デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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生き残れ!1ヶ月無人島生活!! [前編]

サーナイトアイとの決闘をへて、トラウマを克服した僕だったが、今度はスランプに陥り、ワンフォーオールを使いこなせないでいた。そこでオールマイトが提案した特訓は、1ヶ月の無人島生活だった!

 

 

 

「無人島で1ヶ月間生活ってどういうことですか?オールマイト!?」

小型クルーザーとはとても思えない速度で航行している船に揺られながら、僕はオールマイトに詰め寄る。

 

「HAHAHA!!今の君に足りないのは何かと考えてみたのさ。限界も知った、トラウマも克服した、身体も強くなった、かなり順調と言えるだろう!

しかぁし!今の君には余裕が有りすぎると思ったのさ!あって悪いものでもないが、有りすぎるとそれは毒になる。つまりこの特訓は再び君を追い込むための特訓なのさ!!」

オールマイトが口早に説明していく、確かに僕は順調過ぎたのかもしれない……

 

「その甘えがワンフォーオールの身体許容上限の伸びを止めてしまっている、ということですね?」

「うむ、私はそう考えている。なので今回は生と死の瀬戸際で生き抜いてもらうのさ!」

 

ふむ、そういうことなら納得だ、強くなるための新たな試練!乗り越えてみせる!!

 

「そうだ!これだけは説明しておかないとね、これから君が過ごす島には沢山の野生動物がいる、それらは自然の摂理に乗っ取って生きているんだ。君にはこれからそれに加わってもらうって訳ね」

「なるほど、僕に人間社会の(しがらみ)から飛びでて野生に帰ってみろというわけですね、わかりやすい!でもそんな島よく見つけましたね」

僕はオールマイトの説明に納得し、その島について尋ねる。

 

「その島は私の友人の管理している島でね、彼いわく「あの島はもう独立した食物連鎖が成り立ってるからね、人間ひとり加わったところで何の問題もないよ!好きに使ってよ!」とのことだ。つまり現地の動物を食べる分には問題ないってことさ!」

「豪快な友人ですね、一体どんな人なんです?」

僕はオールマイトの友人に興味が出てきた。

 

「ネズミに良く似た人だよ、いや人に良く似たネズミなのか…?まあそんなところだ!」

「あー……あの校長先生でしたか…」

僕の脳裏にひとりの人?が浮かぶ、あの人は無人島の管理までやってたのか、ホントにハイスペックだな。

 

「そういえば前世で雄英に通ってたんだよね、じゃあ根津校長のことは知ってるわけだ、なら話は早いね!あの人はいろいろハイスペックだから、まあ細かいことは気にせずやってくれればいいよ!」

「わかりました!自由にやってきたいと思います!」

「うむ、生き延びることが最重要課題だよ!―――っともう島が見えてきたね!」

遠くに小山のある島が見えてきた、あれが今回の特訓の舞台…!

 

「じゃあ最後にこれ渡しておくね、はい」

「うおっと、なんですかこのリュック?また砂糖と塩ですか?」

「いいや、今回は違うよ。入ってるのは3日分の食料と非常用信号装置さ!」

オールマイトが元気良く説明する。信号装置はまだ分かるとしても、食料をくれるのか?サバイバルだと思っていたのに結構優しいな。

 

「非常用信号装置はその名の通りさ、作動させるとGPSを通じて救難信号が発信される。本当に死にそうな時に使ってくれ、私も君を死なせたい訳ではないから、すぐ助けにいこう!」

「それはわかりました、なるべく使うような事態にならないよう気を付けます。ですが、食料とは?その辺も現地調達だと思っていたのですけど……」

「ああ、最初の3日くらいはチュートリアルみたいなもんさ!あの島の動物たちは一筋縄ではいかない、食料調達は困難を極めるだろう。まあ行けば直ぐに分かるだろうけど普通じゃないからね!!」

オールマイトが僕を脅すように説明する。確かに僕はサバイバルなんてしたことないけど、今の僕にはワンフォーオールがある、野生動物程度に手こずりはしないと思うんだけど……なにが普通じゃないんだろう?

 

「あの、オールマイト、普通じゃないってなにが―――」

「さあ!島につくぞ!!私は訳あって島には近寄れないからね!下船だ、心の準備はいいかね?」

「えっ心の準備ってなんですか?って、あああぁぁぁ――――――」

僕の質問を無視して話を進め、そうしてオールマイトは僕の背中のリュックを掴んで島の方へとぶん投げた。

投げられた僕はそのまま500m程ぶっ飛び、島の浜辺へと向かう。

 

なんでだ!?説明無さすぎだろオールマイトォ!!てか地面近い近い!着地をちゃんとしなきゃこれでアウトだ!

 

「50%フルカウルゥウウウ!!――っとおお!!」

僕はワンフォーオールを全身に巡らせ、そのまま浜辺へと着地した。その衝撃で砂浜が激しく吹き飛ぶ。

 

「あっぶなぁ!これ岩場だったら死んでた!!」

その辺ちゃんと狙って投げたのだろうか、オールマイト?ねぇ?

