深夜廻 繋いだ手をもう一度 (本編完結)   作:めんりん

9 / 25
だっっっっっいぶ更新期間が空いてしまったこと、深く謝罪申し上げますm(__)m

今回の話は、投稿当初から既に考えていたのですが、いかんせん文字にするとまあえぐいことに…多分連続して最大文字数更新してる気がします…


また、今回の話で元の探索アドベンチャーというジャンルから大きく外れることとなりました。

加えて、繰り返しますがこの流れはプロローグ投稿の時期から既に考案していたものです、こんなの納得いくかーって方もいるかも思いますが、何卒ご容赦くださいませ。


それでは、物語も大詰め、クライマックスに突入です。お楽しみいただけたら幸いでございます


第8話 : "ユイ" 悲劇と絶望の向こう側

 

キキキキキチッキキキチチチキチキチっ!

 

 

 

「ああもうっ!しつこい!!」

 

 

 

忘れられた神社で謎の存在とのあれこれの後、無事(?)に当初の目的どおりに山に足を踏み入れたユイとチャコ。

 

 

 

大幅な遠回りの末にたどり着いたユイが山に入って得た情報は三つ。

 

 

 

 

 

一つは、彼女より先に、ハルが確実に山に足を踏み入れていたこと。

 

 

 

 

 

二つ目は、考えたくはないがハルは既に何者かに連れ去られた後だということ。

 

 

 

 

その証拠が、神社から山に入ってすぐに広がる広間のような一角。そこに落ちていた、ハルのものと思われる懐中電灯。

 

 

 

まるで持ち主が忽然と消えたかのように、光を灯したまま地に落ちていた懐中電灯を目にした瞬間、ユイは当たって欲しくはない己の予想が、残念ながら外れていないことを痛感した。

 

 

 

そして三つ目は、ハルの失踪と無関係ではないだろう蜘蛛型の怪異の群れ。足と胴体の比率的に、恐らくは子蜘蛛なのだろうが、いかんせん体長がユイと同じかそれ以上に大きいため、あれに『子』という言葉を置くにはユイとしては僅かばかり抵抗がある。

 

現在ユイとチャコは、その子蜘蛛の群れに追われつつ、チャコが目指しているだろう山の上層に向けて暗い山中を駆け抜けている。

 

 

 

だがこれまでの怪異とは異なり、ユイとチャコの俊足をもってしても、蜘蛛たちの追跡は振り切れず、逆に追いつかれてしまいそうになる危機に直面することも多々あった。

 

 

 

だが、事実二人はまだ一度も子蜘蛛たちに振れられてすらいない。

 

 

 

 

それは

 

 

 

 

「邪魔っ!!」

 

 

キンっ、という金属同士を打ち鳴らしたような音とともに、ユイは手に持つ赤い断ち鋏で、自分たちの進路を塞ぐようにして張り巡らされた同じく赤い蜘蛛の巣の糸を切る。

 

 

 

その瞬間、直前まで二人を追い回していた子蜘蛛たちが全て黒い靄のようにして霧散する。どうやらあの赤い蜘蛛の巣は、獲物を逃さない檻にして侵入者を阻む結界、そしてどうやら子蜘蛛たちの生命線でもあるようだ。

 

 

本来なら如何なる手段を用いても人の力では決して切ることは叶わないだろう赤い糸、それをまるで布切れの如く両断するこの赤い刃が、こうして子蜘蛛たちから二人の命を守っている。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…なに、これ。洞窟…?」

 

 

 

山の中、それも上に向かって命を賭けたデスレースを繰り返したせいか、流石に息が上がり始めたユイが見たのは、本来そこに立っていた地蔵様が何故か木っ端微塵となり地に広がっている様と、その背中に隠れていただろう洞窟らしきものの入り口で自分を見つめるチャコの姿。

 

 

 

「山にこんな洞窟が…」

 

 

 

暗い入り口が、あたかも大口を開けているかのようにして現れる。いや、むしろ隠されていたものを強引に暴かれたのかもしれない。

 

 

 

「うん、大丈夫。いこ」

 

 

 

 

心配そうに見上げてくる子犬を頭を安心させるように撫で、ユイは暗闇に足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

これより先に、かつてない理不尽なまでの絶望が待ち受けているとも知らず。

 

 

 

 

 

 

"…………………"

 

 

 

 

 

そして、彼女らを見つめていた()()もまた、彼女らを追うように、ゆっくりと洞窟へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

「コトワリさま…」

 

 

首だけを動かして、ハルはただ呆然とその名を呼んだ。あの超常の存在を、ハルは知っている。

 

 

いや、忘れるわけがない。かつて幾度となくハルの命を脅かし、だが最後にはその力をハルに貸し与え、あまつさえハルの左腕とともに怨霊へと成り果てたユイの魂を救済した、縁切りの神。

 

 

 

そんな神が、まるでハルの願いを聞き届けたように、今再び姿を現した。

 

 

 

 

キチキキキチキチキチキチキチキチキキキっ!!!

 

 

 

 

その姿を見た途端、クロを殺そうと迫っていた子蜘蛛たちが、まるで怯えるようにして一斉に後退していく。本能的に理解したのだろう、目の前にいる存在と、矮小なる自分たちの間に広がる、圧倒的なまでの格の差を。

 

 

 

だが

 

 

 

(なんで…鋏を…持ってない……?)

 

 

 

 

ハルは直前の神の行動を振り返り、その違和感の正体に気づく。

 

 

 

先程、あの神は現れたと同時に、クロを囲む子蜘蛛数匹を()()()()()

 

 

 

だが、以前ならば問答無用でその力の体現とも言える断ち鋏で切り裂いていたはず。事実、町を探索中に怪異がかの神によって惨殺された場面に遭遇したこともある。だが、その時は間違いなく鋏は所持していたはずだ。

 

 

 

しかし、今その鋏はハルの見える範囲には存在しない。

 

 

 

 

そんな思考に、ハルが少しばかり意識を割いた直後、再び醜神が動く。

 

 

 

"………………"

 

 

 

その無数の骨を無理矢理繋ぎ合わせたような太い脚を、縁切りの神を指差すようにして持ち上げる。

 

 

 

 

キキキキキチキキチキキキキっ

 

 

 

 

だが、自らの命を容易く葬る相手を前に、子蜘蛛たちは一匹として前に出ようとしない。

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

 

 

ザシュっ!

 

 

 

そんな子蜘蛛たちの群れ、その最後方にいた者達数匹を、突如地面から出現した黒い針が貫いた。胴体部分を貫かれ、さながら公開処刑の如く持ち上げられた後、創造主に逆らった哀れな駒達は黒い靄となって搔き消える。

 

 

 

 

"…………ス…ス…メ…"

 

 

 

地の底から鳴り響くやうな、おぞましい声が、洞窟内に浸透する。

 

 

 

 

 

直後

 

 

 

 

キキキキキキチッキキキチチチキチキチキキキキキキチッキキキチチチキチキチっ!!!!!

