IS-王と言う名の騎士-   作:osero

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第三話「少女と奇策」

「ここか……」

 

 地図と睨めっこしながら歩くこと5分。鍵の番号と同じ部屋番号を見つけた零。

 

 トントン、とドアを叩くも全く反応がない。

 

「いないのか?……仕方ないか」

 

 内ポケットから鍵を差込み中に入る。

 

 中に入ればさすがは天下のIS学園。学生が住むには勿体無いぐらい高級そうな家具や物が零の目に入る。

 

「いくらなんでもこんなにお金をかけなくても、な……」

 

 悪い気はしない。だが今まで過ごして来た場所と比べるとやはり豪華な部屋は若干零には居心地が悪かった。

 

 そんなことを思いながらも自分の荷物を丁寧に鞄から取り出す。

 

「え……」

 

 そんなとき、後ろからふと女性の声が聞こえ視線を上げる。するとそこにはタオル一枚の女の子の姿。

 

(おいおい……いくらなんでもこんな偶然は無いだろう……)

 

「……すまない。早く服を着てくれないか?」

 

 今にも少女が悲鳴を上げようとしたため、彼女より先に口を開き後ろを向く。

 

 彼女はそれで『ハッ』、と今の自分の姿に気付いたのか、すごい早さで顔を赤く染めすぐさま服を取り洗面所に駆け込む。

 

(音はしなかったんだがな……すでに上がっていたか、それにしてもタイミングが悪い)

 

 物音一つしなかったため油断していた零。どうしようか、と頭を抱えていると洗面所からドアが開く。

 

「…………」

 

「…………」

 

 互いに顔を合わせるが沈黙。少女は下を向いて俯いていた。顔が赤いのは先ほどの格好を見られたを引きずっているからだろう。

 

 そんな姿を見た零は余計に罪悪感が募る。自分が悪いわけではない。しかし見てしまったのだから結局は圧倒的に自分が悪いと決めた零。 

 

「すまない。ノックはしたんだが反応がないから入らせて貰った。いちを物音もしないか確かめたんだがな……」

 

 頭を下げて謝る零の謝罪に少女は慌てたように答える。

 

「い、いえ、そ……その、何の用件……ですか……?」

 

「一応今日からここで住まわせて貰うことになったんだが……聞いてないか?」

 

「そ、そう言えば……そうだった、かも」

 

 忘れていたらしい少女。それを零は責めようとはしない。

 

「そうか、なら良かった。こんな男だから嫌だと思うが……我慢してくれると助かる。出来るだけ要望も聞こう。部屋も、寝る時とシャワーを浴びる時以外使わない。それでも本当に嫌なら適当に別の場所を探すから言ってくれ」

 

 零がここまで言うのも理由がある。それほどまでに世界は今、女性が上の立場にあり、一緒に居ることや喋ることもしたくないと言う女性は少なくない。だから早めの内に聞いておきたかったのだ。

 

 だが、そんな零の考えは杞憂だった。

 

「そこまでは……いい。私もあまり、使わないから……好きに使って良い」

 

「…………た、助かる」

 

 コクンと頷く少女。それがかつての仲間の一人に重なり思わず言葉に詰まった。

 

「……?それに……色々、する事がある。だから帰らなくても心配しなくていい……」

 

 それに首を傾げ疑問に思っていたようだが気にせず用件を言う少女。

 

「分かった」

 

 返事を貰ったのを確認した少女はスタスタと部屋から出て行った。ドアが閉まったのを確認して、零はベットに雪崩れ込むように倒れる。

 

「相変わらず、女性と喋るのは疲れる……」

 

 天井を見つめながら愚痴を吐く。それも零には仕方が無いことだった。

 

 零が住んでいた場所。そこは閉鎖的な国で、ISなど他所の出来事には関心がない。自国のことしか考えがない。それほどの余裕があの国の国民にはない。

 

