デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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今回は無慈悲なキャラ改変の犠牲者その2、爆豪勝己の話になります。




爆豪勝己:Re:オリジン

 ついに直接対決することになった俺とデク、ガキの頃からの因縁にケリをつけてやるぜ!勝つのは俺だぁ!さあ爆破の時間だぜぇぇ!!

 

 

 

 ――― 爆豪 side in ―――

 

 ガキの頃から俺はなにをやっても他人より出来た、これは自惚れじゃなく客観的事実ってやつだ。ガキ特有の万能感と周りの大人たちからの賞賛、ちっぽけなガキだった俺が付け上がるには充分過ぎた。

 

 それは急に終わっちまった、最強だったはずの俺はあっさりとその王者の座から引き摺り下ろされた。たったひとりの帰還によって…

 

 

「おいデク!おまえこせいのちょーせーにミスって大ケガしたんだってな!だっせぇ!!」

 緑谷出久、なにをやってもダメダメな俺の中でいっちゃんすごくないやつだ。退院して園に戻ってきたそいつを、すぐさま俺はからかった。

 

 嫌がるかと思った、悔しがるかと思った、泣き出すかと思っていた、だってデクはデクなんだから。

 しかし返ってきたのは予想外の言葉だった。

 

「あはは、その通りなんだよ。個性が暴発しちゃって六ヶ月も入院しちゃったよ、いやー恥ずかしい!あっ…かっちゃんも個性の調整には気を付けた方がいいよ、ホントに痛いからこれ」

 デクは泣くどころか、大人みたいに愛想笑いを浮かべておどける、あまつさえ俺の心配をしてきやがった。

 

 ―――気に入らねぇな…気に入らねぇ!! デクの癖に!なんにもできない癖に!!

 

 俺は怒りに任せてデクに殴りかかっていた、ぜってー泣かしてやる!それしか考えていなかった。

 

 ―――殴りかかっていたはずの俺は気がつくと地面に転がっていた。

 

「かっちゃんごめん!大丈夫?…でもなんで急に殴りかかってきたの?」

 デクが心配そうな顔でこっちを見ながら手を差し伸べてくる。

 

 今思えば、あのとき俺は手首を掴まれ、殴りかかる勢いを利用されて投げられたんだろうな。

 

 ―――クソがっ!デクの癖に!許さねぇ!!

 

 それは俺の初めてのデクへの敗北だった。

 

 それ以来俺はことあるごとにデクに勝負を挑んでいった。だがすべてにおいてアイツは俺の上をいってやがった。

 

 かけっこ、かくれんぼ、鬼ごっこ、水切り、早食い大食い、背比べ……子供の争いじゃ勝てなかった。

 国語算数理科社会……勉強でも勝てない、勿論体育もだ。

 サッカー、野球、バスケ、卓球、テニス、クリケット、カバディ……スポーツでも勝てない。

 

 唯一勝てたのはトランプの"スピード"くらいだろう。反射神経 は俺の方が高い、先にカードに手を伸ばせる。でもあいつが本気を出せばあとから動いてもカードをとれるだろう、だがそれをあいつはしない。手と手がぶつかって俺が怪我をしないように手を出さない。つまり()()()()()()()()()ようなもんだ…くそがっ!!

 

 勝ちたくても勝てない相手がいる、いつしか俺はその事実から目を背けるようになっていた…

 

 自尊心を満たすためまわりと自分を比べる、ほらやっぱり大したことねぇやつばっかりだ。

 

 ―――どいつもこいつも大したことねぇ!俺はやっぱりすげぇんだ!ってことはそれについてこられるデクもすげぇんだな。

 

 ―――そうか、そういうことだったんだなぁ…周りのやつらはみんな雑魚の端役(モブ)だ!特別なのは俺とデクだけなんだ!俺らだけが主要人物(メインキャラ)なんだよ!!

 

 どうやらデクはヒーローに成りたいらしい、じゃあ俺もなる、俺とデクなら楽勝だ。なんだって倒せるしどこまでもいける、きっとオールマイトを越えてトップにだって立てる!