 

 

 

創造主に逆らった者達の成れの果て、その二の舞にならんと、無数の子蜘蛛その全てが、縁切りの神に突貫していく。

 

 

 

だが、神はその場から動かず、ただ無慈悲に向かってくる命を奪う。逆らうことも、逃げることも許されない哀れな者達の命が、洞窟内から次々と消えていく。

 

 

 

潰され、薙ぎ払われ、貫ぬかれ、投げ飛ばされ、抉られ、子蜘蛛たちの数が凄まじい速度で減少していく。

 

 

 

"グォォォォォァァァァァっ!!"

 

 

 

雄叫びとともに、縁切りの神はその両手で持ち上げた子蜘蛛の足を纏めて引きちぎり、それぞれを別の個体の胴体へと突き刺す。

 

 

 

足をちぎられた者も、その足を突き立てられた者達も、その全てが黒い靄となって消えていく。既に突貫した半数以上の子蜘蛛たちが、神にかすり傷一つ負わすことすら出来ずに蹴散らされていた。

 

 

 

あまりに格が違う。争いにすら、時間稼ぎにすらならない一方的な虐殺。神という存在が、いかに規格外かということを、ハルは目の前の光景から思い知らされた。

 

 

 

(すごい…あの蜘蛛たちがあんな簡単に…)

 

 

 

直前まで自身の命を脅かしていた者達が、次々と葬られている光景に、ハルの心に僅かではあるが希望が生まれようとしていた。

 

 

 

だが、ハルは失念していた。

 

 

 

無理もないことだろう。かつての経験があるとは言え、ハルはまだ幼い少女なのだ。手足を拘束された挙句、無数の子蜘蛛に小さな体を陵辱されるという、およそ万人が恐怖するだろう凄惨な死に方をする直前だったのだ。

 

 

失念して当たり前、寧ろ未だ意識を保てていること自体、賞賛に値することだろう。

 

 

 

 

だからこそ、忘れていた。

 

 

 

 

 

今ここにおいて、自分がどのような立場なのか。

 

 

 

 

 

あの縁切りの神が、なんのために姿を現したのか。

 

 

 

 

 

そして、目の前の醜神が、どれほど恐ろしい存在であるのか。

 

 

 

 

"…………………"

 

 

 

 

突如、醜神が縁切りの神ではなく、一瞬だけ未だ捕らわれいるハルの方を垣間見た。

 

 

 

 

 

(っ!?)

 

 

 

内心で心臓を跳ね上がるハル。だが、既に子蜘蛛たちの数は最初の半分以下にまで減らされており、今もなおその数は減り続けている。

 

 

 

そうして、子蜘蛛たちが最後の数匹にまで数を減らした、その時

 

 

 

「っ!?」

 

 

ハルを捕らえている蜘蛛の巣が振動する。見れば天井から巣に降り立った数匹の子蜘蛛が、再びハルに迫らんとしていた。しかもにじり寄るような速度であった先程とは違い、明確な殺意を持って迫っている。

 

 

 

「い、いやっ!いやぁっ!!」

 

 

 

再来する死の恐怖を前に、ハルは血が滲む両手首と足首を動かして必死にもがく。だが、そんなハルの心を嘲笑うかの如く、瞬く間にハルの元に子蜘蛛たちが到達する。

 

 

 

 

"グゥォァァァァァァァぁぁぁっ!!"

 

 

 

 

直後、倒れ臥す子犬と己に群がる子蜘蛛全てを蹴散らした縁切りの神が、最早目視不可能な速度でハルの元に飛来、少女を食らわんと顎を開いていた子蜘蛛たちをまとめて薙ぎ払う。超常の力で払い除けられた子蜘蛛たちは、勢いのまま壁に叩きつけられ、そのまま黒い靄となって消えた。

 

 

 

 

この瞬間、ハルの視界は縁切りの神によって遮られおり、かの神もまた背を向けていたために気付かなかった。

 

 

 

縁切りの神が、一瞬とはいえ自身に背を見せたこと。

 

 

 

ほんの僅かな時、自身から意識を逸らしたこと。

 

 

 

 

この、1秒にすら満たない瞬間。縁切りの神が、縁結びの醜神に見せた、隙とも言えない、刹那の時。

 

 

 

 

 

 

 

この刹那の時、醜神は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え………」

 

 

 

 

 

 

 

直後、地面から出現した一本の黒い針が、縁切りの神の体を真下から貫いた。

 

 

 

 

「……コト……ワリ……さ…ま…?」

 

 

 

 

呆然と目を見開くハル。そんなハルの目の前で貫かれた縁切りの神は、動かない。

 

 

 

ザンっ

 

 

 

 

 

ザンザンザンザンザンザンっ!

 

 

 

 

 

ザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンっ!!

 

 

 

 

動かない神の体を、針山の如く出現した無数の黒い針が貫く。それは、最早体のどこを見ても、針が貫いていない場所が見当たらないほどに、無慈悲かつ残酷な光景だった。

 

 

 

 

 

「コ、コトワリさまぁぁっ!?」

 

 

 

 

 

 

ハルの張り詰めたような絶叫が、洞窟内に木霊する。やがて針が引き抜かれると、縁切りの神は力尽きたように地に落ち、黒い粒子となって消えた。

 

 

 

「…そんな…そんな……コトワリ…さま…」

 

 

その光景を、縁切りの神の消失を目にしたハルの瞳から、今度こそ光が失われた。

 

 

思えば、最初からあの神に縋っていた。あの縁切りの神ならば、目の前の醜神に打ち勝つことができるのではないかと。あの絶望に満ちた未来を変えてくれるのではないかと、確かな希望を抱いていた。

 

 

 

 

 

だが、そんなハルの儚い願いは、たった今砕け散った。

 

 

 

未来を変える。

 

 

 

親友を守る。

 

 

 

希望を夢見た少女の思いが、昏い絶望に染められていく。

 

 

 

そんなハルの姿に、醜神は嗤い、新たに生まれた子蜘蛛の一匹が、天井より糸をつたって項垂れるハルの元にたどり着く。

 

 

 

三度、子蜘蛛がハルに向かって顎を開く。

 

 

 

項垂れるハルの頬を一筋の涙が流れた、その時ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「触るな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本来なら溌剌と、凛としているはずの声が、今この瞬間は絶対零度の怒気を纏って放たれる。

 

 

 

 

「……な…んで…」

 

 

聞き覚えのある、いや、聞き間違えるはずのないその声に、ハルは問いかけるようにして暗い瞳を向ける。

 

 

 

醜神と子蜘蛛もまた、新たな侵入者が声を発した地点に目を向けた。

 

 

 

 

そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の親友に……っ…触るなぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