 だからか男女は平等だった。一方的な格差がないのが唯一の良さだったのかもしれない。力があれば実力を認められ力がなければ死ぬ、たったそれだけ。

 

「日本は平和すぎるな……平和すぎて落ち着かないのも考え物か……」

 

 今まで銃を持ち戦っていた零にとってこの穏やかな日々は今でもしっくりこない。

 

「まぁ、ルームメイトが今どきの奴じゃなくて良かったのが救いか……」

 

 思い出すは先ほどの少女。

 

 シャワーを浴びていた為、熱で薄く、赤く染まる頬。濡れてはいたが蒼い髪は水分を含んで輝き、特有の美しさがあった。目が若干の垂れ目で体は小さく、可愛らしい、守ってあげたくなるような女の子だった。タオルも短かかったため、白い健康的な太ももが大胆に露出されていてそういう経験がない零には刺激が強すぎた。

 

「……今日はもう寝るか。それじゃあおやすみ――――」

 

 邪念を振り払い、シャワーは明日浴びようと決意を固め、疲れた体を休ませるべく目を閉じた。

 

 最後に腕につけているブレスレットを撫で、自分以外誰もいない部屋で見知らぬ名前を告げる零だった。

 

 

 

 

 ――――――

 

「…………」

 

 真夜中のIS学園、IS整備室。

 

 そこに居たのは先ほど零と一緒の部屋になった少女――――更識簪だった。

 

 ただ無言でキーボードを叩きながら空中ディスプレイを凝視する簪。

 

「ふぅ……」

 

 作業に詰まり手が止まる。暫く思考するが上手くいかなく溜息が漏れ、ディスプレイも閉じキーボードを片ずける。ついでに横に置いてあるジュースを飲みながら一息つく。

 

「木下……零……」

 

 それは簪でも知っていた名前。いや世界中が知っている情報。

 

 世界で2人目のIS操縦者。だが最初の操縦者に比べ、あまり騒がれていない。

 

 「ISをぎりぎり動かせるだけの……操縦者」

 

 それは簪はもちろん世界中が見ていたテレビ中継だった。ISが乗れると分かり、検査をして適正を出す。その過程で念の為動かせるか実験をした物だった。その瞬間は大々的に中継された。男性の威厳を取り戻す一歩として。

 

 最初の織斑一夏は適正Aとあって最初は苦戦していたが、それも数分後には空を飛び、快調な動きを見せた。

 

 それに比べ2人目のIS操縦者の木下零は酷かった。最初の一夏同様期待されていたが、結果は散々。ISがかろうじで動く程度、四苦八苦してようやく空に飛べたかと思いきやその動きはゆっくりであり、安定していないのかフラフラとふらつき仕舞いにはそのまま撃墜。適正もFと有って評判は最悪だった。

 

 簪自身もこれは酷いと思える動きだった。本当に、乗れるだけの人物。

 

 だけど同時に可哀想だとも簪は思ったのだった。

 

 本人は真面目にやっていたのにも関わらず、終わった後の周りの目は酷かった。女性はだらしない男性の姿に笑い。同じ男性には思った通りに期待に答えられず、恥をさらしたことに対する冷たい視線。

 

 終わった後にもネット上では日本の恥さらしと罵られ、テレビでもあまり良い事は言われていなかった。

 

 世界中から拒絶された人物。

 

 そんな人物がまさか自分の部屋と一緒になるとは考えてもいなかった簪。

 

「さっきのも……こういうのがあったから……」

 

 簪は先ほどの部屋でした会話を思い出す。あまりにも自分を下に……卑屈に見すぎているその発言。それはこういうことがあったからと簡単に予測できた。もしかしたらもっと酷い仕打ちを受けていたのかもしれない。

 

 優しくしよう。そう思う簪だったが、零に裸を見られたことを思い出す。自分でも顔が赤くなるのが分かった。

 

「…………やっぱり……駄目」

 

