いよいよ明日からラブライブ!サンシャイン!!の二期が始まるという事でこの物語を書き始めました。温かく見守っていただけると幸いです!
それではどうぞお楽しみください!!
「はぁ・・・。」
頭を掻きながら1人の男が学校の廊下を歩いていた。顔立ち自体はそこまで悪くはないのだが、―――への地に曲がった口や眉間に寄っているシワ、そしてサングラスに隠れているがうっすらと見える吊り上がった目つきの悪い目―――見れば誰もがチンピラかヤクザかと見紛うような彼を見たすれ違った女子生徒たちは、
「あの人・・・。なんか怖いね。」
「あの人が新しい先生なの?」
と男に聞こえないようにヒソヒソと話していた。
(まったく、なんで俺が教師なんかやらなきゃいけないんだか・・・。)
明らかに距離を取られていることを認識している男はため息を1つつきながら心の中で呟いた。男の名前は熊田広樹、つい最近にこの学校―――浦の星女学院に赴任した新人教師である。
だがこの男、本当のところを言うと実は教師ではないのだが
「一体どういうつもりであのお嬢様は俺をここに送り込んだんだか・・・。」
広樹がこの学校に教師として赴任することになった理由を知るには、3か月ほど時を遡る必要がある。
1月、ニューヨーク某所にある豪邸にて・・・。
「なあオイお嬢、いきなり俺を呼び出してどうしたってんだよ?」
広樹はスーツを正しながら煙草を吹かして自分を呼び出した『お嬢』という人物に問いかけた。
「んもう、マリーの部屋では煙草を吸わないでって言ってるでしょう?」
自分のことを『マリー』と呼ぶ金髪の少女、小原鞠莉は自分の部屋で煙草を吸う広樹を咎める。見た目は外国人だが、彼女はイタリア系アメリカ人の父と日本人の母を持つハーフであり、日本語も流暢であった。
「あーハイハイ。で、何の用だ?また突拍子もねえ話は勘弁してくれよな。」
煙草をポケットから取り出した携帯灰皿に入れて火を消した広樹は気だるげな様子で鞠莉に呼び出した用件を聞いた。彼の言動から察するに、どうやら広樹は彼女に日常的に振り回されている事が伺える。
「実は広樹には日本に戻って浦女に行って欲しいの。」
「へえ、日本に戻って浦女にねぇ・・・。ハァ!!?」
鞠莉の言葉を聞いて広樹は素っ頓狂な声を出した。
「ちょっと待てどういう事だオイ!なんだ日本に戻れって!?というか浦女に行けってなんだよ!あそこ女子高じゃねえか!いやいや、それ以前に俺はもう23歳だぞ!常識的に考えて入れるわけねえだろうが!!」
広樹はまくし立てるように鞠莉に詰め寄るが、
「誰も生徒として入れ、なんて言ってないわよ?」
と彼女はあっけらかんとした様子で答えた。
「は?じゃあどうやって浦女に行けって言うんだよ。」
「決まっているでしょ?あなたは先生・・・ティーチャーとして浦の星女学院に赴任するのデース!」
「ふっざけんじゃねえ!!なんで俺が教師なんざやらなきゃいけねえんだよ!どう考えても無理だろうがバーカ!!」
自分の予想の斜め上を行く提案をされた広樹は、目上の立場にいるはずである鞠莉に対して口汚く文句を言った。
「馬鹿って言う事ないじゃない!それにドラマとかで広樹みたいな元ヤンが教師になる話だってあるでしょ?」
「それはあくまでもフィクションだろうが!大体、教師になるには教員免許がいるんだよ。」
「あら、詳しいのね広樹?」
「いやそれぐらい常識だろ・・・。それに、俺のダチが教師目指してるから分かるが、教員免許をとってもすぐ教師になれるわけじゃねえんだぞ?」
いくらか冷静になった広樹は、教師を目指している友人を例に出して教師とはそう簡単になれない職業であることを鞠莉に説明した。
「そうね、広樹の言う通りだわ。でもノープロブレム!別に今すぐに行けっていうわけじゃないし、日本から教材を取り寄せてあるから4月の浦の星女学院の新学期が始まるまでに教師としてのノウハウを叩き込んでから戻ってもらいマース!」
「マジかよ・・・。」
「マジも大マジ、もう浦女には次の新学期にあなたが赴任することは伝えてあるから逃げることはできないわよ!」