 

 俺はいつのまにかデクに勝てない事実を忘れて、自分とデクを同列に置いていた。自分の知る最強と並び立って歩けているという心地のいい幻想、そうして何年もの時が経って、その幻想はデクに対する歪んだ信頼になっていた。

 

 

 

 

 

 ―――でも、高校に入学して俺らの関係は変わった。

 

 個性把握テストで見せたデクの圧倒的で規格外の力、まるで違う世界の住人だった…

 

 ―――並び立てねぇ!追い付けねぇ!!……勝てねぇ…

 

 忘れていた現実が還ってくる、勝手に積み上げていたデクへの幻想がボロボロと壊されていく、そこでようやく俺はデクに勝てなかったことを思い出した。

 

 ―――俺は特別じゃなかったのか……いやそんなわけがねぇ!俺は特別なんだよ!ほかのモブどもなんかといっしょくたになんてされていいはずがねぇんだ!!

 ああ、そうだ…証明しなきゃならねぇよなぁ…俺が特別だっていうことをよお!!

 

 そして戦闘訓練というデクに勝負を仕掛ける最高の機会が訪れた。

 

 ―――ほんっと最高だぜぇ!この戦いで俺はデクに勝って、爆豪勝己(特別な俺)原点(オリジン)を取り戻してやる!!

 

 

 

 そうして俺らの殺し合い(たたかい)が始まった。

 

「ぶっ殺してやる!!いくぞおぉ!!!」

「絶対に!君には負けない!!!」

 お互いに叫びながら一気に距離を詰める。

 

 ぶっ殺すくらい本気でいかねぇとデクには絶対に敵わねえ!俺はお前に勝つんだよ!―――

 

「デクゥゥウッッ!!」

「かっちゃぁぁぁんっっ!!!」

 雄叫びを上げて互いの武器を構える、初撃は外さねえ!これで先手をとる!目眩ましがわりの顔面への一撃!!

 

「おらよぉ!!」BOOM!!

 俺の爆破がデクの首から上を覆い尽くす、しかしデクの拳は止まらずに俺の顔へと向かってくる。俺は爆破の勢いにのって回転し、拳を(かわ)しながらデクの横へ滑り込む。

 

「がら空きだぜぇ!!くらいな!!」BOOOOM!!!

 すり抜け様に、拳を放ってがら空きになった脇へと爆破を叩き込む、そして爆風にのりそのまま3mほど距離をとる。デクはまだ体勢を崩したままだ!

 

「息つく暇は与えねぇ!オラオラオラ!!」BOOM!BOOM!BOOM!!!

 遠距離から連続で爆破を浴びせまくる、次第に爆炎でデクの姿が見えなくなる。だが手は緩めない、このまま封殺する!

 

 ―――そう思った瞬間、爆炎が弾けて暴風が吹き荒れる、吹き飛ばされないために、両手で爆破を使い暴風を相殺して、体を支える。

 

「おいおい、デコピン一発でこれとか冗談だろぉ…!?」

 爆炎の弾幕を裂いたのはデクの砲撃(デコピン)のようだ、そして既に二発目の発射準備に入っていた。

 

 あれをこの狭いところで連発されればこっちがじり貧になる!それに拳でやられたらまず躱せない、それだけはさせない!!

 

「させるかよぉ!!オォォァ゛!!」BOOM!BOOM!BOOM!

 俺は爆破を使って縦へ横へと飛び回りながら接近していく。デクは俺に狙いを定められていない、そして砲撃が放たれた。俺はそれの上を飛んで回避する、よしうまくいった!!

 

「外れだぜ!くそがっ!!」BOOOOM!!!

 デクの頭上から両手で爆破を放つ、そしてそのまま接近戦へ持ち込んだ。

 

「オラオラァ!!死にやがれよぉ !!」BOOM!BOM! BOOM! BOOM!

 爆破、そしてその勢いで裏拳、踵落とし、廻し蹴り。爆発と格闘の旋風、嵐のように攻撃を続ける。しかしデクはそれを振り払うように拳を振り回す。

 

「当たらねぇよぉ!!反応速度ならこっちの方が上だぁ!!」

 闇雲に振り回した拳など当たりはしない、それを回避しそのまま攻撃を続ける。

 

 暫く俺の攻勢、縦横無尽にデクの回りを飛び跳ねながら攻撃を放ち続ける、デクも体を少し動かすなどして攻撃の軸をずらしていたがそれでもダメージはかなり溜まっているだろう。そしてついにデクが片膝をついた、俺は両手で爆破をくらわせ、そのまま距離をとる。

 

「ッ…ハァハァ…マジかよ…ハァハァ…おい…」

 俺は両手を膝につけて息を整えながらデクを見据える。デクはゆっくりと立ち上がり、首をコキコキと鳴らしながらこちらへと振り向く。

 

「なかなかやるじゃないか、かっちゃん…かなり効いたよ」

 そう言いながら手足の調子を確かめるデク。俺からはあまり効いてる様には見えねぇぞ、くそがっ!!