 初めて異性の人に見られた自分の裸。許せるはずがなかった。でもあのどこか物寂しげな表情が浮かび、

 

「少しなら……いい」

 

 自己完結。納得が言った簪は再び、作業に励む。

 

 

 

 

 

 

 あれから1週間の日が過ぎ、決闘の日がやってきていた。

 

 今現在は、セシリアオルコットと織斑一夏がISを駆使して戦闘中であった。

 

 最初こそ苦戦してやられそうになった一夏かだったが、ファーストシフトを終わらせた一夏は逆にセシリアオルコットを追い詰めていた。とてもISに乗って1週間とは思えない動きを見せ善戦を見せる。

 

 現に会場は、まさか代表候補生を倒すんじゃないかと思わせる一夏の動きに誰もが言葉を発さず見守っていた。

 

 それを尻目に教師陣営はその戦いを評価していた。

 

「凄いですね……織斑君。代表候補生にここまで善戦するなんて」

 

「何……機体に助けられただけです」

 

 そう喋りながらも目線は戦闘から一辺たりとも離さない。

 

「俺が千冬姉の名前を守るさ」

 

 その発言に麻耶は思わず笑みを零す。千冬にいたっては恥ずかしいのか頭を手で押さえていた。

 

「いい弟さんを持ちましたね」

 

「まったくあいつは歯がゆい台詞を言って……」

 

「でも嬉しいんですよね?」

 

 やれやれと忌々しげな顔をする千冬だが、その口元は嬉しいのか緩みきっていた。それを長い付き合いの麻耶は見抜いていた。だがそれがやぶ蛇だった。

 

「…………」

 

 ミシミシと危ない音が鳴り響く。殺人アイアンクローが炸裂していた。

 

「痛い、痛いです……」

 

 そんなやりとりをしている間に試合は終盤を迎えていた。

 

 一夏は試合を決めるべく白式にインプットされていた近接武装を取り出し、加速。迫り来る2基のビットをバターように切り伏せセシリアの目の前で静止、下段から上段への逆袈裟払いを放つ。その瞬間、だれもが一夏の勝利を疑わなかった。

 

 しかし、それがセシリアに届く寸前にブザーが鳴り響く。皆がポカン、と置いてきぼりになる。皆が呆然とする一方、その原因を作った一夏本人が一番フリーズしていた。

 

 何が起きたか理解できない。そんな表情を浮かべていた。

 

「あの馬鹿が…………」

 

「エネルギー切れですね……」

 

 麻耶と千冬は原因にすぐ気付いた。その片方の顔は悪鬼羅刹の如く鬼の形相を浮かべ、麻耶はその横で苦笑い。随分と呆気ない結果だった。

 

 

 

 

 

 

「次の試合は俺の番か…………」

 

 先ほどの試合を教師の少し横で観戦していたであろう零は次は自分の番だと席を立つ。

 

 放課後とあって代表候補生との試合は噂になり、瞬くアリーナは女生徒達で埋め尽くされていた。今も一夏を認め、褒め称えている生徒達。

 

「負けたけど……1週間で代表候補生に勝ちそうだったよ」

 

「凄いね。さすがは一夏君」

 

 誰も零に気にかける者はいない。ただの消化試合と思われているんだろう。

 

「相変わらずアウェイだな。まぁ…………今出せる全力を出すとするか」

 

 零が乗る機体は打鉄。第二世代の量産型で、安定した性能を持ち防御が高い機体。

 

 いざ打鉄に乗り込もうとした所で声がかかる。

 

「木下君、頑張って下さいね」

 

「山田先生…………わざわざ見送りありがとうございます」

 

「いいんです。この1週間頑張ってましたから……先生として一生徒に贔屓はいけないんですが、応援してますから」

 

 この1週間。零は山田先生にISの教えを説いて貰っていた。零は打鉄やもう一つの訓練機。第二世代ながらブルーティアーズと言った第三世代にも劣らない性能をもった機体ラファール・リヴァイブのISには乗った事がない。だからISについて指導をして貰った。

