角刑部が汗水たらせて加勢でくれたお金だ。

綺麗に使いきれるように計算するのも軍師としての手並みだ。

 

 

「えーとね……野口さん三人」

 

(ビミョーな額だな)

 

 

遊ぶにしては少々足りない気がする。

とは言えあの釈迦堂がくれたお金なのだ。文句を言うのはさすがに場違いだと大和は口に出さない。

寧ろこの少ない軍資金でどのように効率よく、楽しく遊ぶか。

 

 

「それじゃゲーセンに行くか」

 

「ゲーム? 私、天ちゃんみたいに上手くないよ?」

 

「やることが大事だよ。 他の人ともコミュニケーション取れるかもしれないし」

 

「家族以外あんまり興味ないんだけどなぁ……」

 

 

大和はとりあえずゲーセンに行くことを提案した。

メダル換金すれば、上手くいけば少ない元手でたくさん遊べるかもしれない。体感ゲームなど典型的な例だ。

辰子も他人には興味なさそうだが、折角の大和の提案なので受けることに。

 

 

「んじゃ早速……ハッ!?」

 

「どしたの?」

 

「辰子さん隠れて! そこの明らかに目立たない死角に!!」

 

 

大和の物言いは明らかに必死だ。

事情が飲み込めない辰子だったが、とりあえず従い隠れる。まるで潜入操作に挑む蛇のようだ。

彼の視線の先には、不動明王のオーラを背後にするあの少女が。

 

 

「ここに来たのムサコッス?」

 

「はい椎名先輩。 こっちに直江先輩が女の子と一緒に歩いてきたのを見ました」

 

「そう、ありがと。 クク」

 

 

京だった。どうやら大和と辰子の遊びを嗅ぎ付けてきたらしい。

情報提供者は弓道部の一年生、京の後輩にして紋白と同じ1-Sに所属する武蔵小杉。常にブルマと体操服を着ている。

 

 

「ありがとう。 今度弓道で面白い技教えるから」

 

「ありがとうございます先輩! この武蔵小杉、プッレーミアムに習得して見せます!」

 

(そうそう京。 人と会話する時はギブアンドテイクも大事……ってヤッベェ!!)

 

 

大和は今、己が立たされている立場を理解した。

気がつけば辰子を連れて遊びに出かけている。端から見ればデート以外の何者でもない。大和自身、彼女に恋愛感情をまだ抱いていないが見つかれば言い訳のしようが無い。

 

 

「それじゃ私はランニングに戻りますね。 プッレーミアムな明日のために!」

 

「うん。 それじゃ頑張ってね」

 

「はい! この武蔵小杉! 打倒九鬼紋白を目指して!」

 

 

武蔵小杉はそのまま去っていった。

彼女は元は1-Sの委員長で一年生最強となり、徐々にのし上がっていくという野心家だった。

だが九鬼紋白の登場で1-Sの実質的主導権を奪われた他、黛由紀江という戦闘力においてもチートレベルの相手がの出現に修行に励んでいた。

 

 

「ククク。 こちら京。 ラ・チッタ・デッラにて大和の目撃情報を入手」

 

『こちら黛。 ただいまそちらに向かいます』

 

(電話の会話相手は……まゆっちか!? そりゃマズイ!)

 

 

大和は大いに焦った。黛由紀江は武道四天王として他人の気配を探れる能力に長けている。

つまり彼女が到着した途端、大和の位置は簡単に割り出される。

しかもどういうことか京と協力関係にあるようだ。

 

 

「辰子さん! 悪いけどゲーセンは後にしよう! 別のオススメスポットへ!」

 

「う、うん」

 

 

さすがに彼女に見つかればどんな糾弾をされるか。

想像するだけで恐ろしい。

何よりこの辰子がそれを許すはずが無い。下手をすれば京にも危害を及ぼす可能性がある。

 

 

「よし金柳街商店街の方に行こう!」

 

 

大和は咄嗟にそこが思い当たった。

ここラ・チッタ・デッラからその商店街まで遠く離れていない。辰子を連れた先、そこには昔を感じさせる店が並んでいる。

 

 

「あ、ここか~」

 

「あれ? 知ってるの?」

 

「私、ここでご飯の食材を買ったりするんだ~」

 

 

言われればなるほど、納得だ。この商店街には安いスーパーもある。

言うのもおこがましいが、収入が安定しているわけではない板垣家からすれば安いスーパーの存在は押さえておくべきだ。

 

 

「ありゃりゃ。 失敗したかな」

 

「でもいいよ。 私、大和君とお出かけしているだけで嬉しいから」

 

 

