深夜廻 繋いだ手をもう一度 (本編完結)   作:めんりん

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注意。

深夜廻を未プレイもしくは内容をご存知ではない方、この先に進むことはお勧め致しません。

また、個人的な解釈、ご都合主義、捏造設定のオンパレードになるかと思います。深夜廻をラストまでご存知の方も、閲覧は自己責任でお願いいたします。






前置きが長過ぎますね(^^;
以上のことを踏まえた上で、私に共感してくださる方がおられれば幸いです


*10月6日、ハルの髪色の表現修正
*10月7日、ハルの髪型修正
*タイトルをひらがなに変更


本編
ぷろろーぐ


夕暮れの山道。茜色と称するには、深すぎる紅が大空を覆う。

 

 

ひぐらしと風の織り成す二重奏は、夏の風物の目玉だが、いまこの瞬間においては、風情はなくただ不気味な静寂を撫でるのみ。

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

灯火のような街灯を辿りながら、1人の少女が山道を登っていく。

 

 

日本人にしては珍しい、色素の薄い金髪で編んだ三つ編みを首の後ろから下げている。頭の真ん中あたりで結んだ青いリボンが、少女の大人しげな雰囲気に一輪の花を咲かせる。

 

 

 

だが、その可愛らしい少女の雰囲気に影を差すものがある。

 

 

 

それは、少女の細い左の肩口。

 

 

少女の左腕は、肩口から先が存在しなかった。まるで、巨大な何かにバッサリと切り落とされたかのように。

 

 

 

通すべき腕がない肩口の袖は、所在無さげに風に煽られ揺れ動く。

 

 

 

残った右手には、小さな花束が握られている。黄色や桃といった、柔らかな色合いの花たちの存在だけが、少女の歩く不気味な山道のなかで温かみを持っている。

 

 

 

 

片手が塞がっていても使えるようにと、両親から待たされた紐付きの小さな懐中電灯を首に下げ、少女は小さな歩幅で懸命に山道を踏みしめる。

 

 

 

 

目的地は、もうすぐそこにある。

 

 

 

 

「ここを、登って…あ、見えた」

 

 

 

鈴を鳴らすような声が、風に運ばれ山を泳ぐ。

 

 

 

 

目的地が見えた少女は、小走りで一本道を駆けていく。

 

 

 

やがて、道の先にある大きな木の下で少女は立ち止まった。

 

 

 

 

「来たよ、ユイ」

 

 

 

見上げるほどの大木に向かって、少女は囁きかける。正確には、この場所で命を絶った、少女のたった1人の親友に向かって。

 

 

 

 

「ごめんね、引越しのお手伝いしてたらこんな時間になっちゃった」

 

 

 

ゆっくりと歩きながら、少女は言葉を紡ぐ。まるで本当に親友がそこにいるかのような、とても自然な声音だった。

 

 

 

「はい、ママにわがまま言って買ってもらったんだ。…………今日が……最後になるから……ユイに…綺麗なお花をあげたいって…」

 

 

 

だが、言い終わらぬうちに少女の瞳には涙が溢れでてくる。視界は歪み、言葉もたどたどしく力を失っていく。

 

 

 

 

置いた花束の上に、大粒の涙が次々と落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめんね、一緒にいてあげられなくて……ごめんね…ユイが苦しいのに…気づいてあげられなくて………ごめんね……ユイを…助けてあげられなくて………ごめんね……っ」

 

 

 

崩れ落ちる少女の瞳からは、止まることなく涙が溢れ出る。落ちる涙は包まれた花たちを濡らし、少女の嗚咽は夕暮れに消えていく。

 

 

 

 

だが、どれほど涙を流しても

 

 

 

 

どれほど己の無力を呪っても

 

 

 

 

どれほど花を送ろうと

 

 

 

 

少女の親友は生き返らない。

 

 

 

 

 

 

 

あの日、山の神に踊らされ、怨霊と化したユイとの切れぬ縁を、自らの左腕とともに断ち切ってから、2週間の時が過ぎた。

 

 

 

 

最初は泣かなかった。

 

 

 

怨霊となってしまったとはいえ、ユイとの縁を切ったのは、他ならぬ少女……ハルの意志だ。

 

 

 

そして、出血と痛みで朦朧とする意識のなかで、最後に正気に戻ったユイを見たような気がしたからだ。

 

 

 

 

だが、かけがえのない親友を失った悲しみと喪失感が、そう易々と癒されるはずはなかった。

 

 

 

 

悲しみの海に身を投げ出した。

 

 

 

 

 

なぜ、どうしてと、己の無力と浅はかさを責め続けた。

 

 

 

 

 

 

涙は止まず、後悔も悲しみも消えない。

 

 

 

 

しかし、それでも、前に進まねばならない。

 

 

 

 

立ち止まっているわけにはいかない。

 

 

 

 

ユイにいつまでも情けない姿を見せてはいけない。

 

 

 

 

そう思ったからこそ、ハルは今日この場にやって来たのだ。

 

 

 

 

明日には、ここから遠くの街に引越しをしてしまう。もしかしたら、長い間ここには来れなくなってしまうかもしれない。

 

 

 

次にこうして花を添えられるのも、いつになるかわからない。

 

 

 

 

だから、もう泣かない。とびきりの笑顔で、"またね"、と言うはずだった。

 

 

 

 

 

 

 

そう、決めたはずだった。

 

 

 

 

 

 

 

「…ユイぃ…ユイぃ…っ!」

 

 

 

 

 

だが、理不尽に友を奪われた少女の嘆きはなくならない。もはや慟哭と化した少女の泣き声は、闇に覆われかけた夕暮れに消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、閉ざされかけた夕暮れに、さらに暗い影が覆いかぶさった。

 

 

 

 

「……え…?」

 

 

 

突如落とされた影に、ハルは涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに、()()がいた。

 

 

 

 

赤黒い靄を握るように、それだけで人間の大人と同じ大きさはあるだろう強大な手。

 

 

 

その青白くボロボロの指に挟む巨大な真紅の鋏。

 

 

 

 

ハルの左腕を切り落とし、ユイの魂を妄執から解放した()()()の神

 

 

 

 

 

「…コトワリさま…」

 

 

 

 

 

鋏の切っ先をやや下に向けたまま、かの神はハルを見下ろしている。

 

 

 

 

「…いいよ、もう」

 

 

 

 

何もかも諦めたような声で、ハルはつぶやく。常人であれば発狂してもおかしくない状況ですら、今のハルにとっては関係のないこと。

 

 

 

 

 

「……もう…耐えられない…」

 

 

 

絞り出すかのような小さな声に、異形の神は動かない。ただひたすらに、縁切りの神はハルを見下ろしている。

 

 

 

 

いや、待っている。自らが力を払うに値する、その言葉と意思を。

 

 

 

 

 

 

「ユイが…ユイが……っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして間もなく、その時はやってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユイがいない世界は………()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

直後、開かれた凶刃がハルの体を挟み込んだ。

 

 




追記
短編、のここでの使わ方がいまいちわからないため、この作品の形態を短編から通常の連載に変更いたしました
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