デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】 作:くろわっさん
オールマイトとデクさんのマッスルフォームとワンフォーオールの関係性についてです。
このSSではマッスルフォームへの変身とワンフォーオール使用にはMPを消費する必要があります。
オールマイトは怪我のためマッスルフォームに成っているだけでMPをどんどん消費してしまい、派手に動けばその分だけMPが早くなくなります。そしてMPが切れるとトゥルーフォームに戻るわけです。さらにMP切れの状態でワンフォーオールを使うとMPの最大値が減っていきます、なので活動時間が短くなっています。
一方デクさんは進化した個性のため、マッスルフォームへの変身はMP消費ゼロになります。そのため限界を超えるくらいワンフォーオールを使わなければMPが切れることはありません。ですのでトゥルーフォームになることは滅多にありません。
原作とは違ってこんな感じの設定でやってきたいと思います!
ちなみにMPとは、察しの良い方ならお気づきでしょうが、マッスルポイントの略です。
僕はマッスルフォームからトゥルーフォームに戻ると、過去のトラウマからパニック障害を起こしてしまった。そのトラウマを克服するために課された試練はサーナイトアイとの決闘だった!これを乗り越えてトラウマを払拭してみせるぞ!
「決闘って僕とナイトアイがですか?」
「無論、ただ戦うだけなら貴様が勝つだろうし、意味はない。今回行うのは個性なし、使うのは素手のみの決闘だ!!」
サーナイトアイがそう説明する。個性なしだと!?それじゃあつまり………
「体格差を考慮すれば私が有利だろう、だがこの決闘は貴様のトラウマを克服するためにある、不利な状況でも相手に立ち向かわなければならないのだ。個性を使わないということはマッスルフォームも禁止だ。そもそも貴様、トゥルーフォームに戻れるのか?怖くて成れませんなどと言うようなら、ここで修行は終わりだ。そんな貴様にオールマイトの後継者など務まらんが……どうなんだ?」
サーナイトアイが立て続けてに煽ってくる、怖くないと言えば嘘になるが、こんなところで躓いていられない!
「やりますよ、ナイトアイ!僕はトゥルーフォームでだって戦ってみせます!」
「なら早くしろ、口で言っても始まらんぞ!」
サーナイトアイが僕を叱咤する、よしやってやるさ!
「いきます―――」
そう言って僕は力を抜き、
煙とあげてトゥルーフォームへと変化していく僕の身体、その瞬間心の底から恐怖が込み上げてくる。身体が震えて、恐怖に叫び出したくなる、僕はそれを堪えて立ち続けた。
「まずは第一関門突破か、ではいくぞ!」
「ッツ!―――ッグハァ!!」
サーナイトアイが踏み込んで僕の顔面に殴りかかる。避けようとしたところで、僕の足は全く動かず、もろに拳を浴びてしまった。
「どうした?守りも避けもしないのか、戦うんじゃなかったのか?」
身体を震わせながら立ち上がろうとする僕にサーナイトアイが皮肉を言う。
「そんなことでは、助けを求める人々を救えないぞっ!!」
サーナイトアイの蹴りが立ち上がれなかった僕の腹に入る、僕の身体はそのまま2~3m転がって止まった。
「立ち上がることすら出来ないのか?そんなことでは平和の象徴の後継者など、夢のまた夢にも届かない!」
サーナイトアイが僕に現実を叩きつける、その通りだろうここで立ち上がらなければなんにもならない!
「っおおぉぉぉお!!」
僕は震える身体を無理やりに立ち上がらせる、沸き上がり続ける恐怖と絶望に抗いながら…消えそうな心の炎を守りながら…
「ようやく立ち上がったか、ならば戦ってみせろっ!貴様が成りたいのは只の
「ぅぐっ!――ぐはっ!」
サーナイトアイがそう叫びながらワンツーのリズムでパンチを繰り出す。僕はそれを右と左の頬で受けることしか出来なかった。
「そんなヒーローなど、誰も求めてはいないっ――ぞっ!!」
「!?――――ッゴハァ!!」
サーナイトアイの姿が視界から消え、次の瞬間僕の鳩尾に拳が捩じ込まれ激痛が走り、口から血反吐を吐いた。
40cm近い身長差をものともしない、しゃがみこみからのアッパー軌道のボディブロー。僕の身体はそのまま宙に浮き、重力に引き込まれて地面へと沈む。
まともに入ってしまった、内臓系に立ち上がれなくなるのに十分なダメージが加わった。痛みと恐怖で思考が深い深い絶望に呑まれていく……心の信念の炎が消えていく……
―――やっぱりこんな身体じゃ、前世の僕じゃ、戦えない……オールマイトを―――
「どうした緑谷出久!貴様はオールマイトを救けるんじゃなかったのか!?そのためにここにいるのではなかったのか!?」
サーナイトアイが倒れ伏せた僕へと言葉を投げかける、僕の心に僅かなに揺らぎが生じた。
「
サーナイトアイの言葉が段々と変わってくる、またも心が揺れていく…
「貴様こそがオールマイトの後継者で、彼の救世主に成り得ると、そう思っていたのに!!そうして沈んでいってしまうのか!?」
サーナイトアイの声が少しずつ震えていく、反対に僕の身体の震えは少しずつ収まっていく。
「貴様も私と同じ様に諦めてしまうのか!?運命に敗けを認め、オールマイトを失うことを……認めてしまうのか…?」
サーナイトアイの叫びは悲痛なものへと変わっていた、何かにすがるように、助けを求めるように……
僕の身体に熱が籠っていく、力が少しずつ湧いてくる、絶望と恐怖の中に微かな炎が燃え始める。
―――彼を助けねば、求められているのだから、ヒーローにならねば!!