倒れ臥す子犬の片割れと、あらん限りの怒りをたぎらせたユイが、赤い断ち鋏の切っ先を醜神に向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「…なんで……ユイ…」

 

 

 

ただ呆然と、ハルは涙で溢れる瞳でユイを見つめる。なぜ、どうしてと、守らんとした親友がこの場に訪れてしまった事実に問いかける。

 

 

 

だが、そんな万感を込めるようなハルの言葉に、

 

 

 

「きまってるでしょ。一人で勝手に先走って泣きべそかいてる誰かさんを、ひっぱたきに来たの」

 

 

 

 

いまだ収まりきらない怒りを滲ませながら、ユイは睨むような目で応える。

 

 

 

「なんで黙ってたの、とか。なんで一人でこんなことしたの、とか。言いたいことはいっぱいあるよ。でも…」

 

 

 

赤い切っ先が、親友を汚そうとした醜神に向けられる。今しがた打ち倒したはずの仇敵、その力の体現とも言える鋏を持つ少女を前に、醜神の浮かべていた穢れた笑みが消えた。

 

 

 

「でもそれ以上に、ハルをこんな目に合わせてるあなたは、許さない。絶対に……許さないっ!!」

 

 

 

 

少女とは思えない、燃えたぎるような怒りをたぎらせ、ユイは叫ぶ。それは、己の唯一の親友を汚そうとした醜神に対する宣戦布告そのものだった。

 

 

 

「だから、もう少しだけ待ってて。すぐに助けて、ひっぱたいて、たっくさんお説教してあげるんだから」

 

 

 

 

「…っ…うん…」

 

 

 

ユイの厳しくも優しい、そして心強い言葉に、ハルの瞳から先程とは違う涙が溢れる。そんな泣き虫な親友の言葉に優しく頷き、ユイは自身と同じく怒りを隠そうともせずに唸るチャコを促す。

 

 

 

 

「チャコはクロを連れて逃げて。ハルは必ず、私が連れて帰るから」

 

 

 

 

「ウゥゥゥゥゥゥ……」

 

 

 

唸るチャコの頭を撫でて、どうにか宥める。おそらくこの先、先程のようにチャコを守りながら闘う余裕はない。そこに動けないクロまで加われば、ただでさえ分が悪い戦いの勝機がさらに遠のいてしまう。

 

 

 

「ウゥゥ…」

 

 

 

「ごめんね、お願い」

 

 

 

 

しゅんと項垂れるチャコが倒れ臥すクロの元に駆け寄っていくのを確認すると、ユイもまた己の倒すべき敵へと向き直る。断ち鋏を持つユイを警戒しているのか、醜神にいまだ動きはない。

 

 

 

ユイと醜神はしばし睨み合う。洞窟内にはこれといった自然の音は発生しないため、無音の緊張感がその場に舞い降りる。

 

 

 

そんな痛々しいまでの静寂を破ったのは、ユイ。鋏の切っ先を下げるとその場から一歩を踏み出す。

 

 

 

その小さな一歩が、開戦の狼煙となった

 

 

 

 

ユイが踏み出すと同時に、ハルの横にいた子蜘蛛が地面に着地、節足動物の待つ驚異的な速度でユイに迫る。

 

 

 

子蜘蛛とユイの距離が3メートルを切った瞬間、子蜘蛛は前方のユイめがけて飛び込むようにして跳ねる。速度と体重が乗った死の顎がユイに迫る。

 

 

 

「…邪魔…しないでっ!」

 

 

だが、ユイは飛び込んで来た子蜘蛛の顎めがけて断ち鋏の切っ先を思いっきり刺し込む。いくら運動能力が秀でているとは言え、ユイのそれは精々女子小学生の延長でしかない。

 

 

 

そんな非力さを補うためのカウンターまがいの一撃が、哀れな子蜘蛛を正面から貫いた。切っ先が貫通するとともに子蜘蛛は黒い靄となって搔き消え、それを確認するまでもなくユイはハルを捕らえる巣に向けて駆ける。

 

 

 

だが、ユイが子蜘蛛を仕留めるために費やした一瞬で、醜神もまたユイを迎え撃つ準備を整えていた。

 

 

 

突如ハルを捕らえる巣の前方に、まるでユイを阻むようにして赤い糸により編まれた巨大な蜘蛛の巣が二つ並ぶ。これにより、出現した二つの蜘蛛の巣を突破しなければユイはハルの元に辿り着くことすら不可能となる。

 

 

 

ユイにとってせめてのもの幸いは、この蜘蛛の巣が出現すると同時に、意識を取り戻したクロとチャコが既にこの場から逃れることに成功していたこと。

 

 

 

痛む身体を引きずるようにしながらも、ユイを心配そうに見つめていたクロの視線を感じながら、ユイは前へと踏み出す。そのまま駆け抜けて一つめの巣を切り裂こうとした瞬間、頭上から強烈な悪寒を感じたユイは即座に後ろへと走る。

 

 

直後、今しがたユイが立っていた場所とそのやや前方に何か重く水々しいものが落下する。

 

 

 

落下したのは、子蜘蛛になるはずだったもの。まだ脚が生えきっておらず、胴体を構成しているだろうものが流動体を脱していない。生まれるはずの命を使い捨てるかのように消費する醜神のやり方は、まさに暴君のそれだ。

 

 

子蜘蛛になるはずだったものが立て続けに落下し、地面に見るに耐えない水たまりを形成していく。だが、降り注ぐ子蜘蛛の命がユイを捉えることはなかった。ユイの駆ける速度に対し、子蜘蛛たちの落下はあまりに遅すぎたのだ。どれだけ頑張ったとしても、子蜘蛛たちの落ちる場所は精々走るユイの五歩後ろといったところ。

 

 

これを見越して先んじた場所に落下したとしても、それはユイがわずかに速度を調整するだけで対処できてしまう。

 

 

 

では広範囲に同時に落下させた場合は?

