デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】 作:くろわっさん
なので内容に、性転換要素、それに準ずるあれやこれやが含まれます、苦手な方はお読みにならないよう、お願いします。
【警告】これより先は読んではいけない
この先にはあなたの求める筋肉はありません、それでも読みますか?
そうですか、では―――
ようこそ……「男の世界へ」……
僕はオールフォーワンに殺され、オールマイトもその命を落とした。
気がつくと僕は四歳の頃まで時間を遡っていた、やり直しの人生でオールマイト救ける、僕はそう誓った。そして前世とは違い、驚くべきことにこの身体には
しかし本当の驚きは、僕がその個性を暴発させて、半年の入院生活を終えたあとにやってくるのだった―――
「今日は怪我が治って、病院から出久君が帰ってきました。できないことも多いかもしれないけどみんなで助けてあげてね」
保育園の先生が僕のことを説明して、僕は幼児生活に飛び込むこととなった。
「しってるぜ、デクのやつこせいのちょーせーにしっぱいして大ケガしたんだ!だっせー!」
園児の中の一人がそう叫ぶ、この声と挑発的な態度……これは―――
「こら!かつきちゃん!そういうこといわないの、お友達でしょ?」
先生がかつきという名の園児を叱る。やっぱりかっちゃんじゃないか!ん……?なんだいまの違和感?
「でもほんとのことだろぉ!まったくデクはおれがいないとなんもできねえんだから……しょうがないからおれがめんどーみてやるぜ!」
口は悪いが面倒見のいいことをかっちゃんが言う。でもなんだろうこの違和感は…見た目も性格も昔のかっちゃんだったと思うんだけど……
「まあ、ちょっとお口が悪いけど、とってもいい子ねえかつきちゃんは。面倒を見て上げるだなんて流石は女の子!」
「えっ!?」
先生がかっちゃんを誉めるが聞き捨てならないことを言ったように聞こえた。かっちゃんが―――なんだって!?
「かっちゃんが女の子!?うっそだぁ!」
「こらぁ!出久君!!なんてこと言うの、かつきちゃんはかわいい女の子じゃない!嫌なこと言われたからってそういうこといっちゃだめよ!」
僕は驚きが口から飛び出し、そのせいで先生に怒られてしまった。
かっちゃんが女の子?あのかっちゃんだぞ!?それにいつもの口調にあの性格じゃないか、やっぱりなにかの間違いだ!!
「ついにそんなことまでわかんなくなったのか!やっぱりデクはバカだな!バーカバーカ!!」
かっちゃんが僕を煽ってくるがやや涙目になっている、この程度で泣きそうになるなんて……まさかホントに女の子になってしまったのか……!!
あまりの衝撃の事実に、結局その日は一日中ぼーっとしていた。
―――お昼のときも
「おいデク!右手まだダメダメじゃねえか!おれがたべさせてやるよ!」
「あっうん、ありがとうかっちゃん……」
―――お遊戯の時間も
「デクはダメダメだからおおきくなってもだれともけっこんできねーだろうな!だからおれのおむこさんにしてやるよ!かんしゃするんだな!!」
「あっうん、ありがとうかっちゃん……」
―――帰るときも
「なあデク、おんなのこはかみがながいとかわいいってほんとか?」
「あっうん、そうだねかっちゃん……」
「ふーん、やっぱデクもそーなのか」
妙に優しくて、でもいつも通りなかっちゃん、僕は慣れそうになかった……
