ラブライブ!サンシャイン!! 輝きを追い求めて   作:截流

3 / 3
どうも、氏政です。


今回はいよいよ最後のプロローグです!今回は・・・というか今回も『若虎と女神たちの物語』にも登場したとある人物が現れます!果たしてそれは誰なのかは、本編を読んでのお楽しみです!



それではどうぞお楽しみください!!


プロローグ3 少年は愉悦を望む

浦の星女学院に新たな教師が赴任したのと時を同じくして、内浦の海に浮かぶ淡島にて・・・。

 

 

 

「悪いね良景、いつも手伝ってもらっちゃって。」

 

その淡島にあるダイビングショップの一人娘である松浦果南は、ダイビングスーツを干しながら良景という少年に礼を言った。

 

「いやいや例には及ばないよ果南。このダイビングショップのおかげでいつも色々と愉しめてるからね。その恩返しみたいなもんさ。」

 

果南に良景と呼ばれた酸素ボンベを運んでいる少年、浅倉良景はにこりと愛想笑い(・・・・)を浮かべながらそう言った。

 

普段は果南の両親がダイビングショップを運営し、それを果南が手伝っているという形であったのだが、果南の父親が怪我をしてしまったので果南は学校を休学して店の仕事の大半を父に代わって担っていたのだった。もちろん女手だけでは大変だという事で、果南の友人でダイビングショップに足を運ぶことが多かった良景が店の手伝いを買って出たのだ。

 

「それにダイビングショップで働くなんて滅多にできないしね。分かってると思うけど、そもそも僕は愉しいと思えないものには全く手を付けない主義なんだ。大変だと思ってたらその時点で僕はこんなとこには来てないよ。」

 

「ふふ、確かにそうだね。良景は中学1年の時にこの町にやって来た時からずっとそんな感じだったもんね。もう5年も経つのに全然変わんないだから。」

 

良景の端から見れば自分勝手にしか思われない持論を聞いても果南は呆れたように――もちろん心の底から呆れているわけではないが――微笑んでそう言った。

 

「それもそうだけど、恩返しって言うのもまんざら嘘じゃないんだけどね。この特に海や自然に囲まれてるだけの内浦に引っ越してきたばかりの時は退屈で死にそうだったけど、君がダイビングに誘ってくれたおかげで新しい世界を知る事ができた。それに住めば都とはよく言ったものだよね。東京みたいに人が煩わしくないし、夜も月や星が綺麗に見えるし季節の移ろいも肌身に感じる事ができる実に風流な場所なんだから。」

 

「良景が内浦の事を好きになってくれて嬉しいよ。」

 

果南は軽く流すように良景の言葉に応える。

 

「それに果南やダイヤ、そして鞠莉・・・。君たち3人組とつるむのも面白かったしね。」

 

「もう、何さそれ。」

 

他愛のない思い出話に花を咲かせる2人の間に和やかな雰囲気が流れていたが、

 

「――まあ君たちがスクールアイドルをやめちゃったのだけは非常に残念だったけどね。」

 

「・・・!」

 

良景のふとした発言に果南の表情が曇る。しかしそれに気付いているのかいないのか口を止めることはなかった。

 

「いやぁ、ほんとに残念だったねぇ。君たち3人ならいいスクールアイドルになると思ってたんだけどね。まさかあんな所であんな終わり方(・・・・・・・・・・・・)しちゃうなんて、ちょっと拍子抜けって感じだった―――」

 

「その話はもう終わったでしょ?」

 

果南は険しい表情で良景の話を遮る。

 

「果たしてそれはどうかな?」

 

「どういう意味?」

 

「どうもこうもそのまんまの意味さ。果南はもうスクールアイドルに関することに目を背けたいみたいだけど、世の中そう簡単には行かないってこと。皮肉な話だよねぇ。」

 

果南の非難するような眼差しを受けてもなお、薄ら笑いを辞めることなく語り続ける。

 

「だから何が言いたいのさ。」

 

「忘れたいことや無かった事にしたいことに限ってしぶとく、際限なく湧き出てくるよね。まさに歴史は繰り返すって言葉通りだ。」

 

「だから・・・、何が言いたいのかはっきり言ってよ!」

 

良景のはっきりしない物言いに苛立ちが募った果南は思わず怒鳴ってしまった。これには良景も薄ら笑いをやめて一瞬だけ驚いたような表情を見せたが、またいつもの薄ら笑いを浮かべて話を再開させる。

 