 

 

 

だがやはりこれもまったく意味を成さなかった。回避コースがないなら作ればいい。走りながらユイはタイミングを合わせて頭上を巨大な鋏で薙ぎ払う。運動能力が秀でたユイだからこそ出来る荒技だ。

 

 

振るわれる神の刃を前に、なり損ないの雑兵が出来ることなどあるはずがなく、刃に触れた途端に霧散する。そうして、落下させられる子蜘蛛の残弾が尽きる頃には、ユイとハルを隔てる二枚のうち、一枚目の蜘蛛の巣が断ち切られた。

 

 

 

 

"グォアァァァァァ…"

 

 

 

そこで初めて、今まで圧倒的な優位を保ち続けていた醜神が苦悶の声をあげる。続けて二枚めの巣を断ち切らんとユイが踏み込んだ刹那、あの呪言が轟く。

 

 

 

"…オイデ…オイデ…キリニオイデ"

 

 

 

「っ!?」

 

 

凄まじい悪寒を感じたユイは反射的に巣がある場所から飛び退く。直後、今しがたユイが立っていた場所から巣の目の前までを黒い針が覆い尽くした。

 

 

 

もしユイがあのまま踏み込んでいたら、あの黒い針によって人形のように串刺しになっていただろう。

 

 

 

(危なかった…でもあの黒い針…いや、そんなわけないか)

 

 

頭によぎった可能性を、ユイはあり得ないと振り払う。自分がこの醜神と対峙するのは初めてのはずだし、あの黒い針に見覚えなどあるはずがない。

 

 

 

「言うことを聞いたらダメっ!反対のことをするの!」

 

 

 

上からの声に首をあげると、ハルがユイに叫んでいるところだった。そんなハルの叫びを覆い隠すように、再び呪言が放たれる。

 

 

 

"ハシレ…ハシレ…ヨケロ"

 

 

 

ハルの言葉を信じるなら、ユイは動くなと言われていることになるが、この状況で足を止めるなど、正気の沙汰ではない。

 

 

 

だが、

 

 

 

「……………」

 

 

ユイは数瞬の迷いもなく足を止める。直後、ユイが立っている場所、巣が張り巡らせた箇所、ハルが捕えられている巣の場所、そして醜神が立つ場所を除く全ての地面が、黒い針に覆い尽くされる。

 

 

 

目論見が失敗に終わった醜神は、不気味な瞳をユイに向ける。何を考えてるかなど分かりもしないはずだが、ユイはそこに微かな苛立ちを見た。矮小な下等生物に翻弄されることによる微かな怒りを。

 

 

 

「言われなくても、あなたの言うことなんか聞いてやるもんか」

 

 

 

"ウゴクナ…トマレ…!"

 

 

そんな醜神の苛立ちが含まれる呪言を最後まで聞かず、ユイは脱兎のごとく駆ける。向かう先は、もちろん()()の巣が張り巡らされた場所。

 

 

 

駆け抜けるユイを追従するように黒い針が地面から出現するも、その細長い凶刃は標的には届かない。

 

 

 

 

"トマレ…トマレ…!ハシレ…ハシレ…!"

 

 

 

醜神が必死になって呪言を放つも、その都度ユイは完璧に醜神の言葉に逆らった。トマレと言われれば全力で駆け、ハシレと言われれば足に渾身の力を込めて即座に止まった。

 

 

他にも、糸を切りにこいと言われれば進行方向と反対に飛び退き、来るなと言われれば全力で巣へと駆け抜けた。柔軟な足腰と臨機応変な状況判断、そして言葉を聞いてから行動を起こすまでの反応速度。これら全てを総動員することで、ユイは醜神の呪言と黒い針のことごとくを回避することに成功していた。

 

 

 

だが、ユイとてすでに余裕はない。度重なる全力疾走と急ブレーキ、一回でも失敗すれば命が失われるという恐怖。息は荒れ荒れ、心臓が爆音を立ててユイに休むことを催促している。

 

 

 

それでも、諦めるわけにはいかない。ここで腰砕けになったしまえば、それこそ全てが水泡に帰す。ボロボロになるまで戦ったクロ、自分を信じてこの場を後にしたチャコ、そして自分を信じて見守ってくれている親友の命。

 

 

 

(負けない…ここまで来て…絶対に負けない!!)

 

 

 

小さな肩にのしかかる重圧に、ユイは決して膝を折ることなく立ち向かう。

 

 

 

 

そして、やがてその時はやってくる。

 

 

 

 

"トマ…ウゴクナ…!"

 

 

 

 

「うるさい!…いい加減に……黙れっ!!」

 

 

 

突き出された赤い刃は、二枚目の巣の真ん中を貫き、絡み合った赤い糸を確かに霧散させる。

 

 

 

 

 

その瞬間

 

 

 

 

 

"グゥォァアァァァァゥァァァァァァァァァァァァァァァァ………"

 

 

 

確かな苦痛を宿した絶叫とともに、醜神は崩れ落ちる。洞窟の最深部に倒れた巨軀は、それきりピクリとも動かない。

 

 

 

 

「ぐっ!…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…げほっ!」

 

 

 

絶対的に酸素が足りない体を引きずって、ユイはハルの元まで歩く。断ち鋏を杖のようにして歩く姿は、先程までの俊敏性は欠片もない。

 

 

 

「ユイ…っ」

 

 

 

そんなユイの歩く様を、ハルは涙が滲む瞳で見つめる。そこには、よろよろと危なげながらもしっかりと自身を見つめて微笑む親友の姿があった。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…まっ…てて…すぐに…切るから…ね…」

 

 

 

できれば上を向くという労力すらも惜しいが、ユイは体に鞭を打ちハルに笑いかける。涙ながらに笑い返してくれるハルの顔を見れただけで、体から活力が戻ってくるような気がした。

 

 

 

 

だが、ユイがハルを捕らえる巣まであと数メートルと言うところまで歩いた、その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

"オイデ…オイデ…オイデ…"

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

聞こえるはずのない、いや、二度と聞きたくないあの呪言が再び洞窟内に轟いた。

 

 

 

 

「うそ…まだ生きてるの…?」

 

 

 

直接その身に直接刃を突き立てたわけではないが、それでも簡単には信じられない。張られた巣は全て切ったはずだ。

 

子蜘蛛が小さな巣を切られれば霧散するように、あの醜神が張った二枚の巣を断ち切ったのだ。

 

 

 

 

ユイとしては、既に勝ったつもりでいた。第一、あの苦痛にまみれた絶叫が嘘偽りなはずがない。確信を持って言える、あれは確かに耐え難い痛みと苦しみから来るものだと。

 

 

 

 

"…キリニ…オイデ…"

 

 

 

では、なぜまたここでこの呪言が放たれるのか?

 

 

 

 

糸を切るだけでは足りないのか?

 

 

 

 

 

何か他の方法をとらなければ仕留めることは叶わないのか?