―――それからあっという間に幼稚園を卒園して、僕らは小学生になった。ここ数年で変わってしまったかっちゃんにもだいぶ慣れてきたところだ。
わかったことをまとめると、
名前は
話し方や勝ち気な性格は前世と変わらず、まるで男の子みたいな話し方だ。
服装についても前世と同じような男の子みたいな格好をしている。髪が長くなり、よく結わいている姿を見かけるので、一目で女の子ってわかるけど、男装女子ってことでいいのかな。
そして、ことあるごとに僕に構ってきて勝負を仕掛けてきた。その都度僕は全力で打ち負かした、女の子って感じが余りしないのと、前世から続くかっちゃんコンプレックスがそうさせた。
その結果僕への態度がかなーり軟化したように思える、まあ厳しいところはそのままなんだけど……
つまるところ、かっちゃんが僕を駄目な奴じゃないって認めてくれた以外はほとんど前世と同じような感じだ。
「おーいデク、なにぼーっとしてんだよ。置いてくぞー」
「ああ、ごめんかっちゃん、すぐいくよ!」
かっちゃんに呼ばれて、僕は登校班への合流を急ぐ。かっちゃんとは登下校も一緒で、いつも一緒にいる。普通に仲のいい幼なじみって感じだ。
「ホントにデクは勝負事以外ではダメダメだなぁ、なんでこんなやつに勝てねえんだ?」
「はは、手厳しいね、かっちゃん―――」
「優しくしてなんか得するのか―――」
「そう言われると―――」
こうして僕らは小学校時代を過ごした、女の子になってもかっちゃんはかっちゃんだった。きっとこの先もこんな関係が続いていくのだろう、そう思っていた―――
―――しかし中学に上がる頃には僕らの関係は少しづつ変わっていった、男と女がすっぱりと別れる頃に……つまり二次成長期の始まりだ。
僕は日々の鍛練の成果と個性の調整がうまくいったことからどんどんと逞しく成っていった、それはオールマイトみたいになれてるようで喜ばしかった。しかしそれと同時にかっちゃんとの距離もどんどんと開いていった。
かっちゃんは手足も伸びて、出るとこも出ている女の子らしい体つきになっていき、顔立ちも美人になっていった。ポニーテールのよく似合う活発な女の子ってイメージかな。
そして中学に入った頃から周りの人に女口調で話すようになっていた、その声はc.v.岡本信彦のように声変わりをすることもなくc.v.國立幸って感じの美人系ボイスになっている。
それと中学に上がってからは勉強以外で僕に挑んで来ることが無くなった、男女の身体能力の差が如実に出てきたからだと僕は思っている。
昔は毎日の様に一緒にいたが、いまでは登下校も別々、部活もクラスも別々になり、月に1~2回遊ぶことがあるかないかというものになっていた。
男らしくなっていく僕と、女らしくなっていくかっちゃん、距離は確かに離れていく。それでもかっちゃんは変わらなかった。
「おいデクゥ!数学の教科書貸してくれ!ついつい忘れちまったんだよ!」
「あ、うん、いいよかっちゃん。四限目までには返してね」
「サンキューデク!やっぱやればできるじゃねえの!」
「こんなことで誉められても……」
相変わらず僕に対しては男の子みたいなしゃべり方で話してくる、距離感も昔のまんまだ。たまに遊びに行くときも纏めた長い髪を揺らしながらも、男の子みたいにシャツにジーンズ、それにパーカーを羽織ってみたりとそんな格好をしていた。
かっちゃんの中では僕はいつまで経っても変わらず、デクのままなのだろうな。
なんか僕だけ変に意識しちゃってバカみたいじゃないか……!