辰子の顔はほんのり幸せ色に染まっている。

今でこそ恋愛感情はないが、彼女と結ばれる未来があるのだろうか。それとも別世界の自分は彼女と関わっているのだろうか。

 

 

「おうお前ら! ってなんだぁ? 見かけねぇ奴連れてんなバッキャロー」

 

「あ、店長。 こんにちは」

 

 

そう考えていると威勢のいい声が聞こえた。

振り返ると頭にタオルを巻いた叔父さんが立っている。翔一のバイト先の店長だ。

彼は古本屋を経営しており、昔から風間ファミリーの面倒を見ていたこともある気のいい人。

 

 

「デートって奴かぁ? バンダナにも見習わせてぇぜ」

 

「ち、違いますよ」

 

「え? 違うの大和君」

 

「ハッハッハ! お邪魔して悪かったなバッキャロー!」

 

 

江戸っ子口調で「バッキャロー」が口癖の彼だが人情味がある。

そのため翔一もよくここにバイトに訪れており、その図はさながら頑固親父とその息子と言った印象だ。

彼は笑いながら詫びを入れ、店に戻っていった。

 

 

「全く……。 よし、折角だし天使達に何かお土産を買っていこう」

 

「いいねぇそれ」

 

 

正直それだと3000円では収まらない気もするが、多少の出費は大和が出すことにした。

女の子に奢らせるのも気が引けるからだ。

 

 

「音楽に興味ない?」

 

「私はあんまり……天ちゃんやアミ姉は好きそうだけど」

 

「じゃこれを機に辰子さんも聞いてみたら? 安いCDショップがある」

 

 

大和はオススメのCDショップに案内した。

と言っても古い物を専門に扱う店で、それ故レトロ好きな客が集まる。

そしてこの店には大和の知人がアルバイトとして勤めている。

 

 

「おう直江か! 女連れじゃないか」

 

「ちょっと違うけどな。 頼んでおいた例のCDある?」

 

「ホラよ。 タダにしてやるんだから今度勉強を教えてくれよな」

 

「俺でよければ」

 

 

ギブアンドテイクの関係。大和は今回、ギブしてもらうことでCDをタダで入手できた。

大和の成績は学年でも14位と中々の強者である上にコミュニケーションがとりやすいとの事なので勉強会にお呼ばれすることも多々。

 

 

「で、すぐに眠りにつけそうな心地よさそうな音楽とかない?」

 

「それならあそこの棚にあるが……」

 

「もしそれただでくれるなら期末のテスト範囲、少し教えてやってもいいぜ」

 

「マジか! よし、持っていきな」

 

 

そして今度は大和がギブすることでテイクが来る。

こうして大和は交友関係を広げ様々な人間から支援を受け、自らの利益とする。

今回はCDをただで、しかも二枚入手することが出来た。

 

 

「はい辰子さん。 このCDあげる。 心地よい音楽だから安らかに眠れるよ」

 

「ありがと大和君~! でもよくただで貰えたねぇ」

 

「ギブをすればテイクが来る。 そういう関係を作っておくと自分の利益になる」

 

 

大和が得意げに携帯電話を弄る。

開けば様々な人物からメールが来る。お誘いのメール、救援のメール、感謝のメール。人付き合いが得意な大和はそれすべてに返信する。

そして京からの通話が掛かってこないように電源を切った。

 

 

「へぇ~。 大和君って友達多いんだぁ」

 

「ただね、俺はそういう関係の奴は友達じゃないって割り切ってる」

 

「そうなの?」

 

「うん。 そいつらは俺が大ピンチになっても身を挺して守ってくれない。 逆に俺も身を挺して守ってやる必要は無いって関係。 あくまで気軽にギブアンドテイクする程度」

 

 

それは大和の父の教えから来ている。

彼の性格の全てがほぼ、父親から受け継がれたものだ。実際大和は父を尊敬しており、その教えに感謝している。

 

 

「逆に何も考えず、身を挺して守り守られる関係が友達。 それが風間ファミリーってワケ」

 

「なるほどねぇ。 じゃぁ私はどうなのかな?」

 

「風間ファミリーとは違うけど……お友達、かな」

 

 

大和は無難な答えを出した。

正直板垣家とは結構深く関わっている。そのためただの知人程度とはいえない。時たま食事することもあるので、大和は友達という位置づけにした。

 

 

「……まだお友達かぁ~……」

 

「辰子さん?」

 

「でも……これからだよねぇ」

 

 

辰子が抱きついてきた。

まるでマーキングをするかのように、いつもよりも少し力が篭っている。

 

 

「!? 殺気……辰子さん、今度はこっち!」

 

「わ!?」

 

 