 

 

 

 

 

そんな疑問が、ユイの未だ酸欠でふらふらする脳内を飛び交う。

 

 

 

 

「とにかく…ハルを…助けない…と」

 

 

 

状況把握をするにも、まずはハルの救出が先だ。そう考えたユイは頭の中の疑念を振り払い、ハルの元へと一歩を踏み出す。

 

 

 

だが

 

 

 

 

 

「…っ!?来ちゃダメっ!!」

 

 

 

 

 

ハルが、これまでにないほどに悲痛な面持ちで叫ぶ。まるで、気付いてはいけないことに気づいてしまったかのように。

 

 

 

 

 

しかし、遅かった。

 

 

 

 

ハルの叫びが意味することにユイが辿り着いた時、全てが手遅れだった。そしてーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュ

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え………?」

 

 

 

 

呆然と呟くユイ、その腹部を、ユイの立つ前後から飛び出した黒い針が同時に貫いた。熱した棒を擦りつけたような激痛がユイを襲う。

 

 

 

 

「…が…ごぼ…ぶっ…」

 

 

 

 

信じられない、といったユイの口から夥しい量の血が溢れ出る。

 

 

 

 

 

「…いや…いや…いやぁぁぁぁぁぁ!!ユイっ!?」

 

 

 

 

「…ど……して…いと…は…」

 

 

 

 

 

そう言いかけたユイ、だが絶叫を上げて拘束を振りほどこうとするハルを見て、ようやく理解した。

 

 

 

自分の失敗と、あの時のハルの叫びの意味を。

 

 

 

 

 

糸ならあるではないか。これほどまでに分かりやすい、最後の糸が。

 

 

 

 

 

今までの二枚よりも高く、巨大な蜘蛛の巣。

 

 

 

 

ハルを捕らえる赤い糸が。

 

 

 

ユイは糸を全て切ってなどいなかった。もっとも重要で、絶対に切るべきものが残っていた。ハルを捕らえる巣、その赤い糸が、醜神の最後の生命線だったのだ。

 

 

 

だが、もう遅い。針が引き抜かれると同時に、ユイの体はそのままうつ伏せに地に沈む。彼岸花ですら霞むほどの赤が、倒れ臥すユイを中心に広がっていく。

 

 

 

担い手を失った赤き刃もまた、湧き出る血の泉に沈む。

 

 

 

 

「ユイっ!!ユイっ!?お願い返事してっ!!?…っ!?…」

 

 

 

 

そして、ユイが倒れると同時に、先程倒れたはずの醜神が起き上がる。

 

 

 

 

 

「…そ…んな……」

 

 

 

歯をカチカチと鳴らしながら、ハルの口から呆然と呟きが漏れる。

 

 

 

だが、再び回り出した絶望の歯車はそれだけで止まることはなかった。

 

 

 

 

キチキチキキキキチキチキチキチキチキキっ!!!

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

洞窟の天井から、無数の子蜘蛛が地に降り立った。その数は、先程縁切りの神が蹴散らしたときよりもさらに多い。その子蜘蛛全てが、ハルを無視してもう一つの供物…つまりは倒れ臥すユイの元に向かっている。

 

 

 

 

「っ!?やめてっ!?」

 

 

 

ハルの痛々しい叫びに、子蜘蛛たちは一切耳を貸す様子はない。瞬く間に子蜘蛛たちはユイを取り囲むと、その醜悪な顎をユイの頭部に近づけていく。

 

 

 

 

「お願いやめてっ!!お願いだから……っ……もう……やめてください…っ」

 

 

 

 

涙に掠れた声で、ハルは子蜘蛛の主たる醜神に懇願する。醜神は、その哀れな供物の言葉に、わずかに顔を傾ける。

 

 

 

「お願い……します……もう…なにもしません…だから…だから…っ…せめてユイだけはっ…ユイだけは………ユイ…だけは………」

 

 

 

己の全てを諦めることを条件に、ハルは醜神に懇願する。

 

 

 

"………………"

 

 

 

ハルの最後の願いを聞き届けたのか、醜神はハルを縛る糸を解き消失させる。拘束を解かれたハルの体は重力に従い落下し、硬い洞窟の地面に落ちる。

 

 

 

長時間にわたって手足を縛られていたせいか上手く着地ができず、ハルはそのまま倒れ込む。軽く頭を打ったせいか、わずかに流れ出た血がハルの頬を伝う。

 

 

 

子蜘蛛たちは落ちてきた供物に群がるように集まり、見るもの全てに吐き気を催すような数の子蜘蛛たちが倒れるハルを取り囲む。

 

 

 

「……ユイ………」

 

 

 

涙を流しながらも光を失った瞳で、ハルはただ最後に手を伸ばす。視界の全てを子蜘蛛に囲まれているため方向しかわからないが、横向きに倒れたまま左手をユイがあるだろう方向に伸ばす。

 

 

 

 

「…ごめんね……」

 

 

 

その呟きを最後に、ハルの視界は闇に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

深い、とても深いどこかで、ユイは自身が沈んでいっていることを感じていた。

 

 

 

 

上も下もわからない、深海のような世界を、ユイはただ沈みゆくまま下に向かっていく。

 

 

 

 

 

(あれ……?わたし……どうなったんだっけ……どこに…いるんだっけ…)

 

 

 

 

やたらとふわふわする意識のなか、ユイは自身の記憶を辿る。

 

 

 

(ああ…そっか…お腹刺されたんだ………)

 

 

 

思い返されるのは、腹部に生まれた焼け付くのような痛みと、口内を支配する大量の鉄の味。

 

 

 

 

(……死んじゃった……よね…)

 

 

 

そう自覚した途端、ユイの目尻には涙が溢れ出る。

 

 

 

「ハル…ハルぅ…!…ごめん…ごめんね…守って…あげられなくて……っ…」

 

 

 

恐らく、自分が死んだということはハルもまた然りだろう。しかもユイが来た直後の様子からすれば下手をすれば子蜘蛛の餌となっているかもしれない。

 

 

 

怖がりで泣き虫なハルが、おぞましい子蜘蛛たちによって悲惨な死を迎えているかもしれないこと、そんな親友を守ることが出来なかったこと。

 

 

 

様々な思いと後悔、怒りが涙に変換されていく。

 

 

 

「なんで…なんで……なんでなんでなんでなんでなんでなんでっ!!」

 

 

 

理不尽な暴力にすら耐えた少女の心の防波堤が、ここに来て遂に決壊した。

 

 

 

「なんでっ!?私が何をしたのっ!?なんで大事なものばかり私の元からいなくなるのっ!?」

 

 

 

濃縮された理不尽への怒りが、憎悪が、濁流のように流れ出る。

 

 

 

だが、それは最初のうちだけだった。

 

 

 

怒りとは、憎悪とは、悲しみの裏返しでもあるのだから。

 

 

 

 

「なんで…なんで守れないの…っ!私には…私には…あの子しか……いないのに…っ…あの子がいれば……それだけでいいのに………っ!!」

 

 

 

 

いつしか理不尽な世界への怒りは、守れなかった不甲斐ない自分へと向けられていった。

 

 

 

流れる涙は止まず、ユイの体はさらにさらに沈んでいく。この感覚がなくなった時、本当に自分は死ぬのだろう。

 

 

 

そう考え、全てを投げ出そうとした、その時

 

 

 

 

 

 

 

"諦めるの?"

 

 

 

 

 

怒りを滲ませた、どこか聞き覚えのある声がユイの耳を震わせた。

 

 

 

 

「っ…だれ……?」

 

 

 

"諦めるの?苦労して、怖い思いして、ここまで来たのに?"