―――そうしてなんとも言えない関係のまま日々を過ごしていき、ついにあの日が訪れた。僕とオールマイトが出会った日、かっちゃんがヴィランに襲われてしまう日が……
最近妙に気になるかっちゃんのことで頭がいっぱいで僕はその事を忘れていた。それに10年間探してもオールマイトに会えなかったことで心の底で諦めていたっていうのも原因だと思う。
前世と同じくマンホールから涌き出たヘドロからオールマイトに助けてもらい、なんやかんやとオールマイトに絡み、ヘドロを取り逃がしてしまった。その時にようやく僕はその日の出来事をすべて思い出した。
かっちゃんが危ない!そう思ったときには考える前に身体が動いていた。
「すいません、オールマイト!僕はいかなくちゃいけないとこがあるので、これで失礼します!また会いましょう!」
そう言ってビルから飛び降り、全力疾走で騒動の現場へと向かう。
「フルカウル50%オオオ!!―――」
僕の出せる全力のワンフォーオールを身に纏い、道を、壁を、屋上を駆け抜けていく。
かっちゃん!かっちゃん!!――――
現場に着くとそこには大勢の野次馬と手をこまねいているヒーロー達がいた。爆発が起き続けていることから、かっちゃんが巻き込まれているのは間違いなかった。
「なに焦れったいことしてんだよ!そこをどけええええ!!!」
僕は叫びながら、特大のジャンプでそれら全てを飛び越える。そして驚く野次馬とヒーローを尻目に騒動の中心へと駆けていく。
そして僕の目に飛び込んできたのは、ヘドロに呑まれかけてとても苦しそうな顔をしているかっちゃんの姿だった。
「かっちゃぁぁぁあああんっ!!!!」
僕がかっちゃんの名前を叫びながら近付くと、かっちゃんがこちらに気がついた。一瞬その顔が明るくなるがすぐに悲痛な顔に変わり―――
「デク!?来るんじゃねえ…!逃げろ…!」
かっちゃんは自分が辛くて助けてもらいたい筈なのに僕を安じて逃げろと言ってくる。僕のなかでなにかが高まっていく……
逃げろだと…?そんなことしてやるもんか!かっちゃん、必ず救ける!!
「かっちゃん!今救けるから!!」
「邪魔すんじゃねぇよクソマッチョ…折角の若い女の身体だ…絶対頂くぜぇ…?」
ヘドロがその口からクソみたいなことを言う。その瞬間僕の中のなにかがついにブチキレた。
かっちゃんを頂くだと……?この下衆が!ふざけたこといいやがって!!そんなこと絶対にさせない!!
「かっちゃんはお前なんかに渡さない!!かっちゃんは―――僕のものだ!!!」
僕は感情のままに叫びながら、跳び跳ねてヘドロに突撃する。
「うおおおぉぉぉあああぁぁ!!!」
身体にワンフォーオールが滾り、迸る。僕の限界などとうに超えた力が流れ込むもそれらは暴走することなく全てを制御され、かっちゃんを救けるための力となる。
「デトロイトォォォオオオオ!!!!―――」
「青春だな!少年!!私も助太刀しようじゃないか!」
僕が限界を超えた一撃を放とうと拳を振り上げた瞬間、空から巨大な人影が降ってきてそう言った。
「スマァァァッシュッ!!!」
「DETROIT・SMAASH!!!」
僕とその人の拳が振り下ろされ辺りに、天候すら変えてしまうであろう暴風が吹き荒れる。その風でヘドロがかっちゃんの身体から引き剥がれるも、かっちゃん自身も風に飛ばされそうになっていた。普通なら目も開けられないほどの暴風を、僕はものともせず足を踏み込み、かっちゃんを抱き寄せた。
かっちゃん!絶対に放すもんか!!―――
僕はかっちゃんを守るように覆い被さるが、風に煽られる。そんな僕とかっちゃんを誰かが飛ばされないように庇ってくれた。
風が止み、そこに立っていたのは笑顔で胸を張るオールマイトだった。
「ありがとう、オールマイト…!」
「どういたしまして!無事かい、おふたりさん―――」
その後は警察とヒーロー達が飛び散ったヘドロを回収して騒動は幕を収めた。前世と同じくオールマイトは報道陣に囲まれ、かっちゃんは賞賛されていた、そして僕は相変わらずヒーロー達に絞られるのだった。
でもヒーローが今まで言われなかったことを言ってきた。
「女の子のために飛び出せるなんて、男だな!そんなガッツはいいと思うけどな!」
その言葉に僕はなんだか、気恥ずかしい思いをしたのだった―――
―――騒動の後の帰り道でかっちゃんが僕を待ち受けていた。
「よおデク、今日は迷惑かけちまったな…」
かっちゃんは俯き加減で僕に謝ってくる、垂れた前髪でその表情は伺えないが、見なくても落ち込んでいるのがわかった。
「かっちゃんが気にすることないよ!悪いのはヴィランだし、それに僕も考える前に身体が動いてたっていうかなんというか…」
落ち込むかっちゃんにやや早口でフォローを入れる。
僕はかっちゃんに落ち込んでいて欲しくなかった、理由はよくわからないけど胸がズキズキするんだよなぁ。
「そっか…まあデクだしな、ヒーロー上等って感じか」
「う、うん。そうだね、ヒーローに成りたかったのかもしれない!」
かっちゃんの表情が少しだけ明るくなり、軽口を言ってきた。僕はそれに乗って肯定する。
あぁよかった…!――ん?……なんで僕はかっちゃんの感情にこんなに一喜一憂するんだ?あれ、これってまさか…嘘だろ…!?