「君に吉報(・・)がある。千歌ちゃんがスクールアイドルに興味津々なようだよ?」

 

「千歌が・・・!?」

 

「うん。僕の所にもスクールアイドルについて聞きに来たしね。これはあくまでも僕の推測に過ぎないけど、彼女の目を見る限りあの子はスクールアイドルになるって言いだすだろうね。」

 

良景は千歌――果南の幼馴染の少女――がスクールアイドルになりたがっているそぶりを見せている事を果南に教えた。その顔はどこか楽しげに見える。

 

「そっか・・・。」

 

「言っとくけど僕は彼女を止める気はないよ。」

 

「うん、知ってる。千歌は止めようとして止まるような子じゃないし、良景だって頼まれても止める気は無いんでしょ?」

 

「うん、僕は享楽主義者だからね。面白くて愉しいと思ったことを行ない、つまらないと思ったものには干渉しない・・・、それが僕の人生哲学さ。千歌ちゃんがスクールアイドルになって、何を想い、何をして、何を見つけるのかを見守る方が僕は面白いと思う。そして、彼女が行く末にどんな結末が待っているのか・・・、それが幸せなものであれ、辛いものであれ、見届けるのが愉しみでしょうがないんだ・・・!!」

 

良景は底なし沼のように澱んだ瞳を宝石のようにキラキラと輝かせながら満面の笑みで語った。

 

 

浅倉良景という少年は、幼い頃より自身を『享楽主義者』と謳っている。彼にとって世の中に起きる事象は『遊び』であり、人生は『遊び場』、そして世界は『大きなおもちゃ箱』でしかなかった。

 

だから彼は自分にとって愉しいか愉しくないかを基準に生きている。

 

愉しい、面白いと感じるものに対しては熱心に取り組み見守るが、つまらないと断じたものはあっさりと捨てる。それが今まで熱を入れていたものであっても、つまらないと僅かに感じれば次の瞬間にはもう捨ててしまっている。

 

そしてそのスタンスは人に対しても変わらない。面白いと感じた人間には興味を示すがつまらないと感じた人間には一切干渉しなかった。だが、つまらない人間であってもほんの少しだけでも面白い(・・・)と感じるものがあれば、彼はその人物が自分にとって見てて面白く、愉しいと思える方向にさり気なく、自身の手を汚さずに誘導して自我のある操り人形(・・・・・・・・・)にしてその人物の様子を見て楽しむという、現代の倫理観では破綻しているとしか思えない趣味も持っていた。

 

そんな彼を見て1人の男はこう評した―――

 

 

「こいつは真意が読めない、あまりにも不気味な男だ。」

 

 

―――と。

 

 

 

「まあ、僕は別に千歌ちゃんが失敗したり辛い思いをするのを見たいってわけじゃあないからね。求められればそれなりにサポートやらアドバイスはするつもりだよ。」

 

微笑みながら果南に向けた発言から分かるように、彼は一概に悪人だというわけではない。あくまでも自分にとって(・・・・・・)愉しい事と面白い事を追及しているのであって、何も人が苦悶する様や破滅する様子などといった悲劇を見たいわけではないのだ。

 

良景が関心を持つ人物にとって幸福な事やその人物が成し遂げようとしている事、そしてその人物が抱いている信条などが良景にとって愉しい、面白いと感じる事ができるものであれば、彼はそれらを達成させるために協力を惜しまない。

 

簡単に言ってしまえば、彼は時と場合によって善人にも悪人にもなり得る人間だという事だ。

 

 

 

「おっと、そろそろ時間だ。じゃあ僕はこの辺で引き上げるよ。」

 

良景は時計を見て、手伝いを切り上げ果南に別れを告げた。内浦の町と淡島の間には連絡船が行き来していて、彼はそれに乗って果南の店に行っているのだ。時間が決まっており、一度乗り遅れれば船が戻ってくるまで待たなければいけない上に、最終便に乗り遅れると帰れなくなる場合もある。

 

余談だが、良景も中学生時代に夕方遅くまで果南の店に入り浸って最終便に間に合わず、果南の家に泊まる羽目になった事もある。

 

「今日も手伝ってくれてありがと。また明日ね!」

 

果南は帰りの船に向かう良景を笑顔で手を振りながら見送った。

 

 

 

 

 

「やれやれ、あんなに怒る果南を見るのははいつ振りだろうね。」

 

船に揺られながら良景は独り言を呟く。

 