「ちょっと待て。確かに俺は今じゃお前の部下だが元はと言えばお前の親父さんからあんたの目付を任されてお前の元にいるだけなんだぜ?お前に俺の人事を決める権利は・・・。」
広樹は元々鞠莉の父である、大型リゾートホテルチェーン『ホテルオハラ』の会長にひょんな事をきっかけに雇われて、娘である鞠莉の目付け役を任されているホテルオハラ会長直属の部下だった。広樹は自分の人事権は鞠莉の父が握っていることを根拠に彼女の提案を潰そうとしたが、
「あるわよ?」
「は?」
「パパの許可は既にとってあるんですもの。ほら、ちゃ~んとパパのサイン付きで書面にしてあるわよ?」
「マジだ・・・。コイツは紛れもなく会長の字・・・!クソ、あの子煩悩め・・・。」
鞠莉に書類を見せられ、広樹はなす術が無くなったと言わんばかりに床にへたり込んだ。
「それに、浦の星女学院はうちの会社がスポンサーになってるから多少の無茶が利くのよね~。」
「・・・分かった。そこまでされちゃあ拒否権も無いし行くしかねえみたいだが、一つだけ質問させろ。」
「ええ、いいわよ。」
「なぜ俺をわざわざ浦女に潜入させるんだ?松浦と黒澤姉が気になるんだったら電話で話しゃあいいじゃねえか。」
広樹は、この話を通じて浮かんだ疑問を鞠莉に投げかけてみた。
「そ・れ・は・・・、トップシークレットデース!」
「あ゛?」
鞠莉のお茶らけた返事に広樹は額に青筋を浮かべて拳をパキポキと鳴らす。
「ちょっ、ストップストップ!ええ、ええ。確かに広樹の言う事は尤もだと思うわ。私だってそうした方が早いと思うしね!でも、問題はそこじゃないし、そもそもそれが目的だってわけじゃないのよ。」
堪忍袋が切れそうな広樹を前に、鞠莉は慌てて弁明するように語った。
「何?他に目的があるってのか?」
「い、イエ~ス!でもその目的はまだ言えない。まだ私が動くじゃないから。」
「・・・!」
鞠莉の評定が先ほどまでと一転して真面目なものに変わったのを見て、広樹は鞠莉から下された役目が重要なものであると鞠莉に5年ほど仕えて培った本能で感じ取った。
「・・・お嬢がそこまで言うんだったらもう何も聞かねえ。内浦にも行ってやろうじゃねえか。」
「オゥ!サンキュー広樹!!」
「ちょっ、いきなり抱き着くんじゃねえ!」
鞠莉は喜びのあまり広樹に抱き着くが、広樹は鬱陶しそうに彼女を振り払おうとした。
「そういや俺の給料とかはどうなるんだ!?」
「もちろん、私たちの元から離れて浦の星女学院で働くからそこの教師たちと同じよ。あ、でも広樹は私の命令で働いてるから教師としての給料とは別に今の給料の半分を振り込ませるわ。」
「そうか、流石にクビにされるってわけじゃあねえのか。で、何処に住みゃあいいんだ?」
給料に続いて住居について鞠莉にたずねるが、その話をした瞬間、
「・・・。」
鞠莉の動きが急に止まり、彼女は不自然に目を逸らした。
「まさかもしかして・・・。何も考えてねえとか言わねえよな!?」
「・・・ソーリー☆」
「ぎゃあああああ!!まさかの家無しスタートかよくそったれええええええ!!!」
広樹の叫びが鞠莉の部屋中に響き渡った。
(そんなこんなでこうして内浦に戻って来て今に至るわけだが、これから教師として生活していかなきゃと思うと気が重いぜ・・・。)
広樹は心の中でそう呟くと屋上で煙草の煙を空に向かって吐き、また一つため息をついた。
「やっと見つけた!」
「ずいぶん探しましたわよ!こんな所にいたのですね!」
すると後ろから2人の少女の声がした。
「おーおー、ようやくご対面の時間か。だいたい10か月ちょい振りか?」
気だるげに振り向くと、そこには青みがかった長い髪の毛をポニーテールにした少女と、漆のように黒い髪を整えて長く伸ばした少女が立っていた。
「久しぶりだな松浦に黒澤。今日は始業式だけでもう終わりだろ?こんなとこで何してんだよ。」
「何をしてるはこっちのセリフですわ!!まったく、始業式にあなたの姿を見た時は一瞬目を疑いましたわ!」
「ほんとだよ、ダイヤがヒロ兄がいるって言うから学校中走り回ったんだからね。」