 

 もちろんそれは零が頼んだのではない。もともと誰もが自分に対して喜んで指導をして貰える訳がない、とたかを括っていた零にとって声を掛けてくれたのが山田先生だった。

 

 その機体での動き方。わざわざ訓練機が使える時間を取ってくれたりと、一から丁寧に教えてくれたことに感謝でいっぱいだった。

 

「忙しい合間に時間割いて貰いましたから、感謝してます」

 

「い、いえ、いいんです。私が教師として好きでやったんですから……それよりもやっぱり打鉄でいくんですか?」

 

「自分の動きじゃあの射撃は全ては避けれないですから……なら装甲が分厚く防御力がある打鉄の方が善戦できますからね。大丈夫です。特訓の成果を少しは見せてきますよ」

 

 不安そうな顔をする麻耶に心配させまいと声を張る零。そんな気持ちが伝わったのか、その表情が少し和らぐ。

 

「はい。みっちり教えましたから期待してます。堂々と戦ってきてください」

 

「はい。じゃあ行きます」

 

 返事を返し、アリーナに飛び出す零を麻耶は見送ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 アリーナに出た零は打鉄の性能と武装をチェックする。その武装は近接ブレード、アサルトライフル、手榴弾にスモーク弾と打鉄ではあまり装備しない武装。

 

(あれだけ一生懸命に教えてくれたんだ……この機体であろうとも唯では負けられないな……)

 

 負けは明らか、しかしそんな劣勢のはずなのだが思わず笑みがこぼれる。そして対戦相手のセシリアに視線を向ける。

 

「さっきまでの油断はもうないようだな……」

 

「ええ……全力をもって相手しますわ」

 

 先ほどの一夏の試合で油断は微塵となくなっていた。もう隙は付けそうにないな、と零は思ったのだが。

 

「…………一夏さん……」

 

 どこかうわの空のセシリア。顔を赤くして何かを思い出してるようだった。ブザーが鳴ってるため、遠慮なく零はライフルを発砲する。

 

「っ!」

 

「もう試合は始まっているぞ」

 

 きっ、と目を細め睨むセシリア。お返しとばかりに零にレーザーライフルを撃つ。それを零はぎりぎりで避ける。

 

「やりますわね。ですがまだ行きますわよっ!」

 

 2回3回と続けざまに的確に放たれるライフルを左右に交わすが、一部の装甲に掠りシールドエネルギーを減らす。

 

(やはり、機体が思い通りに動かないな……なら!」

 

 すぐさま零はアサルトライフルの引き金を引く。狙いはつけずある程度、ばら撒くように。

 

「そんな攻撃。私には効きませんわよ」

 

 それを華麗に交わしきるセシリア。お返しとばかりにライフルが火を噴くが今度は当たらずなんとか避けきる零。

 

(やはり避けた後の射撃はほんの少しだが精度が落ちてるな)

 

 零が狙っていたのは当てる事じゃなく、回避させることにあった。良く狙われて撃たれたら今の動きじゃ避けれない、なら相手の射撃精度を落とすことに重点を置いていた。

 

 現に今狙い通り、零はすべての射撃をぎりぎりで交わす。だがそんな状況もすぐさま覆えされる。

 

「何故あたらないの!?それなら――」

 

「やはり、そうくるよな……」

 

 距離を大きくとったセシリアはスターライトmkⅢだけじゃなく、後ろに4機の自立機動兵器《ブルー・ティアーズ》が浮かび、零に一斉に襲い掛かり火を噴いた。

 

 

 

 

 

 

「落ち着け麻耶」

 

 モニターを見ながら麻耶にそう吐く千冬。一夏もそれに頷く。

 

「確かに、劣勢だけど……なんで山田先生はそんなに慌ててるんだ?」

 