「僕は……!諦めない!!運命にだって抗い続ける!」
そう言って僕は再び立ち上がった。まだまだこれからだ!!
「そんな姿の貴様に……!貴様になにができると言うんだ!!」
サーナイトアイが矮小な僕を罵倒する。なにができるか……だと?
そう思った時だった、心の奥から恐怖と絶望以外の記憶が甦ってくる。
『あの場の誰でもない、小心者で無個性の君だったから!』
「出来ますよ!―――こんな姿でも!だって言ってもらったんだ!!―――」
僕はサーナイトアイに叫ぶ、震えを超えて、恐怖を塗りつぶして。
『私は動かされた!!――――君もそうだったんだろう!?』
「僕は……!僕は!!――――」
暖かな記憶が鮮明に甦ってくる、絶望を振り払うように。
『君はヒーローになれる』
「―――ヒーローになれるって!言ってもらったんだ!!」
僕は叫ぶ、心の奥底深くに絶望と共に沈み込めていた、僕の
身体の震えも無くなり、絶望に沈んだ心は熱く激しく燃え盛りその闇を祓う。
「言って貰った!?有象無象の一人にかっ!?」
サーナイトアイは僕の言葉に反応しながら、拳を振るってきた。でももう僕の身体は動く、その拳もよく見える!
「最高の、ヒーローにです!!」
僕はサーナイトアイの拳を受け止める。そしてそのまま手首と腕を掴み―――
「うおりゃああぁ!!」
雄叫びと共に投げ飛ばした。
「救けるって決めたんだ!オールマイトを―――」
倒れたサーナイトアイにそのまま叫び続ける。
『――
「何度だって!どんなに姿に成っても!救けるんだ!!」
僕はもう立ち止まらない、心の奥深く、芯から燃え上がる炎はもう消えない。
「だからあんたも立ち上がれよ!一緒に救けるって決めたんだろ?だったら一度くらい倒れた程度で諦めるんじゃない!運命に抗うんだろ?未来を変えるんだろ?立てよナイトアイ!!」
僕は倒れたまま動かないサーナイトアイに心から溢れる言葉を放つ、口調も乱れて荒っぽくなっていく。
しかしその言葉にサーナイトアイの目が見開く―――
「―――救いたいに決まっているだろう!さっきまで震えていたヤツが偉そうに!!」
サーナイトアイが叫びながら立ち上がる、そして再び拳を振り抜いてくる。
「そりゃすいませんっ!―――でもオールマイトを救けるのは僕だ!!」
僕はそう言ってサーナイトアイの拳に合わせて拳を振り抜く、拳と拳がぶつかり合って弾かれる。
「私の方がオールマイトを救けたいに決まっている! 」
サーナイトアイの右ストレートが僕の頬に刺さる。
「僕の方がオールマイトを救けたいって思ってる!!」
僕はサーナイトアイに右側から抉り込むようなボディブローを
くらわせる。
互いに体勢を整えるため一瞬の静寂が訪れる…そして―――
「私だ!」「僕だ!!」
互いの拳が交差してクロスカウンターが決まる。そしてそのまま泥仕合が始まった。
殴り殴られ、蹴り蹴られ、投げられては立ち上がり投げ返す。暫くの乱闘が続き、お互いにボロボロになっていった。
「勝つのは―――僕だ!! 」
勝ちたいという執念が僕を包み込む、そこからは無意識だった――
―――5%フルカウル、僕の小さな身体に猛烈な勢いの力が駆け巡る。
「デトロイトォォオ!!!スマ――――」
「そこまでだ!」
必殺の拳を放とうとした瞬間割って入った人影によって僕の腕が掴まれる。
「「オールマイト!?」」
僕とサーナイトアイが揃って驚きの声をあげる。
「やっぱり様子が気になってね、こっそり見てたんだ。途中から恥ずかしくて目を逸らしそうになったけどね!」
オールマイトが照れ臭そうに語る、見られていたのか…恥ずかしいのはこっちだよ!