「―――でも、助けてくれてありがとうな、デク!」
かっちゃんが顔を少しだけ赤く染めて、頬を軽く掻きながらお礼を言ってくる。僕はその光景に胸の奥がキュッとなる。
ああ、まさか……そんなことがあるのか……僕が?かっちゃんに……?自分でも信じられないけど、これはもう…そうなんだろうな。
「いや、その助けてくれたのはオールマイトで僕は大したことしてないっていうか―――」
「俺がわからないわけないだろ?あのとき“個性”使ってたじゃねぇか!お前も俺を助けてくれたんだよ!」
動揺して言葉がうまく出てこない、そして僕がスマッシュを放ったことはかっちゃんにはお見通しだったらしい。ああ、顔が熱い…!
「それによぉ…」
「それに…?」
かっちゃんがいたずらっ子みたいな顔で笑う、なにを言うつもりなんだ?
「かっちゃんは僕のものだ!ってどういう意味かなぁ?デクゥ?」
「――――っ~!!」
かっちゃんの言葉に僕はぎょっとして、顔が滅茶苦茶にひきつる。聞こえていたのか!!ヤバイ、超恥ずかしい!!
「ハハハ!おっもしれえ顔!」
かっちゃんは長いポニーテールを揺らしながら楽しそうに笑っている、僕はその笑顔を見て―――
ああ、そうか……僕はかっちゃんに―――恋をしていたんだな、自分でも気付かなかった…!かっちゃんのその笑顔が本当にいとおしく感じる。
僕はやり直しを含めた25年間で初めて本気で人を好きになった。
「んで、どういう意味なんだよ!ほらほら!デクさんよぉ!」
「いやぁ、あのぉ、あれは言葉の綾というか、つい言っちゃったというか、
「んん~まだぁ~?それってどういう意味かなぁ?おい!」
僕はまたも口を滑らせる、かっちゃんは
ああ、これ、かっちゃんわかってやってるな…!僕の気持ちなんてお見通しってワケね……まったくかっちゃんには敵わないな。
「なあデク、お前もしかして俺のこと……す―――」
「ちょっとストップ!かっちゃんには僕の想いなんて筒抜けみたいだし、せめて僕の口から言わせて欲しい!」
「ふぅん?」
かっちゃんの言わんとしてることを察して僕は止めた。かっちゃんはニヤニヤした顔で僕の言葉を待つ。ほんとにせめて最後の一押しくらいは自分で決めたい。
ああああああ!うるさい!うるさいぞ僕の心臓!――なんて緊張するんだ!もうバレてるとはいえやっぱり恥ずかしい!でも言おう、この際玉砕しても構わない!!
「あの…かっちゃん!僕は…自分でもいつからかわからないけど……君のこと―――好きになってたみたいなんだ!!」
僕はかっちゃんへの思いを素直に伝える。かっちゃんは腕を組みながらじろじろとこちらを見ながら黙っている。そして、暫くの沈黙―――
「そうか……いつからだ?いつからそう思ってたんだ?」
「えっ?―――だからわからないよ!」
「だいたいでいいから教えろ!!」
沈黙を破ったかっちゃんからの問いかけ、ホントにわからないんだけど、なんでそこが気になるんだ!?……マジ?とかありえねえ!とかそういうんじゃないのか?
「えぇ……うーん、中学に上がった頃くらいかなぁ?でも気が付いたのはついさっきだしなぁ―――」
「よぉし!俺の勝ちぃ!!」
僕の返答の途中にかっちゃんが割り込んで勝利宣言をして小さくガッツポーズを作る。勝ちってなんだよ勝ちって!?