「べ、別に慌てていませんよ……」

 

 一夏の質問はもっともで麻耶は零がセシリアの攻撃が当たったたびにそわそわと慌てているため疑問だった。だがそんな一夏の疑問も千冬の一言で理解を得る。

 

「1週間、零にISを教えていたからな……自分の教え子だから気が気でないんだろう」

 

「え!?し、知ってたんですか!?」

 

「何年お前といると思っている。最近仕事を遅くまでしてたのもこれが原因だったんだろう」

 

 その千冬の一言に麻耶はあわあわと手を振っていたが、やがて図星のため俯く。

 

「別に悪いことじゃないだろう?何故そこまで隠す必要がある?」

 

「えっと……先生が生徒一人を贔屓する訳には行きませんから……」

 

 麻耶は教師故に、一人の生徒を特別に見る事を悪いと思い、なるべく隠していた。だがそんなことか……と千冬に一蹴される。

 

「別にそんなのいいだろう。アイツはあまり周りから良く思われてないからな……一人ぐらいそういう奴がいても悪くはない。それにそう思ったから声をかけたんだろう?」

 

「そ……その通りです」

 

「なら胸を張れ。それに見てみろ。ぎこちないが君の得意の動きをしてるじゃないか?」

 

 麻耶が顔を上げれば、見た目はお世辞にも綺麗とは言い難いがしっかりと自分が教えたIS独自の動きを再現していた。被弾は免れない。それでも4機のビットとスターライトmkⅢから放たれる砲撃の雨をスラスターを吹かし弧を描くように交わす零の姿。

 

 それにちょっぴり嬉しく思い笑みを浮かべる麻耶。

 

「そうですね。しっかりと胸をはってこの試合を見てます。頑張ってください」

 

「千冬姉が教師みたいに見える」

 

それを横目で確認した千冬も笑みを浮かべ視線を試合に戻した。もちろん一夏が吐いた一言をしっかりと聞き逃す事無く、手にもつファイルを頭に落とす事も忘れない。

 

 

 

 

 

 

(やはりきつい、か!)

 

 四方八方から次々と襲いかかるビットとスターライトを教えてもらった動きで避けるが、全てを交わす事は出来ず次々と被弾していく。

 

 もはや打鉄も全身ボロボロであった。

 

 このままじゃ手詰まりだ――――

 

 残りのシールドエネルギーをみながらそう思う零。攻撃しようにもその動作にも行けない。行ったとしても蜂の巣にされるのは目に見えていた。

 

(なら……やる事は一つ!)

 

「行くぞ!」

 

 被弾覚悟の特攻。

 

 弧を描いてビットとライフルの雨を掻い潜る。そのまま虚をついて一直線にブレードを盾に突貫する。

 

「甘いですわよ!」

 

 一斉射撃による砲撃にエネルギーがあっという間に削られていく。

 

(まだだ!まだ近づける!……よし今だ!)

 

 距離はまだ少しあったが、零はすぐさまブレード上に投げ放棄。すぐさま手榴弾を取り出し、セシリアに向かって投げる。無論セシリアがそれを黙って見てるはずもなく、すぐさま回避行動をとる。しかしあろうことか零は左手に取り出していたアサルトライフルを躊躇なく自分の投げた手榴弾に打ち込む。

 

 零とセシリアの中間で爆発が起こり零もセシリアも互いに吹き飛ばされる。

 

「でたらめですわね!まさか自分も巻き込むなんて……これは!?」

 

 悪態をつきながらも体制を立て直すセシリア。しかし周りが見えない。

 

「まさか、先ほどのはこのために!」

 

 周りは煙で覆い包まれており、視界が防がれる。いくら便利なハイパーセンサーがついていようが対応するには数秒の猶予がいる。それを零はついた。

 

 そんなセシリアの焦りをつくように突如零が煙の中から現れる。全身がボロボロで所々火花が散っていた。それでも両手にブレードを持ち、セシリアに襲い掛かる。

 