 

 

 

だが、声の主はユイの呟くような疑問には答えず、さらに言葉を重ねる。

 

 

 

「…だって…仕方ないじゃん…もう動けない…死んじゃった…」

 

 

 

 

"そんな言い訳は聞いてない。諦めるのかどうかって聞いてるんだけど?"

 

 

 

 

次々と飛び出す無遠慮な言葉に、流石に我慢できなくなったユイが声を荒げた。

 

 

 

 

「さっきから何なのっ!?私のこと……何も知らないくせにっ!!私の苦しみなんか知らないくせにっ!!」

 

 

 

"知ってるよ"

 

 

 

だが、万感を込めたユイの怨嗟にも等しい叫びに対する答えは、ひどく簡素で、それでいて微かな優しさが込められていた。

 

 

 

 

「嘘だっ!!そんなことわかるわけーーーー」

 

 

 

"だから知ってるって"

 

 

 

憤怒の形相で叫ぶユイ、だがーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

"だって、()()()()()()だから"

 

 

 

 

 

 

そう言ってユイの前に突如として現れたのは、ユイがよく知る少女だった。

 

 

 

 

動きやすいために、一つに縛ったやや色素の抜けた髪。せめてものおしゃれで、親友と色違いのリボンをつけている。服装は同じく動きやすさ重視のTシャツとハーフパンツ。頭に巻いた包帯は、父親から受けた暴力の傷を隠すため。

 

 

 

ユイが鏡の中でいつも見た、()()()()の姿だ。

 

 

 

「…なっ!?どうゆうことっ!?なんで私ーーー」

 

 

 

"はいはい、時間ないから簡単にいくよ"

 

 

 

驚愕に顔を染めるユイの言葉を、後から現れたユイと思われる少女は手を叩いて黙らせる。

 

 

 

"私はあなた。でもここじゃない世界のあなた。あなたから見たら未来の自分って感じかな"

 

 

 

 

「み、みらい…?うそ…これ夢…?」

 

 

 

"夢じゃないからしっかり聞いて。私はあなた。でもあなたが私になるって決まったわけじゃない。私は……そう、あなたが辿るかもしれない可能性の一つって感じかな"

 

 

 

途方も無い話を前に、ユイの脳内から煙が上がりかける。そんなユイ…つまりは自分の様子を察したのだろう、もう一人のユイが呆れつつもわかりやすい爆弾を放り投げる。

 

 

 

 

"こう言えばわかるかな、私は、()()()()()()()()()を知ってる"

 

 

 

「っ!?とうゆうことっ!?」

 

 

 

"どうもこうも、あなたが昨日まで会ってたハルと、今のハルは違う。今あそこにいるハルは、私と同じ未来にいたハルだから"

 

 

 

「未来の……ハル…」

 

 

 

突拍子も何もない話、だがもしこれが真実なら、ユイの感じた違和感は全て解消される。様子がおかしかったのも、山について何か知っていたようなことも、全てそれで説明がついてしまう。

 

 

 

"どうやって、は私もわからない。ただあの子がやろうとしたことはわかる"

 

 

 

「…教えて」

 

 

 

ユイの静かな、だが強い言葉に、もう一人のユイは一拍おいて、告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

"未来を変えるため"

 

 

 

 

 

「未来を……変える…?」

 

 

 

 

 

目を見開くユイに、もう一人のユイはただ静かに口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"そう、本来あの山の神に殺される私…つまりあなたとクロを救うために"

 

 

 

 

「私とクロが……死ぬ……」

 

 

 

聞かされる言葉の重さに、ユイは自分の意識が傾くような衝撃を受けた。だが、ユイが何か言う前に、もう一人のユイが焦りながら口を開いた。

 

 

 

"もう限界かな、これ以上はあなたが本当に死んじゃう。ねえ、最後に聞きたいことがあるの"

 

 

 

「聞きたいこと…?」

 

 

 

 

最後、と言う言葉をあえて無視して、ユイは問いかける。

 

 

 

 

"あなたは…今生きてる私はどうしたい?このまま諦める?それとも…もう少しだけ頑張ってみる?"

 

 

 

 

それは、最終確認だ。時間がないという以上、このままほかっておけばユイの体は死に至るのだろう。つまり、これが分水嶺だ、知るはずのない真実を知ってなお、どうするかを決める、最後の機会となる。

 

 

 

「…無理だよ…あんなのに勝てるわけない。あれだけ頑張っても…全部無駄だったんだから…」

 

 

 

だが、ユイの脳裏にはあの醜神のおぞましい姿と呪言がこびり付いて離れない。全力で立ち向かってなお、最初から最後まで弄ばれたという力の差が、ユイに二の足を踏ませていた。

 

 

 

"たしかに、あれは強い。今のまま戦ったら、多分まだ負ける"

 

 

 

それみたことか、ユイの瞳に、暗闇が滲んだ。だが、

 

 

 

"だから、私が力を貸してあげる"

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

"私の全てを、あなたにあげる。もう…私が持ってても意味ないから"

 

 

 

 

困ったように、そして諦観しているような言葉が、ユイの耳をたたく。

 

 

 

「どういう…こと…?」

 

 

 

 

"言ったでしょ、時間がないの。これ以上、私は存在していられない。理由はわからないけど、あなたが山の深部に向かうにつれて、どんどん自分の存在がなくなっていくのがわかるんだ。私、今は幽霊だからさ"

 

 

 

優しく笑っているが、その言葉の中身は悲しいでは済まされない。自身が消えていくことがわかっていて、いまこの少女はここにいるのだから。

 

 

 

 

"もう一回聞くよ。どうしたい? このまま諦めるっていうなら、私が今この場で消してあげる。そのかわり、もう何があってもあの子には近づかないで"

 

 

 

そう話すもう一人のユイの言葉は、本当にこれは自分の声かとユイが思わされるほどにゾッとする寒さだった。

 

 

 

 

"でも……まだ少しでも、立ち向かう勇気があるなら、あの子を…助けようと思うなら…立ち上がって。そのための力と記憶を、私があなたにあげるから"

 

 

 

願うような言葉に、ユイの心に、ほんの少しだけ光が射した。

 

 

 

 

「私に…できるかな…」

 

 

そんなユイの弱々しい言葉を、これ以上ない言葉が、背中を押した。

 

 

 

 

"できるよ、私が保証する。ううん、違う。あなたとあの子なら、絶対勝てる"

 

 

 

そう言って差し出された手に、ユイは己の右手を重ねる。その上に、さらにもう一人のユイの手が重ねられる。

 

 

 

"自分と握手してる感じ"

 

 

 

「うん、変な感じ」

 

 

 

そう言ってお互い笑いあったのも束の間、膨大な何かがユイの頭に、体に流れ込んでくる。

 

 

 

「ねぇ、もしかしてここにくる間に助けてくれたのって」

 

 

 

ユイはずっと気になっていた疑問を、もう一人の自分に投げかける。それは、ユイとチャコのいく先々の怪異を殲滅し、あの鋏を持った異形の隙を作った謎の存在について。

 

 

 

"うん、私。結構しんどくて、最後は一回だけが限界だった"

 

 

 

 

「そっか…ありがとう、私たちを助けてくれて」

 

 

 

"いいよ、こうして我儘きいてもらってるし"

 

 

 

 

そういったもう一人の自分の体が、既に半分以上消えていることに、ユイは既に気付いていた。最後、と言ったのだ。こうなることはなんとなくわかっていた。

 

 

 

 

"ねぇ、我儘ついでに、もう一つだけお願いしていい?"

