ある一人の終末日記   作:独身紳士

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小説訓練の為の物語です。


終わった世界の旅路

「ここはどこだろうね、見渡す限りの瓦礫の山に使い道のない兵器たち。こんなものを作るなら食べ物を増やしてくれと言いたいよ。ユリナもそう思うだろう?」

「私には分かりません。ですが彼らには食物よりこれら兵器の方がよっぽど重要だったのではと」

「そういうものか。ボクにはさっぱりだよ、この雪野原のようにサッパリさ」

「……」

「なんか言ってくれよ。これでも寂しいんだぞ、ボクは」

「なんか」

「また下手なボケを。こんなんじゃお笑い芸人にはなれないね。見せる人はいないんだけどさ」

 

少女は小さく白いため息を一つ。

ハンドルを握りしめて前を見つめる。バイクでこの雪の中を走るのは大変だ。だけど止まれない、食料は残り僅かだしバイク……ユリナの燃料を補充しなければならない。

 

目の前に建物が見えた。工場のようでユリナの燃料、食料も期待できる。もう少しだと気合いをいれて震えている心に喝を入れなおす。

スピードを上げた。エンジンが唸りを上げてユリナが不機嫌そうな声を出す。冷たい風が頬っぺたを撫でてゆく。顔を保護できる防寒具を見つけられなかった事に後悔した。

 

「燃料ありますかね」

「あると思うよ。それにボクの勘は外れたことがないのさ」

「どの口が言ってるのか理解不能です。……さぁ着きましたよ。早く中に入りましょう。寒さで死にそうです」

「バイクは死ぬのかい? 聞いたこともないよ。寒さも感じるのかな」

「……早く中へ」

「わかったよ、全く弄りがいのないバイクだなぁ」

 

入り口前にユリナを止めて押しながら中へとはいる。

食料があれば万歳。ついでに燃料があれば万々歳だ。

歪んだドアを開け、中へと入る。工場内は空調がまだ生きているのかほのかに暖かい。だが人の気配はしない。

ここも終わりが訪れているのに。もう人が来ることはないだろうに……。

 

部屋は見る限り二つほど。その奥にはまた扉があり、覗くと明かりがテカテカと光って複数のアームが何かをつくっていた。気になるが部外者がはいる訳にもいかない。

大人しくほかを物色する。

……少し寂しい。

 

しばらくして。

 

「成果は上々だね。食料も腐るほどあったし燃料も当分もつぐらいは確保できた」

 

ユリナが少女の隣へとやって来る。

 

「珍しい事もあるものです。貴方の勘があたるとは」

「失敬な! 本気を出せばこのくらい、余裕さ!」

「はははっ。片腹痛い……しかしなぜこれ程の収穫が得られたのでしょう? ここは食料を作る工場なのでしょうか」

「違うと思うよ」

「なぜ?」

「見ればわかるさ」

 

少女はユリナを引いて工場を出た。そしてそのまま建物の裏側へと回り込んだ。予想が正しければ、ここで食料の燃料の謎が分かる。

5分ほど待つと工場に変化が見られた。錆びついたシャッターがゆっくりと上がって中から一台の戦車が現れる。それはひとりでに動きだすと少女達がいる場所とは反対方向へと進んでゆく。

入れ違いにもう一台の戦車がやってきてその周りを工場内にいたアームたちが取り囲み、解体していった。アームが持っている物の中には食料や燃料も含まれていた。錆びついたものはアームがそこら中に投げ捨てる。

 

「ここは元々戦車や武器を作る工場だったんじゃないかな。でも人のがいなくなって必要がなくなった。でも機械にはそんな事関係ない。彼らはプログラム通りに動くしかないんだと思う。だから今でも戦車を作って周りを探索し、敵はいないからサブプログラムである収集をしている。まぁボクの勝手な思い込みだけどね」

「私は……少しだけ寂しいです」

「おお、珍しい。ボクも同感だよ、ユリナとこうして意見が合うのはいつぶりかな」

「5年3ヶ月ぶりでしょうか」

「……収穫はあったしこの街とはおさらばしよう。先はまだまだ遠いからね」

 

少女はユリナに跨ってハンドルを握りこむ。空を見上げれば太陽が雲の間から顔を出していた。雪解けが近いかもしれない。

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