「えっ?かっちゃん、勝ちって何?」
「デクゥ……俺はなぁガキの頃からお前が好きだったんだよ!」
「マジで!?」
「マジもマジだっつーの!全然気付きやしねぇんだからこの朴念仁はっ!」
かっちゃんはそう言いながら僕にデコピンをしてくる、身長差があるので一歩近付いてきてから打った、そのため僕とかっちゃんの距離がかなり近くなる。か、顔が近いぃ……!!
「そんでもってそのなっがーい片想いからお前を振り向かせたから……俺の勝ちだ!どうだ!」
かっちゃんは勝ち誇った顔で、右へ左へひょいひょいと動きながら僕を見てくる。かっちゃんの髪の香りが僕の鼻をくすぐる。
「ありえない……!そんなに昔から…?」
「なんか他に言うことねえのか!?ほんとダメデクだな!」
「て、手厳しいね……」
僕はあまりの驚きにそれ以外口から出なかった、そんな僕を叱咤するかっちゃん。まあ概ねその通りであるから文句は言えない…!
「いや、でもおかしいじゃないか!かっちゃんは昔っからずっと変わらず、男の子みたいに僕に接してきてて、そんな素振りちっともなかったし!」
「あー、なんつーんだろな、昔は男みてーな格好してないとお前とふつーに遊べないとか思ってたんだよ…!それからはその名残って感じだな!」
かっちゃんは少し照れ臭そうに僕の疑問に答える。そういうことだったのか!全然気付かなかった…!
「でもそれならなんで髪型だけは女の子らしかったの?」
「てめー!ホントにダメデクだな!お前がガキの頃に長い髪の方がいいって言ってたんじゃねーか!!」
僕の気の抜けた質問に、かっちゃんは怒りながら答える。
そんなこといったような言ってないような……うーん、覚えてない……しかしそんな昔から意識されてとは…!ホントに僕は朴念仁だなぁ。
「まあ……ダメダメなのになんでも俺より強い…そんなお前が好きになったんだけどな!」
かっちゃんは頬を少しだけ赤くしながら、僕の胸を小突いて来た。
「僕も……手厳しいながらもいっつも僕を見てくれてた……そんな君が好きだ!」
僕も自分に素直になって、かっちゃんへ再び気持ちを伝える。
「俺ら…両思いってことでいいんだよな…?」
「いい…と思います…」
「そうか……」
僕らは真っ赤になったお互いの顔を見ながら黙り込む、恥ずかしいながらも心地のいい沈黙が流れる―――
「よし!デク、目ぇ閉じろ!」
「えっ!?なに急に!?僕なにされんの、怖いんだけど?!」
「―――っー!!このバカ!いいからさっさと!と・じ・ろ!!」
僕はかっちゃんの言葉の意味が判らず混乱する、かっちゃんはそんな僕の胸ぐらを両手で掴んで引き寄せる、僕はその気迫に負けて両目をぎゅっと瞑った。
僕の予想していた衝撃や痛みはいつまでたっても来なかった、その代わりに―――
「―――んっ……」
僕の唇に柔らかい感触、そして漏れるかっちゃんの吐息が聞こえた。
その感触が離れていき、目を開けるとそこには顔を耳まで真っ赤にしたかっちゃんの姿があった。
「……バーカ!」
かっちゃんはそう言いながら、言葉では言い表せないほど魅力的な顔で笑っていた――――
――――そこからの記憶は曖昧で、かっちゃんとふたりで並んで帰り、かっちゃんを家に送り届けたあと、僕は自分の家路についていた。
「やあ!少年!青春だったね!おじさん胸キュンしすぎて死ぬかと思ったよ!」
「ファ!?オールマイト!?」
僕の目の前に乙女なポーズをしたオールマイトが現れた、てか見てたのかよ!!