 

「じゃあ今度はこっちの番…だなっ!―――」

 デクが大きく一歩踏み込んで俺に殴りかかる、俺はそれをギリギリのところで避けた。

 

「――っーッ!?」

 俺の後ろの壁が粉々に砕け散る。あんなもん食らったら一発でお陀仏じゃねぇか!一撃ももらえない!

 

 それからもデクのラッシュは止まらない、俺は爆破で加速と目眩ましをしながらそれを避け続ける。

 

 普通の爆破やそれを使った格闘じゃ決定打にならねぇ!しかもただの打撃じゃ足止めにもならねえしな!!大技で決めるほかねぇ!!いまは隙を作るためにも逃げるしかねぇな!!!―――

 

 そうして俺はビルの中を逃げ回り、ついに広い会議室のような部屋の窓際の柱を背に追い詰められた。

 

「流石の反応速度だね、かっちゃん。こっちの攻撃が一度も当たらなかったよ…」

 そう言いながら少し離れたらところから威圧感を放ち、ゆっくりと歩いてくるデク。ここで決めるしかねぇ!俺はタイミングを見計らう。

 

「鬼ごっこはっ―――終わりだっ!」

 デクが今までより格段速く距離を詰めて殴りかかる、俺はギリギリのところでそれを躱す。デクの腕が柱へと突き刺さる。馬鹿げたパワーだ、しかし腕を柱から引く抜くため一瞬の隙が出来た!今だ!!!

 

「ああ!!これで終わりだぜッ!!!」

 篭手の中に貯めておいた(ニトロ)を開放し、俺の持ちうる最大級の攻撃をデクに向かって至近距離で発射する。超特大の爆破がデクだけでなくあたりを飲み込み、ビルの側面を吹き飛ばした。そして黒煙と土煙が辺りに立ちこめる。

 

「“これは訓練だぞ!!爆豪少年!相手を殺す気か!!!”」

 無線からオールマイトの声が響く、無論殺すつもりなどはない。というかデクなら重症ではあるが死にはしないだろう。

 

 

 

 ―――バサッっという大きな音とともに煙が一気に晴れる。そこには埃と煤にまみれながらも無傷なデクの姿があった。

 

「ば…バケモンかよ…」

「悪いけど…まだ人間だよっ!!」

 そう言いながらデクが近づいてくる、動揺していた俺は一瞬反応が遅れ、咄嗟にデクの顔面に殴りかかっていた。

 

「しまっ―――」

 俺の拳はデクの顔面に突き刺さるも、デクはそれを意にも介さない。そのままその腕を掴まれ、振り上げられて背中から地面に叩きつけられた。

 

「…ガハッ―――」

 叩きつけられた衝撃で肺の中の空気が一気に吐き出される。俺は朦朧としながらデクを吹き飛ばそうとまだ自由な掌を向けて爆破を使った。

 

 ―――爆破は起こらなかった、その瞬間俺の手に激痛が走る。個性の暴発!?そう思って手を確認する、そこには真紅の布で包まれた俺の手、気が付かないうちに掌を封じられていた。

 

「くそがぁぁぁぁ!!!!」

 俺は起き上がりつつ宙返りをしながらデクに蹴りを叩き込む。しかしそれはデクの腕に阻まれた。

 

「もうテープも巻いたんだけど、まあ君は止まらないよね!―――ごめん!!」

 デクはそういうと、宙に浮いているため無防備な俺の鳩尾に拳を捩じ込んだ。一瞬で意識が遠のいていく…

 

 

 

 

 ―――くそがっ!クソがクソがぁぁぁぁああ!!!!

 

 

 ―――また、負けちまった…

 

 

 

 ―――ダメだなぁ俺は、もう……

 

 

 

 そうして俺の意識は途絶えた―――

 

 

 ――― 爆豪 side out ―――

 




というわけでかっちゃん視点での対決でした。デクさんのやべーヤツ感が少しでも伝わったらいいなって思います。

独白って書くの難しいですね…読み辛かったらすみません。


今回も読んでいただきありがとうございました!

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