その時、大和の高い回避能力が瞬時に物陰に足を運ばせた。

静かに物陰から覗けばそこにはクリスがいる。

 

 

「ふむ、大和がここに来たと聞いたが……」

 

「ああ。 確かに見たぜ。 誰か連れていたようだがな」

 

 

しかも隣はゲンさんこと忠勝がいる。

彼に関してはまだファミリーでなくとも信頼性が高いのでクリスも疑いの余地が無かった。

彼女もまた大和を探しているらしい。

 

 

「こ、今度は仲見世通りに行こう!」

 

 

ここに留まるの危険と判断した大和は仲見世通りに行くことに。

なるべく迂回する形になった。

辿り着いた商店街は昔から続く老舗が多い、風情あるとおりだった。

 

 

「うわ~。 色んな食べ物が一杯あるね~」

 

「そうだ。 折角だし和菓子買っていくか。 いい店があるんだ」

 

 

大和は辰子を少し待たせ、知り合いの店に向かった。

そこにある和菓子屋の前では見たことのある美女が客寄せしている。

2-Fのアイドルでもあり、スイーツと呼ばれる小笠原千花だった。

 

 

「あ、ナオっち」

 

「小笠原さん。 さすが看板娘、似合ってるね」

 

「んも~。 お世辞してもまけないわよ」

 

 

彼女の両親は代々この和菓子屋を継いでいて、千花はその看板娘なのだ。

その味たるや美味だと広まっており、九鬼財閥の要人も気に入るほどだ。

 

 

「ところでさ、家族全員で食べられそうな和菓子は無い?」

 

「う~ん。 それだとこの煎餅とかどう?」

 

「いいね。 貰おうか」

 

 

板垣一家全員で分けられるサイズの煎餅を購入した。

塗られた醤油の香りが何とも香ばしそうだ。

 

 

「後このきなこ飴、買っていきなさいよ~」

 

「そうだね。 甘いものも欲しいし一袋」

 

「はい毎度! ナオっちは買い物上手だから商売のし甲斐あるわ~」

 

 

ついでに名物の飴も購入し、辰子の下に戻る。

彼女は少し頬を膨らませていた。

 

 

「大和君、今の女の子は?」

 

「ウチのクラスメートだよ。 知人と割り切ってる」

 

「なるほど。 じゃ、いいや」

 

 

辰子が千花との関係を気にしていることは大和もすぐに察せた。

向こうからすれば友人として扱ってくれるだろうが、それを口にすれば彼女が起こりそうだと判断したため無難な答えを出す。

 

 

「はいこれ。 天使達と分けて食べてね」

 

「ありがとう大和君~」

 

「お礼なら釈迦堂さんに……げっ、ワン子だ! 辰子さん、件の如く隠れ……」

 

 

彼女達へのお土産を渡すと同時に大和の目に少女が映った。

川神一子だ。思えばこの通り、川神院に通じているのだ。

彼女に見つかってどうこうは言われないだろうが、彼女に知られると姉の百代にも悟られる。そうなれば面倒だとまた物陰に移動する。

 

 

「よー大和。 辰子ちゃんとのデート楽しかったかー?」

 

「オワタ\(^o^)/」

 

 

その先に百代が待ち受けていた。

彼女だけではない、背後には京にクリス、由紀江も少々非難交じりの眼で見ている。

 

 

「あー大和! こんな所にいたのね!」

 

「しまった退路を絶たれた!」

 

 

その背後に一子も駆け寄ってきた。

退路すら絶たれ、もう逃げ場は無いと悟る。

 

 

「百代ちゃん何? 何の用?」

 

「いやーそろそろ舎弟と遊びたいなーって思って探してたんだ♪」

 

「ダメだよー。 今は私と一緒なんだから~」

 

 

この二人はとある理由があって知り合っているらしい。

それはさて置き大和を自らの所有物だと主張する百代。大和にべた惚れの辰子。二人はまさに一触即発だった。

 

 

「クンクン……この匂い。 板垣辰子に抱き枕にされてたなッ!」

 

「なっ! なんて破廉恥なんだ大和!」

 

「待て京何故匂いで分かる? そしてクリスあらぬ誤解を受けるな」

 

 

京やクリスだけではない。由紀江に一子も余りよろしくない表情を浮かべる。

大和は修羅場に立たされているのだと知った。

下手をすれば爆発し、辺り一面が更地になる。

 

 

「ちょ、丁度良かった皆! 実はこれから皆と辰子さんを会話させようと思ってたんだ!」

 

「大和君?」

 

「辰子さんいい機会だよ。 皆のことをもっと知っておいてほしくてね!」

 

 

