バカとうさぎとご注文ですか?   作:zaurusu

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第2話

「うーん……は!」

 

しまった、逃げ切った安心感から思わず寝てしまった。

 

てか、次の授業は鉄人が担当するから遅刻しようものなら容赦なく鉄拳制裁が下され、補修室(地獄)行きだ!

 

それだけはなんとしても防がなければ!

 

「あれ、なんでベットの上にいるのかな?」

 

急いで起き上がると、ふと、違和感を覚え、下を見ると何故かベットの上にいた。

 

僕の記憶だと、跳び箱の中にいて、埃かぶった冷たい倉庫の床下で寝落ちした記憶があるんだけど……

 

目の前に広がるのは、どこをどう見ても倉庫なのではない。

 

埃などなければ、冷たい床でもない暖かくポカポカ木の床だ。

 

それに……

 

「あれ、いつのまに着替えたのかな?」

 

制服だったはずが、私服に変わっている。

 

それと、なんだか視線が少し下がったような気がする。

 

というか、全体的に縮んだような……

 

「あ、気がついたんだね!」

 

扉が開くと、そこには見知らぬ少女がいた。なにやら、手には鍋のような物を手に持っていた。グツグツと音を立てて、いい匂いがしてきた。

 

「あ、あのー……」

 

「あ、まだ安静にしてなきゃダメだよ?元気そうだけど、あんなに傷だらけで冷たくなってたんだから! 」

 

君は誰?と聞こうとしたら、聞く前にベットに戻された。

 

「あ、紹介がまだだったね。私は保登心愛だよ!よろしくね!」

 

「へぇー、心愛さんか。優しくて暖かそうでいい名前だね。あ、僕は吉井明久って名前だよ。よろしく……でいいのかな?」

 

「えへへ、そうかな〜」

 

名前を褒められたのが、すごい嬉しいみたい。

 

若干、ホットココアの事を思ったのは内緒だけどね……

 

「えっと、明久君はなんであそこにいたの?」

 

「えー、なんて言えばいいのかな……」

 

今まで、あった事をまとめるとこうなる。

 

FFF団の処刑から逃げ、美波と姫路さんの話し合いと言う名のお仕置きから逃げ、西……鉄人の事情聴取から逃げてきて、倉庫の跳び箱の中に隠れていて、その間に寝てしまった気づいたらこの部屋の布団で寝ていた。

 

こんな馬鹿な話を誰が信じるのだろうか。

 

でも、事実には変わりがないし、誤魔化すのは僕は苦手だしな……何より、こんな可愛い子を騙すことなんて僕にはできない!

 

「えっと、実は……」

 

僕は今見でのことを包み隠さず、心愛ちゃんに伝えた。まぁ、それが僕の日常だったし、美波と姫路さんが怒って僕にお仕置きする事は理不尽な理由もあるけど、殆どは僕が悪いわけだし。

 

まぁ、特にいじめられていた訳でもないし、何より雄二たちといて退屈しなかった事はないから、僕的には面白おかししい笑い話的な感じで喋ったんだけど……

 

なんか、心愛さんの様子がおかしい。

 

なんか、話の途中で「そんな……」とか「なんで……」とか呟いていたんだけど、僕には不思議でしょうがなかった。

 

そして終いには……

 

「明久くん……じっとしてて」

 

「え、あ、心愛さん!?」

 

うっすら涙を浮かべ、何か失言でもあったのかと思って謝ろうとしたら、、僕に抱きついてきた。

 

「辛かったんだね。大丈夫、ここには明久君を虐める人なんていないから」

 

耳元でそう囁かれた。

 

「え、別にそういう訳じゃ……」

 

僕の話に虐めの要素なんてあったかな?たしかに、やりすぎな所はあるけど……それ以外は別にどうって事ないし。

 

「無理しなくていいから、落ち着いてね」

 

とは言え、こんな可愛い女の子に抱かれたのは初めてだし落ち着き用にも落ち着かない。何よりいい匂いが……は、僕は変態じゃない!

 

それから、明久は数十分間にも心愛に抱きつかれ、その間に慰められらのだが、慣れていない分心愛から「落ち着いた?」と聞かれたが、心臓がどくどくと爆発しそうで、それどころではなかったのだが、なんとか落ち着いかことができた。

 

「あ、お粥作ったから食べて!」

 

成る程、先程からするいい匂いはお粥だったのか。それに、見た目もいい。

 

スプーンを持って、頂こうかと思ったら、僕が持つより先に心愛さんが先に取ると適度にお粥をすくうと、火傷しないように息で優しく冷ますと

 

「はい、あーん」

 

FFF団がこの光景を見たら、即刻死刑になる事間違いなしの美少女によるあーんをしてきた。

 

恥ずかしいので、自分で食べると言ったんだけど……

 

「だーめ!明久君は怪我してるんだから!」

 

と、反論され、物凄い恥ずかしかったけどあーんをすることになった。

 

「ど、どうかな?」

 

一口食べて見たが、正直言うと味がなかった。

 

「やっぱりまずいよね?……私、パンなら上手く作れるんだけど、他の料理は全くで……」

 

心愛さんが少し、暗くなった。

 

でも、明久はそんな事は思わなかった。

 

「え、不味くないよ?」

 

「え?」

 

「確かに、味はないけど……暖かくて僕は好きだよ?」

 

正直、姫路さんや姉さんの殺人料理をいつも食べたからこのくらいはね……

 

あ、でも暖かいのは本当だよ?お粥が暖かいからじゃなくて、別の何かを感じるんだ。

 

多分、心愛さんの優しさなんだと僕は思う。薄味を作ろうとして意識しすぎたんだと思う。

 

現に、その優しさがこの料理に現れてる。

 

「そっか、ありがとう。優しんだね。明久君は……」

 

「そうかな?」

 

よく、馬鹿でお人好しだとは言われたけど、優しいとは言われたことがなかった。

 

「うん、なんか年下の子とかに優しそうだね」

 

「まぁ、昔の自分を見てるみたいでは可愛いからね」

 

「うん、私もわかるよ!明久君の場合、ちっちゃい子に、バカなお兄ちゃんとか言われても許しちゃいそうで、なんだか似合う気がするよ!」

 

「あはは……」

 

実際言われてるのだが、笑ってごまかした。

 

その後はと言うと、お粥を心愛さんのあーんで全部食べた後、心愛の姉であるモカさんが着替えを持って来てくれた。心愛さんよりも大人びた風貌で優しいお姉さんとはこの事を言うのだと思った。

 

心愛同様に僕の話を聞かせたところ、泣きじゃくってまた抱かれてしまった。しかし、心愛さんの時とは違ってドキドキよりも安心感が強かった。

 

そして、僕は暫く保登家にお世話になることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遅れすぎた

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