 

 

 

既に交わしている手と顔の半分ほどしかない己の言葉に、ユイはただ静かに口を開く。

 

 

 

 

「うん、いいよ」

 

 

 

"ありがとう。あのさーーーーー"

 

 

 

 

だがそれは、別れ際の願いというにはあまりにちんけで、そしてユイとして当たり前のお願いだった。

 

 

 

 

 

 

"あの子と…ハルと仲良くしてあげて。例えあなたの知らないハルだとしても、私にとっては"

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿にしないで」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな馬鹿なことを抜かす己の言葉を遮り、ユイは力強く、だが笑顔で答える。

 

 

 

 

「いつのハルでも、どこのハルでも、私にとって、ハルはハルだから」

 

 

 

その瞳に、先程までの絶望の色はない。進むべき道を定めた、覚悟のある者の目だった。

 

 

 

 

"そっか…そうだね、ごめん"

 

 

もう一人のユイは、その言葉とユイの表情見て、満足そうに頷き………はしない。既に頷くための首も頭部も残ってはいない。あるのは繋いだ手の片方と、優しげな右の瞳だけ。

 

 

 

そうして、最後の一欠片が消える寸前、

 

 

 

 

 

"あの子を、よろしくね。そして、どうか生きて。あなたは、私になったらダメだからね"

 

 

 

ささやかな、だがこれ以上ないほどの言葉を残し、もう一人のユイは完全にユイの前から消失した。手に残る温度だけが、今しがたまでそこに彼女がいたことを証明していた。

 

 

 

そして、ユイは全てを知った。もう一人のユイが消えると同時に、彼女が所持していた記憶と、()()()力の残滓は全てユイに受け継がれている。

 

 

 

だから知りえた。ここではない、もう一つの未来、その残酷すぎる結末を。悲劇として言えない、絶望に満ちた終わりを。

 

 

 

そして、ハルがどれだけのものと覚悟を背負って今ここにいるのかを。

 

 

 

あの小さな背中に、泣き虫な心に、どれだけの重圧と悲しみを刻んでいるのかを。

 

 

 

 

 

「…ごめんね、そしてありがとう。もう、絶対に諦めないから」

 

 

己の全てを託してくれた、もう一人の自分に向けた言葉を最後に、ユイは沈みゆく意識を引き上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

倒れ臥すハルと、それに群がる子蜘蛛の群れ。そのうちの数匹が、動かないハルの白く細い足に、汚らしい唾液を垂らしながらかぶりつこうとしていた。また、違う一匹は、その醜悪な顎を開き、ハルの頭を噛み砕かんとする寸前だ。

 

 

 

だが、足には唾液を、頭部の付近には既に子蜘蛛の気配を感じているはずなのに、ハルは動かない。自分が何かすれば、ユイにまで魔の手が及ぶかもしれないと察しているからだ。

 

 

 

これから始まる蹂躙に、一切の抵抗は許されない。もはや諦めにも似た感情が、ハルの心と瞳、そして体から希望を奪っていた。

 

 

 

(ごめんね…守ってあげられなくて…ごめんね…ごめんね…)

 

 

 

もはや光はおろか焦点すら失ったハルの瞳から、一筋の、恐らくは彼女の最後となるだろう涙が零れ落ちる。

 

 

 

 

 

だが、結果から言えば、その涙は彼女の最後のものとなることはなかった。

 

 

 

 

闇色に彩られた瞳から涙が流れ、そして二匹の子蜘蛛がハルに顎を立てようとした、その刹那ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュ

 

 

 

 

 

 

「…………?」

 

 

 

いつまでたっても引きちぎられるような痛みが襲ってこないことをハルが疑問に思ったのも束の間

 

 

 

 

 

ザシュ

 

 

 

ザシュザシュっ!!

 

 

 

 

ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュっ!!

 

 

 

 

 

夥しいまでの、肉を貫くような刺突音が洞窟内を駆け抜ける。

 

 

 

「……な……に…っ!!?」

 

 

 

 

呆然と、幽鬼のように立ち上がったハルが目にしたもの

 

 

 

それは、地面から出現した無数の()()()によって、その悉くが磔にされた子蜘蛛たちの姿だった。

 

 

 

 

「………う………そ…」

 

 

 

"…………………"

 

 

 

奇しくも、子蜘蛛の死骸が一斉に消失したことで姿を現した人物にハルと醜神が目を向けたタイミングは同時だった。

 

 

 

 

そこに立っていたのは、たしかにユイだ。

 

 

ただどう考えてもおかしい点がある。それは、貫かれたはずの腹部と背部にはまるで痕跡はなく、また足元に広がっていたはずの血溜まりも、最初からなかったかのように消えている。

 

 

 

そんなユイが、縁切りの神の力たる赤い断ち鋏を下げて、ハルの元まで歩いてくる。その速度は決して早いものではない、だが大怪我を負っている人間のそれでもなかった。

 

 

 

突如、数匹の子蜘蛛と、そのなり損ないの塊がユイの頭上及び進行方向に落下せんと迫る。

 

 

 

だが、

 

 

 

「邪魔」

 

 

 

そんな短くユイが吐き捨てるのと、地面から出現した黒い針が子蜘蛛とそのなり損ないを串刺しにしたのはほぼ同時だった。霧散したそれらをまるで気にせず、ユイはハルの元までたどり着く。

 

 

 

「…ユ……イ……」

 

 

 

「よかった、間に合った」

 

 

だが、そう言って微笑むユイの右の瞳は紅く染まり、右目からは瘴気とすら思えそうな赤黒い靄が漂っていた。

 

 

 

どう考えても普通の状態ではない。そしてこの瞳と瘴気を、ハルはなんとなくだが知っていた。

 

 

つまり、また守れなかったのだ。ユイがまた()()()をしているということが、何よりの証だった。

 

 

「ごめんね…ごめんね…私……またーー」

 

 

 

「大丈夫だよ、ちゃんと生きてるし。今は、()だから」

 

 

 

「……え……?」

 

 

 

呆然と目を見開くハルを、ユイはそっと抱き締める。

 

 

 

「…ユイ……?」

 

 

突然のことに、されるがままに抱きしめられるハル。そんなハルの耳元で、囁くようにユイは口を開く。

 

 

 

「ハル、ありがとね。私のために、こんなとこまで来てくれて」

 