軍師はこの場を切り抜ける策を練りだした。

見つかった以上、『何も無かった』では済まされない。ならばいっその事皆を巻き込み有耶無耶にさせるのみ。

丁度釈迦堂から貰った金も残っている。これと大和の持ち合わせがあれば何とか乗り切れる。

 

 

「だからファミレスに行こう!!」

 

「よしいいぞーその代わり大和全部奢りなー」

 

 

彼は涙と固唾を飲むことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……でね、天ちゃんと私、アミ姉で師匠と特訓してるんだ~」

 

「ほうほう。 さすが釈迦堂さん。 凄まじい原石を発掘した上に的確に研磨してるなぁ」

 

「アタシも釈迦堂さんに稽古つけてもらいたかったけど、ルー師範代がね……」

 

「ルー師範代、釈迦堂さんを敬遠しているようでしたからね」

 

 

10分後。意外な事に辰子と風間ファミリーの女性陣は馴染んでいた。

ガールズトークが花を咲かせている。無論今ある皿やグラスの数だけで大和の財布から野口さんがさようならをすることになるが。

 

 

「でね。 リュウちゃんは『無頼だ』って言い張って一緒に特訓はしないんだ~」

 

「同調性が無いな。 その板垣竜兵と言う男は」

 

「まぁね。 だからかな~弟って感じがしないんだ~」

 

 

クリスも話に馴染んでいる。

武道や家族の話題が意外にも膨らんだのが救いだった。

 

 

「その分大和君は弟って感じがするんだ~」

 

「分かるぞその気持ちは。 だが私の舎弟だからな」

 

「いつかは私のものになるかもね~」

 

「そんな事は正妻が許さないんだッ!」

 

 

京や百代は威嚇を怠っていなかったようだが。

その時、辰子のズボンから震動音がする。随分と安っぽい着メロと共に。

開いてみるとそこには「from 天ちゃん」とあった。

 

 

「……あれ? 天ちゃんからだ」

 

「お前の妹からか。 何だって?」

 

「『ご飯作って』だって……もうそんな時間か~」

 

 

気がつけば6時を回ろうとしていた。

ガールズトークというものはあっという間に時間を奪い去っていくものらしい。

しかし悪くないと感じていた辰子は満足そうだった。

 

 

「それじゃ大和君、私帰るねぇ」

 

「うん」

 

「何だったらまたご飯食べてく?」

 

「ごめん。 約束があるんで遠慮するよ」

 

 

彼女の発言に百代たちから鋭い視線が差し向けられていた。

何せ辰子の発言から察すれば、大和が家族ぐるみの付き合いをしていた、とも取れるからだ。

 

 

「そっか。 じゃあね~」

 

 

辰子は名残惜しそうに、しかし満足したように帰っていった。

長時間大和と過ごせただけでなく、形式はどうあれ風間ファミリーと交友関係を広められたのだから。

そんな彼女と裏腹に、大和の顔は青ざめていた。

何せ女子達からの視線を痛く浴びているのだから。

 

 

「……さてお会計お会計」

 

 

焦りの末、席から立ち上がろうとする大和。

だが百代によって無理矢理座らされた。

意識している男の子が、全く関係名女性と遊んでいた。女性側の心理としては非情に面白くない。

 

 

「折角だしここで晩飯と行こう。 すみませんサーロインステーキを一つ~」

 

「自分はカルボナーラ」

 

「すみません。 私は蕎麦定食でお願いします」

『まゆっちはいつでもどこでも蕎麦大好き北陸娘ー!』

 

「私ひれかつ定食でー! お肉と野菜のバランスばっちりなのよねー」

 

「クク。 この激辛チゲ鍋を一つ」

 

 

鬱憤をぶつけるかのように次々と注文をする女性陣。

しかも普段は遠慮深い由紀江ですら何の躊躇も無く頼んでいる。(最も安いメニューなのでマシと言えるが)

女性陣の一人一人から殺気に近いものが溢れている。

こんなのに当てられては大和に拒否権は無い。財布をそーっと覗き込む。

 

 

(……さよなら。 諭吉さん……)

 

 

どこかにいいバイトは無いものかと、この後大和は彷徨うことになるのだった。

 

 

 

続く




はい、というワケで本日は辰子さん中心の板垣一家とのお話でした。
ホントは辰子さん中心なのでほのぼのとしたお話に持って痛かったのですがやっぱりどこかに修羅場がないとまじこいらしくならないですな~。
そして私が書く釈迦堂さん、何か微妙にいい人になっちゃってますが何、気にすることは無い。
次回一話を挟んでからそれぞれのヒロインに焦点を合わせた長編を書いていきたいと思います。
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