黒澤と呼ばれた少女、黒澤ダイヤは咎めるように広樹に詰め寄り、松浦と呼ばれた少女、松浦果南はそんなダイヤを見て苦笑いしていた。
「おいおい、これからはお前らの教師になるんだからその『ヒロ兄』ってあだ名はやめてくれよ・・・。それに俺とつるんでるとこなんて見られたら誤解されるだろ。そうなったら困るのはお前じゃねえのか黒澤ダイヤ
「そうやってからかうのはやめてくださいませんか!?それに、私たちもそこまで付き合いが浅いわけではありませんから誤解されることなんて何もないでしょう?あとそれと、屋上とは言え校内での煙草は控えてください。」
「はは、しばらく見ねえうちにお強くなったこって。」
ダイヤに手厳しく言い返された広樹は苦笑して、ポケットから取り出した携帯灰皿に煙草を入れる。
「ねえ、なんでヒロ兄がここにいるの?」
果南のその一言が和やかだった場の雰囲気を変えた。
「さあな。俺のダチに教師を目指してる奴がいたからそいつに影響されました・・・とでも言っておくか?」
「誤魔化さないで。ヒロ兄の事だから鞠莉が何か裏で一枚かんでるんじゃないの?」
広樹は鞠莉の時と同じように友人を例に出して言い逃れようとするが、果南はそれを許さなかった。
「果南さんの言う通りですわ。小学5年生の頃から鞠莉さんのそばにいたあなたがその様なあやふやな理由で鞠莉さんの元を離れるわけがありませんわ。何か理由が・・・。」
「ずいぶん俺のことを高く買ってくれてるみたいだが、俺が勝手に動かないって確証でもあんのか?」
『!!』
予想もしなかった広樹の反論に、果南とダイヤは思わず言葉を失った。
「はあ・・・。まあ確かに俺が鞠莉のそばにいたりあいつの世話をしたりすることが多かったから俺があいつの忠実な執事かと思っちまうのは何となく想像はつくが、俺はそんな高尚な人間じゃあないぜ。」
広樹は頭をボリボリと掻きながら立ち上がって煙草に火を付けつけると、そのまま彼女たちの元から立ち去るように歩き出した。
「俺が
「ええ、そうでしたわね。あなたはかつて『忠臣』と『裏切り者』・・・、その2つの呼び名を欲しいままにしていたのでしたっけ・・・。」
「確か名前は・・・。」
『吉川広家』
「・・・そうさ。俺は目的の為なら手段を問わねえ男、
(とりあえずはこんなもんか。)
広樹は芝居がかった振る舞いで、2人に自分が己の意思でここにいることをアピールしてみせた。
吉川侍従広家。それは、百戦不敗や鬼吉川とあだ名された猛将である吉川元春の息子にして関ヶ原の戦いで中国地方に大領土を持つ毛利家を守るために
「せっかく慣れねえニューヨークからまたこの内浦に戻ってこれたんだ。ま、仲良くしてくれや。」
広樹は彼の背を見て立ち尽くすダイヤと果南に不敵に笑いながらそう言って屋上から降りて行った。
これは浦の星女学院に通う9人の少女たちと、彼女たちが住まう内浦に偶然か必然か投錨された三本の矢と、身を焦がすほどの享楽を求める少年が輝きを求めて走りだす物語・・・。
その、前日譚である。
いかがでしたでしょうか?
まずはプロローグ第一弾、読んでいただきありがとうございます。プロローグという事で、アニメの本編が始まる1年前からスタートさせました。
私の作品を読んでる皆さんからは「せめて『若虎と女神たちの物語』を終わらせてから書けよ!!」というツッコミとブーイングが飛んできそうですが、この物語の構想自体は今年の初め辺りから練っており、常々早く書きたいという欲求に駆られていました。しかしその一方で若虎も書き切らなければいけないというジレンマもありました。
しかし、Aqoursの2ndライブツアーを見て、さらに二期が始まるという事で書きたいという気持ちが抑えきれなくなったので執筆を始めさせてもらった次第でございます。
そんなわけで他の2作と共に温かく見守っていただけると幸いです。あと、感想も書いてくださるとモチベーションが大変大きく上がりますので、1文字だけでも書いてくださると嬉しいです。
残るプロローグはあと2つ。是非とも次回も楽しんでください!!