「落ちろっっ!!!!」

 

 もはや機体も持たない、これが零の最後の攻撃。

 

 上段から力の限りブレードを振り下ろした――――――

 

 

 

 

 

 

「…………危なかったですわ」

 

「やはり近接武装も積んでいたか……」

 

 零の渾身の一撃はブルーティアーズの近接武装インターセプトにより阻まれ、機体を傷つける事は出来なかった。

 

 零とて考えていた。いくら遠距離の機体だろうと1つくらい近距離の武装はあるんじゃないか?と。だけどそれを確かめる相手は零には誰もいなかったのだ。山田先生には生徒の情報を聞くのは悪いと思い聴けず、結果は最悪の形で現れた。

 

「ひとつ聞いていいですか?」

 

「なんだ……?」

 

「何故捨てた筈の近接ブレードを?」

 

 セシリアのその問いかけに、なんだそんなことかと零は苦笑い気味に答える。

 

「俺の動きじゃ、どう頑張っても正攻法じゃ近づけないからな……近づけてもブレードが届かない近距離から中距離。それなら奇策を使うしかなかった。その奇策もぎりぎりまで近づくのが前提だった。一瞬の虚をつき無謀な特攻。相手からしたら、さぞ……良い的だろう?」

 

「ですわね……わたくしも勝負を捨てたかと思いましたもの」

 

「ある程度近づいたらブレードを上に高く投げ捨て、手榴弾を自分で爆発させる。もちろんその時、スモークを巻いていたがな……体制を立て直したとき、視界が塞がっていたのなら銃は撃てないだろ?俺はすぐさま自分で投げたブレードが上から落ちてくるのを拾い、そのまま切りかかっただけ。単純な話だろ?」

 

 簡単にそう言ってのけた零だがそれはセシリアの想像を超えていた。全て自分は相手の手の平で動かされていたことに気付く。そしてその奇策を悟らせない、行動や、それを実際に成功させた零の実力にただただ驚かされていた。

 

(これでISを十分に動かせたならどれだけ強かったことですか!!!)

 

 なんとももったいない。そんな事をセシリアが思っていることに微塵も零は気付かない。

 

「さあ……煙も晴れてきたんだ。さっさとトドメをさせ」

 

 零の言った通り段々と煙ははれていく。しかしその零の言葉にセシリアは訝しげな表情を浮かべる。

 

「何をいってますの?このまま負けを認めればいいでしょう?」

 

「これでいいんだよ。それに煙が晴れた後、何事もなく負けを認めたらまた騒がれるだろ。だらしないやら、だから男は……と。ならまだ最後まで精一杯戦って負けたと言う方が示しがつくだろ?」

 

「ですが……わたくしに傷をつけ十分にあなたは善戦を――――」

 

 セシリアの問いかけも零は頭を振りそれを否定する。

 

「煙で今の攻防を観客は見れてない。だからこれでいい。早くしろ」

 

「…………わかりましたわ。貴方がそういうのであれば……」

 

 スターライトmkⅢの銃口が向けられる。

 

「たとえ、貴方が世間から疎まれようともわたくしは貴方を認めましょう」

 

「そりゃどうも」

 

 セシリアの賛辞を受け取る。それを合図に砲撃が零の乗る打鉄を貫き、その衝撃で地面に撃墜する。

 

 ブザーがアリーナ全域に鳴り響き、セシリアオルコットの勝利により周りは歓声が鳴り響いていた。

 

(これでいい……)

 

 零はすぐさまISを解除。疲れた体に鞭を打ちアリーナを後にする。

 

 その後ろ姿を簪が怪しげに見ていたのを零は気付けなかった。 

 




はい。三話を投稿しました。可愛い簪。反則です。ISのキャラは皆可愛いですね。もっと上手くかけるようこれからも精進していきたいですね。

楽しんで頂ければ幸いです。
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