 

 

「……………ユイ…」

 

 

 

未だ精神が戻っていないハル、だが、次の瞬間に発せられたユイの言葉は、そんなハルの心を響かせるには十分な威力だった。

 

 

 

 

「ありがとう、私のこと…探してくれて」

 

 

 

「…っ…!?」

 

 

びくり、ハルの小さな体が震えたことを、ユイは感じ取る。

 

 

 

 

「左手…痛かったよね。ごめんね、そうなる前に、離れてあげられなくて」

 

 

 

「……な…んで…それは…」

 

 

驚きに揺れるハルの体をしっかりと抱き締め、ユイは話し続ける。あの時の自分では、伝えられなかった。伝えてあげられなかった。

 

 

 

だから、今伝える。それが、もう一人の自分から全てを託された、自分の最初の役目。

 

 

 

 

「ありがとう、ごめんね。いっぱい怖がらせた、いっぱい痛い思いさせた、いっぱい悲しませた……………いっぱい……寂しがらせた」

 

 

 

そう言って、ユイは抱擁を解かないまま、ハルと顔を合わせる。そこには、先程までの濁りきった瞳ではなく、涙に溢れる、本来のハルの瞳があった。

 

 

 

「……ユイ…ユイぃぃっ!!!」

 

 

 

飛び込んでくるハルを、ユイはしっかりと受け止める。

 

 

 

「ごめんなさいっ…ごめんなさい……っ!!…ごめん…なさい……」

 

 

伝えられなかった謝罪、懺悔をするハルを、ユイは幼子をあやすようにして抱き締める。

 

 

 

ずっと苦しんでいたのだ、自分がもっと早く気づいていれば、もっと気を配ってていればと、己を責め続けていた。

 

 

 

ここまでハルを追い込んでしまったのは、間違いなくユイの死だ。だからこそ、ユイは何も言わずに抱き締める。

 

 

自分が不甲斐ないせいで、こんなにもハルを追い詰めてしまった。この子の左腕を奪ってしまった。

 

 

 

「ハルは悪くない。悪くないよ」

 

 

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

 

心の棘が抜けきらないハルの背中と頭を、優しくさすりながら、ユイは周囲に気を巡らす。

 

 

 

そして、出現した黒い針から自分とハルを守るようにして針を出現させ、自分たちを覆うようにして凶刃を防ぐ。

 

 

 

ガキんっ!!

 

 

 

 

まるで硬質な金属同士をぶつけたかのような音が鳴り響く。

 

 

 

 

「ハル…本当はハルの気がすむまでこうしてあげたい。でも…今はそれよりもやることがある、そうでしょ?」

 

 

 

「……………」

 

 

 

だが、それに対するハルの表情は暗い。当たり前だ、散々弄ばれ、今なお運命の手綱を握られているようなものなのだから。心にできた傷は、ユイの比ではない。

 

 

 

「辛いのもわかる。ずっと…見てたから。でも、だからこそ、もう終わらせよう。じゃないと……多分また同じ結果になる」

 

 

 

「同じ……結果」

 

 

 

再び迫る針を、今度は自分たちを守る壁のように同じく針を展開させることで、ユイは醜神の凶刃を防ぐ。ただし、このままでは間違いなくユイが先に倒れる。

 

 

 

当たり前だ、いくら受け継いだとはいえ、いまのユイの力は怨霊となったもう一人のユイの残滓のようなもの。カケラを行使するユイと、大元を持つ醜神ではやはり格が違う。

 

 

 

「ハルは!!今何のためにここにいるの!?またあんな結末にしたいのっ!?」

 

 

 

「っ!!?」

 

 

 

怒鳴りつけるのようなユイの言葉に、ハルは肩を大きく震わせる。

 

 

 

同じ結末。ユイとクロは死に、ハルは片腕を失い、何も残らない。あの時の痛みや悲しみ、そして喪失感が、再びハルを襲う。

 

 

 

全方位から迫る凶刃を、針をドーム状に展開することで防ぐ。ユイの額は、既に暑さではない汗でびしょ濡れ、力の源である右目は充血している。人の身で人ならざる力を行使することは、容易なことでない。

 

 

 

 

「大丈夫、今度はハル一人じゃないよ。私も……一緒に戦うから」

 

 

 

「…っ……ユイ…」

 

 

その言葉に、親友の優しさと強さに、ふらふらとだがハルは立ち上がる。そんなハルに、ユイは手に持った赤い断ち鋏をハルの前に差し出す。

 

 

 

 

 

「だからさ…今度は、一緒に帰ろうね、ハル」

 

 

 

「…っ…!?」

 

 

その言葉に、どれだけの思いが込められていただろう。

 

 

 

あの時は帰れなかった、手を離してしまった。

 

 

 

 

離さなければならなかった。そうしなければ、ハルは今ここにはいない。

 

 

 

 

どれほど悔やんでも、あの時山の入り口で離した手の温度が帰ってくることはなかった。

 

 

 

 

だが、だからこそ、今なら。この奇跡としか呼ぶことのできない、今ならば。変えられるかもしれない。絶望に彩られたあの未来を。悲劇に満ちたあの結末を。

 

 

 

 

取り戻せるかもしれない、あの日失った、繋いだ手の温もりを。

 

 

 

 

 

そのために、打ち倒すべき敵が、今目の前にいる。あの時いなかった親友が、今は隣にいる。

 

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

ハルは、差し出された赤い断ち鋏を手に取る。

 

 

 

 

 

かつて、ハルはこの刃で三つのものを切った。

 

 

 

醜神の赤い糸、

 

 

 

己の左腕、

 

 

 

 

そして、ユイとの縁。

 

 

 

だが、今回は一つでいい。醜神を、山の神との因縁を、今ここで断ち切れば、それで全てが終わるのだ。それこそが、ここに立つ自分の役目だと、今ならはっきりとわかる。

 

 

終わらせる、そして取り戻す。あの時失ったもの、手放してしまったもの、全部まとめて。

 

 

 

だからーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「帰ろう…一緒に帰ろう!ユイっ!!」

 

 

 

 

 

「うん、ハル!!」

 

 

 

 

 

 

かつて、ここではない別の未来のお話。

 

 

 

 

一人の少女は、神の悪戯によりその命を奪われた

 

 

 

もう一人の少女は、命を除く大切なもの全てを奪われた

 

 

 

 

だが、数々の奇跡と理不尽の果てに、今二人は再び並び立った。

 

 

 

 

 

 

ユイは右目を、ハルは鋏を、向かい立つ醜神に向ける。

 

 

 

 

 

運命を弄ばれた少女たちによる、最後の反逆が、今ようやく始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 




大分本作から逸脱したこの話…どう収集しようかな…


一応次の更新は2月中、を予定しております。またながーいこと空くことになるかもしれませんが、何卒よろしくお願い致しますm(._.)m
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