「さて、ナイトアイ。もういいんじゃないかな?」
「そうですね、もう終わりにしましょう。勝負も着きましたし」
オールマイトとサーナイトアイが頷きあっている。ようやくこの決闘も終わりか、短いようで長かったな…
「緑谷出久、貴様の敗けだ!」
「えっ!?どうして!?」
「いや、どうしてって貴様……最後に個性を使っただろう?よって貴様の反則敗けだ」
「あ……」
サーナイトアイの説明に気の抜けた返事をしてしまう。僕の負け……それはつまり―――
「……修行もここまで、ということですね……オールマイト、すみません。僕は貴方の後継者には―――」
「まてまてまて!!なんでそうなる緑谷少年!見事にトラウマを克服したんだからこの決闘は成功だ!勿論修行も継続に決まっているだろう!」
「緑谷出久……貴様は本当に人の話を聞いてないな…!誰が負けたら終わりなどと言ったんだ?」
オールマイトは驚き、サーナイトアイは呆れていた。そういえばそんな感じで始まってたな……戦うことに必死すぎて忘れていた!
「よかったぁ~」
僕は安堵の声をあげる、いやホントにダメだと思ってたよ。
「うむ、本当に良かったよ!緑谷少年とナイトアイもよく頑張ってくれた!これからも三人で頑張っていこう!HAHAHA!!」
オールマイトが僕とサーナイトアイの肩を抱いて豪快に笑う。僕らもそれにつられて笑っていた。まさに大団円って感じだ!
こうして僕はサーナイトアイとの決闘をへて、トラウマを乗り越え次の一歩を踏み出した。
――――それから数ヶ月後、僕はスランプに陥っていた。
あれから毎日オールマイトとサーナイトアイの考案したトレーニングを続けていき、筋肉の量は倍増した。体重もそろそろ百キロの大台に乗りかかり、間違いなく身体は強靭になっていったのだが……
「伸びないねぇワンフォーオールの身体許容上限」
「伸びませんね、肉体的には70%くらいになっててもおかしくないのですが……」
「なぜだか、55%辺りからすっかり伸びなくなってしまいました……すいません」
僕とオールマイトとサーナイトアイ、三人で話し合いを行っていた。
「緑谷少年だけが悪いのではない、指導をしている我々の責任でもある!申し訳ない!」
「そんな、オールマイトが謝らないでください!」
「いえ、私の方針が悪かったのかも知れません。すみません、オールマイト!すまない、緑谷出久!」
僕たちは各々が悪いと謝りあう、この状況はホントに良くない…!なにか打破しないと!!――そう思っていたときだった。
「よし、やろうかどうか悩んでいたが、あの特訓をやろう!」
「あの特訓?なにをする気なんですか、オールマイト?」
オールマイトが特訓を提案をしてきた、僕は決心した顔のオールマイトに尋ねる。
「そろそろ緑谷少年は夏休みに入るだろう?そこで長期的な特訓を行おうと思っていたんだ、ただ……」
「ただ……?」
「ただその特訓てのは危険でね、もしかしたら君は死んでしまうかも知れない…!」
「それほどに危険な特訓なんですね……」
オールマイトから語られる死という言葉、それは僕にとって特別な意味を持つ言葉だった……なぜなら僕は自分とオールマイトの死を知っているのだから。それでも―――
「それでも僕はやりますよ、僕が成りたいのは最高のヒーローで、貴方の後継者なんだから!!――それにヒーローはいつだって命懸け!死ぬのが怖くて務まりませんよ!そうでしょう?」
僕はオールマイトに大声で自分の覚悟を伝える。
「そうか……そうだったな!よし、君の覚悟はわかった!!ならば夏休み開始から三日後に再び会おう、それまでにこちらも準備を済ませておく、緑谷少年も夏休みの宿題を終わらせておくんだ、学業は疎かには出来ないからね!……それと遺書の用意も―――」
「だから死ぬ気なんてありませんから!!…あと宿題は速攻で終わらせます…!」
僕は死を仄めかすオールマイトを否定する、オールマイトを救けて健康な老後を過ごしてもらうまでは僕も死ねない!!
話が纏まったところで、その日は解散となった。そして時は過ぎ―――
―――夏休み開始から三日目、宿題をすべて終わらせた僕はオールマイトとの集合場所にいた。
ここは港、個人用の船舶が数多く停泊しているのが特徴的だ。オールマイトはなぜこんなところに集合を?
「おーい、緑谷少年ー!」
そんなことを考えていると遠目でもわかるくらい存在感をひけらかして、オールマイトがやって来た。
「おはようございます、オールマイト!」
「緑谷少年、おはようさん!じゃあ早速だけどこの船に乗り込んで出発だ!」
挨拶を済ます僕とオールマイト、オールマイトはそそくさと船に乗り込み僕を招く。あ、このオールマイト、話を聞いてくれないときのオールマイトだ!
そうして、僕らを乗せた小型クルーザーは港から出航して沖へと出た。
「それで、わざわざ海にまで出て来て、今回はどんな特訓を行うんです?」
僕は船長気分でヨーソローなんて言ってるオールマイトへ質問する。
「ああ、今回の特訓か。それなんだが―――」
オールマイトが笑顔ながら真剣な表情をする。なにをするんだ?
「君にはこれから1ヶ月間、一人で無人島生活を送ってもらう!!」
オールマイトはキメ顔でそう言った。えっ?無人島で1ヶ月間?マジ?
「…えっ?えーーーーー!!!!―――――」
――――
オリジナル展開の修行編もそろそろ山場を迎えようとしてます、もう少しだけお付きあい願います!
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