「もし千歌ちゃんが本当にスクールアイドルになる・・・、なんて言い出したらきっと面白いことが起きるだろうね。この時代でも・・・そしてあの時代でも経験できそうになかった面白い出来事が・・・!!そうは思わないかい、小少将、長政。そして・・・信長。」

 

 

小少将、長政、信長・・・。良景が呟いた3つの名前は、どれもかつての彼(・・・・)にとって所縁の深い人物のものであった。

 

まずは小少将、彼女はその人物の2人目の妻であった。息子を亡くし悲嘆に暮れる『彼』を見かねた家臣が推挙した美女で、『彼』は大いに彼女を気に入っていた。夫婦仲は良好で息子や娘にも恵まれ、傷ついた心を大いに癒した。だが、『彼は』国政を省みず小少将と享楽的な生活を送っていたという悪評が後世に残っている。

 

次に長政。長政というと何人かの人物が思い浮かぶ人も多いが、ここでは北近江(滋賀県)にて勢力を拡大した戦国大名、浅井長政を指す。長政は信長の妹で絶世の美女と言われたお市を娶るも、『彼』の家と古くから結んでいた同盟を重んじて義兄である信長を裏切り、『彼』と共に後世に『信長包囲網』と呼ばれる連合軍の主力として信長と激しく競い合った。

 

最後に信長。これはもう説明するまでもなく天下統一を狙った英傑にして『彼』の宿敵である、織田信長の事である。

 

 

この3人を説明する中で用いた『彼』という言葉はある人物の名前に置き換える事ができる。その名は朝倉義景、100年にわたって『第二の京』と呼ばれた越前国(福井県)を治めた戦国大名、朝倉家の最後の当主である。

 

彼は一般的には『国政を省みずに贅沢な暮らしをして朝倉家を衰退させた男』や『将軍の弟である足利義昭がやって来て擁立すれば天下を取れたかもしれないにもかかわらず腰を上げなかった先見の明の無い男』、そして『急成長している織田信長を侮って敵対し、結局滅ぼされた無能な男』として評価されている。

 

だがそれは勝者から見た一側面であり、実際は越前をよく治めて越前がもっとも繁栄したのは彼の代であり、当時では最先端と言われたガラス産業を推奨させ経済の発展を促し、戦乱に荒れる京から逃れた文化人たちを保護したという内政に長けた文化人であり、戦そのものは苦手ではあったが、それでも浅井長政や石山本願寺などと連携を取り信長を苦しめ、信長が『天下は朝倉殿に任せ候』という文面で連合軍に和睦を申し入れるまで追いつめたという実績がある。

 

だが結局彼は信長に敗れた後に従兄弟の朝倉景鏡(かげあきら)に裏切られ自害して生涯を終えた。そしてその死から四百と数十年の時を超えてこの時代に『浅倉良景』という人間として再び生まれ変わった。

 

 

「ふふふふふ・・・。ああ、どんな愉しい事や面白い事が待ち受けているんだろうか・・・!きっとこれは信長との戦いよりも愉しい事になるかもしれないぞ・・・!!」

 

『朝倉義景』として戦い抜いた信長との戦いの日々を思い返すと同時にこれから来るであろう高海千歌のスクールアイドル活動を『浅倉良景』として見守る日々がどのようなものになるのか期待に胸を膨らませ、良景は沈む夕陽を背に内浦に向かう船に揺られていた。

 

 

 

 

 

 

これは浦の星女学院に通う9人の少女たちと、彼女たちが住まう内浦に偶然か必然か投錨された三本の矢と、身を焦がすほどの享楽を求める少年が輝きを求めて走りだす物語・・・。

 

 

その、前日譚である。




いかがでしたでしょうか?


今回出てきたのは『若虎と女神たちの物語』でも前作の主人公である志郎と幸雄の若虎コンビを翻弄した底の読めない少年、浅倉良景でした!!

広樹や輝久、そして前作の主人公たちとは明らかに一線を画す異常性を持つ良景・・・。果たして彼は何を為すのだろうか・・・?

ぶっちゃけると今回の話を書いてる時に某果南ちゃんとのイチャラブ小説も読んでたんですが、実に果南ちゃんに申し訳ない事をしてる気分になりました・・・。果南ちゃん推しの皆様ごめんなさい!!


さて、いよいよ3つ目にして最後のプロローグを書き終えたことで、次回からはいよいよ本編が始まります!!


感想があればドシドシ書いてくださると幸いです!!



それでは次回もまたお楽しみください!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。