 

―――これが僕の長い1ヶ月間の無人島生活の始まりだった。

 

 

 

浜辺に着き、早速辺りを見回す。砂浜から少し離れると直ぐに緑が生い茂っているのがわかる。全体的に森が多い島なのだろう。なにか他にないかと見ていると、目の前に白い小さな影が飛び出してきた!

 

「コケッコー!」

「鶏…?」

なんで無人島に鶏が?ていうか野生の鶏ってなんだ!?あれほとんどが養殖される動物だろ!?

 

「まあなんでもいいか……早速食料第1号確保だ、悪いけど食べさせて貰うよ!」

「コケッ!?コケッコー!」

鳴き声を上げながら逃げだす鶏、僕はその鶏を追いかけ始めた、これくらい個性を使わずとも楽勝だろう。

 

―――そう思い始めた時だった、逃げていた鶏が急に振り返り、鋭い眼光でこちらを睨んできた。そして嘴を大きく開ける。

 

「コケコッコー!!――――」

大きな鳴き声と同時に火炎を吐き出す。その直径は裕に1mは超えていた。

 

「うわっあちち!!」

僕は咄嗟に砂浜に滑り込みそれを躱した。なんで鶏が火を吹くんだよ!!あやうく焼かれるところだった…!

 

「コケッーー!!」

「うわあああぁぁぁぁ!!」

鶏は火を吹きながら僕を追ってくる!僕は慌てて逃げ出す、殺る気満々じゃないか、草食動物!!

 

森の中まで走ると鶏は追ってこなくなっていた。なんとか逃げれたらしい……なぜ追って来ないかはわからないが…

 

「なんなんだよ、あの鶏!焼鳥にされ過ぎて人類に逆襲したくなったのか!?」

動揺しすぎて訳のわからないことを言い出す僕。しかしこの島には人間は僕ひとりしかいない、虚しい独り言が空を切る……

 

「――!?」

目の前の茂みがガサリと音を立てて揺れる、何かがいる…!

 

「ブルル、フゴッ!」

そこに現れたのは体長1.5m程の大きな猪。前足で地面をかきながら鼻をならして、牙を見せつけこちらを睨んでいた。

 

完全に敵視されている…!よ、よし、今度は油断せずいくぞ!

 

―――50%フルカウル、ワンフォーオールで身体能力を倍増させて猪と対峙する。

 

「フゴッーーーー!!!」

猪が突進してくる、かなりのスピードだがその軌道は直線的だ。

 

よし、ギリギリで横に避けてそのまま背後をとる!せーの!――

 

「――ここぉ!」

僕は猪を引き付けてから横へと跳ねる。よし!避けられ――――

 

「――グヘァッ!!!」

腹に衝撃が走る、なにが起きたのか分からずそのまま吹っ飛ばされた。

 

バカな!完全に避けたはず…!それなのになんで攻撃を受けた!?まさか二匹いたのか!?

 

「フスー!フスッ―――」

「えっ!?消え!?――」

目の前で威嚇を続ける猪を見ていると、その姿が一瞬にして消えた。

 

「―――グハッ!」

気がつけば後ろから突進をくらって再び吹き飛ばされていた、これはまさか……!!

 

「フゴッ!フゴッ!」

猪が鼻をならしながら、右へ左へ高速で移動している、サイドステップをしているわけではない―――

 

この猪!瞬間移動してるぅーーーー?!!!真っ直ぐしか突進できない猪がそれって、反則だろそんなの!

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉ――――――」

「フゴッーーーー!!―――――」

僕は絶叫しながらまたも走って逃げだした、野生の脅威をその身に刻みながら……

 

 

 

――――そのまま暫く猪に追いかけられ、森の奥へとたどり着いた。全力で逃げていたためか、なんとか振り切れたようだ。

 

「この島の動物たちの普通じゃないところって……間違いない、あれは――“個性”だ!」

個性を持った野生動物の楽園、それがこの島の真実だった。

 

この島で1ヶ月間サバイバル生活か、きついってレベルじゃないな……オールマイトの修行で最大の試練かも…!

 

「でもまだ肉食動物がいないだけ、マシってもんだな。この島で出逢ったらマジでヤバイな―――」

「グオオオーーーー!!!」

「―――ああ??」

独り言を言っていると後ろから低い雄叫びが聞こえる、振り向いてみるとそこには体長3mくらいありそうな熊がいた。僕は間抜けな声をだす。

 

出逢っちゃったよ!肉食動物!!どうせこいつも個性持ちなんだろ?世の中の無個性に申し訳ないとか思わないのか!主に前世の僕とかさ!!

 

熊がこちらを見ながら爪を立てて前足を振り上げていた、なにかヤバイと感じた僕は後ろへ跳んだ。

 

「グオオオゥ!!」

熊が前足を振り下ろすと、一瞬風が吹いたあと、さっきまで僕がいた場所が大きい爪痕のような形に深く陥没していた。

 

遠距離攻撃の出来る個性持ちの熊!!?ヤバすぎる、危険なんてもんじゃない!!もっと危ないなにかだ!!