「さて、君が一体何者なのか教えて貰おうか―――」
―――僕はオールマイトに前世とこれまでの話をして、なんやかんやで弟子にしてもらうことができた。
その後はきつい修行の日々を過ごすこととなったがかっちゃんの献身的な支えもあり無事に様々な試練を乗り越えることが出来た。ついでにその最中にオールマイトの後継者としても認めてもらえた。
そして中学を卒業し、僕とかっちゃんは揃って雄英高校に入学した、ちなみに入試は二人で対策を立てていたので1-2フィニッシュだった。
僕の規格外の力と、入学前からカップルという異様さから僕らはかなり悪目立ちしたが、結果的にクラスの中心となったため悪くはなかったのかもしれない。それからは楽しくも厳しいヒーローアカデミアでの生活を送っていた。
この世界でもやっぱりUSJでの救助訓練にヴィランが襲撃してきた。かっちゃんに危険が及びそうだったので僕はそれらを一撃で蹴散らし、大勢のヴィランとヴィラン連合の中心メンバーである死柄木 弔、黒霧の両名を捕らえることができた。
それから体育祭、職場体験、中間・期末試験などヒーロー的で学生的なイベントが目白押しだったけど、どれも僕は無事に終えることができた。
そしてやって来た林間合宿。かっちゃんを拐うとかふざけたことをぬかす連中にブチキレた僕は全員まとめてボコボコにしてやった、そのためかっちゃんが拐われることなく事件は幕を収めた。
前世と違ってかっちゃんが拐われなかったので神野町での奪還作戦もなくなり、オールフォーワンが表舞台に姿を現すこともなく、僕とオールマイトは死なずに今も生きている。結果的にだがオールマイトを救うことができた!!
――――時は流れ、高校を卒業し僕はプロヒーローになった、そしてオールマイトから直々に“二代目オールマイト”を襲名した。それと同時にオールマイトは自身の弱体化と現役引退を発表、それはそれは世間を騒がせた。その時のオールマイトの活動時間はもう5分も無くなっていた…
だがしかし、僕が一瞬だけオールフォーワンと出会うという事件が起き、それを聞いたオールマイトはまさかの現役復帰、“オールマイト
僕らとヴィラン連合の戦いはこれからも続く。
―――――そして時が更に経ち、今日は……
「とっても綺麗だ、かっちゃん…!」
「あったり前だろぉ、まあデクもなかなかカッコいいぞ!」
僕とかっちゃんの結婚式の日だ。僕らの家族や雄英高校の元クラスメイト、オールマイトをはじめとしたプロヒーロー達、いろんな人がお祝いに駆けつけてくれた。みんなに支えられて生きてるんだなってことを実感させられたね…!
――
「それでは誓いのキスを」
神父さんに促されて、僕とかっちゃんは向き合う。かっちゃんが目を閉じて顔を上げた……僕はゆっくりとその唇に唇を近付け―――
「キャー!!誰かぁ!!!」
――その瞬間、遠くの方で悲鳴と爆発音が聞こえた。
「かっちゃん……」
僕はこちらを見上げるかっちゃんの名前をただ呼ぶ。
「ああ、デク…!」
かっちゃんも不敵な笑みを浮かべて僕の名前を呼ぶ。
「「いこう!!」」
僕らはタキシードとウェディングドレスのまま駆け出す。
だって僕らはヒーローなんだから、誰かを救けるために飛び出さずにはいられない!
―――これからも僕とかっちゃんの波乱万丈で幸せな生活は続いていくだろう、これはそんな物語だ。
――― 完 ―――
デクのヒーローアカデミア 再履修!
~IFエンド もしもかっちゃんが男装ポニテ美少女だったら~
原作 僕のヒーローアカデミア 作 堀越耕平
作者 くろわっさん
Special Thanks 読者の皆様
なんだよこれぇ!!(二回目)
というわけで、もしもかっちゃんが男装ポニテ美少女だったら、原作一話の段階でルートに入ってそのままエンディングを迎える。というのが僕の答えです!
感想欄で見かけた、かっちゃんヒロイン説とかっちゃんが男装女子に思える等の意見から妄想が荒れた結果がこれですよ。―――反省はしていない、後悔はしている。
無論、本編とは一切関係ないパラレル的なあれなので、本編には勝姫ちゃんは出てきませんので悪しからず。
こんなものを最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
次回からの第五章も応援よろしくお願いします!