 

「グオ!グオ!グオォォオ!!!」

熊は手を休めずに攻撃し続けてくる、僕はそれをなんとか躱し続けるも周りの木々や地面がズタズタに引き裂かれていく。反撃に出なければなぶり殺される!!

 

「こんのおお!!55%ォ!アラスカ・スマァァッシュ!!」

熊の攻撃を掻い潜り、僕の持ちうる全力のパンチを熊に叩き込む―――

 

 

―――しかしそのパンチは熊に届く前に透明な壁のようなものに阻まれた。バカな!?遠距離攻撃の個性じゃないのか?

 

そしてそのまま壁のようなものに吹き飛ばされ、木を何本もへし折りながらぶっ飛び、大きな木の幹にぶつかった。

 

「……ゴホッ…なんだよあれ……強すぎだろ!」

僕は木にもたれかかりながら悪態をつく。

 

遠距離攻撃が出来て、近接ガードと攻撃が出来る個性を持ってて、尚且つ自然界で上位に位置するフィジカルを持った野生の熊とかもうどうしていいかわからない……まさか全力の一撃が防がれるなんて…!

間違いなくこの島で出逢った中でも最強の動物だろう、むしろあれに勝てる人間を探すのも難しいかもしれない…!

 

「ゴアアァァ!!」

少し離れたところでさっきの熊の遠吠えが聞こえる、こちらを探してるかもしれない!考えるのはあとにして今はここを離れよう……

 

 

 

 

―――1時間程歩き回って、熊から無事逃れた僕は、小川の畔で一休みしながらオールマイトから貰った携帯食料に口をつけていた。

 

「なんにせよ、あの動物たちをどうにかして捕まえて食べないと、食料が尽きて生活どころではなくなるなぁ……勝てそうな奴から頑張って捕まえるしかないか!」

僕は独り言を言いながらパサパサとした食料にかじりつく。

 

「キュー!」

近くの草むらから一匹の兎が飛び出してくる。なんとなくその兎を観察してみる。体毛は野うさぎにしてはめずらしい白色、片耳は欠けていて、左目には大きな切り裂かれたような古傷がある、また身体にもいくつかの傷痕か見当たる。

 

「お前も僕と同じで生存競争に負けそうになって、命からがら逃げ出してきたんだな……」

なぜだか僕は自分とその兎を重ねて同情してしまう。過酷だよねこの島での生活は……

 

そんな気まぐれから僕は持っていた携帯食料をその兎の方へと投げる。

 

「キューー!!キッ!」

白兎は少し警戒したものの、匂いを嗅いだ後に携帯食料に口をつけ始め、ガジガジと食べていく。

 

はあ、これくらいの癒しがないと心が(すさ)みそうだ…!確実に無駄な消費ってのは分かってるんだけどねぇ。

 

「キュッキュ~!」

白兎は携帯食料を食べ終えると僕を一瞥して去っていった。もう行ってしまったのか、やっぱり野生の動物ってのは淡白だな…!

 

「僕もいつまでも落ち込んでいられないな!さて辺りの探索と食料の確保だ!!」

そうして僕はサバイバル生活を生き残るための行動を始めたのだった―――

 

 

 

 

 

 

 

―――三日後、僕は窮地に陥っていた、食料が見事に底をついたのである。

 

この三日間の成果と言えば、飲み水の流れる川を見つけたことと、寝床になりそうな廃屋を見つけられたことぐらいだ。

食料確保は悉く失敗、食べられそうな野草も分からず、木の実を採ろうとすれば、その実を食料にしている野生動物に追い回される。

草食動物は数が多く、個性を使って滅多打ちにされてしまった。

あの熊にもその後2回ほど遭遇した、まあどちらも一蹴されたのちに追い回されたのだが……

 

そんなこんなで、朝からなにも食べていない…!空腹で段々と判断力も落ちてきた気がする。そんな時だった―――

 

「キュ!」

目の前にあの白兎が現れたのである、あのときはなにも思わなかったが、考えてみれば兎も立派な食料じゃないか!傷付いた同志をいただくのは申し訳ない気もするけど、僕が生きるためだ!

 

「ごめんね、食べさせて貰うよ!うりゃあ!!」

僕は掛け声と共に兎に飛びかかった。しかし兎は捕まらなかった、しなやかかつ素早い動きで僕の懐に飛び込み―――

 

「キュイーーー!!!」

後ろ足で力強く僕の顎を蹴り抜いた。僕はその勢いで縦に3m程ブッ飛ばされて地面に落ちた。

 

こいつ……増強系の個性持ちだったのか……しかも滅茶苦茶強い――――

 

 

――――僕はその一撃で脳震盪を起こして気絶したのだった。




やっぱり野生には勝てなかったよ……

次回、デクさんが野生に牙を剥くぞ!お楽しみに!

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